(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】飲料製造装置
(51)【国際特許分類】
A47J 43/07 20060101AFI20240514BHJP
A47J 43/046 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A47J43/07
A47J43/046
(21)【出願番号】P 2021035917
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】網野 梓
(72)【発明者】
【氏名】土屋 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】林 正二
(72)【発明者】
【氏名】金子 智則
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-513258(JP,A)
【文献】特開2009-163622(JP,A)
【文献】特公昭45-006223(JP,B1)
【文献】特開2015-156994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 42/00-44/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料を入れる容器と、
飲料を加熱する加熱装置と、
前記容器の底面部に配置され飲料を撹拌する撹拌子と、
前記撹拌子を回転駆動する駆動部と、
を備え、
前記撹拌子は、上下方向に連通する孔
と前記容器の底面部と対向する下端面に形成され前記孔と当該撹拌子の外周とに連通する溝部
とを有する
本体部と、前記本体部の上部の径方向両端にかけ渡すように配置された支持部材と、前記支持部材から上側に延出するように設けられ前記撹拌子の回転運動をガイドするガイド部材と、を有し、
前記本体部は、上部に、径方向中央部に向かって下り傾斜した窪みを有し、
前記溝部は、前記本体部の前記下端面を径方向に横断するように設けられ、両端部が前記本体部の外周面に開口部を形成し、
前記孔は、前記本体部の径方向中央部に設けられ、一端部が前記窪みの最深部に開口し、他端部が前記溝部の底部に開口する飲料製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の飲料製造装置において、
前記本体部の前記窪みは、被抽出物を支持する支持部となる飲料製造装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の飲料製造装置において、
前記溝部は、断面積が前記撹拌子の径方向中央部側から外周面側に向かうに従って大きくなるように形成される飲料製造装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の飲料製造装置において、
前記撹拌子は、前記下端面の内側に第1磁石を有し、
前記駆動部は、前記第1磁石との間で磁気吸引力を発生するように配置された第2磁石を有し、
前記第1磁石は、前記溝部を避けて前記下端面の内側に配置される飲料製造装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の飲料製造装置において、
前記撹拌子は、内部に密閉された空洞が形成される飲料製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2016-214838号公報(特許文献1)に記載された撹拌装置がある。特許文献1の撹拌装置では、撹拌子が、撹拌容器の底部と対向する撹拌子の下面に、撹拌容器の底部に接触する接触部と、撹拌容器の底部から離間した非接触部とを備えており、非接触部において撹拌容器の底面に対して空間を設けた状態で回転する(段落0060参照)。特許文献1には、撹拌容器の底面と撹拌子との間で発生する回転流を撹拌に有効に活用することができると説明されている(段落0060参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の撹拌装置は、撹拌容器の底面と撹拌子との間で発生する回転流を撹拌に有効に活用するものであるが、撹拌子の底面と撹拌子との間で発生する回転流を撹拌子の上側に効率よく導くための構成について十分な配慮がなされていなかった。
【0005】
本発明の目的は、容器の底面部の飲料を撹拌子の上側に効率よく導くことができ、撹拌性能を向上した飲料製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の飲料製造装置は、
飲料を入れる容器と、
飲料を加熱する加熱装置と、
前記容器の底部に配置され飲料を撹拌する撹拌子と、
前記撹拌子を回転駆動する駆動部と、
を備え、
前記撹拌子は、上下方向に連通する孔と前記容器の底面部と対向する下端面に形成され前記孔と当該撹拌子の外周とに連通する溝部とを有する本体部と、前記本体部の上部の径方向両端にかけ渡すように配置された支持部材と、前記支持部材から上側に延出するように設けられ前記撹拌子の回転運動をガイドするガイド部材と、を有し、
前記孔は前記本体部の径方向中央部に設けられ、
前記溝部は、前記本体部の前記下端面を径方向に横断するように設けられ、両端部が前記本体部の外周面に開口部を形成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容器の底面部の飲料を撹拌子の上側に効率よく導くことができ、撹拌性能を向上した飲料製造装置を提供することができる。
【0008】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の一実施例に係る飲料製造装置1の外観図であり、(a)は上から見た上面図、(b)は側方から見た側面図である。
【
図1B】本発明の一実施例に係る飲料製造装置1の断面図であり、中心軸線1aに平行で、且つ中心軸線1aを含む垂直な断面を示す断面図である。
【
図1C】本発明の一実施例に係る飲料製造装置1の内部構成部品を中心軸線1a上に分解して示す分解立体図である。
【
図2A】飲料製造装置1の容器2に撹拌装置21を組み付けた状態を示す部分組立図であり、(a)は上面図、(b)は垂直断面図(上面図(a)のIIb-IIb断面図)である。
【
図2B】
図2Aの容器2と撹拌装置21との組立品を中心軸線1a上に分解して示す分解立体図である。
【
図2C】
図2A(b)のIIC-IIC断面を示す断面図である。
【
図3A】撹拌装置21の回転撹拌部212の外観を示す上面図である。
【
図3B】撹拌装置21の回転撹拌部212の外観を示す図であり、斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】撹拌装置21の静止撹拌部211の外観図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【
図5】
図1BのV部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図6A】飲料製造装置1の駆動部6の垂直断面図である。
【
図6B】駆動部6を斜め下方から見た斜視図である。
【
図6C】駆動部6を中心軸線1a上に分解して示す分解立体図である。
【
図7A】温度調節部3を斜め上方から見た斜視図である。
【
図7C】温度調節部3の垂直断面図(
図7BのVIIIC-VIIC断面図)である。
【
図8A】温度調節部3の支持部材34の外観図であり、(a)は上面図、(b)は上面図のVIIIb-VIIIb断面を示す断面図である。
【
図8B】支持部材34を斜め上方から見た斜視図である。
【
図8C】支持部材34を斜め下方から見た斜視図である。
【
図9】飲料製造装置1の容器2に撹拌子5を組み付けた状態を示す部分組立図であり、
図2A(b)と同様な断面で示す垂直断面図である。
【
図10A】撹拌子5の外観図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【
図10B】撹拌子5を斜め上方から見た斜視図である。
【
図10C】撹拌子5を斜め下方から見た斜視図である。
【
図10D】撹拌子5の断面図であり、
図10A(a)のXD-XD断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。最初に、
図1A乃至
図1Cを参照して、飲料製造装置1の全体構成について、説明する。
図1Aは、本発明の一実施例に係る飲料製造装置1の外観図であり、(a)は上から見た上面図、(b)は側方から見た側面図である。
図1Bは、本発明の一実施例に係る飲料製造装置1の断面図であり、中心軸線1aに平行で、且つ中心軸線1aを含む垂直な断面を示す断面図である。
図1Cは、本発明の一実施例に係る飲料製造装置1の内部構成部品を中心軸線1a上に分解して示す分解立体図である。
【0011】
図1Aに示すように、飲料製造装置1は、本体10と、本体10の上側に配置されたハウジング202と、ハウジング202の上端部を閉塞する蓋体201と、を備える。ハウジング202と蓋体201とは上側から見た形状が円形を成すように形成される。
【0012】
図1Bに示すように、本体10の内側には、駆動部(駆動装置)6と、冷却ファン12とが配置される。冷却ファン12は本体10の底面10Aに載置される。駆動部6は電動モータ等で構成され、上側の一部(上部)がハウジング202の下部に挿入された状態で、本体10に支持されている。
図1Bには図示していないが、本体10の内側には制御部(制御装置)が配置され、駆動部6は制御部によって駆動制御が行われる。ハウジング202は飲料製造装置1の上側ハウジングを構成し、本体10の外郭が飲料製造装置1の下側ハウジングを構成する。
【0013】
またハウジング202の内側には、カップ状の容器(本体カップ)2と、温度を調整する温度調節部3とが収容される。温度調節部3は、加熱部(加熱装置)31,32と、ラジエータ33と、ラジエータ33を支持する支持部材34と、を含んで構成される。
【0014】
温度調節部3は、容器2の下部側面を覆う金属カップ31と、金属カップ31の外周を覆う被覆部材32と、を備えて構成される。被覆部材32を柔軟なシートヒータとし、金属カップ31を熱伝達部材として、金属カップ31及び被覆部材32で加熱部(ヒータ)を構成することができ、或いは金属カップ31に剛体ヒータを鋳込み、被覆部材32を断熱材や不燃性部材(例えば金属部材)とすることで加熱部(ヒータ)を構成することもできる。
【0015】
支持部材34はラジエータ33を受ける部材であると共に、後述する液漏れ(漏水)が発生した場合の液(水)の受け皿となる部材である。支持部材34は、ハウジング202と本体10との間に配置され、その外周面がハウジング202及び本体の外部に露出している。言い換えれば、支持部材34の外周面はハウジングの一部(中間ハウジング)を構成する。
【0016】
温度調節部3はハウジング202の内側下部に配置され、容器2は温度調節部3に対して上側に配置される。容器2の形状は温度調節部3に内蔵された加熱部31,32の内側形状に合っており、容器2の下部外面が加熱部31,32の内面に嵌め合わされている。すなわち容器2は、その下部側面が加熱部31,32で覆われるように、配置されている。容器2は加熱部31,32に対して着脱自在である。加熱部31,32は容器2の側面に設けられて、容器2、ひいては容器2内の内容物を加熱することができる。
【0017】
蓋体201は、ハウジング202の上端部を覆うと共に、容器2の上部の開口2a(
図2A参照)を閉塞する容器2の蓋部を構成する。蓋部201は、容器2の開口2aを閉塞する際に容器2に対して下方向へ押す力を及ぼす。例えば、蓋体201とハウジング202の各々に吸引力を生じさせる磁石を埋め込み、蓋体201による閉塞時に蓋体201が鉛直方向下向きに引き付けられることを利用して容器2を下方向に押してもよい。また例えば、蓋体201とハウジング202との固定様式として、ネジ、つまり幾何的に蓋体201とハウジング202とを引き付けながら固定するような様式を用いて、結果的に蓋体201から容器2へ下向きの力を及ぼしてもよい。
【0018】
加熱部31,32は、容器2内の飲料を加熱する。本実施例では、容器2内に撹拌装置21を配置する場合と、撹拌子5を配置する場合とがある。撹拌装置21は飲料を撹拌する装置であり、撹拌子5は被抽出物から飲料(スープや出汁等)を抽出すための装置である。飲料は撹拌物又は抽出物と呼んで説明する場合がある。また飲料は流体である。
【0019】
図1Bでは、容器2の内部に静止撹拌部211と回転撹拌部212とを備えて構成される撹拌装置21が配置された例を図示している。容器2の内部には撹拌子(保持部)5(
図9参照)を配置することもでき、容器2の内部に撹拌子5を配置した構成については後述する。
【0020】
図1Bに示すように、容器2の中心軸線を飲料製造装置1の中心軸線1aとして設定する。回転撹拌部212の中心軸212Dの中心及び駆動部6のモータ回転軸の中心は、それぞれ中心軸線1a上に配置される。
【0021】
図1Cに示すように、容器2、温度調節部3及び駆動部6は、中心軸線1aに沿って本体10に組み付けられる。この場合、温度調節部3を構成する加熱部31,32、ラジエータ33及び支持部材34は予め一体に組み付けられて、本体10に組み付けられることが好ましい。この場合、駆動部6の最大外径D6は支持部材34の内径D34cよりも大きいため、駆動部6の下部を支持部材34の上側から支持部材34の開口部34cに挿入した状態で、駆動部6を本体10に組み付けるとよい。ラジエータ33の内径D33は駆動部6の最大外径D6よりも大きく構成されているので、例えば、ラジエータ33と加熱部31,32とを組み付けた状態で、駆動部6を組み付けた支持部材34に組み付けることができる。
【0022】
図2A乃至
図2Cを参照して、撹拌装置21を組み付けた容器2について説明する。
図2Aは、飲料製造装置1の容器2に撹拌装置21を組み付けた状態を示す部分組立図であり、(a)は上面図、(b)は垂直断面図(上面図(a)のIIb-IIb断面図)である。
図2Bは、
図2Aの容器2と撹拌装置21との組立品を中心軸線1a上に分解して示す分解立体図である。
図2Cは、
図2A(b)のIIC-IIC断面を示す断面図である。
【0023】
図2Aに示すように、撹拌装置(マドラー)21は、後述する撹拌子5(
図9参照)と交換可能であり、容器2内に収納される。
【0024】
容器2は、下端部に平坦状に形成された底面部2cと、底面部2cから上方に向かって形成された側面部2bと、を有し、上端部に開口2aを有し、カップ状に形成される。側面部2bは、容器2の開口縁部に形成された上側側面部(上縁部)2b1と、上側側面部2b1の下方に形成された下側側面部(側面本体部)2b2と、上側側面部2b1と下側側面部2b2との間に形成された段付き部(段差部)2b3と、を有する。下側側面部2b2は、中心軸線1aに対して角度θ1で傾斜したテーパ形状を成しており、中心軸線1aを中心とする半径が、中心軸線1aに沿って上方から下方に向かうに従って、一定の割合で減少している。段付き部(段差部)2b3では、上側側面部2b1と下側側面部2b2との間で、中心軸線1aに沿って上方から下方に向かうに従って、半径が急激に小さくなる。
【0025】
撹拌装置21は、静止撹拌部211と回転撹拌部212とを備えて構成される。回転撹拌部212は、駆動部6によって回転する撹拌部である。静止撹拌部211は、駆動部6によって直接駆動されない撹拌部であり、非駆動撹拌部と呼ぶ場合もある。非駆動撹拌部211は容器2に固定されておらず、例えば撹拌される流体の流れによって軸回転可能に配置されている。もちろん非駆動撹拌部211は、軸回転しないように容器2の中に配置されてもよい。以下の説明では、軸回転する場合も含めて、静止撹拌部211と呼んで説明する。
【0026】
図2A乃至
図2Cと共に
図3A及び
図3Bを参照して、回転撹拌部212について詳細に説明する。
図3Aは、撹拌装置21の回転撹拌部212の外観を示す上面図である。
図3Bは、撹拌装置21の回転撹拌部212の外観を示す図であり、斜め下方から見た斜視図である。
【0027】
図2Aに示すように、回転撹拌部212は、円板212Aと、円板212Aの中心部に設けられた中心軸212Dと、中心軸212Dから径方向外側に向かって延出するように設けられた翼部(動翼部)212Bと、を有する。円板212Aは、その下面から下方に突出する凸部212Aaを有し、回転撹拌部212の回転中心となる。なお、容器2の底面に凸部212Aaを受ける凹部を設ければ、回転中心位置をより安定させることができる。
【0028】
翼部(動翼部)212Bは、中心軸212Dの軸方向において上側に設けられた上側翼部(上側動翼部)212Baと、下側に設けられた下側翼部(下側動翼部)212Bbと、を有する。本実施例の場合、
図3Aに示すように、上側動翼部212Baと下側動翼部212Bbとは3枚の翼部を有する。3枚の翼部は、周方向に例えば等間隔(中心角θ2)に離間して設けられる。
【0029】
また、
図3Aに示すように、回転撹拌部212の円板212Aには、複数の磁石(永久磁石)212Cが設けられる。本実施例では、磁石212Cは円板212Aの中心を挟んで2か所に配置される。磁石212Cは、むき出しではなく、円板212Aの内部に埋め込むのが、衛生・清掃性の面から好ましい。このため、例えば磁石212Cを配置する円板212Aの部位を樹脂で構成し、磁石212Cを樹脂にインサートモールドするとよい。
【0030】
本実施例では、撹拌装置21に設けられる磁石212Cと、撹拌子5に設けられる磁石5pと、駆動部(駆動装置)6に設けられる磁石65とがある。磁石212C,5pを第1磁石、磁石65を第2磁石と呼んで説明する場合がある。なお、磁石212C,5pおよび磁石65はいずれも永久磁石で構成される。
【0031】
また、円板212Aは磁石(第1磁石)212Cを保持する部材であり、第1磁力部を構成する。第1磁石212Cそのものを第1磁力部と呼ぶこともできる。
【0032】
図3Bに示すように、上側動翼部212Baと下側動翼部212Bbとの間には中間翼部(中間動翼部)212Bcが形成される。上側動翼部212Ba、中間動翼部212Bc及び下側動翼部212Bbは、中心軸線1aに沿う方向において連続した1枚の翼部を構成する。上側動翼部212Baの径方向における長さをL212Ba、下側動翼部212Bbの径方向における長さをL212Bb、中間動翼部212Bcの径方向における長さをL212Bcとした場合、L212Ba、L212Bb及びL212Bcは、L212Bb>L212Ba>L212Bcの関係を有し、下側動翼部212Bbの径方向長さL212Bbが最も長く、中間動翼部212Bcの径方向長さL212Bcが最も短い。このため、下側動翼部212Bbは静止撹拌部211の静翼部(非駆動翼部)211Aの下方に延出され、下側動翼部212Bbの外周縁部は円板212Aの外周縁部に対して径方向外側に位置する(
図2A(b)参照)。
【0033】
中間動翼部212Bcは、上側動翼部212Baの下端部(下縁部)と下側動翼部212Bbの上端部(上縁部)との間に、長さL212Bの隙間を形成する。言い換えると、上側動翼部212Ba、中間動翼部212Bc及び下側動翼部212Bbが形成する1枚の翼部は、径方向外側から内側に向かう切欠き212Bdを有する。この切欠き212Bdは、翼部212Ba,212Bc,212Bbが撹拌物から受ける抵抗力を小さくし、回転撹拌部212の回転駆動に必要な駆動トルクを調整する。
【0034】
また、
図3Bに示すように、円板212Aの下面には複数の凸部212Abが設けられる。凸部212Abは、円板212Aの下面全体が容器2の底面(底面部2cの上面)に接触するのを防ぎ、円板212Aの下面と容器2の底面との間に適切な隙間を形成する。これにより、円板212Aの下面と容器2の底面との間に発生する摩擦力を低減することができると共に、円板212Aの下面と容器2の底面との間の微小な隙間に入り込んだ液体によって円板212Aの下面と容器2の底面との間に作用するスクイズ力を低減することができる。
【0035】
次に、
図2A乃至
図2Cと共に
図4を参照して、静止撹拌部211について詳細に説明する。
図4は、撹拌装置21の静止撹拌部211の外観図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【0036】
図2Aに示すように、静止撹拌部211は、径方向において回転撹拌部212の動翼部212Bと対向する複数の翼部(静翼部)211Aと、複数の翼部(静翼部)211Aを連結する連結部211Bと、静翼部211Aの径方向外側に突き出した外縁部211Dと、を有する。これにより、静止撹拌部211は、動翼部212Bに対して径方向外側に配置された静翼部211Aを有する。また、外縁部211Dは、静翼部211Aの径方向外側の面211Aaよりも更に径方向外側に突き出している。
【0037】
上述した様に、静止撹拌部211は、駆動部6によって直接駆動されない撹拌部であり、非駆動撹拌部と呼ぶ場合もある。この呼び方に合わせて、静翼部211Aは非駆動翼部と呼ぶことができる。
【0038】
静翼部211Aは、容器2の内側で上下方向(中心軸線1aに沿う方向)に延設される。静翼部211Aの径方向外側の面211Aaは径方向外側に向かって凸となる円弧面で構成される。静翼部211Aの径方向内側の面211Abは径方向内側に向かって凸となる円弧面で構成される。静翼部211Aの内部は、
図2A及び
図2Cに示すように、空洞211Cになっている。静翼部211Aの内部は、中実でもよい。撹拌すべき流体の密度や粘度が高い場合、後述するような流体からの力を受けて静翼が回りやすくなるが、中実にして静翼部211Aを重くしておくことで、簡単には静翼部211Aが回転せず、動翼部212Bとの相互作用によって効果的に泡を生成することができる。
【0039】
連結部211Bは複数の静翼部211Aをその上端側で接続する。連結部211Bは、2つの静翼部211Aの間において径方向に架け渡された架設部を構成する。連結部211Bの中央部には、上下方向に貫通する貫通孔211Bcが形成される。貫通孔211Bcは、
図2A(a)に図示されるように、回転撹拌部212の中心軸212Dが貫通する通し穴を構成する。
【0040】
蓋体201には回転撹拌部212の中心軸212Dが貫通する通し穴201aが設けられており、この通し穴201aで回転撹拌部212を径方向に支持するガイド部(ラジアル軸受)を構成することができる。
【0041】
一方、連結部211Bの貫通孔211Bcで、回転撹拌部212を径方向に支持して、回転撹拌部212の回転をガイドするように構成してもよい。すなわち連結部211Bの貫通孔211Bcは、回転撹拌部212のラジアル軸受を構成するようにすることもできる。
【0042】
外縁部211Dは、連結部211Bと同一平面上に形成され、外周が容器2の内周面に沿う円弧形状を成す。外縁部211Dが容器2の段付き部2b3に上下方向に係止されることで、静止撹拌部211は容器2の内側に支持される。外縁部211Dは静止撹拌部211における容器2への係止部を構成する。
【0043】
図2Bに示すように、撹拌装置21は、回転撹拌部212、静止撹拌部211の順に容器2の内側に挿入して回転撹拌部212と静止撹拌部211とを組み付ける、或いは回転撹拌部212と静止撹拌部211とを組み付けた組体を容器2の中に挿入する。回転撹拌部212と静止撹拌部211との組み付けに際しては、回転撹拌部212の中心軸212Dは貫通孔211Bcに挿入される。
【0044】
外縁部211Dが設けられることで、
図2A(b)及び
図2Cに示すように、静翼部211Aと容器2の内周面との間に径方向の隙間δ3が形成される。隙間δ3は、容器2の内周面(下側側面部)2b2が
図2A(b)に示すように中心軸線1aに対して角度θ1で傾斜したテーパ形状を成しているため、底面部2c側から開口2a側に向かうに従って、大きくなる。隙間δ3は、静翼部211Aと容器2の内周面との間に撹拌されて発生した泡が流れる流路を形成し、静翼部211Aの前縁側での泡の滞留を抑制又は防止する。なお、回転撹拌部212によって撹拌物(流体)には流れが生じる。静翼部211Aの前縁は撹拌物の流れの中で上流側に位置する縁である。
【0045】
本実施例では、上述した様に、静止撹拌部211は容器2に固定されておらず、撹拌される流体の流れによって軸回転可能に配置されている。静止撹拌部211の静翼部211Aが軸回転できることにより、泡の滞留をより一層改善することができる。
【0046】
静止撹拌部211について、容器2の径方向に沿う、連結部211Bの中心線211Bxに垂直な方向を幅方向と定義する。
【0047】
静止撹拌部211における幅方向の寸法は、静翼部211Aの幅寸法W211Aが連結部211Bの幅寸法W211Bよりも大きい。言い換えれば、連結部211Bの幅寸法W211Bは静翼部211Aの幅寸法W211Aよりも小さい。これにより、静翼部211Aの幅寸法W211Aを大きくしても、連結部211Bの幅方向両側に大きな空間を設けることができ、容器2の内側に撹拌物(例えば調味料や凝固剤等)を投入する際に、撹拌物の投入が容易になる。
【0048】
図5、
図6A乃至
図6Cを参照して、駆動部6の近傍の構成について説明する。
図5は、
図1BのV部を拡大して示す拡大断面図である。
図6Aは、飲料製造装置1の駆動部6の垂直断面図である。
図6Bは、駆動部6を斜め下方から見た斜視図である。
図6Cは、駆動部6を中心軸線1a上に分解して示す分解立体図である。
【0049】
図5及び
図6Aに示すように、駆動部(駆動装置)6は容器2の下方に配置され、撹拌装置21(または撹拌子5)を回転駆動する。駆動部6は、電動モータ61、電動モータ61の支持部材(駆動部支持部材)62、電動モータ61の回転軸61Aに取り付けられた磁石保持部材64、支持部材62に取り付けられて磁石保持部材64を覆うカバー部材63、磁石(永久磁石)65、及び弾性部材66を有し、電動モータ61、支持部材62、カバー部材63、及び磁石保持部材64が一体に構成される。弾性部材66は、コイルばねで構成され、駆動部6が本体10に組み付けられる際に、支持部材62の脚部62Bに組み付けられる。
【0050】
コイルばね66は、その下端部66Aが本体10の支持部10B(
図1C参照)に支持され、本体10の支持部10Bと支持部材62との間に配設される。コイルばね66は、支持部材62を本体10に対して弾性支持し、支持部材62に設けられたカバー部材63を容器2の底面部2cの下面に押し付ける。
【0051】
コイルばね66が組み付けられた脚部62Bはばね支持部を構成し、支持部材62の3か所に設けられる。すなわち3つのばね支持部62Bが支持部材62を弾性支持する。3つのばね支持部62Bは、支持部材62の姿勢を直交する3軸方向において変化させることができる。このため、カバー部材63の姿勢を容器2の底面部2cの傾きに沿わせることができ、容器2の底面部2cに対するカバー部材63の密着度を高めることができる。
【0052】
電動モータ61はそのケーシング(ステータ側)61Bが支持部材62に固定される。
図6B及び
図6Cに示すように、支持部材62には電動モータ61の支持部62Eが設けられる。支持部62Eは支持部材62の下端面62D(上端面62Aとは反対側の端面)に対して下方に配置されることで、磁石保持部材64が配置される空間を形成する。この空間が形成されることで、支持部材62の上端面62Aには開口と内周面62Cとが形成される。支持部材62の内周面62Cには径方向外側に向かって窪む凹部62Fが形成され、凹部62Fに温度センサ13が配置される。
【0053】
カバー部材63は、支持部材62の上端面62Aに固定されて、支持部材62及び温度センサ13の上方を覆う。このとき、支持部材62に支持された駆動部6の電動モータ61もカバー部材63で覆われる。なお、温度センサ13の上面が露出した構成とすることもできる。この場合、温度センサ13の上面を露出させるために、カバー部材63に開口(孔)を設け、開口と温度センサ13との周隙間をシールするとよい。
【0054】
磁石保持部材64は、電動モータ61の回転軸61Aに取り付けられ、電動モータ61により回転駆動される。磁石保持部材64は磁石(第2磁石)65を保持する部材であり、第2磁力部(磁石プレート)を構成する。磁石(第2磁石)65そのものを第2磁力部と呼ぶこともできる。駆動部6の中で、磁石65を保持する磁石保持部材64が回転駆動され、支持部材62及びカバー部材63は電動モータ61により回転駆動されない静止部を構成する。
【0055】
ここで、回転撹拌部212の駆動方法について説明する。回転撹拌部212または撹拌子5が容器内に載置された状態で、電動モータ61を駆動して磁石保持部材64を回転駆動すると、磁石保持部材64に配設された磁石65が回転駆動し、磁石65が回転撹拌部212の磁石(第1磁石)212Cの直下を通過すると、磁石65と磁石212Cとの間に磁気吸引力が作用して磁石65が磁石212Cを引き寄せる。回転撹拌部212は、磁石保持部材64と共に回転する磁石65に引かれて、磁石保持部材64と共に連れ回りする。
【0056】
加熱部31,32により熱せられた容器2内の撹拌物(流体)は、容器2を介してカバー部材63に熱を伝え、容器2内の流体と容器2とカバー部材63との温度が概ね等しくなり、その温度を温度センサ(温度検出部)13が検出する。
容器2の形状誤差や加熱部31に形成されたカップ形状の形状誤差により、容器2を載置した際の底面部2cとカバー部材63の当接具合が変化し、したがって容器2からカバー部材63への熱の伝わり具体が変化し、温度センサ13で検出する温度に誤差が生じる可能性があるが、本構成によれば、カバー部材63が容器2の底面部2cへ当接するよう付勢されているため、カバー部材63と容器2の底面部2cの当接具合が良くなり、検出温度の誤差を抑制できる。
【0057】
また、磁石保持部材(磁石プレート)64の高さ位置が固定されていると、容器2や加熱部31の形状誤差により、加熱部31,32に容器2を載置した場合の姿勢がばらつくと、磁石保持部材64の磁石65と回転撹拌部212の磁石212Cとの間の距離がばらついて両磁石65,212Cの吸引力がばらつくことにより、回転撹拌部212の駆動がばらつくことになる。
【0058】
本実施例では、支持部材62に構成された3つのばね支持部62B,66により、支持部材62が上下方向に変位可能に構成されており、支持部材62に一体に取り付けられたカバー部材63はコイルばね66の付勢力で容器2の底面部2cに押し付けられる。また、磁石保持部材64の磁石65と回転撹拌部212の磁石212Cとの間に作用する磁気吸引力も、カバー部材63を容器2の底面部2cに押し付けることに寄与する。
【0059】
これにより容器2は、蓋部201から下方向への力を受けると共に、支持部材62及びカバー部材63で構成される温度伝達部から上方向への力を受ける。このとき、カバー部材63は強い力で容器2の底面部2cに押し付けられる。
【0060】
カバー部材63が容器2の底面部2cに押し付けられることで、容器2の温度はカバー部材63を介して温度センサ13に伝導される。このため温度検知精度向上の観点から、カバー部材63は熱伝導率の高い素材で構成されることが好ましい。カバー部材は例えばアルミニウムなどで構成することができる。すなわち、カバー部材63は温度の伝導経路(温度伝達部、温度伝達部材)を構成する。温度センサ13は支持部材62に取り付けられる。このため支持部材62は、カバー部材63と共に温度センサ13に熱(温度)を伝達する温度伝達部材を構成する。
【0061】
カバー部材63で構成される、或いはカバー部材63及び支持部材62で構成される温度伝達部は、温度センサ(温度検出部)13と一体に設けられる。また、温度伝達部63,62は駆動部6と一体に設けられ、温度伝達部63,62を容器2の底面部2cに当接するように付勢する弾性部材66を備える。温度伝達部63,62は、駆動部6を上方に付勢する弾性部材66の付勢力と、磁石保持部材64の磁石65及び回転撹拌部212の磁石212Cの吸引力とを利用して、容器2の底面部2cに押し付けられる。すなわち温度伝達部63,62の付勢力として、駆動部6のために設けられる弾性部材66の付勢力と、被駆動部(撹拌部)の駆動力とを利用することができる。その結果、容器2の底面部2cに対する温度伝達部63,62の密着度を高めることができ、温度センサ13を検出精度が向上するように配置した構成が実現される。
【0062】
また、カバー部材63が容器2の底面部2cに押し付けられることで、カバー部材63と一体化された磁石保持部材(磁石プレート)64と容器2の底面部2cとの距離が一定に維持され、磁石保持部材64の磁石65と回転撹拌部212の磁石212Cとの距離が一定に維持される。これにより、両磁石65,212Cの吸引力のばらつきを抑制し、駆動側の磁石65を保持した磁石保持部材(磁石プレート)64の容器2に対する高精度な位置管理を実現することができる。
【0063】
図5、
図7A乃至
図7Cを参照して、温度調節部3の構成について説明する。
図7Aは、温度調節部3を斜め上方から見た斜視図である。
図7Bは、温度調節部3の外観を示す上面図である。
図7Cは、温度調節部3の垂直断面図(
図7BのVIIIC-VIIC断面図)である。
【0064】
図7Aに示すように、温度調節部3は、金属カップ31と被覆部材32とを有する加熱部(加熱装置)31,32と、ラジエータ33と、ラジエータ33の支持部材(温度調節部支持部材)34と、を含んで構成される。なお
図7A乃至
図7Cでは、被覆部材32の図示を省略している。
【0065】
加熱部(加熱装置)31,32は容器2の内容物を加熱し、ラジエータ33は放熱フィン33Aを有し、容器2の内容物(例えば液体飲料)からの放熱を促進する。ラジエータ33からの放熱に当たっては、本体10内に配置された冷却ファン12が駆動される。ラジエータ33及び冷却ファン12は、冷却部(冷却装置)として機能する。
【0066】
図7Bに示すように、加熱部(加熱装置)31,32、ラジエータ33及び支持部材34は中心軸線1aを中心として同心状に配置される。
図7Cに示すように、ラジエータ33は支持部材34の上側に載置され、加熱部31,32はラジエータ33の上側に載置される。
【0067】
図5、
図8A乃至
図8Cを参照して、駆動部6における防水構造について説明する。
図8Aは、温度調節部3の支持部材34の外観図であり、(a)は上面図、(b)は上面図のVIIIb-VIIIb断面を示す断面図である。
図8Bは、支持部材34を斜め上方から見た斜視図である。
図8Cは、支持部材34を斜め下方から見た斜視図である。
【0068】
容器2を配置しない状態で誤って水等の液体を飲料製造装置1に注いだ場合、液体は
図5の図中に実線の矢印F1で示すように流下する。この場合、液体は、駆動部支持部材62の上面を流れて径方向外側に導かれ、ラジエータ33の内径部(内周部)から下方に流れ、温度調節部支持部材34の上面に流下する。
【0069】
温度調節部支持部材34の上面に流下した液体は、ラジエータ33の放熱フィン33Aの間の空間を流れて温度調節部支持部材34の外周側に流れ、温度調節部支持部材34の外周部に形成された排水口34bから本体10の外側に排水される。この過程において、温度調節部支持部材34の内径部(内周部)34cには、上方に向かって立ち上がる立上り部34eが設けられており、内径部から機内(電動モータ61側)への液体の侵入を防止する。
【0070】
本実施例では、本体10の外面に溝10Cが形成されており、排水口34bから流れ出た液体は、溝10Cに流下するように構成されている。なお、排水口34bの出口側(温度調節部支持部材34の下面34d側)には、液体を温度調節部支持部材34の下面よりもさらに下方に導く通路壁34baが形成されており、温度調節部支持部材34と本体10のとの境界から液体が機内に浸入するのを防ぐことができる。
【0071】
これにより、誤って飲料製造装置1に注いだ液体は、駆動部6に流下することなく、駆動部6の電気系統におけるショート等を防ぐことができる。
【0072】
一方、冷却ファン12から送風される空気は、
図5の図中に点線の矢印F2で示すように流れる。本実施例では、空気の流れF2は、液体の流れF1を阻止する立上り部34eを越えて、ラジエータ33に流れ、さらに加熱部(加熱装置)31,32の外周側を流れて飲料製造装置1の上方に抜ける。このように本実施例では、誤って機内に注がれた液体を機外に排水する排水流路と、冷却風をラジエータ33に流す送風流路とが、飲料製造装置1に構成される。
【0073】
駆動部支持部材62は電動モータ61の上部を覆い、液体が電動モータ61に降りかかるのを防止する傘部の役割を担う。また、温度調節部支持部材34はラジエータ33を受ける部材であると共に、液漏れが発生した場合の液体の受け皿となる。
【0074】
再び
図2A乃至
図2Cを参照して、撹拌装置21について説明する。
【0075】
本実施例の撹拌装置21は、静止撹拌部211の静翼部211Aと回転撹拌部212の動翼部212Bとを有することで、均一なサイズの泡を発生させる。以下、この機能について具体的に説明する。
【0076】
上述した様に、回転撹拌部212の動翼部212Bにおいて、下側動翼部212Bbは径方向長さが他の上側動翼部212Ba及び中間動翼部212Bcの径方向長さよりも長く形成されており、
図2A(b)に示すように、静止撹拌部211の静翼部211Aの下端面と対向している。このため、下側動翼部212Bbと上縁部と静翼部211Aの下端面との間に上下方向の隙間δ2が形成される。このような構造において下側動翼部212Bbが回転すると、隙間δ2を含む下側動翼部212Bbの周囲に、撹拌物による複雑な流れ場が形成され、乱流が発生され易くなる。この乱流は、撹拌される撹拌物に圧力差を生じさせ、流体が空気を巻き込んで泡を発生させることに寄与する。
【0077】
流体中に泡が発生すると、泡化していない流体部分よりも局所的に比重の軽い部分が発生することになり、必然的に泡は水面に向かって浮上する。下側動翼部212Bb付近で発生した泡が浮上する際、その大部分は、上側動翼部212Baの回転領域を通過するが、その際、泡が上側動翼部212Baと静翼211Aの隙間δ1で潰されることで、細かいサイズに均一化された泡を得ることができる。完成した飲料を摂る際、サイズの均一化された泡は、サイズのばらついた泡に比べて、滑らかな口当たりを与えることができ、よりよい食体験をもたらすことができる。
【0078】
回転撹拌部212を駆動するトルクは、上側動翼部212Baと静止撹拌部211の静翼部211Aとの間の隙間δ1が最小になるときに、最大となる。このため、回転撹拌部212の動翼部212Bの数と静止撹拌部211の静翼部211Aの数とを同じにすると、最大トルクが発生するタイミングが複数の動翼部212Bと静翼部211Aとの間で重なるため、最大トルクの値が大きくなる。本実施例では、動翼部212Bの数を3、静翼部211Aの数を2としているが、静翼部211Aの数を3とすると、3枚の動翼部212Bが同じタイミングで静翼部211Aを通過することになり、動翼部212Bの数と静翼部211Aの数とが同じになることで最大トルクの値が大きくなり、回転撹拌部212の高速回転時に回転撹拌部212が脱調し、回転駆動できなくなる虞がある。そこで本実施例では、動翼部212Bの数と静翼部211Aの数とを異なる数にしている。具体的には、動翼部212Bの数を3、静翼部211Aの数を2としている。
【0079】
本実施例では、動翼部212Bの数を静翼部211Aの数よりも多くしているが、少なくしてもよい。例えば、動翼部212Bの数を1、静翼部211Aの数を2としてもよい。いずれにしても、静翼部211Aの数を多くすると、複数の静翼部211Aを連結する連結部211Bが容器2の開口(撹拌物投入口)2aの開口面積を小さくすることになる。このため、静翼部211Aの数は少なくすることが好ましく2以下にすることが好ましい。一方、撹拌性能を高めようとすると、静翼部211A及び動翼部212Bの数は多い方が好ましい。撹拌物投入口2aの開口面積を大きく確保して静翼部211A及び動翼部212Bの数を増やすためには、動翼部212Bの数を静翼部211Aの数よりも多くすることが好ましいが、動翼部212Bの数を多くすると動翼部212Bの質量が増えると共に流体抵抗が大きくなるため、回転撹拌部212の駆動トルクが大きくなる。また、動翼部212Bの数が多くなると、単位時間当たりに最大トルクの訪れる回数が多くなり、言い換えれば、駆動に必要なトルクが頻繁に変動するようになる。このような駆動トルクの増大や変動は、回転撹拌部212が脱調するリスクを高める可能性がある。そのため本実施例では、動翼部212Bの数を3、静翼部211Aの数を2としている。
【0080】
上述した様に、動翼部212Bでは、上側動翼部212Baと下側動翼部212Bbとの間に、径方向外側から内側に向かう切欠き212Bd(
図2A参照)を形成し、動翼部212Bが撹拌物から受ける抵抗力を小さくしている。切欠き212Bdの大きさを変化させることにより、回転撹拌部212の駆動トルクを調整することができる。そこで、撹拌性能と最大トルクとのバランスに配慮して、切欠き212Bdの大きさを設定するとよい。
【0081】
図9、
図10A乃至
図10Cを参照して、容器2の内側に撹拌子5を配置した例を説明する。
図9は、飲料製造装置1の容器2に撹拌子5を組み付けた状態を示す部分組立図であり、
図2A(b)と同様な断面で示す垂直断面図である。
図10Aは、撹拌子5の外観図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
図10Bは、撹拌子5を斜め上方から見た斜視図である。
図10Cは、撹拌子5を斜め下方から見た斜視図である。
図10Dは、撹拌子5の断面図であり、
図10A(a)のXD-XD断面を示す断面図である。
【0082】
図9に示すように、容器2内には、撹拌装置21に替えて、撹拌子5が収納可能である。撹拌子5は、容器2内で飲料(スープや出汁等)が抽出される被抽出物(図示せず)を保持する。被抽出物については特に限定されるものではないが、例えば、紙などの水を透過する材料で形成されたパックに乾燥した食材などを収納したものである。以下、このパックを出汁パックと呼ぶ。
【0083】
図9、
図10A及び
図10Bに示すように、撹拌子5は、その本体部5a上部の径方向における両端部をかけ渡すようにアーチ状の支持部材5fを備えている。支持部材5fの頂部からは、円柱状のガイド部材5gが上側に延出するように設けられている。ガイド部材5gは
図1に示す蓋体201の通し穴201aに挿通して、撹拌子5の回転運動をガイドする。
【0084】
図9、
図10A(a)及び
図10Bに示すように、撹拌子5の本体部5aの上部は被抽出物(例えば出汁パック)を支持する窪み5bをなしている。
図9及び
図10Cに示すように、容器2の底面(底面部2cの上面)に対向する撹拌子5の面(下端面)5hは略円形に形成され、径方向に延設された溝部5iが形成されている。すなわち撹拌子5は、下端面5hに、径方向に延設された溝部5iを有する。
【0085】
図9、
図10B及び
図10Cに示すように、撹拌子5の径方向中央部には容器2の本体部5aを上下方向に貫通する孔5cが形成されている。
【0086】
窪み5bの上面は孔5cに向かって下り傾斜した傾斜部5dをなしている。孔5cは一端部が窪み5bの最深部(本体部5aの中央部)に開口し、他端部が溝部5iの底部に開口する。すなわち、孔5cは窪み5bの最深部と溝部5iとを連通する。一方、溝部5iは撹拌子5の本体部5aの下端面5hを径方向に横断するように設けられており、両端部が本体部5aの外周面5mに開口部5oを形成する。
【0087】
溝部5iの断面はほぼ矩形を成しており、その断面積が撹拌子5の本体部5aの中心部(径方向中央部)から外周側に向かって次第に大きくなるように形成されている。すなわち溝部5iは、開口部5o側の断面積が孔5c側の断面積よりも大きい。
【0088】
すなわち、撹拌子5の本体部5aの上部と外周面5mの径方向外側とは、孔5cと溝部5iとにより連通されている。
【0089】
図9に示すように、本体部5aの孔5cを取り囲む外周部は、密閉された空洞5kとなっており、撹拌子5には浮き5e(浮上装置、フロート)が形成される。撹拌子5の磁石5pは、
図10Dに示すように、空洞k5の内部に配置される。撹拌子5の下端面5hには溝部5iが形成されるため、磁石5pは溝部5iを避けて下端面5hが構成される底板部に配置される。磁石5pを溝部5iに配置した場合、磁石5pと駆動部6の磁石65との距離が大きくなるが、溝部5iを避けて磁石5pを配置することにより、磁石5pと駆動部6の磁石65との距離を小さくすることができる。
【0090】
下端面5hが構成される撹拌子5の底板部は磁石(第1磁石)5pを保持する部材であり、第1磁力部を構成する。第1磁石5pそのものを第1磁力部と呼ぶこともできる。
【0091】
撹拌子5は、フロート5e内が空気であるため、フロート5eが断熱構造になっている。本実施例では、上述した様に、容器1内の液温(水温)は、容器2の底面部2cからカバー部材(熱伝導部材)63を介して、温度センサ13に伝達される。このため、容器2内の液温(水温)に勾配があると、液温(水温)の推定精度が低下する。
【0092】
本実施例では、孔5cから吸い込んだ液(水)は、遠心力により、撹拌子5の下端面5hに形成された溝部5iを通じて、撹拌子5の外周面5mの径方向外側に排出される。排出された液は、容器2のテーパにそって鉛直方向上向きに流れる。そして、再び撹拌子5の中央の孔5cの上側開口から孔5cの中に吸い込まれる。これにより、容器2の底面部2c付近で液(水)の循環(撹拌)が促進される。その結果、容器2内の温度勾配が解消され、液温(水温)の均一化が促進される。
【0093】
また、液(水)の循環が促進されることにより、被抽出物の抽出が促進される。特に、水を透過する材料でできた出汁パックが、攪拌子5の孔5cを覆うように配置されることにより、循環する液(水)のなかで、液(水)が出汁パックを貫くように流れるので、抽出が促進される。具体的には、液(水)は、容器2の中央部→出汁パック→撹拌子5の孔5c→撹拌子5の溝部i→容器2のテーパ面と撹拌子5の外周面5mとの間→容器2の中央部 と循環する。
【0094】
例えば、だしの抽出においては、だしの抽出に最適な温度を維持するよう加熱部31,32を制御する必要がある。本実施例では、液温(水温)の均一化が促進されることで温度の制御精度が向上し、良質なだしの抽出が可能になる。また、だしの抽出においては、保温時間が設定時間に達したときに保温を停止して、撹拌子5を駆動部6の回転駆動力から脱調させて容器2の底面部2cから切り離して浮上させる。撹拌子5が浮上することにより、窪み5bに載置された出汁パックが水上に追い出され、出汁の抽出が止まる。所定の時間で出汁の抽出を止めることで、出汁具材がいたずらに長く水中に存在し、雑味まで抽出されてしまうことを防ぐことができる。
【0095】
駆動部6の磁石65を比較的低速で回転させれば、磁石65と磁石212Cとが引き合って、撹拌子5は駆動部6の磁石65の回転に連れ回りする。よって、駆動部6の磁石65が停止しているとき、又は比較的低速で回転しているときは、磁石65と磁石212Cとの吸引力によって撹拌子5は容器2の底面部2cに張り付いた状態にある。しかし、駆動部6の磁石65を比較的高速で回転させたり、短い時間のうちに回転方向を反転させたりすると、磁石212Cは磁石65の動きについていけずに、撹拌子5の動きは駆動部6の磁石65の動きから切り離される(脱調する)。これによって、撹拌子5は、浮き5eの浮力により、容器2内で液面(水面)に浮上する。
【0096】
上述した撹拌装置21および撹拌子5は、駆動部6によって駆動される被駆動部を構成する。また、撹拌装置21および撹拌子5はいずれも飲料をかき混ぜる機能を有するため、撹拌部と呼ぶ場合がある。
【0097】
本実施例に係る飲料製造装置1は、下記の特徴を有する。
【0098】
(1)飲料を入れる容器2と、容器2内の飲料を撹拌する撹拌装置21と、撹拌装置21を駆動する駆動部6と、を備え、撹拌装置21は、駆動部6によって回転駆動される回転撹拌部212と、容器2内に非駆動の状態で配置される非駆動撹拌部211と、を備える。
【0099】
(2)回転撹拌部212は、中心軸212Dと、中心軸212Dから径方向外側に向かって延出するように設けられた動翼部212Bと、を有し、非駆動撹拌部211は、動翼部212Bに対して径方向外側に配置された非駆動翼部211Aを有する。
【0100】
(3)回転撹拌部212は複数の動翼部212Bを有し、静止撹拌部211は複数の非駆動翼部211Aを有し、回転撹拌部212の動翼部212Bの数と非駆動撹拌部211の非駆動翼部212Aの数とが異なる。
【0101】
(4)回転撹拌部212の動翼部212Bは、中心軸212Dの軸方向において、径方向外側に向かって延出する長さが異なる上側動翼部212Baと下側動翼部212Bbとを有し、下側動翼部212Bbは、径方向外側に向かって延出する長さL212Bbが上側動翼部212Baの径方向外側に向かって延出する長さL212Baよりも長く、前記回転撹拌部が軸回転した際に前記下側動翼部が通過する領域と、前記非駆動翼部の下方領域とが半径方向にオーバーラップする長さまで、非駆動撹拌部211の非駆動翼部211Aの下方に延出されている。
【0102】
(5)回転撹拌部212は、中心軸212Dの軸方向において、上側動翼部212Baと下側動翼部212Bbとの間に設けられた中間動翼部212Bcを有し、中間動翼部212Bcの径方向外側に向かって延出する長さL212Bcは、上側動翼部212Baの径方向外側に向かって延出する長さL212Ba、及び下側動翼部212Bbの径方向外側に向かって延出する長さL212Bbのいずれよりも短い。
【0103】
(6)非駆動撹拌部211の非駆動翼部211Aは、径方向外側の面211Aaが径方向外側に向かって凸となる円弧面で構成され、径方向内側の面211Abが径方向内側に向かって凸となる円弧面で構成される。
【0104】
(7)非駆動撹拌部211は、非駆動翼部211Aの径方向外側の面211Aaよりも更に径方向外側に突き出した外縁部211Dを有し、非駆動撹拌部211は、外縁部211Dが容器2の内周面2b3に上下方向に係止され、非駆動翼部211Aの径方向外側の面211Aaと容器2の内周面2b2との間に、撹拌されて発生した泡が流れる流路δ3が形成される。
【0105】
(8)回転撹拌部212は3つの動翼部212Bを有し、非駆動撹拌部211は2つの非駆動翼部211Aを有し、2つの非駆動翼部211Aは上端部が径方向に架け渡された連結部211Bで連結され、非駆動撹拌部211について、容器2の径方向に沿う、連結部211Bの中心線211Bxに垂直な方向を幅方向と定義した場合に、非駆動撹拌部211の幅方向寸法は、連結部211Bの幅方向寸法W211Bが非駆動翼部211Aの幅方向寸法W211Aよりも小さい。
【0106】
(9)飲料を保持する容器2と、飲料を加熱する加熱装置31,32と、容器2の内側に配置される被駆動部5,21と、被駆動部5,21を駆動する駆動部6と、駆動部6と一体に設けられ、容器2の底面部2cに当接可能な面を有する温度伝達部63と、温度伝達部63と一体に設けられた温度検出部13と、温度伝達部63が容器2の底面部2cに当接するように付勢する弾性部材66と、を備える。
【0107】
(10)被駆動部5,21は、第1磁力部212C,5pを有して容器2に入れられた飲料をかき混ぜる撹拌部で構成され、駆動部6は、容器2よりも下方に第2磁力部65を備え、第1磁力部65及び第2磁力部212C,5pは、温度伝達部63と容器2の底面部とが当接するように付勢する吸引力を発生する。
【0108】
(11)加熱装置31,32は容器2の側面に設けられる。
【0109】
(12)駆動部6は、電動モータ61と、電動モータ61を支持する支持部材62と、を備え、支持部材62は、支持部材62の上面に固定されたカバー部材63で上方を覆われ、温度検出部13は、支持部材62に取り付けられ、温度伝達部63はカバー部材63で構成される。
【0110】
(13)支持部材62は弾性部材66を有するばね支持部62B,66で支持され、ばね支持部62B,66は支持部材62の姿勢を直交する3軸方向において変化させることができるように配置される。
【0111】
(14)容器2の蓋部201を備え、容器2は蓋部201から下方向への力を受けると共に、温度伝達部63から上方向への力を受ける。
【0112】
(15)飲料を入れる容器2と、飲料を加熱する加熱装置と、容器2の底面部に配置され飲料を撹拌する撹拌子5と、撹拌子5を回転駆動する駆動部と、を備え、撹拌子5は、上下方向に連通する孔5cと、容器2の底面部と対向する下端面5hに形成され孔5cと撹拌子5の外周とに連通する溝部5iと、を有する。
【0113】
(16)孔5cは撹拌子5の径方向中央部に設けられ、溝部5iは、撹拌子5の下端面5hを径方向に横断するように設けられ、両端部が撹拌子5の外周面5mに開口部5oを形成する。
【0114】
(17)溝部5iは、断面積が撹拌子5の径方向中央部側から外周面5m側に向かうに従って大きくなるように形成される。
【0115】
(18)撹拌子5は、下端面5hの内側に第1磁石5pを有し、駆動部6は、第1磁石5pとの間で磁気吸引力を発生するように配置された第2磁石65を有し、第1磁石5pは、溝部5iを避けて下端面5hの内側に配置される。
【0116】
(19)撹拌子5は、内部に密閉された空洞5kが形成される。
【0117】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0118】
2…容器、2b1,2b2,2b3…容器2の内周面、2c…容器2の底面部、5…撹拌子(撹拌部、被駆動部)、5c…撹拌子5の孔、5h…撹拌子5の下端面、5i…溝部、5k…空洞、5m…撹拌子5の外周面、5o…溝部5iの開口部、5p…磁石(第1磁石、第1磁力部)、6…駆動部、13…温度センサ(温度検出部)、21…撹拌装置(撹拌部、被駆動部)、31,32…加熱装置、61…電動モータ、62…支持部材、62B…ばね支持部を構成する支持部材62の脚部、63…カバー部材(温度伝達部)、65…磁石(第2磁石、第2磁力部)、66…弾性部材、201…容器2の蓋部、211…静止撹拌部、211A…静翼部、211Aa…静翼部211Aの径方向外側の面、211Ab…静翼部211Aの径方向内側の面、211B…静止撹拌部211の連結部、211D…静止撹拌部211の外縁部、212…回転撹拌部、212B…動翼部、212Ba…上側動翼部、212Bb…下側動翼部、212Bc…中間動翼部、212C…磁石(第1磁力部)、212D…回転撹拌部212の中心軸、L212Ba…上側動翼部212Baの径方向外側に向かって延出する長さ、L212Bb…下側動翼部212Bbの径方向外側に向かって延出する長さ、L212Bc…中間動翼部212Bcの径方向外側に向かって延出する長さ、W211A…静翼部211Aの幅方向寸法、W211B…連結部211Bの幅方向寸法、δ3…静翼部211Aの径方向外側の面211Aaと容器2の内周面2b2との間の泡が流れる流路。