(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】搬送ヘッド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B25J15/08 A
(21)【出願番号】P 2020154644
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000138473
【氏名又は名称】株式会社ユーシン精機
(74)【代理人】
【識別番号】100167807
【氏名又は名称】笠松 信夫
(72)【発明者】
【氏名】白崎 篤司
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-005731(JP,A)
【文献】特開2020-032497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送する搬送装置において搬送対象のワークを着脱可能に保持する搬送ヘッドであって、
搬送時にワークを保持する保持部と、
前記保持部に保持されたワークの鉛直下方に進退可能に配置され、前記ワークの落下を防止する落下防止部材と、
前記落下防止部材を、前記保持部に保持されたワークの落下を防止する落下防止位置と、前記保持部へのワークの着脱を阻害することのない待避位置とにわたって移動させる駆動機構と、
前記駆動機構の駆動源により駆動されるとともに、前記駆動機構による前記落下防止部材の移動に伴って移動し、前記落下防止部材が前記落下防止位置に配置された状態で、前記搬送ヘッドに設けられた被係止部と当接することにより
、前記落下防止部材への荷重付与に起因する、前記落下防止部材の鉛直下方への移動を規制する係止部と、
を備える搬送ヘッド。
【請求項2】
前記駆動機構は駆動部としてシリンダを備える、請求項1記載の搬送ヘッド。
【請求項3】
前記係止部は前記駆動機構による駆動により前記落下防止部材と同一方向に進退する、請求項1又は請求項2記載の搬送ヘッド。
【請求項4】
前記係止部は、一端が前記落下防止部材に固定された棒状部材の先端により構成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の搬送ヘッド。
【請求項5】
前記被係止部は、前記係止部が篏合する凹部により構成される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の搬送ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を把持して搬送する搬送装置に適用される搬送ヘッドに関し、特に、把持されるワークの落下防止機能を有する搬送ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場の製造ラインや自動倉庫等において、製造装置等によって加工されたワーク(搬送対象物)やコンベア装置等によって搬送されるワークを他の場所へ移動する搬送装置が多用されている。このような搬送装置は、例えば、多関節ロボットや直角座標型ロボットを備え、当該ロボットのアームや昇降ユニットに設けられた搬送ヘッドによりワークを把持する。搬送ヘッドは、例えば、対向面の挟持や上面の吸着等の手法によりワークを把持する。
【0003】
搬送ヘッドの挟持不良や吸着不良に起因して搬送ヘッドからワークが離脱して落下するとワークが破損する可能性がある。また、パレタイジング用の搬送装置では、落下により所望の配置状態とは異なる状態でワークが配置されることになり、搬送装置を停止させて落下したワークを所望の配置状態に再配置する等の作業が必要になる。
【0004】
このような不具合を回避するため、落下防止機能を備える搬送ヘッドが提案されている(例えば、特許文献1、2)。このような搬送ヘッドでは、爪やピン等の可動式の落下防止部材を搬送中のワーク下方に配置することで、搬送ヘッドの把持不良によるワークの落下を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭58-160789号公報
【文献】特開2007-301939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献が開示するような、ワーク下方に落下防止部材を配置する構成では、把持不良により落下防止部材にワークの荷重が作用した際に、当該荷重が落下防止部材の基端側に伝搬して外力が作用することになる。例えば、落下防止部材をサーボモータやエアシリンダ等の駆動用アクチュエータにより直接的に進退させる構成では、進退方向と異なる方向に付与される外力により、駆動用アクチュエータの寿命低下や破損を生じる可能性がある。また、特許文献1、2が開示するような、落下防止部材の進退方向と直交する軸心周りの回動を利用してワーク下方に落下防止部材を配置する構成でも同様に、当該軸心等の回動部分に外力が作用するため、寿命低下や破損を生じる可能性がある。
【0007】
このような課題は、例えば、上述の外力に耐え得る、高剛性で耐久性の高い材質を上記軸心等の落下防止機能を奏する部材に使用したり、上述の外力に耐え得る出力を有する駆動用アクチュエータを採用したりすることで解決可能であるようにも思える。しかしながら、このような手法による対策では、搬送ヘッドの製造コストが高くなる上、搬送ヘッド自体の重量やサイズが大きくなる。すなわち、搬送ヘッドが備えるロボットの最大可搬重量を増大させなければ、搬送ヘッドで搬送可能なワーク重量が低下するという結果となり、ワークの重量が大きい場合には特に問題となる。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、落下防止機能を実現する落下防止機構の寿命低下や破損を、重量増大や高コスト化を生じることなく回避することができる搬送ヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。まず、本発明は、ワークを搬送する搬送装置において搬送対象のワークを着脱可能に保持する搬送ヘッドを前提としている。そして、本発明に係る搬送ヘッドは、保持部、落下防止部材、駆動機構、及び係止部を備える。保持部は搬送時にワークを保持する。落下防止部材は、保持部に保持されたワークの鉛直下方に進退可能に配置され、ワークの落下を防止する。駆動機構は、落下防止部材を、保持部に保持されたワークの落下を防止する落下防止位置と、保持部へのワークの着脱を阻害することのない待避位置とにわたって移動させる。係止部は、前記駆動機構の駆動源により駆動されるとともに、駆動機構による落下防止部材の移動に伴って移動し、落下防止部材が落下防止位置に配置された状態で、搬送ヘッドに設けられた被係止部と当接することにより、前記落下防止部材への荷重付与に起因する、落下防止部材の鉛直下方への移動を規制する。
【0010】
この搬送ヘッドでは、駆動機構により落下防止部材が上述の落下防止位置に配置される際に、搬送ヘッドに設けられた被係止部と対向する位置に係止部が配置される。そして、落下防止部材にワークの荷重が作用した場合には係止部が被係止部と当接することで落下防止部材の鉛直方向への移動が規制される。すなわち、落下防止部材に作用したワークの荷重に起因する外力が当該当接部分において支持されるため、当該外力が駆動機構に作用することを避けることができる。したがって、駆動機構に高剛性で耐久性の高い材質を採用したり、駆動機構の駆動源として高出力の駆動部を採用したりする必要がない。その結果、駆動機構の寿命低下や破損を、重量増大や高コスト化を生じることなく回避することができる。
【0011】
この搬送ヘッドにおいて、駆動機構が、駆動部としてシリンダを備える構成を採用することができる。この構成では、高出力のシリンダを採用する必要がないため、小型で軽量の搬送ヘッドを実現することができる。
【0012】
また、以上の搬送ヘッドにおいて、係止部は駆動機構による駆動により落下防止部材と同一方向に進退する構成を採用することができる。この構成では、駆動機構を比較的単純な構成で実現することができ、搬送ヘッドの製造が容易になる。
【0013】
また、以上の搬送ヘッドにおいて、係止部は、例えば、一端が落下防止部材に固定された棒状部材の先端により構成することができる。また、被係止部は、例えば、係止部が篏合する凹部により構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワークを搬送する搬送装置に適用される、搬送対象のワークを着脱可能に保持する搬送ヘッドにおいて、落下防止機構の寿命低下や破損を、重量増大や高コスト化を生じることなく回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る搬送ヘッドの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る搬送ヘッドの一例を模式的に示す正面図である。
【
図3】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る搬送ヘッドが備える可動プレートの先端近傍を示す拡大正面図である。
【
図4】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る搬送ヘッドが備える係止部と被係止部を模式的に示す拡大縦断面図である。
【
図5】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る搬送ヘッドの他の例を模式的に示す拡大縦断面図である。
【
図6】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る搬送ヘッドの他の例を模式的に示す拡大縦断面図である。
【
図7】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る搬送ヘッドの他の例を模式的に示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。以下では、直方体状の箱体であるワークの対向する側面を挟持することによりワークを保持する搬送ヘッドとして本発明を具体化する。なお、本発明に係る搬送ヘッドは、搬送対象のワークを着脱可能に保持する搬送ヘッドとして機能可能であれば任意の態様に適用可能である。例えば、従来の搬送ヘッドと同様に、搬送装置が備える、多関節ロボットのアームの先端や、直交座標型ロボットの昇降ユニットの先端等に装着して使用することができる。特に限定されないが、本実施形態の搬送ヘッドは、コンベア装置の終端部まで搬送されたワークをパレット上に整列配置するパレタイジング用搬送装置に適用される。
【0017】
図1は、本実施形態に係る搬送ヘッド100を模式的に示す斜視図である。また、
図2は、本実施形態に係る搬送ヘッド100を模式的に示す正面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る搬送ヘッド100は、ベース11、固定プレート12、可動プレート13を備える。ベース11、固定プレート12、可動プレート13により、搬送時にワークWを保持する保持部10が構成される。
【0018】
図1及び
図2に示すように、ベース11は長方形状の金属製の板状部材により構成される。また、固定プレート12は、ベース11の長手方向の一端に固定される。なお、以下では、便宜上、ベース11の長手方向に沿う方向を「長手方向」と呼称し、ベース11の短手方向に沿う方向を「短手方向」と呼称する。また、以下では、便宜上、
図2における図中の上方向を「上」と呼称し、
図2における図中の下方向を「下」と呼称する。すなわち、ベース11において、固定プレート12が配置されている側の面は下面であり、当該面と反対側の面は上面である。
【0019】
固定プレート12は金属製の板状部材により構成され、ベース11の下面側にベース11と直交する状態で配置される。固定プレート12の先端側(下方側)の短手方向幅は、搬送対象のワークWの短手方向幅に対応して設定される。特に限定されないが、本実施形態では、固定プレート12の基端側の短手方向幅はベース11の短手方向幅に一致しており、固定プレート12の先端側の短手方向幅は、基端側の幅より大きく、搬送対象のワークWの短手方向の幅よりも大きな幅に設定されている。
【0020】
可動プレート13は金属製の板状部材により構成され、ベース11の下面側にベース11と直交する状態、かつ固定プレート12と対向する状態で配置される。可動プレート13は、長手方向に沿って移動できる状態で配置される。可動プレート13を長手方向に沿って移動させる機構には公知の任意の構成を使用することができる。本実施形態では、ベース11の上面の短手方向両端に2本のガイドレール14が長手方向に沿って平行に配置されており、可動プレート13は当該2本のガイドレール14に案内される。本実施形態では、可動プレート13のベース11側端部において、2本のガイドレール14のそれぞれに対応する位置にガイドレール14の断面形状に整合する被ガイド部15が設けられている。当該被ガイド部15が、対応するガイドレール14と篏合する状態で配置されることで、長手方向に沿って移動可能な状態で可動プレート13がベース11に支持されている。
【0021】
固定プレート12と同様に、可動プレート13の先端側(下方側)の短手方向幅は、搬送対象のワークWの短手方向幅に対応して設定される。特に限定されないが、本実施形態では、可動プレート12の基端側(上方側)の短手方向幅は可動プレート13の先端側の短手方向幅と同一である。
【0022】
図2に示すように、ベース11下面の短手方向の中央部にはプレート駆動用エアシリンダ16が固定されている。プレート駆動用エアシリンダ16のピストンロッド17は、可動プレート13と対向する状態で配置され、長手方向に沿って進退する。ピストンロッド17の先端はフローチングジョイント18を介して可動プレート13と連結されている。
【0023】
本構成によれば、プレート駆動用エアシリンダ16が伸長状態(すなわち、ピストンロッド17が進出した状態)にある場合、可動プレート13と固定プレート12との間隔が最大となる開状態となる。また、プレート駆動用エアシリンダ16が短縮状態(すなわち、ピストンロッド17が退入した状態)にある場合、可動プレート13と固定プレート12との間隔が最小となる閉状態となる。なお、上記ガイドレール14の長手方向の長さは、少なくとも、閉状態に対応する位置から開状態に対応する位置まで可動プレート13を移動できる長さがあればよい。
【0024】
搬送ヘッド100が搬送対象のワークWを保持する場合、まず、開状態にある固定プレート12と可動プレート13が、搬送対象のワークWの対向する2つの側面のそれぞれに対向する状態で配置される。当該状態で、プレート駆動用エアシリンダ16を伸長状態から短縮状態に切り替えると、ワークWが固定プレート12と可動プレート13との間に挟持される。また、搬送ヘッド100が搬送対象のワークWを解放する場合、プレート駆動用エアシリンダ16を短縮状態から伸長状態に切り替えると、ワークWが固定プレート12と可動プレート13との間から解放される。特に限定されないが、本実施形態では、搬送対象のワークWと対向する固定プレート12の面(内側面)及び搬送対象のワークWと対向する可動プレート13の面(内側面)に、滑り止めとして機能する樹脂製のパッド12a、13aが固定されている。
【0025】
なお、搬送ヘッド100は、ベース11上面の中央部に設けられる、図示しない接続部材を介して、ベース11に直交する軸心周りに回動可能な状態で、上述の多関節ロボットのアームの先端や直交座標型ロボットの昇降ユニットの先端等に装着される。パレタイジング動作時に、先に配置されているワークWの隣に新たにワークWを搬送配置する場合、先に配置されたワークWと固定プレート12とが隣り合う状態で配置され、新たなワークWが搬送ヘッド100から解放される。固定プレート12の外側面(内側面と反対側の面)には凸部等が存在しないため、このような搬送配置手順によりパレタイジングを行うと、固定プレート12及びパッド12aの厚さ分を隣り合うワークW間の隙間として、ワークWを適切に搬送配置することができる。
【0026】
次いで、搬送ヘッド100が備える落下防止機構20について説明する。落下防止機構20は、落下防止部材駆動用エアシリンダ21及び落下防止部材24により構成されている。
図2に示すように、落下防止部材駆動用エアシリンダ21は、可動プレート13の先端側の外側面(内側面と反対側の面)に設けられた直方体状の支持部材23を介して、可動プレート13に固定されている。落下防止部材駆動用エアシリンダ21のピストンロッド22は、可動プレート13と対向する状態で配置され、長手方向に沿って進退する。当該ピストンロッド22の先端に落下防止部材24が固定されている。
【0027】
図1及び
図2に示すように、落下防止部材24は、可動プレート13と平行に配置される板状部材24aと当該板状部材24aの一端から長手方向に沿って延出された複数の爪24bとを備える。特に限定されないが本実施形態では、爪24bの数は2個であり、板
状部材24aの短手方向の両端に配置されている。当該2個の爪24bの中間点の板状部材24aにピストンロッド22が連結されている。
図2に示すように、落下防止部材24は、爪24bが可動プレート13の下方に位置する状態でピストンロッド22に連結されている。なお、爪24bの短手方向の間隔は、搬送対象のワークWの短手方向幅よりも狭く設計される。また、支持部材23や落下防止部材24の材質には、ステンレス等の金属を使用することができる。
【0028】
落下防止部材24は、落下防止部材駆動用エアシリンダ21の駆動によって、ワークWの着脱を阻害することのない待避位置と、固定プレート12と可動プレート13との間に挟持されたワークWの落下を防止する落下防止位置とにわたって移動する。
図3(a)は、落下防止部材24が待避位置にある場合の可動プレート13の先端近傍を拡大して示す正面図である。また、
図3(b)は、落下防止部材24が落下防止位置にある場合の可動プレート13の先端近傍を拡大して示す正面図である。
【0029】
図3(a)に示すように、落下防止部材駆動用エアシリンダ21が短縮状態にある場合、待避位置に配置された落下防止部材24の爪24bの先端は、パッド13aとワークWとの当接面よりも固定プレート12側に突出することのない状態に配置される。一方、
図3(b)に示すように、落下防止部材駆動用エアシリンダ21が伸長状態にある場合、落下防止位置に配置された落下防止部材24の爪24bの先端は、パッド13aとワークWとの当接面よりも固定プレート12側に突出する状態に配置される。
【0030】
本構成では、落下防止部材24が待避位置にある状態で搬送対象のワークWが固定プレート12と可動プレート13との間に挟持されると、落下防止部材駆動用エアシリンダ21の駆動により落下防止部材24が落下防止位置まで移動する。当該状態で予め指定された位置へのワークWの搬送が完了すると、落下防止部材駆動用エアシリンダ21の駆動により落下防止部材24が待避位置まで移動する。当該状態で可動プレート13が開位置まで移動するとワークWが保持部から解放される。そして、落下防止部材24が落下防止位置にある状態で把持不良等に起因してワークWが落下すると爪24bに鉛直方向下向きの荷重が作用することになる。
【0031】
本実施形態の搬送ヘッド100の落下防止機構20は、以上の構成に加えて、
図1及び
図2に示すように、棒状部材25と凹部26とを備える。棒状部材25は、可動プレート13側に向けて突出する状態で板状部材24aに設けられている。また、凹部26は、可動プレート13において棒状部材25と対向する位置に設けられている。凹部26は、棒状部材25の先端の断面形状に整合する開口形状を有している。
【0032】
落下防止部材24が待避位置に配置されている場合、棒状部材25の先端25aは凹部26に進入することなく凹部26の外方に位置する。一方、落下防止部材24が落下防止位置に配置されている場合、棒状部材25の先端25aは凹部26に進入する。
【0033】
なお、特に限定されないが、本実施形態では、棒状部材25は円柱部材により構成されている。そのため、凹部26の開口端は棒状部材25の先端25aの断面形状に整合する円形に構成されている。本実施形態では、2個の棒状部材25が、ピストンロッド22の軸心が属する平面内に各棒状部材25の軸心が配置される状態で短手方向に並べて配置されている。特に限定されないが、棒状部材25の短手方向の間隔は、爪24bの短手方向の間隔よりも狭くなっている。また、2つの棒状部材25の短手方向の中間位置にピストンロッド22と板状部材24aとの接続位置が位置する状態に、各棒状部材25が配置されている。
【0034】
続いて、搬送ヘッド100が備える落下防止機構20の動作について説明する。
図4(
a)は、落下防止部材24が待避位置にある場合の棒状部材25の先端部分25aと凹部26を模式的に示す拡大縦断面図である。また、
図4(b)は、落下防止部材24が落下防止位置にある場合の棒状部材25の先端部分25aと凹部26を模式的に示す拡大縦断面図である。なお、
図4(a)及び
図4(b)は、
図2において図中の手前側に位置する凹部26の短手方向の中央位置における縦断面図である。
【0035】
図4(a)に示すように、落下防止部材24が待避位置に配置されている場合、棒状部材25の先端25aは凹部26に進入することなく凹部26の外方に位置している。
図4(b)に示すように、落下防止部材駆動用エアシリンダ21が伸長状態になると、落下防止部材24が待避位置から落下防止位置に移動するとともに、棒状部材25の先端部分25aが凹部26に進入する。当該状態で、把持不良等に起因してワークWが落下すると爪24bに鉛直方向下向きの荷重が作用する。このとき、以上の構成を有する搬送ヘッド100では、凹部26に進入している棒状部材25の先端部分25aに鉛直方向下向きの外力が作用する。当該外力により、棒状部材25の先端部分25aの鉛直方向下側に位置する面25bが、当該面25bと対向する凹部26の内側面26aに当接する。すなわち、棒状部材25の先端部分25aにより構成される係止部が、凹部26として構成される被係止部に係止され、棒状部材25の鉛直下方への移動が規制される。その結果、落下防止部材24の鉛直下方への移動が規制される。すなわち、爪24bに作用した荷重は、棒状部材25の先端部分25aを介して凹部26に支持される。この場合、落下防止部材24に作用したワークWの荷重に起因する外力はピストンロッド22にほとんど作用しない。
【0036】
例えば、ワークWの重量が数十kgである場合、上述の棒状部材25及び凹部26を備えない搬送ヘッドでは、把持不良等によりワークWが落下した際に、落下防止部材により搬送ヘッドからのワークWの離脱を防止するためには、落下防止部材や落下防止部材駆動用エアシリンダのピストンロッドが当該数十kgの荷重に十分に対抗し得る剛性や耐久性を有するとともに、落下防止部材駆動用エアシリンダが当該数十kgの荷重に十分に対抗し得る出力を有している必要がある。しかしながら、このような構成を実現しようとすると、原材料のコストが増大するとともに、エアシリンダの大型化等に起因して、落下防止部材駆動用エアシリンダを含む可動プレートの重量や、搬送ヘッドの重量が増大してしまう。また、可動プレートの重量化によりワークWを挟持する際の動作速度が低下し、作業スループットも低下してしまう。
【0037】
一方、本実施形態の構成によれば、落下防止部材24にワークWの荷重が作用した場合でも、当該荷重に対抗するために、少なくとも、落下防止部材駆動用エアシリンダ21のピストンロッド22に高剛性で耐久性の高い材質を採用する必要はなく、また、落下防止部材駆動用エアシリンダ21として落下防止部材24の進退に必要最小限の出力のエアシリンダを使用することができる。その結果、落下防止機構20の寿命低下や破損を、重量増大や高コスト化を生じることなく回避することができる。また、プレート駆動用エアシリンダ16や落下防止部材駆動用エアシリンダ21として小型で軽量のエアシリンダを使用できる結果、小型で軽量の搬送ヘッドを実現することができる。
【0038】
なお、以上の説明では、棒状部材25を専用の部材として板状部材24aに設ける構成としたが、可動プレート13と対向する板状部材24aの面に、例えば、部材固定用のねじの頭部等、突出部分が露出している場合は、当該突出部分を棒状部材25として利用することも可能である。
【0039】
続いて、
図5から
図7に基づいて、本発明に係る搬送ヘッドの他の例について説明する。なお、
図5(a)、
図6(a)及び
図7(a)は、
図4(a)と同様に、落下防止部材24が待避位置にある状態を模式的に示す拡大断面図である。また、
図5(b)、
図6(b)及び
図7(b)は、
図4(b)と同様に、落下防止部材24が落下防止位置にある状
態を模式的に示す拡大断面図である。
図5から
図7は、
図4と同様に、特定の被係止部の短手方向の中央位置における縦断面図である。また、
図5から
図7において、
図4を用いて説明した構成と同一の要素には同一の符号を付している。
【0040】
上述の実施形態では、例示として、被係止部である凹部26を可動プレート13の外側面に配置し、当該凹部26に整合する棒状部材25を板状部材24aに配置した構成について説明したが、被係止部は他の位置に設けてもよく、また、凹部以外で構成してもよい。例えば、
図5に示すように、ベース11の上面11aを被係止部として使用することも可能である。本構成では短尺部31aと長尺部31bをL字状に連接した棒状部材31を、ピストンロッド22に連結した他の板状部材32に固定している。当該棒状部材31の長尺部31bは上下方向に沿って配置され、短尺部31aが長手方向に沿って配置される。長尺部31bの長さは、短尺部31aの下面31dがベース11の上方に位置し、かつ短尺部31aの下面31dとベース11の上面11aとの間隔が予め設定された間隔(数mm程度)となる長さに設定される。また、短尺部31aの長さは、ワークWが固定プレート12と可動プレート13との間に挟持され、かつ、落下防止部材24が落下防止位置に配置された状態で短尺部31aの先端部分31cがベース11の上面11aの上方に位置する長さに設定される。なお、特に限定されないが、短手方向における棒状部材31の配置位置は、例えば、
図1に示す凹部26と同じ位置(すなわち、2箇所)を採用することができる。
【0041】
この構成では、
図5(a)に示すように、落下防止部材24が待避位置に配置されている場合、短尺部31aの先端部分31cはベース11の上方に進入することなく外方に位置している。
図5(b)に示すように、落下防止部材駆動用エアシリンダ21が伸長状態になると、落下防止部材24が待避位置から落下防止位置に移動するとともに、短尺部31aの先端部分31cがベース11の上方に進入する。当該状態で、把持不良等に起因してワークWが落下すると爪24bに鉛直方向下向きの荷重が作用する。このとき、以上の構成を有する搬送ヘッド200では、ベース11の上方に進入している短尺部31aの先端部分31cに鉛直方向下向きの外力が作用する。当該外力により、短尺部31aの先端部分31cの鉛直方向下側に位置する面31dが、当該面31dと対向するベース11の上面11aに当接する。すなわち、短尺部31aの先端部分31cにより構成される係止部が、ベース11の上面11aで構成される被係止部に係止され、短尺部31aの鉛直下方への移動が規制される。その結果、落下防止部材24の鉛直下方への移動が規制される。すなわち、爪24bに作用した荷重は、短尺部31aの先端部分31cを介してベース11の上面11aに支持される。この場合、落下防止部材24に作用したワークWの荷重に起因する外力はピストンロッド22にほとんど作用しない。
【0042】
したがって、本構成であっても、落下防止部材24にワークWの荷重が作用した場合でも、当該荷重に対抗するために、少なくとも、落下防止部材駆動用エアシリンダ21のピストンロッド22に高剛性で耐久性の高い材質を採用する必要はなく、また、落下防止部材駆動用エアシリンダ21として落下防止部材24の進退に必要最小限の出力のエアシリンダを使用することができる。その結果、落下防止機構30の寿命低下や破損を、重量増大や高コスト化を生じることなく回避することができる。
【0043】
また、例えば、
図6に示すように、可動プレート13に設けた貫通孔41を被係止部として使用することも可能である。本構成では、可動プレート13の先端が
図4で説明した構成よりも下方に延長され、当該延長された可動プレート13に貫通孔41が設けられている。また、当該貫通孔41と対向する位置に爪24bが配置され、爪24bの基端部と板状部材24aとが円柱状の棒状部材42により連結されている。特に限定されないが、貫通孔41の断面形状は、棒状部材42の断面形状に整合する形状になっており、かつ、爪24bが通過可能な形状になっている。また、特に限定されないが、短手方向における
貫通孔41の配置位置は、例えば、
図1に示す爪24bと同じ位置(すなわち、2箇所)を採用することができる。
【0044】
この構成では、
図6(a)に示すように、落下防止部材24が待避位置に配置されている場合、落下防止部材24の爪24bの先端は、パッド13aとワークWとの当接面よりも固定プレート12側に突出することのない状態に配置される。
図6(b)に示すように、落下防止部材駆動用エアシリンダ21が伸長状態になると、爪24bが貫通孔41を通過して落下防止位置に移動する。この場合、棒状部材42が貫通孔41内に進入する。当該状態で、把持不良等に起因してワークWが落下すると爪24bに鉛直方向下向きの荷重が作用する。このとき、以上の構成を有する搬送ヘッド300では、貫通孔41内に進入している棒状部材42に鉛直方向下向きの外力が作用する。当該外力により、棒状部材42の鉛直方向下側に位置する面42aが、当該面42aと対向する貫通孔41の内側面41aに当接する。すなわち、棒状部材42により構成される係止部が、貫通孔41で構成される被係止部に係止され、棒状部材42の鉛直下方への移動が規制される。その結果、落下防止部材24の鉛直下方への移動が規制される。すなわち、爪24bに作用した荷重は、棒状部材42を介して貫通孔41の内側面41aに支持される。この場合、落下防止部材24に作用したワークWの荷重に起因する外力はピストンロッド22にほとんど作用しない。
【0045】
したがって、本構成であっても、落下防止部材24にワークWの荷重が作用した場合でも、当該荷重に対抗するために、少なくとも、落下防止部材駆動用エアシリンダ21のピストンロッド22に高剛性で耐久性の高い材質を採用する必要はなく、また、落下防止部材駆動用エアシリンダ21として落下防止部材24の進退に必要最小限の出力のエアシリンダを使用することができる。その結果、落下防止機構40の寿命低下や破損を、重量増大や高コスト化を生じることなく回避することができる。
【0046】
さらに、上述の実施形態では、例示として、落下防止部材駆動用エアシリンダ21を可動プレート13の外側面に配置した構成について説明したが、落下防止部材駆動用エアシリンダ21は他の位置に設けてもよい。例えば、
図7に示すように、ベース11に落下防止部材駆動用エアシリンダ21を固定することも可能である。本構成では、
図4に示した可動プレート13に固定され、長手方向に配置された直方体状の支持部材23に代えて、ベース11の上面11a(ガイドレール14の間)に固定され、上下方向に配置された直方体状の支持部材51を使用している。当該支持部材51以外の構成は、
図4において説明した搬送ヘッドの構成と同一である。
【0047】
すなわち、
図7(a)に示すように、落下防止部材24が待避位置に配置されている場合、棒状部材25の先端25aは凹部26に進入することなく凹部26の外方に位置している。
図7(b)に示すように、落下防止部材駆動用エアシリンダ21が伸長状態になると、落下防止部材24が待避位置から落下防止位置に移動するとともに、棒状部材25の先端部分25aが凹部26に進入する。当該状態で、把持不良等に起因してワークWが落下すると爪24bに鉛直方向下向きの荷重が作用する。このとき、以上の構成を有する搬送ヘッド400では、凹部26に進入している棒状部材25の先端部分25aに鉛直方向下向きの外力が作用する。このとき、当該外力により、棒状部材25の先端部分25aの鉛直方向下側に位置する面25bが、当該面25bと対向する凹部26の内側面26aに当接する。すなわち、棒状部材25の先端部分25aにより構成される係止部が、凹部26として構成される被係止部に係止され、棒状部材25の鉛直下方への移動が規制される。その結果、落下防止部材24の鉛直下方への移動が規制される。すなわち、爪24bに作用した荷重は、棒状部材25の先端部分25aを介して凹部26に支持される。この場合、落下防止部材24に作用したワークWの荷重に起因する外力はピストンロッド22にほとんど作用しない。
【0048】
したがって、本構成であっても、落下防止部材24にワークWの荷重が作用した場合でも、当該荷重に対抗するために、少なくとも、落下防止部材駆動用エアシリンダ21のピストンロッド22に高剛性で耐久性の高い材質を採用する必要はなく、また、落下防止部材駆動用エアシリンダ21として落下防止部材24の進退に必要最小限の出力のエアシリンダを使用することができる。その結果、落下防止機構50の寿命低下や破損を、重量増大や高コスト化を生じることなく回避することができる。加えて、落下防止部材駆動用エアシリンダ21をベース11に支持させる構成であるため
図4で説明した構成と比べて、可動プレート13を軽量化することができる、その結果、ワークWを挟持する際の動作速度が向上し、作業スループットを向上させることができる。
【0049】
以上説明したように、本発明によれば、ワークを搬送する搬送装置に適用される、搬送対象のワークを着脱可能に保持する搬送ヘッドにおいて、落下防止機構の寿命低下や破損を、重量増大や高コスト化を生じることなく回避することができる。
【0050】
なお、上述の実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上述の実施形態では、固定プレート12と可動プレート13との間にワークWを保持する構成としたが、真空吸着等他の手法で搬送対象のワークを保持する構成であっても、本発明を適用することは可能である。
【0051】
また、上述の実施形態では、パレタイジング用途の搬送ヘッドに特に好ましい形態として、可動プレート13に駆動源であるエアシリンダを設ける構成としたが、固定プレート12側にエアシリンダ等の駆動源を固定する構成を排除するものではない。また、駆動源にエアシリンダを使用することは必須ではなくサーボモータ等他の駆動源を使用することも可能である。さらに、固定プレート12や可動プレート13をはじめとする上述した各要素の物理的な形状や材質も、本発明の効果を奏する範囲内で任意に変更することができる。
【0052】
加えて、上記実施形態では、比較的単純な構成とするため、係止部が駆動機構である落下防止部材駆動用エアシリンダ21の駆動方向と同一方向に進退する構成を採用したが、リンク機構を介在させることにより、係止部が駆動機構の駆動方向と異なる方向に進退する構成を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、落下防止機能を実現する落下防止機構の寿命低下や破損を、重量増大や高コスト化を生じることなく回避することができ、搬送装置の搬送ヘッドとして有用である。
【符号の説明】
【0054】
100、200、300、400 搬送ヘッド
10 保持部
11 ベース
11a ベース上面
12 固定プレート
13 可動プレート
20、30、40、50 落下防止機構
21 落下防止部材駆動用エアシリンダ(駆動機構)
24 落下防止部材
25 棒状部材
25a 棒状部材の先端部分(係止部)
26 凹部(被係止部)
31 棒状部材
31c 短尺部の先端部分(係止部)
41 貫通孔(被係止部)
42 棒状部材(係止部)
W ワーク