(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】医療用デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3207 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
A61B17/3207
(21)【出願番号】P 2021011682
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】393015324
【氏名又は名称】株式会社グッドマン
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
(72)【発明者】
【氏名】太田 匡彦
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-193300(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0354110(US,A1)
【文献】国際公開第2018/012398(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3207
A61B 17/3205
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位側の端部である第1近位端部と、遠位側の端部である第1遠位端部との間で延びる長尺体と、
近位側の端部である第2近位端部と、遠位側の端部である第2遠位端部との間で延びる線状部材であって、
前記第2近位端部及び前記第2遠位端部のうち一方の端である第2先端部に先端突起部が設けられ、
前記第2近位端部及び前記第2遠位端部のうち他方の端である第2基端部が前記長尺体に保持され、
前記線状部材の前記第2先端部と前記長尺体とが近接した近接状態と、前記第2先端部が前記長尺体から離隔した離隔状態とに切り替え可能である
前記線状部材と、
前記線状部材の前記第2先端部、及び、前記長尺体のうち前記近接状態の前記線状部材の前記第2先端部と近接する部分である近接部との少なくとも一方に、外部力に応じて前記線状部材を前記近接状態と前記離隔状態とに切り替える切替部と、
を備えたことを特徴とする医療用デバイス。
【請求項2】
前記線状部材において、前記第2遠位端部が前記第2先端部に対応し、前記第2近位端部が前記第2基端部に対応し、
前記長尺体において、前記第1遠位端部が前記近接部に対応する
ことを特徴とする請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記線状部材において、前記第2近位端部が前記第2先端部に対応し、前記第2遠位端部が前記第2基端部に対応し、
前記長尺体において、前記第1遠位端部に対して前記第1近位端部側に離隔した位置が前記近接部に対応する
ことを特徴とする請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記線状部材が弾性を有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記線状部材のうち少なくとも前記第2基端部を含む部分が弾性を有することを特徴とする請求項4に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記線状部材が金属により形成されたことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記線状部材が形状記憶合金により形成されたことを特徴とする請求項6に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
前記線状部材が樹脂製であることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項9】
前記線状部材は、硬度が変化する変化部を有することを特徴とする請求項8に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
前記外部力は、外部磁界であり、
前記切替部は、磁力により前記線状部材を前記近接状態と前記離隔状態とに切り替えることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項11】
前記切替部は磁性体により形成されたことを特徴とする請求項10に記載の医療用デバイス。
【請求項12】
前記外部力は、前記切替部に対する通電であり、
前記切替部は、静電気力により前記線状部材を前記近接状態と前記離隔状態とに切り替えることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項13】
前記切替部は導電体又は帯電体により形成されたことを特徴とする請求項12に記載の医療用デバイス。
【請求項14】
近位側の端部である第3近位端部と、遠位側の端部であって前記線状部材の前記第2先端部に接続する第3遠位端部との間で延びる線材を有し、
前記切替部は、
前記線材のうち前記線状部材の前記第2先端部に接続した前記第3遠位端部であり、
前記線状部材は、前記線材の前記第3遠位端部により引っ張られることによって、前記離隔状態から前記近接状態に切り替わることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項15】
前記外部力は、前記第3近位端部に作用する引張力であり、
前記切替部は、前記線材の前記第3近位端部に作用する引張力により前記線状部材を前記近接状態と前記離隔状態とに切り替えることを特徴とする請求項14に記載の医療用デバイス。
【請求項16】
前記長尺体は、
前記線材の一部が挿通される内腔と、
前記内腔に連通し、前記線材が通過する孔と
を備えたことを特徴とする請求項14又は15に記載の医療用デバイス。
【請求項17】
前記線材が金属により形成されたことを特徴とする請求項14から16の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項18】
前記線材が繊維により形成されたことを特徴とする請求項14から16の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項19】
前記先端突起部の形状が錐体であることを特徴とする請求項1から18の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項20】
前記先端突起部の先端部が湾曲したことを特徴とする請求項1から18の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項21】
前記線状部材は、
前記第2先端部から前記第2基端部の間の部分に、複数の稜線突起部を更に備えたことを特徴とする請求項1から20の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項22】
前記複数の稜線突起部の各々の先端部が湾曲したことを特徴とする請求項21に記載の医療用デバイス。
【請求項23】
前記先端突起部は板状を有し、前記第2先端部から前記第2基端部に向けて延びることを特徴とする請求項1から18の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項24】
複数の前記線状部材を備え、
複数の前記線状部材の各々の前記第2基端部は、前記長尺体の周りを囲む周回状に配置されることを特徴とする請求項1から23の何れかに記載の医療用デバイス。
【請求項25】
前記線状部材は、
前記離隔状態から前記近接状態に向けて変形した時に復元力が作用するばねを有することを特徴とする請求項4又は5に記載の医療用デバイス。
【請求項26】
前記ばねのばね係数は、前記第2基端部に近接する程大きいことを特徴とする請求項25に記載の医療用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内において硬化した病変部の拡張や除去を行う為の方法として、病変部に力を加えて破砕したりクラックを形成させたりする方法が知られている。特許文献1は、クラッキングデバイスを開示する。クラッキングデバイスでは、破砕部が収容されたシャフトが病変部まで移動した後、シャフトの先端から破砕部が押し出される。これにより破砕部は露出し、弾性力により拡径する。この状態で、シャフト内の振動発生部により破砕部を振動させることによって、病変部に衝撃を与え、亀裂を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のクラッキングデバイスにおいて、破砕部は、シャフトから押し出される過程で徐々に拡径する。一方、病変部に大きな力を作用させるために、破砕部は、病変部に力を作用させることが可能な形状となるまで速やかに変形することが好ましい。
【0005】
本発明の目的は、破砕部等の部材を、病変に力を作用させることが可能な形状となるまで速やかに変形させることにより、より大きな力を病変部に作用させることが可能な医療用デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る医療用デバイスは、近位側の端部である第1近位端部と、遠位側の端部である第1遠位端部との間で延びる長尺体と、近位側の端部である第2近位端部と、遠位側の端部である第2遠位端部との間で延びる線状部材であって、前記第2近位端部及び前記第2遠位端部のうち一方の端である第2先端部に先端突起部が設けられ、前記第2近位端部及び前記第2遠位端部のうち他方の端である第2基端部が前記長尺体に保持され、前記線状部材の前記第2先端部と前記長尺体とが近接した近接状態と、前記第2先端部が前記長尺体から離隔した離隔状態とに切り替え可能である前記線状部材と、前記線状部材の前記第2先端部、及び、前記長尺体のうち前記近接状態の前記線状部材の前記第2先端部と近接する部分である近接部との少なくとも一方に、外部力に応じて前記線状部材を前記近接状態と前記離隔状態とに切り替える切替部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
医療用デバイスの切替部は、外部力に応じ、線状部材の状態を近接状態と離隔状態とに切り替えることができる。この場合、線状部材の状態を速やかに切り替えることができるので、医療用デバイスは、線状突起部から病変部に作用する力を大きくできる。
【0008】
本発明において、前記線状部材において、前記第2遠位端部が前記第2先端部に対応し、前記第2近位端部が前記第2基端部に対応し、前記長尺体において、前記第1遠位端部が前記近接部に対応してもよい。医療用デバイスは、線状部材の遠位側にて先端突起部から病変部に力を作用させることができる。
【0009】
本発明において、前記線状部材において、前記第2近位端部が前記第2先端部に対応し、前記第2遠位端部が前記第2基端部に対応し、前記長尺体において、前記第1遠位端部に対して前記第1近位端部側に離隔した位置が前記近接部に対応してもよい。この場合、医療用デバイスは、線状部材の近位側にて先端突起部から病変部に力を作用させることができる。
【0010】
本発明において、前記線状部材が弾性を有してもよい。この場合、医療用デバイスは、線状部材の弾性を利用して先端突起部から病変部に力を作用させることができるので、先端突起部から病変部に力を効率的に作用させることができる。
【0011】
本発明において、前記線状部材のうち少なくとも前記第2基端部を含む部分が弾性を有してもよい。この場合、線状部材は、第2基端部における弾性力を利用して第2先端部の先端突起部を病変部に接触させることにより、病変部に強い力を作用させることができる。
【0012】
本発明において、前記線状部材が金属により形成されてもよい。この場合、医療用デバイスは、病変部を粉砕させたりクラックを形成させたりすることが容易に可能となる。
【0013】
本発明において、前記線状部材が形状記憶合金により形成されてもよい。この場合、医療用デバイスは、線状部材の形状を最適化することにより、病変部を粉砕させたりクラックを形成させたりすることが更に容易に可能となる。
【0014】
本発明において、前記線状部材が樹脂製であってもよい。この場合、線状部材の製造を容易化できる。
【0015】
本発明において、前記線状部材は、硬度が変化する変化部を有してもよい。この場合、線状部材は、部分毎に硬度を最適化することにより、部位毎に異なる機能を発揮できる。
【0016】
本発明において、前記外部力は、外部磁界であり、前記切替部は、磁力により前記線状部材を前記近接状態と前記離隔状態とに切り替えてもよい。この場合、医療用デバイスは、外部磁界の状態を制御することにより、磁力によって線状部材を近接状態と離隔状態とに切り替えることができる。
【0017】
本発明において、前記切替部は磁性体により形成されてもよい。この場合、医療用デバイスは、磁力によって線状部材を近接状態と離隔状態とに切り替えることが可能な切替部を、磁性体により実現できる。
【0018】
本発明において、前記外部力は、前記切替部に対する通電であり、前記切替部は、静電気力により前記線状部材を前記近接状態と前記離隔状態とに切り替えてもよい。この場合、医療用デバイスは、切替部に対する通電状態を制御することにより、静電気力によって線状部材を近接状態と離隔状態とに切り替えることができる。
【0019】
本発明において、前記切替部は導電体又は帯電体により形成されてもよい。この場合、医療用デバイスは、静電気力によって線状部材を近接状態と離隔状態とに切り替えることが可能な切替部を、導電体又は帯電体により実現できる。
【0020】
本発明において、近位側の端部である第3近位端部と、遠位側の端部であって前記線状部材の前記第2先端部に接続する第3遠位端部との間で延びる線材を有し、前記切替部は、前記線材のうち前記線状部材の前記第2先端部に接続した前記第3遠位端部であり、前記線状部材は、前記線材の前記第3遠位端部により引っ張られることによって、前記離隔状態から前記近接状態に切り替わってもよい。この場合、線状部材は、線材により引っ張られる場合の力に応じて先端突起部を病変部に接触させ、病変部に力を作用させることができる。
【0021】
本発明において、前記外部力は、前記第3近位端部に作用する引張力であり、前記切替部は、前記線材の前記第3近位端部に作用する引張力により前記線状部材を前記近接状態と前記離隔状態とに切り替えてもよい。この場合、医療用デバイスは、線材の第3近位端部を引っ張る引張力によって、線状部材を近接状態と離隔状態とに切り替えることができる。
【0022】
本発明において、前記長尺体は、前記線材の一部が挿通される内腔と、前記内腔に連通し、前記線材が通過する孔とを備えてもよい。この場合、医療用デバイスは、長尺体によって線材の一部を覆うことができるので、線材が脈管内に引っ掛る可能性を軽減できる。
【0023】
本発明において、前記線材が金属により形成されてもよい。この場合、医療用デバイスは、強度に優れた線材を用いることによって、線材に作用する引張力を線状部材に確実に伝達させ、線状部材の状態を切り替えることができる。
【0024】
本発明において、前記線材が繊維により形成されてもよい。この場合、医療用デバイスは、柔軟性に優れた線材を容易に変形させることができるので、線状部材の状態をスムーズに切り替えることができる。
【0025】
本発明において、前記先端突起部の形状が錐体であってもよい。この場合、医療用デバイスは、錐体の頂点を病変部に作用させることによって、病変部の破砕やクラックの形成を容易に実現できる。
【0026】
本発明において、前記先端突起部の先端部が湾曲してもよい。この場合、医療用デバイスは、湾曲した先端突起部を病変部に作用させることによって、病変部が傷つく可能性を軽減できる。
【0027】
本発明において、前記線状部材は、前記第2先端部から前記第2基端部の間の部分に、複数の稜線突起部を更に備えてもよい。この場合、医療用デバイスは、線状部材の第2先端部だけでなく、第2先端部と第2基端部との間の部分も病変部に接触させ、病変部の破砕やクラック形成を実現できる。
【0028】
本発明において、前記複数の稜線突起部の各々の先端部が湾曲してもよい。この場合、医療用デバイスは、第2先端部と第2基端部との間の部分が病変部に接触した時に、病変が傷つく可能性を軽減できる。
【0029】
本発明において、前記先端突起部は板状を有し、前記第2先端部から前記第2基端部に向けて延びてもよい。この場合、医療用デバイスは、線状部材の第2先端部だけでなく、第2先端部と第2基端部との間の部分も病変部に接触させ、病変部の破砕やクラック形成を実現できる。
【0030】
本発明において、複数の前記線状部材を備え、複数の前記線状部材の各々の前記第2基端部は、前記長尺体の周りを囲む周回状に配置されてもよい。この場合、医療用デバイスは、脈管の周回方向に亘る広い領域に病変部が形成されている場合であっても、複数の線状部材により効率良く力を作用させることができる。
【0031】
本発明において、前記線状部材は、前記離隔状態から前記近接状態に向けて変形した時に復元力が作用するばねを有してもよい。この場合、この場合、医療用デバイスは、ばねのばね弾性を利用して先端突起部を病変部に作用させる。従って、医療用デバイスは、先端突起部からの力をばねにより病変部に効率的に作用させることができる。
【0032】
前記ばねのばね係数は、前記第2基端部に近接する程大きくてもよい。この場合、線状部材のうち第2基端部により近い位置においてばね係数が大きくなることを利用して、病変部により大きな力を作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】医療用デバイス1A(線状部材3:近接状態)を示す図である。
【
図2】医療用デバイス1A(線状部材3:離隔状態)を示す図である。
【
図3】医療用デバイス1Aの使用方法を説明する為の説明図である。
【
図4】医療用デバイス1B(線状部材3:近接状態)を示す図である。
【
図5】医療用デバイス1B(線状部材3:離隔状態)を示す図である。
【
図6】医療用デバイス1C(線状部材3:離隔状態)を示す図である。
【
図7】医療用デバイス1C(線状部材3:近接状態)を示す図である。
【
図8】医療用デバイス1D(線状部材3:離隔状態)を示す図である。
【
図9】医療用デバイス1D(線状部材3:近接状態)を示す図である。
【
図10】医療用デバイス1D(線状部材3:離隔状態)の変形例を示す図である。
【
図11】医療用デバイス1E(線状部材3A、3B、3C:離隔状態)の変形例を示す図である。
【
図12】医療用デバイス1Aの変形例を示す図である。
【
図13】医療用デバイス1Aの変形例を示す図である。
【
図14】医療用デバイス1Aの製造工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<医療用デバイス1の概要>
本発明に係る医療用デバイス1(1A~1E)の一実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0035】
医療用デバイス1は、血管、精管、ファロピーオ管、リンパ管等の脈管に形成された狭窄性の病変を拡張し、脈管を再灌流化するために使用される。特に医療用デバイス1は、脈管内外の沈着物によって硬化した病変(石灰化した病変、胆管の胆石、尿路の結石、脈管内腔に固形物を有する病変等。以下「硬化病変」という。)の拡張及び脈管の再灌流化に好適に用いられる。医療用デバイス1は、硬化病変に力を加えて粉砕したりクラックを形成させたりすることにより、拡張及び再灌流化を実現する。
【0036】
<第1実施形態>
図1~
図3を参照し、第1実施形態に係る医療用デバイス1Aについて説明する。
図1、
図2に示すように、医療用デバイス1Aは、長尺体2、線状部材3、及び切替部4Aを有する。
【0037】
<長尺体2>
長尺体2は、長尺状の円柱体である。長尺体2の一方の端部を「第1近位端部2P」といい、他方の端部を「第1遠位端部2D」という。長尺体2は、第1近位端部2Pと第1遠位端部2Dとの間に亘って直線状に延びる。なお長尺体2は、外から力が作用することに応じて曲折可能である。長尺体2が第1近位端部2Pと第1遠位端部2Dとの間に亘って延びる方向を、「延伸方向」という。延伸方向において、第1遠位端部2Dが配置される側を「遠位側」といい、第1近位端部2Pが配置される側を「近位側」という。長尺体2の中心を通って延伸方向に延びる仮想線分を、「中心軸C」という。
【0038】
長尺体2のうち、延伸方向において第1近位端部2Pと第1遠位端部2Dとの間の中心よりも第1遠位端部2Dに近い所定の位置を、「中間位置2C」という。長尺体2のうち第1遠位端部2Dと中間位置2Cとの間の部分は、一部が切り欠かれている。長尺体2の側面は、切り欠かれた部分において平面状となる。以下、長尺体2の側面のうち第1遠位端部2Dと中間位置2Cとの間の平面状の部分を、平面部20という。長尺体2の材料は特段限定されないが、一例として、金属、樹脂等が好適に用いられる。
【0039】
<線状部材3>
線状部材3は、長尺状の円柱体である。線状部材3の一方の端部を「第2近位端部3P」といい、他方の端部を「第2遠位端部3D」という。
図1において、線状部材3は延伸方向に沿って直線状に延びる。
図2において、線状部材3は延伸方向に対して湾曲する。第2近位端部3Pは、線状部材3の近位側の端部に対応する。第2遠位端部3Dは、線状部材3の遠位側の端部に対応する。線状部材3は、第2遠位端部3Dと第2近位端部3Pとの間に亘って一部が切り欠かれている。線状部材3の側面は、切り欠かれた部分において平面状となる。以下、線状部材3の側面のうち平面状の部分を、平面部30という。
【0040】
線状部材3は、第2近位端部3Pから第2遠位端部3Dに亘る全域で弾性を有する。線状部材3は、外から力が作用していない状態で、
図2に示すように湾曲した状態となる。一方、線状部材3は、外から力が作用した状態で、
図1に示すように直線状に延びた状態に変形可能である。線状部材3には、
図1に示すように直線状に延びた状態で、
図2に示す湾曲した状態に戻ろうとする弾性力が作用する。
【0041】
線状部材3の直径は、強い弾性力を得るために大きい方が好ましい。しかし、脈管内における医療用デバイス1Aの通過性の観点から、長尺体2の直径よりも小さく設定される。
【0042】
線状部材3の材料は特段限定されないが、一例として、金属、形状記憶合金、樹脂が好適に用いられる。線状部材3の材料として金属が用いられる場合、好適には、ステンレス、ステンレス等が用いられる。線状部材3の材料として形状記憶合金が用いられる場合、好適には、ニッケルチタン合金、チタンパラジウム合金、インジウムタリウム合金等が用いられる。線状部材3の材料として樹脂が用いられる場合、好適には、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン等が用いられる。
【0043】
線状部材3は、第2近位端部3Pにおいて長尺体2に保持される。線状部材3が長尺体2に保持された状態で、線状部材3の第2近位端部3Pの延伸方向の位置は、長尺体2の中間位置2Cと一致する。又、
図1に示すように、線状部材3が直線状に延びた状態で、第2遠位端部3Dは長尺体2の第1遠位端部2Dは近接し、線状部材3の平面部30は、長尺体2の平面部20に接触する。このとき、線状部材3の第2遠位端部3Dと、長尺体2の第1遠位端部2Dとの夫々の延伸方向における位置は、一致する。
【0044】
一方、
図2に示すように、線状部材3が湾曲した状態で、第2遠位端部3Dは長尺体2の第1遠位端部2Dから離隔し、線状部材3の平面部30と、長尺体2の平面部20との間に隙間が形成される。又、線状部材3の平面部30と長尺体2の平面部20との間の隙間は、第1遠位端部2D及び第2遠位端部3Dに向かう程大きくなる。
【0045】
以下、
図1に示すように、第2遠位端部3Dが長尺体2に近接した線状部材3の状態を、「近接状態」という。
図2に示すように、第2遠位端部3Dが長尺体2から離隔した線状部材3の状態を、「離隔状態」という。線状部材3は、近接状態(
図1参照)と離隔状態(
図2参照)とに切り替え可能である。
【0046】
<先端突起部5>
線状部材3の第2遠位端部3Dに、先端突起部5が設けられる。先端突起部5の形状は、円推体である。先端突起部5のうち円錐体の底面に対応する部分を「底部5B」といい、円錐体の側面に対応する部分を「側部5S」といい、頂点に対応する部分を「頂部5Q」という。底部5Bは、線状部材3の第2遠位端部3Dに接続される。側部5Sは、損傷を防止する目的で平滑とされる。頂部5Qの頂角は特段限定されないが、一例として30度~120度の範囲内であることが好ましい。
【0047】
先端突起部5の材料として、硬化病変よりも硬く且つ靭性の高い種々の材料を用いることができる。先端突起部5の材料は特段限定されないが、一例として、ニッケルチタン合金等の形状記憶合金や硬質樹脂材料等が好適に用いられる。
【0048】
先端突起部5において、頂部5Qの突出する突出方向Y1(Y11、Y12)を定義する。突出方向Y1は、底部5Bと垂直する方向に沿って、底部5Bから頂部5Qを通過して延びる方向に対応する。線状部材3が近接状態(
図1参照)の場合、突出方向Y11は、延伸方向と平行、且つ、線状部材3の第2遠位端部3Dに対して第2近位端部3Pと反対側(遠位側)を向く。線状部材3が離隔状態(
図2参照)の場合、突出方向Y12は、延伸方向と交差し、且つ、中心軸Cから離れる方向を向く。言い換えれば、突出方向Y12は、延伸方向に沿って遠位側に向かう方向に対し、中心軸Cから離れる方向に傾斜する。線状部材3が離隔状態の場合における延伸方向と突出方向Y12との間のなす角度は特段限定されないが、一例として、60度~120度の範囲内であることが好ましい。
【0049】
<切替部4A>
切替部4Aは、後述する外部力(外部磁場、非図示の外部導線に対する通電等)に応じて線状部材3を近接状態(
図1参照)と離隔状態(
図2参照)とに切り替える。切替部4Aは、長尺体2の第1遠位端部2Dに設けられる切替部42と、線状部材3の第2遠位端部3Dに設けられる切替部43とを有する。切替部42、43は、各々円筒状を有する。切替部42の内腔に、長尺体2の第1遠位端部2Dが挿通される。切替部42は、長尺体2の第1遠位端部2Dを周囲から覆った状態で、長尺体2の第1遠位端部2Dに固定される。切替部43の内腔に、線状部材3の第2遠位端部3Dが挿通される。切替部43は、線状部材3の第2遠位端部3Dを周囲から覆った状態で、線状部材3の第2遠位端部3Dに固定される。
【0050】
外部力が切替部4Aに作用していない状態で、切替部42、43間には誘引力が作用する。この誘引力により、離隔状態の線状部材3は弾性力に抗して変形し、近接状態となる。線状部材3が近接状態となった場合、切替部42、43は接触する。一方、外部力が切替部4Aに作用した状態で、切替部42、43間に誘引力は作用しない。この場合、線状部材3は離隔状態で維持される。線状部材3が離隔状態となった場合、切替部42、43は離隔する。切替部4Aが線状部材3を近接状態(
図1参照)と離隔位置(
図2参照)とに切り替える為の誘引力は特段限定されないが、一例として、磁力又は静電気力が好適に用いられる。
【0051】
誘引力として磁力が用いられる場合、切替部42、43は、磁化された磁性体により形成される。磁性体の材料は特段限定されないが、好適には、電磁ステンレス、ケイ素鉄、ネオジム磁石等が用いられる。又、切替部4Aにより線状部材3の状態を近接状態と離隔状態とに切り替えるための外部力として、外部磁場が用いられる。
【0052】
外部磁場が切替部4Aに作用していない状態で、切替部42、43間には磁力が誘引力として作用する。この場合、切替部42、43が互いに近接しようとする向きに磁力が働くことになるので、線状部材3は弾性力に抗して変形し、近接状態となる。一方、外部磁場が切替部4Aに作用した状態で、切替部42、43の夫々の磁化は無効となる。この場合、切替部42、43間に磁力は働かなくなるので、線状部材3は離隔状態で維持される。従って、切替部4Aに外部磁場が作用した状態と作用しない状態とを切り替えることにより、線状部材3を近接状態と離隔状態とに切り替えることが可能となる。
【0053】
誘引力として静電気力が用いられる場合、切替部42、43は帯電した導電体又は帯電体により形成される。導電体の材料は特段限定されないが、好適には、銅、アルミニウム、銀等が用いられる。帯電体の材料は特段限定されないが、好適には、銅、アルミニウム、銀等が用いられる。又、切替部4Aに対する通電状態が切り替えられることにより、線状部材3の状態が近接状態と離隔状態とに切り替えられる。つまり、切替部4Aにより線状部材3の状態を切り替えるための外部力として、切替部4Aに対する通電が用いられる。
【0054】
切替部4Aへの通電が停止された状態で、切替部42、43間には静電気力が誘引力として作用する。この場合、切替部42、43が互いに近接しようとする向きに静電気力が働くことになるので、線状部材3は弾性力に抗して変形し、近接状態となる。一方、切替部4Aに接続した非図示の外部導線を介して切替部4Aに通電された状態で、切替部42、43は夫々帯電していない状態となる。この場合、切替部42、43間に静電気力は働かなくなるので、線状部材3は離隔状態で維持される。従って、切替部4Aに対する通電状態を切り替えることにより、線状部材3を近接状態と離隔状態とに切り替えることが可能となる。
【0055】
<使用例>
図3を参照し、医療用デバイス1Aの使用例について説明する。脈管9の内壁の一部に発生した硬化病変90にクラックKを形成させる為に医療用デバイス1Aが使用される場合を例示する。
【0056】
図3(A)に示すように、線状部材3を近接状態とした医療用デバイス1Aが準備される。例えば切替部4Aとして磁性体が用いられる場合、外部磁場は切替部4Aに作用しておらず、切替部42、43は磁力により互いに接触した状態となる。又、例えば切替部4Aとして導電体又は帯電体が用いられる場合、切替部4Aに対する通電は停止されており、切替部42、43は静電気力により互いに接触した状態となる。次に、医療用デバイス1Aのうち、延伸方向において線状部材3を少なくとも含む部分、より詳細には、医療用デバイス1Aのうち長尺体2の中間位置2Cに対して第1遠位端部2Dに近接する側の部位を少なくとも含む部分が、脈管9内に配置される。
【0057】
次に、長尺体2の第1近位端部2P(
図1、
図2参照)の近傍が操作されることにより、医療用デバイス1Aは脈管9内に押し込まれる。
図3(B)に示すように、医療用デバイス1Aは、長尺体2の第1遠位端部2D及び線状部材3の第2遠位端部3Dが移動方向の先頭に配置された状態で、硬化病変90に向けて脈管9内を遠位側に移動する。線状部材3の第2遠位端部3Dに設けられた先端突起部5が硬化病変90に到達した場合、医療用デバイス1Aの移動は停止される。
【0058】
次に、線状部材3を近接状態から離隔状態に切り替える為の操作が行われる。例えば切替部4Aとして磁性体が用いられる場合、外部磁場が切替部4Aに印加される。この場合、切替部42、43間に磁力は働かなくなり、線状部材3は近接状態から離隔状態に切り替わる。又、例えば切替部4Aとして導電体又は帯電体が用いられる場合、外部導線を介して切替部4Aに通電される。この場合、切替部42、43間に静電気力は働かなくなり、線状部材3は近接状態から離隔状態に切り替わる。これにより、
図3(C)に示すように、先端突起部5は中心軸Cから離れる向きに移動する。又、先端突起部5の突出方向Y12(
図2参照)は延伸方向と交差し、且つ、中心軸Cから離れる方向を向く。これにより、先端突起部5は硬化病変90に進入し、硬化病変90にクラックK(
図3(D)参照)が形成される。
【0059】
次に、線状部材3を離隔状態から近接状態に切り替える為の操作が行われる。例えば切替部4Aとして磁性体が用いられる場合、切替部4Aに対する外部磁場の印加が停止される。この場合、切替部42、43間に磁力が働き、線状部材3は離隔状態から近接状態に切り替わる。又、例えば切替部4Aとして導電体又は帯電体が用いられる場合、切替部4Aに対する通電が停止される。この場合、切替部42、43間に静電気力が働き、線状部材3は離隔状態から近接状態に切り替わる。これにより、
図3(D)に示すように、先端突起部5は中心軸Cに近接する向きに移動し、硬化病変90から離隔する。
【0060】
なお、必要に応じ、線状部材3を近接状態と離隔状態とに交互に繰り返し切り替える為の操作が行われる(
図3(C)、
図3(D))。例えば切替部4Aとして磁性体が用いられる場合、切替部4Aに対して外部磁界が印加された状態と、外部磁界の印加が停止された状態とに交互に切り替えられる。又、例えば切替部4Aとして導電体又は帯電体が用いられる場合、切替部4に対して通電された状態と、切替部4に対する通電が停止された状態とに交互に切り替えられる。これにより、先端突起部5が硬化病変90にクラックKが複数形成される。
【0061】
硬化病変90に対するクラックKの形成が完了した後、線状部材3を離隔状態から近接状態に切り替える為の操作が行われる。次に、長尺体2の第1近位端部2P(
図1、
図2参照)の近傍が操作されることにより、
図3(E)に示すように、医療用デバイス1Aは近位側に移動する。医療用デバイス1Aが脈管9から外部に引き抜かれることにより、施術は完了する。
【0062】
<第1実施形態の作用、効果>
脈管内に形成された硬化病変を切断したり、硬化病変にクラックを形成させたりするための周知のバルーンカテーテルがある。このようなバルーンカテーテルにて用いられるバルーン(以下、「カッティングバルーン」という。)では、硬質な素材で形成されたエレメントが側面に設けられる。カッティングバルーンは、円周方向に均等に拡張力を伝達することに適している。このためバルーンカテーテルは、カッティングバルーンの側方に配置された硬化病変にエレメントを作用させるのと同時に、硬化病変を拡張することもできる。しかし一方で、例えば、脈管の内腔のうち周方向の一部のみに硬化病変が形成される場合もある。これに対し、カッティングバルーンは脈管を周方向に均等に拡張するため、カッティングバルーンから硬化病変に作用する力が分散したり、硬化病変が形成されていない健常部に不要な力が作用したりする場合がある。
【0063】
これに対し、医療用デバイス1Aは、切替部4により線状部材3を近接状態から離隔状態に切り替え、先端突起部5により硬化病変を切断したりクラックを形成させたりできる。この場合、医療用デバイス1Aは、脈管の内腔のうち周方向の一部のみに形成された硬化病変を、先端突起部5により適切に除去できる。又、医療用デバイス1Aは、線状部材3の状態を切替部4により切り替える。ここで切替部4Aは、外部力(外部磁場、非図示の外部導線に対する通電等)を用いて切替部4Aを制御することにより、線状部材3の状態を速やかに切り替えることができる。このため、医療用デバイス1Aは、線状部材3の第2遠位端部3Dに設けられた先端突起部5を、大きな力で硬化病変に押し当てることができる。
【0064】
線状部材3は、第2近位端部3Pにおいて長尺体2に保持され、且つ、第2遠位端部3Dに先端突起部5が設けられる。この場合、医療用デバイス1Aは、遠位端の端部において先端突起部5を硬化病変に作用させ、硬化病変を粉砕したりクラックを形成させたりすることができる。
【0065】
線状部材3は弾性を有し、切替部4により近位状態から離隔状態に切り替わるときの弾性力により、先端突起部5を硬化病変に作用させる。このため医療用デバイス1Aは、線状部材3の弾性を有効に利用し、硬化病変に対して先端突起部5を効率よく作用させることができる。
【0066】
線状部材3が金属により形成される場合、医療用デバイス1Aは、線状部材3の強い弾性に基づき、硬化病変を粉砕させたりクラックを形成させたりすることが容易に可能となる。又、線状部材3が形状記憶合金により形成される場合、医療用デバイス1Aは、線状部材3の形状を常に最適化できるので、硬化病変を粉砕させたりクラックを形成させたりすることが容易に可能となる。又、線状部材3が樹脂製である場合、線状部材3の製造を容易化できる。
【0067】
医療用デバイス1Aは、磁力によって線状部材3を近接状態と離隔状態とに切り替えることが可能な切替部4を、磁性体により実現できる。又、医療用デバイス1Aは、静電気力によって線状部材3を近接状態と離隔状態とに切り替えることが可能な切替部4を、導電体又は帯電体により実現できる。
【0068】
医療用デバイス1Aは、先端突起部5の形状を錐体とし、頂部5Qを硬化病変に作用させることによって、硬化病変の破砕やクラックの形成を容易に実現できる。
【0069】
医療用デバイス1Aは、切替部42、43間に作用する誘引力を利用して、線状部材3を近接状態と離隔状態とに切り替える。この場合、外部磁界の印加を停止するときの速度を調整して誘引力の減少速度を調整できる。この場合、線状部材3が近接状態から離隔状態に変形する速度も調整されることになるので、先端突起部5が硬化病変に作用するときの力の大きさを調整できる。従って、医療用デバイス1Aは、硬化病変90に先端突起部5を押し当てる場合の力を、切替部42、43間に作用する誘引力を調整することにより最適化できる。
【0070】
<第1実施形態に関する特記事項>
第2遠位端部3Dは、本発明の「第2先端部」の一例である。第2近位端部3Pは、本発明の「第2基端部」の一例である。第1遠位端部2Dは、本発明の「近接部」の一例である。
【0071】
<第2実施形態>
図4、
図5を参照し、第2実施形態に係る医療用デバイス1Bについて説明する。医療用デバイス1Bは、長尺体2に対して保持される線状部材3の部位、及び、線状部材3に対して先端突起部5が設けられる部位が、第1実施形態に係る医療用デバイス1Aと相違する。以下、医療用デバイス1Aと相違する構成について説明する。医療用デバイス1Aと共通する構成については、
図1~
図3と同一符号を付し、説明を省略する。
【0072】
線状部材3は、第2遠位端部3Dにおいて長尺体2の第1遠位端部2Dに保持される。
図4に示すように、線状部材3が直線状に延びた状態で、第2近位端部3Pは、長尺体2のうち第1遠位端部2Dから第1近位端部2P側に離隔した位置、より詳細には中間位置2Cに近接する。一方、
図5に示すように、線状部材3が湾曲した状態で、第2近位端部3Pは長尺体2の中間位置2Cから離隔し、線状部材3の平面部30と、長尺体2の平面部20との間に隙間が形成される。又、線状部材3の平面部30と長尺体2の平面部20との間の隙間は、中間位置2C及び第2近位端部3Pに向かう程大きくなる。
【0073】
図4に示すように、第2近位端部3Pが長尺体2に近接した線状部材3の状態が、近接状態に対応する。
図5に示すように、第2近位端部3Pが長尺体2から離隔した線状部材3の状態が、離隔状態に対応する。線状部材3は、第1実施形態と同様、切替部4により近接状態(
図4参照)と離隔状態(
図5参照)とに切り替え可能である。
【0074】
線状部材3の第2近位端部3Pに先端突起部5が設けられる。先端突起部5において、頂部5Qの突出する突出方向Y2(Y21、Y22)を定義する。線状部材3が近接状態(
図4参照)の場合、突出方向Y21は、延伸方向と平行、且つ、線状部材3の第2近位端部3Pに対して第2遠位端部3Dと反対方向(近位側)を向く。線状部材3が離隔状態(
図5参照)の場合、突出方向Y22は、延伸方向と交差し、且つ、中心軸Cから離れる方向を向く。言い換えれば、突出方向Y22は、延伸方向に沿って近位側に向かう方向に対し、中心軸Cから離れる方向に傾斜する。
【0075】
<第2実施形態の作用、効果>
医療用デバイス1Bは、第1実施形態に係る医療用デバイス1Aと同様の効果を奏する。又、医療用デバイス1Bは、遠位側の端部よりも近位側において先端突起部5を硬化病変に作用させ、硬化病変を粉砕したりクラックを形成させたりすることができる。
【0076】
<第2実施形態に関する特記事項>
第2近位端部3Pは、本発明の「第2先端部」の一例である。第2遠位端部3Dは、本発明の「第2基端部」の一例である。長尺体2のうち中間位置2Cに対応する部分は、本発明の「近接部」の一例である。
【0077】
<第3実施形態>
図6、
図7を参照し、第3実施形態に係る医療用デバイス1Cについて説明する。医療用デバイス1Cは、切替部4Aの代わりに切替部4Bを有するという点で、医療用デバイス1A、1Bと相違する。医療用デバイス1Aと共通する構成については、
図1、
図2と同一符号を付し、説明を省略する。
【0078】
図6、
図7に示すように、医療用デバイス1Cの長尺体2には、内腔21、中央孔21P、及び遠位孔21Dが設けられる。内腔21は、長尺体2の内部を貫通する。中央孔21P及び遠位孔21Dは、内腔21に連通される。内腔21は、中央孔21Pと遠位孔21Dとの間に亘って延びる。中央孔21Pは、長尺体2の中間位置2Cに形成される。遠位孔21Dは、長尺体2の第1遠位端部2Dの近傍に形成される。
【0079】
医療用デバイス1Cは線材6を更に有する。線材6の一方側の端部を「第3近位端部6P」といい、他方の端部を「第3遠位端部6D」という。線材6は、第3近位端部6Pと第3遠位端部6Dとの間で延伸方向に沿って延びる。第3近位端部6Pは近位側の端部に対応し、第3遠位端部6Dは遠位側の端部に対応する。線材6の材料は特段限定されないが、一例として、金属、繊維が好適に用いられる。線材6の材料として金属が用いられる場合、好適には、ニッケルチタン合金、ステンレス等が用いられる。線状部材3の材料として繊維が用いられる場合、好適には、亜麻、麻、木綿等が用いられる。
【0080】
線材6の一部は、長尺体2の内腔21に挿通される。線材6のうち第3遠位端部6Dを含む一部は、遠位孔21Dを通過して内腔21から外部に露出し、中心軸Cと直交する方向に延びる。第3遠位端部6Dは、線状部材3の第2遠位端部3Dに接続される。線材6のうち第3近位端部6Pを含む一部は、中央孔21Pを通過して内腔21から外部に露出し、延伸方向に沿って近位側に延びる。
【0081】
図6に示すように、線材6の第3近位端部6Pを近位側に引っ張る引張力が作用していない状態で、線状部材3は湾曲し、離隔状態で維持される。一方、
図7に示すように、線材6の第3近位端部6Pを近位側に引っ張る引張力が作用した状態で、線材6は、第3遠位端部に接続した線状部材3の第2遠位端部3Dを中心軸Cに向けて誘引する。離隔状態の線状部材3は弾性力に抗して変形し、近接状態となる。つまり、線材6の第3遠位端部6Dは、線材6に対する引張力に応じて線状部材3を近接状態と離隔状態とに切り替える切替部4Bとして機能する。又、切替部4Bにより線状部材3の状態を近接状態と離隔状態とに切り替えるための外部力として、引張力が用いられる。切替部4Bは、線材6の第3近位端部6Pを引っ張る引張力により線状部材3を近接状態と離隔状態とに切り替える。
【0082】
例えば、医療用デバイス1Cは、はじめに、線材6の第3近位端部6Pに引張力が作用した状態とされる(
図7参照)。この場合、線状部材3は近接状態で維持される。この状態で、線状部材3の第2遠位端部3Dに設けられた先端突起部5が硬化病変90(
図3参照)に到達するまで、医療用デバイス1Cは脈管9(
図3参照)内を移動される。次に、線材6の第3近位端部6Pに対する引張力が解除される。この場合、線状部材3は弾性力により離隔状態に変形する(
図6参照)。これにより、先端突起部5を用いて硬化病変90にクラックK(
図3参照)を形成させることができる。
【0083】
<第3実施形態の作用、効果>
医療用デバイス1Cでは、線材6の第3近位端部6Pが引っ張られる場合の引張力を利用して線状部材3の状態を切り替え、第2遠位端部3Dに設けられた先端突起部5を硬化病変に押し付けて力を作用させることができる。又、医療用デバイス1Cは、線材6を引っ張る引張力を解消するときの速度を調整することによって、線状部材3が近接状態から離隔状態に切り替わるときの速度を調整できる。このため、医療用デバイス1Cは、先端突起部5を硬化病変に作用させるときの力を、引張力に応じて調整できる。
【0084】
線材6の一部は、長尺体2に設けられた内腔21に挿通される。この場合、医療用デバイス1Cは、長尺体2によって線材6の一部を覆うことができるので、線材6が脈管内に引っ掛る可能性を軽減できる。
【0085】
医療用デバイス1Cにおいて、線材6の材料として金属が用いられた場合、強度に優れた線材6とすることができる。このため、医療用デバイス1Cは、線材6を引っ張る力を線状部材3に確実に伝達させ、線状部材3を離隔状態と近接状態とに切り替えることができる。又、医療用デバイス1Cにおいて、線材6として繊維が用いられた場合、柔軟性に優れた線材6とすることができる。このため、医療用デバイス1Cは、線材6を柔軟に変形させて線状部材3の状態をスムーズに切り替えることができる。
【0086】
<第4実施形態>
図8、
図9を参照し、第4実施形態に係る医療用デバイス1Dについて説明する。医療用デバイス1Dは、長尺体2に対して保持される線状部材3の部位、及び、線状部材3に対して先端突起部5が設けられる部位が、第3実施形態に係る医療用デバイス1Cと相違する。以下、医療用デバイス1Cと相違する構成について説明する。医療用デバイス1Cと共通する構成については、
図5、
図6と同一符号を付し、説明を省略する。
【0087】
線状部材3は、第2遠位端部3Dにおいて長尺体2の第1遠位端部2Dに保持される。
図9に示すように、線状部材3が直線状に延びた状態で、第2近位端部3Pは、長尺体2のうち第1遠位端部2Dから第1近位端部2P側に離隔した位置、より詳細には中間位置2Cに近接する。一方、
図8に示すように、線状部材3が湾曲した状態で、第2遠位端部3Dは長尺体2の中間位置2Cから離隔し、線状部材3の平面部30と、長尺体2の平面部20との間に隙間が形成される。又、線状部材3の平面部30と長尺体2の平面部20との間の隙間は、中間位置2C及び第2近位端部3Pに向かう程大きくなる。
【0088】
図8に示すように、第2近位端部3Pが長尺体2から離隔した線状部材3の状態が、離隔状態に対応する。
図9に示すように、第2近位端部3Pが長尺体2に近接した線状部材3の状態が、近接状態に対応する。
【0089】
図8、
図9に示すように、医療用デバイス1Cの長尺体2には、内腔22、中央孔22D、及び近位孔22Pが設けられる。内腔22は、長尺体2の内部を貫通する。中央孔22D及び近位孔22Pは、内腔22に連通される。内腔22は、中央孔22Dと近位孔22Pとの間に亘って延びる。中央孔22Dは、長尺体2の中間位置2Cに形成される。近位孔22Pは、長尺体2の第1近位端部2Pの近傍に形成される。線材6の一部は、長尺体2の内腔22に挿通される。線材6のうち第3遠位端部6Dを含む一部は、中央孔22Dを通過して内腔22から外部に露出し、中心軸Cと直交する方向に延びる。第3遠位端部6Dは、線状部材3の第2近位端部3Pに接続される。線材6のうち第3近位端部6Pを含む一部は、近位孔22Pを通過して内腔22から外部に露出し、延伸方向に沿って近位側に延びる。
【0090】
線状部材3の第2近位端部3Pに先端突起部5が設けられる。
図8に示すように、線材6の第3近位端部6Pを近位側に引っ張る引張力が作用していない状態で、線状部材3は湾曲し、離隔状態で維持される。一方、
図9に示すように、線材6の第3近位端部6Pを近位側に引っ張る引張力が作用した状態で、線材6は、第3遠位端部に接続した線状部材3の第2近位端部3Pを中心軸Cに向けて誘引する。離隔状態の線状部材3は弾性力に抗して変形し、近接状態となる。つまり、線材6の第3遠位端部6Dは、線材6の第3近位端部6Pに対する引張力に応じて線状部材3を近接状態と離隔状態とに切り替える切替部4Bとして機能する。
【0091】
<第4実施形態の作用、効果>
医療用デバイス1Dは、第3実施形態に係る医療用デバイス1Cと同様の効果を奏する。又、医療用デバイス1Dは、遠位側の端部よりも近位側において先端突起部5を硬化病変90に作用させ、硬化病変90を粉砕したりクラックを形成させたりすることができる。
【0092】
<第4実施形態の特記事項>
医療用デバイス1Dにおいて、長尺体2に内腔22は設けられなくてもよい。この場合、例えば
図10に示すように、線材6は、線状部材3の第2近位端部3Pに第3遠位端部6Dが接続された状態で、近位側に直接延びてもよい。
【0093】
<第5実施形態>
図11を参照し、第5実施形態に係る医療用デバイス1Eについて説明する。医療用デバイス1Eは、複数の線状部材(線状部材3A、3B)を有するという点で、医療用デバイス1Aと相違する。以下、医療用デバイス1Aと相違する構成について説明する。医療用デバイス1Aと共通する構成については、
図1、
図2と同一符号を付し、説明を省略する。
【0094】
図11に示すように、医療用デバイス1Eは、線状部材3A、3Bを有する。線状部材3A、3Bは、中心軸Cを挟んで反対側に設けられる。言い換えれば、線状部材3A、3Bは、長尺体2の周りを囲むように周回状に配置される。線状部材3A、3Bの夫々の形状は、医療用デバイス1Aにおける線状部材3と同様である。
【0095】
外部力(外部磁場、非図示の外部導線に対する通電等)が切替部4Aに作用していない状態で、長尺体2に設けられた切替部42と、線状部材3A、3Bの各々に設けられた切替部43との間に、誘引力が作用する。このため、線状部材3A、3Bは夫々弾性力に抗して変形し、近接状態となる。一方、外部力が切替部4Aに作用した状態で、長尺体2に設けられた切替部42と、線状部材3A、3Bの各々に設けられた切替部43との間には誘引力が作用しない。この場合、線状部材3A、3Bは夫々離隔状態で維持される。この場合、
図11に示すように、線状部材3A、3Bの夫々の先端突起部5の突出方向は、中心軸Cを挟んで互いに反対方向を向く。このため医療用デバイス1Eは、脈管の内壁のうち周回方向において異なる複数の領域に硬化病変が形成されている場合であっても、線状部材3A、3Bにより夫々の先端突起部5を効率よく作用させることができる。
【0096】
<第5実施形態の特記事項>
線状部材3の数は2つに限定されず、3以上でもよい。この場合、複数の線状部材3は、長尺体2の周りを囲む周回状に等間隔に配置されてもよい。一方、複数の線状部材3が配置される間隔は、各々異なっていてもよい。
【0097】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。以下、第1実施例に係る医療用デバイス1Aを例に挙げて変形例を説明するが、適宜、医療用デバイス1B、1C、1D、1Eにも適用可能であることはいうまでもない。
【0098】
<変形例1>
図12(A)に示す医療用デバイス1Aのように、先端部が湾曲した先端突起部51が設けられていてもよい。なお、先端突起部51の形状は、半球体状でもよいし板状でもよい。この場合、医療用デバイス1Aは、湾曲した先端突起部5を硬化病変に作用させることができるので、硬化病変を傷つけずに除去できる。
【0099】
図12(B)に示す医療用デバイス1Aのように、先端部が湾曲した先端突起部51に加え、複数の稜線突起部52(稜線突起部52A、52B、52C、52D、52E)が線状部材3に設けられてもよい。稜線突起部52A、52B、52C、52D、52Eは、線状部材3の第2遠位端部3Dから第2近位端部3Pの間の部分に等間隔で配置されてもよい。なお、複数の稜線突起部52の各々の形状は、半球体状でもよいし板状でもよい。この場合、医療用デバイス1Aは、線状部材3の第2遠位端部3Dだけでなく、第2遠位端部3Dと第2近位端部3Pの間の部分においても、硬化病変に稜線突起部52を押し当てることができる。又、医療用デバイス1Aは、湾曲した複数の稜線突起部52を硬化病変に作用させることができるので、硬化病変を傷つけずに除去できる。
【0100】
なお、先端突起部の形状は錐体(先端突起部5)、湾曲状(先端突起部51、複数の稜線突起部52)に限定されず、他の形状であってもよい。例えば先端突起部は、複数の凸部を有してもよい。又、各凸部の先端は尖っていてもよいし湾曲していてもよい。
【0101】
図12(C)に示す医療用デバイス1Aのように、板状の先端突起部53が線状部材3に設けられてもよい。先端突起部53は、線状部材3の第2遠位端部3Dから第2近位端部3Pに向けて、線状部材3の延伸方向略中央部分まで延びてもよい。先端突起部53の先端は直線状に延びてもよい。この場合、医療用デバイス1Aは、線状部材3の第2遠位端部3Dだけでなく、第2遠位端部3Dと第2近位端部3Pの間の部分においても、硬化病変に先端突起部53を押し当てることができる。特に先端突起部53は、他の先端突起部と比べて硬化病変に切れ込みを容易に形成できるという特徴を有する。なお、先端突起部53の先端の形状は、直線状に延びる場合に限定されず、他の形状でもよい。例えば、先端突起部53の先端の形状は、複数の凹凸を有する鋸状であってもよい。
【0102】
図12(D)(E)に示す医療用デバイス1Aのように、線状部材3の第2遠位端部3Dに設けられた先端突起部54A(
図12(D)参照)、55A(
図12(E)参照)に加え、長尺体2の第1遠位端部2Dにも先端突起部54B(
図12(D)参照)、55B(
図12(E)参照)が設けられてもよい。
【0103】
図12(D)に示すように、先端突起部54B、55Bは、夫々が独立した円錐体であってもよい。長尺体2の第1遠位端部2Dと、線状部材3の第2遠位端部3Dとの夫々の延伸方向の位置は、異なっていてもよい。この場合、
図12(D)に示すように、線状部材3の第2遠位端部3Dの方が長尺体2の第1遠位端部2Dよりも遠位側に位置してもよいし、逆に、長尺体2の第1遠位端部2Dの方が線状部材3の第2遠位端部3Dの方よりも遠位側に位置してもよい。又、線状部材3の第2遠位端部3Dと長尺体2の第1遠位端部2Dとの夫々の延伸方向の位置は同一でもよい。
【0104】
図12(E)に示すように、先端突起部55A、55Bは、一体となって共通の円錐体を形成してもよい。先端突起部55A、55Bが一体となって形成される円錐体の頂角は特段限定されないが、例えば、30度~120度の範囲内とすることが好ましい。この場合、脈管の硬化病変に向けて医療用デバイス1Aをスムーズに移動させることができる。
【0105】
<変形例2>
図13(A)に示すように、線状部材3が第2近位端部3Pにおいて長尺体2に保持される部位に、補強部材10が設けられてもよい。補強部材10は円筒形を有し、長尺体2の中間位置2C、及び線状部材3の第2近位端部3Pの周囲を覆ってもよい。補強部材10は、長尺体2と線状部材3とを脱離不能に挟持してもよい。補強部材10の材料として、長尺体2及び線状部材3と異なる硬質な材料が用いられてもよい。
【0106】
図13(B)に示すように、長尺体2に線状部材3が保持される部分に、連結部材11が設けられてもよい。連結部材11は、長尺体2の平面部20と線状部材3の平面部30のそれぞれに設けられた凹部に嵌り、各々を脱離不能に連結してもよい。
【0107】
図13(C)に示すように、線状部材3は、一部にばね36を有してもよい。ばね36は、離隔状態(
図13参照)から近接状態に向けて変形した時に復元力が作用してもよい。又、ばね36のばね係数を、第2近位端部3Pに近接する程大きくしてもよい。切替部4Aに外部力(外部磁場、非図示の外部導線に対する通電等)が作用していない状態で、切替部42、43間に誘引力が作用してもよい。この場合、離隔状態の線状部材3はばね36の復元力に抗して変形し、近接状態となってもよい。一方、外部力が切替部4に作用した状態で、切替部42、43間に誘引力が作用しなくなってもよい。この場合、線状部材3は離隔状態で維持されてもよい。
【0108】
上記のようにばね36を適用した場合、医療用デバイス1Aは、ばね36のばね弾性を利用して先端突起部5を硬化病変に作用させる。このため医療用デバイス1Aは、先端突起部5からの力をばね36により硬化病変に効率的に作用させることができる。又、ばね36のばね係数を、第2近位端部3Pに近接する程大きくすることにより、線状部材3のうち第2近位端部3Pにより近い位置で大きなばね弾性を得ることができる。従って、医療用デバイス1Aは、線状部材3のうち第2近位端部3Pと反対側の端部である第2遠位端部3Dに設けられた先端突起部5を、より強い力で硬化病変に押し当てることが可能となる。
【0109】
<その他の変形例>
切替部4Aは、切替部42、43のうちいずれか一方のみ有してもよい。切替部42は、長尺体2のうち中間位置2Cから第1遠位端部2Dまでの間の全域に亘って設けられてもよい。切替部43は、線状部材3の第2近位端部3Pから第2遠位端部3Dまで間の全域に亘って設けられてもよい。
【0110】
医療用デバイス1Aにおいて、線状部材3は、外から力が作用していない状態で、
図1に示すように直線状に延びた状態となってもよい。一方、線状部材3は、外から力が作用した状態で、
図2に示すように湾曲した状態に変形可能としてもよい。線状部材3には、
図2に示すように湾曲した状態で、
図1に示す直線状に延びた状態に戻ろうとする弾性力が作用してもよい。又、切替部4Aは、切替部42、43間に作用する反発力を利用して、線状部材3を近接状態と離隔状態とに切り替えてもよい。具体的には、外部力(外部磁場、非図示の外部導線に対する通電等)が切替部4Aに作用していない状態で、切替部42、43間には反発力が作用しなくなってもよい。この場合、線状部材3は近接状態で維持される。一方、外部力が切替部4Aに作用した状態で、切替部42、43間に反発力が作用してもよい。この反発力により、近接状態の線状部材3は弾性力に抗して変形し、離隔状態となってもよい。この場合も、切替部4Aに外部力が作用した状態と作用しない状態とを切り替えることにより、線状部材3を近接状態と離隔状態とに切り替えることができる。
【0111】
より具体定的には、例えば反発力として静電気力が用いられる場合、はじめに、切替部4Aに通電して切替部42、43を夫々帯電しない状態とし、切替部42、43間に静電気力が作用しない状態としてもよい。この場合、線状部材3は近接状態で維持される。この状態で、線状部材3の第2遠位端部3Dに設けられた先端突起部5が硬化病変90に到達するまで、医療用デバイス1Aを移動させてもよい。次に、切替部4Aに対する通電を停止し、切替部42、43を夫々帯電した状態としてもよい。この場合、切替部42、43間に静電気力が働き、線状部材3は弾性力に抗して離隔状態に変形する。これにより、先端突起部5を用いて硬化病変90にクラックKを形成させることができる。
【0112】
線状部材3は、第2近位端部3Pから第2遠位端部3Dに亘る全域で弾性を有さなくてもよい。例えば線状部材3は、第2近位端部3Pを含む一部のみ弾性を有してもよい。例えば、線状部材3のうち延伸方向中央から第2近位端部3Pまでの間の部分のみ弾性を有してもよい。この場合、線状部材3は、特に長尺体2に保持される部分である第2近位端部3Pの近傍に作用する弾性力を利用し、第2近位端部3Pとは反対側の第2遠位端部3Dに設けられた先端突起部5を硬化病変に作用させることができる。この場合、医療用デバイス1Aは、線状部材3の弾性力をより効率的に用い、先端突起部5を硬化病変に作用させることができる。
【0113】
なお、線状部材3のうち弾性を有する部位は、第2近位端部3Pの近傍に限定されない。例えば線状部材3は、延伸方向において第2遠位端部3Dの近傍のみ弾性を有してもよい。
【0114】
樹脂は、硬度が高い程高い弾性力を得ることができる。このため、線状部材3の材料として樹脂が用いられる場合、線状部材3の硬度を、延伸方向の部位毎に異ならせてもよい。この場合、線状部材3には、硬度が変化する変化部が形成されることになる。例えば線状部材3は、延伸方向中央から第2近位端部3Pまでの間の部分の硬度を、延伸方向中央から第2遠位端部3Dまでの間の部分の硬度よりも大きくしてもよい。つまり、線状部材3のうち延伸方向中央の部位が変化部に対応する。この場合、線状部材3は、特に長尺体2に保持される部分である第2近位端部3Pの近傍に作用する弾性力を利用し、第2近位端部3Pと反対側である第2遠位端部3Dに設けられた先端突起部5を硬化病変に作用させることができる。従って、医療用デバイス1Aは、線状部材3の弾性力をより効率的に用いて硬化病変に力を作用させることができる。
【0115】
なお、線状部材3の部位毎の硬度の設定については、上記具体例に限定されず、医療用デバイス1Aの用途に応じて適宜変更されてもよい。この場合、線状部材3は、部位毎に硬度を最適化することにより、部位毎に異なる機能を発揮できる。
【0116】
線状部材3、切替部4A(42、43)、先端突起部5、及び、
図13(A)に示す補強部材10、
図13(B)に示す連結部材11の少なくとも何れかは、造影性を有していてもよい。一例として、これらの部材の少なくとも何れかは、放射線不透過性を有していてもよい。この場合、施術中における体内での医療用デバイス1Aの位置を容易に把握できるので、目的とする硬化病変に対して先端突起部5を適切に作用させることができる。
【0117】
医療用デバイス1Aは、以下の手順で製造されてもよい。以下、
図14(A)~(D)を参照して説明する。
【0118】
はじめに、
図14(A)に示すように、金属製の板材70が準備される。次に、板材70に対するパンチアウト加工により、
図14(B)に示す形状の中間部材7Aが切り出される。中間部材7Aは、夫々が長尺状の第1延伸部71及び第2延伸部72を有する。第1延伸部71は、延伸方向に沿って延びる。第2延伸部72は、第1延伸部71のうち延伸方向の両端部近傍を除く部位から、延伸方向と直交する方向に延びる。第2延伸部72の先端部に、先端が尖った突起部73が設けられる。次に、
図14(C)に示すように、第2延伸部72の根元部分において、突起部73が第1延伸部71に近接するように折り曲げられる。なお、第1延伸部71、第2延伸部72、及び突起部73は、各々、医療用デバイス1Aにおける長尺体2、線状部材3、及び先端突起部5に対応する。
【0119】
最後に、
図14(D)に示すように、第1延伸部71のうち延伸方向における遠位側の端部に切替部75が設けられ、根元で折り曲げられた第2延伸部72における遠位側の端部に切替部74が設けられる。なお、切替部74、75は、
図1に示す切替部42、43に対応する。以上により、医療用デバイス1Aの製造工程は完了する。この製造工程に基づいて医療用デバイス1Aが作製されることにより、突起部73を硬化病変に作用させるのに必要となる第2延伸部72の弾性力を容易に得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0120】
1、1A、1B、1C、1D、1E :医療用デバイス
2 :長尺体
2D :第1遠位端部
2P :第1近位端部
3、3A、3B :線状部材
3D :第2遠位端部
3P :第2近位端部
4A、4B、42、43、74、75 :切替部
5、51 :先端突起部
6 :線材
6D :第3遠位端部
6P :第3近位端部
21、22 :内腔
36 :ばね
52 :稜線突起部
53 :先端突起部