(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】警報器
(51)【国際特許分類】
G08B 21/16 20060101AFI20240514BHJP
G08B 21/14 20060101ALI20240514BHJP
G08B 23/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G08B21/16
G08B21/14
G08B23/00 530D
(21)【出願番号】P 2020114224
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英樹
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-053910(JP,A)
【文献】特開2020-086529(JP,A)
【文献】特開2013-009230(JP,A)
【文献】特開2007-012094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ガスを検出する第一センサと、
前記第一ガスと異なる第二ガスを検出し、前記第一センサよりも消費電流が大きい第二センサと、
前記第一センサ及び前記第二センサを駆動させる制御部と、を備え、
前記制御部は、電源電圧の供給を受けて動作を開始すると、前記第一センサの駆動を開始させ、前記第一センサの駆動を開始させた時点から遅延して、前記第二センサの駆動を開始させる
警報器。
【請求項2】
前記制御部は、前記電源電圧が第一電圧値であるときに前記第一センサの駆動を開始させ、前記電源電圧が前記第一電圧値よりも高い第二電圧値であるときに、前記第二センサの駆動を開始させる
請求項1に記載の警報器。
【請求項3】
前記第二電圧値は、前記電源電圧が安定した時の電圧値である
請求項2に記載の警報器。
【請求項4】
前記制御部は、前記第一センサの駆動を停止させた後、前記第二センサの駆動を開始させる
請求項1~3のいずれか一項に記載の警報器。
【請求項5】
前記制御部は、前記第一センサを駆動して前記第一センサの故障診断を実行し、前記故障診断に要する時間が経過した後に、前記第二センサの駆動を開始させる
請求項1~4のいずれか一項に記載の警報器。
【請求項6】
前記第一センサ及び前記第二センサは、単一のセンサで構成され、
前記単一のセンサは、第三電圧が印加された状態で前記第一ガスを検出し、前記第三電圧よりも高い第四電圧が印加された状態で前記第二ガスを検出する
請求項1~4のいずれか一項に記載の警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
直流(DC)24V電源で動作する警報器において、電源投入時の過渡的な状態にあり、電源電圧が低い(例えば17V)時、警報器を起動する為には、電源電圧が24Vで安定した態の時よりも大きな消費電流が必要になる。例えば、消費電力が1.5Wの警報器にDC24Vの電源電圧を供給した場合、電源電圧が24Vに到達した後に警報器が動作を開始すれば、消費電流は約63mAである。一方、電源電圧が24Vに到達するまでの過程において、電源電圧が例えば10Vの時点で警報器が動作を開始すると、その直後、警報器には約150mAの電流が流れてしまう。
【0003】
上記の現象が、警報器の設置業者に与える影響は、以下の通りである。例えば、警報器の本体に記載されている消費電力が一台当たり1.5Wである警報器10台に対して、一つの電源で電源供給しようとする場合、設置業者は、15W(=24V×63mA×10)相当の24V電源を準備する。この24V電源に10台の警報器を接続し、一度に電源を投入した場合、電源電圧が上昇する過程において、10台すべての警報器が例えば10Vで同時起動すると、瞬間的に150mA×10台分=1.5Aの電流が流れる。1.5Aの電流は、設置業者が準備した15W相当の電源の供給能力を超えるため、電源が停止される、若しくは、電流制限が掛かることにより、結果として警報器の動作が開始されないなどの不具合が生じてしまい、起動動作が不安定となる。
【0004】
電源投入時に流れる大電流に対処する技術として、特許文献1の警報器が提案されている。特許文献1の警報器は、電源電圧を所定電圧に変換してガスセンサに供給するDCDCコンバータと、DCDCコンバータの制御を行う制御手段と、を備える。制御手段が、電源電圧の投入による制御手段の起動から遅延してDCDCコンバータによる電圧変換を開始させることで、電源電圧が十分立ち上がった後に電圧変換を開始させて、大電流が流れることを防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の警報器は、電源電圧が十分立ち上がるまで電圧変換が開始されずガスセンサが駆動されないため、電源が投入されてから警報器が警報機能を発揮可能な状態となるまでに時間を要する場合がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電源電圧投入時の過渡的な状態において、起動電流を小さく抑えて安定した起動動作を速やかに実現できる警報器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る警報器は、下記(1)~(6)を特徴としている。
(1)第一ガスを検出する第一センサと、
前記第一ガスと異なる第二ガスを検出し、前記第一センサよりも消費電流が大きい第二センサと、
前記第一センサ及び前記第二センサを駆動させる制御部と、を備え、
前記制御部は、電源電圧の供給を受けて動作を開始すると、前記第一センサの駆動を開始させ、前記第一センサの駆動を開始させた時点から遅延して、前記第二センサの駆動を開始させる
警報器。
(2)前記制御部は、前記電源電圧が第一電圧値であるときに前記第一センサの駆動を開始させ、前記電源電圧が前記第一電圧値よりも高い第二電圧値であるときに、前記第二センサの駆動を開始させる
上記(1)に記載の警報器。
(3)前記第二電圧値は、前記電源電圧が安定した時の電圧値である
上記(2)に記載の警報器。
(4)前記制御部は、前記第一センサの駆動を停止させた後、前記第二センサの駆動を開始させる
上記(1)~(3)のいずれか一に記載の警報器。
(5)前記制御部は、前記第一センサを駆動して前記第一センサの故障診断を実行し、前記故障診断に要する時間が経過した後に、前記第二センサの駆動を開始させる
上記(1)~(4)のいずれか一に記載の警報器。
(6)前記第一センサ及び前記第二センサは、単一のセンサで構成され、
前記単一のセンサは、第三電圧が印加された状態で前記第一ガスを検出し、前記第三電圧よりも高い第四電圧が印加された状態で前記第二ガスを検出する
上記(1)~(4)のいずれか一に記載の警報器。
【0009】
上記(1)の構成の警報器によれば、電源起動後、電源電圧が所定値に到達して安定するまでの過渡期において、消費電流の小さい第一センサから動作を開始し、その後消費電流の大きい第二センサの駆動を開始する。この制御により、電源起動時の過渡期において、警報器が動作可能な最小電流で警報器を起動させて、起動電流を小さく抑えることが可能になる。このため、必要以上に容量の大きい電源を要することなく、安定した起動動作を実現できる。また、上記(1)の構成の警報器によれば、制御部が動作を開始すると、電源電圧が十分に立ち上がるまで待つことなく直ちに第一センサの駆動を開始するので、警報器を速やかに起動できる。よって、制御部の動作開始後において電源電圧が十分に立ち上がるまでセンサ駆動を開始しない場合よりも、早く警報機能を発揮し得る。
【0010】
上記(2)の構成の警報器によれば、電源電圧が第二電圧値まで立ち上がってから第二センサの駆動を開始させるので、電源電圧が第二電圧値よりも低い第一電圧値である場合に第二センサを駆動させるために必要な電流よりも、少ない電流で第二センサを駆動できる。
【0011】
上記(3)の構成の警報器によれば、電源電圧が安定した状態で第二センサの駆動を開始することにより、第二センサに流れる電流を必要最低限とすることができる。
【0012】
上記(4)の構成の警報器によれば、第一センサの駆動を停止後に第二センサを駆動することにより、第一及び第二センサを同時に駆動する場合と比べて、消費電流を低減できる。
【0013】
上記(5)の構成の警報器によれば、第一センサの故障診断が終了した後に第二センサの駆動を開始することにより、最小電流で第一センサの故障診断を行うことができる。
【0014】
上記(6)の構成の警報器によれば、単一のセンサで第一ガス及び第二ガスの検出を行う場合であっても、低い電圧すなわち少ない消費電流で機能する第一センサから駆動を開始し、その後、第二センサの駆動を開始させる。この構成により、起動時の消費電流を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電源電圧投入時の過渡的な状態において、起動電流を小さく抑えて安定した起動動作を速やかに実現できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる警報器の概略構成例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1の警報器における電源投入から初期点検完了までの動作の一例を示すタイムチャートである。
【
図4】
図4は、
図1の警報器における電源投入から初期点検完了までの電源電圧及び消費電流の変化例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、一つの半導体式センサでガスとCOを検出する例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。本実施形態の警報器は、ガス漏れ及びCO(一酸化炭素)発生を検知して警報するガス・CO警報器であり、例えば、屋内の壁面等に設置されるものである。勿論、例えば、火災警報器などのガス・CO警報器以外の警報機能を搭載した複合型警報器に本発明を適用してもよい。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態にかかる警報器の概略構成例を示す機能ブロック図である。
図2は、
図1の警報器の外観例を示す正面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るガス・CO警報器AL(以下、単に「警報器AL」という)は、マイクロコンピュータ(以下、μCOMと記す)10(制御部)に接続された警報停止スイッチ20、ガスセンサ30(第二センサ)およびCOセンサ40(第一センサ)を備えている。
【0021】
ガスセンサ30は、都市ガスやLPガス(プロパンガス)といった可燃性ガスの濃度を検出するガス漏れ検出用センサである。ガスセンサ30は、たとえば、半導体式センサや接触燃焼式センサを用いることができるが、白金線に電流を流し、センサ素子を約300℃程度まで加熱するため、後述のCOセンサ40よりも大きな消費電流を必要とする。
【0022】
COセンサ40は、一酸化炭素(COガス)の濃度を検出するCO検出用センサであり、例えば、半導体式センサや電気化学式センサを用いることができる。半導体式センサにおいては、半導体式センサによるガス漏れ検出と比較して低い温度でCO検出が可能であるため、白金線に流す電流が比較的少なく済む。また、電気化学式センサにおいては、センサ自身からCOガス濃度に応じてセンサ電流を出力するため、センサに必要な消費電流はほぼゼロである。
【0023】
μCOM10は、CPU(中央処理ユニット)10aと、ROM10bと、RAM10cとを有する。CPU10aは、プログラムに従って各種の処理を行う制御手段であり、ガスセンサ30及びCOセンサ40を駆動させる。CPU10aは、電源電圧の供給を受けて動作を開始すると、COセンサ40の駆動を開始させ、COセンサ40の駆動を開始させた時点から遅延して、ガスセンサ30の駆動を開始させる。ROM10bは、CPU10aが行う処理プログラムなどを格納する。RAM10cは、CPU10aでの各種の処理過程で使用するワークエリアや各種データを格納するデータ格納エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリである。
【0024】
また、警報器ALは、μCOM10に接続された、音声出力回路60および鳴動手段としてのスピーカ70と、不完全燃焼警報ランプ80と、ガス漏れ警報ランプ90と、故障報知ランプ100と、EEPROM110と、を備えている。音声出力回路60は、ガス漏れ検知時、CO発生検知時等に警報を音声で行うための回路である。不完全燃焼警報ランプ80は、CO検知時に警報表示するための警報表示手段である。ガス漏れ警報ランプ90は、ガス漏れ検知時に警報表示するための警報表示手段である。故障報知ランプ100は、故障発生時に故障を報知するための故障表示手段である。EEPROM110は、不揮発性メモリであり、予め設定されたガス漏れ警報しきい値や不完全燃焼警報しきい値等を格納する記憶手段である。
【0025】
不完全燃焼警報ランプ80は、たとえば黄色に発光するLEDからなり、ガス漏れ警報ランプ90は、たとえば赤色に発光するLEDからなり、故障報知ランプ100は、たとえば緑色に発光するLEDからなる。また、不完全燃焼警報ランプ80、ガス漏れ警報ランプ90および故障報知ランプ100は、μCOM10によって点灯/消灯制御が行われる。
【0026】
また、警報器ALは、外部に設けられた直流電源(Vcc)からμCOM10、ガスセンサ30、COセンサ40等の各部に電源供給を行う電源回路50を備えている。尚、
図1において、電源回路50からCPU10a、ガスセンサ30及びCOセンサ40以外の各部への電源供給線は図示を省略する。
【0027】
警報停止スイッチ20は、押しボタンスイッチであって、その押しボタン部分20aの押下げ操作によりCPU10aに警報停止信号を供給する。
【0028】
警報器ALは、設置業者の作業員により適宜な設置場所へ設置され、電源が投入されると、ガスセンサ30及びCOセンサ40が正常か否かの判断(故障検出)を行う初期点検動作を自動的に実行する。初期点検動作は、μCOM10が動作を開始した時点からの一定時間(たとえば60秒間)である初期鳴動防止時間において実行される。その後、警報器ALは、ガス漏れ及びCOガス発生の検知を行う監視モード動作を実行する。
【0029】
監視モード動作時には、CPU10aは、所定の時間間隔(例えば、5秒間隔)でガスセンサ30およびCOセンサ40を監視している。CPU10aは、監視領域における異常発生時、ガスセンサ30がしきい値以上のガス濃度を検知すると、所定の警報形態でガス漏れを報知する。CPU10aは、たとえば音声出力回路60を駆動してスピーカ70により音声メッセージ(または警報音)を出力させるとともにガス漏れ警報ランプ90を点滅させることによりガス漏れを報知する。また、COセンサ40がしきい値以上のCOを検知すると、CPU10aは、同様に、音声出力回路60を駆動してスピーカ70により音声を出力させるとともに不完全燃焼警報ランプ80を点滅させることによりCO警報を報知する。また、CPU10aは、故障発生時には故障報知ランプ100を点滅させて故障表示を行う。CPU10aは、警報状態において警報停止スイッチ20の押しボタン部分20aの押下を検出することにより、警報を停止する。
【0030】
図2に警報器ALの外観例を示す正面図である。警報器ALは、正面視矩形状に形成されている。警報器ALは、正面中央箇所に上下方向に間隔を開けて配列されたスリットが形成されており、その内側にガスセンサ30が収容されている。また、警報器ALは、正面右上箇所に同様のスリットが形成されており、その内側にCOセンサ40が収容されている。警報器ALの正面左下箇所には、複数の孔が形成されており、その内側にスピーカ70が収容されている。警報器ALは、の正面右下箇所には、上から順に不完全燃焼警報ランプ80、ガス漏れ警報ランプ90および故障報知ランプ100が間隔をあけて配列されている。警報器ALの正面下部中央箇所には、警報停止スイッチ20の押しボタン部分20aが設けられている。尚、警報器ALの外観は、
図2に示したものに限定されず、例えば正面視円形等であってもよい。
【0031】
(電源投入直後の動作)
以下、警報器ALの電源投入直後の動作について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、警報器ALにおける電源投入から初期点検完了までの動作の一例を示すタイムチャートであり、
図4は、警報器ALにおける電源投入から初期点検完了までの電源電圧及び消費電流の変化例を示すグラフである。
図3及び
図4において、横軸は時間を示し、時間t0~t4は、
図3及び
図4において共通のタイミングを示す。以下の例において、外部の直流24V電源(外部電源)から消費電力が1.5Wの警報器ALに電源電圧が供給されるものとする。また以下の例において、ガスセンサ30として接触燃焼式センサを用い、COセンサ40として電気化学式センサを用いるものとする。警報器ALは、設置業者の作業員等によって設置場所に設置され、外部電源に接続される。
【0032】
図3に示すように、外部電源から警報器AL(μCOM10)への電源供給が開始される(時間t0)と、電源電圧が0Vから徐々に立ち上がる。電源電圧が、μCOM10の動作を可能とする電圧(第一電圧値、たとえば10V)に到達する(時間t1)と、μCOM10が動作を開始する、すなわち、警報器ALが起動する。時間t1において、μCOM10は、COセンサ40に所定電源を供給して駆動を開始させ、COセンサ40の点検(電気化学式COセンサ故障検出)を開始する。
【0033】
電源電圧は、さらに上昇して所定値(第二電圧値、本例では24V)に到達し(時間t2)、安定する。その後、COセンサ40の点検開始(時間t1)から所定時間(たとえば15秒間)経過する(時間t3)と、μCOM10は、COセンサ40の点検を終了し、COセンサ40の駆動を停止する。また、時間t3において、μCOM10は、ガスセンサ30のヒーター電源を起動(接触燃焼式センサヒーター駆動)して、ガスセンサ30の点検を開始する。その後、ガスセンサ30のセンサ素子及びレファレンス素子の温度が一定となり、ガスセンサ30の点検が終了する(時間t4)と、警報器ALは正常にガス漏れ及びCOガス発生を検知可能な状態となり、監視モード動作の実行に移行する。
【0034】
図4において、符号Vccは警報器ALに供給される電源電圧の変化、符号IAは警報器ALにおける消費電流の変化、符号IBは比較用警報器における消費電流の変化をそれぞれ示す。比較用警報器は、警報器ALと同様の構成を有するが、電源電圧の供給を受けてμCOMが動作を開始するとCOセンサ及びガスセンサの双方を同時に駆動する点が、警報器ALと異なる。すなわち、比較用警報器は、本実施形態の警報器ALによる消費電流増加防止対策を行わない警報器である。
【0035】
図4に示すように、比較用警報器は、動作を開始した直後において、消費電流IBが約150mAに達した後、電源電圧Vccの上昇に伴い消費電流IBが減少する。一方、警報器ALは、動作を開始した後、消費電流IAが急激に増加することなく、徐々に増加する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の警報器ALによれば、起動時(μCOM10が動作を開始した時点)には、まず、消費電流がほぼ0である電気化学式COセンサ40を駆動させ、COセンサ40の点検を実施する。その後、警報器ALは、接触燃焼式ガスセンサ30を駆動させる。すなわち、警報器ALは、電源起動後、電源電圧が所定値に到達するまでの過渡期において、消費電流の大きいガスセンサ30を駆動せず、消費電流の小さいCOセンサ40のみを駆動する。この構成により、電源起動後の過渡期において、警報器ALに大電流が流れることなく、警報器ALが動作可能な最小電流で警報器ALを起動できる。このように、警報器ALの起動電流を小さく抑えることで、電源の停止や電流制限を受けることなく、安定した起動動作を実現できる。また、警報器ALは、CPU10aが動作を開始すると直ちにCOセンサ40の駆動を開始するので、CPU10aの動作開始後において電源電圧が十分に立ち上がるまでセンサ駆動を開始しない場合よりも、速やかに警報器ALを起動でき、警報機能を発揮し得る。
【0037】
警報器ALは、電源起動後の過渡期(電源電圧が0V以上かつ所定値24V未満である期間)における最大消費電流IAが、通常の消費電流(消費電力が1.5Wで電源電圧が所定値24Vの場合の消費電流約63mA)を越えない。このため、警報器ALの設置者は、必要以上に容量の大きい電源を準備する必要が無くなる。
【0038】
警報器ALは、電源電圧Vccが10V(第一電圧値)であるときにCOセンサ40の駆動を開始し、電源電圧Vccが24V(第二電圧値)まで立ち上がってからガスセンサ30の駆動を開始する。このため、10Vで駆動する場合よりも少ない消費電流でガスセンサ30を駆動できる。また、電源電圧Vccが安定した状態でガスセンサ30の駆動を開始することにより、消費電流を必要最低限とすることができる。
【0039】
警報器ALは、COセンサ40の駆動を停止させた後、ガスセンサ30の駆動を開始することにより、COセンサ40及びガスセンサ30を同時に駆動する場合と比べて、消費電流を低減できる。
【0040】
警報器ALは、ガスセンサ30の起動時間を遅らせても、初期点検時間を延長させることなく初期点検を完了可能である。一般に、複合型警報器、例えばガス漏れ検出機能及びCO検出機能を有する警報器においては、電源投入後、正常なガス検知が可能となるまでに一定の待ち時間(初期鳴動防止時間、たとえば60秒間)を有し、この間は警報動作を停止している。警報器は、この初期鳴動防止時間に、ガス漏れ検出用及びCO検出用ガスセンサ(センサ素子及びレファレンス素子)の温度が一定となるのを待つ(安定待ち)とともに、ガスセンサが正常か否かの判断(故障検出)を行う。本実施形態の警報器ALは、初期鳴動防止時間(時間t1から時間t4までの時間)において、μCOM10は、まずCOセンサ40の点検を実行し(たとえば15秒間)、その後、接触燃焼式センサのヒーター電源を投入してガスセンサ30を駆動させる。接触燃焼式ガスセンサ30の安定待ち時間が通常約40秒間必要だが、COセンサ40の点検完了後にガスセンサ30のヒーター電源を投入しても、60秒以内に初期点検が完了する。このように、警報器ALによれば、ガスセンサ30の点検及びCOセンサ40の点検を同時に開始せず、COセンサ40の点検後にガスセンサ30の点検を行っても、初期鳴動防止時間を延長させることなく、初期点検を完了可能である。
【0041】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、本実施形態では、COセンサ40の点検完了時点でガスセンサ30の駆動を開始したが、ガスセンサ30の駆動は、COセンサ40の点検完了後のタイミングに開始すればよい。例えばCOセンサ40の点検に15秒を要する場合は、COセンサ40の点検開始から15秒後以降にガスセンサ30の駆動を開始すればよい。
【0042】
また、前述した実施形態では、COセンサ40及びガスセンサ30として、それぞれ電気化学式センサ及び接触燃焼式センサを用いたが、COセンサ40及びガスセンサ30を、別々のセンサではなく一つの半導体式センサで構成してもよい。警報器ALにおいて、一つの半導体式センサで複数種類のガス検出(CO検出及びガス漏れ検出)を行う場合であっても、少ない消費電流で機能するCOセンサから駆動を開始することで、起動時の消費電流を抑えることができる。
【0043】
図5は、一つの半導体式センサでガスとCOを検出する例を説明するための図であり、(a)は電源起動時にガス検出から開始する例を示し、(b)は電源起動時にCO検出から開始する例を示す。ガスとCOの双方を単一のセンサで検出可能な半導体式センサにおいては、ヒーターを高い電圧(第四電圧)と低い電圧(第三電圧)で交互にパルス駆動させて、低い電圧の時COを検出し、高い電圧の時ガスを検出する。通常、
図5(a)に示すように、電源起動時、すなわちマイコンが動作を開始した時点(警報器が起動した時点)では、マイコンは、高い電圧(例えば0.9V、消費電流は約130mA)でヒーターを駆動(ヒートアップ)させて5秒間その状態を維持する。その後、マイコンは、低い電圧(例えば0.2V、消費電流は約60mA)でヒーターを駆動(ヒートダウン)させて15秒間その状態を維持する。半導体式センサは、ヒートダウン直前において、ガス検出に適した温度帯となった状態で、ガスを検出する。また、半導体式センサは、ヒートアップ直前において、CO検出に適した温度帯となった状態で、COを検出する。これを1サイクルとして、警報器は、初期鳴動防止時間の例えば60秒の間に3サイクルを実施した後、監視状態(監視モード動作)に移行する。
【0044】
しかし、直流電源により駆動される警報器ALにおいて、
図5(a)に示すように、電源投入時に、ヒートアップから開始すると、消費電流が大きくなってしまう。そこで、警報器ALは、
図5(b)に示すように、電源投入時に、ヒートダウンから駆動を開始させ(半導体式センサのヒーターを低い電圧で駆動させ)てCOを検出する。COは、ガス漏れ検出に比べて低い温度での検出が可能なため、ガス漏れ検出に必要な消費電流(例えば約130mA)よりも少ない消費電流(例えば約60mA)でCO検出が可能となる。このように、警報器ALは、単一の半導体式センサでCO検出及びガス漏れ検出を行う場合であっても、少ない消費電流で機能するCOセンサから駆動を開始することで、起動時の消費電流を抑えることができる。
【0045】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る警報器の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1]第一ガスを検出する第一センサ(COセンサ40)と、
前記第一ガスと異なる第二ガスを検出し、前記第一センサよりも消費電流が大きい第二センサ(ガスセンサ30)と、
前記第一センサ及び前記第二センサを駆動させる制御部(CPU10a)と、を備え、
前記制御部は、電源電圧の供給を受けて動作を開始する(時間t0)と、前記第一センサの駆動を開始させ(時間t1)、前記第一センサの駆動を開始させた時点から遅延して、前記第二センサの駆動を開始させる(時間t3)
警報器。
[2]前記制御部は、前記電源電圧が第一電圧値であるときに前記第一センサの駆動を開始させ、前記電源電圧が前記第一電圧値よりも高い第二電圧値であるときに、前記第二センサの駆動を開始させる
上記[1]に記載の警報器。
[3]前記第二電圧値は、前記電源電圧が安定した時の電圧値である
上記[2]に記載の警報器。
[4]前記制御部は、前記第一センサの駆動を停止させた後、前記第二センサの駆動を開始させる
上記[1]~[3]のいずれか一に記載の警報器。
[5]前記制御部は、前記第一センサを駆動して前記第一センサの故障診断を実行し、前記故障診断に要する時間が経過した後に、前記第二センサの駆動を開始させる
上記[1]~[4]のいずれか一に記載の警報器。
[6]前記第一センサ及び前記第二センサは、単一のセンサで構成され、
前記単一のセンサは、第三電圧が印加された状態で前記第一ガスを検出し、前記第三電圧よりも高い第四電圧が印加された状態で前記第二ガスを検出する
上記[1]~[4]のいずれか一に記載の警報器。
【符号の説明】
【0046】
AL ガス・CO警報器(警報器)
10 μCOM
20 警報停止スイッチ
30 ガスセンサ
40 COセンサ
50 電源回路
60 音声出力回路
70 スピーカ
80 不完全燃焼警報ランプ
90 ガス漏れ警報ランプ
100 故障報知ランプ