(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】食用管状食品ケーシング
(51)【国際特許分類】
A22C 13/00 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
A22C13/00 Z
(21)【出願番号】P 2021524192
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 IB2020051911
(87)【国際公開番号】W WO2020178778
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-05-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-01
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513107595
【氏名又は名称】ビスコファン,エセ.アー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クリストフィス,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】メンガー,ハンス-ヨルク
(72)【発明者】
【氏名】エタヨ,ヴィンセンテ
(72)【発明者】
【氏名】レカルデ,ホセ・イグナシオ
(72)【発明者】
【氏名】シュラック,デニス
(72)【発明者】
【氏名】クナップ,ステファン
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】岩▲崎▼ 則昌
【審判官】鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4851394(US,A)
【文献】特表2017-504358(JP,A)
【文献】特開2001-113651(JP,A)
【文献】特開2000-279083(JP,A)
【文献】米国特許第6730340(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)
組成物を準備し、
(2)組成物を水と混合し、
(3)押し出し装置を介して組成物
と水とを混合した材料を押し出し、管状構造を形成するように押し出しされた材料を凝固させ、
(4)管状構造を脱アセチル化して、管状ケーシングを形成し、
(5)管状ケーシングを乾燥させる
各ステップを含む、食用シームレス管状食品ケーシングを製造する方法
であって、
組成物は、食用シームレス管状食品ケーシングを製造するための組成物であって、
水と、アルギン酸塩およびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドからなる混合物と、
ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含み、
前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドが、組成物の乾燥固形物重量に基づいて20~76重量%の量で存在し、
前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムが、組成物の乾燥固形物重量に基づいて24~80重量%の量で存在し、
前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムとの重量比が組成物の乾燥固形物重量に基づいて0.25~1.45:1の範囲であり、
Brookfield DV2T HB粘度計とT-D 94スピンドルを用いて、回転速度60rpm、温度20℃で測定されたとき、60Pa・s以上500Pa・s未満の範囲に粘度を有する、食用シームレス管状食品ケーシングを製造するための組成物である、
食用シームレス管状食品ケーシングを製造する方法。
【請求項2】
請求項
1記載の方法において、
ステップ(3)の前で、ステップ(2)の間または後に、
(2.1)組成物を脱気する、
ステップが行われる、方法。
【請求項3】
請求項
2記載の方法において、
ステップ
(2.1)
は、真空下
で行われる、方法。
【請求項4】
請求項
3記載の方法において、
ステップ(3)の前で、ステップ(2)の間または後に、
(2.1)少なくとも200mbarの真空下で、組成物を脱気する、
ステップが行われる、方法。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか1項記載の方法において、
ステップ(3)において、
重力方向と反対の方向に押し出しが行われる、方法。
【請求項6】
請求項
1~5いずれか記載の方法において、
ステップ(3)において、
(3.1) 凝固した
管状構造を得るために、押し出し装置上で
押し出された材料に凝固液を加えることによって凝固させる、
ことが行われる、方法。
【請求項7】
請求項
6記載の方法において、
ステップ(3.1)において、凝固液の添加が、押し出し装置
上で押し出された材料の内側および/または外側に適用されることが行われる、方法。
【請求項8】
請求項
1~7のいずれか1項記載の方法において、
ステップ(4)の後に、
(4.1) ゲル状態の
管状ケーシングを一軸または二軸延伸して、
管状ケーシングの長手方向および/または短手方向の機械的強度を向上させるステップ、および/または
(4.2)
管状ケーシングを乾燥させ、強化し、
管状ケーシングの熱安定性を高めるために、
管状ケーシングに熱を加える
各ステップが行われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用シームレス管状食品ケーシング、前記食用管状食品ケーシングの製造方法、前記食用管状食品ケーシングを形成するための組成物、及び前記食用管状食品ケーシング、例えばソーセージのケーシング、の使用を提供するものであり、これらの食品ケーシングは容易に噛み切れ、フライ性、詰め物性、調理性が向上する。さらに、前記食用シームレス管状食品ケーシングは崩れることなく容易にシャーリング("shirr")することができ、食料品、特に肉、チーズまたは魚の加工食品のほかにベジタリアンやビーガン用の食料品を容易に詰めることができる。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、共同消費(“co-consumption”)に適した、または共同消費用市販の食料品ケーシングは、天然の皮(特に豚や羊の腸)やコラーゲンケーシングで作られていて、前記従来の人工または天然ケーシングは、通常、供給源から引き出された長くて連続した管として形成されている。
【0003】
しかし、BSEや豚の病気などの動物疾患があるため、天然皮やコラーゲンケーシングを使用することに倫理的・宗教的な問題点から強い抵抗がある。
【0004】
さらに、代替品として開発されたアルギン酸カルシウムをベースにした食用ソーセージのケーシング(例えば特許文献1など)は、ソーセージ用の肉充填物と塩水の相互作用により、ほとんど溶けないアルギン酸カルシウムが、より溶けやすいアルギン酸ナトリウムに徐々に変化するため、ケーシングの安定性が損なわれるという、技術的な課題がある。
【0005】
さらに、特許文献2および特許文献3は、アルギン酸を用いた、自律的な人工ソーセージケーシングの製造方法を開示している。前記文献は、アルギン酸塩の粘性溶液を形成し、その溶液を環状ノズルから凝固液中に押し出し、形成された管状のケーシングを固定させることにより、ソーセージケーシングを製造することができると記載している。
【0006】
また、当該分野では、生分解性があり、必要に応じて食用にもなる、天然または改質されたデンプンとタンパク質を必須成分とする熱可塑性混合物でできた成形体も知られている(例えば特許文献4)。この成形体では、デンプンとタンパク質が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エピクロロヒドリンなどの架橋剤によって結合されている。さらに、前記熱可塑性混合物は、可塑剤、潤滑剤、充填剤、抗菌剤、着色料などの成分を含むことができる。このような混合物を深絞り成形、射出成形、吹込成形などのプロセスにかけると、フィルム、カプセル、皿、ボトル、パイプなどの成形体が得られる。しかし、デンプンが熱水に部分的に溶解するため、管状の食品ケーシング、特に調理可能なソーセージケーシングに前記熱可塑性混合物を利用するのは、あまり適していない。食用のソーセージケーシングには特許文献4に記載されている材料では固すぎである。さらに、このような食品ケーシングにおける架橋剤の存在は、食品の味に影響を与える可能性があり、コーティングが存在する食品を茹でたり揚げたりすると、多くのタンパク質がコーティングを着色する傾向がある。
【0007】
さらに、特許文献5は、トウモロコシ、小麦、ピーナッツ、または大豆由来の植物性タンパク質から作られた自己支持型(すなわち、非詰め物または空の)管状ケーシングを開示している。特許文献5は、植物性タンパク質を水に分散させ、植物性タンパク質の管を形成するように環状鋳型を通して植物性タンパク質分散液を押し出し、その後、押し出しされた植物性タンパク質ケーシングを凝固させ、硬化させ、可塑化し、乾燥させることによって、前記ケーシングは製造できることを教示している。
【0008】
さらに、特許文献6は、セルロース、少なくとも1つのタンパク質、および少なくとも1つの充填剤からなる管状の食用食品ケーシングを開示しており、前記食品ケーシングは、ケーシングの乾燥固形物重量を基準にして20~70重量%の量のセルロース、5~50重量%の量の少なくとも1つのタンパク質、及び10~70重量%の量の少なくとも1つの充填剤から構成されている。
【0009】
前記セルロース製ケーシングは、いわゆるビスコース法という手法で製造する。前記ビスコース法はそのままでは水に溶けないセルロースを二硫化炭素と反応させて、炭酸水素ナトリウム水溶液などに溶けるキサントゲン酸セルロース(ビスコースレーヨンとも呼ばれる)にする手法である。ビスコースレーヨンを押し出しして管を形成した後、再生槽に通してキサントゲン酸セルロースを不溶性セルロースに戻し、その後、化学試薬やその他の反応生成物を洗い流すが、このように製造されたセルロースケーシングは、噛むこと、咀嚼すること、唾液を出すこと、飲み込むことに関して、食感および栄養面で好ましくない。
【0010】
これらの欠点を克服するために、特許文献6は、少なくとも1つの球状タンパク質および充填剤を含む再生セルロースケーシングを開示している。特許文献6では、このようなケーシングが、セルロースを溶解するための溶媒としてN-メチル-モルフォリンオキシド(NMMO)を使用する、いわゆるNMMO(N-メチル-モルフォリンオキシド)法を用いて製造できることを教示している。しかし、NMMO法は、NMMOが有害物質であり、この方法で製造されたケーシングから完全に除去することができないため、人間が消費するケーシング製品の製造には適していない。
【0011】
さらに、特許文献7は、第1の多糖類と少なくとも1つの第2の多糖類を含む、食品をコーティングするための組成物を開示しており、前記第1の多糖類は、組成物中で負に帯電しており、陽イオンの影響下でゲル化する。前記第1の多糖類は、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。前記少なくとも1つの第2の多糖類は、組成物中で中性である。前記少なくとも1つの第2の多糖類はセルロースから構成され、セルロース誘導体及びガラクトマンナンはメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、グアーガム、カロブガム、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。特許文献7は、使用する中性多糖類の例としてグルコマンナンには言及していない。さらに、特許文献7は、前記コーティング組成物が、共押し出しによって食品を直接コーティングするためだけでなく、(その後の充填のための)免除ケーシングを製造するためにも使用できることを教示している。
【0012】
特許文献8は、こんにゃくグルコマンナンを含む食品包装用フラットフィルムおよびその製造方法を開示している。前記製造方法において、基本組成物は、こんにゃく粉5~80%、アルギン酸10~90%、可塑剤0.5~5%、硬化剤0.5~5%からなり、可塑剤としてはグリセロールまたはエチレングリコールが使用され、硬化剤としては塩化カルシウムまたはクエン酸カルシウムが使用されている。特許文献9に開示されている製造方法は、上記の量のこんにゃく粉とアルギン酸塩を40~50℃の温度で水と混合し、混合物を撹拌・混練し、撹拌継続下で可塑剤を添加し、その後、スチールベルト上に生成された懸濁液を散布し、塩化カルシウムやクエン酸カルシウムを硬化剤として用いて、フィルムを架橋・固化させ、形成されたフィルムを、脱水剤として30~95%のエタノール水溶液を入れた水槽に浸して脱水・脱塩し、最後に乾燥させるという各ステップからなる。
【0013】
特許文献8では、同文献に開示されている製造方法において、出発原料であるこんにゃくグルコマンナンを脱アセチル化する工程を含んでいないため、形成される平板状のフィルムは、脱アセチル化されたこんにゃくグルコマンナンを含んでいない。そのため、特許文献8に記載されたフィルムは、食品を詰め込むことができる自己支持型管状食品ケーシングとして使用できないという欠点がある。
【0014】
一般的に、ケーシングを効率的かつ効果的に使用するためには、供給源から引き出された管状の食品ケーシングの個々の長さに「シャーリング("shirred")」(長手方向にまとめること)しなければならない。これにより、大量のケーシングを折り畳んでソーセージや食品の包装機にセットし、必要に応じてケーシングを広げて製品を充填することができる。ソーセージなどの肉製品のケーシングをシャーリングすることは、食品加工の分野ではよく知られていて、ケーシングのシャーリングのための装置を開示している多数の先行技術特許の2つの典型的な例は、特許文献9および特許文献10である。
【0015】
食生活などの観点から、動物性ではない天然素材のみで構成された食品用シール・包装材が求められている。特許文献11には、粉末スープ、香味油、乾燥野菜などの材料を密封包装するための多層ヒートシール性食用フィルムが記載されており、このフィルムは、水溶性多糖類フィルム層(主にカラギーナン、多価アルコール、水)と、大豆タンパク質とゼラチンの組み合わせを含むサブフィルム層からなる。
【0016】
特許文献12には、カラギーナンをこんにゃくガムおよび、またはジェランガムと組み合わせた食用ケーシング製剤が記載されている。このようなフィルムは、典型的な用途では、肉の基材(七面鳥、ハム、鶏)の周りに巻き付けられ、タンパク質の皮が形成されるまで、巻き付けられた肉を対流式オーブンで乾燥され、その後、スチームクッカーで調理する。このフィルムは、食用に適しており、調理された製品の表面に見栄えのいい見た目を与えるなど、様々な望ましい特性を示すが、特許文献12に準拠して製造されたフィルムが管状ケーシングを形成するために使用された場合、前記ケーシングが、変化する壁厚の一片によって構成されている長手方向の縫合部を有すると同時に弱くなる一片を有するという欠点がある。
【0017】
さらに、特許文献12の実施例5では、カラギーナン対こんにゃくガム(グルコマンナン)対アルギン酸の重量比が30:15:20(=カラギーナン+アルギン酸に対するこんにゃくガムの重量比=3.33)からなる食用フィルム組成物を教示している。しかしながら、前記実施例5は、前記フィルム組成物を用いて、熱可逆性ゲル構造からなる自己支持型ケーシングを製造する方法を教示するものではない。
【0018】
さらに、カラギーナンと他の多糖類ガムを組み合わせて構成される特許文献12に記載されたケーシングは、水に部分的に溶解し、熱水に不安定であることを概説している。したがって、これらのケーシングは、調理(加熱)や燻製の処理が必要である一般的なソーセージの製造には使用できない。
【0019】
自己支持型ケーシングを製造しない別の技術である、共押し出し法は、加工肉のような生地またはペーストが押し出しされる一般的な円形の開口部の縁を囲む溝に、フィルム形成溶液を押し込むという手法である(例えば、特許文献13や特許文献14を参照)。このフィルム形成溶液は、肉の速度と同じくらいの速度で溝を出て、押し出しされた肉の表面にコーティングを形成する。このような共押し出し法で使用されるフィルム形成溶液は、平板状または管状のシートの形で硬化するのに十分な時間を有するため、凝集力を維持するのに十分な大きさの粘度が必要であることが当事者にはよく知られている。特に共押し出しを水平に行うと、管("worm")下部のコーティングが重力によって剥離しやすくなる。このため、共押し出し技術では、適切な粘度を有することに加えて、肉に非常に迅速に、好ましくはほぼ即座に放出され、付着して、ゲル化することができるフィルム形成組成物が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】西独国特許第1213211号明細書
【文献】英国特許出願公告第711437号明細書
【文献】英国特許出願公告第778921号明細書
【文献】国際公開第93/019125号
【文献】米国特許第3682661号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0186309号明細書
【文献】国際公開第02/015715号
【文献】中国特許出願公開第1385100号明細書
【文献】米国特許第4580316号明細書
【文献】米国特許第4683615号明細書
【文献】米国特許第4620757号明細書
【文献】米国特許第6730340号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2885981号明細書
【文献】国際公開第15/091695号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
そこで、本発明は、容易に噛み砕くことができ、フライ性、詰め物性、調理性が向上した、シームレスで、食用(共同消費に適した)の、管状食品ケーシングを提供することを目的とする。さらに、本発明は前記食用管状食品ケーシングを製造するための組成物、および食材が充填される食用食品ケーシングを製造する際の前記食用管状食品ケーシングの使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的のために、本発明は、アルギン酸塩、カラギーンおよびペクチンからなる群から選択される化学的に凝固可能な少なくとも1の親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択される熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含み、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムが、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて、24~80重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比が食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて、0. 2~1.45:1.0~3.0の範囲である、食用シームレス管状食品ケーシングを提供する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムが、ジェランガム、ガラクトグルコマンナンおよび脱アセチル化こんにゃくグルコマンナン、より好ましくはジェランガムおよび脱アセチル化こんにゃくグルコマンナン、最も好ましくは脱アセチル化こんにゃくグルコマンナンからなる群から選択される。
【0024】
本発明の「グルコマンナン」とは、構成糖がβ-(1→4)-linked D-glucoseとD-mannoseが単糖の単位で1:1.6の割合で含む親水コロイド状のヘテロ多糖である。側枝にα-(1→6)-linked galactoseを単位に有するグルコマンナンは、galactoglucomannanと呼ばれる。こんにゃくグルコマンナンには、通常、10~19個の糖残基に対して約1個のアセチルエステル基が含まれる。アセチルエステル基は、こんにゃくグルコマンナンに負の電荷を付与する。前記アセチルエステル基を部分的または完全に除去することにより、こんにゃくグルコマンナン分子の分子間結合が強化され、より強固なゲルやフィルムを形成することができる。こんにゃくグルコマンナン溶液は、アルカリ処理やアルカリにさらした後に加熱するとゲル化する。このゲル化は、分子間の水素結合が弱くなり、アセチル基が加水分解されることによって起こる。この過程は、こんにゃくグルコマンナンの「脱アセチル化」とも呼ばれる。
【0025】
本発明では、脱アセチル化していないこんにゃくグルコマンナンが存在しないこと、つまりは、脱アセチル化こんにゃくグルコマンナンが存在することを、例えばFTIR分光法のようなものによって検出することができる。本発明による食用管状食品ケーシング中に脱アセチル化されたこんにゃくグルコマンナンが存在する場合、その製品のFTIRスペクトルは、 (非脱アセチル化したこんにゃくグルコマンナン中のアセチル基のC=O伸縮による)1732cm-1の吸収ピークを持たない。
【0026】
さらに、本発明のさらに好ましい実施形態では、食用管状食品ケーシングは、追加成分として、キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。当該ガラクトマンナンは、好ましくは、タラガム、ローカストビーンガム、カシアガム、およびグアーガムからなる群から選択されてもよい。
【0027】
また、本発明は、水と、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドからなる混合物と、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含み、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムが、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて24~80重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比が組成物の乾燥固形物重量に基づいて0.2~1.45:1.0~3.0の範囲である、前記食用シームレス管状食品ケーシングを製造するための組成物を提供する。
【0028】
好ましい実施形態において、食用管状食品ケーシングを形成するための前記組成物は、Brookfield DV2T HB粘度計とT-D 94スピンドルを用いて、回転速度60rpm、温度20℃で測定されたとき、50~500Pa・s未満の範囲に粘度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明では、化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムとの組み合わせにより、フライ性、詰め物性、調理性が向上し、保存安定性にも優れた食品ケーシングが得られるという、優れた特性を得ることを見出した。
【0030】
本発明の「管状食品ケーシング」とは、消費財の包装としての役割を果たし、その取扱いと保管を可能にするケーシングを意味する。本発明の「管状」とは、細長い柔軟な中空体を意味し、この中空体は何の制限もなければ、円筒形の形状を有していてもよい。消費財とは、特に、ソーセージや肉加工品などの食品を意味し、それらのベジタリアン用やビーガン用の代替品も含まれる。ソーセージの好ましいものとしては、ウインナーソーセージのように、フライ用ソーセージや調理用ソーセージが挙げられる。また、本発明による管状食品ケーシングは、動物飼料などの他の消費財を包むのにも適している。
【0031】
本発明の「化学的に凝固可能な親水コロイド」とは、水溶液中でコロイドを形成し、K+、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、Fe2+、Zn2+またはAl3+などの一価または多価の陽イオンと反応してゲルを形成する多糖類の群を意味する。本発明の化学的に凝固可能な親水コロイドは、アルギン酸、カラギーン、およびペクチンからなる群から選択される。
【0032】
本発明の「熱可逆性の不溶性ゲルを形成する水溶性親水コロイド性植物性ガム」とは、水溶液中でコロイドを形成する多糖類であって、高分子が物理的または化学的な力で結合した3次元の多孔質構造またはネットの中で重合することができる。その構造はその内部に水分子を保持することができ、前記構造は加熱しても脱重合状態に戻らない熱不可逆性であり、例えば60℃の温水を加えると完全に溶解することができるものをいう。
【0033】
本発明でいう「単押し出し(“monoextrusion”)」とは、当該分野で一般的に「押し出し」と呼ばれている技術であり、押し出し可能な組成物を押し出し装置の押し出しヘッドを通して押し出しする際に、包まれるべき消費製品を同時に押し出しすることなく、後の段階で消費財を充填することができる自己支持型食品ケーシングを製造することを意味する。それに対して、「共押し出し」とは、食品ケーシングを形成する組成物が、その中に封入されるべき消費財と同時にまたは一緒に押し出しヘッドを通して押し出しされるため、「単押し出し」または「押し出し」というものとは異なる(例えば、国際公開第16/027261号参照)。単押し出しが実施されると、即時に管状食品ケーシング製品が製造される。この時、管状食品ケーシングを得るために、平らな膜または平らなフィルムの2つの縁を縫う、接着する、溶着する、加硫するなどのさらなるステップは必要ない。
【0034】
本発明は、食用管状食品ケーシングを形成するための組成物を提供するものであり、この組成物は単押し出しが可能であり、ベジタリアンやビーガンの消費財の包装にも適している。本発明では、消費財を包装するための「空の」食用管状食品ケーシングを製造する。このケーシングは、必要に応じて、数日、数ヶ月、または数年にわたって、問題なく安定して保存することができる。消費財を前記食用管状食品ケーシングに充填することは、後の段階で行うことができるため、本発明の管状食品ケーシングは、後の段階で充填するために例えば、食品製造業・加工産業に供給することができる独立した商品である。
【0035】
本発明による食用管状食品ケーシングは、以下の特徴の少なくとも1つ有することが好ましい。
- 植物性原料のみで構成されている。
- 肉類や、コーシャ食材やハラール食材のほかにベジタリアン/ビーガン用食材の充填に適している。
- 安定保管でき、取扱いに優れ、ソーセージと同時に共押し出しする必要がない。
- ソーセージ製造用の標準的な機器を用いても、損傷なく食品の充填物および/または生地などを詰めたり調理したりすることができる。
- 燻製場および/または標準的な調理サイクルにおいて、優れた燻製特性および調理特性を有し、フライ性が向上し、見栄えのいい光沢のある見た目が得られる。
- 例えば、ソーセージケーシングとして使用した場合に、優れた食感と歯ごたえを提供する。
【0036】
以下では、食用管状食品ケーシングの必須構成要素および任意構成要素について、より詳細に説明する。これらの記述は、上記記載の食用管状食品ケーシングを形成するための組成物にも同様に適用される。
【0037】
本発明において、化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、アルギン酸塩、カラギーンおよびペクチンからなる群から選択される。
【0038】
本発明の「アルギン酸塩」という用語は、食品産業で一般的に使用されているアルギン酸塩を指し、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カルシウムであることが好ましい。
【0039】
本発明の食用管状食品ケーシングでは、化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドが、優れた保存安定性を示す強いフィルムを生成するように存在する。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、例えばアルギン酸ナトリウムのようなアルギン酸塩である。
【0041】
さらに、本発明において、前記熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択される。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムは、グルコマンナン、好ましくはこんにゃくグルコマンナン、より好ましくは部分的に脱アセチル化されたこんにゃくグルコマンナン、最も好ましくは脱アセチル化されたこんにゃくグルコマンナンである。
【0043】
本発明において、前記熱不可逆性不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、ジェランガムおよび/またはグルコマンナンからなる群から選択される。前記構成物が優れた非熱可逆性ゲル形成重合体であることから、それを食用フィルムに含有することにより、優れた特性を得ることができることを見出した。こんにゃくグルコマンナンは、こんにゃく芋から抽出することができる。抽出された多糖類は直ちに水和し、ゲルが形成される条件に応じて、熱可逆性ゲルまたは非熱可逆性ゲルを形成することができる。ジェランガムは、バクテリアの発酵によって作られた多糖類のガムである。
【0044】
ジェランガムも脱アセチル化したこんにゃくグルコマンナンも強力なゲル形成剤であり、非可逆性ゲルを生成する。こんにゃくグルコマンナンもジェランガムも食用であり、GRAS(Generally Recognized As Safe: アメリカの連邦食品・医薬品・化粧品法201(s)および409に基づいて一般的に安全と認められたもの)と評価されている。こんにゃくグルコマンナンは、脆い生地のゲルを形成するジェランガムよりも、弾力性の高いゲルを形成する傾向がある。
【0045】
本発明において、脱アセチル化したこんにゃくグルコマンナンに加えて、一部が非脱アセチル化したこんにゃくグルコマンナンも、本発明の食用管状食品ケーシング中に存在してもよい。このとき、非脱アセチル化したこんにゃくグルコマンナンの量は、食用管状食品ケーシング中に存在する脱アセチル化されたこんにゃくグルコマンナンの重量を基準にして、40%、より好ましくは25%、さらに好ましくは20%の比率を超えないものとする。好ましい実施形態において、非脱アセチル化したこんにゃくグルコマンナンは、本発明による食用管状食品ケーシング中に存在する脱アセチル化されたグルコマンナンの重量に基づいて、15%以下の量で存在する。
【0046】
さらに、前記親水コロイド性植物性ガムを用いることで、食用管状食品ケーシング用の組成物の粘度を容易に調整することができる。
【0047】
本発明のさらに好ましい実施形態では、食用管状食品ケーシングは、追加成分として、キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。当該ガラクトマンナンは、タラガム、ローカストビーンガム、カシアガムおよびグアーガムからなる群から選択されてもよい。
【0048】
さらに、可食管状食品ケーシングは、デンプン、セルロースおよびタンパク質を含んでもよい。このとき、当該デンプンは、例えば加工デンプン、ジアルデヒドデンプン、またはタピオカデンプンなどの天然デンプンであり、当該セルロースは、例えばセルロース繊維、微結晶セルロース、セルロースパウダーおよび/またはセルロース誘導体であり、当該タンパク質は、例えばエンドウ豆タンパク質、ジャガイモタンパク質、ヒマワリタンパク質、米タンパク質、大豆タンパク質、乳清タンパク質、カゼイン、グルテン、卵白、ヒヨコ豆タンパク質である。
【0049】
本発明において、デンプンは通常、フィルムの乾燥時に水分布を改善するように機能する。好ましい実施形態では、他のデンプンよりも優れたフィルムを形成できる、高アミロースデンプンが使用される。デンプン成分の存在は、優れたケーシング接着力を食品に適切に提供することを目的とする。
【0050】
植物性および/または動物性のタンパク質を使用することは、ケーシングの接着力を向上するのに好ましい。植物性および/または動物性のタンパク質を加えることで、製品と皮の間の接着力が向上することがある。ビーガン用ケーシングの製造には、植物性または非動物性のタンパク質を使用する必要があるが、ベジタリアン用製品には動物性のタンパク質も使用できる。
【0051】
本発明において、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択される化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量を基準にして、通常20~76重量%、好ましくは30~60重量%、より好ましくは30~50重量%、さらに好ましくは35~45重量%の量で存在する。
【0052】
さらに、本発明において、熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて、24~80重量%、好ましくは30~70重量%、より好ましくは35~65重量%、さらに好ましくは40~60重量%、より好ましくは45~55重量%の量で存在する。
【0053】
さらに、本発明において、キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択される追加成分は、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて、0~30重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは5~20重量%、より好ましくは7~18重量%、より好ましくは8~15重量%の量で存在してもよい。
【0054】
さらに、本発明において、デンプンおよびタンパク質の群から選択された追加成分は、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて、0~40重量%、好ましくは5~20重量%、より好ましくは5~18重量%、さらに好ましくは8~17重量%の量で存在してもよい。
【0055】
本発明において、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムの重量比は、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量を基準にして、0.2~1.45:1.0~3.0の範囲、好ましくは0.2~1.25:1.0~3.0の範囲、より好ましくは0.2~1.0:1.1~3.0の範囲、さらに好ましくは0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である。
【0056】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよび脱アセチル化こんにゃくグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含む、食用管状食品ケーシングの好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて20~70重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて30~70重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて0.2~1.25:1.0~3.0の範囲である。
【0057】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含む、食用管状食品ケーシングの好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて20~70重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて30~70重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて0.2~1.25:1.0~3.0の範囲である。
【0058】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含む、食用管状食品ケーシングのさらなる好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて30~50重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて40~60重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である。
【0059】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよび脱アセチル化こんにゃくグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、を含む、食用管状食品ケーシングのさらなる好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて30~50重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて40~60重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である。
【0060】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択された1つの追加成分であって、ガラクトマンナンがタラガム、ローカストビーンガム、カシアガムおよびグアーガムからなる群から選択されてもよいもの、と、を含む、食用管状食品ケーシングのさらなる好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて30~50重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて40~60重量%の量で存在し、前記追加成分は食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて5~20重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である。
【0061】
本発明が提供する、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆的な不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムと、キサンタンガムおよびガラクトマンナンからなる群から選択された1つの追加成分であって、ガラクトマンナンがタラガム、ローカストビーンガム、カシアガムおよびグアーガムからなる群から選択されてもよいもの、と、タンパク質と、を含む、食用管状食品ケーシングのさらなる好ましい実施形態において、前記化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドは食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて30~50重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムは食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて40~60重量%の量で存在し、前記追加成分は食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて5~20重量%の量で存在し、前記タンパク質は食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて5~15重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比は、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて0.5~1.0:1.1~2.0の範囲である。
【0062】
さらに、本発明において、食用管状食品ケーシングは、可塑剤、架橋剤(食用管状食品ケーシングの靭性を向上させる)、着色剤、香料、植物繊維(食用管状食品ケーシングが閉塞することを低減させる)および/または植物油(食用管状食品ケーシングが閉塞することを低減させる)などの追加添加物を含むことができる。
【0063】
本発明において、可塑剤としては、例えば、ポリオール、グリセロール、プロピレングリコールおよび/またはソルビトールを使用することができる。本発明において、食用管状食品ケーシングは、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量を基準にして、1~70重量%、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~25重量%の量の前記可塑剤を含んでいてもよい。
【0064】
本発明において、架橋剤としては、燻液、ジアルデヒド、トランスグルタミナーゼなどの通常の架橋剤を用いることができる。本発明において、食用管状食品ケーシングは、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量を基準にして、0.001~0.8重量%、好ましくは0.01~0.3重量%の量の前記架橋剤を含んでいてもよい。
【0065】
さらに、本発明において、食用管状食品ケーシングは、少量のカラメル色素または例えばパプリカやターメリックから作られた香辛料色素のような改質剤、および/またはローズマリー抽出物、オレガノ抽出物、メープル香料、甘味料、ハチミツ香料などの天然および人工香料を含んでいてもよい。
【0066】
さらに、本発明において、食用管状食品ケーシングは、少量の抗菌剤、メチルパラベンおよびプロピルパラベン、および/または抗酸化剤を含んでもよい。ここで、当該抗菌剤としては、例えば、バクテリオシン、ソルベート、安息香酸塩、および乳酸ナトリウムなどの可溶性乳酸塩であり、当該抗酸化剤としては、例えば、ローズマリー抽出物、オレガノ抽出物、アスコルビン酸誘導体などである。
【0067】
さらに、本発明において、食用管状食品ケーシングの水分含有量は重要である。管状食品ケーシング自体に付着するほど過度に粘着性が高くなることを避けるために、水分含有量は、最終的な食用管状食品ケーシングの全乾燥固形物重量を基準にして約35重量%を超えてはならない。一方、食用管状食品ケーシングの水分含有量が低すぎると、例えば約8%未満の場合、食用管状食品ケーシングの弾性が不十分となり、脆くなる。
【0068】
本発明において、食用管状食品ケーシングは、ソーセージ詰め機を利用したソーセージストリングの従来の自動製造において、シャーリングされた状態またはシャーリングされていない状態で採用することができ、食品ケーシングの各セクションに充填される前に、ホース材料の個々の長さにシャーリングされる。シャーリング比とは、完全に伸長したチューブ部分の長さと、その圧縮された(集められた)長さとの比である。本発明において、食用管状食品ケーシングは、ソーセージ製造のために、通常、1:40から1:100の比率でシャーリングされる。
【0069】
本発明のシャーリング工程において、食用管状食品ケーシングは、通常、空気で膨らませた後、機械的にマンドレルに折り畳まれる。この工程では、折り畳みが一貫して行われ、シャーリング後に折り目が所定の位置に残るように、何らかのシャーリング液が利用されるのが一般的である。従来のケーシングの場合、シャーリング液としては、水と鉱油または植物油がよく使われる。本発明による食用管状食品ケーシングは、管状食品ケーシングの調製において良好な結果を得るために、通常、水性シャーリング液、好ましくは鉱油または植物油を使用する。
【0070】
好ましい実施形態において、食用管状食品ケーシングを製造するための前記組成物は、Brookfield DV2T HB粘度計とT-D 94スピンドルを用いて、回転速度60rpm、温度20℃で測定されたとき、50 ~500Pa・sの範囲に粘度を有する。
【0071】
さらに、本発明では、
(1)上記記載の本発明による組成物を準備し、
(2)組成物を水と混合し、
(3)押し出し装置を介して組成物を押し出し、管状構造を形成するように押し出しされた材料を凝固させ、
(4)管状構造を脱アセチル化して、管状ケーシングを形成し、
(5)管状ケーシングを乾燥させる
各ステップを含む、消費財用の管状食品ケーシングを製造する方法を提供する。
【0072】
この方法は、特にベジタリアンまたはビーガン用の自己支持型食品ケーシングの製造に適している。本発明において、ベジタリアンまたはビーガン用の管状食品ケーシングを得るために必要な工程は、非ベジタリアン用またはコラーゲン含有ケーシングを得るために必要な工程よりも驚くほど少ない。
【0073】
本発明による組成物の特徴、特性、精製、開発、および利点は、本発明によるプロセスに対応して適用される。
【0074】
本発明において、脱アセチル化ステップは、通常、管状構造体を気体のアルカリ性物質またはアルカリ溶液で処理することによって行われる。
【0075】
好ましい実施形態において、前記脱アセチル化ステップは、押し出し装置から管状構造体を取り出す際または取り出した後に、食用管状食品ケーシングのpH値がpH7から約pH13、好ましくはpH8から約pH12、より好ましくはpH8.5からpH10.5になるまで、食用管状食品ケーシングにアルカリ溶液、好ましくはNaOH溶液を適用するという、ステップである。
【0076】
本発明による方法の1つの実施形態において、組成物は、ステップ(3)の前で、ステップ(2)の間または後に、
(2.1)好ましくは真空下で、より好ましくは少なくとも200mbarの真空下で、組成物の脱気を行う、
ステップを設ける。
【0077】
この方法では、製品の食感と食用管状食品ケーシングの一貫性を向上させることができるという利点がある。
【0078】
本発明において、消費財用の管状食品ケーシングを製造する方法は、押し出し装置を介して組成物を押し出しするステップを含む。本発明では、非回転式の押し出しヘッド、単一回転式の押し出しヘッド、二重回転式の押し出しヘッド、または多重回転式の押し出しヘッドを使用することができる。
【0079】
本発明による方法の好ましい一実施形態では、ステップ(3)において、重力の反対方向に押し出しが行われる。
【0080】
本発明者が発見したように、「上向き」の押し出しは、押し出しヘッドからの組成物の「ブリーディング(“bleeding”)」を防止する。その結果、安定した食用管状食品ケーシングの構築を可能にする。また、この方法は、その後の管状ケーシングの内側と外側の同時凝固のための設計条件を有利に提供する。
【0081】
本発明による方法の一実施形態では、上記記載のステップ(3)を、
(3.1) 凝固した管状の皮を得るために、押し出しヘッドを離れる際に凝固溶液を加えることによって、押し出し装置上で組成物を凝固させる
ように実施する。
【0082】
このステップでは、押し出しされた試料が直接押し出しヘッド上で完全に濡れるので、管形状の崩壊を防ぐことができるという利点がある。食用の管状食品ケーシングは容易に固まり、押し出し流路を通過するための十分な安定性を有する。
【0083】
本発明による方法の好ましい実施形態では、ステップ(3.1)において、凝固液は、押し出し装置または押し出しヘッドから出てきた際に、食用管状食品ケーシングに均一に塗布されるべきである。
【0084】
この方法によって、安定化した食用管状食品ケーシングは、押し出しヘッドを出た直後に、形成される。このとき、食品ケーシングの外側も凝固液と接触していることが好ましい。これにより、例えば凝固液がケーシングの内側だけと接触し、外側は接触しない場合に生じる、粘着食品ケーシングが得られることを防ぐことができる。さらに、この方法は従来技術で行われていた、凝固槽内で押し出し成形を行う工程を不要とする。
【0085】
本発明による方法の発展形では、凝固液は多価陽イオンを含む溶液であり、好ましくは塩化カルシウム溶液であり、より好ましくは5~45重量%の塩化カルシウムを含む溶液である。
【0086】
このような凝固溶液を使用することで、良好で安定した凝固を達成することができる。本発明による方法の一実施形態において、凝固溶液は、可塑剤、好ましくはグリセロール、より好ましくは約1~70重量%、より好ましくは約20~50重量%、最も好ましくは約43重量%のグリセロールを含む。
【0087】
可塑剤を使用することで、食用管状食品ケーシングの取扱いが向上する。
【0088】
さらに、本発明の一実施形態では、凝固液は、架橋剤、例えば、燻液、グルタルアルデヒド、トランスグルタミナーゼを、0.002から0.2重量%の量で含むことが好ましい。
【0089】
上記のような架橋剤を使用することで、食用管状食品ケーシングの安定性を向上させることができる。加えて、または代わりに、食用管状食品ケーシングの架橋は、熱または紫外線を適用して作用させることもできる。
【0090】
本発明による方法の好ましい実施形態では、ステップ(4)の後に
(4.1) 管状ケーシングを一軸または二軸延伸して、ケーシングの長手方向および/または短手方向の機械的強度を向上させるステップ、および/または
(4.2) ケーシングを乾燥させ、強化し、食用管状食品ケーシングの熱安定性を高めるために、ケーシングに熱を加える
各ステップのうち少なくとも1つを含む。
【0091】
さらに、本発明は、水と、アルギン酸塩、カラギーエンおよびペクチンからなる群から選択された化学的に凝固可能な少なくとも1つの親水コロイドと、ジェランガムおよびグルコマンナンからなる群から選択された熱不可逆性の不溶性ゲルを形成する少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムとを含む混合物と、を含む、組成物の使用を提供し、前記少なくとも1つの水溶性親水コロイド性植物性ガムが、食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて30~70重量%の量で存在し、前記少なくとも1つの親水コロイドと前記少なくとも1つの親水コロイド性植物性ガムとの重量比が食用管状食品ケーシングの乾燥固形物重量に基づいて0.2~1.25:1.0~3.0の範囲である、食用管状食品ケーシングを製造する。
【実施例】
【0092】
次に、本発明のさらなる特徴、特性、および利点を例示する実施形態によって、本発明をより詳細に説明する。この実施形態は限定的なものではない。
【0093】
また、記載されている1つ以上の実施形態に開示されている個々の特徴は、特定の実施形態の文脈においてのみではなく、一般的な意味で開示されているので、当業者であれば、これらの特徴を本発明の他の特徴と自由に組み合わせることができる。
【0094】
1.粘度測定
粘度は、Brookfield DV2T HB粘度計を用いて測定する。このために、250mlのプラスチックカップに検査対象の材料を端まで充填し、空気を抜く。材料の温度は一定に保つ必要があり、粘度の測定は、20℃で行うので、必要に応じて、材料を冷蔵庫で冷却するか、温蔵庫で加熱する。粘度計は、使用前に毎回水準器を確認し、必要に応じて補正する。装置のスイッチを入れると、装置のすべての関連パラメータが 5 秒間画面に表示される。その後、画面は自動的に「Auto Zero」モードに切り替わる。このプロセスは、装置の電源を入れたときに必要なプロセスで、ゼロ設定を行うプロセスである。ゼロ設定の際には、装置に測定体を装着することはできない。「Next」を押すと、「Auto Zero」プロセスが開始されるが、こととき、装置に触れてはならない。「Auto Zero」が終了したら、「Next」を押して、パラメータ設定面に移行する。
【0095】
【0096】
心棒T-D 94は当該粘度計に付属している。
【0097】
測定:
試料の入ったプラスチックカップを測定体の下に置き、温度センサーをカップの縁に固定し、測定体をカップの中央で約2~3cmの深さまで慎重に浸す。この時、トルク表示が「zero」になるように、測定体を再調整する必要がある。「Run」ボタンを押して測定を開始すると、画面には「Run Viscosity Test」と表示され、粘度、トルク、温度などの各記録値が表示される。
【0098】
測定の際に、トルクが10~100%の範囲になるように注意する。トルクが100%を超えると、粘度がEEEと表示され、トルクが10%以下の場合は、データフィールドの値が点滅する。いずれの場合も、他の測定体で測定を繰り返す(小さい心棒ではトルク100%以上、大きい心棒ではトルク10%未満)。「View Test」ボタンで、設定したパラメータを呼び出すことができる。中断後、「Results Table」が画面に表示され、個々のデータが表示されたので、helipath drive unitの電源を切る。全測定の平均値を表示するには、矢印ボタンを押して「Post Test Averaging」を選択する。
【0099】
評価:
最終的な結果は、2つの測定値の平均値となり、このときの単位はPa・s(パスカル・秒)またはMcP(100万・センチポイズ)である。
【0100】
2.原料
本発明者によって試験が実行されるときに、以下の原料が用いられた。
【0101】
アルギン酸ナトリウム: Sodium Alginate 300cps HI-GEL, Bioscience Food Solutions GmbH, ドイツ、シークブルク;
【0102】
こんにゃくグルコマンナン: Konjac gum YZ-J-36A, TER Chemicals GmbH & Co KG, ドイツ、ハンブルク;
【0103】
エンドウ豆タンパク質: Vitessence Pulse 1550, Ingredion Germany GmbH, ドイツ、ハンブルク;
【0104】
ジャガイモタンパク質: Solanic 300, Avebe U.A., オランダ、フェーンダム;
【0105】
グアーガム: Guar gum 5000 cps 200 mesh. Bioscience Food Solutions GmbH, ドイツ、シークブルク;
【0106】
デンプン: Unipectine OF 305 C, Cargill GmbH, ドイツ、フランクフルト・アム・マイン
【0107】
3. 結果
本発明者は5つの試料で試験を行った。これらを表2に示す。
【0108】
【0109】
これらの試料のpH値はpH6からpH9の間である。
【0110】
試験が行われた試料は、ボウルチョッパーと混錬機で混合・混練される。このとき、試料を25℃以下の温度に保つために、水の一部を氷で置き換えることがある。これに続いて、真空下で試料の脱気を行う。適用する真空は少なくとも200mbarとし、試料から気泡が出てこなくなるまで行う。押し出しされた試料は、高いシャーリング比をのもと製造する。オプションとして、これを最初に行い、その後、真空下で脱気を行ってもよいし、真空下での脱気をすでに行ってもよい。高いシャーリング比が適用されているときに、真空下での脱気を行うこともできる。この製造プロセスは、管状食品ケーシングが良好に押し出しされるために極めて有利であることを証明している。
【0111】
真空脱気は、パスタ、トマト濃縮物、魚のすり身、ケチャップ、マヨネーズ、マスタード、ジャムなどの製品に含まれる空気やガスを除去するために、食品業界で使用されていて、このプロセスは通常、包装の直前に行われ、混合機、タンブラ乾燥機、押し出し機、その他の工程機器に組み込むことができ、製品の質や一貫性を向上させる。
【0112】
試験で用いられた試料の粘度は、20℃で1.に記載された方法で測定され、以下の値を得た。
【0113】
【0114】
特許文献7の著者は、当該文書で指定された粘度が決定された条件に関して十分な情報を提供していないため、本発明者は、特許文献7の実施例5の教示に基づいて押し出し組成物を調製し、上記1.に基づいて記載された方法に従って当該組成物の粘度を測定した。その結果、公知の押し出し用の試料の粘度は 本発明に従って定義された組成物の粘度よりも著しく低いことが分かった。
【0115】
脱気された無色から黄色の試料は、充填圧縮機を介して供給される。この装置には試料用のフィルターが装備されており、粒子が濾過されて直接押し出しヘッドに送られる。
【0116】
押し出しは、出口の割れ目に存在する環状のスリットノズルにて行われる。押し出しは、米国特許第2013491号明細書に記載されている垂直上昇押し出し/紡績プロセスによる再生セルロースケーシングの製造方法と同様に行われる。また、ヘッドを回転させることにより、割れ目から試料を良好に分散させ、管状食品ケーシングの円周部の壁厚を均一に薄くできる。
【0117】
塩化カルシウム溶液による試験用の試料の凝固は、押し出しヘッドにて直接行われる。塩化カルシウム溶液は、25~45重量%の濃度を有することが好ましい。本発明において、形成された管状ケーシングを凝固させるために、均一に凝固溶液を押し出しヘッドに加えることができる。さらに、驚くべきことに、この凝固技術によって製造された本発明による管状食品ケーシングは、加工する際に十分な安定性を得る。管状食品ケーシングの内部に供給される凝固液の量、および管状食品ケーシングに外部から適用される凝固液の量および濃度は、押し出しされたばかりの管状ケーシングの迅速な凝固が担保される限り、広い範囲で変化させることができる。凝固により、食品ケーシングの固着を確実に防止することができとともに、均一な凝固により、押し出し物を校正用の空気で膨らませる際に、管状食品ケーシングが破裂するのを確実に防止することができる。
【0118】
この管状食品ケーシングを膨らませ、任意で洗浄し、可塑化し、架橋し、乾燥させる。架橋剤としては、有機架橋剤、燻液、砂糖、鉱物性なめし剤などの物質を使用することができる。さらに、架橋剤としては、トランスグルタミナーゼなどの酵素を用いることもできる。また、食用管状食品ケーシングをアルカリ溶液で処理してゲル化することもできる。こんにゃくグルコマンナン成分がアルカリ溶液と接触することにより、こんにゃくグルコマンナンは少なくとも部分的に脱アセチル化される。さらに、可塑剤、好ましくは20重量%以上の濃度を有する水性のグリセリン、を直接添加することで、塗布や噴霧の工程が不要になる。また、この溶液に架橋剤を添加することで、さらなる処理工程を省略することも可能である。
【0119】
本発明において、本発明による食用管状食品ケーシングは、ソーセージの詰め物および充填された食品ケーシングの調理に関して、優れた特性を示すことが分かった。これらの特性を評価するために、押し出しされた試料JJ、HI、IJ、DFおよびKLを用いて製造されたケーシングを使用し、ソーセージを調合した。押し出しされた試料IJは、アルカリ処理と非アルカリ処理の2つのケーシングを用意し、使用した。
【0120】
これらの優れた特性を示すために、本発明による食品ケーシングと、同等の壁厚(以下の表4参照)を有する比較用の食品ケーシングを、Handtmann社のソーセージ詰め機で充填した。これらのソーセージを、以下の表4で示すような標準的なウインナーソーセージの調理・燻製工程に従って処理した。
【0121】
【0122】
意外なことに、本発明による食用管状食品ケーシングを使用して作られたソーセージは、優れた調理安定性(下記の表5参照)と心地よい柔らかな食感を示すことが分かった。
【0123】
【0124】
さらに、驚くべきことに、本発明において、本発明の食品ケーシングは、調理のための優れた加工安定性を示すだけでなく、優れたフライ性を示すことが分かった。
【0125】
優れたフライ性を示すために、Flandtmann社のソーセージ詰め機を使って、いくつかのケーシングに「Frische Bartwurst」の充填物を充填した。透明で光沢のあるケーシングは、ソーセージに自然な見た目を与え、保存中も変化はなかった。
【0126】
ソーセージをフライパンで焼いたところ(温度200℃)、予想外にも、本発明による食品ケーシングにはわずかな損傷しか見られないことが判明した。これに対し、比較例のケーシングでは、ほとんどのソーセージで許容できない大きな破裂が見られた。
【0127】
本発明による食品ケーシングを試食したところ、柔らかい優れた食感を有し、ケーシングは噛み砕きやすく、飲み込みやすいものであった。フライパンで焼いた場合の結果を以下の表6に示す。
【0128】
【0129】
さらに、深みのある油で揚げた(温度185℃、時間210秒)際に、市販のコラーゲンケーシング(破裂率50%)と比較して、本発明による食品ケーシングは、優れたケーシング安定性(ソーセージの破裂がない)を示すことが分かった。