(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】カウルカバー装置
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20240514BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B62D25/08 H
B60R13/04 Z
(21)【出願番号】P 2021019619
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平野 正憲
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-247223(JP,A)
【文献】特表2011-518076(JP,A)
【文献】特開2018-202926(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0200265(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013018068(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B60R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウル部を覆うカウルカバーと、
このカウルカバーに対して着脱可能に取り付けられ、取り付けられた状態でこのカウルカバーに対して立ち上がって位置する縦壁体と、を備え、
前記縦壁体は、車幅方向の端部に挿入部を有し、
前記カウルカバーは、前記挿入部の一部が車幅方向に挿入される規制部を有し、
前記挿入部は、前記縦壁体への車幅方向と交差する所定方向の荷重に対する前記カウルカバーからの反力によって車幅方向へと弾性変形可能に形成されている
ことを特徴とするカウルカバー装置。
【請求項2】
挿入部は、
車幅方向と交差する所定方向に延びる第一腕部と、
この第一腕部の端部から車幅方向に延びて規制部に挿入される第二腕部と、を備え、
前記第二腕部は、先端部から前後方向に延びるストッパ部を有し、
カウルカバーは、
前記ストッパ部に対し車幅方向に対向する抜け止め部と、
前記第一腕部の端部に対し前記所定方向に対向する突き当て部と、を有する
ことを特徴とする請求項1記載のカウルカバー装置。
【請求項3】
第一腕部の端部は、突き当て部に対し、規制部に向かって車幅方向に傾斜して車幅方向と交差する所定方向に対向する
ことを特徴とする請求項2記載のカウルカバー装置。
【請求項4】
ストッパ部は、第二腕部の先端部に対して車幅方向と交差する所定方向にそれぞれ延びて形成され、規制部側の側部が前記第二腕部から前記所定方向に向かい徐々に前記規制部から離れるように傾斜されている
ことを特徴とする請求項2または3記載のカウルカバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウル部を覆うカウルカバーに対して着脱可能な縦壁体を備えるカウルカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のウインドシールドであるフロントガラスの前端部と相手部材であるボンネットフードの後側部との間のいわゆるカウル部に配置され、このカウル部を覆って外観を向上するカウルカバーが用いられている。
【0003】
カウルカバーの上部には、雨水あるいは雪などがエンジンルームに侵入しないようにするための縦壁体が車幅方向に延びて取り付けられている。縦壁体は、倒れ防止用のフランジ状の支持部に係止部が突設され、この係止部がカウルカバーの係止孔に嵌挿されることで、カウルカバーに対して係止されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-247223号公報 (第5頁、
図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような構成においては、縦壁体に対して積雪とその除去とを繰り返すと、係止部が変形し、見栄えが低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、カウルカバーと縦壁体との係止の品質を確保しつつ、見栄え、及び、カウルカバーに対する縦壁体の係止を長期に亘り維持できるカウルカバー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のカウルカバー装置は、カウル部を覆うカウルカバーと、このカウルカバーに対して着脱可能に取り付けられ、取り付けられた状態でこのカウルカバーに対して立ち上がって位置する縦壁体と、を備え、前記縦壁体は、車幅方向の端部に挿入部を有し、前記カウルカバーは、前記挿入部の一部が車幅方向に挿入される規制部を有し、前記挿入部は、前記縦壁体への車幅方向と交差する所定方向の荷重に対する前記カウルカバーからの反力によって車幅方向へと弾性変形可能に形成されているものである。
【0008】
請求項2記載のカウルカバー装置は、請求項1記載のカウルカバー装置において、挿入部は、車幅方向と交差する所定方向に延びる第一腕部と、この第一腕部の端部から車幅方向に延びて規制部に挿入される第二腕部と、を備え、前記第二腕部は、先端部から前後方向に延びるストッパ部を有し、カウルカバーは、前記ストッパ部に対し車幅方向に対向する抜け止め部と、前記第一腕部の端部に対し前記所定方向に対向する突き当て部と、を有するものである。
【0009】
請求項3記載のカウルカバー装置は、請求項2記載のカウルカバー装置において、第一腕部の端部は、突き当て部に対し、規制部に向かって車幅方向に傾斜して車幅方向と交差する所定方向に対向するものである。
【0010】
請求項4記載のカウルカバー装置は、請求項2または3記載のカウルカバー装置において、ストッパ部は、第二腕部の先端部に対して車幅方向と交差する所定方向にそれぞれ延びて形成され、規制部側の側部が前記第二腕部から前記所定方向に向かい徐々に前記規制部から離れるように傾斜されているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のカウルカバー装置によれば、挿入部の位置を規制部によって車幅方向と交差する所定方向に規制し、通常の取り付け状態では、カウルカバーと縦壁体との係止の品質を確保できる。縦壁体に対して所定方向に荷重が加わると、カウルカバーからの反力により挿入部が車幅方向へと弾性変形して、挿入部が規制部に対し車幅方向に挿入された状態を維持しつつ荷重を車幅方向に逃がすことができるので、縦壁体をカウルカバーから外れにくくでき、かつ、荷重が解除された状態では挿入部が復帰変形することでカウルカバーと縦壁体とを再度係止できる。挿入部の経時的な変形を抑制して、見栄え、及び、カウルカバーに対する縦壁体の係止を長期に亘り維持できる。
【0012】
請求項2記載のカウルカバー装置によれば、請求項1記載のカウルカバー装置の効果に加えて、縦壁体に対して車幅方向と交差する所定方向に荷重が加わると、第一腕部が突き当て部に突き当たってその反力によって第一腕部が規制部に呼び込まれつつ車幅方向に弾性変形してストッパ部が抜け止め部から離れることにより、荷重を効果的に逃がすことができる。
【0013】
請求項3記載のカウルカバー装置によれば、請求項2記載のカウルカバー装置の効果に加えて、縦壁体に対して車幅方向と交差する所定方向に荷重が加わった際に、突き当て部からの反力によって、第一腕部が規制部へと容易に呼び込まれるように変形しやすくなる。
【0014】
請求項4記載のカウルカバー装置によれば、請求項2または3記載のカウルカバー装置の効果に加えて、障害物が衝突して車体に対して荷重が加わった際に、縦壁体がカウルカバーから容易に外れ、障害物への反力を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態のカウルカバー装置の一部を示す斜視図である。
【
図2】同上カウルカバー装置のカウルカバーの一部を示す斜視図である。
【
図3】同上カウルカバー装置の縦壁体の一部を示す斜視図である。
【
図6】同上カウルカバー装置を備える車体を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態のカウルカバー装置の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図6において、10は車両である自動車の車体で、この車体10には、エンジンルーム11を覆うフード12と、車室13の前側に位置するウインドシールドとしてのフロントガラス14との間のカウル部15を覆ってカウルカバー装置16が配置されている。なお、以下、前後、上下、及び両側などの方向については、車体10の直進方向を基準として説明し、矢印FR方向が前方、矢印RR方向が後方、矢印U方向が上方、矢印D方向が下方、及び、矢印W方向が両側方向である車幅方向である。
【0018】
カウル部15は、エアボックスなどとも呼ばれるもので、例えば鉄板にて形成された車体部材としてのカウルトップパネルにより、上側を開口した樋状に形成されている。そして、このカウル部15には、車室13内に外気を導入する空調装置の空気取入部が接続されているとともに、このカウル部15の一側には、ワイパのワイパアームを駆動するモータやワイパリンクなどが配置されている。
【0019】
フード12は、車体10の前部に位置してエンジンルーム11を開閉可能に覆うボンネットフードである。
【0020】
そして、
図4及び
図5に示すカウルカバー装置16は、カウルカバー18と、このカウルカバー18に対して着脱可能な縦壁体19と、を備える。カウルカバー装置16は、フロントガラス14とフード12との間のカウル部15すなわちカウルトップパネルの上側を覆って外観を向上するとともに、カウル部15とエンジンルーム11とを仕切るものである。
【0021】
カウルカバー18は、カウルトップカバーとも呼ばれ、例えばポリプロピレン(PP)などの、縦壁体19よりも硬質の合成樹脂などの部材により長手状に形成され、車幅方向に長手方向を沿わせて配置されている。カウルカバー18は、エンジンルーム11やフード12の形状及びワイパの配置などに応じて適宜の形状を採るものであるが、本実施の形態では、基本的に、車幅方向を長手方向とし、フロントガラス14の前縁部に連なって配置されている。
【0022】
カウルカバー18は、カバー本体部25を備えている。カバー本体部25は、フロントガラス14と略平行に傾斜して長手方向に連なって形成されている。また、カバー本体部25のフロントガラス14に対向する後部には、保持部26が突設されている。保持部26は、カバー本体部25との間でフロントガラス14の前縁部を受ける部分である。保持部26は、カバー本体部25の下部から後方に向けて突設されている。保持部26は、カバー本体部25の後縁部全体に亘り形成されていてもよいし、カウルカバー18の長手方向に間欠的に複数の箇所に形成されていてもよい。
【0023】
また、カバー本体部25には、遮蔽部28が形成されている。遮蔽部28は、カバー本体部25の前端部から上下方向に延出されている。遮蔽部28は、車体部材により下部が支持され、エンジンルーム11とカウル部15とを前後に仕切る壁面を形成する。本実施の形態では、遮蔽部28は、カバー本体部25から下方に延びる下部遮蔽部28aと、カバー本体部25から上方に延びる上部遮蔽部28bと、上部遮蔽部28bと連なるフードシール面部28cと、を有する。
【0024】
下部遮蔽部28aは、カバー本体部25の前端部から下方に延び、先端部が前方に向かって屈曲されている。下部遮蔽部28aは、車体部材に重ねられ、ボルトなどの固定部材により車体部材に対して固定される。
【0025】
上部遮蔽部28bは、カバー本体部25の前端部から前方上側に向かい傾斜状に延びている。
【0026】
フードシール面部28cは、上部遮蔽部28bの前端部から前方に平面状に延びて形成されている。フードシール面部28cの上部には、フード12の後部下面に圧接されるフードシール31が取り付けられている。そして、フードシール31が、閉じた状態のフード12に液密に密着することで、エンジンルーム11からの熱気や臭気を遮蔽するようになっている。
【0027】
また、カバー本体部25には、長手方向の一端部、すなわち車幅方向の一側部に、ワイパの軸が貫通するワイパピボット穴部33が形成されている。
【0028】
さらに、カバー本体部25には、長手方向の他端部、すなわち車幅方向の他側部に、空気取入口34が形成されている。空気取入口34は、エアインテークとも呼ばれ、カウル部15に外気を導入可能なものである。本実施の形態において、空気取入口34は、例えば格子状(メッシュ状)に形成されている。
【0029】
そして、カバー本体部25には、縦壁体19の下端部が着脱可能に取り付けられる溝部35が形成されている。溝部35は、カバー本体部25に長手方向に延びて形成されている。すなわち、溝部35は、車幅方向に延びて形成されている。本実施の形態において、溝部35は、カバー本体部25(カウルカバー18)の長手方向の他端部から、長手方向の中央部よりも他端部寄りの位置まで延びている。図示される例では、溝部35は、カバー本体部25(カウルカバー18)の車幅方向の他側部寄りに位置している。溝部35は、断面U字状のU字溝である。溝部35は、空気取入口34の後部に沿って形成されている。
【0030】
また、
図1、
図2及び
図5に示すように、カバー本体部25には、溝部35の車幅方向外側の端部に位置して、壁部37が立ち上げられている。壁部37は、カウルカバー18の端末部に設定されている。壁部37は、車幅方向と交差する所定方向である前後方向に面状に延びて形成されている。すなわち、壁部37は、溝部35に対して交差する方向に延びている。壁部37には、縦壁体19の位置を規制する規制部38と、縦壁体19を車幅方向に抜け止めする抜け止め部39と、が形成されている。
【0031】
規制部38は、壁部37の上部を切り欠いて形成され車幅方向に開口する溝である。規制部38には、縦壁体19の一部が挿入され、縦壁体19の位置を前後方向に規制する。規制部38は、上側から下側に向かい、徐々に前後方向の幅が狭くなるように形成されている。規制部38は、溝部35に対して前方に位置している。
【0032】
抜け止め部39は、縦壁体19を車幅方向の中央部側に抜け止めする部分である。抜け止め部39は、規制部38に隣接して形成されている。抜け止め部39は、前後方向に面状に延びている。抜け止め部39は、溝部35から見て、壁部37の背面側に位置する。すなわち、抜け止め部39は、壁部37を基準として、溝部35とは車幅方向の反対側に位置する。本実施の形態において、抜け止め部39は、規制部38の前部から前方、及び、後部から後方にそれぞれ延びて形成されている。
【0033】
一方、
図1、
図4及び
図5に示す縦壁体19は、カウルカバー18の溝部35に取り付けられた状態でカウルカバー18に対して立ち上がって位置する。縦壁体19は、例えばTPO(熱可塑性エラストマ)、あるいはゴムなどの、弾性を有する軟質の合成樹脂により一体成形されている。縦壁体19は、異物や水分、あるいは雪などのエンジンルームへの進入を防止する機能や、衝突時などにフード12に加わった下方への荷重を吸収したりする機能を備えている。縦壁体19は、車幅方向に沿って長手状に設けられ、カバー本体部25の上部にて溝部35に着脱可能に固定される。したがって、縦壁体19は、カウルカバー18の長手方向の他端部寄り、すなわち車幅方向の他側部寄りに位置し、空気取入口34の後方に立ち上がっている。
【0034】
縦壁体19は、縦壁体本体部41を備えている。縦壁体本体部41は、略一定の高さを有し、上下方向及び車幅方向に延びる壁状に形成されている。縦壁体本体部41は、カバー本体部25に対して上部に位置し、上端部がフード12の下面に近接して対向する位置となっている。本実施の形態において、縦壁体本体部41は、上端部近傍が、上方に向かって徐々に前方へと湾曲して形成されている。
【0035】
また、縦壁体19は、支持部42を備えている。支持部42は、縦壁体19を縦壁体本体部41への後方からの荷重に対して倒れ防止する部分である。支持部42は、縦壁体本体部41の前部から前方に延びる板状に形成されている。支持部42は、カバー本体部25の上面に重ねられて位置する。支持部42は、縦壁体本体部41の長手方向である車幅方向に、連なって、または、間欠的に配置されている。
【0036】
縦壁体本体部41の前部と支持部42との間に亘り、縦壁体本体部41を補強する補強部43が形成されている。補強部43は、例えば前後方向及び上下方向に延びるリブである。本実施の形態において、補強部43は、縦壁体本体部41の長手方向である車幅方向に離れて複数配置されている。
【0037】
また、縦壁体本体部41の下部には、溝部35に挿入される基部45が突設されている。基部45は、例えば前後方向に沿うリブ状に形成されている。基部45は、支持部42の下部に位置する。基部45は、縦壁体本体部41の長手方向である車幅方向に、連なって、または、間欠的に配置される。基部45には、溝部35の底部に形成された開口部に挿入される係止部46が突設されている。
【0038】
さらに、
図1及び
図3に示すように、縦壁体19には、カウルカバー18の規制部38に一部が挿入される係止爪である挿入部48が形成されている。挿入部48は、縦壁体19の長手方向の端部である車幅方向の外側部に位置している。挿入部48は、縦壁体19の車幅方向の端末部に設定されている。挿入部48は、基端部側が前後方向に沿うとともに、先端部側が車幅方向に沿うように屈曲されている。本実施の形態において、挿入部48は、基端部である第一腕部51と、規制部38に挿入される先端部である第二腕部52と、を一体的に有する。
【0039】
第一腕部51は、挿入部48の基端部を構成する部分である。第一腕部51は、前後方向に延びて形成されている。第一腕部51は、縦壁体本体部41の前部から前方へと突出している。本実施の形態において、第一腕部51は、縦壁体本体部41に対して、前方に向かい車幅方向外側へと徐々に拡開する傾斜面状に形成されている。第一腕部51は、壁部37に対して内側、すなわち溝部35側に重ねられて位置する。第一腕部51は、第二腕部52が規制部38に挿入された状態で、先端部が規制部38の前側の縁部に向かって延び、この規制部38の前側の縁部に当接されている。すなわち、規制部38の前側の縁部は、第一腕部51の先端部である前端部と前後方向に対向する突き当て部53となっている。突き当て部53は、車幅方向に延びる面状に形成されている。突き当て部53に対し、第一腕部51の先端部である前端部は、規制部38に向かって、すなわち車幅方向外側に向かって傾斜して前後方向に対向している。また、第一腕部51は、連結部54により補強部43及び縦壁体本体部41と連結されている。本実施の形態において、連結部54は、車幅方向に沿うリブ状に形成されている。
【0040】
第二腕部52は、挿入部48の先端部を構成する部分である。第二腕部52は、規制部38に嵌合する断面形状を有する。第二腕部52は、第一腕部51の先端部である前端部から車幅方向外側に屈曲状に延びて形成されている。第二腕部52は、第一腕部51に対して鈍角状に屈曲されている。すなわち、第一腕部51と第二腕部52とがなす角度は、90°より大きく設定されている。第二腕部52は、規制部38に挿入されて前後方向に位置が規制される。第二腕部52の先端部は、規制部38よりも車幅方向外側へと延出されている。
【0041】
第二腕部52の先端部には、ストッパ部56が形成されている。ストッパ部56は、挿入部48の先端部を構成する部分である。ストッパ部56は、第二腕部52の先端部から前後方向に延びて形成されている。したがって、ストッパ部56は、規制部38よりも前後方向に幅広に形成されている。ストッパ部56は、第二腕部52が規制部38に挿入された状態で、壁部37に対して溝部35とは反対側、すなわち壁部37の外側に位置する。本実施の形態において、ストッパ部56は、第二腕部52に対して前後両側にそれぞれ延びて形成されている。そのため、挿入部48の先端部はT字状に形成されている。ストッパ部56は、第二腕部52が規制部38に挿入された状態で、車幅方向の内側、すなわち第二腕部52と連なる側の側部が、抜け止め部39に対し車幅方向に対向し、抜け止め部39に近接または重ねられて位置する。また、ストッパ部56の車幅方向の外側は、カウルカバー18が存在しない、解放された空間部となっている。
【0042】
そして、カウルカバー装置16は、カウルカバー18に対して縦壁体19を係止することで組み立てられる。
【0043】
具体的に、縦壁体19の基部45、係止部46、及び挿入部48の第二腕部52を、カウルカバー18の溝部35、開口部、及び規制部38に位置合わせして、縦壁体19をカウルカバー18に対して上方から下方に押し込むことで、縦壁体19の基部45、係止部46、及び挿入部48の第二腕部52がカウルカバー18の溝部35、開口部、及び規制部38にそれぞれ挿入されて、縦壁体19がカウルカバー18に取り付けられる。すなわち、縦壁体19は、カウルカバー18に対して、位置合わせ及び押し込みによってワンタッチで容易に取り付けられる。
【0044】
この状態で、縦壁体19の縦壁本体部41がカウルカバー18のカバー本体部25に対して上方に立ち上がり、縦壁体19の支持部42がカウルカバー18のカバー本体部25上に重ねられた位置で、縦壁体19の前後方向の位置が規制部38に嵌合された挿入部48の第二腕部52によって規制され、車幅方向の位置が抜け止め部39に嵌合されたストッパ部56によって規制される。
【0045】
縦壁体19をカウルカバー18に取り付けたカウルカバー装置16は、フロントガラス14の前縁部をカバー本体部25と保持部26との間に挟み込んで車体に取り付ける。
【0046】
このように、カウルカバー装置16は、カウルカバー18がカウル部15を覆い、車室13内などへの水の進入を防止するとともに、フード12を閉じた状態で、フードシール31が変形してフード12に密着し、エンジンルーム11からの熱気や臭気を遮蔽し、空気取入口34から車室13内に取り入れないようになる。また、縦壁体19が閉じた状態のフード12に近接し、異物や水分、あるいは雪などのエンジンルーム11への進入を防止する。
【0047】
縦壁体19の上部側となる後部に積雪が生じた場合などには、縦壁体19に対し、
図1の矢印Lに示すように、前後方向への荷重が生じる。この荷重により、縦壁体19の挿入部48は、第一腕部51が壁部37を滑るように移動して壁部37に沿って前方へと向かう力が生じることで、第一腕部51の前端部が、その前方に対向する突き当て部53に突き当たり、その反力が生じる。そのため、カウルカバー18よりも軟質の部材で形成された縦壁体19は、突き当て部53からの反力に応じて、
図1の二点鎖線に示すように、挿入部48の第一腕部51が規制部38内へとスライドするように車幅方向外側へと弾性変形し、第二腕部52が規制部38から車幅方向外側へと移動してストッパ部56が抜け止め部39から離れることで、挿入部48が規制部38に挿入された状態を維持しつつ荷重を車幅方向外側に逃がすことができる。
【0048】
除雪などにより縦壁体19への荷重が解除されると、縦壁体19の挿入部48は、第二腕部52が規制部38内に位置し、ストッパ部56が抜け止め部39に近接または当接する元の嵌合状態へと第一腕部51が復帰変形する。
【0049】
このように、第1の実施の形態によれば、縦壁体19の車幅方向の端部に位置する挿入部48の一部をカウルカバー18の規制部38に対して車幅方向に挿入することで、挿入部48の位置を規制部38によって前後方向に規制し、通常の取り付け状態では、カウルカバー18と縦壁体19との係止の品質を確保しつつ、縦壁体19に対して前後方向に荷重が加わると、カウルカバー18からの反力により挿入部48が車幅方向に弾性変形することで、挿入部48が規制部38に対し車幅方向に挿入された状態を維持しつつ荷重を車幅方向に受け流して逃がすことができるので、縦壁体19をカウルカバー18から外れにくくできるとともに、荷重が解除された状態では挿入部48が復帰変形することでカウルカバー18と縦壁体19とを再度係止できる。したがって、積雪及びその除去を繰り返したとしても、挿入部48が経時的に変形しにくく、見栄え、及び、カウルカバー18に対する縦壁体19の係止を長期に亘り維持できる。
【0050】
挿入部48を、前後方向に延びる第一腕部51と、第一腕部51の端部から車幅方向に延びて規制部38に挿入される第二腕部52とにより形成し、カウルカバー18に、第二腕部52のストッパ部56に対して車幅方向に対向する抜け止め部39と、第一腕部51の端部が前後方向に突き当たる突き当て部53と、を形成することで、縦壁体19に対して前方に荷重が加わると、第一腕部51が突き当て部53に突き当たってその反力によって第一腕部51が規制部38に呼び込まれつつ車幅方向に弾性変形してストッパ部56が抜け止め部39から離れることにより、荷重を効果的に逃がすことができる。
【0051】
特に、第一腕部51の前端部は、突き当て部53に対して、車幅方向外側に傾斜して前後方向に対向しているので、縦壁体19に対して前方に荷重が加わった際に、突き当て部53からの反力によって、第一腕部51が規制部38へと容易に呼び込まれるように変形しやすくなる。
【0052】
なお、
図7に示す第2の実施の形態のように、ストッパ部56の規制部38側の側部を、第二腕部52から前方に向かい徐々に規制部38から離れるように傾斜させた傾斜部56aとしてもよい。すなわち、ストッパ部56を、第二腕部52から前方に向かい車幅方向の厚みが徐々に小さくなるようにテーパ形状に形成してもよい。この場合には、例えば障害物が衝突するなどして車体に対して荷重が前方から加わった際に、縦壁体19がカウルカバー18から容易に外れ、障害物への反力を抑制できる。
【0053】
また、上記の各実施の形態において、カウルカバー装置16は、車体10の前部以外の部分に設け、例えば、ウインドシールドとしてのリアガラスと(リア)コンパートメントとの間のカウル部を覆って配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば、自動車のフロントガラスとエンジンルームとの間のカウル部を覆うカウルカバーに適用できる。
【符号の説明】
【0055】
15 カウル部
16 カウルカバー装置
18 カウルカバー
19 縦壁体
38 規制部
39 抜け止め部
48 挿入部
51 第一腕部
52 第二腕部
53 突き当て部
56 ストッパ部