(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】尿素の光酸化のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20240514BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20240514BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20240514BHJP
C02F 1/30 20230101ALI20240514BHJP
【FI】
A61M1/16 190
C02F1/72 101
B01D61/02 500
C02F1/30
(21)【出願番号】P 2021504218
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(86)【国際出願番号】 US2019044285
(87)【国際公開番号】W WO2020036732
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-07-29
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】ハインズ,ブルース
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,グオ ジョン
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-516793(JP,A)
【文献】特開2010-194472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38
C02F 1/20-1/26
C02F 1/30-1/38
C02F 1/70-1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造光-電気化学アノードと、
前記光-電気化学アノードを照射するように構成される光源と、
透析流体に提供される酸素に対して透過性であり、前記透析流体における液体に対して非透過性であるカソードと、を含む透析流体再生システムであって、
前記
ナノ構造光-電気化学アノードは、前記透析流体と接触するように構成され、光-電気化学反応によって前記透析流体中の尿素をCO
2、N
2およびH
2Oに変換することで前記透析流体を再生するように構成さ
れ、
前記ナノ構造光-電気化学アノードは、TiO
2
ナノワイヤを含む、透析流体再生システム。
【請求項2】
前記透析流体は、透析液である請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項3】
前記透析流体再生システムは、腎臓透析システムである請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項4】
前記透析流体再生システムは、血液濾過システム、血液透析システム、又は血液透析濾過システムである請求項3に記載の透析流体再生システム。
【請求項5】
前記光
-電気化学アノードおよび前記カソードに動作可能に接続される電圧源をさらに含む請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項6】
前記電圧源は携帯型である請求項5に記載の透析流体再生システム。
【請求項7】
前記透析流体再生システムは携帯型または装着型である請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項8】
前記透析流体再生システムは、定置型である請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項9】
前記光
-電気化学アノード、前記光源、および前記透析流体における酸素に対して透過性で、前記透析流体における液体に対して非透過性であるカソードは、一つの透析流体再生セルの一部であり、前記透析流体再生システムは、複数の追加透析流体再生セルを含む請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項10】
前記カソードは、通気性カソードである請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項11】
前記カソードは、導電布に基づくカソード又は導電紙に基づくカソードである請求項10に記載の透析流体再生システム。
【請求項12】
前記布に基づくカソードは白金被覆布を含む請求項11に記載の透析流体再生システム。
【請求項13】
前記カソードは、水を電気化学的に分解するように構成される請求項11に記載の透析流体再生システム。
【請求項14】
前記光
-電気化学アノードのナノ構造は、前記光源から発射された光に曝されると光電子または正孔が生成するように構成される請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項15】
前記光源は、発光ダイオード(LED)のアレイを含む請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項16】
前記LEDは、2次元(2D)アレイ状に配置される請求項15に記載の透析流体再生システム。
【請求項17】
前記LEDによる前記光
-電気化学アノードの表面における放射照度は、4mW/cm
2未満である請求項15に記載の透析流体再生システム。
【請求項18】
前記LEDは、波長365nmの光を発射する請求項15に記載の透析流体再生システム。
【請求項19】
前記光源は、紫外(UV)光源を含む請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項20】
前記光源は、可視光光源を含む請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項21】
入射光子から光電子への効率は、約51%である請求項14に記載の透析流体再生システム。
【請求項22】
個別のナノワイヤは、厚さが約500nmである請求項
1に記載の透析流体再生システム。
【請求項23】
前記TiO
2ナノワイヤが、水熱法により製造される請求項
1に記載の透析流体再生システム。
【請求項24】
前記ナノワイヤは、基板上に配置され
、個別の
前記ナノワイヤは個別に前記ナノワイヤを担持する前記基板に電気的に連結される請求項
1に記載の透析流体再生システム。
【請求項25】
尿素濃度が10mM以下である透析液溶液をさらに含む請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項26】
酸化副生成物、ラジカル副生成物、および塩素を除去するように構成されるラジカル捕捉剤をさらに含む請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項27】
膜をさらに含み、前記膜は逆浸透(RO)膜である請求項1に記載の透析流体再生システム。
【請求項28】
光源によって照射されるように構成されるナノ構造光
-電気化学アノードと、
透析流体に提供される酸素に対して透過性であり、前記透析流体における液体に対して非透過性であるカソードと、を含む透析流体再生システムであって、
前記
ナノ構造光
-電気
化学アノードは、前記透析流体と接触するように構成され
、光-電気化学反応によって前記透析流体中の尿素をCO
2、N
2およびH
2Oに変換することで前記透析流体を再生するように構成さ
れ、
前記ナノ構造光-電気化学アノードは、TiO
2
ナノワイヤを含む、透析流体再生システム。
【請求項29】
前記透析流体は、透析液である請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項30】
前記透析流体再生システムは、腎臓透析システムである請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項31】
前記透析流体再生システムは、血液濾過システム、血液透析システム、又は血液透析濾過システムである請求項
30に記載の透析流体再生システム。
【請求項32】
前記光
-電気化学アノードおよび前記カソードに動作可能に接続される電圧源をさらに含み、前記電圧源は携帯型である請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項33】
前記透析流体再生システムは携帯型または装着型である請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項34】
前記光
-電気化学アノード、および前記透析流体における酸素に対して透過性であり、前記透析流体における液体に対して非透過性であるカソードは、一つの透析流体再生セルの一部であり、前記透析流体再生システムは、複数の追加透析流体再生セルを含む請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項35】
前記カソードは、通気性カソードである請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項36】
前記カソードは、導電布に基づくカソード又は導電紙に基づくカソードである請求項
35に記載の透析流体再生システム。
【請求項37】
前記導電布に基づくカソードは白金被覆布を含む請求項
36に記載の透析流体再生システム。
【請求項38】
光源をさらに含み、前記光源は、発光ダイオード(LED)のアレイである請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項39】
前記LEDは、2次元(2D)アレイ状に配置される請求項
38に記載の透析流体再生システム。
【請求項40】
光源をさらに含み、前記光は、紫外(UV)光である請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項41】
光源をさらに含み、前記光源は、可視光光源である請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項42】
個別のナノワイヤは、厚さが約500nmである請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項43】
前記TiO
2ナノワイヤが、水熱法により製造される請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項44】
酸化副生成物、ラジカル副生成物、および塩素を除去するように構成されるラジカル捕捉剤をさらに含む請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項45】
膜をさらに含み、前記膜は逆浸透(RO)膜である請求項
28に記載の透析流体再生システム。
【請求項46】
光源によって照射されるように構成されるナノ構造光
-電気化学アノードと、
水に提供される酸素に対して透過性であり、液体の水に対して非透過性であるカソードと、を含む水処理システムであって、
前記
ナノ構造光
-電気化学アノードは、水と接触するように構成され、光
-電気化学反応によって水中の不純物を酸化するように構成さ
れ、
前記ナノ構造光-電気化学アノードは、TiO
2
ナノワイヤを含む、水処理システム。
【請求項47】
前記光
-電気化学アノードおよび前記カソードに動作可能に接続される電圧源をさらに含み、前記電圧源は携帯型である請求項
46に記載の水処理システム。
【請求項48】
前記システムは携帯型または装着型である請求項
46に記載の水処理システム。
【請求項49】
前記光
-電気化学アノード、および前記酸素に対して透過性であり、前記液体の水に対して非透過性である前記カソードは、一つの再生セルの一部であり、前記水処理システムは、複数の追加再生セルを含む請求項
46に記載の水処理システム。
【請求項50】
前記カソードは、通気性カソードである請求項
46に記載の水処理システム。
【請求項51】
前記カソードは、導電布に基づくカソード又は導電紙に基づくカソードである請求項
50に記載の水処理システム。
【請求項52】
前記布に基づくカソードは白金被覆布を含む請求項
51に記載の水処理システム。
【請求項53】
光源をさらに含み、前記光源は、発光ダイオード(LED)のアレイである請求項
46に記載の水処理システム。
【請求項54】
前記LEDは、2次元(2D)アレイ状に配置される請求項
53に記載の水処理システム。
【請求項55】
光源をさらに含み、前記光源は、紫外(UV)光源である請求項
46に記載の水処理システム。
【請求項56】
光源をさらに含み、前記光源は、可視光光源である請求項
46に記載の水処理システム。
【請求項57】
個別のナノワイヤは、厚さが約500nmである請求項
46に記載の水処理システム。
【請求項58】
前記TiO
2ナノワイヤが、水熱法により製造される請求項
46に記載の水処理システム。
【請求項59】
膜をさらに含み、前記膜は逆浸透(RO)膜である請求項
46に記載の水処理システム。
【請求項60】
光源によって照射されるように構成されるナノ構造光
-電気化学アノードと、
透析流体に提供される酸素に対して透過性であり、前記透析流体における液体に対して非透過性であるカソードと、を含む腎臓透析システムであって、
前記
ナノ構造光
-電気化学アノードは、前記透析流体と接触するように構成され、光-電気化学反応によって前記透析流体中の尿素をCO
2、N
2およびH
2Oに変換することで前記透析流体を再生するように構成され、
前記ナノ構造光-電気化学アノードは、TiO
2
ナノワイヤを含み、
前記腎臓透析システムは携帯型または装着型である、腎臓透析システム。
【請求項61】
前記透析流体は、透析液である請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【請求項62】
前記腎臓透析システムは、血液濾過システム、血液透析システム、又は血液透析濾過システムである請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【請求項63】
前記光
-電気化学アノードおよび前記カソードに動作可能に接続される電圧源をさらに含み、前記電圧源は携帯型である請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【請求項64】
前記光
-電気化学アノード、および前記透析流体における酸素に対して透過性であり、前記透析流体における液体に対して非透過性であるカソードは、一つの透析流体再生セルの一部であり、前記腎臓透析システムは、複数の追加透析流体再生セルを含む請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【請求項65】
前記カソードは、通気性カソードである請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【請求項66】
前記カソードは、導電布に基づくカソード又は導電紙に基づくカソードである請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【請求項67】
前記布に基づくカソードは白金被覆布を含む請求項
66に記載の腎臓透析システム。
【請求項68】
光源をさらに含み、前記光源は、発光ダイオード(LED)のアレイである請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【請求項69】
前記LEDは、2次元(2D)アレイ状に配置される請求項
68に記載の腎臓透析システム。
【請求項70】
光源をさらに含み、前記光源は、紫外(UV)光源である請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【請求項71】
光源をさらに含み、前記光源は、可視光光源である請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【請求項72】
個別のナノワイヤは、厚さが約500nmである請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【請求項73】
前記TiO
2ナノワイヤが、水熱法により製造される請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【請求項74】
酸化副生成物、ラジカル副生成物、および塩素を除去するように構成されるラジカル捕捉剤をさらに含む請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【請求項75】
膜をさらに含み、前記膜は逆浸透(RO)膜である請求項
60に記載の腎臓透析システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願へのクロスリファレンス)
本出願は、2018年8月17日に提出された米国仮特許出願第62/719,549号の利益を主張し、該出願全体が参照により本出願に明確に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
世界中で200万人以上の末期腎疾患(ESRD)患者が、生命を維持するために透析を受けているが、この数が実際のニーズの10%未満を表す可能性がある。米国だけでも、46万人以上が腎臓透析を受けており、毎年、そのうち8.9万人以上が死亡し、5年生存率はわずか35%である。血液透析の間歇性という特徴により、血液代謝物濃度が大きく変動する。観察によれば、通常の血液透析と比較した場合、延長された血液透析(つまり、より頻繁な、または時間のより長い治療)で治療された患者の長期生存率が向上することが分かる。
【0003】
図1は、従来の透析システム10の平面図である。動作中、患者5は、患者の血液がチューブ14を通って透析システム10に流れるように、透析システム10に接続される。チューブ14は、血液ポンプ18を貫通する。血液ポンプ18のポンプ作用により、患者の血液が透析システム10を通って患者の体内に戻る。ポンプ18は、通常、非接触式ポンプである。
【0004】
透析液12は、患者の血液から不要な廃棄物(例えば、尿素)を除去するのに役立つ流体である。透析中、透析液12の流れと患者の血流は透析システム10を通るが、2つの流れは物理的に混合しない。代わりに、機械からの新鮮な透析液12は、血流から膜によって分離される。患者の血流からの不純物は、膜を経て透析液12に滲出される。たとえば、典型的に、通常の成人では毎日12~24gの尿素を除去する必要があるが、低タンパク食の場合に毎日目標として15gが十分である。他の不純物も血流から透析液に滲出される。不要な廃棄物と過剰な電解質を含む透析液は、処理のため透析装置から離れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
血液透析は、目標濃度の低い透析液中への拡散という原理に基づいて作用するため、本来的に大量の流体が必要とされる。通常の血液透析は、毎回約120リットルの透析液を使用することにより、体から過剰な代謝廃棄物が除去される。これが、典型的に3~4時間の治療を必要とする。透析は、週に3回必要とされ得る。患者は、何時間も動けなくなったり、透析センターへの交通を手配したりしなければならないことを含む重大な生活の混乱にさらされ、生活の質が影響される。したがって、尿素除去が改善されたなど、透析が改善されたシステムおよび方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後で発明を実施するための形態でさらに説明するいくつかの概念を簡略化された形態で紹介するために、ここで概要を提供される。この概要は、保護を請求する主題のキーとなる特徴を特定する旨ではない。
【0007】
簡単に言えば、本発明の技術は、透析液からの尿素除去に関する。本発明の技術は、腎臓透析、血液透析、血液濾過、血液透析濾過、不純物の除去などを含む透析に使用することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、光‐化学的酸化(「透析流体再生」または「尿素処理」とも呼ばれる)は、透析液から尿素を除去する。透析システム流体再生システムは、ナノ構造アノードと、アノードを照明するように構成される光源と、酸素透過性を有するカソードとを含んでもよい。ナノ構造は、水熱成長したTiO2ナノワイヤーであってもよい。光源は、LEDのアレイで提供されてもよい。酸素透過性または空気透過性を有するカソードは、白金被覆(Pt被覆)布または紙であってもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、システムは、装着型および/または携帯型になるようにサイズが十分に小さくなる可能である。装着型透析装置は、連続透析を達成するだけでなく、強化された移動度により診療所関連の治療コストを低減し、生活の質を向上させるのに役立つ。
【0010】
一実施形態では、透析流体再生システムは、ナノ構造アノードと、アノードを照明するように構成される光源と、酸素透過性を有するカソードとを含む。
【0011】
一態様では、透析流体は、透析液である。別の態様では、このシステムは、腎臓透析システムである。一態様では、このシステムは、血液濾過システムである。一態様では、このシステムは、血液透析システムである。一態様では、このシステムは、血液透析濾過システムである。
【0012】
一態様では、該システムは、アノードおよびカソードに動作可能に接続される電圧源をさらに含む。別の態様では、電圧源は、携帯型である。
【0013】
一態様では、透析流体再生システムは、携帯型である。別の態様では、透析流体再生システムは、装着型である。別の態様では、透析流体再生システムは、定置型である。
【0014】
一態様では、アノード、光源、及び酸素透過性を有するカソードは、第1の透析流体再生セルの部品であり、このシステムは、複数の透析流体再生セルを含む。
【0015】
一態様では、カソードは通気性(air-breathable)カソードである。別の態様では、カソードは、導電布に基づくものである。一態様では、この布は、白金被覆(Pt被覆)布である。一態様では、カソードは、導電紙に基づくものである。
【0016】
一態様では、カソードは、水を電気化学的に分解するように構成される。別の態様では、アノードのナノ材料は、光に曝されると光電子または正孔が生成するように構成される。
【0017】
一態様では、光源は、発光ダイオード(LED)のアレイを含む。一態様では、LEDは、2次元(2D)アレイ状に配置される。別の態様では、LEDによるアノードの表面における放射照度は、4mW/cm2未満である。一態様では、LEDは、波長365nmの光を発射する。
【0018】
一態様では、光源は、UV源を含む。別の態様では、光源は、可視光光源を含む。一態様では、入射光子から光電子への効率は、約51%である。
【0019】
一態様では、ナノ構造アノードは、TiO2ナノワイヤを含む。別の態様では、個別のナノワイヤは、約500nmの厚さを有する。一態様では、TiO2ナノワイヤは、水熱的に製造される。一態様では、ナノワイヤは、基板上に配置され、個別のナノワイヤは、個別にナノワイヤを担持する基板に電気的に接続される。
【0020】
一態様では、透析液溶液は、尿素濃度が10mM以下である。別の態様では、このシステムは酸化副生成物、ラジカル副生成物、および塩素を除去するように構成されるラジカル捕捉剤をさらに含む。
【0021】
一態様では、該システムは小分子を通過させ、大分子の通過を阻止するように構成される膜をさらに含む。別の態様では、該膜は、逆浸透(RO)膜である。
【0022】
一実施形態では、透析流体再生システムは、光に曝されると光電子または正孔が生成するように構成されるナノ構造基板と、基板を照明するように構成される光源と、酸素透過性を有するバリアとを含む。
【0023】
一態様では、光源は天然に存在するものである。
【0024】
一実施形態では、透析流体を再生する方法は、透析流体を前項のいずれか一項に記載のシステムに流すステップと、透析流体がアノードを流れるときに光源でアノードを照明し、これによって透析流体中の尿素を光‐電気化学的に除去するステップとを含む。
【0025】
一実施形態では、透析流体を再生する方法は、透析流体を、透析システムにおける、複数のナノ構造を有するアノードとカソードとの間に流すステップと、アノードを光源で照明するステップと、酸素を前記透析流体に向かってカソードに流すステップと、透析流体中の尿素をCO2、N2およびH2Oに変換し、これによって透析流体を再生するステップとを含む。
【0026】
一態様では、該方法は、透析システム内で透析流体を再循環させるステップをさらに含む。
【0027】
一態様では、この方法は、正電圧をアノードに印加するステップと、負電圧をカソードに印加するステップとをさらに含む。
【0028】
一態様では、正電圧と負電圧との間の電圧差は、約0.6Vから約0.8Vの範囲内にある。
【0029】
一態様では、光源は、UV光および可視光の光源を含む。
【0030】
一態様では、酸素を前記透析流体に向かって前記カソードに流すことは、周囲空気を前記カソードに流すことを含む。
【0031】
一態様では、該方法は、透析流体をラジカル捕捉剤に流すステップと、ラジカル捕捉剤中に透析流体から塩素を除去するステップとをさらに含む。
【0032】
一実施形態では、透析流体を製造する方法は、処理対象とする水を、透析流体再生システムにおける、複数のナノ構造を含むアノードとカソードとの間に流すステップと、前記アノードを光源で照明するステップと、酸素を処理対象とする水に向かってカソードに流すステップと、処理対象とする水中の不純物を酸化し、これによって透析流体が生成するステップとを含む。
【0033】
一態様では、この方法は、透析システム内で透析流体を再循環させるステップをさらに含む。一態様では、該方法は、正電圧をアノードに印加するステップと、負電圧をカソードに印加するステップとをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図面を組み合わせて下記の発明を実施するための形態を参照して理解するとと、本発明技術の上記態様および付随する利点は、より容易に理解される。図面の簡単な説明は下記のとおりである。
【
図1】通常技術による透析システムの平面図である。
【
図2】本技術の一実施形態による透析システムの概略図である。
【
図3】本技術の一実施形態による、動作中の透析システムの概略図である。
【
図4A】本技術の一実施形態による尿素処理ユニットの分解図である。
【
図4B】本技術の一実施形態による、動作中の尿素処理ユニットの概略図である。
【
図5A】本技術の一実施形態による尿素処理ユニットの分解図である。
【
図5B】本技術の一実施形態による尿素処理ユニットの分解図である。
【
図6A】本技術の一実施形態によるナノ構造の顕微鏡画像である。
【
図6B】本技術の一実施形態によるナノ構造の顕微鏡画像である。
【
図7】本技術の一実施形態による尿素処理ユニットの概略図である。
【
図8】本技術の一実施形態による尿素処理ユニットのフロー図である。
【
図9】本技術の一実施形態による携帯型尿素透析システムの概略図である。
【
図10A】本技術の実施形態による携帯型透析システムの概略図である。
【
図10B】本技術の実施形態による携帯型透析システムの概略図である。
【
図10C】本技術の実施形態による携帯型透析システムの概略図である。
【
図10D】本技術の実施形態による携帯型透析システムの概略図である。
【
図11】本技術の一実施形態による光電流のグラフである。
【
図12】本技術の一実施形態による、水熱成長時間の関数としての光電流のグラフである。
【
図13】本技術の一実施形態による、波長の関数としての吸光度のグラフである
【
図14】本技術の一実施形態による、有効LED電流の関数としての光電流のグラフである。
【
図15】本技術の一実施形態によるPt被覆カソードと白金黒(Pt black)カソードとの間の性能比較である。
【
図16】本技術の一実施形態による、時間の関数としての光電流のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
いくつかの実施形態が図示及び説明されているが、本発明の趣旨と範囲を逸脱しない限り、様々な変更が可能であることが理解すべきである。
【0036】
図2は、本技術の一実施形態による透析システムの概略図である。図示されるシステム(例えば、腎臓透析システム、血液透析、血液透析濾過または血液濾過システム)は、尿素酸化ユニット700と毒素の選択的除去ユニット600を含む。動作中、尿素および他の毒素を含む血流410は、尿素酸化ユニット700に入る。血流410は、透析液流体の流れ(例えば、透析液)715から、血流と透析液流体の流れ(簡略化のために「透析液」と呼ぶ)との間の選定分子の質量交換を可能にする膜712によって分離される。いくつかの実施形態では、低分画分子量透析膜(low molecular weight cut-off dialysis membrane)は、小分子(例えば、100Da未満)のみを通過させる。いくつかの実施形態では、膜は、逆浸透(RO)膜であってもよい。いくつかの実施形態では、尿素酸化ユニット700は、尿素を除去するように構成される光‐化学的酸化ユニット720(「透析流体再生ユニット」または「尿素処理ユニット」とも呼ばれる)と、酸化副生成物、ラジカル副生成物(radical byproducts)、塩素および/または他の毒素を除去するように構成されるラジカル/痕跡量捕捉剤(radical/trace scavenger)780とを含む。以下、
図4A~
図8を参照しながら、光‐化学的酸化ユニット720についてより詳細に説明する。本開示では、「光酸化」、「光化学的酸化」および「光‐化学的酸化」という用語は、交換可能に使用される。
【0037】
いくつかの実施形態では、尿素および/または他の小分子毒素が血流410から除去され、これにより部分的に洗浄された血流414はその後、蛋白結合性毒素の選択的除去ユニット600に向かって流れ続ける。血流414は、一般に血漿と呼ばれる分子量の大きなタンパク質および小分子を通過させるように構成される膜612によって細胞成分から分離される。膜612の透過側には、より大きな分子量および/または蛋白結合性毒素を除去する選択的吸着剤がある。溶液614は、膜613を経てユニット650に流入する。該ユニット650は、流れ610によって小分子毒素が除去されるために吸着剤と選択性膜とを組み合わせて含むものである。栄養素は、流れ651及び膜612の透過/血漿側上の流れ616中の脱着されたタンパク質として血流416に戻る。ユニット600によって除去される毒素610の非限定的な例として、ヒトアルブミンに結合したインドキシル硫酸が挙げられる。一般に、尿素酸化ユニット700は小さな毒性分子を除去し、毒素の選択的除去ユニット600は大きな毒性分子またはアルブミンなどのタンパク質に結合した分子を除去する。しかしながら、異なる実施形態では、毒素除去ユニットの異なる構成も可能である。毒素の選択的除去ユニット600から出る血液および/または血漿流616は、透析処理の他の素子/ステップに向かって流れ続けるか、または患者に戻る。
【0038】
図3は、本技術の実施形態による動作中の透析システムの概略図である。図示される分析システムは、透析液715の再生システムとして動作する。動作中、血流410、805は、患者の血管系と、一般にポンプ(例えば、ポンプ810)を必要とする尿素酸化ユニット700および毒素の選択的除去ユニット600(または他の毒素除去ユニット)との間に流れる。いくつかの実施形態では、透析液715の流れは、ユニット600、700内で再循環するので、処理のために新鮮な透析液を加える必要性を排除するか、または少なくとも制限する。結果として、本発明の技術の実施形態によれば、透析液の消費は、通常の透析と比較して低減される。
【0039】
透析液715は、尿素濃度が10mM以下であってもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ794は、ポンプ810および716の動作を制御して、入力血流410および透析液715の流れを調整することができる。
【0040】
図4Aは、本技術の実施形態による尿素処理ユニット20の分解図である。図示される尿素処理ユニット20は、電気化学反応によって尿素を除去する光‐電尿素処理ユニットである。システム20は、誘電体スペーサー27(例えば、ゴム、シリコン、またはプラスチックスペーサー)によって分離された2つの電極24、26を含む。動作中、尿素を含む透析液は、2つの電極24、26の間に保持され、尿素のCO
2、H
2O、およびN
2への光酸化を促進する光照射を受ける。
【0041】
必要な光源は、紫外線(UV)ランプ22によって提供されてもよい。反応はまた、電気化学反応のための酸素を必要とする。以下、
図4Bを参照しながら、必要な酸素の供給について説明する。
【0042】
図4Bは、本技術の実施形態による動作中の尿素処理ユニットの概略図である。図示される実施形態では、空気は、チューブ28に流入し、さらに光電尿素処理ユニット20内に位置する尿素を含む透析液へ流れる。矢印29は、透析液中に気泡31が生じる空気の流入流れを示している。しかしながら、UVランプ22からの入射光子の電気化学反応への量子効率は比較的低く、1%未満である場合がある。その結果、尿素処理ユニット22は、約15~20gの尿素除去の目標が携帯型装置で達成される場合、依然として非実用的に大きい恐れがある。以下、
図5Aを参照しながら、改善された酸素の供給について説明する。
【0043】
図5Aは、本技術の実施形態による尿素処理ユニット720の分解図である。尿素処理ユニット720で起こる電気化学反応について下記の通り説明する。
アノード:CO(NH
2)
2 + 6 OH
- →CO
2 + N
2 + 5 H
2O + 6e
-
カソード:O
2 + 2 H
2O + 4 e
- → 4 OH
-
ネット:CO(NH
2)
2 + 3/2 O
2 → CO
2 + N
2 +2 H
2O(式1)
【0044】
いくつかの実施形態では、透析液715は、入口734から出口736までスペーサー732を流通する。透析液715は、CO2およびN2に電気化学的に分解しようとする尿素を担持する。スペーサー732は、電圧源792(例えば、DC電圧源)にそれぞれに接続されるアノード722とカソード742との間に挟まれてもよい。いくつかの実施形態では、電圧源792は、約0.6V~約0.8Vの範囲内の電圧差を提供する。スペーサー732のいくつかの実施形態では、透析液の流れ全体が、TiO2層の上方を流れるように導かれる。
【0045】
いくつかの実施形態では、アノード722には、ナノ構造(例えば、TiO2ナノワイヤ)が取り付けられている。動作中、アノード722は、式1に示される電気化学反応のための光(例えば、UV光)を放出する光源によって照明される。アノードでは、光励起されたTiO2ナノ構造は、表面における溶液成分の酸化のための正孔を提供し、電子は下方の導電性酸化物(たとえば、フッ素をドープした薄い酸化物またはFTO)に集められ、次に水をOH-に分解するようにカソード電極に輸送される。光励起は光源750または自然光で提供することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、カソード742はガス透過性(例えば、空気透過性または酸素透過性)を有してもよい。動作中、酸素を含むガス760の流れは、尿素を含む透析液に向かってカソード742を流れることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、尿素処理ユニット720は、透析流体を製造するために使用され得る。例えば、処理対象とする水は、アノード722とカソード742との間を通過し、処理対象とする水中の不純物を酸化し、これによって透析流体を生成することができる。以下、
図5B~6Bを参照しながら、尿素処理ユニット720のいくつかの実施形態についてさらに説明する。
【0048】
図5Bは、本技術の実施形態による尿素処理ユニット720の分解図である。いくつかの実施形態では、尿素処理ユニット720は、ナノ構造723を担持する基板721を有するナノ構造アノード722を1つ以上含む。ナノ構造アノード722は、基板ホルダー724に保持されてもよい。尿素の光化学分解に必要な光は、光源(例えば、発光ダイオード(LED)、レーザー、放電ランプなど)を1つ以上含む光アレイ752によって提供され得る。光源は、2次元(2D)アレイ状に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、LEDは、波長365nmの光を発射する。いくつかの実施形態では、LEDは、紫外光(UV)波長または可視光波長の光を発射する。いくつかの実施形態では、LEDは、アノードの表面(例えば、基板721の表面)に強度4mW/cm
2未満の光を発生させる。他の実施形態では、例えば、アノードの表面に、mW/cm
2を超える強度の光を発生させるように他のより高い光強度を採用することができる。いくつかの実施形態では、入射光子の量子効率(入射光‐電効率)は約51%である。いくつかの実施形態では、ナノ構造アノード722は、専用の光アレイ752と組み合わせるか、または組み合わせないながら、入ってくる自然光に基づいて動作することができる。
【0049】
図5Aを参照しながら説明したように、カソードは、液体(例えば、水)を遮断するが、ガス(例えば、空気または酸素)を通過させる空気透過性カソード742であってもよい。いくつかの実施形態では、カソード742は導電布で作られる。例えば、導電布は、白金被覆(Pt被覆)布またはカーボンクロスであってもよい。いくつかの実施形態では、カソード742は、導電紙に基づくカソード(conductive paper-based cathode)であってもよい。空気透過性(通気性)カソード742は、カソード742の支持素子を有するスペーサー744および746(例えば、メッシュ支持素子745、747(または他のガス透過性構造素子)を有するスペーサー)によって機械的に適切な位置に保持され得る。
【0050】
本発明の技術の少なくともいくつかの実施形態によれば、通常の技術の性能と比較して、性能の顕著な改善が観察された。例えば、1日あたりの尿素生成量を1日あたり15グラム(0.25モル)の目標とする6e-酸化処理に合わせるには、24時間にわたって1.7Aの電流が必要である。TiO2ナノ構造アノードにおける光電流密度を目標値1mA/cm2とする場合、装置総面積は約1700cm2、つまり1.82ft2が必要である。このような装置総面積では、1日当たり約15gの尿素を酸化する、バックパックの大きさに相当する装置を配備することが可能になる。バックパックの大きさに相当する装置は、再充電せずに8時間の動作のために約12個の8000mAhの電池を必要とし、より短い動作の場合には比例的により少ない電池を必要とする。
【0051】
さらに、低濃度尿素分解の高変換効率は、TiO2が、一般的に望ましくないオキソクロロ系(oxochloro-species)を生成することことなく尿素を酸化する選択性が高いことを示している。また、光電流密度は、ナノ構造またはLED無しの従来技術よりも1桁以上高い。
【0052】
装置性能のサンプル計算
示される実施形態では、UV LEDの動作電流は50mAに保持される。
6.7%の光子がTiO
2サンプルに幾何学的に入射している場合、入射LED電流から光電子電流への効率は、数(1)で取得される。
【数1】
(式中、I
LEDとI
光電流はそれぞれLEDを駆動させる電流、及び生じる光電流である。)
LEDの量子効率が40%であるため、入射光子から光電子への効率は、数(2)で取得される。
【数2】
回路を通過する光電流の総量は、数(3)で算出される。
【数3】
尿素分解に使用される累積光電流は、尿素濃度変化から算出され得、即ち、数(4)で算出される。
【数4】
(式中、6は単一の尿素分子の酸化に関与する電子の数としてにファラデー定数を掛け、C
開始およびC
終了は光酸化実験の前後で測定された尿素濃度であり、Vは0.3mlである。)
尿素を分解するのを選択する光電流の選択性は、数(5)で取得される。
【数5】
尿素除去速度は、動作中に一定であると仮定される。必要な電極面積及び動作電流を算出するために、15gの尿素を毎日除去する必要があると仮定することができる。
【0053】
従来技術は、本発明の技術よりもはるかに高い動作電流を必要とする。下記の表1に示される従来技術における入射光子から光電子への効率を算出するために、文献の光源がエミュレートしているNRELからの太陽AM.15スペクトルが使用される。文献に採用される強度である100mW/cm2の場合、合計光量子束密度(photon flux)は3.89×1017s-1cm-2になり、そのうち280nm~380nmの光子の光量子束密度が1.16×1016s-1cm-2である。従って、入射光子から光電子への効率は、0.28%である。380nm未満の波長のみを考慮しても、効率は依然としてわずか9.3%である。仮に、本研究で使用したUV LEDと同じように、光源の量子効率が40%である場合、2000Aの動作電流が必要になるが、これが臨床、家庭、または携帯での使用には実用的ではない。
【0054】
本技術と従来技術の性能のいくつかの比較が、以下の表1に示される。
【表1】
【0055】
図6Aおよび6Bは、本技術の一実施形態によるナノ構造723の2種類のスケールでの顕微鏡画像である。一般に、TiO
2は、その性能を向上させるために、サンプルが全ての入射光を吸収するのに十分に厚いことと、基板の内部で大量のキャリアの再結合なしに電子電流を収集するのに十分な薄いこととの間の固有のトレードオフがある。いくつかの実施形態では、そのような最適化は、高表面積および電子収集電極(例えば、FTO層である基板)への効率的な電気伝導を有する高度に秩序化されたナノスケール構造によって可能である。動作中、ナノ構造723の鉛直方向の比較的高密度によって、電子/正孔キャリアの分離を可能にし、したがって、無駄なキャリアの再結合を低減する。いくつかの実施形態では、ナノ構造723は厚さが約500nmである。
【0056】
図7は、本技術の一実施形態による尿素処理装置の概略図である。図示される尿素処理ユニット720は、いくつかのセル720-i(尿素処理セル、透析流体再生セル、または光‐化学的酸化セルとも呼ばれる)を含む。異なる実施形態では、セル720-iは、同じ入口および/または出口を共有してもよい。セルを通る透析液の流れは、並列流れまたは直列流れとして、あるいは両方の組み合わせとして配置されてもよい。一般に、セル720-iを積層すると、システムの全体的な幅および高さが減少し、したがって、システムがよりコンパクトで携帯可能になる。
【0057】
図8は、本技術の一実施形態による尿素処理ユニット720のフロー図である。尿素処理ユニット720は、複数のセル720-iを含む。透析液の流れはセル720-1に入り、ここで透析液中の尿素が少なくとも部分的に分解され、引き続き、他のセル720-iに向かって行く。まとめると、セル720-iでの電気化学反応によって、上記の式1を参照して説明したように、尿素をCO
2およびN
2に変換する。一般に、セル720-iを配置することによって、システムをよりモジュール化および/またはより安価にすることができる。
【0058】
図9は、本技術の一実施形態による携帯型尿素透析システム100の概略図である。図示されるシステム100は、複数の透析液入口および出口734、736を有する複数のセル720-iを含む。セル720-iを通る流れは、
図7~9に示されるように配置されてもよい。結果として、尿素透析システム100のサイズは、該システムが携帯可能になる程度まで小型化され得、例えば、システムは、バックパックまたは他のキャリア105内に取り付けられ得る。
【0059】
図10A~10Dは、本技術の実施形態による携帯型透析システムの概略図である。本発明技術のいくつかの実施形態では、透析システムのコンパクトさは、システムの装着性または携帯性を可能にする。このような透析システムの装着性/携帯性は、患者の移動度および生活の質を促進する。
【0060】
図10Aは、患者5の体に取り付けられた携帯型透析システム100を示している。血管アクセス位置の他の可能な実施形態もあるが、携帯型透析システム100は、チューブ110で患者の血管系に接続される。
図10Bは、バックパック105内に取り付けることができる尿素処理ユニット720を含む携帯型透析システム100を示している。
図10Cは、スーツケース105内に取り付けることができる尿素処理ユニット720を含む携帯型透析システム100を示している。
図10Dは、ケース105内に取り付けることができる尿素処理ユニットを含む携帯型透析システム100を示している。携帯型透析システム100の他の例もまた、異なる実施形態で可能である。
【0061】
図11は、本技術の一実施形態による光電流のグラフである。グラフの横軸は時間を秒単位で示し、縦軸は光電流をmA/cm
2で示している。水熱合成(上側の曲線)とディップコーティング(下側の曲線)によって製造されたTiO
2ナノ構造を照明することで、データを得る。データを取得するとき、LEDは5秒のタイミングにでオン(50mA)され、測定が開始する。0VがTiO
2に印加される。静的尿素/NaCl溶液が使用される。水熱合成で製造されたTiO
2膜は、高い初期電流を示す。この初期電流は物質移動で制限されており、また、ディップコーティングによって製造されたTiO
2膜の場合よりも約8倍高い定常光電流を持っている。TiO
2/FTO基板上の有効的なLED強度は4mW/cm
2である。
【0062】
図12は、本技術の一実施形態による、熱水成長時間の関数としての光電流のグラフである。グラフの横軸は時間を秒単位で示し、縦軸は光電流をmA/cm
2で示している。TiO
2/FTO基板上の有効的なLED強度は4mW/cm
2である。水熱成長時間の関数としての定常光電流は、約185分に最適な成長時間(最大光電流に対応)を示す。
【0063】
図13は、本技術の一実施形態による波長の関数としての吸光度のグラフである。グラフの横軸は、入射光の波長をナノメートル単位で示し、縦軸は原子単位(A.U.)で吸光度を示す。紫外線吸収スペクトルは、一般に、熱水成長時間とともに増加する(タイムステップは、上記の
図12に順次示されるものと同じである)。
【0064】
図14は、本技術の一実施形態による、有効LED電流(光強度)の関数としての光電流のグラフである。該グラフの横軸は、mA単位で有効LED電流を示し、縦軸はmA/cm
2単位で光電流を示す。丸印は、印加されたカソードからアノードまでの電圧電位である0.8Vに対応し、菱形印は、カソードからアノードまでのに電圧がない場合に対応する。したがって、グラフは、TiO
2アノードに+0.8Vのバイアスを印加すると、定常光電流が大幅に増加することを示す。この増加は、TiO
2において電子正孔対が分離され、正孔が反応面へ押され、電子がカソード回路に引き込まれるからである。有効LED電流は、LED電流のうちテスト対象の基板に入射する光子に関与する部分である(LEDの量子効率は40%)。デバイスの幾何学的形状に起因して、放出された光子の6.7%のみが、TiO
2表面(つまり、TiO
2基板表面)に入射した。
【0065】
図15は、本技術の一実施形態による、Pt被覆カソードと白金黒カソードとの間の性能比較である。グラフの横軸は秒単位で時間を示し、縦軸はmA/cm
2単位で光電流を示す。アノードに0Vの電圧を印加し、かつ静的尿素溶液を使用した場合に、約5秒のタイミングにLEDライトを点灯させる。TiO
2/FTO基板上の有効的なLED強度は4mW/cm
2である。白金黒電極の場合、空気気泡(2mL/min)が370秒のタイミングに導入される。これにより、白金黒カソードの光電流が突然増加する。しかしながら、Pt被覆カソードは、光電流の点で一貫して白金黒カソードを上回る。
【0066】
図16は、本技術の一実施形態による時間の関数としての光電流のグラフである。TiO
2/FTO基板上の有効的なLED強度は4mW/cm
2である。結果は、10mM尿素と0.15M NaClの循環(0.3ml/min)溶液(circulated (0.3 ml/min) solution)中で100時間以上稼働するプロトタイプデバイスのほぼ連続動作を示す。
【0067】
上述の技術の多くの実施形態は、プログラム可能なコンピュータまたはコントローラによって実行されるルーチンを含む、コンピュータまたはコントローラ実行可能な命令の形態をとることができる。当業者であれば、本技術は、上記に示し説明したもの以外のコンピュータ/コントローラシステムに実施可能であるすことを理解すべきである。本技術は、具体的にプログラムされることにより、上記で説明したコンピュータ実行可能な命令を1つまたは複数実行するように構成または構築された専用のコンピュータ、コントローラまたはデータプロセッサにおいて実施され得る。したがって、本出願で一般的に使用される「コンピュータ」および「コントローラ」という用語は、任意のデータプロセッサを指し、インターネットアプライアンス(Internet appliances)および手持ち式デバイス(パームトップ・コンピュータ、ウェアラブル・コンピュータ、セルラー電話または携帯電話、マルチプロセッサシステム、プロセッサベースのまたはプログラム可能な大衆消費電子製品、ネットワーク・コンピュータ、ミニコンピューター等を含む)を含み得る。用語「約」は、記載された値の+/-5%を意味する。
【0068】
以上は、説明のために、本技術の具体的な実施形態が例示されたが、本開示から逸脱することなく様々な修正が行われ得ることが理解されるすべきである。さらに、特定の実施形態に関連する様々な利点および特徴がすでに該実施形態の文脈で説明したが、他の実施形態でも、上記の利点および/または特徴を示してもよく、そしてすべての実施形態は必ずしも本願技術の範囲に入るように上記の利点および/または特徴を示す必要はない。したがって、本開示は、本明細書に明確に示され、または説明されたもの以外に、他の実施形態も包含することができる。