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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】車両用バッテリ装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20240514BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20240514BHJP
   H02H 3/05 20060101ALI20240514BHJP
   B60L 58/21 20190101ALI20240514BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H02J7/34 G
H02J7/34 B
H02H3/00 M
H02H3/05 A
B60L58/21
H01M10/42 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021560970
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 AT2020060208
(87)【国際公開番号】W WO2020237270
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】102019113917.1
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521104458
【氏名又は名称】エイヴィエル リスト ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AVL List GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans-List-Platz 1, 8020 Graz, AUSTRIA
(73)【特許権者】
【識別番号】506064142
【氏名又は名称】ダイムラー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポリック, アレス
(72)【発明者】
【氏名】ルッテンベルガー, ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ライター, ミカエル ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】バイヒトブフナー, アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】下永田 武
(72)【発明者】
【氏名】メノン, ヴィクラム
(72)【発明者】
【氏名】ウール, マルクス
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0120770(US,A1)
【文献】特開2015-217837(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038100(WO,A1)
【文献】特開2017-118699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0303189(US,A1)
【文献】特開2014-147197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02H 3/00
B60L 58/21
H01M 10/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のバッテリ装置(10)であって、少なくとも2つのバッテリユニット(BS)を有するメインバッテリシステム(20)と、少なくとも1つのバッテリユニット(BS)を有する非常用バッテリシステム(30)とを備え、前記メインバッテリシステム(20)が前記非常用バッテリシステム(30)よりも多くのバッテリユニット(BS)を有し、さらに、前記メインバッテリシステム(20)と前記非常用バッテリシステム(30)とが同じ公称電圧を有し、かつ、互いに電気的に並列に接続され、前記メインバッテリシステム(20)が、前記メインバッテリシステム(20)を切り離すためのメインスイッチ(22)を有し、前記非常用バッテリシステム(30)が、前記メインスイッチ(22)とは別個の、前記非常用バッテリシステム(30)を切り離すための非常スイッチ(32)を有する、バッテリ装置。
【請求項2】
前記非常用バッテリシステム(30)が、正確に1つのバッテリユニット(BS)を有することを特徴とする、請求項1に記載のバッテリ装置(10)。
【請求項3】
前記メインバッテリシステム(20)の前記バッテリユニット(BS)と前記非常用バッテリシステム(30)の前記バッテリユニット(BS)とが電気的に同じ、又は、実質的に同じであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のバッテリ装置(10)。
【請求項4】
前記メインバッテリシステム(20)と前記非常用バッテリシステム(30)とが、共通のバッテリハウジング(40)内に配置されることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のバッテリ装置(10)。
【請求項5】
前記非常スイッチ(32)が、以下のパラメータ
- 電気的負荷限界
- コスト
- 重量
- 電気的保護
のうちの少なくとも1つに関して前記メインスイッチ(22)よりも小さく形成されていることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のバッテリ装置(10)。
【請求項6】
前記非常用バッテリシステム(30)が、前記非常用バッテリシステム(30)と前記メインバッテリシステム(20)との共通の制御モジュール(50)に隣接して、又は、実質的に隣接して、特に、前記メインバッテリシステム(20)よりも近くに配置されていることを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のバッテリ装置(10)。
【請求項7】
前記メインバッテリシステム(20)と前記非常用バッテリシステム(30)とが、電力消費機器に並列に接続するための共通のコンタクト部(60)を有することを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のバッテリ装置(10)。
【請求項8】
前記メインバッテリシステム(20)と前記非常用バッテリシステム(30)とのために共通の制御モジュール(50)が設けられ、前記メインバッテリシステム(20)と前記非常用バッテリシステム(30)とのために、特に、少なくとも1つの共通の追加の制御モジュール(52)が設けられることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のバッテリ装置(10)。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項の特徴を有するバッテリ装置(10)を制御する方法であって、
- バッテリユニット(BS)の欠陥を認識する工程、
- 前記メインバッテリシステム(20)又は前記非常用バッテリシステム(30)への前記欠陥のあるバッテリユニット(BS)の対応付けを認識する工程、
- 前記欠陥のあるバッテリユニット(BS)の前記対応付けにもとづいて、前記メインバッテリシステム(20)又は前記非常用バッテリシステム(30)を切り離す工程、
を包含する、方法。
【請求項10】
前記欠陥のあるバッテリユニット(BS)が前記メインバッテリシステム(20)に対応付けられる場合、前記非常用バッテリシステム(30)の電力出力が制限されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記バッテリ装置(10)の通常の動作中に、前記メインバッテリシステム(20)と前記非常用バッテリシステム(30)とを少なくとも一時的に一緒に動作させることを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のバッテリ装置及びこの種のバッテリ装置を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、特に車両の駆動を保証又は支援できるようにするために、バッテリ装置が装備されることが知られている。この種の車両は、電気自動車又はハイブリッド車としても知られている。本発明は、特に、バッテリ装置が駆動エネルギーの唯一の蓄積可能性である、純粋に電気的に駆動される車両に関する。
【0003】
既知のバッテリ装置では、バッテリ装置内に欠陥が生じた場合に根本的な欠点がある。既知のバッテリ装置は通常、複数の個別バッテリユニットで構成されている。これらのバッテリユニットの各々は、通常、階層化された個々のバッテリモジュールを有している。これらのバッテリモジュールには、それぞれ、バッテリ装置の最小のエネルギー蓄積ユニットである所定数のバッテリセルが装備されている。しかしながら、バッテリユニット内、したがってバッテリ装置内の相互接続にもとづいて、個々のバッテリセル及び/又は個々のバッテリモジュールの欠陥が、バッテリ装置全体の完全な欠陥につながる。それに伴い、バッテリ装置全体の電気的欠陥につながり得る欠陥の可能性が多くある。したがって、電気モーターによる移動を提供できるようにするために、バッテリ装置内の電気エネルギーのみに依存する電気自動車には欠陥リスクが多くある。バッテリセルの欠陥は、バッテリ装置、特に、機械的な作用によるのと全く同じくらい個々のバッテリセルの経年劣化プロセスによっても引き起こされる可能性がある。既知の車両では、このことが欠陥のあるただ1つのバッテリセルが車両を停止させ、したがって、欠陥のあるバッテリ装置を発生させることにつながる。この種の欠陥が発生した場合、例えばレッカー車などの救援手段によって車両を牽引せざるを得ない。この種の欠陥が発生した場合、車両の移動は車載の駆動装置によって行うことができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記の欠点を少なくとも部分的に解消することである。特に、本発明の課題は、バッテリセルに欠陥があったとしても、より安価で簡単に車両の機動力を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、請求項1の特徴を有するバッテリ装置及び請求項9の特徴を有する方法によって達成される。本発明の他の特徴及び詳細は、従属請求項、以下の記載及び図面から明らかになる。その場合、本発明によるバッテリ装置に関連して説明される特徴及び詳細は、当然、本発明による方法との関連でも適用され、その逆も同様であるため、本発明の個々の態様の開示に関して常に相互に参照され得る。
【0006】
本発明による車両用のバッテリ装置は、少なくとも2つのバッテリユニットを有するメインバッテリシステムと、少なくとも1つのバッテリユニットを有する非常用バッテリシステムと、を備える。メインバッテリシステムは、いずれの場合も、非常用バッテリシステムよりも多くのバッテリユニットを有する。さらに、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとは、互いに電気的に並列に接続され、同じ公称電圧を有している。すなわち、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとが共同で電気回路の一部を形成する。さらに、メインバッテリシステムには、特に上記の電気回路からバッテリシステムを切り離すためのメインスイッチが装備されている。非常用バッテリシステムには、この電気回路から非常用バッテリシステムを切り離すための、メインスイッチとは別個の非常スイッチが装備されている。
【0007】
メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとが同じ公称電圧を有することによって、これらを直接、互いに電気的に並列に接続することができる。その場合、個々のバッテリユニットは、自立型の製造モジュールであり得、その数は、使用目的に応じて変えられる。例えば、バッテリユニットを乗用車用バッテリによって形成することができる。それによって貨物自動車での使用が望まれる場合は、複数のこの種の乗用車用バッテリを並列に接続することによって、簡単に、必要なより大きい容量を実現できる。
【0008】
すなわち、本発明によれば、2つのバッテリシステム、すなわち、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとの並列接続が、共通の電気回路に設けられている。これらの2つの部分、すなわち、非常用バッテリシステムとメインバッテリシステムとのそれぞれにスイッチングデバイスとして独自のスイッチが装備され、これは、メインバッテリシステムの場合はメインスイッチであり、非常用バッテリシステムの場合は非常スイッチである。以下に詳しく説明するように、このことは異なる使用事例に別々のスイッチング機能をもたらす。
【0009】
既知の車両と比較して、本発明によって相応のバッテリ装置を装備した車両でもバッテリ装置に欠陥が発生する可能性がある。この欠陥は、例えば、個々のバッテリセルの欠陥及び/又は個々のバッテリモジュールの欠陥にもとづき得る。そのような欠陥が発生した場合、対応するバッテリシステム内、すなわち、メインバッテリシステム又は非常用バッテリシステム内のすべてのバッテリユニットが、電力の出力のために利用することができなくなるだろう。この場合、2つの基本的な欠陥発生例を区別することができる。
【0010】
第1の欠陥発生例では、欠陥が非常用バッテリシステム内にある。すなわち、これは、バッテリセル又はバッテリモジュールの欠陥が非常用バッテリシステムの少なくとも1つのバッテリユニット内で発生し、それによって、非常用バッテリシステムが電力を出力できなくなることを意味する。この種の欠陥を認識し、非常用バッテリシステムにおける位置が特定された後、非常スイッチを用いて非常用バッテリシステムを電気回路から切り離すことができる。換言すれば、車両に電力を供給するためにメインバッテリシステムが利用可能になる。ただし、メインバッテリシステムが非常用バッテリシステムよりも大きく形成されていることによって、車両を修理工場や自宅に移動させるのにまだ十分な電力がある可能性が高い。すなわち、非常用バッテリシステムに欠陥が発生した場合に車両の機動力が保証される。
【0011】
第2の欠陥発生例として、欠陥はメインバッテリシステム内にも存在し得る。すなわち、これは、メインバッテリシステム内のバッテリセル又はバッテリモジュールに欠陥があり、それによって、メインバッテリシステムが車両を動かすための相応の電力を車両に出力できなくなることを意味する。このような場合、欠陥を認識し、メインバッテリシステムにおける位置が特定された後、メインスイッチがメインバッテリシステムを電気回路から切り離す。
【0012】
こうすることで、車両はメインバッテリシステムと結合されなくなったが、既知の解決策と比較して、非常用バッテリシステムが依然として電気回路において機能を果たせる状態で、少なくとも低い電力出力で車両に電気エネルギーを提供するために利用可能である。非常用バッテリシステムは、メインバッテリシステムよりも小さく形成されてはいるが、いわゆる「リンプホーム」機能、すなわち車両を修理工場へ、自宅へ、又は、その他の安全な状況に移動させるための残り機動力を提供するのに、非常用バッテリシステムの利用可能なエネルギーで十分である。
【0013】
メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとのどちらかに欠陥状況がある上記の説明では、どちらの場合も残り機動力が利用可能にされることがわかる。この残りの機動力は、どちらの欠陥状況においても車両の帰宅、及び/又は、安全な位置への移動を可能にするのに十分である。これは「リンプホーム」機能とも呼ばれる。
【0014】
本発明によれば、非常用バッテリシステムは、メインバッテリシステムよりも小さく形成されている。このことは、車両の基本的な機動力確保の機能に加えて決定的な利点を伴う。このことは、特に別個の非常スイッチに見て取れるが、それは、非常用バッテリシステムがメインバッテリよりも相応に小さく設計されている場合に、非常スイッチの電気的設計、その重量、その価格だけでなく、幾何学的サイズに関しても小さく設計できるからである。したがって、本発明の核となる思想は、まさに、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとの非対称の形態であることに留意されたい。メインバッテリシステムを単に倍増する解決策とは対照的に、本発明による非対称の形態は、非常用バッテリシステムが「リンプホーム」機能をより安価に提供できることをもたらす。この比較的安価な形態は、特に非対称の形態にもとづくが、それは、非常用バッテリシステムのサイズがより小さく、性能がより低いことが、非常スイッチのより低い性能、したがって、より低いコスト、及び、より小さいサイズと、それに対応する電気回路への結合と、をも伴うからである。
【0015】
本発明によるバッテリ装置では、非常用バッテリシステムが、正確に1つのバッテリユニットを有する場合に利点をもたらすことができる。すなわちこの形態では、非常用バッテリシステムが最小限のサイズに設定される。したがって、非常用バッテリシステムが最小限の残り機動力しか許容しないので、この正確に1つのバッテリユニットは、殊に、例えば、車両の走行距離を考慮して、対応する残り機動力に合わせて設計されることが好ましい。例えば、非常用バッテリシステムの正確に1つのバッテリユニットを、所定の前提条件下で、このバッテリユニットが、例えば、車両の50kmの移動半径の残り機動力を提供するように設計することができる。例えば、50kmの形のこの残り機動力を不利な状況下でも高い蓋然性で達成できるようにするために、この残り機動力を加速能力の低下及び最高速度の低下などの、車両の機動力の他の切り口と相関させることもできる。このようにして、非常スイッチの形態の縮小を、さらに改善することも可能である。非常用バッテリシステムは、正確に1つのバッテリユニットを有するものも複数のバッテリユニットを有するものも、電圧が、殊に、メインバッテリシステムのバッテリユニットの電圧に対応する。
【0016】
本発明によるバッテリ装置では、メインバッテリシステムのバッテリユニットと非常用バッテリシステムのバッテリユニットとが電気的に同一であるか、又は、実質的に電気的に同一である場合、利点をさらに得ることができる。換言すれば、バッテリ装置全体のモジュール構造を提供することができる。個々のバッテリモジュールのそれぞれに、決まった、特に同じ数の同じバッテリセルが装備される。各バッテリユニットには同じ数の同じバッテリモジュールが装備される。したがって、任意の数のバッテリユニットをメインバッテリシステムに、そしてそれに対応する数の、又は、正確に1つの同じ形態のバッテリユニットを非常用バッテリシステムに設けることができる。特に、個々のバッテリシステムの公称電圧が自動的に同様に同じになるため、これは大きな利点をもたらす。このようにすることで、インバータ機能又は整流器機能の適合及び提供の必要がなくなる。
【0017】
さらに、本発明によるバッテリ装置において、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとが、共通のバッテリハウジング内に配置されている場合に有利である。これは、特に2つのスイッチ、すなわち非常スイッチとメインスイッチとの配置にも当てはまる。したがって、外側からはバッテリ装置をコンパクトな構造ユニットとして認識できる。そのような共通のバッテリハウジング内にバッテリ装置を安価かつ簡単に予め組み付けることができ、それによって、車両への最終的な組付けのために共通のバッテリハウジングの形の単一の構造ユニットが利用可能である。特に、すべてのスイッチング機能と全部の制御インテリジェンスとも、この共通のバッテリハウジング内に配置される。
【0018】
本発明によるバッテリ装置において、非常スイッチが、以下のパラメータのうちの少なくとも1つに関して、メインスイッチよりも小さく形成されている場合に別の利点を達成することができる。
- 電気的負荷限界
- コスト
- 重量
- 電気的保護
【0019】
上記の列挙は最終的なリストではない。ここで、非常スイッチのコスト及び重量、及び、必要な全部の手間のために必要とされる上記のパラメータの少なくとも1つ、特に複数が、バッテリ装置の縮小、したがって、最適化を達成できることがよくわかる。非常用バッテリシステムが、メインバッテリシステムよりも相応に小さく形成されることによって、非常スイッチも相応に小さく形成することができる。このことによって、本発明による核となる思想が、非常用バッテリシステムとメインバッテリシステムとの非対称の構成という点でメインバッテリシステムの純粋な倍増とは明確に区別される。
【0020】
本発明によるバッテリ装置において、非常用バッテリシステムが、非常用バッテリシステムとメインバッテリシステムとの共通の制御モジュールに隣接して、又は、実質的に隣接して、特に、メインバッテリシステムよりも近くに配置されている場合にも有利である。換言すれば、非常用バッテリシステムと制御モジュールとの間に比較的短い電線及び比較的短い制御線を設けることができる。非常用バッテリシステムからの電力出力が相応に少なくて済むため、この場合も配線断面の縮小が可能である。これらの縮小された配線断面は、さらに、本発明によるバッテリ装置の重量を少なくし、コストを下げる。
【0021】
さらに、本発明によるバッテリ装置において、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとが、電力消費機器に並列に接続するための共通のコンタクト部を有する場合に有利である。すでに説明したように、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとは、通常の使用時に電気回路内で互いに並列に接続されている。共通のコンタクト部は、車両内の電力消費機器のための電気接続状況がすでにあったとしても、対応する本発明によるバッテリ装置を使用することを可能にする。特に、この共通のコンタクト部は、共通のバッテリハウジングの一部として形成され、及び/又は、そのような共通のバッテリハウジングに統合されている。この共通のコンタクト部は、殊に、共通のプラグとして形成され、例えば、非常スイッチ及びメインスイッチの電気的に下流に配置することができる。
【0022】
本発明によるバッテリ装置において、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとのために共通の制御モジュールが設けられ、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとのために、特に、少なくとも1つの共通の追加の制御モジュールが設けられる場合に、さらなる利点がもたらされる。換言すれば、この場合、制御モジュール又は追加の制御モジュールに欠陥が生じた場合でも、バッテリ装置の制御を維持できるようにするための冗長な実施形態が提供される。制御モジュール及び/又は追加の制御モジュールを用いた制御は、充電、放電、さらに、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとのバランスを取ることも可能にする。
【0023】
以下の工程を含む、本発明によるバッテリ装置を制御する方法も、本発明の主題である。
- バッテリユニットの欠陥を認識する工程、
- メインバッテリシステム又は非常用バッテリシステムへの欠陥のあるバッテリユニットの対応付けを認識する工程、
- 欠陥のあるバッテリユニットの対応付けにもとづいて、メインバッテリシステム又は非常用バッテリシステムを切り離す工程。
【0024】
すなわち、本発明によれば、欠陥は、バッテリユニットで認識できるだけでなく、メインバッテリシステム又は非常用バッテリシステムに対応付けることもできる。欠陥が位置特定され、対応付けられたバッテリ装置の部分が、最後の工程で、本発明による方式で電気回路から切り離される。したがって、本発明による方法は、本発明によるバッテリ装置に関して詳細に説明されたのと同じ利点をもたらす。
【0025】
さらに、本発明による方法において、欠陥のあるバッテリユニットがメインバッテリシステムに対応付けられる場合、非常用バッテリシステムの電力出力が制限される場合に有利である。したがって、非常用バッテリシステムがそのサイズの縮小によって電力出力の低減を保証できる場合にも、最小機動力、例えば、最小到達距離を達成することが可能である。例えば、速度、加速度、冷却コスト、又は、優先されない電力消費機器の削減を縮小の基礎として用いることが考えられる。これは、車両の「リンプホーム」機能の発明による機能をさらに保護する。
【0026】
本発明による方法において、バッテリ装置の通常の動作中に、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとを少なくとも一時的に一緒に動作させる場合も有利であり得る。これは、通常の動作状態で、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとが共同で電力出力を提供することと解されるべきである。これは、バッテリ装置を充電する場合にも当てはまり、メインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとは、少なくとも一時的に一緒に充電される。しかしながら、好ましくは、非常時機能の保護をもたらす実施形態を企図することができる。したがって、非常用バッテリシステムがその充電状態(State of Charge-SOC)に関して下回るべきでない共通の下限を指定することができる。走行運転中、すなわち、放電中のメインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとの共通の充電状態がこの状態に達すると直ちに、非常用バッテリシステムが非常スイッチによって切り離され、メインバッテリシステムのみが電力の出力のために保証される。これに続く充電サイクルでは、まず、メインバッテリシステムだけがこの定義された下限まで充電され、それによってメインバッテリシステムと非常用バッテリシステムとが同じか、又は、実質的に同じ充電状態に達して初めて、非常用バッテリシステムが非常スイッチによってオンにされ、共同の充電プロセスが続行される。2つのバッテリシステムの充電状態及び放電状態に関して、少なくとも一時的に一緒に行われることによって、2つのバッテリシステムの利用と経年劣化とが一緒に提供され得る。
【0027】
本発明の他の利点、特徴及び詳細は、本発明の実施例が図面を参照して詳細に説明される以下の記載から明らかになる。その場合、請求項及び以下の記載で言及される特徴は、それぞれ単独で、又は任意の組合せで発明に必須であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明によるバッテリユニットの実施形態の模式図である。
図2図2は、2つの隣り合うバッテリユニットの実施形態の模式図である。
図3図3は、本発明によるバッテリ装置の模式図である。
図4図4は、本発明によるバッテリ装置の別の模式図である。
図5図5は、放電中の状況の模式図である。
図6図6は、放電が進んだ状況の模式図である。
図7図7は、充電時の状況の模式図である。
図8図8は、バッテリ装置の充電が進んだ状況の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1図2とは、バッテリユニットBSの基本的に可能な構造を模式的に示す。これは、図1による単一のバッテリユニットBSであり得る。ここでは、バッテリユニットBSを形成するために、複数のバッテリモジュールBMが並べて配置されている。個々のバッテリモジュールBMの各々は、電気的に相互接続された複数のバッテリセルBZで形成されている。図2には、図1の実施形態の倍増であるバッテリユニットBSが示されている。ここでは、直列接続でバッテリセルBZとバッテリモジュールBMの数を適宜増やす方法が示される。
【0030】
図3は、バッテリ装置10の可能な構造を模式的に示す。ここでは、メインバッテリシステム20と非常用バッテリシステム30が非対称に形成されていることがよくわかる。メインバッテリシステム20は、互いに平行に配置された5つのバッテリユニットBSからなる。非常用バッテリシステム30は、唯一のバッテリユニットBSからなる。すべてのバッテリユニットBS、すなわち、メインバッテリシステム20のバッテリユニット、及び、非常用バッテリシステム30のバッテリユニットは、好ましくは互いに同一に形成されている。この場合、基本的に、2つの欠陥発生例を区別できる。これは、一方では、非常用バッテリシステム30、すなわちこの少なくとも1つ又は正確に1つのバッテリユニットBSにおける欠陥である。結果として、制御モジュール50による欠陥の認識と位置特定が行われ、それによって、続いて非常スイッチ32によって非常用バッテリシステム30を切り離すことができる。そのような場合でもまだ、メインバッテリシステム20では車両の残りの機動力を保証するのに十分な電力容量が利用可能である。
【0031】
当然、一実施形態では、例えば、図3によれば、スイッチ22及び32の冗長設計も企図され得る。したがって、メインバッテリシステム20及び/又は非常用バッテリシステム30の各接続ラインに冗長性を作成するためのその種の第2のスイッチ22及び/又は32を設けることができよう。これらの接続ラインの1つ及び/又は複数に1つ又は複数の電気ヒューズが配置されていることも考えられる。
【0032】
しかし、メインバッテリシステム20内、すなわち、メインバッテリシステム20のバッテリユニットBSの少なくとも1つに欠陥がある場合、これも同様に制御モジュール50によって認識され、それに応じて対応付けられ得る。対応付け後、電気回路からの切離しがメインバッテリシステム20のメインスイッチ22によって実行される。しかし、既知の解決策との比較において、車両の残り機動力を保証できるようにするために、非常用バッテリシステム30において残留電力容量が依然として利用可能である。両方の欠陥発生例において、共通のコンタクト部60に相応の電力容量がある。
【0033】
図4に、本発明によるバッテリ装置10の別の実施形態が示されている。ここでは、メインバッテリシステム20及び非常用バッテリシステム30のすべてのバッテリユニットBSが、共通のバッテリハウジング40に統合されている。ここで、非常用バッテリシステム30のバッテリユニットBSが右端に、したがって制御モジュール50と、さらに冗長な追加の制御モジュール52とも直接隣接して形成されていることもよくわかる。したがって、非常用バッテリシステム30は、メインバッテリシステム20のバッテリユニットBSの場合よりも、制御モジュール及び追加の制御モジュール52の近くに配置される。
【0034】
図5図6とは、放電状況の1つの可能性を示す。図5によれば、メインバッテリシステム20及び非常用バッテリシステム30の完全に充電された状態から、一緒に放電、したがって、並列放電が行われる。特定の閾値に達すると直ちに、この閾値にもとづいて欠陥発生時に残りの機動力を確保するべく駆動電力を利用可能にするために、メインバッテリシステム20しか使用しないことが可能である。非常用バッテリシステム30は、特に非常スイッチ32によって回路から切り離され、したがって、この残留充電状態のままである。放電後、充電状況の間、図7及び図8の形態で行うことができる。したがって、図7によれば、まず、メインバッテリシステム20の充電状態が、それが非常用バッテリシステム30の充電状態に相当するか、又は、実質的に相当するまで満たされる。そうして初めて、次に、例えば、非常スイッチ32によって、非常用バッテリシステム30が再び充電プロセスに切り替えられ、それによって、図8によれば、メインバッテリシステム20と非常用バッテリシステム30との充電が一緒に進行する。
【0035】
実施形態の上記の説明は、本発明を例の範囲内で説明するにすぎない。当然、実施形態の個々の特徴は、技術的に有意義である限り、本発明の範囲から逸脱することなしに自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 バッテリ装置
20 メインバッテリシステム
22 メインスイッチ
30 非常用バッテリシステム
32 非常スイッチ
40 バッテリハウジング
50 制御モジュール
52 追加の制御モジュール
60 コンタクト部
BS バッテリユニット
BM バッテリモジュール
BZ バッテリセル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8