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特許7488272血管からの流れに関するパラメータを導出するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】血管からの流れに関するパラメータを導出するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
A61B8/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021546457
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2019077550
(87)【国際公開番号】W WO2020083660
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】19162788.4
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】201841039786
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】62/804,845
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シュレポフ,セルゲイ ワイ
(72)【発明者】
【氏名】デ ウィルト,ニコ マリス アドリアーン
(72)【発明者】
【氏名】セトゥラマン,シュリラム
(72)【発明者】
【氏名】パラニサミ,クリシュナムルティ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー,デニー
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0078106(US,A1)
【文献】特開2014-109867(JP,A)
【文献】特開平08-131436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 ー 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内の流れに関するパラメータを取得する方法であって、
1つの撮像平面から超音波データを取得することであって、前記超音波データは、ドップラー超音波データを含む、超音波データを取得することと、
前記超音波データに基づいて前記1つの撮像平面内の血管断面を同定することと、
前記同定される血管断面の形状を決定することと、
前記同定される血管断面の前記形状に基づいて血管軸を決定することであって、前記血管軸は、前記血管の長さに沿って延びる、血管軸を決定することと、
前記血管軸と前記1つの撮像平面との間のドップラー角を決定することと、
前記ドップラー角、前記血管軸、及び前記ドップラー超音波データに基づいて、前記流れに関するパラメータを導出することと、を含み、
前記同定される血管断面の前記形状を決定することは、前記同定される血管断面に一般楕円方程式を適合させることを含み、
前記同定される血管断面に前記一般楕円方程式を適合させることは、前記超音波データに画像モーメント法を適用することを含む、
方法。
【請求項2】
前記流れに関するパラメータを導出することは、流速を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
10~50度の間のドップラー角から超音波データを取得するようにユーザを誘導することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記血管軸に基づいてビーム操縦角を生成することと、
前記ビーム操縦角に基づいて前記1つの撮像平面の位置を調整することと、を更に含む、
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ドップラー超音波データに動的ゲーティングを適用することを更に含む、請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記同定される血管断面の前記形状を決定することは、血管直径を同定することを含む、請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
時間の経過に亘る血管直径の変化をモニタリングすることと、
時間の経過に亘る前記血管直径の変化に基づいて血管伸展性の測定値を決定することと、を更に含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記流れに関するパラメータは、
流速、及び
流れ分布
のうちの1以上を含む、
請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記超音波データは、Bモードデータを含む、請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムコード手段は、当該コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、請求項1乃至9のうちのいずれか1項に記載の方法を実装するように構成される、コンピュータプログラム。
【請求項11】
血管の超音波データから流れに関するパラメータを導出するように構成される医療システムであって、
当該医療システムは、プロセッサを含み、該プロセッサは、
1つの撮像平面から超音波データを取得するように構成され、前記超音波データは、ドップラー超音波データを含み、
前記超音波データに基づいて前記1つの撮像平面内の血管断面を同定するように構成され、
前記同定される血管断面の形状を決定するように構成され、
前記同定される血管断面の前記形状に基づいて血管軸を決定するように構成され、前記血管軸は、前記血管の長さに沿って延び、
前記血管軸と前記1つの撮像平面との間のドップラー角を決定するように構成され、
前記ドップラー角、前記血管軸、及び前記ドップラー超音波データに基づいて、前記流れに関するパラメータを導出するように構成され、
前記プロセッサは、
前記同定される血管断面に一般楕円方程式を適合させることによって前記同定される血管断面の前記形状を決定するように構成され、
前記同定される血管断面に前記一般楕円方程式を適合させるときに、前記プロセッサは、前記超音波データに画像モーメント法を適用するように構成される、
医療システム。
【請求項12】
当該医療システムは、前記プロセッサと通信する超音波トランスデューサを更に含み、該超音波トランスデューサは、前記1つの撮像平面から超音波データを取得するように構成される、請求項11に記載の医療システム。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記超音波トランスデューサを制御して、前記血管軸に基づいてビーム操縦角を生成し、該ビーム操縦角に基づいて前記撮像平面の位置を調整する、ように構成される、請求項12に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の分野に関し、より具体的には、超音波血流測定の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
血管からの連続的で正確な血流測定は、血行動態モニタリング(HDM)用途において必須である。血流パラメータを連続的に定量化し且つモニタリングする超音波ベースのパッチを被験者に提供することが可能である。被験者は、例えば、緊急及び/又は周術期ケアにあることがある。
【0003】
血管の完全な超音波撮像及び診断は、Bモード撮像のような構造撮像と、カラーフロー及び/又はスペクトルドップラー撮像のようなドップラー撮像との組み合わせを含む。超音波診断画像において、ドップラー測定は、典型的には、熟練した超音波検査技師によって行われ、その場合、超音波検査技師は、血管の中央にドップラー撮像平面を位置決めし、血管の長さに沿って延びる主軸と整列させる。訓練を受けていないオペレータが血管内にそのような平面内に設置することは面倒であり得る。
【0004】
更に、連続的な被験者モニタリングのための身体装着超音波パッチでは、オペレータへの視覚的な超音波フィードバック(すなわち、超音波画像の形態のフィードバック)が存在しないことがある。従って、オペレータは、血管の超音波画像が存在しない場合にセンサを配置し、それによって、作業の困難性を増大させることもある。
【0005】
連続的な超音波モニタリングについての別の考慮事項は、被験者が能動的モニタリングの間に取り付けられたセンサと共に動くことがあるということである。これらの条件の下では、超音波パッチが血管軸と正しく整列させられるように、モニタリング中に超音波パッチの位置を配置し且つ維持することは、挑戦であることがある。
【0006】
更に、血管は、典型的には、比較的小さな直径であるため、センサを血管軸外に変位させるあらゆる運動は、測定される血管直径及び検出される血流値に劇的に影響を及ぼすことがある。
【0007】
従って、血流を正確且つ堅牢(ロバスト)な方法で獲得し且つ継続的にモニタリングする手段の必要がある。
【0008】
特許文献1は、患者の複数の動脈パラメータの連続的な非侵襲的モニタリングのための方法を開示している。
【0009】
特許文献2は、血管のための流速情報を生成するために超音波トランスデューサアレイを利用して血管を撮像するステップを含む超音波技術を利用して血管内の体積流量を推定する方法を開示している。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、請求項によって定義される。
【0011】
本発明の態様に従った例によれば、血管から流れに関するパラメータを取得する方法が提供され、方法は、
超音波センサから、撮像平面を表す超音波を取得することであって、超音波データは、ドップラー超音波データを含む、超音波を取得することと、
超音波データに基づいて撮像平面内の血管断面を同定することと、
同定される血管断面の形状を決定することと、
血管軸に対して垂直な平面上の円形断面の仮定に基づく同定される血管断面の形状に基づいて血管軸を決定することであって、血管軸は、血管の長さに沿って延びる、血管軸を決定することと、
血管軸と撮像平面との間のドップラー角を決定することと、
ドップラー角、血管軸、及びドップラー超音波データに基づいて、流れに関するパラメータを導出することとを含み、
同定される血管断面の形状を決定することは、同定される血管断面に一般楕円方程式を適合させる(当て嵌める)ことを含む。
【0012】
方法は、血管から流れに関するパラメータの導出を提供する。より具体的には、方法は、ある角度が血管の長さに沿って延びる血管軸と撮像平面との間に存在するときに、血管からの流れに関するパラメータを導出するための堅牢(ロバスト)な手段を提供する。
【0013】
典型的には、血管内の流れに関するデータは、血管軸と整列させられる撮像平面を用いて導出される。しかしながら、この方法は、適用が困難であり、運動アーチファクトの影響を受けやすい。
【0014】
血管軸に対して所与の角度で(または所与の角度内で)血管と交差する撮像平面を確立することによって、並びに流れに関するパラメータを導出するときに前記角度を考慮することによって、撮像平面の確立は、大幅に単純化され、測定は、運動アーチファクトに対してより堅牢に行われる。
【0015】
ある実施形態において、流れに関するパラメータを導出することは、流速を決定することを含む。
【0016】
このようにして、血流速度は、血流に関するパラメータの一部を形成することがある。
【0017】
ある実施形態において、ドップラー角は、10~50度の間にあり、例えば、15~40度の間にある。
【0018】
ある実施形態において、同定される血管断面に一般楕円方程式を適合させることは、非線形最小2乗法に基づく。
【0019】
このようにして、(撮像平面がある角度で血管軸と交差するときに典型的には楕円形である)血管断面の形状は、計算的に効率的な方法で決定されることがある。
【0020】
ある実施形態において、同定される血管断面の形状を決定することは、超音波データに画像運動量法を適用することを含む。
【0021】
このようにして、血管断面の形状を正確に確立するために、形状認識アルゴリズムが超音波データに適用されることがある。
【0022】
ある構成において、方法は、
超音波トランスデューサ(センサ)に通信することによって、血管軸に基づいてビーム操縦角を生成することと、
超音波トランスデューサ(センサ)に通信することによって、ビーム操縦角に基づいて撮像平面の位置を調整することとを更に含む。
【0023】
このようにして、電子ビームステアリングを用いて、自動的な調整が撮像平面の位置に対して行われることがある。
【0024】
ある実施形態において、方法は、ドップラー超音波データに動的ゲーティングを適用することを更に含む。
【0025】
動的ゲーティング方式を利用することによって、超音波データを評価するために使用されるゲーティングは、血管に対する最適な位置に留まるために(大きさ及び位置の両方において)調整されることがある。
【0026】
ある構成において、同定される血管断面の形状を決定することは、血管直径を同定することを含む。
【0027】
更なる構成において、方法は、
プロセッサによって、時間の経過に亘る血管直径の変化をモニタリングすることと、
プロセッサによって、時間の経過に亘る血管直径の変化に基づいて血管伸展性の測定値を決定することとを更に含む。
【0028】
ある実施形態において、流れに関するパラメータは、
流速、及び
流れ分布
のうちの1以上を含む。
【0029】
このようにして、血管を通じる流量及び/又は流れ分布が決定されることがあり、それによって、時間の経過に亘って血管を通じて流れる血液の容積の測定値を提供することがある。
【0030】
ある実施形態において、超音波データは、Bモードデータを含む。
【0031】
本発明の態様のある態様に従った例によれば、コンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムコード手段は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、請上述の方法を実装するように構成される、コンピュータプログラムが提供される。
【0032】
本発明の態様のある態様に従った例によれば、血管の超音波データから流れに関するパラメータを導出するように構成される医療システムが提供され、医療システムは、プロセッサを含み、プロセッサは、
撮像平面から超音波データを取得するように構成され、超音波データは、ドップラー超音波データを含み、
超音波データに基づいて撮像平面内の血管断面を同定するように構成され、
同定される血管断面の形状を決定するように構成され、
同定される血管断面の形状に基づいて血管軸を決定するように構成され、血管軸は、血管の長さに沿って延び、
血管軸と撮像平面との間のドップラー角を決定するように構成され、
ドップラー角、血管軸及びドップラー超音波データに基づいて、流れに関するパラメータを導出するように構成され、プロセッサは、
同定される血管断面に一般楕円方程式を適合させることによって同定される血管断面の形状を決定するように構成される。
【0033】
ある実施形態において、医療システムは、プロセッサと通信する超音波トランスデューサを更に含み、超音波トランスデューサは、撮像平面から超音波データを取得するように構成される。
【0034】
更なる実施蹴板において、超音波トランスデューサは、
線形トランスデューサアレイ、
T形状トランスデューサアレイ、及び
2Dトランスデューサアレイ
のうちの1つ以上を含む。
【0035】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に記載する実施形態から明らかになり、それらを参照して解明されるであろう。
【0036】
本発明をより良く理解し且つ本発明がどのように実行に移されることがあるかをより明確に示すために、ほんの一例として添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】一般的な動作を説明するために超音波診断撮像システムを示している。
図2】本発明の方法を示している。
図3a】典型的な方法でデータを収集する超音波トランスデューサの概略図を示している。
図3b図2の方法に従ってデータを収集する超音波トランスデューサの概略図を示している。
図4】ドップラー角の間の関係、血管軸と撮像平面との間の関係、及び検出された楕円の形状の概略図を示している。
図5】同定された楕円の質量中心に位置付けられたドップラーゲートを示している。
図6】血管直径の決定することの例を示している。
図7】単一の線形トランスデューサアレイを含むセンサの案内された配置の例示的なワークフローを示している。
図8】センサ上に配置された視覚インジケータ及びT形状アレイを使用した案内されたセンサ配置の例のグラフ表現を示している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、図面を参照して記載される。
【0039】
詳細な記述及び具体的な例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、例示の目的のみのために意図されており、本発明の範囲を限定することが意図されていないことが理解されるべきである。本発明の装置、システム及び方法のこれらの及び他の構成、態様、及び利点は、以下の記述、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるようになるであろう。図面は概略に過ぎず、縮尺通りに描かれていないことが理解されるべきである。同じ又は類似の部分を示すために、同じ参照番号が図面を通じて使用されていることも理解されるべきである。
【0040】
本発明は、血管からの流れに関するパラメータを得るための方法を提供する。本方法は、撮像平面からドップラー超音波データを含む超音波データを取得し、超音波データに基づいて撮像平面内の血管断面を同定することから始まる。次に、同定された血管断面の形状が決定され、血管の長さに沿って延びる血管軸が、血管軸に垂直な平面上の円形断面という仮定で、同定された血管断面の形状に基づいて決定される。ドップラー角が、血管軸と撮像平面との間で決定され、流れに関するパラメータが、ドップラー角、血管軸及びドップラー超音波データに基づいて導出される。
【0041】
上記で議論したように、標準的なスキャナを使用する従来的な超音波モニタリングワークフローは、長時間に亘るオペレータのいないモニタリングに最適でない。より具体的には、超音波トランスデューサの撮像平面と血管軸との整列は、達成することが困難であり、被験者の動きによって容易に乱される。本発明は、撮像平面が所与の角度で血管軸と交差することを可能にすることによって、血流パラメータをモニタリングするより堅牢(ロバスト)な方法を提供し、次に、それは補正される。しかしながら、このアプローチは、以下に記載する従来的な血管超音波撮像及び診断ワークフローと比較して異なるワークフロー及び異なる再構成アルゴリズムを必要とする。
【0042】
この発明はトランスデューサアレイによって測定される信号の処理に関するので、図1を参照して、システムの信号処理機能に重点を置いて、例示的な超音波システムの一般的な動作を先ず記載する。
【0043】
このシステムは、超音波を送信し且つエコー情報を受信するためのトランスデューサアレイ6を有する超音波アレイトランスデューサセンサ(プローブ)4を含む。トランスデューサアレイ6は、CMUTトランスデューサ、PZTまたはPVDFのような材料で形成された圧電トランスデューサ、または任意の他の適切なトランスデューサ技術を含んでよい。この例において、トランスデューサアレイ6は、関心領域の2D平面または3次元ボリュームのいずれかをスキャン(走査)することができるトランスデューサ8の2次元アレイである。別の例において、トランスデューサアレイは、1Dアレイであってよい。
【0044】
トランスデューサアレイ6は、トランスデューサ要素による信号の受信を制御するマイクロビームフォーマ12(microbeam former)に連結されている。マイクロビームフォーマは、特許文献3(Savord et al.)、特許文献4(Savord)及び特許文献5(Powers et al.)に記載されているようなトランスデューサの、「グループ」または「パッチ」と一般的に呼ばれる、サブアレイによって受信される信号の少なくとも部分的なビーム形成(beam forming)が可能である。
【0045】
マイクロビームフォーマは、完全に任意的であることが留意されるべきである。更に、システムは、送受信(T/R)スイッチ16を含み、マイクロビームフォーマ12は、T/Rスイッチ16に連結されることができ、T/Rスイッチ16は、アレイを送信モードと受信モードとの間で切り替え、マイクロビームフォーマが使用されないで、トランスデューサアレイがメインシステムビームフォーマによって直接的に作動させられる場合に、メインビームフォーマ20を高エネルギ送信信号から保護する。トランスデューサアレイ6からの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ16によってマイクロビームフォーマに連結されたトランスデューサコントローラ18と、ユーザインターフェース又は制御パネル38のユーザの操作から入力を受信することができる主送信ビームフォーマ(main transmission beamformer)(図示せず)とによって導かれる。コントローラ18は、送信モードの間に(直接的にまたはマイクロビームフォーマを介して)アレイ6のトランスデューサ素子を駆動するように配置される送信回路構成(transmission circuitry)を含むことができる。
【0046】
典型的なライン毎の撮像シーケンスにおいて、プローブ内のビーム形成システムは、以下のように動作することがある。送信中、(実装に依存してマイクロビームフォーマまたはメインシステムビームフォーマであってよい)ビームフォーマは、トランスデューサアレイまたはトランスデューサアレイのサブアパーチャ(sub-aperture)をアクティブ化(起動)させる。サブアパーチャは、トランスデューサの一次元ラインまたはより大きなアレイ内のトランスデューサの二次元パッチであってよい。送信モードにおいて、アレイまたはアレイのサブアパーチャによって生成される超音波ビームの焦点合わせ(focusing)及び操縦(steering)は、以下に記載されるように制御される。
【0047】
被験者から後方散乱エコー信号を受信した後に、受信信号(received signals)は、受信信号を整列させるために、(以下に記載する)受信ビーム形成(receive beamforming)を受け、サブアパーチャが使用されている場合、サブアパーチャは、例えば、1つのトランスデューサ素子によってシフトされる。次に、シフトされたサブアパーチャはアクティブ化され、プロセスは、トランスデューサアレイのトランスデューサ素子の全てがアクティブ化されるまで繰り返される。
【0048】
各ライン(またはサブアパーチャ)について、最終超音波画像の関連ラインを形成するために使用される総受信信号は、受信期間中に所与のサブアパーチャのトランスデューサ素子によって測定される電圧信号の合計である。以下のビーム形成プロセスに従う、結果として得られるライン信号(line signals)は、典型的には、無線周波数(RF)データと呼ばれる。次に、様々なサブアパーチャによって生成される各ライン信号(RFデータセット)は、最終超音波画像のラインを生成するために追加的な処理を受ける。時間の経過に亘るライン信号の振幅の変化は、深さと共に超音波画像の輝度の変化に寄与し、高振幅ピークは、最終画像内の明るいピクセル(またはピクセルの集合)に対応する。ライン信号の開始点付近に現れるピークは、浅い構造からのエコーを表すのに対し、ライン信号内で後に漸進的に現れるピークは、被験者内の増大する深さにある構造からのエコーを表す。
【0049】
トランスデューサコントローラ18によって制御される機能の1つは、ビームが操縦され且つ焦点合わせされる方向である。ビームは、トランスデューサアレイから真っ直ぐ前方に(トランスデューサアレイに対して直角方向に)或いはより広い視野のために異なる角度で操縦されてよい。送信ビームの操縦及び焦点合わせは、トランスデューサ素子作動時間の関数として制御されてよい。
【0050】
一般的な超音波データ取得では、2つの方法、すなわち、平面波撮像(plane wave imaging)及び「ビーム操縦(beam steered)」撮像(imaging)を区別することができる。2つの方法は、送信モード(「ビーム操縦」撮像)及び/又は受信モード(平面波撮像及び「ビーム操縦」撮像)におけるビーム形成の存在によって区別される。
【0051】
先ず、焦点合わせ機能を見ると、全てのトランスデューサ素子を同時にアクティブ化することによって、トランスデューサアレイは、被験者を進むにつれて発散する平面波を発生する。この場合、超音波のビームは焦点を合わせられないままである。トランスデューサのアクティブ化に位置依存時間遅延を導入することによって、ビームの波面を焦点ゾーン(focal zone)と呼ばれる所望の点に集束させることが可能である。焦点ゾーンは、横方向ビーム幅が送信ビーム幅の半分未満である点として定義される。このようにして、最終的な超音波画像の横方向解像度(lateral resolution)は改良される。
【0052】
例えば、時間遅延が、トランスデューサ素子を、トランスデューサアレイの最外側の素子から開始して中央の素子で終了する直列にアクティブ化させるならば、焦点ゾーンは、(複数の)中央の素子に一致して、プローブから離れた所与の距離に形成される。プローブからの焦点ゾーンの距離は、各々の後続のラウンドのトランスデューサ素子アクティブ化の間の時間遅延に依存して異なる。ビームが焦点ゾーンを通過した後に、ビームは発散し始め、遠距離場撮像領域(far field imaging region)を形成する。トランスデューサアレイに近接して位置する焦点ゾーンについて、超音波ビームは、遠距離場において急速に発散して、最終画像においてビーム幅アーチファクトをもたらすことが留意されるべきである。典型的には、トランスデューサアレイと焦点ゾーンとの間に位置する近距離場(near field)は、超音波ビームにおける大きなオーバーラップの故に、殆ど詳細を示さない。よって、焦点ゾーンの位置を変化させることは、最終画像の品質に有意な変化をもたらし得る。
【0053】
送信モードでは、超音波画像が複数の焦点ゾーンに分割されない限り(それらの各々は異なる送信焦点を有することがある)、1つの焦点のみが定義されてよいことが留意されるべきである。
【0054】
加えて、被験者内からのエコー信号を受信した後に、受信焦点合わせ(receive focusing)を行うために、上述の処理の逆を行うことが可能である。換言すれば、入力信号(incoming signals)は、トランスデューサ素子によって受信され、信号処理のためにシステムに送られる前に、電子的な時間遅延を受けることがある。これの最も単純な例は、遅延和ビーム形成(delay-an-sum beamforming)と呼ばれる。トランスデューサアレイの受信焦点合わせを時間の関数として動的に調整することが可能である。
【0055】
次に、ビーム操縦の機能を見ると、トランスデューサ素子への時間遅延の正しい適用を通じて、超音波ビームがトランスデューサアレイを離れるときに、超音波ビームに対して所望の角度を付与することが可能である。例えば、トランスデューサアレイの第1の側でトランスデューサをアクティブ化させ、次に、トランスデューサアレイの反対側で終了するシーケンスで残りのトランスデューサをアクティブ化させることによって、ビームの波面は、第2の側に向かって角度付けられる。トランスデューサアレイの法線に対する操縦角の大きさは、後続のトランスデューサ素子アクティブ化の間の時間遅延の大きさに依存する。
【0056】
更に、操縦されたビームを焦点合わせすることが可能であり、各トランスデューサ素子に適用される総時間遅延は、焦点合わせ時間遅延及び操縦時間遅延の両方の和である。この場合、トランスデューサアレイは、フェーズドアレイ(phased array)と呼ばれる。
【0057】
アクティブ化のためにDCバイアス電圧を必要とするCMUTトランスデューサの場合、トランスデューサコントローラ18は、トランスデューサアレイのためのDCバイアス制御装置45を制御するために連結されてよい。DCバイアス制御装置45は、CMUTトランスデューサ素子に印加される(複数の)DCバイアス電圧を設定する。
【0058】
トランスデューサアレイの各トランスデューサ素子について、典型的には、チャネルデータ(channel data)と呼ばれる、アナログ超音波信号が、受信チャネルを経由してシステムに入る。受信チャネル内で、部分的にビーム形成された信号が、マイクロビームフォーマ12によってチャネルデータから生成され、次に、主受信ビームフォーマ20に送られ、トランスデューサの個々のパッチから部分的にビーム形成された信号は、主受信ビームフォーマ20で、無線周波数(RF)データと呼ばれる、完全にビーム形成された信号に結合される。各段階で実行されるビーム形成は、上述のように実行されてよく、或いは付加的な機能を含んでよい。例えば、主ビームフォーマ20は、128個のチャネルを有してよく、各チャネルは、数十個または数百個のトランスデューサ素子のパッチから部分的にビーム形成された信号を受信する。このようにして、トランスデューサアレイの数千のトランスデューサによって受信される信号は、単一のビーム形成された信号に効率的に寄与することができる。
【0059】
ビーム形成された受信信号は、信号プロセッサ22に結合される。信号プロセッサ22は、受信されたエコー信号を、帯域通過フィルタリング、デシメーション、I及びQ成分分離、並びに高調波信号分離のような、様々な方法で処理することができ、それは、組織及びマイクロバブル(micro-bubbles)から戻される非線形(基本周波数のより高調波)エコー信号の同定を可能にするように、線形信号及び非線形信号を分離するように作用する。信号プロセッサは、スペックル低減、信号合成、及びノイズ除去のような、追加的な信号増強を実行することもある。信号プロセッサ内の帯域通過フィルタは、トラッキングフィルタであることができ、その通過帯域は、エコー信号が増加する深度から受信されるにつれて、より高い周波数帯域からより低い周波数帯域にスライドし、それによって、典型的には、解剖学的情報を欠く、より大きな深度からより高い周波数のノイズを拒絶する。
【0060】
送信用及び受信用のビームフォーマは、異なるハードウェアにおいて実装され、異なる機能を有することができる。もちろん、受信器ビームフォーマは、送信ビームフォーマの特性を考慮するように設計される。図1では、簡潔性のために、受信器ビームフォーマ12、20のみが示されている。完全なシステムでは、送信マイクロビームフォーマと主送信ビームフォーマとを備える送信チェーンもある。
【0061】
マイクロビームフォーマ12の機能は、アナログ信号経路の数を減少させるために、信号の初期の組み合わせを提供することである。これは、典型的には、アナログドメインにおいて実行される。
【0062】
最終ビーム形成は、主ビームフォーマ20内で行われ、典型的には、デジタル化の後に行われる。
【0063】
送受信チャネルは、固定周波数帯域を有する同じトランスデューサアレイ6を使用する。しかしながら、送信パルスが占める帯域幅は、使用される送信ビーム形成に依存して異なり得る。受信チャネルは、総トランスデューサ帯域幅を取り込むことができる(これは古典的なアプローチである)。或いは、帯域通過処理を使用することによって、受信チャネルは、所望の情報(例えば、主高調波の高調波)を含む帯域幅のみを抽出することができる。
【0064】
次に、RF信号は、Bモード(すなわち、輝度モードまたは2D撮像モード)プロセッサ26及びドップラープロセッサ28に結合されてよい。Bモードプロセッサ26は、臓器組織及び血管のような身体内の構造を撮像するために、受信された超音波信号に対して振幅検出を行う。ライン毎撮像(line-by-line imaging)の場合、各ライン(ビーム)は、関連するRF信号によって表され、その振幅は、Bモード画像内のピクセルに割り当てられるべき輝度値を生成するために使用される。画像内のピクセルの正確な場所は、RF信号に沿う関連する振幅測定の場所と、RF信号のライン(ビーム)番号とによって決定される。そのような構造のBモード画像は、高調波または基本画像モード、または特許文献6(Roundhill et al.)及び特許文献7(Jago et al.)に記載されているような両方の組み合わせにおいて形成されてよい。ドップラープロセッサ28は、画像場(image field)内の血液細胞の流れのような、移動する物質を検出するために、組織運動及び血流から生じる時間的に異なる信号を処理する。ドップラープロセッサ28は、典型的には、身体内の選択されたタイプの材料から戻されるエコーを通すか或いは拒否するように設定されたパラメータを有する壁フィルタを含む。
【0065】
信号プロセッサ22、Bモードプロセッサ26、及びドップラープロセッサ28の機能を単一のプロセッサ22’によって実行し得ることが、当業者によって理解されるべきである。
【0066】
Bモードプロセッサ及びドップラープロセッサによって生成される構造信号及び運動信号は、スキャンコンバータ32(scan converter)及び多断面リフォーマッタ44(multi-planar reformatter)に結合される。スキャンコンバータ32は、エコー信号を空間的関係に配置し、エコー信号は、その所望の空間的関係から、所望の画像フォーマットで受信される。換言すれば、スキャンコンバータは、RFデータを、円柱座標系から、画像ディスプレイ40に超音波画像を表示するのに適したデカルト座標系に変換するように作用する。Bモード撮像の場合、所与の座標におけるピクセルの輝度は、その場所から受信されるRF信号の振幅に比例する。例えば、スキャンコンバータは、エコー信号を二次元(2D)扇形フォーマットまたはピラミッド状三次元(3D)画像に配置してよい。スキャンコンバータは、画像場内のポイント(点)における運動に対応する色でBモード構造画像をオーバーレイすることができ、そこでは、所与の色を生成するためのドップラー推定速度が存在する。結合されたBモード構造画像及びカラードップラー画像は、構造画像場内の組織及び血流の運動を描写する。多断面リフォーマッタは、特許文献8(Detmer)に記載されているように、身体の体積領域内の共通平面内のポイント(点)から受信されるエコーをその平面の超音波画像に変換する。ボリュームレンダラ42(volume renderer)は、特許文献9(Entrekin et al.)に記載されているように、3Dデータセットのエコー信号を所与の基準点から見た投影3D画像に変換する。
【0067】
2Dまたは3D画像は、画像ディスプレイ40上の表示のための更に強調、バッファリング及び一時記憶のために、スキャンコンバータ32、多断面リフォーマッタ44、及びボリュームレンダラ42から画像プロセッサ30に結合される。撮像プロセッサは、例えば、強力な減衰器または屈折によって引き起こされる音響シャドウイング、例えば、弱い減衰器によって引き起こされる後方強調、例えば、高反射性の組織界面が近接近して位置する残響アーチファクトなどのような、特定の撮像アーチファクトを、最終超音波画像から除去するように構成されてよい。加えて、画像プロセッサは、最終超音波画像のコントラストを改良するために、特定のスペックル低減機能を取り扱うように構成されてよい。
【0068】
撮像のために使用されることに加えて、ドップラープロセッサ28によって生成される血流値及びBモードプロセッサ26によって生成される組織構造情報は、定量化プロセッサ34に結合される。定量化プロセッサは、臓器の大きさ及び在胎期間のような構造的測定に加えて、血流の体積速度のような異なる流量条件の測定値を生成する。定量化プロセッサは、測定が行われるべき画像の解剖学的構造におけるポイント(点)のような入力をユーザ制御パネル38から受信してよい。
【0069】
定量化プロセッサからの出力データは、ディスプレイ40上の画像を用いた測定グラフィックス及び値の再生のために、並びにディスプレイデバイス40からのオーディオ出力のために、グラフィックスプロセッサ36に結合される。グラフィックスプロセッサ36は、超音波画像と共に表示するためのグラフィックオーバーレイを生成することもできる。これらのグラフィックオーバーレイは、患者名、画像の日時、撮像パラメータなどのような、標準的な識別情報を含むことができる。これらの目的のために、グラフィックスプロセッサは、患者名のような、ユーザインターフェース38からの入力を受信する。ユーザインターフェースは、トランスデューサアレイ6からの超音波信号の生成、故に、トランスデューサアレイ及び超音波システムによって生成される画像を制御するために、送信コントローラ18に連結される。コントローラ18の送信制御機能は、実行される機能の1つに過ぎない。コントローラ18は、(ユーザによって与えられる)動作モード、及び受信器アナログデジタルコンバータにおける対応する所要の送信器構成及び帯域通過構成も考慮に入れる。コントローラ18は、固定状態を有する状態マシンであってよい。
【0070】
ユーザインターフェースは、MPR画像の画像場において定量化された測度を実行するために使用されることがある複数の多断面リフォーマットされた(MPT)画像の平面の選択及び制御のために、多断面リフォーマッタ44に連結されてよい。
【0071】
本明細書に記載する方法は、処理ユニット上で実行されてよい。そのような処理ユニットは、図1を参照して上述したシステムのような、超音波システム内に配置さてよい。例えば、上述の画像プロセッサ30は、以下に詳述する方法ステップの一部または全部を実行してよい。代替的に、処理ユニットは、被験者に関する入力を受信するように構成された、モニタリングシステムのような、任意の適切なシステム内に配置されてよい。
【0072】
図2は、血管からの流れに関するパラメータを得るためにプロセッサ22’によって実行されてよい方法100を示している。
【0073】
方法は、例えば、超音波センサ4によって取得される、撮像平面120を表す超音波データを得ることによって、ステップ110において開始する。超音波データは、血流のような撮像平面内の運動を描く、ドップラー超音波データを含む。超音波データは、撮像平面内の構造的特徴を描く、Bモードデータを含んでもよい。方法は、ドップラー超音波データのみを用いて実行されてよく、或いはBモードデータと組み合わせにおいて実行されてよい。
【0074】
超音波データは、任意のポイント(点)で血管を横切る単一の撮像平面から得られてよい。
【0075】
超音波データは、超音波トランスデューサによって得られてよい。更に、超音波トランスデューサの配置及び位置決めは、トランスデューサによって画定される撮像平面が所与の角度内で血管軸と交差するように案内されてよい。ドップラー角と呼ばれる角度は、10~50度の間、例えば、15~40度の間であってよい。超音波トランスデューサが所与の位置にどのように案内されるかの例は、図7及び図8を参照して以下に記載される。
【0076】
このようにして、超音波データを取得するために使用される超音波トランスデューサ(センサ)は、実際には達成することが困難なことがある所与の特定の角度で血管と整列させられる必要がない。むしろ、センサは、血管の中心軸に対して10~50度の範囲内の角度に配置されて、最適なデータ収集結果を達成することがある。このようにして、センサの位置決めは、患者の動きに対して非常に堅牢になり、従来的な超音波データ取得方法と同じ感度の影響を受けやすくない。更に、特定の向きにセンサを配置する必要性の排除は、データ取得のためにプローブを適切に配置するのに必要とされる時間及びスキルを減少させる。
【0077】
超音波データは、様々なデータを含むことがある。例えば、超音波データは、超音波画像データを含むことがあり、超音波画像データは、次に、撮像平面を2D超音波画像として表すために使用されてよい。更に、画像セグメンテーションを利用して、血管断面を認識し且つ同定してよい。
【0078】
超音波画像データは、ドップラー超音波データに加えて、構造Bモードデータを含んでよく、それはユーザに画像として表示されないことがあるが、超音波システムの内部のプロセスにおいて使用されることがある。
【0079】
更に、または代替的に、超音波データは、所与の血管内の血流速度のばらつきを表す拍動性データを含んでよい。拍動性データの例において、血管は、取り込まれる拍動性データを、頸動脈または頸静脈の典型的な拍動性プロファイルのような既知の拍動性プロファイルにマッチさせることによって同定されてよい。
【0080】
超音波画像データ(Bモードデータ)とドップラー(カラー)データとの組み合わせは、二重(デュプレックス)データベースの血管同定(duplex data-based vessel identification)と呼ばれることがある。
【0081】
ステップ130では、血管断面140が、超音波データに基づいて撮像平面内で同定される。例えば、血管断面は、ドップラー超音波データに存在する流れ特性に基づいて同定されてよい。このステップは、プロセッサ22’の一部を形成するドップラープロセッサ28によって実行することができる。代替的に、血管断面は、Bモードデータの強度変動を分析することによって同定されてよい。この場合、プロセッサ22”の一部を形成するBモードプロセッサ26は、この同定を実行してよい。
【0082】
上述のように、超音波データは、様々なデータを含むことがある。例えば、超音波データは、超音波画像データを含んでよく、超音波画像データは、次に、撮像平面を2D超音波画像として表すために使用されてよい。更に、次に、画像セグメンテーションを利用して、血管断面を認識し且つ同定してよい。
【0083】
更に、超音波データは、ドップラー超音波データを含む。この場合、撮像平面内の血管断面の同定は、ドップラー超音波データに基づいて撮像平面内のトランスデューサに対する血流の方向を決定することを含んでよい。
【0084】
撮像平面内、より具体的には、撮像平面の所与の領域内の血流の方向を使用して、血管を同定してよい。例えば、撮像平面が被験者の首に位置する場合、2つの血管(頸動脈及び頸静脈)は、それらの対向する流れ方向によって同定されてよい。
【0085】
一例として、血管断面は、以下のステップに従って同定されてよい。先ず、カラードップラーフロー画像は、HSV(色合い(Hue)、飽和(Saturation)、値(Value))空間に変換され、画像は、閾値飽和をHSV空間に適用することによってバイナリ画像に変換される。次に、バイナリ画像は、画像内の穴を充填することによって前処理され、画像内に最大エリアを有する領域は、接続された成分分析(connected component analysis)によって選択される。
【0086】
血管の中心は、選択される領域の質量中心から同定され、選択される領域のRGBパターンは、血管内の層流及び乱流を区別するために分析される。実際、医療用途に依存して、この情報は、現在の位置を維持するための或いは分岐部から離れる方向に移動するためのガイドとして使用されてよい。次に、信号が動脈のような所与の血管からのものであることを確認するために、拍動性測定値がドップラーカラー信号から計算される。
【0087】
ステップ150において、同定された血管断面の形状が決定される。
【0088】
同定された血管断面の形状を決定することは、非線形最小二乗法に基づいて同定された血管断面に一般楕円方程式を適合させることによって行われてよい。代替的に、或いは更に、同定された血管断面の形状は、画像運動量法(image momentum method)を超音波データに適用することを含んでよい。
【0089】
ステップ160において、血管の長さに沿って延びる血管軸170は、同定された血管断面の形状に基づいて決定される。この決定は、血管軸に対して垂直な平面上の円形断面の仮定に基づく。
【0090】
血管の断面形状及び血管軸の決定は、図4を参照して以下に議論される。
【0091】
ステップ180では、血管軸と撮像平面との間のドップラー角(α)が決定される。ドップラー角は、10~50度の間、例えば、15~40度の間であってよい。
【0092】
ステップ190において、血管内の流れに関するパラメータは、ドップラー角、血管軸、及びドップラー超音波データに基づいて導出されてよい。
【0093】
本方法は、入力超音波データの連続的なストリームに対して作動することがあることが留意されるべきである。従って、本方法は、最近受信されたデータに基づいて決定された血管軸及びドップラー角を更新するために、連続的に繰り返されてよい。このようにして、本方法は、モニタリング中にリアルタイムで被験者の動きを補償することがある。上述のステップは、例えば、如何なる外部ガイダンスも用いないで、連続的かつ正確な血液速度、または他の流量パラメータ、測定値を提供して、モニタリングのための拍動間出力を提供することがある。
【0094】
図3a及び図3bは、それぞれ、既知の方法及び本方法に従った血管からの超音波データを取り込むことの間の比較を示している。
【0095】
図3aは、長方形の血管断面145を得るために血管軸と平行に整列させられた撮像平面125から典型的な方法でデータを収集する、超音波センサ4のような、超音波トランスデューサ200の概略図を示している。この場合、組み合わせられたカラードップラー及びBモードデータ210は、拍動性データ220のグラフと共に取得される。
【0096】
拍動性データのグラフは、(x軸上の)時間に対する(y軸上の)血管内の血液速度のプロットを示している。グラフから分かるように、プロットは、約4つの心臓周期をカバーしており、各ピークは、心臓の収縮を表している。
【0097】
図3bは、図2を参照して上述した方法に従った撮像平面120からデータを収集する超音波トランスデューサ200の概略図を示している。この場合、組み合わされたカラードップラー及びBモードデータ215は、拍動性データ225のグラフと共に取得される。
【0098】
拍動性データのグラフは、(x軸上の)時間に対する(y軸上の)血管内の血液速度のプロットを示している。グラフから分かるように、プロットは、約7つの心臓周期をカバーしており、各ピークは、心臓の収縮を表している。
【0099】
流れに関するパラメータとしての血液速度の測定に加えて、決定された血管軸に基づく補正に続いて、同定された血管断面内で、血管直径は、測定するための有用な測定基準(メトリック)である。
【0100】
図4は、角度αと、血管軸と撮像平面との間のドップラー角と、検出された楕円の形状との間の概略図を示している。
【0101】
上述のように、超音波トランスデューサは、撮像平面が所望の方法で動脈を横切るように、誘導下で配置されてよい。典型的には、ある平面が90°以外の角度で半径Rの無限円柱230と交差するとき、結果として得られる形状は楕円240である。血管が無限円柱としてモデル化されてよい(すなわち、撮像平面の視野内で血管の形状または方向に有意な変化がない)という仮定を取ると、血管断面は楕円である。
【0102】
楕円が同定されるとき、カラードップラーデータストリームから導出されるフォームファクタ(a及びb、主軸の次元)及びその向き(φ及びα)は、血管軸を確立するのに十分であり、撮像平面の向きに対する流れ方向をベクトル化するのに更に使用されてよい。
【0103】
形状は、非線形最小二乗法を用いて、一般楕円方程式によって適合させられることができる。この場合、主オイラー角及び血管の直径が直接的に利用可能である。代替的に、画像運動量法を用いて、形状認識が撮像平面内で直接的に実行されてよい。
【0104】
次に、形状の質量中心は、流れに関連するパラメータを測定するために使用されるドップラーゲート配置及び1/(sinα・cosφ)として主要向き(principal orientation)から導出される流れベクトル補正のために使用されてよい。
【0105】
流れに関するパラメータは、ドップラー超音波データのストリームから連続的に導出されるので、流れベクトル補正が検査またはモニタリング中に動く被験者のような外部の動きに応答して時間の経過と共に調整されることが可能である。
【0106】
原理角度φ(principle angle)は、皮膚の下の動脈の向きによって決定される一方で、角度αは、動脈を横切る撮像平面によって主として設定される。従って、直径同定における誤差(エラー)は、上記で議論したように、最適化されたセンサ配置によって最小限に抑えられることができる。
【0107】
血管断面の形状を決定するために利用されてよい、非線形形状適合法(non-linear shape fitting methods、能動的形状法(active shape methods)、及び画像モーメント法(image moment methods)のような、幾つかのアプローチがある。
【0108】
能動的形状法は、高品質の基礎データを必要とし、初期化及び伝搬パラメータに敏感である。加えて、能動的形状法は、典型的には、計算コストが高い。
【0109】
非線形法は、例えば、反復的(最小二乗)適合または直接最小二乗マッピングに基づいてよい。これらの方法は、主に、超音波画像内のランドマーク及び形状のエッジ上で機能する。
【0110】
非線形最小二乗法は、m≧nであるような未知のパラメータ(n)内で非線形であるモデルを多数の観測値(m)に適合させるために使用される最小二乗分析の形式である。この方法の基本は、モデルを線形モデルで近似させ、連続反復によってパラメータを精緻化することである。
【0111】
一般楕円方程式を血管断面に適合させる例において、一般楕円方程式は、モデルとして作用し、例えば、ドップラー超音波データ及び/又はBモード超音波データから同定された血管境界を観察されるデータポイント(データ点)として使用して、血管断面に適合される。次に、適合は、真の血管断面に対する一般楕円方程式の最良適合が見出されるまで、多数回繰り返されてよい。
【0112】
画像モーメント(image moments)または画像不変量(image invariants)の方法は、事前定義プリミティブ(pre-defined primitives)を使用して平面オブジェクトに適合させることに基づく。そのような方法は、全体的平面形状検出(global planar shape detection)に依存し、他のアプローチよりも堅牢であり且つ計算的に有効である。画像モーメント法は、計算の複雑さまたは要求を有意に増大させることなく、複数のオブジェクトを同時に検出し、構造化し、且つトラッキング(追跡)することも提供する。
【0113】
例として、画像モーメント法は、以下のように進行することがある。画像モーメントは、画像ピクセル強度の重み付け平均として定義される。ピクセル強度I(i,j)を有するグレースケール画像において、未加工画像モーメントM(p,q)は、以下の式で与えられる。
【数1】
【0114】
グレースケール画像の画像モーメントは、画像が取得される取得設定に大きく依存し、それは形状マッピングの結果がこれらの設定に感応的であることがあることを意味する。
【0115】
画像パラメータのセットのために最適化された画像のバイナリマスクをもたらすために、追加的な画像処理ステップが実行されてよい。このようにして、バイナリ画像、すなわち、1からなる画像オブジェクト及びゼロからなるバックグラウンド領域を扱うことのみが要求される方法である。バイナリ画像について、オブジェクト(Obj)に属するピクセル(i,j)についての画像モーメントM(p,q)は、以下のようになる
【数2】
【0116】
画像のモーメントは、画像の特性に関連する直接的な意味を有する。ゼロ次モーメントM0,0は、オブジェクト内のピクセルの総数、すなわち、オブジェクト領域をもたらす。M0,0によって正規化された1次モーメントM1,0及びM0,1は、それぞれ、水平(x)方向及び垂直(y)方向の重心(barycenter)
(外1)
の座標を与える。
【数3】
【0117】
楕円形のパラメータは、2次モーメントM2,0,M1,1,及びM0,2に基づく。これらのパラメータを抽出するために、2次中心モーメントが先ず構築されなければならない。
【数4】
【0118】
次に、バイナリオブジェクトの共分散行列が、以下の式で与えられる。
【数5】
【0119】
上記共分散行列の固有ベクトル(eigenvector)は、血管の断面に適合させられる等価楕円の長軸及び短軸に対応する。次に、オブジェクトの主領域特性(長軸及び短軸l及びw、並びに長軸の向きθ)は、以下のように記載されることがある。
【数6】
【0120】
本質的に線形演算は、オブジェクトに対して実行され、すなわち、計算の意味で容易にベクトル化され、多重領域検出、構造化、及びトラッキングのために並列化されることがある演算である。
【0121】
図5は、撮像平面120内の同定された楕円血管断面140の質量中心に位置付けられたドップラーゲート250(Doppler gate)を示している。
【0122】
撮像平面に対する血管の向きに関する情報は、上述のように決定されてよく、超音波ビームを正確な(パルス波)ドップラー測定のための最適な角度に操縦するために使用されてよい。しかし、撮像平面は血管を横切っているので、静的ドップラーゲーティング(static Doppler gating)は、最適な方法で機能しないことがある。
【0123】
従って、動的ドップラーゲーティング(dynamic Doppler gating)概念がアルゴリズムにおいて利用されることがある。これは多数の方法で実現されることがある。例えば、一定のゲートサイズが、カラードップラーデータ内で同定される楕円の質量中心上のゲートの動的位置決めと組み合わされて使用されてよい。
【0124】
代替的に、カラードップラーデータの楕円体形状に従う動的ゲーティングサイズが使用されてよい。これは楕円に刻まれた長方形の形状を含んでよく、長方形は、前記楕円と同じアスペクト比を有することが留意されるべきである。この場合、システムは、評価の下にある血管全体をカバーするように、パルス波モードゲート又はサンプル体積サイズを動的に選択する。
【0125】
更に例では、複数のゲート位置が、カラードップラー形状、より具体的には、質量中心、心臓周期中の動きに従うために使用されてよい。
【0126】
動的ゲーティング(位置及び/又は大きさ)の使用は、連続モニタリング中のより低い機械的指数/熱的指数(MI/TI)、患者の移動中のアーチファクトのより良い拒絶、及び波形のより正確な報告を可能にすることがある。
【0127】
図6は、血管直径を決定する例を示している。以下の例において、血管直径同定は、カラードップラー及びBモード撮像の組み合わせを用いて実行される。
【0128】
先ず、センサの視野における、血管、例えば、共通の頸動脈の能動的な流れエリア260(active flow area)が、カラードップラーデータを用いて同定される。能動的な流れエリアは、上述のように同定されてよい。ドップラーデータの色は、センサに対する流れの方向を示す。
【0129】
動脈の主方向は、上述のように撮像平面と血管軸との間で交差するカラードップラーデータの楕円形状から決定される。短軸270と呼ばれる動脈に対して垂直な主方向を用いて、1.5Dセグメント化(segmentation)が、Bモードピクセル(または3D超音波データの場合におけるボクセル)強度値に基づいて、この方向に沿って実行される。
【0130】
そのようなセグメント化を実行するために、(Chan, T.F. & Sandberg Y. B(2000)に記載されているような)Chan-Veseのような能動的な輪郭/蛇概念に基づいた適応アルゴリズム。ベクトル値付き画像についてのエッジのない能動的な輪郭。Journal of Visual Communication and Image Representation 11, 130-141 (2000); Chan, T.F., & Vese, L. A. (2001)。エッジのない能動的な輪郭。IEEE Transactions on Image Processing, 10(2), 266‐277;及びChan, T.F., & Vese, L. A. (2002).Mumford及びShahモデルを用いた画像セグメント化のための多相レベルセットフレームワーク。International Journal of Computer Vision 50(3),271-293、(2002)、及び正規化されたエネルギ勾配法が使用されてよい。後者は、所与のアプリケーションについて最適化されたカーネルを用いる、(1986年にStanford Artificial Intelligence Project (SAIL) に提示された、Sobel, I., Feldman, G.、「A 3x3 Isotropic Gradient Operator for Image Processing」及びCanny, J., A Computational Approach To Edge Detection, IEEE Trans. Pattern Analysis and Machine Intelligence, 8(6):679-698、1986にそれぞれ記載されているようなSobel及びCannny演算子の組み合わせのような)非線形ハイブリッド検出アルゴリズムのファミリーに類似している。これらの方法は、センサの撮像性能に向けて特に同調される。精度及び堅牢性(ロバストネス)を向上させるために、原理方向に関する制限された関心領域(そこからデータが得られる)が特定されてよく、同じことが局所化された2D領域上で実行されてよい。
【0131】
直接データストリーム/画像処理を使用することは、時間の経過に亘る波形測定が1つの場所に直接的に接続されないことを意味する。これはパラメータ抽出をモニタリングセンサに対する被験者の動きに対してより堅牢にする。
【0132】
このアプローチは、リアルタイムで脈動流に起因する血管直径変動の自動的トレースのために実行されてよい。結果の精度は、Bモードデータの品質に依存する。更に、この方法を複数の交差平面のために適用することは、アルゴリズムの信頼性を向上させる。
【0133】
加えて、異なる時間瞬間に亘る血管直径の変動を推定することは、動脈の伸展性(distensibility)の測定値を提供し、圧力変動のような追加的な測定値を導出するために使用されることができる。
【0134】
要約すると、上記で提示したアルゴリズムは、血管内の血液速度及び血流を表す完全な心拍間波形のリアルタイムのモニタリングに適している。上記で議論したリアルタイムのセグメント化と共に、本方法は、血管軸に対して傾斜する撮像平面を使用して血管を通じる流れに関するパラメータを導出することを提供する。1つの心臓周期のリアルタイムの直径をモニタリングすることは、血管伸展性及び関連する動脈パラメータを評価することを可能にする。
【0135】
血管の決定された直径は、例えば、血管内の流量を決定するために、導出された速度データと組み合わされてよい。換言すれば、時間の経過に亘って血管を通過する血液量の測定値をもたらすために、血管直径及び血液速度が組み合わされてよい。更に、この例では流速であってよい、流れに関するパラメータは、血管断面に亘る流れの分布を同定するために、血管直径と組み合わされてよい。
【0136】
上記で議論したように、超音波データは、センサを介して取得される。既述のように、超音波データを収集するために使用されてよいセンサの多数の実装がある。例えば、センサは、1つの線形トランスデューサアレイ、1つのアレイの撮像平面が他のものに直交するように配置された2つの線形トランスデューサアレイ、または2Dアレイを含んでよい。
【0137】
更に、ユーザは、センサの配置に関して誘導されてよい。ユーザに提供されるガイダンスは、間接的な方法で提供されてよい。換言すれば、システムは、超音波データを分析し、センサとは別のガイダンス手段によってガイダンス信号を生成してよい。例えば、視覚ガイダンス信号が生成される場合、ユーザがセンサを動かすべき方向を示す矢印がスクリーンに表示されてよい。
【0138】
代替的に、ユーザにガイダンスを提供する手段は、センサ自体に含められてよい。例えば、センサは、ユーザを誘導するために、可聴命令、視覚命令、電子制御信号、及び触覚命令のうちの1つ以上を生成するように構成されてよい。
【0139】
図7は、超音波パッチの形態であってよい、単一の線形トランスデューサアレイを含むセンサの誘導された配置の例示的なワークフロー500を示している。
【0140】
最初に、超音波データが、超音波パッチを使用して複数の撮像平面から取得される。図7に示す例では、第1の撮像平面510が、3つの円によって示される3つの血管を含み、第2の撮像平面520が、2つの円によって示される2つの血管を含む。
【0141】
次に、血管同定530が、撮像平面上で実行される。血管同定は、上述のように実行されてよい。図7に示す例において、関心の血管は、黒丸によって示す頸動脈であり、この場合には頸静脈である残りの血管は、無視される。カラードップラーデータ及び/又は拍動性データを通じて、第1の撮像平面内の2つの動脈及び第2の撮像平面内の1つの動脈が共通の血管の一部を形成していることが決定されよい。換言すれば、血管分岐が第1の撮像平面と第2の撮像平面との間に存在すると決定されてよい。
【0142】
次に、掃引540が、センサを血管に沿って移動させることによって実行されてよく、それによって、血管及び分岐をより詳細にマッピングしてよい。
【0143】
次に、超音波パッチは、インジケータによって提供されるガイダンスを用いてユーザによって適用される。既述のように、インジケータは、遠隔モニタに表示される代わりに或いは遠隔モニタに表示されることに加えて、パッチに提供されてよい。ガイダンスは、二重超音波データ、すなわち、Bモードデータとカラードップラーデータとの組み合わせに基づいてよい。二重データを用いるならば、ワークフローステップは、1つだけの関心の血管断面が、平面550内のような撮像平面内に存在するように、パッチが分岐よりも十分に下に配置されることも確実にする。例えば、パッチは、分岐の2cm下に配置されてよい。これは流れパラメータを推定するときに、分岐付近の乱流の影響が最小限に抑えられることを保証する。
【0144】
次に、関心の血管は、平面560に示されるような撮像平面内で中心化される。従来的な撮像ワークフローにおいて、パッチは、血管の断面よりもむしろ長さに沿う眺望(ビュー)が利用可能であるように回転される。長さビューは、完全ビュー570または部分ビュー580であってよく、それは、次に、配置ガイダンスを通じて或いは画像補正を通じて補正されてよい。代替的に、部分ビュー580は、意図される目的のために十分であることがあり、それはこのビューが線形アレイの最終位置として作用する場合があることを意味する。
【0145】
しかしながら、上述の方法によれば、撮像平面は、血管軸と一致して回転される必要はない。むしろ、撮像平面は、血管からの流れに関するパラメータを導出するために、血管軸に対して10~50度の間の角度で維持されてよい。換言すれば、ユーザは、センサをそのような位置に配置するように誘導されてよい。このようにして、センサの配置は単純化され、モニタリングは、被験者の動きに起因する中断に対してより堅牢にされる。
【0146】
視覚フィードバックの場合、センサは、1つ以上のLEDを備えてよく、1つ以上のLEDは、センサがどのように動かされるべきかについての視覚信号をユーザに提供してよい。可聴命令の場合、ユーザに可聴命令を供給するために、1つ以上のスピーカが設けられてよい。触覚フィードバックが使用される場合、パッチは、1つ以上の振動モジュールを備えてよく、1つ以上の振動モジュールは、ユーザによって解釈されることがある触覚命令を提供するようにアクティブ化(非アクティブ化)される。電子命令信号の例において、フィードバックは、モニタのような遠隔デジタル手段に提供されてよく、次に、遠隔デジタル手段は、適切な形態の命令をユーザに提供する。
【0147】
図8は、センサ上に配置されたT形状アレイ及び視覚インジケータを用いた誘導されたセンサ配置の例のグラフ表現600を示している。
【0148】
センサ610は、関心の血管620に近接近して配置されて示されている。センサは、第1のトランスデューサアレイ630と、第1のトランスデューサアレイに直交して配置された第2のトランスデューサアレイ640とを含み、第1のトランスデューサアレイは、この場合には、血管の断面ビューを生成する。センサパッチは、更にトランスデューサアレイを含んでもよい。
【0149】
更に、センサは、並進視覚インジケータ650と、回転視覚インジケータ660とを含む。動作中、並進視覚インジケータは、パッチを指示される方向に移動させるためのガイダンス信号をユーザに提供するように照明されてよい。同様に、回転視覚インジケータは、パッチを指示される方向に回転させるためのガイダンス信号をユーザに提供するように照明されてよい。
【0150】
図8に示す例において、センサは、第1のトランスデューサアレイが関心の血管の不完全なビュー670を含む撮像平面を取り込むように配置される。センサは、適切なユーザ入力、例えば、センサパッチ上に配置されたボタンによって初期化されてよい。
【0151】
関心の血管の完全な断面ビューを確保するために、第1のトランスデューサアレイのみが先ずアクティブ化されてよい。代替的に、第1のトランスデューサアレイ及び第2のトランスデューサアレイの両方が同時にアクティブ化されてよい。
【0152】
この場合、超音波センサパッチは、接続された超音波システムのプロセッサにストリーミングされることがある二重(Bモード及びカラードップラー)データを取り込む。
【0153】
上述のようなセグメント化アルゴリズムは、(例えば、血管の円形外観を検索することによって)カラードップラーデータ上の撮像平面内の血管を検出するために利用される。血管が2つのセグメント化された領域として現れるならば、パッチは分岐より上方にある。図8に示す例における目標は、パッチを単一の血管である共通の頸動脈上の分岐より下に配置することである。インジケータは、共通の頸動脈が検出されるならば、このステップの成功裏の完了を知らせる。上記で議論したように、セグメント化は、カラー及び/又はBモードデータ上にあることができる。
【0154】
この場合、血管の初期ビューは不完全である。従って、並進視覚インジケータが、センサパッチ上でアクティブ化されてよく、それによって、パッチを血管680の完全なビューに移動させるために使用される。
【0155】
セグメント化領域690が、静脈またはノイズアーチファクトではなく、実際に動脈のような所望の血管であることを保証するために、センサは、拍動性データを取り込んでもよい。拍動性の流れは、信号が所望の血管からのものであることを確認するために使用されてよい。
【0156】
所望の血管の完全な断面が取り込まれるとき、制御スイッチが第2のトランスデューサアレイ640をアクティブ化させて、二重超音波データを血管の長さに沿ってストリーミングさせることを開始してよい。
【0157】
アルゴリズムは、撮像平面全体に架かる流れの円筒形の外観を探す。セグメント化された血管が撮像平面の側面に架からないならば、血管700の長さに沿うセンサパッチの角度の不整列がある場合がある。適切な回転視覚インジケータを使用してユーザを誘導して、パッチを回転させ、超音波データにおける血管の円筒形の外観を最大化してよい。データはユーザに見える必要はないが、アルゴリズムによってシステム内で実行されてよいことが留意されるべきである。所望のビュー710がひとたび達成されると、インジケータは、正しい角度整列の達成を知らせてよい。所望のビュー710は、所与の用途に従って変化してよい。例えば、完全な円柱というよりもむしろ長い楕円をもたらす血管のビューが十分なことがある。従って、所望のビューは、ある範囲の血管のビューを含んでよい。
【0158】
第1のトランスデューサアレイの断面図に戻ると、アルゴリズムは、血管が依然としてビューの中心にあるかどうかを確認してよい。肯定的な確認は、第2のトランスデューサアレイの素子が血管の中心軸と整列させられていることを示す。さもなければ、アルゴリズムは、適切なインジケータを用いてユーザに命令して、センサパッチを移動させて、それを達成してよい。次に、ユーザは、ボタンをアクティブ化させて、パッチ配置の完了を知らせてよく、上述の様々な撮像方法が進行してよい。
【0159】
再び、上述の方法によれば、撮像平面は、血管軸と平行に整列させられる必要はない。むしろ、撮像平面は、血管からの流れに関するパラメータを導出するために、血管軸に対して10~50度の間の角度に維持されてよい。換言すれば、ユーザは、センサをそのような位置に配置するように誘導されてよい。このようにして、センサの配置は単純化され、モニタリングは、被験者の動きに起因する中断に対してより堅牢にされる。
【0160】
超音波センサパッチは、被験者に一時的に固定されることがある着用可能なパッチであってよく、それによって、パッチが作動している間に被験者が自由に動くことを可能にしてよい。
【0161】
別の例において、パッチは、3D超音波撮像を行うことができるトランスデューサ素子の2Dアレイを含んでよい。この場合、x平面は、上述の第1のトランスデューサアレイと類似の方法で血管整列を助けるために使用されることができる。完全な2Dアレイを使用するよりもむしろ、x平面が提案される。何故ならば、これはパッチを整列させるために必要とされるチャネルの数を減少させ、それは電力消費及びデータ速度を減少させ、且つ/或いはより高いフレームレートを可能にするからである。この場合、パッチは、パッチの反復的な移動または調整を必要とせずに、関心の領域上に単に配置されてよい。アレイの全ての素子は、血管軸と最良に整列する素子のサブセットを見出すようにアクティブ化されてよい。そのような例では、パッチ配置のために必要とされるトレーニングまたは専門知識はない(或いは最小限である)。
【0162】
更に例において、図8に記載するセンサパッチの線形トランスデューサアレイは、1.5Dトランスデューサ素子と置き換えられてよく、それは撮像平面の視野を増加させ、血管を探索するために且つ/或いはセンサパッチを血管に整列させるために必要とされる反復を最小限に抑えることがある。
【0163】
当業者は、特許請求される発明を実施する際に、図面、本開示及び添付の請求の範囲の研究から、開示の実施形態に対する変更を理解し、実施することができる。請求項において、「含む」という語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形の表現は、複数を除外しない。単一のプロセッサまたは他のユニットが、請求項に列挙される幾つかの品目の機能を満たすことがある。特定の手段が相互に異なる従属項に引用されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に利用し得ないことを示さない。コンピュータプログラムが上記で議論されるならば、それは他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体に格納/分散されてよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介してのような他の形態で分散されてよい。「~のように構成される(adapted to)」という用語が特許請求項の範囲又は本明細書において使用されるならば、「ように構成される」という用語は、「~のように構成される(configured to)」と均等であることが意図されていることに留意のこと。請求項中の如何なる引用符号も、その範囲を限定するものと解釈されてならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0164】
【文献】米国特許出願公開第2012/0078106号明細書
【文献】米国特許第6,663,568号明細書
【文献】米国特許第5,997,479号明細書
【文献】米国特許第6,013,032号明細書
【文献】米国特許第6,623,432号明細書
【文献】米国特許第6,283,919号明細書
【文献】米国特許第6,458,083号明細書
【文献】米国特許第6,443,896号明細書
【文献】米国特許第6,530,885号明細書
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8