(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】合成石英ガラスの調製方法
(51)【国際特許分類】
C03B 8/04 20060101AFI20240514BHJP
C03B 37/018 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C03B8/04 Z
C03B8/04 D
C03B8/04 F
C03B37/018 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021203008
(22)【出願日】2021-12-15
【審査請求日】2022-04-15
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599089712
【氏名又は名称】ヘレウス・クアルツグラース・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】マーティン テューラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター レーマン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン トロマー
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-505809(JP,A)
【文献】特開2019-182668(JP,A)
【文献】特開2011-102232(JP,A)
【文献】特開2004-277257(JP,A)
【文献】特開平11-246232(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044805(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 8/04
C03B 37/014-37/018
C03B 19/14
C03B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む原料を蒸発させ、原料蒸気;材料を形成する工程と、
(2)工程(1)からの前記原料蒸気を反応部に供給し、前記原料蒸気を酸素の存在下において火炎中で燃焼させ、酸化により及び/又は加水分解によりSiO
2スート粒子に変換する工程と、
(3)工程(2)により生じた前記SiO
2スート粒子を堆積表面上に堆積させてスート体を形成する工程と、
(4)必要に応じて、工程(3)により生じた前記SiO
2スート粒子を乾燥及びガラス化し、合成石英ガラスを形成する工程と
を有する合成石英ガラスの製造方法であって、
工程(3)において、前記SiO
2スート粒子の堆積表面が、前記スート体の成長時間の少なくとも50%の間、バーナーから離れて位置し、ターゲットレス火炎の発光強度の最大値の位置と、(バーナーから見て)前記最大値より後方の位置で前記火炎の水平方向の積分された発光強度が前記最大値の少なくとも2/3となる位置の間に存在することを特徴とする合成石英ガラスの製造方法。
【請求項2】
工程(2)で用いる能動的に供給されるバーナーガスが、空気数1以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(2)で用いる能動的に供給されるバーナーガスが、空気数0.85以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(2)で用いる能動的に供給されるバーナーガスが、空気数0.76以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(2)は、同心円状の断面を有するバーナーによって行われ、該同心円状の断面の内部において、前記原料蒸気が酸素と共に供給混合体としてバーナー火炎に導入され、前記供給混合体が分離ガスによって酸素含有燃料ガスから分離されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機ケイ素出発化合物が、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、デカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)、それらの鎖状同族体及びこれらの化合物の任意の混合物から選択されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記有機ケイ素出発化合物は、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成石英ガラスの製造方法と、本発明による方法を実施するための対応する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成石英ガラスを製造するには、CVDプロセスにより、ケイ素含有出発物質から加水分解又は酸化によってSiO2粒子を生成し、動いている担体上に堆積させる。外部堆積プロセスと内部堆積プロセスに分けることができる。外部堆積プロセスでは、SiO2粒子は、回転する担体の外側に堆積される。このような外部堆積プロセスの例としては、いわゆるOVDプロセス(Out-side Vapour Phase Deposition、外付気相堆積法)、VADプロセス(Vapour Phase Axial Deposition、気相軸堆積法)、PECVDプロセス(Plasma Enhanced Chemical Vapour Deposition、プラズマ支援化学気相堆積法)などがある。内部堆積プロセスの最も良く知られた例は、外部から加熱した管の内壁にSiO2粒子を堆積するMCVD(Modified Chemical Vapor Deposition、内付化学堆積法)プロセスである。
【0003】
担体表面の領域で、十分に高い温度では、SiO2粒子は直接のガラス化が発生し、これは「直接ガラス化」とも呼ばれる。これに対して、いわゆる「スートプロセス」では、SiO2粒子の堆積時の温度が非常に低いため、多孔質のSiO2スート層が得られ、これを別の工程で焼結して透明な石英ガラスとする。直接ガラス化法、スート法ともに、緻密で透明な高純度合成石英ガラスが得られる。
【0004】
合成石英ガラスの製造のための先行技術のプロセスでは、一般に、SiO2粒子の十分な堆積効率を確保するための方法が用いられ、ここで、堆積効率は、生成したスート体の重量と、使用したケイ素含有出発化合物からケイ素を完全に変換したと仮定して生成できるSiO2の数学的な最大総量との商と理解される。このような一般的な条件としては、まず、所望の目的生成物への実質的な完全変換を確実にするために、酸素の燃料(=ケイ素含有出発物質及び可燃性補助ガス)に対する比率をできるだけ化学量論的にすることが含まれる。さらに、ケイ素含有出発物質に対する酸素の化学量論的な比率は、高い反応温度をもたらし、これはプロセスの効率にとっても好ましい。燃料と空気の化学量論的比率は空気数とも呼ばれ、したがって1であるべきである。先行技術では、ケイ素含有出発物質は通常乱流の火炎で燃焼され、これにより個々のガス(特に酸素及びケイ素含有出発化合物)の良好な混合が保証されると同時に、所望の二酸化ケイ素への迅速な変換が引き起こされる。火炎中の炭素スートの形成は、得られるスート体への炭素スートの堆積を防ぐために、可能な限り回避される。このため、スート体は、典型的には、不完全な燃焼と未変換のOMCTSを示す、火炎衝突点での黄色がかった炭素スートの輝きが見えないように配置される。
【0005】
合成石英ガラスの製造に対応するプロセスは、例えば、WO90/10596Aに記載されており、このプロセスでは、酸素過剰、したがって1より大きい空気数が上記の説明と併用されている。
【0006】
DE 101 02 611 Aには、一列に配置された複数の堆積バーナー(それぞれにバーナー火炎が割り当てられている)でSiO2粒子を形成し、その長手軸を中心に回転する支持体の堆積表面に堆積させる合成石英ガラスの製造方法について記載されている。形成するスート体に対するバーナーの適用距離は160~240mmであり、スート体に火炎が当たるようになっている。しかしながら、DE 101 02 611 Aからは、製造されるスート体の表面に対するバーナーの位置関係をより正確に把握することができない。また、DE 101 02 611 Aでは、スート体の表面からのバーナーの距離の技術的影響も論じられていない。
【0007】
DE 102 25 106 Aには、合成石英ガラスを製造するための一般的なスートプロセスが記載されており、このプロセスでは、まず前反応ゾーンでSiCl4、燃料及び酸素含有媒体からいわゆる一次粒子を形成し、次にバーナー火炎でSiO2粒子に変換し、これを担体に堆積させる。この文脈で、DE 102 25 106 Aは、堆積効率の向上に焦点を当てており、これは、SiCl4出発物質に対して用いられるキャリアガス(水素、H2)の体積比を調整することによって達成される。
【0008】
US 2004/182114 Aは、合成石英ガラスを製造するための一般的なスートプロセスを記載しており、このプロセスでは、ケイ素含有出発化合物の堆積効率が調査され、特に、プロセス中のスート粒子の堆積表面からのバーナーの距離が150~500mmであれば、ケイ素含有出発物質の堆積効率が向上することが見出されている。スート粒子の堆積表面は、バーナーから発生する火炎の中に位置する。しかしながら、発生したスート体の表面に対する火炎のより正確な位置関係は、US2004/182114 Aから得ることはできない。
【0009】
ガラス化後に低いOH値(繊維用途に良好)を有する炭素質スート体を提供するために、DE 10 2011 121 153 Aは、SiO2粒子の堆積中に酸素と比較して超化学量論的にポリシロキサン化合物を火炎に供給する、すなわち、堆積中にいわゆるリッチフレームを使用することを提案している。
【0010】
EP3549921Aは、出発材上にガラス微粒子を堆積させることによって光ファイバ用多孔質ガラス母材を製造する方法であって、液体状態の有機ケイ素化合物原料とキャリアガスとを気化器に供給する工程と、該気化器において、液体状態の有機ケイ素化合物原料とキャリアガスとを混合し気化して有機ケイ素化合物原料とキャリアガスとを原料混合ガスに変換する工程と、該原料混合ガスと可燃性ガスとをバーナーに供給する工程と、該バーナーで原料混合ガスと可燃性ガスとを燃焼させ、該燃焼により生成したSiO微粒子をバーナーから噴出させる工程と、該気化器とバーナーとが同期し一体となって出発材の長手方向に対して平行に移動を繰り返すことで、バーナーから噴出したSiO微粒子を出発材上に堆積する工程とを有する方法を開示している。
【0011】
全体として、先行技術のプロセスは、ケイ素含有出発物質の堆積効率に関して依然として改善の必要があり、したがって、ケイ素含有出発物質の堆積効率を改善することができる合成石英ガラス製造プロセスが必要とされている。堆積効率の向上は、合成石英ガラスの製造コストの低減を伴う。
【発明の開示】
【0012】
本発明の範囲内では、堆積効率は、数学的に生成されたSiO2の総量に対するターゲット管に堆積されたSiO2の重量の商(使用された前駆体量から全てのケイ素を完全に変換したと仮定する)であると理解される。
【0013】
本発明によれば、この課題は、本合成石英ガラスの製造方法によって解決され、この方法は、まず、以下の工程によって特徴付けられる。
(1)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む原料を蒸発させ、原料蒸気を形成する工程、
(2)工程(1)からの前記原料蒸気を反応部に供給し、前記原料蒸気を酸素の存在下において火炎中で燃焼させ、酸化により及び/又は加水分解によりSiO2スート粒子に変換する工程、
(3)工程(2)により生じた前記SiO2スート粒子を堆積表面上に堆積させてスート体を形成する工程、及び、
(4)必要に応じて、工程(3)により生じた前記スート体を乾燥及びガラス化し、合成石英ガラスを形成する工程。
【0014】
さらに、本発明に係る方法は、工程(3)において、前記SiO2スート粒子の堆積表面が、前記スート体の成長時間の少なくとも50%の間、バーナーから離れて位置し、ターゲットレス火炎の発光強度の最大値の位置と、(バーナーから見て)前記最大値より後方の位置で前記火炎の水平方向の積分された発光強度が前記最大値の少なくとも2/3となる位置の間に存在することを特徴とする。
【0015】
すなわち、SiO2スート粒子の堆積表面の位置が、スート体の成長時間の少なくとも50%の間、バーナーから離れた位置にあり、カンデラ/mm2で測定されるターゲットレス火炎の火炎全体にわたって水平方向に積分した発光強度が、最大値におけるターゲットレス火炎の水平方向の積分された発光強度の少なくとも2/3を維持していることを特徴としている。
【0016】
本発明の範囲内においては、工程(2)は、必要に応じて可燃性補助ガスの存在下で、また、必要に応じて非酸化性分離ガスの存在下で行われてもよい。
【0017】
したがって、本発明の範囲内においては、バーナー(周囲の環境雰囲気と接触する点から測定)と堆積表面との間の距離が、乱されていない(ターゲットの無い)火炎がその発光強度の最大値を有する距離(高さ)に対応するように、選択されることが想定される。発光強度は、それぞれの高さ(バーナーまでの距離)における火炎幅全体の積分値である。
【0018】
本発明の範囲内において、特に、上記のバーナーの間隔が、火炎の発光強度の最大値を中心とする両側にあるのではなく、ターゲットレス火炎の発光強度の最大値の位置と、(バーナーから見て)最大値より後方の位置で火炎の水平方向の積分された発光強度が最大値の少なくとも2/3となる位置の間に存在することをさらに規定する。
【0019】
本発明で規定する距離は、バーナー(=バーナーガスが周囲雰囲気と接触する点)と、SiO2粒子が最初に担体の表面に堆積し、その後形成されるスート体の表面に堆積する点との間の距離である。
【0020】
ターゲットレス火炎とは、成長管を使用せずに操作される合成火炎と理解される。そうでなければ、火炎形状はターゲット管(またはスート体)の厚さ及びターゲット表面からのバーナーの距離並びにターゲット温度に依存することになるからである。この合成火炎は一般に本質的に乱れない。
【0021】
本発明の範囲内においては、工程(3)において、SiO2スート粒子の堆積表面が、スート体の成長時間の少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、なおより好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは100%の間にわたって、カンデラ/mmで測定される火炎幅全体を水平方向に積分したターゲットレス火炎の発光強度が、最大値におけるターゲットレス火炎の水平方向の積分された発光強度の少なくとも2/3であるバーナーからの距離を維持していることが好ましい。
【0022】
本発明はさらに、スート体上に堆積するSiO2スート粒子が、スート体の成長時間の少なくとも50%の間、本質的に乱されていないターゲットレス火炎の発光強度の最大値の周辺領域に位置する火炎の領域(=バーナーからの距離)に位置し、そこで、火炎幅全体にわたって水平方向に積分した火炎の発光強度をカンデラ/mmで測定した値が、最大値の発光強度の70%以上、さらに好ましくは72%以上、さらに好ましくは74%以上である、上記に定義される一般的なプロセスに関する。本発明によれば、SiO2粒子が堆積される表面の位置が、使用される火炎の燃え尽き長さの下にあり、これにより、表面上で依然として燃焼が行われ得ることが有利であることが判明した。
【0023】
発光強度の主な寄与は、スペクトル測定が示すように、未燃焼炭素からの黒体放射であるので、本発明による手順は、実際には直感に反している。炭素を燃焼させるのに十分な酸素がないことは明らかであるので、出発化合物中のケイ素をSiO2に完全に変換するのに十分な酸素もないと仮定することができる。しかしながら、現在の技術水準では、すでに変換されたSiO2粒子に対する熱泳動効果によって、高温の火炎が粒子を低温の堆積表面に押し付けるというのが主な堆積メカニズムである。しかしながら、反応したSiO2のみが粒子状であるため、反応が完了していないところに堆積表面を配置すると、かえって堆積効率が悪くなってしまう。
【0024】
本発明によれば、このように、スート体の成長時間の少なくとも50%の間、堆積表面が火炎のある領域に位置すれば、SiO2粒子の堆積効率を著しく向上させることができることが見出された。したがって、本発明による方法は、スート体の表面でケイ素含有出発化合物の燃焼が依然として起こり得るように、スート体の成長時間の少なくとも一定期間、スート体の表面を火炎中に位置付けることを規定する。
【0025】
ここで、本発明の範囲内において、スート体の成長時間は、ケイ素含有出発化合物を本発明によるプロセスに供給するのに要する時間であると理解される。
t成長時間 = t開始-終了 ケイ素含有出発化合物の供給
【0026】
スート体の成長時間は、製造されるスート体の所望のサイズに依存する。
【0027】
本発明による改善された堆積効率は、既に定義したように、生成したスート体の重量と、使用したケイ素含有出発化合物からケイ素を完全に変換したと仮定して生成できるSiO2の計算上の最大量との商から得られる。
【0028】
化学発光は非常に局所的に生じ、紫外線や赤外線の発光強度の測定はより困難であるため、後述の手順でSI単位のカンデラに校正したカメラを用いて火炎の形状を測定した。カンデラは人間の目の感覚に近いものであり、特殊なカメラや窓が必要になる紫外線や赤外線の成分は考慮されていない。したがって、カンデラで校正された強度のほとんどは、火炎中で生成されるSiO2や炭素スートの粒子の黒体放射に由来する。SI単位であるカンデラへの校正は、後述の実験の項で説明される。
【0029】
本発明によるバーナーのスート体表面からの距離の指定は、堆積表面が、火炎の燃え尽き長さ(それより上ではもはや未燃焼の有機ケイ素出発化合物が存在しない)の下にあることを意味し、これによりスート体表面で依然として燃焼が行われ得ることになる。これは、スート体の位置を燃え尽き長さの上方、すなわち火炎の外側に推奨する先行技術の見解とは根本的に対照的に、本発明による方法における析出効率を向上させるものである。
【0030】
バーナーの上方のある高さにおける火炎の発光強度を求めるには、2次元カメラによる火炎の発光強度(単位はcd/mm2)をカメラの水平画素列ごとに火炎の全幅にわたって積分し(そのため、単位はcd/mm)、このようにして求めた値をすべての画素列について求めて火炎の全高について計算する。このようにして、バーナーからの垂直距離の関数として、ターゲットレス火炎の発光強度を求める。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明による方法の個々の工程を、以下により詳細に説明する。
【0032】
[工程(1) - 供給原料の蒸発]
工程(1)において、少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む原料を気化させて、原料蒸気を形成する。有機ケイ素出発化合物は、好ましくは、ポリアルキルシロキサン化合物である。
【0033】
原則として、合成石英ガラスの製造に適した任意のポリアルキルシロキサン化合物を本発明に従って使用することができる。本発明の範囲内においては、ポリアルキルシロキサンという用語は、直鎖(分岐構造を含む)と環状の分子構造の両方を包含する。
【0034】
特に好適な環状代表物は、一般実験式
SipOp(R)2p
で表されるポリアルキルシロキサンである。ここで、pは3以上の整数であり、基「R」はアルキル基であり、最も単純な場合はメチル基である。
【0035】
ポリアルキルシロキサンは、重量分率あたりのケイ素含有量が特に高いことが特徴で、合成石英ガラスの製造に使用する際の経済性に寄与する。
【0036】
ポリアルキルシロキサン化合物は、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)、それらの鎖状同族体及びこれらの化合物の任意の混合物からなる群から選択されることが好ましい。D3、D4、D6、D7及びD8という表記は、General Electric Inc.に由来する表記法を採用したものであり、「D」は基[(CH3)2Si]-O-を表す。
【0037】
本発明の範囲内で、前述のポリアルキルシロキサン化合物の混合物も使用することができる。
【0038】
高純度で大量に入手できることから、現在ではオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)が好ましい。したがって、本発明の範囲内では、ポリアルキルシロキサン化合物がオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)であれば、特に好ましい。
【0039】
原則として、工程(1)に導入される前に、原料が精製されることが可能である。このような精製プロセスは当業者に知られている。しかしながら、好ましい実施形態では、原料は、予め上流の精製プロセスに供されない。
【0040】
原料の蒸発は、キャリアガス成分の存在下でも存在しなくても行うことができる。好ましくは、有機ケイ素出発化合物の沸点を下回る温度で蒸発を行うことができるため、原料はキャリアガスの存在下で蒸発させる。キャリアガスとしては、不活性ガス、例えば窒素又はアルゴンが典型的に使用される。キャリアガスが使用される場合、有機ケイ素出発化合物のキャリアガスに対するモル比は、好ましくは0.01~2の範囲であり;より好ましくは0.02~1.5の範囲であり、最も好ましくは0.05~1.25の範囲である。特に、キャリアガスとして水分含有量<40体積ppmの窒素を使用し、ポリアルキルシロキサン出発化合物としてOMCTSを使用することが好ましい。さらに、OMCTSの窒素に対する分子比が0.015~1.5の範囲であることが好ましい。
【0041】
蒸発工程は、当業者に知られている。有機ケイ素出発化合物とキャリアガスの選択された分子比に応じて、有機ケイ素出発化合物は、好ましくは120~200℃の温度で、蒸気相に変換される。蒸発チャンバーでの気化温度は、常に有機ケイ素出発化合物の露点より少なくとも数度高いことが好ましい。蒸発チャンバーでの蒸発温度は、常に有機ケイ素出発化合物の露点より少なくとも数度高いことが好ましい。露点は、同様に、有機ケイ素出発化合物とキャリアガスの選択された分子比に依存する。好ましい実施形態では、これは、蒸発前に有機シリコン出発化合物を40~120℃の温度に予熱し、その後、原料の予熱よりも高い温度を有する蒸発チャンバーに噴霧することによって達成される。好ましい実施形態では、不活性キャリアガスは、さらに、蒸発チャンバーに供給される前に250℃までの温度に予熱することができる。蒸発チャンバー内の温度は、有機ケイ素出発化合物とキャリアガスの混合物の露点温度よりも常に平均的に高いことが有利である。好適な蒸発プロセスは、例えば、国際出願WO2013/087751A及びWO2014/187513A並びにドイツ特許出願DE 10 2013 209 673に記載されている。
【0042】
本発明の範囲内においては、「露点」という用語は、凝縮する液体と蒸発する液体の間で平衡状態に達する温度を記述するものである。
【0043】
本発明の範囲内においては、「気化」は、原料が本質的に液相から気相に変換されるプロセスであると理解される。これは、好ましくは、上述のように、原料の主成分としての有機ケイ素出発化合物の露点以上である温度を使用することによって行われる。当業者は、プロセス工学の観点から、原料の小さな液滴が同伴される可能性が否定できないことを認識する。したがって、工程(1)において、好ましくは97mol%以上、好ましくは98mol%以上、特に好ましくは99mol%以上、非常に特に好ましくは99.9mol%以上のガス状成分を含む原料蒸気が生成される。
【0044】
気化した有機ケイ素出発化合物、又はキャリアガスと気化した有機ケイ素出発化合物の混合物は、通常、蒸発チャンバーから取り出されてバーナーへ供給される。バーナーに供給される前に、気化性物質又は気化性物質とキャリアガスの混合物は、好ましくは酸素と混合される。火炎の中で、有機ケイ素出発化合物はSiO2に酸化される。微粒子の非晶質SiO2(SiO2スート)が形成され、これは多孔質塊の形で、最初は担体の表面上に、その後は形成中のスート体の表面上に堆積される。
【0045】
[工程(2) - 原料蒸気を反応部に供給し、原料蒸気を酸素の存在下において火炎中で燃焼させ、酸化により及び/又は加水分解によりSiO2スート粒子に変換する]
工程(2)では、工程(1)で得られたガス状の原料蒸気を反応部に供給し、原料蒸気を酸化及び/又は加水分解することによりSiO2粒子に変換させる。
【0046】
この工程は、特に、公知の方法に対応するものである。このプロセスの可能な設計は、当業者に知られている。
【0047】
原料蒸気の燃焼には、バーナー口の中心を中心に円形に複数のガス出口ノズルが配置された、同心バーナーが、通常使用される。
【0048】
本発明の範囲内においては、第1の、有機ケイ素出発化合物を中心領域で析出バーナーに供給し、酸素流を外側領域でバーナーに供給し、分離ガス流(水素を含む)を中心領域と外側領域との間に供給する方法が好ましい。
【0049】
中心ノズルは、通常、原料蒸気を供給するために使用され、本発明の範囲内においては、通常、キャリアガスと予め混合されて使用される。さらに、好ましくは、酸素が原料蒸気に添加され、その結果、通常使用される同心バーナーの中心ノズルから、原料蒸気に加えてキャリアガス及び酸素を含む供給流が生じる。
【0050】
したがって、本発明によるこの好ましい方法は、DE 10 2011 121 153 Aに記載された方法(濃度が高い混合燃料、すなわち過剰なSiO2出発化合物及びそれによる供給不足の酸素を用いることを推奨する方法)とはかなり異なる。DE 10 2011 121 153 Aの教示に基づいて、一般的なプロセスの析出効率を向上させたいと考える当業者は、供給ノズルにさらに酸素を供給することは逆効果であると考えるであろう。
【0051】
バーナーの中心ノズルは、通常、中心ノズルの周囲に同心円状に配置された、第2ノズル(ここから分離ガスがバーナー内に導入される)に取り囲まれる。この分離ガスは、中心ノズル及び分離ガスノズルの周囲に同心円状に配置された別の同心円状ノズルからバーナーに入るさらなる酸素流から、SiO2出発化合物を分離する。
【0052】
本発明によれば、バーナーとスート体の表面との距離は堆積プロセス中に調整され、必要であれば、スート体の成長時間の少なくとも50%の間、堆積表面が火炎の高さ(=バーナーからの距離)にあり、そこで、ターゲットレスで同じ条件で操作される火炎の水平方向の積分された発光強度が、火炎の水平方向の積分された発光強度の最大値の少なくとも2/3が維持される、という上記条件が得られるように、調整される。この場合の距離は、以下の定義に基づくものであり、スート体の成長により調整が必要な場合がある。
【0053】
この目的のため、基本的にバーナー及び/又はスート体の位置を変更することが可能であり、そのため、好ましい実施形態では、スート体の位置は変更しないで、バーナーを移動する。
【0054】
ノズルがバーナー口と同一平面上にある析出バーナーの場合、析出バーナーとスート粒子の堆積面との距離は、バーナー口と形成されるスート体の表面との最短距離と定義される。その他、この距離は、バーナーガスが環境雰囲気との接触点と、形成されるスート体の表面との間の最短距離と定義される。これは、通常、好ましく用いられる同心バーナー形状の中心ノズル(センターノズル)である。
【0055】
堆積トーチによって製造されたSiO2スート粒子は、通常、その長手軸を中心に回転するキャリア管上に、スート体が層ごとに構築されるように、堆積される。この目的のために、堆積トーチは、2つの転換点の間でキャリア管の長手方向軸に沿って前後に移動させることができる。さらに、それぞれが1つの火炎を有する複数の堆積バーナーが並べて配置されたバーナーブロックを使用することが好ましい。バーナーブロックを用いる場合、少なくとも1つのバーナー、さらに好ましくは個々のバーナーとスート本体の表面との間の距離は、本発明の考察に従って調整されることが好ましい。
【0056】
本発明の範囲内において、さらに、空気比、すなわちバーナーに能動的に(すなわち加圧下で)供給される全ての可燃性物質に対するバーナーからの酸素(供給酸素を含む)の比が1以下(リッチフレーム)であると収率に有利であることが見いだされた。したがって、本発明によれば、工程(2)において、加水分解及び/又は重合されるべき原料蒸気に対して酸素が化学量論量より少なく使用されることがさらに好ましい。
【0057】
さらに好ましいのは、空気数0.95以下、さらに好ましいのは0.90以下、さらに好ましいのは0.85以下、さらに好ましいのは0.80以下、さらに好ましいのは0.78以下、さらに好ましいのは0.76以下である。
【0058】
本発明で使用する火炎の特性は、空気数を1以下の値に設定することで影響を受け、結果として堆積効率が向上するので、空気数を既述の好ましい範囲に調整することにより、本発明によるバーナーとスート体表面との距離の調整とともに、さらに堆積効率を向上させることが可能である。
【0059】
空気数λは、理論的に化学量論的に完全燃焼に必要な酸素の最小量に対する、実際に利用可能な酸素量の比率として定義される。
【0060】
より濃度の高い燃焼混合物の使用(空気数1以下を伴う)は、火炎の端部のみの、より遅い局所的な着火につながる。最初は、外側の酸化剤(酸素)ノズルから十分なO2が既に拡散している供給ノズル流の外縁部のみが点火する。火炎の中心部は、過剰に濃い混合物のため、より着火しにくい。その結果、より少ない量のガスしか同時に着火せず、まず酸素を内拡散させなければならない。着火した部分から高温の燃焼ガスが膨張することで、火炎はより乱れやすくなる。増加した乱流が酸素との混合を促進するため、この効果は自己強化される。着火性の混合物を有するガス体は、本発明の方法ではさらに上方に伸びており、横方向の膨張が少ない。この結果、火炎はより一層層流になる。これに関連する効果として、より狭く、より層流の火炎は、それ自体をスート体によりよく付着し、より安定した滞留点を形成することである。これにより、SiO2粒子のスート体の堆積表面への拡散経路が短くなり、滞留点での滞留時間が長くなるため、全体として堆積効率が高くなる。
【0061】
より濃厚なガス構成における着火能力の低下は、同時に着火するガス領域のサイズを小さくする(より小さい「小火炎」)。熱膨張と、分解によるモル増加(例えば、OMCTSガス1モルは燃焼ガスのモル数のx倍を生成する)による、そのような領域における体積の大きな増加は、火炎をより乱流にする圧力波を発生させる。したがって、同時着火体積が減少することで、先に述べたような利点を有する燃焼長がより高い層流火炎となる。本発明による方法におけるバーナー及び火炎中心では、原料流及び水素のみが存在し、これらはともに、迅速に点火するには高濃度すぎること、及び外側ノズルからの酸素が、より低い乱流性のために、より長い距離に分散して、より遅く中心に達することを考慮する必要がある。
【0062】
本発明の範囲内において、原料は、好ましくは同心バーナーの中心ノズルからキャリアガス及び酸素と共に燃焼部中に放出されるので、空気数の計算に用いられる酸素量は、原料の流れに含まれる酸素及び同心バーナーの外側ノズル(燃料ガス)で用いられる追加の酸素の混合から生じることを考慮に入れなければならない。
【0063】
本発明による方法の範囲内で、空気数をDE 10 2011 121 153 Aで定義される値よりも大幅に低減することができ、同時に、析出効率を大幅に向上させることができる。
【0064】
[工程(3)-SiO2粒子の堆積]
工程(3)では、工程(2)で生じたSiO2粒子を堆積表面に堆積させる。この工程の設計は、専門家の技能と知識の範囲内である。
【0065】
この目的のため、工程(2)で形成したSiO2粒子を回転する担体上に一層ずつ堆積させ、多孔質スート体を形成する。
【0066】
スート粒子の堆積中、前述の条件を満たすために、必要に応じてトーチと支持体との間の距離を変更する。
【0067】
[工程(4) - 乾燥とガラス化(必要な場合)]
工程(4)では、必要に応じて、工程(3)により生じたSiO2粒子を乾燥させ、ガラス化することにより、合成石英ガラスを形成する。この工程は、先に行われた工程がスートプロセスに従って行われた場合に特に必要となる。この工程の設計は、当業者の技能と知識の範囲内である。
【0068】
工程(3)におけるSiO2粒子の堆積中の温度が非常に低いため、多孔質のSiO2スートが得られ、これが別の工程(4)で乾燥及びガラス化されて合成石英ガラスを形成する、「スートプロセス」による石英ガラスの製造に、本発明による方法は好適である。
【0069】
本発明による方法は、特に、外付気相堆積法(Outside Vapor Deposition Method、OVD)、気相軸堆積法(Vapor Axial Deposition、VAD)、またはスートブールプロセスである。対応するOVDプロセス及びVADプロセスは、当業者に十分に知られており、スートブールプロセスは、例えばUS8,230,701から知られている。
【0070】
本発明によるプロセスは、石英ガラスの製造コストを低減することができる。
【0071】
本発明のさらなる目的は、合成石英ガラスを製造するための装置であり、該装置は、以下を備える。
(a)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含む少なくとも1つの原料を蒸発させて原料蒸気を形成するための、少なくとも1つの蒸発器部であって、該蒸発器部は、蒸発ユニットを具備するものと、
(b)工程(a)による前記原料蒸気が供給され、前記原料が熱分解又は加水分解によってSiO2粒子に変換される少なくとも1つの反応部であって、バーナーを含む前記反応部と、
(c)前記反応部(b)により生じたSiO2粒子を堆積させて合成石英ガラスを形成する少なくとも1つの堆積部であって、スート体からなる前記堆積部。
【0072】
本発明による装置では、反応部(b)において、前記スート体の表面からのバーナーの距離を変化させることができ、ターゲットの無い同じガス流量で操作される参照火炎の発光強度の最大値の位置(高さ)と前記火炎の水平方向の積分された発光強度(各高さにおける火炎幅全体)が(バーナーから見て)前記最大値の後方となる前記火炎の水平方向の積分された発光強度の最大値の少なくとも2/3である点の間に広がる火炎(=バーナー距離)の範囲に前記スート体の表面が位置するように少なくとも調整することが可能である。
【0073】
本発明はさらに、スート体上に堆積するSiO2-スート粒子が、スート体の成長時間の少なくとも50%の間、本質的に乱されていないターゲットレス火炎の発光強度の最大値の周辺領域に位置する火炎の領域(=バーナーからの距離)に位置し、そこで、火炎幅全体にわたって水平方向に積分した火炎の発光強度をカンデラ/mmで測定した値が、最大値の発光強度の70%以上、さらに好ましくは72%以上、さらに好ましくは74%以上である、上記に定義した一般の装置に関する。
【0074】
本発明の範囲内において、本発明による装置は、(工程(3)において)SiO2スート粒子のための堆積表面が、スート体の成長時間の少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、なおより好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは100%の間にわたって、カンデラ/mmで測定される火炎全体を水平方向に積分したターゲットレス火炎の発光強度が、最大値におけるターゲットレス火炎の水平方向の積分された発光強度の少なくとも2/3であるバーナーからの距離を維持しているように設計されていることが好ましい。
【0075】
本発明によれば、SiO2粒子を堆積させる表面の位置が、使用する火炎の燃え尽き長さの下にあり、表面で依然として燃焼が行われ得ることが有利であることが証明された。
【0076】
本発明の方法に関する上記説明に従って、本発明による装置のバーナーにおけるガス流、すなわち、バーナーに能動的に(すなわち加圧下で)供給される全ての可燃性物質に対するバーナーからの酸素(供給酸素を含む)の比率は、バーナーに能動的に(すなわち加圧下で)供給される全てのガスに対する空気数が1以下であることを実現するように、調整されることが好ましい。
【0077】
本発明の方法の上記考察に従って、本発明による装置のバーナーにおけるガス流、すなわち、バーナーに能動的に(すなわち加圧下で)供給される全ての可燃物に対するバーナー(中心ノズル供給酸素を含む)から加圧下で能動的に供給される酸素の比率は、0.90以下の空気数を実現するように調整されることが好ましい。
【0078】
本発明の方法に関する上記説明に従って、本発明による装置のバーナーにおけるガス流、すなわち、バーナーに能動的に(すなわち加圧下で)供給される全ての可燃性物質に対するバーナーからの酸素(中心ノズル供給酸素を含む)の比率は、0.85以下の空気数が実現するように調整されることが好ましい。
【0079】
本発明の方法の上記考察に従って、本発明による装置のバーナーにおけるガス流、すなわちバーナーに能動的に(すなわち加圧下で)供給される全ての可燃性物質に対するバーナーからの酸素(中心ノズル供給酸素を含む)の比率は、0.80以下の空気数を実現するように調整されることが好ましい。
【0080】
本発明の方法の上記考察に従って、本発明による装置のバーナーにおけるガス流、すなわちバーナーに能動的に(すなわち加圧下で)供給される全ての可燃性物質に対するバーナーからの酸素(中心ノズル供給酸素を含む)の比率は、0.78以下の空気数を実現するように調整されることが好ましい。
【0081】
本発明の方法の上記考察に従って、本発明による装置のバーナーにおけるガス流、すなわちバーナーに能動的に(すなわち加圧下で)供給される全ての可燃性物質に対するバーナーからの酸素(中心ノズル供給酸素を含む)の比率は、0.76以下の空気数を実現するように調整されることが好ましい。
【0082】
空気数λは、理論的に化学量論的に完全燃焼に必要な酸素の最小量に対する、実際に利用可能な酸素量の比率として定義される。
【0083】
本発明による装置のバーナーは、好ましくは同心円状の断面を有し、同心円状の断面の内部において、原料蒸気が酸素とともに供給混合体としてバーナー火炎に導入され、供給混合体が分離ガスによって酸素含有燃料ガスから分離される。
【0084】
さらなる関連する特徴は、上記の方法の説明に記載されている。
【0085】
最後に、本発明は、合成石英ガラスの製造のための本装置の使用に関する。
【実施例】
【0086】
国際特許出願PCT/EP2012/075346の実施形態による気化器において、180℃に予熱されたキャリアガスとしての窒素と共に液体原料OMCTSを170℃で気化させる。窒素-OMCTS蒸気混合物は、酸素(混合O2)と共に同心バーナーに導入され、バーナーは以下の条件下で操作される。
【0087】
【表1】
最大強度: 1162491.649
意味:
-: 悪い析出効率
+: 向上した析出効率
【0088】
実験1及び2では、スート体の表面は、本発明による火炎の発光強度より範囲外のバーナー距離にあるが、本発明による実験3では、スート体の表面とバーナーとの間の距離は、スート体の成長時間の少なくとも50%の間、本発明による範囲の火炎にあるようになっている。
【0089】
上記の実験では、同心バーナーが使用され、いわゆる原料混合物は、内側ノズルからバーナー領域に導入される。原料混合物は、重合性ポリアルキルシロキサン化合物OMCTS、N2キャリアガス、及び混合O2から構成される。バーナーの内側ノズルは、該内側ノズルと同心の中心ノズル(ここからH2ガスが分離ガスとしてバーナー領域に入る)に取り囲まれている。外側の同心円ノズルでは、燃焼剤として酸素が導入される(燃焼O2)。
【図面の簡単な説明】
【0090】
これらの例で使用したバーナー形状を
図1に示すが、その意味は次の通りである。
1:内側のノズル、
2:中間のノズル、及び、
3:外側のノズル。
【0091】
上記実験において、SiO2合成火炎の発光強度の校正は、以下のように行った。
【0092】
火炎の発光強度の校正は、校正済み光源(LOT-OrielのK-150WH及びGossen-Metrawattのconstant SLP120-80/snTD4541060001;最初の校正はopto.cal SCS 053,証明書番号09333、4.11.2009;二度目の校正はopto.cal SCS 053, 証明書番号16428、9.12.2016)と比較し実施された。
【0093】
カメラの感度を校正するために、校正用光源を測定が行われる典型的な距離に取り付けた。今回の設定では、作動距離は450mmである。完全なランバーシアン発光特性のため、発光強度は1/r2の振る舞いをするので、実験では、光束はopto.calで校正に使用した距離を作動距離として計算することが可能である。
【0094】
校正プロトコルでは、照度を校正対象パラメータとする。この校正では、発光エリアを参照するため、輝度がより適している。従って、照度の単位[Ev]=lm/m2=lxは、輝度の単位[Lv]=cd/m2またはCd/mm2に変換された。
【0095】
ランバート・ラジエーターの場合、この変換には校正や測定の際に距離の追加の知識が必要である。この特定の光源は、250mmの距離でEv=293.5lxの照度を持ち、実験の作業距離である450mmの距離ではIv=90.59Cdの照度である。光量の単位は検出器単位、つまり検出器の面積を基準とし、全発光量を積分したものである。エミッターベースの測定では、エミッターの有効面積が含まれるため、結果として輝度が単位となる。
【0096】
測光単位(ルクス/ルーメン/カンデラ)の適用は、人間の目の分光感度を模倣するためにCIE輝度関数を用いる。校正用光源と火炎放射は異なる分光特性を持っている。そのため、CIE輝度関数を用いて波長依存の発光に重み付けを行い、測光単位を求める。
【0097】
使用したカメラは、Basler acA1300-200umにBasler C125-0818-5M-P f8mmを装着したものである。カメラは技術的に有用な測定信号が得られるように一度設定した後、焦点距離、絞り、火炎に対するカメラの位置を固定し、測定中も一定に保った。
【0098】
校正用光源の分光分解された発光スペクトルは、CIE光度関数全体をカバーするのに十分な大きさである280nmから800nmまでの2nmの波長分解能で校正プロトコルに報告される。火炎からの発光は、異なる条件で分光分解された。
【0099】
これらの前提条件があれば、スイス計量局にトレーサブルな校正光源に対して、火炎の光量を測定することが可能である。