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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20240514BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240514BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08L83/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021541134
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 US2020014378
(87)【国際公開番号】W WO2020154272
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】62/795,672
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デント、スタントン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ランドール ジー.
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-260798(JP,A)
【文献】特開2018-48214(JP,A)
【文献】特表2014-500888(JP,A)
【文献】特開平07-179764(JP,A)
【文献】特開2011-98566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
C08K 3/00- 13/08
C08G 77/00- 77/62
C09D 183/00-183/16
C09J 183/00-183/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーン組成物であって、
(A)RSiO1/2シロキサン単位(式中、各Rは同一であり又は異なり、各Rは脂肪族不飽和結合を含まないハロゲン置換又は非置換の一価炭化水素基から独立して選択される)及びSiO4/2シロキサン単位からな、4~60質量部のシリコーン樹脂であって、前記シリコーン樹脂におけるRSiO1/2シロキサン単位のSiO4/2シロキサン単位に対するモル比が0.6~1.5の値を有する、シリコーン樹脂と、
(B)6~40質量部のオルガノポリシロキサンであって、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、前記オルガノポリシロキサン中にSiO4/2シロキサン単位を含まないが、ただし、成分(A)と(B)の合計量は100質量部である、オルガノポリシロキサンと、
(C)1分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシロキサンであって、前記オルガノシロキサンの量が、成分(C)のケイ素原子結合水素原子の成分(B)の前記アルケニル基に対するモル比を、1.0~3.0の範囲で提供するのに十分である、オルガノシロキサンと、
(D)前記組成物の硬化を開始させるのに十分な量のヒドロシリル化触媒と、
を含み、
成分(C)が、R HSiO 1/2 シロキサン単位(式中、各Rは独立して選択される上記のものである)及びSiO 4/2 シロキサン単位からなるシリコーン樹脂を含み、前記シリコーン樹脂におけるR HSiO 1/2 シロキサン単位のSiO 4/2 シロキサン単位に対するモル比が1.5~4.0の値である、
硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(E)前記組成物の硬化を制御するのに十分な量の反応抑制剤、を更に含む、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
(F)1分子中に2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシロキサンを、成分(C)及び(F)における全ケイ素原子結合水素原子中の前記オルガノシロキサンにおける前記ケイ素原子結合水素原子が、40モル%以下であるような量で更に含む、請求項1又は2に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
射出成形に使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物を硬化させることで得られる硬化物。
【請求項6】
前記硬化物のデュロメータがショアA15未満であり、引張強度が150psi超(又は6.89kPa超)である、請求項に記載の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月23日に出願された米国仮特許出願第62/795,672号の優先権及び全ての利点を主張するものであり、ここに本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する。
【0002】
本発明は、硬化性シリコーン組成物、及びこの組成物を硬化させることで得られる硬化物に関する。
【背景技術】
【0003】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、優れた電気絶縁性、優れた熱安定性、及び優れた透明性をはじめとするその稀有の特性により、様々な産業において広く使用されている。特に、ヒドロシリル化反応により硬化させることができ、かつシリコーン樹脂を含有する硬化性シリコーン組成物が知られている。
【0004】
例えば、米国特許第4,882,398(A)号には、ジオルガノビニルシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンと、SiO、(CHSiO1/2、及び(CH(CH=CH)SiO1/2単位から本質的になるシリコーン樹脂とを含む硬化性シリコーン組成物であって、(CHSiO1/2及び(CH(CH=CH)SiO1/2単位の組み合わせのSiO単位に対するモル比が0.6~1.1であり、1.5~3.5重量%のビニルラジカル、オルガノハイドロジェンシロキサン、及びヒドロシリル化触媒を有する、硬化性シリコーン組成物が開示されている。米国特許第8,859,693(B2)号及び同8,853,332(B2)号の両方には、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジアルキルポリシロキサンと、SiO4/2単位、(CH(CH=CH)SiO1/2単位、及び(CHSiO1/2単位を含むシリコーン樹脂と、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒と、を含む硬化性シリコーン組成物が開示されている。
【0005】
上記の硬化性シリコーン組成物を射出成形に使用できることは周知である。しかしながら、このような硬化性シリコーン組成物を硬化させることで得られる硬化物は引張強度が高く、弾性率が高い。
【0006】
米国特許第5,373,078(A)号には、(CHSiO1/2単位及びSiO単位を含む非反応性の液状シリコーン樹脂を高粘度の液状硬化性シリコーン組成物に最大40重量%添加すると、硬化物の物性、特に引張強度、伸び、及び引裂強度に実質的にいかなる悪影響も及ぼすことなく、組成物の粘度が減少することが開示されている。しかしながら、このような硬化性シリコーン組成物を硬化させることで得られる硬化物もまた、引張強度が高く、弾性率が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特許文献1:米国特許第4,882,398(A)号
【0008】
特許文献2:米国特許第8,853,332(B2)号
【0009】
特許文献3:米国特許第8,859,693(B2)号
【0010】
特許文献4:米国特許第5,373,078(A)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、低い弾性率に加えて高い引張強度を有する硬化物を形成する、硬化性シリコーン組成物を提供することである。更に、本発明の別の目的は、低い弾性率に加えて高い引張強度を有する硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、硬化性シリコーン組成物であって、
(A)RSiO1/2シロキサン単位(式中、各Rは同一であり又は異なり、各Rは脂肪族不飽和結合を含まないハロゲン置換又は非置換の一価炭化水素基から独立して選択される)及びSiO4/2シロキサン単位から本質的になる、約40~約60質量部のシリコーン樹脂であって、シリコーン樹脂におけるRSiO1/2シロキサン単位のSiO4/2シロキサン単位に対するモル比が約0.6~約1.5の値を有する、シリコーン樹脂と、
(B)約60~約40質量部のオルガノポリシロキサンであって、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、オルガノポリシロキサン中にSiO4/2シロキサン単位を含まないが、ただし、成分(A)及び(B)の合計量は100質量部である、オルガノポリシロキサンと
(C)1分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシロキサンであって、オルガノシロキサンの量が、成分(C)のケイ素原子結合水素原子の成分(B)のアルケニル基に対するモル比を、約1.0~約3.0の範囲で提供するのに十分である、オルガノシロキサンと、
(D)本組成物の硬化を開始させるのに十分な量のヒドロシリル化触媒と、を含む、硬化性シリコーン組成物を更に対象とする。
【0013】
様々な実施形態において、成分(C)は、RHSiO1/2シロキサン単位(式中、各Rは独立して選択される上記のものである)及びSiO4/2シロキサン単位から本質的になるシリコーン樹脂を含み、シリコーン樹脂におけるRHSiO1/2シロキサン単位のSiO4/2シロキサン単位に対するモル比が約1.5~約4.0の値である。
【0014】
様々な実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、(E)本組成物の硬化を制御するのに十分な量の反応抑制剤、を更に含む。
【0015】
様々な実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、(F)1分子中に2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシロキサンを、成分(C)及び(F)における全ケイ素原子結合水素原子中のオルガノシロキサンにおけるケイ素原子結合水素原子が、約40モル%以下であるような量で更に含む。
【0016】
様々な実施形態において、硬化性シリコーン組成物は射出成形に使用される。
【0017】
本発明は、上記の硬化性シリコーン組成物を硬化させることで得られる硬化物を更に対象とする。
【0018】
様々な実施形態において、硬化物は、ショアA15未満のデュロメータ、及び150psi(1平方インチ当たりのポンド重、1psi=およそ6.89476キロパスカル(kPa))超の引張強度を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、低い弾性率に加えて高い引張強度を有する硬化物を形成することを特徴とする。更に、本発明の硬化物は、低い弾性率に加えて高い引張強度を有することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。
【0021】
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又はダッシュ「-」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
【0022】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。様々な実施形態の詳細な特徴又は態様について記載している、本明細書で依拠とされたいずれかのマーカッシュ群に関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュ要素とは無関係のそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得ることができることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0023】
本発明の様々な実施形態の記載を依拠とする任意の範囲及び部分的範囲は、独立して、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきであり、整数値及び/又は分数値を含む全ての範囲を、そのような値が本明細書で明確に書かれていなくても、説明し、想定することが理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、各部分範囲は、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けるものである。最終的に、開示した範囲内の個々の数が依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点を含む個々の数(又は分数)、例えば4.1を含み、これは、依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0024】
<硬化性シリコーン組成物>
最初に、本発明の硬化性シリコーン組成物について詳細に説明する。
【0025】
成分(A)は、RSiO1/2シロキサン単位及びSiO4/2シロキサン単位から本質的になるシリコーン樹脂である。式中、各Rは同一であり又は異なり、各Rは脂肪族不飽和結合を含まないハロゲン置換又は非置換の一価炭化水素基から独立して選択される。Rで表される炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などの1~12個の炭素を有するアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基などの6~12個の炭素原子を有するアリール基;ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基などの7~12個の炭素を有するアラルキル基;並びに3-クロロプロピル基及び3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基が挙げられる。特定の実施形態において、各Rは独立してアルキル基である。更なる実施形態において、各Rはメチル基である。
【0026】
シリコーン樹脂におけるRSiO1/2シロキサン単位のSiO4/2シロキサン単位に対するモル比は、約0.6~約1.5の値、あるいは約0.7~約1.2の値、あるいは約0.8~約1.1の値を有する。これは、比率が上記範囲内である場合、硬化が効率的に進行して、優れた引張強度及び低い弾性率を有する硬化物が形成されるためである。
【0027】
様々な実施形態において、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン基準での成分(A)の数平均分子量(Mn)は、3,000~7,000の範囲、あるいは4,000~6,000の範囲である。これは、成分(A)の分子量が上記範囲内である場合、得られる組成物を硬化させて、優れた引張強度及び低い弾性率を有する硬化物を形成できるためである。
【0028】
成分(A)の含有量は、成分(A)及び(B)の合計量100質量部当たり、約40~約60質量部、あるいは約45~約60質量部、あるいは約45~約55質量部である。これは、成分(A)の含有量が上記範囲内である場合、硬化が効率的に進行して、優れた引張強度及び低い弾性率を有する硬化物が形成されるためである。更に、含有量が上記範囲の上限を超えた場合、組成物にどれだけの樹脂が含まれているかに関わらず、得られる組成物が周囲温度で実質的に高い粘度を有し、少量の溶媒又は可塑剤が組成物の粘度に大きく影響し、かつ、残留溶媒が粘度に影響を及ぼす。
【0029】
成分(B)はオルガノポリシロキサンであって、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、オルガノポリシロキサン中にSiO4/2シロキサン単位を含まない、オルガノポリシロキサンである。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基などの2~12個の炭素原子を有するアルケニル基が挙げられる。成分(B)中のアルケニル基の結合位置は特に限定されず、これらの例としては、分子の分子末端及び/又は側鎖が挙げられる。
【0030】
成分(B)において、アルケニル基以外のケイ素原子結合有機基は限定されず、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、並びにこれらの基に結合した水素原子の一部又は全てが塩素原子及び臭素原子などのハロゲン原子で置換されている基により例示され得る。ケイ素原子結合有機基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、及びピレニル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、及びピレニルエチル基などのアラルキル基;並びに、3-クロロプロピル基、及び3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン化基が挙げられる。特定の実施形態では、一分子中、ケイ素原子結合有機基のうちの少なくとも1つはアリール基である。
【0031】
成分(B)は、SiO4/2シロキサン単位を有しない。成分(B)の分子構造の例としては、直鎖及び部分的に分岐した直鎖が挙げられる。特定の実施形態において、成分(B)の分子構造は直鎖である。
【0032】
様々な実施形態において、成分(B)は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するアルケニル官能性ジアルキルポリシロキサンである。特定の実施形態において、成分(B)はジオルガノポリシロキサンであり、それとしては、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基によって末端封止されたジメチルポリシロキサン、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基によって末端封止されたジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基によって末端封止されたメチルビニルポリシロキサン、分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基によって末端封止されたジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0033】
様々な実施形態において、25℃における成分(B)の粘度は、約100mPa・s~約2,000,000mPa・s、あるいは約1,000mPa・s~約500,000mPa・sである。これは、成分(B)の粘度が上記範囲内である場合、硬化が効率的に進行して、優れた引張強度及び低い弾性率を有する硬化物が形成されるためである。25℃における粘度は、ASTM D 7867の試験方法Bに従い、コーン/プレート試験形状を有する粘度計により測定した。
【0034】
成分(B)の含有量は、成分(A)及び(B)の合計量100質量部当たり、約60~約40質量部、あるいは約60~約45質量部、あるいは約55~約45質量部である。これは、成分(B)の含有量が上記範囲内である場合、硬化が効率的に進行して、優れた引張強度及び低い弾性率を有する硬化物が形成されるためである。
【0035】
成分(C)は、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシロキサンである。成分(C)中の有機基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及び1~12個の炭素原子を有する他のアルキル基などの、脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、及び6~12個の炭素原子を有する他のアリール基により例示され、メチル基及びフェニル基が最も典型的である。
【0036】
成分(C)のオルガノシロキサンは、ジメチルハイドロジェンシロキシ基により末端封止された分子鎖の両末端を有するメチルフェニルポリシロキサン;ジメチルハイドロジェンシロキシ基により末端封止された分子鎖の両末端を有するメチルフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー;トリメチルシロキシ基により末端封止された分子鎖の両末端を有するメチルフェニルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー;トリメチルシロキシ基により末端封止された分子鎖の両末端を有するメチルフェニルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー;(CHHSiO1/2で表されるシロキサン単位及びCSiO3/2で表されるシロキサン単位から構成されたオルガノポリシロキサンコポリマー;(CHHSiO1/2で表されるシロキサン単位、(CHSiO1/2で表されるシロキサン単位、及びCSiO3/2で表されるシロキサン単位から構成されたオルガノポリシロキサンコポリマー;(CHHSiO1/2で表されるシロキサン単位、(CHSiO2/2で表されるシロキサン単位、及びCSiO3/2で表されるシロキサン単位から構成されたオルガノポリシロキサンコポリマー;(CHHSiO1/2で表されるシロキサン単位、C(CHSiO1/2で表されるシロキサン単位、及びSiO4/2で表されるシロキサン単位から構成されたオルガノポリシロキサンコポリマー;(CH)HSiO2/2で表されるシロキサン単位及びCSiO3/2で表されるシロキサン単位から構成されたオルガノポリシロキサンコポリマー;並びに上記の2つ以上の混合物、により例示される。
【0037】
一方、得られる硬化物の優れた機械的特性を考慮すると、成分(C)は、RHSiO1/2シロキサン単位及びSiO4/2シロキサン単位から本質的になるシリコーン樹脂を含む。
【0038】
式中、各Rは同一であり又は異なり、各Rは脂肪族不飽和結合を含まないハロゲン置換又は非置換の一価炭化水素基から独立して選択される。Rで表される炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などの1~12個の炭素を有するアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基などの6~12個の炭素原子を有するアリール基;ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基などの7~12個の炭素を有するアラルキル基;並びに3-クロロプロピル基及び3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基が挙げられる。特定の実施形態において、各Rは独立してアルキル基である。更なる実施形態において、各Rはメチル基である。
【0039】
シリコーン樹脂におけるRHSiO1/2シロキサン単位のSiO4/2シロキサン単位に対するモル比は、約1.5~約4.0の値、あるいは約1.6~約3.0の値、あるいは約1.8~約3.0の値を有する。これは、比率が上記範囲内である場合、硬化が効率的に進行して、優れた引張強度及び低い弾性率を有する硬化物が形成されるためである。
【0040】
様々な実施形態において、25℃における成分(C)の動粘度は、約1mm/s~約1,000mm/s、あるいは約1mm/s~約500mm/sである。これは、成分(C)の粘度が上記範囲内である場合、硬化が効率的に進行して、優れた引張強度及び低い弾性率を有する硬化物が形成されるためである。25℃における動粘度は、ASTM D 7867に基づく方法に従って測定した。
【0041】
本組成物における成分(C)の含有量は、成分(A)及び(B)における全アルケニル基1モル当たり、成分(C)におけるケイ素結合水素原子が約1.0~約3.0モルの範囲、あるいは約1.0~約2.0モルの範囲になるような範囲である。これは、成分(C)の含有量が上記範囲内である場合、硬化が効率的に進行して、優れた熱引張強度及び低い弾性率を有する硬化物が形成されるためである。
【0042】
成分(D)は、本組成物の硬化を促進するために使用されるヒドロシリル化触媒である。成分(D)のヒドロシリル化触媒は当該技術分野において周知であり、市販されている。好適なヒドロシリル化触媒としては、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム若しくはイリジウム金属をはじめとする白金族金属、又はこれらの有機金属化合物、及びこれらのいずれか2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに特に限定されない。成分(D)は、典型的には、本組成物の硬化を飛躍的に促進できるように白金系触媒である。白金系触媒の例としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-アルケニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、及び白金-カルボニル錯体が挙げられ、白金-アルケニルシロキサン錯体が最も典型的である。
【0043】
様々な実施形態において、成分(D)はヒドロシリル化触媒であり、成分(D)としては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金との錯体をはじめとする、白金の低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。特定の実施形態において、触媒としては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金との錯体が挙げられる。
【0044】
成分(D)に好適なヒドロシリル化触媒の例は、例えば、米国特許第3,159,601号、同3,220,972号、同3,296,291号、同3,419,593号、同3,516,946号、同3,814,730号、同3,989,668号、同4,784,879号、同5,036,117号、及び同5,175,325号、並びに欧州特許第0347895(B)号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒及びその調製方法は、米国特許第4,766,176号及び同5,017,654号に例示されている。
【0045】
本組成物中の成分(D)の含有量は、本組成物の硬化を促進するのに有効な量である。具体的には、本組成物を十分に硬化させるため、成分(D)の含有量は、典型的には、本組成物に対する成分(D)中の触媒金属の含有量が、質量単位で約0.01~約500ppm、あるいは約0.01~約100ppm、あるいは約0.01~約50ppm、あるいは約0.1~約10ppmである量である。
【0046】
様々な実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、硬化性シリコーン組成物の硬化速度を調節するための(E)反応抑制剤を含む。特定の実施形態において、成分(E)としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、若しくは2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-シクロヘキサン-1-オールなどのアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-インなどのエン-イン化合物;又は1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、又はベンゾトリアゾールが挙げられるが、これらに限定されない。これらを任意選択の成分として、本組成物に組み込んでもよい。
【0047】
本組成物における反応抑制剤の含有量は特に限定されないが、含まれる場合、典型的には、上記成分(A)~(D)の合計質量100質量部当たり、約0.0001~約5質量部である。
【0048】
任意選択的に、硬化性シリコーン組成物は、1つ又は複数の追加の成分を更に含んでいてもよい。追加の構成成分又は構成成分の組み合わせとしては、例えば、1分子中に2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、離型剤、充填剤、接着促進剤、熱安定剤、難燃剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられ得る。
【0049】
特に、得られる硬化物の低い硬度を考慮すると、成分(F)は、1分子中に2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシロキサンである。成分(F)中の有機基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及び1~12個の炭素原子を有する他のアルキル基などの、脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、及び6~12個の炭素原子を有する他のアリール基により例示され、メチル基及びフェニル基が最も典型的である。
【0050】
成分(F)のオルガノシロキサンは、ジメチルハイドロジェンシロキシ基により末端封止された分子鎖の両末端を有するジメチルポリシロキサン;ジメチルハイドロジェンシロキシ基により末端封止された分子鎖の両末端を有するメチルフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー;及びジメチルハイドロジェンシロキシ基により末端封止された分子鎖の両末端を有するジフェニルポリシロキサンにより例示される。
【0051】
成分(F)の含有量は限定されないが、概して、成分(C)及び(F)における全ケイ素原子結合水素原子中のオルガノシロキサンにおけるケイ素原子結合水素原子が、約50モル%以下であるような量である。
【0052】
硬化中に接触する基材に対する硬化物の接着性を向上させるため、本組成物は接着付与剤を含有してもよい。特定の実施形態において、接着付与剤は、分子中にケイ素原子に結合した少なくとも1個のアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物である。このアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、及びメトキシエトキシ基により例示され、メトキシ基が最も典型的である。更に、この有機ケイ素化合物のケイ素原子に結合した非アルコキシ基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基などの置換又は非置換の一価炭化水素基;3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基、又は類似のグリシドキシアルキル基などのエポキシ基含有一価有機基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基、又は同様のエポキシシクロヘキシルアルキル基;及び4-オキシラニルブチル基、8-オキシラニルオクチル基、又は同様のオキシラニルアルキル基;例えば3-メタクリロキシプロピル基などのアクリル基含有一価有機基;及び水素原子により例示される。この有機ケイ素化合物は、概して、ケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子を有する。更に、様々な種類の基材に対する良好な接着性を付与する能力に起因して、この有機ケイ素化合物は、概して、分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有する。この種類の有機ケイ素化合物は、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、及びアルキルシリケートにより例示される。オルガノシロキサンオリゴマー又はアルキルシリケートの分子構造は、直鎖構造、部分的に分岐した直鎖構造、分岐鎖構造、環状構造、及びネット状構造により例示される。直鎖構造、分岐鎖構造、及びネット状構造が典型的である。この種類の有機ケイ素化合物は、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物;分子中に、少なくとも1個のケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子と、少なくとも1個のケイ素結合アルコキシ基を有するシロキサン化合物;分子中に少なくとも1個のケイ素結合アルコキシ基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物と、分子中に少なくとも1個のケイ素結合ヒドロキシル基及び少なくとも1個のケイ素結合アルケニル基を有するシロキサン化合物と、の混合物;並びにメチルポリシリケート、エチルポリシリケート、及びエポキシ基含有エチルポリシリケートにより例示される。
【0053】
本組成物において、接着付与剤の含有量は特に限定されないが、硬化中に接触する基材に対する良好な接着性を実現するため、接着付与剤の含有量は、特定の実施形態において、成分(A)~(D)の合計100質量部に対して約0.01~約10質量部である。
【0054】
シリカ、ガラス、アルミナ、又は酸化亜鉛などの無機充填剤;ポリメタクリレート樹脂などの有機樹脂微粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃剤、溶媒などを、本発明の目的を損なわない濃度で、任意選択の成分として本組成物中に組み込んでもよい。
【0055】
様々な実施形態において、本発明の硬化性シリコーン組成物は、射出成形可能なシリコーン組成物である。
【0056】
<硬化物>
次に、本発明の硬化物について詳細に説明する。
【0057】
本発明の硬化物は、上述の硬化性シリコーン組成物を硬化させることで得られる。硬化物の形態は特に限定されず、例えば、シート、フィルム、又はレンズの形態であることができる。硬化物は単独で扱うことができるが、硬化物が光学素子を覆った、又は封止した状態でも扱うことができる。
【0058】
特定の実施形態において、本方法は、硬化性シリコーン組成物を加熱して硬化物を形成することを更に含む。加熱工程は、例えば、射出成形、トランスファー成形、鋳造、押出成形、オーバー成形、圧縮成形、及び流し込み成形を更に含んでもよく、硬化物は、レンズ、光導体、光学的に透明な接着層、又は他の光学素子をはじめとする、成形された、鋳造された、又は押出された物品である。特定の実施形態において、射出成形が利用される。
【実施例
【0059】
以下の実施例は、硬化性シリコーン組成物及びその硬化物を例示している。この実施例は本発明を例示することを目的としており、本発明を制限するものではない。更に、物性値は25℃で測定した値であり、硬化物の特性(硬度、引張強度、及び伸び)は以下のように測定した。
【0060】
<ショアA硬度>
硬化性シリコーン組成物を150℃で15分間プレス硬化し、空気循環オーブン中にて150℃で45分間後硬化することで、3mm厚の硬化物を得る。デュロメータ測定のため、硬化物を少なくとも6mmの厚さになるよう積層した。硬化物の硬度は、ASTM D2240により明記されたショアAデュロメータにより測定する。
【0061】
<引張強度>
硬化性シリコーン組成物を150℃で60分間加熱することで硬化させ、3mm厚の硬化物を作製した。硬化物の引張強度は、ASTM D412に明記された方法に従い測定した。
【0062】
<伸び>
硬化性シリコーン組成物を150℃で60分間加熱することで硬化させ、3mm厚の硬化物を作製した。硬化物の伸びは、ASTM D412に明記された方法に従い測定した。
【0063】
成分(A)~(F)に関して、以下の実施例で用いた材料の性質及び表記は、以下に示すとおりである。式中、Me及びViは、それぞれメチル基及びビニル基を表す。
【0064】
成分(A)
(a-1):平均単位式(MeSiO1/20.48(SiO4/20.52により表されるシリコーン樹脂であり、数平均分子量(Mn)はおよそ4,700である。
(a-2):平均単位式(MeSiO1/20.47(ViMeSiO1/20.05(SiO4/20.48により表されるシリコーン樹脂であり、数平均分子量(Mn)はおよそ4,600、ビニル基含有量は1.9質量%である。
【0065】
成分(B)
(b-1):分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基により末端封止されたジメチルポリシロキサンであり、25℃における粘度はおよそ2,000mPa・s、ビニル基含有量はおよそ0.24質量%である。
【0066】
成分(C)
(c-1):平均単位式(MeHSiO1/20.68(SiO4/20.32により表されるオルガノポリシロキサンであり、25℃における動粘度はおよそ20mm/s、ケイ素原子結合水素原子の含有量はおよそ0.97質量%である。
【0067】
成分(D)
(d-1):白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の、分子鎖の両末端がジメチルビニルシロキシ基により末端封止されたジメチルポリシロキサン溶液であり、25℃における粘度は350mPa・s、ビニル基含有量は0.48質量%である(本溶液は0.05質量%の白金を含有する)。
【0068】
成分(E)
(e-1):1-エチニル-シクロヘキサン-1-オール
【0069】
成分(F)
(f-1):分子鎖の両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基により末端封止されたジメチルポリシロキサンであり、25℃における動粘度はおよそ10mm/s、ケイ素原子結合水素原子の含有量はおよそ0.15質量%である。
【0070】
<実施例1~7及び比較例1>
上記の材料を、表1に示す量の割合で均一に混合して、硬化性シリコーン組成物を製造した。得られた組成物を150℃で60分間加熱して3mm厚の硬化シートを製造し、このシートを引張強度測定に供した。組成物を更に150℃で60分間加熱して3mm厚の硬化物を製造し、この硬化物を25℃での硬度測定に供した。結果を表1に示す。表1~3の各々におけるSiH/Vi比は、成分(B)におけるビニル基1モルに対する、成分(C)、又は成分(C)及び(F)におけるケイ素結合水素のモル数の比を示す。表1~3の各々におけるR/P比は、成分(A)及び(B)の合計質量に対する、成分(A)の質量比を示す。
【0071】
【表1】
【0072】
<実施例8~11>
上記の材料を、表2に示す量の割合で均一に混合して、硬化性シリコーン組成物を製造した。得られた組成物を150℃で60分間加熱して3mm厚の硬化シートを製造し、このシートを引張強度測定に供した。組成物を更に150℃で60分間加熱して3mm厚の硬化物を製造し、この硬化物を25℃での硬度測定に供した。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
<実施例12及び比較例2~3>
上記の材料を、表3に示す量の割合で均一に混合して、硬化性シリコーン組成物を製造した。得られた組成物を150℃で60分間加熱して3mm厚の硬化物を製造し、この硬化物を引張強度及び伸び測定に供した。組成物を更に150℃で60分間加熱して3mm厚の硬化物を製造し、この硬化物を25℃での硬度測定に供した。
【0075】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、柔軟で透明性の高い硬化物を形成するので、光、例えば、可視光、赤外線、紫外線、遠紫外線、X線、レーザーなどに対して透過性の光学部材又は部品として有用である。特に、本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化により与えられる硬化物は温度により透明性が変化しないため、この硬化物は、高エネルギー、高出力光を伴う装置の光学部材又は部品としての使用にきわめて好適である。