(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】センシング用導電性ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240514BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240514BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/04
H01B1/24 C
(21)【出願番号】P 2020133369
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】桜井 秀之
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 良
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-035974(JP,A)
【文献】特開2006-208052(JP,A)
【文献】特開2019-052275(JP,A)
【文献】特開2008-037906(JP,A)
【文献】ゴム技術の基礎,社団法人 日本ゴム協会,106-107頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、カーボンブラックと、カーボンナノチューブと、を含
み、
前記カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量A(質量部)と、前記カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m
2
/g)と、の積(A×B)が、310以上であり、且つ
前記カーボンブラックの体積分率が、20体積%以上であることを特徴とする、センシング用導電性ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分が、ジエン系ゴムを含む、請求項
1に記載のセンシング用導電性ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、及びアクリロニトリルブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項
2に記載のセンシング用導電性ゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分が、非ジエン系ゴムを含む、請求項
1に記載のセンシング用導電性ゴム組成物。
【請求項5】
前記非ジエン系ゴムが、ウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、及びブロモブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項
4に記載のセンシング用導電性ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシング用導電性ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等のゴム製品において、ゴム製品の変形量を計測することが求められることがある。しかしながら、導電性材料を含まない一般的なゴムには、ゴムの変形量を検出するセンシング機能がない。そのため、一般的なゴム製品の変形量を検出するには、ゴム製品の外部に別途センサー(歪センサー、加速度センサー、位置検知センサー、角度センサー等)を設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ゴム製品の外部に別途センサーを設ける場合(例えば、レーザー発振器と反射部を設置して、2点間の距離を測定する場合や、超音波発信機と反射部を設置して、2点間の距離を測定する場合等)は、ゴム製品の構成が複雑になったり、重量が増加したり、更には、コストも高くならざるを得ない。
また、例えば、レーザー発振器と反射部とを具え、2点間の距離を測定するセンサーや、超音波発信機と反射部とを具え、2点間の距離を測定するセンサーは、測定対象がリニアーに変形しないと、2点間の距離を測定することができず、変形量を計測することができないという問題もある。
このような状況下、本発明者らは、ゴムに導電性材料を配合して導電性を付与することで、ゴム変形の際に抵抗値が変化し、ゴムの変形量と、抵抗値に相関があることを見出した。そして、本発明者らは、ゴムの抵抗値の変化から、ゴムの変形量を予測することを想到した。しかしながら、本発明者らが、更に検討したところ、単に導電性を付与したゴムでは、ゴムの変形量を検出するセンシング機能が十分ではなく、また、消費電力も大きいため、センサーに用いることが難しいことが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、変形量を検出するセンシング部材に好適なセンシング用導電性ゴム組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0007】
本発明のセンシング用導電性ゴム組成物は、ゴム成分と、カーボンブラックと、カーボンナノチューブと、を含むことを特徴とする。
かかる本発明のセンシング用導電性ゴム組成物は、抵抗値が小さく、変形を検出するセンシング部材に好適に用いることができる。
【0008】
本発明のセンシング用導電性ゴム組成物の好適例においては、前記カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量A(質量部)と、前記カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)と、の積(A×B)が、3000以上であり、且つ
前記カーボンブラックの体積分率が、20体積%以上である。この場合、ゴム組成物の体積抵抗率を1.0×108Ω・cm以下とし易い。
【0009】
本発明のセンシング用導電性ゴム組成物の他の好適例においては、前記カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量A(質量部)と、前記カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)と、の積(A×B)が、1250以上であり、且つ
前記カーボンブラックの体積分率が、20体積%以上である。この場合も、ゴム組成物の体積抵抗率を1.0×108Ω・cm以下とし易い。
【0010】
本発明のセンシング用導電性ゴム組成物の他の好適例においては、前記カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量A(質量部)と、前記カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)と、の積(A×B)が、900以上であり、且つ
前記カーボンブラックの体積分率が、20体積%以上である。この場合も、ゴム組成物の体積抵抗率を1.0×108Ω・cm以下とし易い。
【0011】
本発明のセンシング用導電性ゴム組成物の他の好適例においては、前記カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量A(質量部)と、前記カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)と、の積(A×B)が、310以上であり、且つ
前記カーボンブラックの体積分率が、20体積%以上である。この場合も、ゴム組成物の体積抵抗率を1.0×108Ω・cm以下とし易い。
【0012】
また、本発明の他のセンシング用導電性ゴム組成物は、ゴム成分と、カーボンブラックと、を含み、
前記カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量A(質量部)と、前記カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)と、の積(A×B)が、3000以上であることを特徴とする。
かかる本発明の他のセンシング用導電性ゴム組成物も、抵抗値が小さく、変形を検出するセンシング部材に好適に用いることができる。
【0013】
本発明のセンシング用導電性ゴム組成物においては、前記ゴム成分が、ジエン系ゴムを含むことが好ましい。この場合、センシング用導電性ゴム組成物から、センシング部材として好適な加硫ゴムを作製することができる。
【0014】
ここで、前記ジエン系ゴムが、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、及びアクリロニトリルブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。この場合、優れた物性(破断強度、破断伸び等)を有するゴム組成物(加硫ゴム)が得られ易い。
【0015】
本発明のセンシング用導電性ゴム組成物においては、前記ゴム成分が、非ジエン系ゴムを含むことも好ましい。この場合も、センシング用導電性ゴム組成物から、センシング部材として好適なゴム組成物を作製することができる。
【0016】
ここで、前記非ジエン系ゴムが、ウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、及びブロモブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。この場合、優れた物性(破断強度、破断伸び等)を有するゴム組成物が得られ易い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、変形量を検出するセンシング部材に好適なセンシング用導電性ゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のセンシング用導電性ゴム組成物を用いた変形量検出センサーの一実施態様の模式図である。
【
図2】本発明のセンシング用導電性ゴム組成物を用いたタイヤの一実施態様の断面図である。
【
図3】本発明のセンシング用導電性ゴム組成物を用いたラバーアクチュエータの一実施形態の側面図である。
【
図4】本発明のセンシング用導電性ゴム組成物を用いたラバーアクチュエータの一実施形態の一部分解斜視図である。
【
図5】カーボンブラックとカーボンナノチューブとを含む実施例及び比較例における、カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m
2/g)との積(A×B)と、体積抵抗率と、の関係を示すグラフである。
【
図6】カーボンブラックを含み、カーボンナノチューブを含まない実施例及び比較例における、カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m
2/g)との積(A×B)と、体積抵抗率と、の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明のセンシング用導電性ゴム組成物を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0020】
<第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物>
本発明の第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物は、ゴム成分と、カーボンブラックと、カーボンナノチューブと、を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物は、カーボンブラックに加えて、カーボンナノチューブを含み、カーボンブラック及びカーボンナノチューブが、ゴム組成物に優れた導電性をもたらし、ゴム組成物の抵抗値を低下させることができる。そのため、本発明の第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物は、変形量を検出するセンシング部材に好適に用いることができる。
なお、本発明の第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物は、カーボンブラック及びカーボンナノチューブを含み、それらの含有量や表面積を適宜選択することで、体積抵抗率(電気抵抗値)を1.0×108Ω・cm以下とし易い。
【0022】
(ゴム成分)
前記ゴム成分としては、組成物にゴム弾性をもたらす種々のゴム成分を利用することができ、特に限定されない。また、使用するゴム成分は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0023】
前記ゴム成分は、ジエン系ゴムを含むことが好ましい。ゴム成分がジエン系ゴムを含む場合、簡便に加硫ゴムを調製でき、種々のゴム製品に好適に使用することができる。また、使用するジエン系ゴムと、加硫剤、加硫促進剤等の加硫系を適宜選択することで、センシング部材として好適な加硫ゴムを作製することができる。
前記ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
【0024】
ここで、前記ジエン系ゴムが、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、及びアクリロニトリルブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。この場合、原料ジエン系ゴム(ゴム成分の)の入手が容易であり、また、優れた物性(破断強度、破断伸び等)を有するゴム組成物(加硫ゴム)が得られ易いという利点もある。
【0025】
前記ゴム成分は、非ジエン系ゴムを含んでもよい。ゴム成分が、非ジエン系ゴムを含む場合も、センシング部材として好適なゴム組成物を作製することができる。
前記非ジエン系ゴムとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブロモブチルゴム等が挙げられる。
【0026】
ここで、前記非ジエン系ゴムが、ウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、及びブロモブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。この場合、優れた物性(破断強度、破断伸び等)を有するゴム組成物が得られ易い。
【0027】
なお、本発明において、「ジエン系ゴム」とは、該ジエン系ゴムを構成するモノマー単位中のジエン系モノマー由来の単位の割合が5mol%以上のゴムを意味し、「非ジエン系ゴム」とは、該非ジエン系ゴムを構成するモノマー単位中のジエン系モノマー由来の単位の割合が5mol%未満のゴムを意味する。ここで、ジエン系モノマーとしては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等が挙げられる。
【0028】
(カーボンブラック)
前記カーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。これらカーボンブラックは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記カーボンブラックとしては、ゴム組成物の導電性を向上させ、抵抗値を下げる観点から、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)が大きいものが好ましい(換言すれば、粒径が小さいものが好ましい)。例えば、ゴム組成物の体積抵抗率をある値(例えば、1.0×108Ω・cm)以下とする場合、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)が大きいカーボンブラックを使用することで、カーボンブラックの含有量A(質量部)を低減しても、目的の体積抵抗率を達成することができる。ここで、カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積Bは、カーボンブラックの含有量や、後述するカーボンナノチューブの含有量に応じて、適宜調整することが好ましいが、一実施態様においては、20m2/g以上が好ましく、30m2/g以上が更に好ましく、また、200m2/g以下が好ましい。カーボンブラックのCTAB吸着比表面積が20m2/g以上であれば、ゴム組成物の導電性が向上し、また、200m2/g以下であれば、ゴム組成物の混練における作業性が良好である。
【0030】
前記カーボンブラックの含有量は、カーボンブラック自体のCTAB吸着比表面積B(m2/g)や、後述するカーボンナノチューブの含有量に応じて、適宜調整することが好ましいが、一実施態様においては、ゴム成分100質量部に対して、5~100質量部の範囲が好ましく、10~50質量部の範囲が更に好ましい。カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して5質量部以上であれば、ゴム組成物の導電性が向上し、また、100質量部以下であれば、ゴム組成物の混練における作業性が良好であり、また、ゴム組成物の硬度の上昇を抑制できる。
【0031】
(カーボンナノチューブ)
前記カーボンナノチューブ(CNT)は、直径数nm~数十nm程度の炭素原子からなる構造体であり、極微細なチューブ状構造を有する。
前記カーボンナノチューブは、単層ナノチューブでも、多層ナノチューブでもよい。
前記カーボンナノチューブとしては、長さが0.1μm~30μmのものが好ましく、0.1μm~10μmのものがより好ましい。
また、前記カーボンナノチューブとしては、直径が10nm~300nmのものが好ましく、100nm~250nmのものがより好ましい。
【0032】
前記カーボンナノチューブは、プラズマCVD(化学気相成長)法、熱CVD法、表面分解法、流動気相合成法、アーク放電法等により合成することができ、市販品を利用することもできる。市販品のカーボンナノチューブとしては、例えば、KUMUHO社製のカーボンナノチューブ、昭和電工社製気相法炭素繊維VGCF(登録商標)、米国マテリアルズテクノロジーズリサーチ(MTR)社製のカーボンナノチューブを用いることができる。
【0033】
前記カーボンナノチューブの含有量は、前記カーボンブラックの含有量A(質量部)や、前記カーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m2/g)に応じて、適宜調整することが好ましいが、一実施態様においては、ゴム成分100質量部に対して、0.1~20質量部の範囲が好ましく、0.5~10質量部の範囲が更に好ましい。カーボンナノチューブの含有量が、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の導電性が向上し、また、20質量部以下であれば、ゴム組成物の混練における作業性が良好となり、また、ゴム組成物の硬度の上昇を抑制でき、更には、ゴム組成物の原料コストを低減できる。
【0034】
(カーボンブラックのCTAB吸着比表面積と含有量の好適関係)
本発明の第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物においては、カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量A(質量部)とカーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)との積(A×B)と、カーボンブラックの体積分率と、が特定の関係を満たすことで、変形量を検出するセンシング部材に特に好適に用いることができる導電性ゴム組成物となる。以下に、これらの好適関係を例示するが、本発明の第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物は、これに限られるものではない。なお、以下の好適関係は、特に限定されるものではないが、ゴム組成物の体積抵抗率(電気抵抗値)を1.0×108Ω・cm以下とする観点から、数多のゴム組成物の、カーボンブラックの含有量A(質量部)とCTAB吸着比表面積B(m2/g)との積(A×B)と、カーボンブラックの体積分率と、の関係から導き出したものである。
【0035】
なお、本明細書において、カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)は、JIS K6217-3に準拠して測定された値であり、カーボンブラックの微細孔を含まない外部表面積を、カーボンブラックにCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)を吸着させたときの比表面積で示したものである。
また、ゴム組成物がカーボンブラックを2種以上含む場合、「カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m2/g)との積(A×B)」とは、各カーボンブラックの含有量A1、A2、・・・(質量部)と各カーボンブラックのCTAB吸着比表面積B1、B2、・・・(m2/g)との積(A1×B1、A2×B2、・・・)の和(A1×B1+A2×B2+・・・)を指す。
また、カーボンブラックの体積分率は、カーボンブラックの含有量と比重から求められるカーボンブラックの体積を、ゴム組成物の総体積で除して求めることができる。なお、本明細書において、カーボンナノチューブは、カーボンブラックとしてはカウントせず、分子としての計算に含まない。
【0036】
本発明の第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物の好適例(1)においては、前記カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量A(質量部)と、前記カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)と、の積(A×B)が、3000以上であり、且つ、前記カーボンブラックの体積分率が、20体積%以上である。この場合、ゴム組成物の体積抵抗率を1.0×108Ω・cm以下とし易い。
【0037】
本発明の第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物の好適例(2)においては、前記カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量A(質量部)と、前記カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)と、の積(A×B)が、1250以上であり、且つ、前記カーボンブラックの体積分率が、20体積%以上である。この場合も、ゴム組成物の体積抵抗率を1.0×108Ω・cm以下とし易い。
【0038】
本発明の第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物の好適例(3)においては、前記カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量A(質量部)と、前記カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)と、の積(A×B)が、900以上であり、且つ、前記カーボンブラックの体積分率が、20体積%以上である。この場合も、ゴム組成物の体積抵抗率を1.0×108Ω・cm以下とし易い。
【0039】
本発明の第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物の好適例(4)においては、前記カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量A(質量部)と、前記カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)と、の積(A×B)が、310以上であり、且つ、前記カーボンブラックの体積分率が、20体積%以上である。この場合も、ゴム組成物の体積抵抗率を1.0×108Ω・cm以下とし易い。
【0040】
<第2実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物>
本発明の第2実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物は、ゴム成分と、カーボンブラックと、を含み、
前記カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量A(質量部)と、前記カーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積B(m2/g)と、の積(A×B)が、3000以上であることを特徴とする。
【0041】
本発明の第2実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物は、カーボンナノチューブを含むことを要さないが、カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m2/g)との積(A×B)が、3000以上であることで(即ち、カーボンブラックの粒度が細かい(表面積が大きい)、或いは、カーボンブラックの含有量が多いことで)、優れた導電性を有し、抵抗値が低く、ゴム組成物の体積抵抗率を1.0×108Ω・cm以下とし易い。そのため、本発明の第2実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物も、変形量を検出するセンシング部材に好適に用いることができる。
【0042】
本発明の第2実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物において、ゴム成分は、上述した第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物のゴム成分と同様であり、好ましいゴム成分も同様である。
【0043】
本発明の第2実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物において、カーボンブラックは、上述した第1実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物のカーボンブラックと同様である。なお、本発明の第2実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物においては、カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m2/g)との積(A×B)が3000以上となるように適宜選択することを要する。
【0044】
<センシング用導電性ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物は、例えば、バンバリーミキサーやロール等を用いて、ゴム成分に、カーボンブラック及びカーボンナノチューブ、或いは、特定の関係を満たすカーボンブラックを特定量配合して混練した後、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0045】
上述した、本発明の第1及び第2実施形態のセンシング用導電性ゴム組成物は、上述した成分の他、導電性ポリマー、軟化剤、ステアリン酸、老化防止剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0046】
<センシング用導電性ゴム組成物の用途>
上述した本発明のセンシング用導電性ゴム組成物は、変位量のセンシング(察知、検知、探知、感知)に用いられ、種々のゴム製品、例えは、タイヤ、ラバーアクチュエータ、防振ゴム、免振ゴム、ゴムクローラ、コンベヤベルト、ゴムホース、各種靴底(ソール)、スポーツ用品等の変形量のセンシングに利用することができる。
【0047】
本発明のセンシング用導電性ゴム組成物を用いた好適態様の変形量検出センサーを
図1に示す。
図1に示す変形量検出センサー1は、センシングゴム部材2と、抵抗値測定装置3と、を具える。抵抗値測定装置3は、センシングゴム部材2の両端部に接続されており、該センシングゴム部材2は、上述した本発明のセンシング用導電性ゴム組成物からなる。該センシングゴム部材2は、上記に例示したゴム製品の一部として、ゴム製品中に組み込まれていてもよいし、上記ゴム製品に別途取り付けられていてもよい。なお、
図1に示すセンシングゴム部材2は、帯状であるが、その形状は特に限定されず、測定対象の形状等に応じて、適宜変更することができる。
【0048】
例えば、タイヤの一部(インナーライナー、トレッドゴム、サイドゴム等)に上述した本発明のセンシング用導電性ゴム組成物からなるセンシングゴム部材を組み込み、抵抗値測定装置により、該センシングゴム部材の抵抗値を測定(モニタリング)することで、タイヤの変形量を測定(モニタリング)することができる。また、タイヤの変形量を測定(モニタリング)することで、路面の状況、タイヤの接地状況、タイヤの摩耗具合等の情報を継続的に得ることができる。
【0049】
前記センシングゴム部材は、上述した本発明のセンシング用導電性ゴム組成物からなり、優れた導電性を有するため、電圧を掛け続けても、消費電力が小さいという利点を有する。また、センシングゴム部材の消費電力が小さいため、小型(ポータブル)の抵抗値測定装置を利用して、簡便に変形量を測定することができる。
【0050】
また、前記センシングゴム部材(センシング用導電性ゴム組成物)は、体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以下であることが好ましく、また、1.0×103Ω・cm以上であることが好ましい。センシングゴム部材の体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以下であれば、消費電力が小さく、また、1.0×103Ω・cm以上であれば、変形量に応じた抵抗値の変化が大きく、測定精度が向上する。
【0051】
従来の一般的な変形量測定センサー、例えば、レーザー発振器と反射部とからなり、2点間の距離を測定するセンサーや、超音波発信機と反射部とからなり、2点間の距離を測定するセンサーは、測定対象がリニアーに変形しないと、2点間の距離を測定することができず、変形量を計測することができない。これに対して、本発明のセンシング用導電性ゴム組成物からなるセンシングゴム部材は、変形の自由度が高いため、複雑な形状に変形することができ、また、該センシングゴム部材は、リニアーに変形しなくても、抵抗値から、変形量を予測することができる利点もある。
【0052】
(タイヤ)
本発明のセンシング用導電性ゴム組成物を用いた好適態様のタイヤを
図2に示す。一好適態様のタイヤ10は、一対のビード部11と、一対のサイドウォール部12と、トレッド部13と、これら各部を補強するカーカス15と、を具え、更に、カーカス15のタイヤ内面側に、センシングゴム部材17を具える。
【0053】
図2に示すタイヤ10は、一対のビード部11と、一対のサイドウォール部12と、トレッド部13と、ビード部11に埋設されたビードコア14間にトロイド状に延在させたカーカス15と、を具え、更に、トレッド部13において、トレッド踏面のタイヤ半径方向内側で、且つ、カーカス15のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置された2枚の補強層16a,16bからなるベルト16と、カーカス15のタイヤ内面側に配置されたセンシングゴム部材17と、を具える。また、センシングゴム部材17の両端部には、抵抗値測定装置18が接続されている。
【0054】
図2に示すタイヤ10において、カーカス15は、1枚のカーカスプライから構成されており、また、ビード部11内に夫々埋設した一対のビードコア14間にトロイド状に延在する本体部と、各ビードコア14の周りでタイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とからなるが、カーカス15のプライ数及び構造は、これに限られるものではない。なお、カーカスとしては、タイヤの耐久性の観点から、ラジアルカーカスが好ましい。ここで、カーカス15を構成するカーカスプライは、複数の補強コードを被覆ゴムで被覆してなり、該補強コードとしては、ポリエチレンテレフタレートコード、ナイロンコード、レーヨンコード等の有機繊維コードの他、スチールコードを用いてもよい。
【0055】
また、
図2に示すタイヤ10のベルト16は、2枚の補強層16a,16bから構成されており、各補強層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層、好ましくは、スチールコードのゴム引き層からなり、更に、2枚の補強層が、該補強層を構成するコードが互いにタイヤ赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト16を構成している。なお、図中のベルト16は、2枚の補強層からなるが、ベルト16を構成する補強層の枚数は、1枚以上であればよく、これに限られるものではない。
【0056】
図2に示すタイヤ10は、カーカス15のタイヤ内面側であって、タイヤの最内面にセンシングゴム部材17を具える。センシングゴム部材17は、通常タイヤの気密性を確保するために設けられるインナーライナーの代替として、設けられていてもよいし(即ち、センシング機能に加えて、空気不透過能を有していてもよいし)、インナーライナーのタイヤ内面側に別途貼付されていてもよい。
ここで、センシングゴム部材17は、上述した本発明のセンシング用導電性ゴム組成物からなる。また、センシングゴム部材17の両端部には、抵抗値測定装置18が接続されており、抵抗値測定装置18により、該センシングゴム部材17の抵抗値を測定(モニタリング)することで、タイヤ10の変形量を測定(モニタリング)することができる。また、タイヤ10の変形量を測定(モニタリング)することで、路面の状況、タイヤの接地状況、タイヤの摩耗具合等の情報を継続的に得ることができる。
【0057】
(ラバーアクチュエータ)
本発明のセンシング用導電性ゴム組成物を用いた好適態様のラバーアクチュエータを
図3に示す。一好適態様のラバーアクチュエータ20は、流体圧によって膨張及び収縮する筒状のチューブ110と、所定方向に配向されたコードを編み込んだ筒状の構造体であって前記チューブ110の外周面を覆うスリーブ120と、によって構成されるアクチュエータ本体部100を具え、チューブ110が、上述した本発明のセンシング用導電性ゴム組成物からなる。
【0058】
図3は、本実施形態に係るラバーアクチュエータ20の側面図である。
図3に示すように、ラバーアクチュエータ20は、アクチュエータ本体部100、封止機構200及び封止機構300を具える。また、ラバーアクチュエータ20の両端には、連結部30がそれぞれ設けられる。また、各連結部30には、抵抗値測定装置40が接続されている。
【0059】
アクチュエータ本体部100は、チューブ110とスリーブ120とによって構成される。アクチュエータ本体部100には、フィッティング400及び通過孔410を介して作動流体が流入する。ここで、ラバーアクチュエータ20は、流体圧で作動し、空気圧式でも、液圧式でもよく、また、作動流体として液体が用いられる場合、該液体としては、油、水等が挙げられる。なお、ラバーアクチュエータが、油圧式の場合、作動流体としては、従来より油圧駆動システムに使用されている作動油を使用することができる。
【0060】
アクチュエータ本体部100は、チューブ110内へ作動流体が流入することによって、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXに収縮し、径方向DRに膨張する。また、アクチュエータ本体部100は、チューブ110から作動流体が流出することによって、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXに膨張し、径方向DRに収縮する。このようなアクチュエータ本体部100の形状変化によって、ラバーアクチュエータ20は、アクチュエータとしての機能を発揮する。
また、このようなラバーアクチュエータ20は、いわゆるマッキベン型であり、人工筋肉用として適用できることは勿論のこと、より高い能力(収縮力)が要求されるロボットの体肢(上肢、下肢等)用としても好適に用い得る。連結部30には、当該体肢を構成する部材等が連結される。なお、本実施形態においては、連結部30に、抵抗値測定装置40が接続されているが、抵抗値測定装置40の接続箇所は、これに限られず、例えば、チューブ110の両端部に直接接続されていてもよい。
【0061】
封止機構200及び封止機構300は、軸方向DAXにおけるアクチュエータ本体部100の両端部を封止する。具体的には、封止機構200は、封止部材210及びかしめ部材230を含む。封止部材210は、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXの端部を封止する。また、かしめ部材230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210と共にかしめる。かしめ部材230の外周面には、治具によってかしめ部材230がかしめられた痕である圧痕231が形成される。
【0062】
封止機構200と封止機構300との相違点は、フィッティング400,500(及び通過孔410,510)の役割が異なる点である。
封止機構200に設けられているフィッティング400は、ラバーアクチュエータ20の駆動圧力源、具体的には、作動流体のコンプレッサと接続されたホース(管路)を取り付けられるように突出している。フィッティング400を介して流入した作動流体は、通過孔410を通過してアクチュエータ本体部100の内部、具体的には、チューブ110の内部に流入する。
一方、封止機構300に設けられているフィッティング500は、ラバーアクチュエータ20に作動流体を注入する際の、ガス抜きとして使用できるように突出している。ラバーアクチュエータ20の作動初期において、作動流体をラバーアクチュエータ20に注入すると、ラバーアクチュエータ内部に元々存在していたガスは、通過孔510を介してフィッティング500から排出される。
【0063】
図4は、ラバーアクチュエータ20の一部分解斜視図である。
図4に示すように、ラバーアクチュエータ20は、アクチュエータ本体部100及び封止機構200を具える。
アクチュエータ本体部100は、前述したように、チューブ110とスリーブ120とによって構成される。
【0064】
チューブ110は、流体圧によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体である。チューブ110は、作動流体による収縮及び膨張を繰り返し、上述した本発明のセンシング用導電性ゴム組成物からなる。
【0065】
スリーブ120は、円筒状であり、チューブ110の外周面を覆う。スリーブ120は、所定方向に配向されたコードを編み込んだ構造体であり、配向されたコードが交差することによって菱形の形状が繰り返されている。スリーブ120は、このような形状を有することによって、パンタグラフ変形し、チューブ110の収縮及び膨張を規制しつつ追従する。
【0066】
図4において、封止機構200は、アクチュエータ本体部100の軸方向D
AXにおける端部を封止する。封止機構200は、封止部材210、係止リング220及びかしめ部材230によって構成される。
【0067】
封止部材210は、胴体部211及び鍔部212を有する。封止部材210としては、ステンレス鋼等の金属を好適に用い得るが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料等を用いてもよい。
【0068】
胴体部211は、円管状であり、胴体部211には、作動流体が通過する通過孔215が形成される。通過孔215は、通過孔410(
図3参照)に連通する。胴体部211には、チューブ110が挿通される。
【0069】
鍔部212は、胴体部211に連なっており、胴体部211よりもアクチュエータ10の軸方向DAXにおける端部側に位置する。鍔部212は、胴体部211よりも径方向DRに沿った外径が大きい。鍔部212は、胴体部211に挿通されたチューブ110及び係止リング220を係止する。
【0070】
胴体部211の外周面には、凹凸部213が形成される。凹凸部213は、胴体部211に挿通されたチューブ110の滑り抑制に寄与する。凹凸部213による凸部分が3つ以上形成されることが好ましい。
また、胴体部211の鍔部212寄りの位置には、胴体部211よりも外径が小さい小径部214が形成される。
【0071】
係止リング220は、スリーブ120を係止する。具体的には、スリーブ120は、係止リング220を介して径方向DR外側に折り返される。
係止リング220の外径は、胴体部211の外径よりも大きい。係止リング220は、胴体部211の小径部214の位置においてスリーブ120を係止する。つまり、係止リング220は、胴体部211の径方向DR外側であって、鍔部212に隣接する位置において、スリーブ120を係止する。
係止リング220は、胴体部211よりも小さい小径部214に係止させるため、本実施形態では、二分割の形状としている。なお、係止リング220は、二分割に限らず、より多くの部分に分割してもよいし、一部の分割部分が回動可能に連結されていてもよい。
係止リング220としては、封止部材210と同様の金属や硬質プラスチック材料等を用いることができる。
【0072】
かしめ部材230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210と共にかしめる。かしめ部材230としては、アルミニウム合金、真鍮及び鉄等の金属を用いることができる。かしめ部材230には、かしめ用の治具によってかしめ部材230がかしめられると、
図3に示したような圧痕231が形成される。
【0073】
上述のように、チューブ110は、作動流体による収縮及び膨張を繰り返し、本発明のセンシング用導電性ゴム組成物からなる。
ここで、アクチュエータ本体部100の収縮率が高くなると、アクチュエータ本体部100(チューブ110)の電気抵抗値が低くなる。これは、アクチュエータ本体部100に流体が流入してアクチュエータ本体部100が軸方向DAXに収縮すると、チューブ110は、スリーブ120によって規制された所定範囲内において径方向DRに膨張する際、チューブ110の厚みが薄くなることにより、チューブ110に含まれるカーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブ間の距離が狭められる。
具体的には、アクチュエータ本体部100が収縮する際、チューブ110は拡張するため、チューブ110の膜厚が薄くなる。この結果、カーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブの膜厚方向における寸法(距離)が狭まり、カーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブが接近することとなる。
即ち、アクチュエータ本体部100の収縮率が高くなり、長さが短くなると、カーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブ間の距離が狭くなるため、チューブ110の導電率が増大、換言すれば、チューブ110の電気抵抗値が低下する。そして、該抵抗値を、各連結部30に接続された抵抗値測定装置40で測定することで、チューブ110の変形量を測定することができる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0075】
<ゴム組成物の作製>
表1~表6に示す配合のゴム組成物を、通常の方法で混練して調製した。なお、第1混練段階は、140℃で行い、第2混練段階は、100℃で行った。得られたゴム組成物に対して、下記の方法で体積抵抗率を測定した。
【0076】
(1)体積抵抗率の測定方法
得られたゴム組成物を155℃で50分間加硫して、サイズ:80mm(幅)×80mm(長さ)×2mm(厚さ)の試験片を作製し、該試験片に対して、アドバンテスト社製R8340A(高抵抗測定装置)を用いて、JIS K6911に従って体積抵抗率を測定した。結果を表1~表6に示す。
また、
図5に、カーボンナノチューブを含む場合における、カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m
2/g)との積(A×B)と、体積抵抗率と、の関係を示し、
図6に、カーボンナノチューブを含まない場合における、カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m
2/g)との積(A×B)と、体積抵抗率と、の関係を示す。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
*1 NR: 天然ゴム
*2 BR: ブタジエンゴム、宇部興産社製、商品名「UBEPOL-BR150L」
*3 カーボンブラック1: 旭カーボン社製、商品名「旭NPG」、CTAB吸着比表面積=31m2/g
*4 カーボンブラック2: 旭カーボン社製、商品名「旭シャープ70L」、CTAB吸着比表面積=71m2/g
*5 カーボンブラック3: 旭カーボン社製、商品名「旭シャープ70K」、CTAB吸着比表面積=70m2/g
*6 カーボンブラック4: 東海カーボン社製、商品名「シースト6」、CTAB吸着比表面積=112m2/g
*7 カーボンブラック5: 東海カーボン社製、商品名「シースト600P」、CTAB吸着比表面積=134m2/g
*8 カーボンナノチューブ: KUMUHO社製、商品名「Durobeads K-Nanos 100P 三菱商事株式会社」
*9 硬化脂肪酸: 新日本理化社製、商品名「ステアリン酸 50S」
*10 亜鉛華: ハクスイテック社製、商品名「酸化亜鉛2種 造粒品」
*11 老化防止剤1: 日本精蝋社製、商品名「オゾエース-0280」
*12 老化防止剤2: 住友化学社製、商品名「アンチゲン6C」
*13 加硫促進剤1: 三新化学工業社製、商品名「サンセラーNS-G」
*14 硫黄: 細井化学工業社製、商品名「HK200-5」
【0084】
*15 ブロモブチルゴム: 日本ブチル株式会社製、商品名「JSR BROMOBUTYL 2222」
*16 プロセスオイル: JXTGエネルギー株式会社製、商品名「スーパーオイル Y22」
*17 加硫促進剤2: 大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーDM-P」
【0085】
表1~表6、並びに、
図5及び
図6から、カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m
2/g)との積(A×B)が大きくなるに従い、抵抗値が小さくなり、センシング部材として好適なゴム組成物が得られることが分かる。
【0086】
特には、カーボンブラックとカーボンナノチューブの両方を含むゴム組成物は、
(1)カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m2/g)との積(A×B)が3000以上であり、且つ、カーボンブラックの体積分率が20体積%以上である場合、
(2)カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m2/g)との積(A×B)が1250以上であり、且つ、カーボンブラックの体積分率が20体積%以上である場合、
(3)カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m2/g)との積(A×B)が900以上であり、且つ、カーボンブラックの体積分率が20体積%以上である場合、
(4)カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m2/g)との積(A×B)が310以上であり、且つ、カーボンブラックの体積分率が20体積%以上である場合、
体積抵抗率が1.0×108(Ω・cm)以下となり、センシング用ゴム組成物として特に好適になることが分かる。
【0087】
また、カーボンブラックを含むものの、カーボンナノチューブを含まないゴム組成物は、
カーボンブラックの含有量A(質量部)とカーボンブラックのCTAB吸着比表面積B(m2/g)との積(A×B)が3000以上である場合、体積抵抗率が1.0×108(Ω・cm)以下となり、センシング用ゴム組成物として特に好適になることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のセンシング用導電性ゴム組成物は、ゴムの抵抗値の変化から、ゴムの変形量を予測するセンサーに利用できる。
【符号の説明】
【0089】
1:変形量検出センサー、 2:センシングゴム部材、 3:抵抗値測定装置、
10:タイヤ、 11:ビード部、 12:サイドウォール部、 13:トレッド部、 14:ビードコア、 15:カーカス、 16:ベルト、 16a,16b:補強層、 17:センシングゴム部材、 18:抵抗値測定装置、
20:ラバーアクチュエータ、 30:連結部、 40: 抵抗値測定装置、100:アクチュエータ本体部、 110:チューブ、 120:スリーブ、 200:封止機構、 210:封止部材、 211:胴体部、 212:鍔部、 213:凹凸部、 214:小径部、 215:通過孔、 220:係止リング、 230:かしめ部材、 231:圧痕、 300:封止機構、 400,500:フィッティング、 410,510:通過孔、 DAX:軸方向、 DR:径方向