(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ポリエステル離型フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240514BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240514BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240514BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240514BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240514BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240514BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/36
B32B27/20 Z
C08K3/013
C08K3/26
C08K3/36
C08L67/00
(21)【出願番号】P 2021215403
(22)【出願日】2021-12-29
【審査請求日】2021-12-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0189211
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0163432
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソル キョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ハン ス
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-210226(JP,A)
【文献】特表2017-500220(JP,A)
【文献】特開平08-036739(JP,A)
【文献】特開2010-077258(JP,A)
【文献】特開2017-193173(JP,A)
【文献】特開2019-111811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
C08K 3/00-13/08
C08L 1/01-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上のポリエステルフィルムが積層され、
前記ポリエステルフィルムの表面にシリコーン離型層が形成され、
前記ポリエステルフィルムのうちの少なくとも一方の表層が粒子を含み、
前記粒子は、無機粒子であり、
前記粒子の含量は、フィルムの全体重量に対して0.01~
0.2重量%であり、
前記粒子を含むポリエステル層に含有する粒子の粒度分布を測定し、横に粒子直径、縦に粒子数をプロットした際、下記式1および2を満たす平均粒径を有する粒子AおよびBを有し、前記粒子AおよびBの重量比が下記式3を満たし、前記粒子AおよびBの平均粒径は、下記式4を満たす、ポリエステル離型フィルム:
0.1μm≦A≦0.5μm [式1]
0.6μm≦B≦1.0μm [式2]
2≦A/B≦10 [式3]
B-A≦0.5μm [式4]。
【請求項2】
前記離型フィルムは、総厚さが10~50μmである、請求項1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項3】
前記無機粒子は、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、カオリンおよび硫酸バリウムから選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物である、請求項
1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項4】
前記無機粒子は、シリカまたは炭酸カルシウムである、請求項
1に記載のポリエステル離型フィルム。
【請求項5】
前記無機粒子は、平均粒径が0.1~0.5μmのシリカ(A)と、平均粒径が0.6~1.0μmの炭酸カルシウム(B)であり、
前記炭酸カルシウム(B)の平均粒径とシリカ(A)の平均粒径との差が0.5μm以下である、請求項
1に記載のポリエステル離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル離型フィルムに関する。より具体的には、セラミック積層コンデンサ(Multi-layer Ceramic condenser、以下、MLCC)、偏光板保護用およびOCA用などの電子材料に用いられる表面保護用離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム(Polyester film)は、低温から高温に至る広い温度範囲で物性安定性に優れ、他の高分子樹脂に比べて耐化学性に優れる。また、機械的強度、表面特性、厚さの均一性が良好であるため、多様な用途や工程条件に適用が可能である。ここで、コンデンサ用、写真フィルム用、ラベル用、感圧テープ、装飾用ラミネート、トランスファーテープ、偏光板およびセラミック離型用グリーンシートなどに適用されており、近年、高速化および自動化の傾向に応じてその需要が増大している。
【0003】
近年、電子機器の小型化の傾向に応じてコンデンサおよびインダクタなどの電子部品も小型化され、この中、セラミックグリーンシート自体も薄膜化されており、セラミックシートを薄膜に製造して、同じボリューム内に、より多くのセラミック層を積み上げることがカギとなっている。ポリエステル離型フィルムの表面に形成されたシリコーン離型層上に、セラミック粉体とバインダーを液状媒体に分散させたセラミックスラリーを塗布して、薄膜のセラミックシートを製造するのであり、その後、セラミックコンデンサを製造する過程で離型フィルムを除去することになる。ところが、離型フィルムの表面粗さが高い場合には、離型フィルム自体のスリップ性やロールへの巻取りなどの物性は満たすものの、セラミックシート上に、離型フィルムの表面に突出した粒子の突出の形態が転写されるという問題が発生する。また、離型フィルムの製造時、搬送ロールと接触してフィルムを高速で搬送した際に粒子が脱離し、切り粉となって、接触するロールに付着して汚れが発生し、フィルムに傷を発生させるという問題が発生する。前記切り粉や脱離した粒子は、搬送ロールに付着してフィルムの表面に傷を発生させる原因となり、後工程で異物となる。
【0004】
その逆に、フィルムの表面粗さを過度に下げる場合には、セラミックスラリーの塗布時に塗布安定性、フィルム走行性、スリップ性が低下し、離型フィルムの製造後、ロールに巻取り時にフォームロールの脱落現象などが発生し、離型フィルムの表面にシリコーン離型層を塗布する過程でフィルムの表面にスクラッチなどが発生し得る。
【0005】
したがって、離型フィルムの製造時、表面粗さを最大限下げながらも、スリップ性、ロールに対する巻取性に優れ、高速で搬送しても切り粉が少なく、フィルムの切削時に粉塵の発生が少ない薄膜の離型フィルムの開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第2003-0055118号(2003.07.02)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、セラミック積層コンデンサ(MLCC)、偏光板保護用およびOCA用などの電子材料に用いられる表面保護用離型フィルムを提供しようとする。
具体的に、本発明は、薄膜のセラミック積層コンデンサ(MLCC)の離型フィルムに適用可能となるように、厚さ50μm以下の薄膜のフィルムでありながらも、ロールに対する巻取性およびスリップ性に優れたポリエステル離型フィルムを提供しようとする。
【0008】
また、セラミックスラリーを塗布して薄膜のセラミックシートを製造する際、ピンホールの発生が少ないポリエステル離型フィルムを提供しようとする。
また、フィルムの製造時に高速で搬送しても切り粉が少なく、フィルムの切削時に粉塵の発生が少ないポリエステル離型フィルムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するために研究した結果、特定の物性を満たすバイモーダル形態の粒子を含んでフィルムを製造することで、上記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明の一態様は、少なくとも1層以上が積層された二軸延伸ポリエステルフィルムであり、
少なくとも一面に粒子を含み、粒子を含むポリエステル層に含有する粒子の粒度分布を測定し、横に粒子直径、縦に粒子数(体積率(vol%))をプロットした際、下記式1および2を満たす範囲で平均粒径を有する粒子AおよびBを有し、前記粒子AおよびBの重量比が下記式3を満たす、ポリエステル離型フィルムを提供する。
【0011】
0.1μm≦A≦0.5μm [式1]
0.6μm≦B≦1.2μm [式2]
2≦A/B [式3]
【0012】
本発明の一態様において、前記式3は、2≦A/B≦10であってもよい。
本発明の一態様において、前記粒子AおよびBの平均粒径は、下記式4を満たしてもよい。
B-A≦0.5μm [式4]
【0013】
本発明の一態様において、前記離型フィルムは、総厚さが10~50μmであってもよい。
本発明の一態様において、前記粒子の含量は、フィルムの全体重量に対して0.01~0.3重量%であってもよい。
本発明の一態様において、前記粒子は、無機粒子および有機粒子の中から選択される何れか1つまたは2つ以上を混合した混合物であってもよい。
【0014】
本発明の一態様において、前記無機粒子は、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、カオリンおよび硫酸バリウムから選択され、前記有機粒子は、シリコーン樹脂、架橋ジビニルベンゼンポリメタクリレート、架橋ポリメタクリレート、架橋ポリスチレン樹脂、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド樹脂およびメラミン-ホルムアルデヒド樹脂から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0015】
本発明の一態様において、前記無機粒子は、シリカまたは炭酸カルシウムであってもよい。
本発明の一態様において、前記無機粒子は、平均粒径が0.1~0.5μmのシリカ(A)と、平均粒径が0.6~1.0μmの炭酸カルシウム(B)であり、前記炭酸カルシウム(B)の平均粒径とシリカ(A)の平均粒径との差が0.5μm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るポリエステル離型フィルムは、薄膜のフィルムでありながらも、ロールに対する巻取性およびスリップ性に優れ、セラミックスラリーを塗布して薄膜のセラミックシートを製造する際、ピンホールの発生が少ないポリエステル離型フィルムを提供することができる。
また、フィルムの製造時に高速で搬送しても切り粉が少なく、フィルムの切削時に粉塵の発生が少ないポリエステル離型フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。但し、下記の具体例または実施形態は、本発明を詳細に説明するための1つの参照にすぎず、本発明は、これに限定されず、種々の形態で実現されてもよい。
【0018】
また、他に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者の一人によって一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本発明における説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限する意図ではない。
【0019】
また、明細書および添付された特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
また、ある部分がある構成要素を「含む」とする際、これは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0020】
以下、本発明の各構成についてさらに具体的に説明する。
本発明の一態様において、前記ポリエステル樹脂は、ポリエステルフィルムを製造するためのマスターバッチチップとして用いられてもよい。
【0021】
本発明の発明者らは、粒径が異なる2種の無機粒子を混合して用い、これらの粒子の大きさおよび含量を特定の範囲で組み合わせて用いる場合、フィルムの表面が平坦でありながらも、後加工のハンドリングおよびフィルムの巻取性を向上させるための有効突起を含み、切削時に粉塵の発生が少ないフィルムを提供することができることを見出し、本発明を完成した。
【0022】
本発明の一態様において、前記ポリエステル樹脂は特に制限されず、通常のポリエステル樹脂を用いてもよい。具体的に例を挙げると、ジカルボン酸を主成分とする酸成分と、アルキレングリコールを主成分とするグリコール成分を縮重合して得られたものであってもよい。前記ジカルボン酸は制限されないが、テレフタル酸またはそのアルキルエステルやフェニルエステルなどを用いてもよく、一部は、イソフタル酸、オキシエトキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸および5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの二官能性カルボン酸またはそのエステル形成誘導体に置換して用いてもよい。また、グリコール成分は制限されないが、エチレングリコールを主に用い、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ビスオキシエトキシベンゼン、ビスフェノールおよびポリオキシエチレングリコールなどを混合して用いてもよく、一官能性化合物または三官能性化合物を一部併用してもよい。
【0023】
この他にも、ポリエステル樹脂の重合時に通常用いられる添加剤、すなわち、ピニング剤(pinning)、帯電防止剤、紫外線安定剤、防水剤、スリップ剤および熱安定剤の中から選択される1種または2種以上の成分を含んでもよく、これに制限されるものではない。
【0024】
前記ポリエステル樹脂は、当該技術分野で通常の重合方法であるTPA(Terephthalic acid)重合法またはDMT(dimethyl terephthalate)重合法などにより製造してもよく、これに制限されるものではない。
【0025】
本発明の一態様において、前記ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートであってもよい。すなわち、前記ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸としてテレフタル酸(Terephthalic acid)を用い、グリコールとしてエチレングリコール(Ethylene glycol)を用いて製造したポリエチレンテレフタレートであってもよい。
【0026】
また、本発明のポリエステルフィルムは、表面粗さを下げて離型フィルムのベースフィルムとして適用する際、表面粗さの転写に起因して、離型層に塗布される層にピンホールや厚さムラなどが発生するのを防止するとともに、ロール走行性、巻取性などのハンドリング(Handling)性を改善することで生産性を大幅に向上させるべく、特定の2種の無機粒子を含むことが好ましい。
【0027】
より具体的に、下記式1~3を同時に満たす粒子を含んでもよい。
具体的に、粒子を含むポリエステル層に含有する粒子の粒度分布を測定し、横に粒子直径、縦に粒子の体積率(vol%)をプロットした際、下記式1および2を満たす範囲で平均粒径を有する粒子AおよびBを有し、前記粒子AおよびBの重量比が下記式3を満たしてもよい。
【0028】
0.1μm≦A≦0.5μm [式1]
0.6μm≦B≦1.2μm [式2]
2≦A/B [式3]
【0029】
すなわち、前記式1および2は、粒子直径が0.1~0.5μm、0.6~1.2μmの範囲にそれぞれ1つ以上の平均粒径を有することを意味し、前記式3は、前記0.1~0.5μmの範囲の平均粒径を有する粒子Aと、0.6~1.2μmの範囲の平均粒径を有する粒子Bとの含量比(重量比)(A/B)が2以上、3以上、より具体的には2~10、2~11、3~10、3~11、3~11.5であってもよい。
【0030】
前記式1~3を同時に満たす範囲にて、本願目的のように、フィルムの製造時に薄膜のフィルムでありながらも、ロールに対する巻取性およびスリップ性に優れ、平滑性に優れ、セラミックスラリーを塗布して薄膜のセラミックシートを製造する際、ピンホールの発生が少ないポリエステル離型フィルムを提供することができる。
【0031】
すなわち、互いにトレード-オフ関係にある、平滑性と、スリップ性および巻取性とを同時に満たすフィルムを提供することができる。具体的に、フィルムの表面が平坦でありながらも、後加工のハンドリングおよびフィルムの巻取性を向上させるための有効突起を含み、表面組さの転写によるピンホールの発生およびMLCC Short不良率を減少可能なフィルムを提供することができる。
【0032】
また、フィルムの製造時に高速で搬送しても切り粉が少なく、フィルムの切削時に粉塵の発生が少ないポリエステル離型フィルムを提供することができる。
【0033】
また、前記粒子AおよびBの平均粒径は、下記式4を満たしてもよい。
B-A≦0.5μm [式4]
前記式4のように、前記0.1~0.5μmでの平均粒径と、0.6~1.2μmの範囲での平均粒径との差が0.5μm以下、より具体的には0.1~0.5μmの範囲であってもよい。上記の範囲にて、表面平滑性にさらに優れ、セラミックコンデンサに適用時にピンホールの発生をさらに減少させることができ、フィルムの切断時に切り粉の含量を減少させて異物の発生を減少させることができる。
【0034】
本発明の一態様において、前記粒子は、無機粒子および有機粒子の中から選択される何れか1つまたは2つ以上を混合した混合物であってもよい。
前記無機粒子は、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、カオリンおよび硫酸バリウムなどから選択され、前記有機粒子は、シリコーン樹脂、架橋ジビニルベンゼンポリメタクリレート、架橋ポリメタクリレート、架橋ポリスチレン樹脂、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド樹脂およびメラミン-ホルムアルデヒド樹脂などから選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物であってもよく、これに制限されるものではない。
【0035】
好ましくは、前記粒子は、平均粒径が0.1~0.5μmの粒子Aと、平均粒径が0.6~1.2μmの粒子Bを混合して用いてもよい。また、前記粒子Bの平均粒径と粒子Aの平均粒径との差が0.5μm以下、より具体的には0.1~0.5μm、0.2~0.5μmまたは0.3~0.5μmであってもよい。
【0036】
より好ましくは、前記粒子は、平均粒径が0.1~0.5μmのシリカ粒子(粒子A)と、平均粒径が0.6~1.2μmの炭酸カルシウム(粒子B)であってもよい。また、前記炭酸カルシウム(粒子B)の平均粒径とシリカ粒子(粒子A)の平均粒径との差が0.5μm以下、より具体的には0.1~0.5μm、0.2~0.5μmまたは0.3~0.5μmであってもよい。
【0037】
本発明の一態様において、前記粒子の含量は、フィルムの全体重量に対して0.01~0.3重量%、好ましくは0.05~0.25重量%、より好ましくは0.1~0.2重量%であってもよい。上記の範囲にて、粒子の分散性に優れ、粒子の凝集を防止し、切り粉の発生が少ないフィルムを提供することができる。
【0038】
本発明の一態様において、前記粒子は、ポリエステル樹脂の合成時、グリコール成分に分散させた粒子スラリー状で添加することが、分散性に優れ、粒子同士の再凝集を防止することができるため効果的であるが、これに制限されるものではない。すなわち、エステル化反応またはエステル交換反応の終了後から重縮合反応開始前までに添加してもよいが、これに制限されない。
【0039】
本発明の一態様に係るポリエステル離型フィルムは、少なくとも1層以上が積層された二軸延伸ポリエステルフィルムであり、少なくとも一面に前記式1~3を満たす粒子を含む。
具体的に例を挙げると、2層または3層が積層された二軸延伸ポリエステルフィルムであってもよく、少なくとも一面に前記式1~3を満たす粒子を含んでもよい。
【0040】
より好ましくは、3層以上が積層された二軸延伸ポリエステルフィルムであってもよく、少なくとも一方の表層が前記式1~3を満たす粒子を含んでもよい。3層以上が積層されるようにすることで、内層部には、表層の粗さに影響を与えない範囲で、製膜工程で発生するエッジ部分の回収原料、あるいは他の製膜工程のリサイクル原料などを混合して再使用することで、資源のリサイクルが可能となるとともに費用節減が可能となる。
【0041】
前記二軸延伸とは、X線回折で二軸配向のパターンを示すことを意味する。前記延伸は、順次二軸延伸であってもよく、長手方向(縦方向)に延伸した後、幅方向(横方向)に延伸する工程を行うことで達成されることができる。このように二軸延伸することで、長手方向および幅方向の強度および結晶化の状態を均一にし、各方向での裁断を効率的に行うことができる。
【0042】
本発明の一態様に係るポリエステル離型フィルムは、前記式1~3を満たすことにより、JIS B-0601に準じて、3次元表面粗さ測定器(Tokyoseimitsu、Surfcom 590A-3DF-12)を用いて測定された表面粗さのピークカウントPcが2.0個/mm2以下、より具体的には0.1~2個/mm2以下のフィルムを提供することができる。上記の範囲にて、表面粗さを下げるとともに巻取性および走行性を満たすため、生産性が向上するフィルムを提供することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0043】
本発明の一態様に係るポリエステル離型フィルムは、接触式3次元表面粗さ計を用いて、0.08mmカット-オフ値を適用して測定した中心線平均表面粗さRaが、20nm以下、より好ましくは15nm以下であってもよい。具体的に、中心線平均表面粗さRaが1~20nm、より具体的には4~15nmであってもよい。上記の範囲にて、表面粗さが低くて平滑性に優れ、MLCCの離型フィルムとして適用する際にピンホールの発生がほぼないフィルムを提供することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0044】
前記離型フィルムは、総厚さが10~50μm、より具体的には20~40μmであってもよい。上記の範囲で離型フィルムのベースフィルムとして適用するのに充分であるが、これに制限されるものではない。MLCC用離型フィルムの基材フィルムとして用いられるポリエステルフィルムは、持続的にその使用厚さが薄膜化していく傾向であるため、上記の範囲で適用するのに好適である。また、少なくとも3層以上積層する際、コア層とその両面にスキン層が形成されてもよく、コア層とスキン層の厚さ比が50%:50%~90%:10%、より好ましくは60%:40%~80%:20%であってもよい。上記の範囲にて、走行性に優れ、スリップ性に優れ、ロールに対する巻取性が向上し、切り粉が少なく発生するフィルムを提供することができるため好ましい。
【0045】
本発明の一態様において、前記ポリエステルフィルムは、二軸延伸フィルムであってもよい。具体的に、前記ポリエステルフィルムは、機械方向に3~5倍および幅方向に4~6倍二軸延伸されてもよい。前記延伸比にて、高分子構造の熱的寸法安定性がさらに増加して熱収縮を減らすことができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0046】
本発明の一態様において、前記ポリエステルフィルムは、二軸延伸後、200~250℃で熱処理および1~10%の弛緩がなされたものであってもよい。具体的には、熱処理と同時に弛緩を付与してもよく、より具体的には、幅方向に1~10%、さらに具体的には、2~4%の弛緩を行ってもよい。上記の範囲にて、フィルムが幅方向に緊張した状態を維持して高分子構造の緻密性が高くなり、熱による変形を低減することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0047】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳細に説明する。但し、下記の実施例および比較例は本発明をより詳細に説明するための1つの例示にすぎず、本発明が下記の実施例および比較例によって制限されるものではない。
【0048】
以下、物性を次のように評価した。
[平均粒径]
粒度分布測定器(Beckman社製のLS13 320)を用いて測定した。すなわち、Beckman社製のLS13 320(レーザ回折・散乱方式)を用いて粒子径に対する体積分布を得て、これからDmeanで表示される値を平均粒径(体積平均粒径)として算出した(関連国際規格:ISO 13320)。
(参考:http://www.polymer.co.kr/kor/02_service/equipment_6_1.jsp?gclid=EAIaIQobChMI-Zbrx6qD9QIVGtxMAh2A1wBrEAMYAiAAEgKiMvD_BwE)
【0049】
[表面粗さ(Ra)]
JIS B-0601に準じて、ポリエステルフィルムを左/中/右の3ヶ所で切片した後、3次元表面粗さ測定器(Tokyoseimitsu、Surfcom 590A-3DF-12)を用いて、測定速度0.03mm/sec、触針半径2μm、荷重0.7mm/N、測定面積1.0mm2、カットオフ値0.08mmの条件下で測定した。
【0050】
中心線をx軸、垂直方向をy軸とし、粗さ曲線をy=f(x)で示した際、下記の式により計算した。
(L:基準長さ(Cut-Off))
【0051】
[巻取り歩留まり]
実施例および比較例で製造されたポリエステルフィルムの製造時、投入量に対する製品生産量を計算して次のように評価した。
巻取り歩留まり(%)=製品生産量/投入量×100
【0052】
◎:歩留まりが65%以上
○:歩留まりが55以上65%未満
△:歩留まりが55%未満
【0053】
[切り粉の発生の程度]
製造されたフィルムを300m/minの速度で500mmの幅にスリットし、スリット後の500mmのフィルムロールのPET切り粉によるツブの有無をフィルムロールの表面にて確認し、1m2当たりのツブの数が0点であった場合は1級、1点~3点であった場合は2級、4点~6点であった場合は3級、7点~9点でもあった場合は4級、10~12点の場合は5級、13点以上を6級とし、1級、2級を合格とし、それ以外は不合格とした。
【0054】
[生産歩留まり]
実施例および比較例で製造されたポリエステルフィルムのマスタロールの1ロールを基材フィルムとして用い、シリコーン離型層を形成した後、セラミックスラリーを塗布して1.5~3.0μm厚さのセラミックグリーンシートを製造した。この際、ピンホールの発生の有無に応じて、次のように評価した。生産歩留まりは、供給されたポリエステルフィルムのマスタロールの1ロールの面積に対して、最終的に生成されたセラミックグリーンシートの面積で計算する。
生産歩留まり(%)=セラミックグリーンシートの面積/ポリエステルフィルムのマスタロールの1ロールの面積×100
【0055】
優秀:ポリエステルフィルムのマスタロールの1ロールに対してピンホールが発生しない
良好:ポリエステルフィルムのマスタロールの1ロールに対してピンホールが一部発生し、生産歩留まりが70%以上
普通:ポリエステルフィルムのマスタロールの1ロールに対してピンホールが一部発生し、生産歩留まりが30%以上
不良:ポリエステルフィルムのマスタロールの1ロールに対してピンホールが多数発生し、生産歩留まりが30%未満
【0056】
[実施例1]
1)ポリエステルチップ(1)の製造
ジメチルテレフタレート100重量部に対して、エチレングリコール50重量部、静電ピニング剤としてマグネシウムアセテート400ppmとカルシウムアセテート200ppm、重合触媒として三酸化アンチモン150ppmをエステル化反応器に投入した後、常温で230℃まで4時間エステル交換反応を進行させ、予備重合物BHET(bis-βterephthalate)を製造した。反応中に発生した副産物であるメタノールは、反応器の外へ流出させて蒸留塔を介して分離し、エステル化反応の終了後に追加的に発生するエチレングリコールも蒸留塔を介して分離した。この際、熱安定剤としてトリメチルホスフェート200ppmを添加した後、285℃まで徐々に昇温すると同時に、圧力を0.3torrまで減圧した。高真空下で重縮合反応を4時間行い、固有粘度0.630dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂チップ(以下、「wet chip」という)を製造した。
【0057】
2)ポリエステルチップ(2)の製造
前記ポリエステルチップ(1)に平均粒径が0.3μmのシリカ(粒子A)を1重量%添加し、二軸混練機を用いて溶融押出ししてポリエステルチップ(2)を製造した。
【0058】
3)ポリエステルチップ(3)の製造
前記ポリエステルチップ(1)に平均粒径が0.7μmの炭酸カルシウム(粒子B)を1重量%添加し、二軸混練機を用いて溶融押出ししてポリエステルチップ(3)を製造した。
【0059】
4)フィルムの製造
コア層には、無機粒子を含まないポリエチレンテレフタレート(PET)チップ(1)を用い、スキン層には、前記ポリエチレンテレフタレート(PET)チップ(1)、ポリエステルチップ(2)およびポリエステルチップ(3)を下記表1のような含量で混合して用いた。
【0060】
スキン層/コア層/スキン層が積層された3層フィルムに共押出しして、冷却ロールにキャストして未延伸シートを製造した。この際、前記コア層は全体フィルム重量の80重量%、スキン層は全体フィルム重量の20重量%とした。
【0061】
押出機を介して溶融押出した後、表面温度20℃のキャストドラムで急冷、固化させてシートを製造した。製造されたシートを95℃で、機械方向(縦方向)に3.5倍、横方向に4.0倍延伸し、230℃で熱処理して、最終的にフィルム中の粒子含量が0.2重量%である、厚さ31μmの二軸延伸フィルムを製造した。コア層の厚さが24.8μmであり、スキン層の厚さがそれぞれ3.1μmであった。製造されたフィルムの物性を測定して下記表2に示した。
【0062】
[実施例2~6]
下記表1のように、粒子の含量比を調節したことを除いては、実施例1と同様にフィルムを製造した。製造されたフィルムの物性を測定して下記表2に示した。
【0063】
[比較例1]
下記表1のように、粒子の含量比を調節したことを除いては、実施例1と同様にフィルムを製造した。製造されたフィルムの物性を測定して下記表2に示した。
【0064】
[比較例2]
実施例1において、ポリエステルチップ(3)の代わりにポリエステルチップ(4)を用いたことを除いては、実施例1と同様にフィルムを製造した。製造されたフィルムの物性を測定して下記表2に示した。
【0065】
前記ポリエステルチップ(4)は、前記ポリエステルチップ(1)に平均粒径が1.0μmの架橋ポリスチレン粒子(粒子B)を1重量%添加し、二軸混練機を用いて溶融押出してポリエステルチップ(4)を製造した。
【0066】
【0067】
【0068】
前記表2から分かるように、2種の粒子を用いるとしても、粒子種間の粒子の大きさの比およびバイモーダル粒度分布が本発明の範囲外である場合には、生産歩留まりが不良であることが分かった。また、切り粉の発生が増加し、巻取り歩留まりが低下し、表面粗さが増加することを確認した。
【0069】
以上、特定の事項と限定された実施形態により本発明を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0070】
よって、本発明の思想は、説明された実施形態に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。