(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】伝達機構
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20240514BHJP
【FI】
F16H57/04 Q
F16H57/04 G
(21)【出願番号】P 2021562581
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2020043602
(87)【国際公開番号】W WO2021111922
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2019220893
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390006585
【氏名又は名称】株式会社三共製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴司
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/150881(WO,A1)
【文献】特開2005-331075(JP,A)
【文献】特開昭62-266264(JP,A)
【文献】特開2010-196733(JP,A)
【文献】中国実用新案第208764249(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容され、第1の回転部材軸線を中心として回転可能な第1の回転部材と
、
第2の回転部材軸線を中心として回転可能な第2の回転部材であって、その外面にスクリュー形状を有する第2の回転部材と、
前記ハウジングに固定され、潤滑剤を含む潤滑部材と
を備える伝達機構であって、
前記
潤滑部材は、円周の一部が欠けている形状を有し、前記第1の回転部材の周囲に配置され、前記第2の回転部材は、前記第2の回転部材の前記スクリュー形状が前記第1の回転部材の周囲に設けられた構成要素と係合することができるように、前記潤滑部材の前記円周の一部が欠けている部分に配置され、前記第1の回転部材の前記構成要素と前記第2の回転部材の前記スクリュー形状との係合によって、前記第1の回転部材及び前記第2の回転部材のうちの一方の回転が、前記第1の回転部材及び前記第2の回転部材のうちの他方の回転を可能にし、
前記第1の回転部材が前記潤滑部材に対して回転している間に、前記潤滑部材は、弾性力に基づいて前記第1の回転部材の
前記構成要素に予圧を与えて接触することによって、前記第1の回転部材の
前記構成要素を前記潤滑剤で潤滑させる、伝達機構。
【請求項2】
前記潤滑部材は、前記潤滑剤を含浸させた吸収性部材から構成されている、請求項1に記載の伝達機構。
【請求項3】
前記潤滑部材は、弾性材から構成され、前記潤滑部材自体の弾性力に基づいて前記第1の回転部材の
前記構成要素に予圧を与えている、請求項1又は2に記載の伝達機構。
【請求項4】
前記伝達機構は、弾性部材を更に備え、前記弾性部材が弾性力に基づいて前記潤滑部材を前記第1の回転部材の
前記構成要素に対して押圧することによって、前記潤滑部材は、前記第1の回転部材の
前記構成要素に予圧を与えている、請求項1又は2に記載の伝達機構。
【請求項5】
前記潤滑部材は、前記第1の回転部材の
前記構成要素に予圧を与えることによって前記潤滑部材自体を変形させて、前記潤滑剤を前記潤滑部材内で循環させる、請求項1~4の何れか一項に記載の伝達機構。
【請求項6】
前記潤滑部材は、前記第1の回転部材との接触によって前記第1の回転部材から吸熱し、前記ハウジングに伝熱する、請求項1~5の何れか一項に記載の伝達機構。
【請求項7】
前記潤滑部材は、前記第1の回転部材との接触によって前記第1の回転部材からの粉塵を吸着する、請求項1~6の何れか一項に記載の伝達機構。
【請求項8】
前記潤滑部材は、前記第1の回転部材と接触する部分からの距離に従って粒径の小さい粉塵を吸着する、請求項7に記載の伝達機構。
【請求項9】
前記潤滑部材の前記第1の回転部材と接触する部分において少なくとも1つの溝が設けられる、請求項7又は8に記載の伝達機構。
【請求項10】
前記潤滑部材は、前記ハウジングから取外可能である、請求項1~9の何れか一項に記載の伝達機構。
【請求項11】
前記
潤滑剤で潤滑された前記第1の回転部材の前記構成要素は、前記第1の回転部材及び前記第2の回転部材の接触部分を前記潤滑剤で潤滑させ
る、請求項1~10の何れか一項に記載の伝達機構。
【請求項12】
前記構成要素は、前記第1の回転部
材の回転方向に沿って
設けられた複数の軸受
であり、前記潤滑部材は、弾性力に基づいて、前記複数の軸受のうちの前記第2の回転部材に接触していない軸受に予圧を与えて接触することによって、前記接触していない軸受を前記潤滑剤で潤滑させる、請求項
1~11
の何れか一項に記載の伝達機構。
【請求項13】
前記潤滑部材は、2方向からの弾性力に基づいて、前記接触していない軸受に予圧を与えて接触することによって、前記接触していない軸受を前記潤滑剤で潤滑させる、請求項12に記載の伝達機構。
【請求項14】
前記複数の軸受を除く前記第1の回転部材の部分は、前記潤滑部材に接触しない、請求項12又は13に記載の伝達機構。
【請求項15】
前記軸受は、カムフォロア、ローラフォロア、又はボールであって、前記第2の回転部材は、前記軸受に係合する形状を有する、請求項12~14の何れか一項に記載の伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少量の潤滑剤で効率よく回転部材を潤滑させることができる伝達機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝達機構の一例としてのカム機構は、一方の軸としてのカムリブを有するカムと、他方の軸としての回転部材に固定された軸受との係合によって、カムと回転部材のうちの一方の軸を入力軸、他方の軸を出力軸として動力を伝達する機構である。入力軸と出力軸の軸間距離を操作することで軸受とカムとの間の接触面に予圧を発生させて、入出力間でのバックラッシを無くすことが出来る。軸受がカムに接触することによって、軸受とカムとの間に摩擦が生じ、軸受及びカムは摩耗する。
【0003】
特許文献1には、モータと、モータによって駆動されるギヤと、ギヤを冷却するための潤滑剤と、潤滑剤を貯留し、ギヤを潤滑剤に浸漬するための潤滑剤貯留手段とを備える回転伝達機構が開示されている。ギヤは、第1平歯車と、第2平歯車と、従動軸と、ウォームギヤ(又はローラギヤカム)と、ウォームホイール(又はローラギヤカムに係合する複数の軸受が放射状且つ等間隔に周囲に配置されたターレット)と、回転軸とから構成される。潤滑剤貯留手段には、第1平歯車、第2平歯車、ウォームギヤが完全に浸漬するように潤滑剤が貯留されている。モータから発生した熱はギヤへと伝熱され、伝熱された熱は、ギヤが浸漬する潤滑剤へと伝熱されることによってギヤは冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の回転伝達機構において、ギヤの潤滑は、潤滑剤貯留手段内に貯留されている潤滑剤によって行われている。しかし、モータによってギヤが駆動されてローラギヤカムを介してターレットが回転すると、潤滑剤は遠心力によって、ローラギヤカム及びターレットからは離れる方向に寄ってしまい、軸受とカムとの間の接触面には潤滑剤による膜が残らない状態となるという問題点がある。また、潤滑剤を潤滑剤貯留手段の中に多量に貯留すると、潤滑剤による撹拌抵抗が増加して熱が発生するという問題点がある。更に、潤滑剤貯留手段の中に潤滑剤を充填しておくことは、潤滑剤貯留手段の外に潤滑剤が漏れ出す虞があるという問題点がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解決するために、弾性力に基づいて予圧を与えることによって潤滑剤で潤滑させる伝達機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点によれば、ハウジングと、ハウジングに収容され、第1の回転部材軸線を中心として回転可能な第1の回転部材とを備える伝達機構が、ハウジングに収容され、潤滑剤を含む潤滑部材を更に備え、第1の回転部材が潤滑部材に対して回転している間に、潤滑部材が、弾性力に基づいて第1の回転部材の一部に予圧を与えて接触することによって、第1の回転部材の一部を潤滑剤で潤滑させる。
【0008】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、潤滑部材が、潤滑剤を含浸させた吸収性部材から構成されている。
【0009】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、潤滑部材が、弾性材から構成され、潤滑部材自体の弾性力に基づいて第1の回転部材の一部に予圧を与えている。
【0010】
本発明の一具体例によれば、伝達機構が、弾性部材を更に備え、弾性部材が弾性力に基づいて潤滑部材を第1の回転部材の一部に対して押圧することによって、潤滑部材が、第1の回転部材の一部に予圧を与えている。
【0011】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、潤滑部材が、第1の回転部材の一部に予圧を与えることによって潤滑部材自体を変形させて、潤滑剤を潤滑部材内で循環させる。
【0012】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、潤滑部材が、第1の回転部材との接触によって第1の回転部材から吸熱し、ハウジングに伝熱する。
【0013】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、潤滑部材が、第1の回転部材との接触によって第1の回転部材からの粉塵を吸着する。
【0014】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、潤滑部材が、第1の回転部材と接触する部分からの距離に従って粒径の小さい粉塵を吸着する。
【0015】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、潤滑部材の第1の回転部材と接触する部分において少なくとも1つの溝が設けられる。
【0016】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、潤滑部材が、ハウジングから取外可能である。
【0017】
本発明の一具体例によれば、伝達機構が、第2の回転部材軸線を中心として回転可能な第2の回転部材を更に備え、第1の回転部材と第2の回転部材との間の接触によって、第1の回転部材及び第2の回転部材のうちの一方の回転が、第1の回転部材及び第2の回転部材のうちの他方の回転を可能にし、第1の回転部材及び第2の回転部材が回転している間に、第1の回転部材及び第2の回転部材の接触部分を潤滑剤で潤滑させるために、第1の回転部材の一部が第2の回転部材と接触していない場合に、潤滑部材が、弾性力に基づいて第1の回転部材の一部に予圧を与えて接触することによって、第1の回転部材の一部を潤滑剤で潤滑させる。
【0018】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、第1の回転部材が、その回転方向に沿って複数の軸受を備え、潤滑部材が、弾性力に基づいて、複数の軸受のうちの第2の回転部材に接触していない軸受に予圧を与えて接触することによって、接触していない軸受を潤滑剤で潤滑させる。
【0019】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、潤滑部材が、2方向からの弾性力に基づいて、接触していない軸受に予圧を与えて接触することによって、接触していない軸受を潤滑剤で潤滑させる。
【0020】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、複数の軸受を除く第1の回転部材の部分が、潤滑部材に接触しない。
【0021】
本発明の一具体例によれば、伝達機構において、軸受が、カムフォロア、ローラフォロア、又はボールであって、第2の回転部材が、軸受に係合する形状を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、回転部材が潤滑部材に対して回転している間に、潤滑部材が弾性力に基づいて回転部材の一部に予圧を与えて接触することによって、少量の潤滑剤で効率よく回転部材を潤滑させることができる。
【0023】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態としての伝達機構の一部透過的に一部断面を示す斜視図である。
【
図4】
図1の伝達機構の、
図3のIV-IV線における断面図である。
【
図5】
図1の伝達機構の、
図3のV-V線における断面図である。
【
図6】
図1の伝達機構の、
図5のVI-VI線における断面図である。
【
図7】本発明の別の実施形態としての伝達機構の一部透過的に一部断面を示す斜視図である。
【
図12】本発明の伝達機構における潤滑部材の様々な形状の斜視図である。
【
図13】本発明の別の実施形態としての伝達機構の内部を示す斜視図である。
【
図14】本発明の別の実施形態としての伝達機構の内部を示す斜視図である。
【
図15】本発明の別の実施形態としての伝達機構の内部を示す斜視図である。
【
図16】本発明の別の実施形態としての伝達機構の内部を示す斜視図である。
【
図17】本発明の別の実施形態としての伝達機構の断面図である。
【
図18】本発明の別の実施形態としての伝達機構の断面図である。
【
図19】本発明の別の実施形態としての伝達機構の内部を示す斜視図である。
【
図20】本発明の別の実施形態としての伝達機構の内部を示す斜視図である。
【
図21】本発明の別の実施形態としての伝達機構の内部を示す斜視図である。
【
図22】本発明の別の実施形態としての伝達機構の内部を示す斜視図である。
【
図23】本発明の別の実施形態としての伝達機構の内部を示す斜視図である。
【
図25】本発明の別の実施形態としての伝達機構の内部を示す斜視図である。
【
図26】本発明の別の実施形態としての伝達機構の内部を示す斜視図である。
【
図28】本発明の別の実施形態としての伝達機構の内部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
図1~
図29を参照して、伝達機構101の様々な実施形態を説明する。伝達機構101は、ハウジング102と、ハウジング102に収容され、第1の回転部材軸線107を中心として回転可能な第1の回転部材103とを備える。伝達機構101は、ハウジング102に収容され、潤滑剤を含む潤滑部材104を更に備える。潤滑部材104は、ハウジング102に固定される。第1の回転部材103が潤滑部材104に対して第1の回転部材軸線107を中心として回転している間に、潤滑部材104は、弾性力に基づいて第1の回転部材103の一部に予圧を与えて接触することによって、潤滑剤を第1の回転部材103の一部に塗布し、第1の回転部材103の一部を潤滑剤で潤滑させる。
【0027】
第1の回転部材103と潤滑部材104との間の接触による摩擦に起因する発熱を抑制するために、弾性力は、潤滑部材104が第1の回転部材103に適度な予圧を与えるように調整可能であってもよい。例えば、第1の回転部材103が潤滑部材104に対して高速に回転する場合には予圧が低くなるように、第1の回転部材103が潤滑部材104に対して低速に回転する場合には予圧が高くなるように弾性力を調整してもよい。予圧を与えながら第1の回転部材103を潤滑部材104に対して回転させることによって、潤滑部材104に含まれる少量の潤滑剤で効率よく第1の回転部材103において潤滑剤による膜を確保して第1の回転部材103を潤滑させることができ、第1の回転部材103の磨耗を抑制することができる。また、潤滑剤の量を最小限に抑えることができるので、環境負荷を軽減することができ、潤滑剤の漏れのリスクを低減することができる。また、潤滑剤には洗浄作用があってもよく、潤滑剤は、第1の回転部材103に付着された磨耗による粉塵を除去することができ、第1の回転部材103を効率よく回転させることができる。更に、潤滑剤には冷却作用があってもよく、潤滑剤は、第1の回転部材103の温度を低下させることができ、第1の回転部材103を効率よく回転させることができる。
【0028】
第1の回転部材103は、動力を伝達する構成要素として軸受106を備えてもよく、軸受106が潤滑部材104に対して第1の回転部材軸線107を中心として回転している間に、潤滑部材104は、潤滑部材104を横切って通過している軸受106に、弾性力に基づいて予圧を与えて接触することによって、潤滑剤を軸受106の外面に塗布し、軸受106を潤滑剤で潤滑させる。第1の回転部材103の回転方向に沿って軸受106をより長く潤滑部材104を横切って通過させることによって、潤滑部材104は、より効率よく潤滑剤を軸受106の外面に塗布し、軸受106を潤滑剤で潤滑させることができる。潤滑部材104は、軸受106が潤滑部材104に対して第1の回転部材軸線107を中心として回転している間に軸受106を潤滑剤で潤滑させることできるものであればよく、
図1~
図6に示されるように軸受106に対して第1の回転部材軸線107の軸線方向下側にあってもよく、軸線方向上側にあってもよい。また、潤滑部材104は、
図7~
図11に示されるように軸受106に対して第1の回転部材軸線107の軸線方向下側と上側との両方にあってもよく、より効率よく潤滑剤を軸受106の外面に塗布し、軸受106を潤滑剤で潤滑させることができる。軸受106の配置によっては、潤滑部材104は、軸受106に対して第1の回転部材軸線107を中心とする第1の回転部材103の回転の径方向外側にあってもよく、径方向内側にあってもよく、また径方向外側と内側との両方にあってもよい。
【0029】
なお、第1の回転部材103は、動力を伝達することができるものであればよく、例えば歯車を備えてもよい。潤滑部材104は、潤滑部材104を横切って通過している歯車の歯部に、弾性力に基づいて予圧を与えて接触することによって、潤滑剤を歯部に塗布し、歯部を潤滑剤で潤滑させる。
【0030】
潤滑部材104に含まれる潤滑剤は、液状潤滑剤、半固体潤滑剤、固体潤滑剤、液晶潤滑剤、及びゲル状潤滑剤のうちの少なくとも1つを含んでもよい。例えば、潤滑剤は、グリス、油、等であってもよい。潤滑部材104に含まれる潤滑剤は、必要に応じて選択されることができる。潤滑部材104は、潤滑剤を含浸させた多孔質材等の吸収性部材を含んでもよい。例えば、吸収性部材は、スポンジ、フェルト、等の潤滑剤に対して高吸収性を有する部材であってもよい。
【0031】
潤滑部材104は、潤滑部材104自体が弾性材であるように構成されてもよい。潤滑部材104は、それ自体の弾性力に基づいて第1の回転部材103の一部に予圧を与えて接触することによって、潤滑剤を第1の回転部材103の一部に塗布し、第1の回転部材103の一部を潤滑剤で潤滑させる。なお、潤滑部材104は、伝達機構101の従来からのデッドスペース内に設置されることが可能である。また、伝達機構101は、弾性部材を更に備えてもよい。弾性部材は、例えばハウジング102と潤滑部材104との間に配置され、潤滑部材104は、弾性部材の弾性力に基づいて第1の回転部材103の一部に対して押圧される。潤滑部材104は、その押圧に基づいて第1の回転部材103の一部に予圧を与えて接触することによって、潤滑剤を第1の回転部材103の一部に塗布し、第1の回転部材103の一部を潤滑剤で潤滑させる。なお、弾性部材もまた、伝達機構101の従来からのデッドスペース内に設置されることが可能である。
【0032】
潤滑部材104は、第1の回転部材103の一部に予圧を与えることによってそれ自体を変形させて、潤滑剤を潤滑部材104の内部で循環させてもよい。上記のように、第1の回転部材103は、軸受106、歯部、等の動力を伝達する構成要素を備え、各構成要素が潤滑部材104を横切って通過する毎に、潤滑部材104は、弾性力に基づく予圧によって波を打つように変形することができる。この変形によって潤滑部材104にポンピング作用が生じて、潤滑剤は、潤滑部材104の内部で循環することができる。潤滑剤が循環することによって、潤滑剤は、効率よく第1の回転部材103の一部に塗布され、第1の回転部材103の一部を潤滑させることができる。
【0033】
潤滑部材104は、第1の回転部材103との接触によって第1の回転部材103から吸熱し、ハウジング102に伝熱してもよい。第1の回転部材103は、動力を伝達するための回転によって熱を発生するが、潤滑部材104は、発生された熱を第1の回転部材103との接触によって吸収し、吸収された熱をハウジング102との接触によって伝達する冷却作用を有してもよい。第1の回転部材103による熱は、潤滑部材104及びハウジング102を介して伝達機構101の外部に放散されるので、潤滑部材104は、第1の回転部材103の温度を低下させることができ、第1の回転部材103を効率よく回転させることができる。また、上記のように、潤滑剤が潤滑部材104の内部で循環することによって、潤滑部材104における第1の回転部材103に対する冷却作用を高めることができる。
【0034】
伝達機構101内において発生された熱によって、潤滑部材104内において潤滑剤を媒体として熱伝導及び対流が発生し、発生された熱は、潤滑剤を介してハウジング102から大気に放散される。潤滑部材104内において、潤滑剤の対流として、自然対流熱伝達に加えて、第1の回転部材103の第1の回転部材軸線107を中心とする回転に起因する攪拌による強制対流熱伝達が発生する。強制対流においては、媒体は、低粘度になるほど熱伝達率が高いので、低粘度である潤滑剤(例えば、流動性のある潤滑剤、液状潤滑剤)ほど、強制対流による冷却作用を有する潤滑剤として期待されることができ、媒体として好ましい。しかし、このような潤滑剤であっても、鉄鋼、非鉄、樹脂、等より熱伝導率が低いために、伝達機構101から熱を放散にしにくい場合がある。また、熱伝達率は、媒体の熱伝導率及び表面積の影響を受けるので、熱伝達率を高めるには、媒体を薄くし、媒体の表面積を広くし、熱伝導のよい媒体を選択することである。そして、少量の潤滑剤で、第1の回転部材103を効率よく潤滑させる一方で、第1の回転部材103を冷却させることが好ましいが、潤滑剤が少量で、下記のような粉塵等の汚染物が介在した場合には、潤滑剤の汚染度が高くなる傾向となって、汚染物への対策が必要であり、且つ攪拌による強制対流の冷却効果を損なわない配慮も重要である。そこで、攪拌による強制対流の冷却効果を損なわない配慮として、ハウジング102内に第1の回転部材103を冷却させるための最低限の空間を確保する潤滑部材104を採用し、冷却作用が期待されるような高熱伝導率(材質(鉄鋼、非鉄、樹脂、等)、形状、等)を有する潤滑部材104を採用し、及び/又は汚染物に対する洗浄作用を有する潤滑部材104を採用してもよい。このように、潤滑部材104に含まれる潤滑剤、その潤滑剤を含むための潤滑部材104の材質、形状、等を選択して、最適な潤滑部材104を採用することができる。また、潤滑剤を少量とすることによって、給油、廃油処理、等のメンテナンスが経済的であり、環境負荷の軽減が期待される。
【0035】
潤滑部材104は、第1の回転部材103との接触によって第1の回転部材103からの粉塵を吸着してもよい。第1の回転部材103は、動力を伝達する際の磨耗によって粉塵を発生するが、潤滑部材104は、第1の回転部材103と潤滑部材104との間の接触を介して粉塵を吸着する洗浄作用を有してもよい。第1の回転部材103による粉塵は、潤滑部材104に吸着されるので、潤滑部材104は、第1の回転部材103の磨耗を低下させることができ、第1の回転部材103を効率よく回転させることができ、更には伝達機構101のメンテナンスサイクルを長期化することができ、伝達機構101を長寿命化することができる。また、上記のように、潤滑剤が潤滑部材104の内部で循環することによって、潤滑部材104における粉塵に対する洗浄作用を高めることができる。
【0036】
潤滑部材104は、第1の回転部材103と接触する部分からの距離に従って粒径の小さい粉塵を吸着してもよい。潤滑部材104は、第1の回転部材103と接触する部分から近い部分において粒径の大きい粉塵を吸着し、第1の回転部材103と接触する部分からの遠くなるに従って、徐々に粒径の小さい粉塵を吸着するようにプレフェルトレーション機能を有してもよい。例えば、潤滑部材104は、潤滑剤を含浸させた多孔質材から構成され、多孔質材の孔のサイズが、第1の回転部材103と接触する部分から近い部分においては粗くなるようにし、第1の回転部材103と接触する部分から離れるに従って、徐々に細かくなるように構成されてもよい。
【0037】
潤滑部材104の第1の回転部材103と接触する部分において、少なくとも1つの溝が設けられてもよい。溝によって、第1の回転部材103が潤滑部材104に対して第1の回転部材軸線107を中心として回転している間に、潤滑部材104は、弾性力に基づいて第1の回転部材103の一部に与える予圧を変化させることができて、粉塵を溝に溜めることができ、溝は、潤滑部材104における粉塵に対する洗浄作用を高めることができる。
【0038】
潤滑部材104は、ハウジング102から取外可能であってもよい。潤滑部材104が第1の回転部材103と接触することによって、潤滑部材104における潤滑剤は減少するが、潤滑部材104をハウジング102から取り外して、潤滑部材104に潤滑剤を補充して再度潤滑部材104をハウジング102に収容したり、新たな潤滑部材104に交換してハウジング102に収容したりすることができる。また、潤滑部材104は、第1の回転部材103からの粉塵を吸着することによって目詰まりを生じるが、潤滑部材104をハウジング102から取り外して、潤滑部材104を洗浄して再度潤滑部材104をハウジング102に収容したり、新たな潤滑部材104に交換してハウジング102に収容したりすることができる。
【0039】
潤滑部材104は、
図12に示されるように、予圧の大きさ、予圧を与える方向、潤滑部材104が配置される空間の大きさ、潤滑部材104に使用される材料の性質、第1の回転部材103から吸収される熱の量、第1の回転部材103からの粉塵の大きさ及び/又は量、等に応じて様々な形状を有してもよい。例えば、潤滑部材104は、微小の予圧によって潤滑部材104を変形させるような場合には(a)のように断面が略コの字の形状であってもよく、予圧が大きくなるに従って、(b)のように断面が略コの字の形状に補強部分を加えた形状であってもよく、(c)のように断面が略長方形の一体型タイプであってもよい。
図1~
図11の伝達機構101に含まれる潤滑部材104は、(c)のように断面が略長方形の一体型タイプである。また、潤滑部材104は、軸線方向の変位に対する荷重変化が少なく安定し、第1の回転部材103と接触する部分に潤滑剤の溜りとなる谷を設ける場合には、(d)のようにアキシャルフロータイプであってもよいし、第1の回転部材103の回転方向の流れによって、粉塵を吸着しやすい形状にする場合には、(e)のようにデプス・プリーツタイプ(ラジアルフロータイプ)であってもよい。また、潤滑部材104は、第1の回転部材103と接触する部分から近い部分において大きい粒径の粉塵を吸着させ、第1の回転部材103と接触する部分から遠い部分において小さい粒径の粉塵を吸着させる場合には、(f)のように多層型タイプであってもよい。
【0040】
伝達機構101は、第2の回転部材軸線108を中心として回転可能な第2の回転部材105を更に備える。第1の回転部材103と第2の回転部材105との間の接触によって、第1の回転部材103及び第2の回転部材105のうちの一方の回転が、第1の回転部材103及び第2の回転部材105のうちの他方の回転を可能にする。例えば、第2の回転部材105を入力軸として回転すると、第1の回転部材103と第2の回転部材105との間の接触によって、出力軸としての第1の回転部材103が回転し、また、第1の回転部材103を入力軸として回転すると、第1の回転部材103と第2の回転部材105との間の接触によって、出力軸としての第2の回転部材105が回転する。第1の回転部材103及び第2の回転部材105が回転している間に、第1の回転部材103及び第2の回転部材105の接触部分を潤滑剤で潤滑させるために、第1の回転部材103の一部が第2の回転部材105と接触していない場合に、潤滑部材104が、弾性力に基づいて第1の回転部材103の一部に予圧を与えて接触することによって、潤滑剤を第1の回転部材103の一部に塗布し、第1の回転部材103の一部を潤滑剤で潤滑させる。
【0041】
第2の回転部材105と接触していない間に潤滑剤で潤滑された第1の回転部材103の一部が、第1の回転部材103の第1の回転部材軸線107を中心とする回転によって第2の回転部材105と接触するようになると、第1の回転部材103及び第2の回転部材105の接触部分を潤滑剤で潤滑させて、第1の回転部材103と第2の回転部材105との間の接触による磨耗を抑制することができる。
【0042】
第2の回転部材105は、動力を伝達するための回転によって熱を発生するが、発生された熱は、第1の回転部材103と第2の回転部材105との間の接触によって第2の回転部材105に伝達され、潤滑部材104は、伝達された熱を第1の回転部材103との接触によって吸収し、吸収された熱をハウジング102に伝達する冷却作用を有してもよい。第2の回転部材105による熱は、第1の回転部材103、潤滑部材104、及びハウジング102を介して伝達機構101の外部に放散されるので、潤滑部材104は、第1の回転部材103及び第2の回転部材105の温度を低下させることができ、第1の回転部材103及び第2の回転部材105を効率よく回転させることができる。また、上記のように、潤滑剤が潤滑部材104の内部で循環することによって、潤滑部材104における第1の回転部材103及び第2の回転部材105に対する冷却作用を高めることができる。
【0043】
潤滑部材104は、第1の回転部材103と第2の回転部材105との間の接触による磨耗に起因して第1の回転部材103に付着された粉塵を、第1の回転部材103との接触によって吸着する洗浄作用を有してもよい。第1の回転部材103と第2の回転部材105との間の接触による粉塵は、潤滑部材104に吸着されるので、潤滑部材104は、第1の回転部材103及び第2の回転部材105の磨耗を抑制することができ、第1の回転部材103及び第2の回転部材105を効率よく回転させることができ、更には伝達機構101のメンテナンスサイクルを長期化することができ、伝達機構101を長寿命化することができる。また、上記のように、潤滑剤が潤滑部材104の内部で循環することによって、潤滑部材104における粉塵に対する洗浄作用を高めることができる。
【0044】
第1の回転部材103は、その回転方向に沿って複数の軸受106を備え、第2の回転部材105は、複数の軸受106に係合する形状を有してもよい。なお、第1の回転部材103は、その回転方向に沿って歯部を有する歯車を備え、第2の回転部材105は、歯部に係合する形状を有してもよい。第1の回転部材103が潤滑部材104に対して第1の回転部材軸線107を中心として回転している間に、複数の軸受106のうちの一部が第2の回転部材105に接触する一方で、第2の回転部材105に接触していない軸受106が潤滑部材104を横切って通過する。なお、第2の回転部材105に接触していない軸受106の全てが潤滑部材104を横切って通過してもよいし、第2の回転部材105に接触していない軸受106の一部が潤滑部材104を横切って通過してもよい。第2の回転部材105に接触していない軸受のうちの潤滑部材104を横切って通過する軸受の数を増加させることによって、潤滑部材104は、より効率よく潤滑剤を軸受106の外面に塗布し、軸受106を潤滑剤で潤滑させることができる。
図12に示される潤滑部材104は、円周のうち一部が欠ける形状であり、欠けている部分に第2の回転部材105が設けられる。第2の回転部材105に接触していない軸受106の全てが潤滑部材104を横切って通過するので、潤滑部材104は、より効率よく潤滑剤を軸受106の外面に塗布し、軸受106を潤滑剤で潤滑させることができる。
【0045】
潤滑部材104は、弾性力に基づいて第2の回転部材105に接触していない軸受106に予圧を与えて接触することによって、潤滑剤を第2の回転部材105に接触していない軸受106に塗布し、第2の回転部材105に接触していない軸受106を潤滑剤で潤滑させる。潤滑部材104は、
図1~
図6に示されるように、1方向からの弾性力に基づいて、第2の回転部材105に接触していない軸受106に予圧を与えて接触することによって、第2の回転部材105に接触していない軸受106を潤滑剤で潤滑させてもよいし、
図7~
図11に示されるように、2方向からの弾性力に基づいて、第2の回転部材105に接触していない軸受106に予圧を与えて接触することによって、潤滑剤を第2の回転部材105に接触していない軸受106に塗布し、第2の回転部材105に接触していない軸受106を潤滑剤で潤滑させてもよい。
図7~
図11の伝達機構101において、潤滑部材104は、軸受106に対して第1の回転部材軸線107の軸線方向下側及び上側にあって、第1の回転部材軸線107の軸線方向下側及び上側の2方向からの弾性力に基づいて、第2の回転部材105に接触していない軸受106に予圧を与えて接触することによって、潤滑剤を第2の回転部材105に接触していない軸受106に塗布し、第2の回転部材105に接触していない軸受106を潤滑剤で潤滑させる。また、軸受106の配置によっては、潤滑部材104は、軸受106に対して第1の回転部材軸線107を中心とする第1の回転部材103の回転の径方向外側及び内側にあって、第1の回転部材軸線107の径方向外側及び内側の2方向からの弾性力に基づいて、第2の回転部材105に接触していない軸受106に予圧を与えて接触することによって、潤滑剤を第2の回転部材105に接触していない軸受106に塗布し、第2の回転部材105に接触していない軸受106を潤滑剤で潤滑させてもよい。軸受106を、下側及び上側、又は外側及び内側の潤滑部材104による閉ざされた空間に配置することによって、軸受106を効率よく潤滑剤で潤滑させることができる。また、下側及び上側の潤滑部材104は接続されていてもよく、外側及び内側の潤滑部材104もまた接続されていてもよい。また下側及び上側(又は外側及び内側)の潤滑部材104は、同じタイプであってもよく、
図10、
図11に示されるように、下側及び上側(又は外側及び内側)の潤滑部材104は、異なるタイプであってもよい。
【0046】
図13及び
図14に、
図12の(a)の断面が略コの字の形状の潤滑部材104を備える伝達機構101を示す。
図13の伝達機構101は軸受106の下側にのみ潤滑部材104を備え、
図14の伝達機構101は軸受106の下側及び上側に潤滑部材104を備える。
図15及び
図16に、
図12の(f)の多層型タイプの潤滑部材104を備える伝達機構101を示す。
図15の伝達機構101は軸受106の下側にのみ潤滑部材104を備え、
図16の伝達機構101は軸受106の下側及び上側に潤滑部材104を備える。潤滑部材104は、軸受106から近い部分において大きい粒径の粉塵を吸着させる第1の層104a、軸受106から中間の部分において中間の粒径の粉塵を吸着させる第2の層104b、及び軸受106から遠い部分において小さい粒径の粉塵を吸着させる第3の層104cを有する多層型タイプである。
図17に、
図12の(c)の略長方形の一体型タイプの潤滑部材104、及び
図12の(f)の多層型タイプの潤滑部材104を備える伝達機構101を示す。潤滑部材104は、
図12の(a)のような断面が略コの字の形状の、大きい粒径の粉塵を吸着させる第1の層104aの略コの字の間隙に、中間の粒径の粉塵を吸着させる第2の層104b、及び小さい粒径の粉塵を吸着させる第3の層104cを配置したものである。なお、
図17の伝達機構101は、上側に一体型タイプの潤滑部材104、及び下側に多層型タイプの潤滑部材104を備えるが、上側に多層型タイプの潤滑部材104、及び下側に一体型タイプの潤滑部材104を備えてもよい。
図18に、多層型タイプの潤滑部材104を備える伝達機構101を示す。潤滑部材104は、大きい粒径の粉塵を吸着させる第1の層104a、中間の粒径の粉塵を吸着させる第2の層104b、及び小さい粒径の粉塵を吸着させる第3の層104cを積層したものである。なお、第1の層104a、第2の層104b、及び第3の層104cの全てが粉塵を吸着させる層でなくてもよく、例えば、第1の層104aが潤滑剤を含む層であり、第2の層104bが粉塵を吸着させる層であり、第3の層104cが熱伝達する層である、等、第1の層104a、第2の層104b、及び第3の層104cがそれぞれ性質の異なる層であってもよく、必要に応じて層の性質が選択されてもよい。
図19及び
図20に、
図12の(b)の断面が略コの字の形状に補強部分を加えた形状の潤滑部材104を備える伝達機構101を示す。
図19の伝達機構101は軸受106の下側にのみ潤滑部材104を備え、
図20の伝達機構101は軸受106の下側及び上側に潤滑部材104を備える。
図21及び
図22に、
図12の(b)のような断面が略コの字の形状に補強部分を加えた形状のものを変形した潤滑部材104を備える伝達機構101を示す。
図21の伝達機構101は軸受106の下側にのみ潤滑部材104を備え、
図22の伝達機構101は軸受106の下側及び上側に潤滑部材104を備える。潤滑部材104は、
図12の(b)のような断面が略コの字の形状に補強部分を加えた形状のものの略コの字の間隙に、断面が略コの字の形状に補強部分を加えた形状のものとは別の性質(例えば、弾性力、潤滑剤に対する吸収性、ポンピング作用、冷却作用、洗浄作用、等)を有するものを配置したものである。
【0047】
図23に、軸受106の下側に
図24の潤滑部材104を備える伝達機構101を示す。
図24((a)に斜視図、(b)に側面図、(c)に(b)のC-C線における断面の斜視図、(d)にC-C線における断面図を示す)の潤滑部材104は、
図12の(a)のような断面が略コの字の形状のものの略コの字の間隙に、
図12の(e)のようなデプス・プリーツタイプ(ラジアルフロータイプ)を配置したものである。また、
図25に、軸受106の下側及び上側に
図24の潤滑部材104を備える伝達機構101を示す。このように、
図12の様々な形状のものを組み合わせた潤滑部材104を採用することによって、伝達機構101は、様々な性質(例えば、弾性力、潤滑剤に対する吸収性、ポンピング作用、冷却作用、洗浄作用、等)の潤滑部材104を備えることができる。
【0048】
図26に、軸受106の下側に
図27の潤滑部材104を備える伝達機構101を示す。
図27((a)、(b)にそれぞれ異なる角度からの斜視図を示す)の潤滑部材104は、
図12の(b)のような断面が略コの字の形状に補強部分を加えた形状のものの軸受106と接触する表面において、少なくとも1つの溝109が設けられたものである。溝109によって、軸受106が潤滑部材104に対して第1の回転部材軸線107を中心として回転している間に、潤滑部材104は、弾性力に基づいて第2の回転部材105に接触していない軸受106に与える予圧を変化させることができて、粉塵を溝109に溜めることができ、溝109は、潤滑部材104における粉塵に対する洗浄作用を高めることができる。なお、溝109は、
図12に示されるような様々な形状の潤滑部材104に設けられてもよい。
図28に、
図29の潤滑部材104を備える伝達機構101を示す。軸受106の上側及び下側に潤滑部材104を備えることによって、更に潤滑部材104における粉塵に対する洗浄作用を高めることができる。
【0049】
複数の軸受106が潤滑部材104に接触する一方で、第1の回転部材103の本体部分、すなわち複数の軸受106を除く第1の回転部材103の部分と潤滑部材104との間には間隙が設けられる。間隙によって第1の回転部材103の本体部分は潤滑部材104に接触しないことから、第1の回転部材103の本体部分と潤滑部材104との間の接触による摩擦を抑制することができる。なお、潤滑部材104は、軸受106の第1の回転部材103への取り付け前にハウジング102に収容されてもよい。
【0050】
各軸受106は、内輪部と、内輪部の側面に沿って内輪部の周りに回転可能な略円筒形の外輪部とを備えてもよい。潤滑部材104は、潤滑部材104を外輪部が内輪部の周りに回転しながら横切って通過している軸受106に、弾性力に基づいて予圧を与えて接触することによって、潤滑剤を軸受106の外輪部に塗布し、軸受106の外輪部を潤滑剤で潤滑させる。軸受106の第1の回転部材軸線107を中心とする回転によって軸受106が第2の回転部材105と接触するようになると、軸受106の外輪部が第2の回転部材105に対して転がり接触しながら内輪部の周りを回転して、軸受106の外輪部及び第2の回転部材105の接触部分を潤滑剤で潤滑させて、軸受106の外輪部と第2の回転部材105との間の接触による磨耗を抑制することができる。なお、各軸受106は、内輪部と外輪部との間にころ、ニードル等の転動体を備える転がり接触の軸受であってもよいし、転動体を含まない滑り接触の軸受であってもよい。
【0051】
各軸受106は、内輪部の内側に各軸受106を第1の回転部材103に固定するための固定部材を備えるカムフォロアであってもよく、固定部材が第1の回転部材103の本体部分に嵌合されることによって、各軸受106は第1の回転部材103に外輪部が回転可能であるように固定される。また、各軸受106は、固定部材を備えないローラフォロアであってもよく、軸受106とは別部材としての固定部材が内輪部の内側を貫通して第1の回転部材103の本体部分に嵌合されることによって、各軸受106は第1の回転部材103に外輪部が回転可能であるように固定される。第2の回転部材105は、カムフォロア、ローラフォロアに係合する形状を有する。また、各軸受106は、ボールであってもよく、ボールは、第1の回転部材103の本体部分に係合され、潤滑部材104は、弾性力に基づいてボールを第1の回転部材103に対して押圧するようにボールに予圧を与えて接触することによって、潤滑剤をボールに塗布し、ボールを潤滑剤で潤滑させてもよい。第2の回転部材105は、ボールに係合する形状を有する。
【0052】
第2の回転部材105は、カムリブを有し、軸受106と係合するカムであってもよい。第1の回転部材103及び第2の回転部材105のうちの何れが入力軸であっても出力軸であってもよい。カムの形状は、スクリュー状のカムリブを有する形状であってもよい。例えば、第2の回転部材105が入力軸として第2の回転部材軸線108を中心として回転すると、第2の回転部材軸線108に直交する第1の回転部材軸線107を中心として第1の回転部材103が出力軸として回転することができるように複数の軸受106が次々に連続してカムリブに接触する。軸受106が潤滑部材104に対して第1の回転部材軸線107を中心として回転している間に、潤滑部材104は、潤滑部材104を横切って通過している軸受106に、弾性力に基づいて予圧を与えて接触することによって、潤滑剤を軸受106の外面に塗布し、軸受106を潤滑剤で潤滑させる。第2の回転部材105と接触していない間に潤滑剤で潤滑された軸受106が、第1の回転部材103の第1の回転部材軸線107を中心とする回転によって第2の回転部材105のカムリブと接触するようになると、軸受106及びカムリブの接触部分を潤滑剤で潤滑させて、軸受106とカムリブとの間の接触による磨耗を抑制することができる。また、軸受106がカムリブとの転がり接触する場合には、入力軸としての第1の回転部材103又は第2の回転部材105から入力されるトルクの、出力軸としての第2の回転部材105又は第1の回転部材103への伝達効率を向上することができるとともに、伝達機構101を長寿命化することができる。また、軸受106とカムリブとの間は線接触であるために、第1の回転部材103の回転方向の外力に対して高い剛性を有する。なお、複数の軸受106は、カムの形状によって、略円筒形の第1の回転部材103の本体部分の外周面に放射状に取り付けられてもよし、略円筒形の第1の回転部材103の本体部分の端面に円形状に取り付けられてもよい。
【0053】
潤滑部材104は、第1の回転部材103が潤滑部材104に対して第1の回転部材軸線107を中心として回転している間に第1の回転部材103の一部を潤滑剤で潤滑させることできるものであればよく、ハウジング102に収容された潤滑部材104を備える伝達機構101は、第2の回転部材105として、鼓型カム(roller gear cam、concave globoidal cam)、円筒カム(cylindrical cam、barrel cam)、太鼓形カム(convex globoidal cam)、等の様々なスクリュー形状のカムリブを有するカムを備えるカム機構であってもよい。また、伝達機構101は、ボール減速機、ウォーム減速機、遊星歯車減速機、波動歯車減速機、トラクションドライブ減速機、等であってもよい。
【0054】
また、伝達機構101は、第1の回転部材軸線107と第2の回転部材軸線108とを結ぶ線の幅の中において、第1の回転部材103と第2の回転部材105との接触が行われる位置関係にある外接型タイプであってもよく、第1の回転部材軸線107と第2の回転部材軸線108とを結ぶ線の幅の外において、第1の回転部材103と第2の回転部材105との接触が行われる位置関係にある内接型タイプであってもよい。内接型タイプとしては、内接パラレルカム機構、内接トロコイド歯車機構、等がある。
【0055】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0056】
101 伝達機構
102 ハウジング
103 第1の回転部材
104 潤滑部材
104a 第1の層
104b 第2の層
104c 第3の層
105 第2の回転部材
106 軸受
107 第1の回転部材軸線
108 第2の回転部材軸線
109 溝