(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】電池パック加熱方法、電池加熱システム及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20240514BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20240514BHJP
B60L 53/20 20190101ALI20240514BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240514BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240514BHJP
H01M 10/667 20140101ALI20240514BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20240514BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M10/633
B60L58/27
B60L53/20
B60L3/00 S
H01M10/615
H01M10/667
H01M10/6571
H01M10/625
(21)【出願番号】P 2021576388
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 CN2021115586
(87)【国際公開番号】W WO2023028817
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2021-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】李 占良
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 元▲ミャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】左 希▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 孝▲鍵▼
(72)【発明者】
【氏名】但 志▲敏▼
(72)【発明者】
【氏名】▲顔▼ ▲ユ▼
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-002513(JP,A)
【文献】特開2013-030394(JP,A)
【文献】特表2016-524786(JP,A)
【文献】特許第6341209(JP,B2)
【文献】特開2017-091847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/633
B60L 58/27
B60L 53/20
B60L 3/00
H01M 10/615
H01M 10/667
H01M 10/6571
H01M 10/625
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パック加熱方法であって、前記電池パックはコンバータを介して誘導負荷に接続され、前記電池パック加熱方法は、
加熱要求を受信する場合、前記コンバータのスイッチモジュールのオンとオフを制御して、前記電池パックと前記誘導負荷との間の放電と充電を制御するステップを含み、
前記電池パックの放電段階で、前記電池パックと補助加熱機構を並列に接続し、
前記電池パックの充電段階で、前記補助加熱機構と前記電池パックとの接続を切断す
る電池パック加熱方法。
【請求項2】
前記電池パックの加熱に関連する電流パラメータを収集するステップと、
前記電池パックの加熱に関連する電流パラメータが予め設定された所望の電流閾値区間を超える場合、前記予め設定された所望の電流閾値区間に基づき、前記電池パックの充放電サイクルの前記充電段階及び前記放電段階の時間を調整して、前記電流パラメータを前記予め設定された所望の電流閾値区間に戻すステップと、
をさらに含む請求項1に記載の電池パック加熱方法。
【請求項3】
前記電池パックの充放電サイクルの前記充電段階と前記放電段階の時間は同じであ
る請求項2に記載の電池パック加熱方法。
【請求項4】
前記誘導負荷はモータの巻線であり、前記コンバータのスイッチモジュールは、前記モータを回転させないように、周期的にオン及びオフにされるように構成され
る請求項1~3のいずれか1項に記載の電池パック加熱方法。
【請求項5】
前記モータは三相モータであり、前記コンバータは、第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム及び第3相ブリッジアームを有する三相フルブリッジ回路であり、
前記電池パックの充放電サイクルの前記放電段階で、2つ又は3つのスイッチモジュールをオンにし、オンにされたスイッチモジュールは異なる相ブリッジアームに位置し、且つ上部ブリッジアームに位置する少なくとも1つのスイッチモジュール及び下部ブリッジアームに位置する少なくとも1つのスイッチモジュールをオンにし、
前記電池パックの充放電サイクルの前記充電段階で、前記放電段階でオンにされたスイッチモジュールをオフにし、前記放電段階でオンにされたスイッチモジュールが位置する上部ブリッジアーム又は下部ブリッジアームに対応する下部ブリッジアーム又は上部ブリッジアームのスイッチモジュールをオンにす
る請求項4に記載の電池パック加熱方法。
【請求項6】
前記電池パック加熱方法は、
前記電池パックの状態パラメータを取得するステップと、
前記コンバータの温度及び前記モータの温度を取得するステップと、
前記状態パラメータ、前記コンバータの温度又は前記モータの温度が対応するパラメータ安全範囲を超える場合、加熱停止要求を生成するステップであって、前記状態パラメータは、電圧、温度、荷電状態及び絶縁抵抗値のうちの少なくとも1つを含むステップと、
前記加熱停止要求に応答して、前記コンバータの全てのスイッチモジュールがオフ状態にあるように制御し、且つ前記補助加熱機構と前記電池パックとの接続を切断するステップと、を含
む請求項1~5のいずれか1項に記載の電池パック加熱方法。
【請求項7】
前記電池パック加熱方法は、
前記電池パックが取り付けられた車両の状態情報を取得するステップと、
前記状態情報は前記車両が加熱条件にないことを指示する場合、加熱停止要求を生成するステップであって、前記状態情報は、車両の始動状態、ドア状態、衝突情報、高電圧状態、環境温度のうちの少なくとも1つを含むステップと、
前記加熱停止要求に応答して、前記コンバータの全てのスイッチモジュールがオフ状態にあるように制御し、且つ前記補助加熱機構と前記電池パックとの接続を切断するステップと、を含
む請求項1~6のいずれか1項に記載の電池パック加熱方法。
【請求項8】
前記補助加熱機構は加熱フィルムを含
む請求項1~7のいずれか1項に記載の電池パック加熱方法。
【請求項9】
前記補助加熱機構はPTCヒーターを含
む請求項1~8のいずれか1項に記載の電池パック加熱方法。
【請求項10】
電池加熱システムであって、
直流端子が電池パックの正極及び負極に接続されるコンバータと、
前記コンバータの交流端子に接続される誘導負荷と、
前記電池パックに並列に接続される補助加熱機構と、
それぞれ前記コンバータ及び前記誘導負荷に接続されるコントローラであって、
加熱要求に応答して、前記コンバータのスイッチモジュールのオンとオフを制御して、前記電池パックと前記誘導負荷との間の放電と充電を制御し、
前記電池パックの放電段階で、前記補助加熱機構と前記電池パックを並列に接続し、
前記電池パックの充電段階で、前記補助加熱機構と前記電池パックとの接続を切断するように構成されるコントローラと、
を含
む電池加熱システム。
【請求項11】
前記コントローラは、
前記電池パックの加熱に関連する電流パラメータを収集し、
前記電池パックの加熱に関連する電流パラメータが予め設定された所望の電流閾値区間を超える場合、前記予め設定された所望の電流閾値区間に基づき、前記電池パックの充放電サイクルの前記充電段階及び前記放電段階の時間を調整して、前記電流パラメータを前記予め設定された所望の電流閾値区間に戻すように構成され
る請求項10に記載の電池加熱システム。
【請求項12】
前記電池パックの充放電サイクルの前記充電段階と前記放電段階の時間は同じであ
る請求項11に記載の電池加熱システム。
【請求項13】
前記誘導負荷はモータの巻線であり、前記コントローラは、前記モータを回転させないように、前記コンバータのスイッチモジュールを周期的にオン及びオフにするように制御するように構成され
る請求項10~12のいずれか1項に記載の電池加熱システム。
【請求項14】
前記モータは三相モータであり、前記コンバータは、第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム及び第3相ブリッジアームを有する三相フルブリッジ回路であり、
前記コントローラは、
前記電池パックの充放電サイクルの前記放電段階で、2つ又は3つのスイッチモジュールをオンにし、オンにされたスイッチモジュールは異なる相ブリッジアームに位置し、且つ上部ブリッジアームに位置する少なくとも1つのスイッチモジュール及び下部ブリッジアームに位置する少なくとも1つのスイッチモジュールをオンにし、
前記電池パックの充放電サイクルの前記充電段階で、前記放電段階でオンにされたスイッチモジュールをオフにし、前記放電段階でオンにされたスイッチモジュールが位置する上部ブリッジアーム又は下部ブリッジアームに対応する下部ブリッジアーム又は上部ブリッジアームのスイッチモジュールをオンにするように構成され
る請求項13に記載の電池加熱システム。
【請求項15】
前記コントローラは、
前記電池パックの状態パラメータを取得し、
前記コンバータの温度及び前記モータの温度を取得し、
前記状態パラメータ、前記コンバータの温度又は前記モータの温度が対応するパラメータ安全範囲を超える場合、加熱停止要求を生成し、前記状態パラメータは、電圧、温度、荷電状態及び絶縁抵抗値のうちの少なくとも1つを含み、
前記加熱停止要求に応答して、前記コンバータの全てのスイッチモジュールがオフ状態にあるように制御し、且つ前記補助加熱機構と前記電池パックとの接続を切断するように構成され
る請求項10~14のいずれか1項に記載の電池加熱システム。
【請求項16】
前記コントローラは、
前記電池パックが取り付けられた車両の状態情報を取得し、
前記状態情報は前記車両が加熱条件にないことを指示する場合、加熱停止要求を生成し、前記状態情報は、車両の始動状態、ドア状態、衝突情報、高電圧状態、環境温度のうちの少なくとも1つを含み、
前記加熱停止要求に応答して、前記コンバータの全てのスイッチモジュールがオフ状態にあるように制御し、且つ前記補助加熱機構と前記電池パックとの接続を切断するように構成され
る請求項10~15のいずれか1項に記載の電池加熱システム。
【請求項17】
前記補助加熱機構は加熱フィルムを含
む請求項10~16のいずれか1項に記載の電池加熱システム。
【請求項18】
前記補助加熱機構はPTCヒーターを含
む請求項10~17のいずれか1項に記載の電池加熱システム。
【請求項19】
電力消費装置であって、
電池パックと、
請求項10~18のいずれか1項に記載の電池加熱システムと、
を含む電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池の技術分野に関し、特に電池パック加熱方法、電池加熱システム及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギー技術の発展に伴って、電池を動力とする分野はますます多くなる。エネルギー密度が高く、循環に充電でき、安全で環境に優しいなどの利点により、電池は新エネルギー車、消費電子製品、エネルギー貯蔵システムなどの分野に幅広く応用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電池の低温環境下での使用には一定の制限がある。具体的には、低温環境下で、電池の充放電容量を大幅に低減させ、電池の充放電に対してライフサイクル全体での寿命を短縮させ、及び電池の充電ひいては電池の不可逆的な損傷をもたらす可能性がある。従って、電池を正常に使用できるために、低温環境下で電池を加熱する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題に鑑み、本願は、電池の低温環境下での使用が制限されるという問題を解決するために、電池パック加熱方法、電池加熱システム及び電力消費装置を提供する。
【0005】
そのため、本発明の第1態様は電池パック加熱方法を提供し、電池パックはコンバータを介して誘導負荷に接続され、該方法は、
加熱要求を受信する場合、コンバータのスイッチモジュールのオンとオフを制御して、電池パックと誘導負荷との間の放電と充電を制御するステップを含み、
電池パックの放電段階で、電池パックと補助加熱機構を並列に接続し、
電池パックの充電段階で、補助加熱機構と電池パックとの接続を切断する。
【0006】
本願の実施形態では、電池の内部加熱及び外部の補助加熱機構による加熱を組み合わせ、さらに加熱速度を向上させ、加熱時間を短縮する。具体的には、電池の充放電過程で、充電電流及び放電電流が電池の内部抵抗を流れて熱量を生成して、電池を内部加熱する。電池の放電段階で、電池と補助加熱機構を並列に接続することにより電池を外部加熱し、電池の充電段階で、補助加熱機構を使用せずに電池を加熱する。コンバータ及び誘導負荷を流れる電流が制限されるため、電池の放電段階で、電池と補助加熱機構を並列に接続し、該技術案は、外部加熱源を増加させるだけでなく、内部抵抗を流れる放電電流を増加させ、加熱効率を向上させる。また、電池の充電段階で、充電エネルギーは誘導負荷が放電段階で貯蔵したエネルギーから供給され、同じ電圧下での電池の内部抵抗の発熱効率は外部補助加熱機構の発熱効率よりもはるかに高いため、電池の充電段階で補助加熱機構がオフにされ、これにより誘導負荷の全てのエネルギーが充電に使用され、加熱効率が最適になる。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記方法は、
電池パックの加熱に関連する電流パラメータを収集するステップと、
電池パックの加熱に関連する電流パラメータが予め設定された所望の電流閾値区間を超える場合、予め設定された所望の電流閾値区間に基づき、電池パックの充放電サイクルの充電段階及び放電段階の時間を調整して、電流パラメータを予め設定された所望の電流閾値区間に戻すステップと、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、電流パラメータは、電池パックの接線端子の電流、コンバータの直流バス電流、及びコンバータの各相電流のうちの1つ又は複数を含む。電池パックの接線端子の電流は補助加熱機構を流れる電流及びコンバータの直流バス電流を含む。当業者が理解できるように、電池パックの接線端子の電流を制限すると、実際には電池の充放電電流が限制され、電池が過電流で充放電されて、電池に不可逆的な損傷をもたらすことを回避する。また、コンバータの各相電流を制限することにより、一方では、相電流がコンバータのパワーデバイスの電流上限値を超えることを回避し、他方では、誘導負荷の電流がその電流飽和領域に入ることを防止する。具体的には、いくつかの実施形態では、電流パラメータが予め設定された電流閾値を超える場合、予め設定された電流閾値に基づき、コンバータのパワーデバイスの駆動信号の所望の周波数及び所望のデューティサイクルを算出し、駆動信号の周波数及びデューティサイクルを所望の周波数及び所望のデューティサイクルに調整し、さらに電池パックの各充電サイクルの充電段階及び放電段階の時間を調整する。
【0009】
いくつかの実施形態では、予め設定された所望の電流閾値区間は加熱過程における加熱電流の許容範囲を特徴付ける。一実施例では、予め設定された所望の電流閾値区間は所望の加熱電流を中間値とする電流範囲であってもよい。例示的には、所望の加熱電流は所望のコンバータの直流バス電流であってもよい。
【0010】
本願の好ましい実施形態では、電池パックの充放電サイクルの充電段階と放電段階の時間は同じである。各充放電サイクルのそれぞれの充電段階と放電段階の時間を同じに設定することにより、放電段階で誘導負荷に貯蔵されたエネルギーを全て、充電段階で電池パックにフィードバックする。このような実施形態では、誘導負荷内のエネルギーを全て電池パックにフィードバックすると、一方では、電池パックのエネルギー消費量が最小化され、他方では、低温下での電池パックの過度の不平衡放電のため、電極電位が平衡電極電位から逸脱され、電池が分極され、さらに電池を不可逆的に損傷することを回避する。当業者が理解できるように、実際のニーズ及び作業条件に応じて、異なる変調戦略を使用してコンバータを駆動することでき、従って、各充放電サイクルの充電段階及び放電段階の時間は必要に応じて異なる値に設定されてもよい。
【0011】
本願のいくつかの実施形態では、誘導負荷はモータの巻線であり、コンバータのスイッチモジュールは、モータを回転させないように、周期的にオン及びオフにされるように構成される。当業者が理解できるように、電池パックがモータの駆動エネルギーとして機能する場合、実際の応用に応じて、モータは単相モータであってもよく、多相モータであってもよく、モータは交流モータであってもよく、直流モータであってもよく、具体的には、モータが三相非同期モータ、三相同期モータ又は直流ブラシレスモータなどである場合、誘導負荷はモータの固定子巻線であってもよく、モータがブラシ付き直流モータなどである場合、誘導負荷はモータの回転子巻線であってもよい。
【0012】
本願のいくつかの実施形態では、モータは三相モータであり、コンバータは、第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム及び第3相ブリッジアームを有する三相フルブリッジ回路であり、
電池パックの充放電サイクルの放電段階で、2つ又は3つのスイッチモジュールをオンにし、オンにされたスイッチモジュールは異なる相ブリッジアームに位置し、且つ上部ブリッジアームに位置する少なくとも1つのスイッチモジュール及び下部ブリッジアームに位置する少なくとも1つのスイッチモジュールをオンにし、
電池パックの充放電サイクルの充電段階で、放電段階でオンにされたスイッチモジュールをオフにし、放電段階でオンにされたスイッチモジュールが位置する上部ブリッジアーム又は下部ブリッジアームに対応する下部ブリッジアーム又は上部ブリッジアームのスイッチモジュールをオンにする。
【0013】
理解できるように、コンバータの相数はモータの相数に対応してもよく、例えば、モータが四相モータである場合、コンバータは四相コンバータであってもよい。
【0014】
本願のいくつかの実施形態では、上記方法は、
電池パックの状態パラメータを取得するステップと、
コンバータの温度及びモータの温度を取得するステップと、
状態パラメータ、コンバータの温度又はモータの温度が対応するパラメータ安全範囲を超える場合、加熱停止要求を生成するステップであって、状態パラメータは、電圧、温度、荷電状態及び絶縁抵抗値のうちの少なくとも1つを含むステップと、
加熱停止要求に応答して、コンバータの全てのスイッチモジュールがオフ状態にあるように制御し、且つ補助加熱機構と電池パックとの接続を切断するステップと、を含む。
【0015】
本願のいくつかの実施形態では、上記方法は、
電池パックが取り付けられた車両の状態情報を取得するステップと、
状態情報は車両が加熱条件にないことを指示する場合、加熱停止要求を生成するステップであって、状態情報は、車両の始動状態、ドア状態、衝突情報、高電圧状態、環境温度のうちの少なくとも1つを含むステップと、
加熱停止要求に応答して、コンバータの全てのスイッチモジュールがオフ状態にあるように制御し、且つ補助加熱機構と電池パックとの接続を切断するステップと、を含む。
【0016】
本願のいくつかの実施形態では、補助加熱機構は加熱フィルムである。本願の別のいくつかの実施形態では、補助加熱機構は正温度係数(PTC:Positive Temperature Coefficient)ヒーター、すなわちPTCヒーターである。
【0017】
本願のいくつかの実施形態では、補助加熱機構は電池パックに直接に並列に接続され、補助加熱機構と電池パックとの間のスイッチを介して補助加熱機構と電池パックとの並列接続を制御する。本願の別のいくつかの実施形態では、補助加熱機構はDC-DC変換器を介して電池パックに並列に接続され、補助加熱機構とDC-DC変換器との間のスイッチを介して補助加熱機構と電池パックとの並列接続を制御する。DC-DC変換器によって補助加熱機構の両端の電圧を調整して、補助加熱機構の加熱電流及び加熱パワーを制御することができる。
【0018】
本願の第2態様は電池加熱システムを提供し、該電池加熱システムは、
直流端子が電池パックの正極及び負極に接続されるコンバータと、
コンバータの交流端子に接続される誘導負荷と、
電池パックに並列に接続される補助加熱機構と、
それぞれコンバータ及び誘導負荷に接続されるコントローラであって、
加熱要求に応答して、コンバータのスイッチモジュールのオンとオフを制御して、電池パックと誘導負荷との間の放電と充電を制御し、
電池パックの放電段階で、補助加熱機構と電池パックを並列に接続し、
電池パックの充電段階で、補助加熱機構と電池パックとの接続を切断するように構成されるコントローラと、を含む。
【0019】
本願の実施形態では、電池の内部加熱及び外部の補助加熱機構による加熱を組み合わせ、さらに加熱速度を向上させ、加熱時間を短縮する。具体的には、電池の充放電過程で、充電電流及び放電電流が電池の内部抵抗を流れて熱量を生成して、電池を内部加熱する。電池の放電段階で、電池と補助加熱機構を並列に接続することにより電池を外部加熱し、電池の充電段階で、補助加熱機構を使用せずに電池を加熱する。コンバータ及び誘導負荷を流れる電流が制限されるため、電池の放電段階で、電池と補助加熱機構を並列に接続し、該技術案は、外部加熱源を増加させるだけでなく、内部抵抗を流れる放電電流を増加させ、加熱効率を向上させる。また、電池の充電段階で、充電エネルギーは誘導負荷が放電段階で貯蔵したエネルギーから供給され、同じ電圧下での電池の内部抵抗の発熱効率は外部補助加熱機構の発熱効率よりもはるかに高いため、電池の充電段階で補助加熱機構がオフにされ、これにより誘導負荷の全てのエネルギーが充電に使用され、加熱効率が最適になる。このような実施形態は、移植性が高く、従来の補助加熱ユニットを十分に使用し、新しいハードウェアを追加することなく、ソフトウェアを適応させる必要があるだけである。
【0020】
本願のいくつかの実施形態では、コントローラは、
電池パックの加熱に関連する電流パラメータを収集し、
電池パックの加熱に関連する電流パラメータが予め設定された所望の電流閾値区間を超える場合、予め設定された所望の電流閾値区間に基づき、電池パックの充放電サイクルの充電段階及び放電段階の時間を調整して、電流パラメータを予め設定された所望の電流閾値区間に戻すように構成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、電流パラメータは、電池パックの接線端子の電流、コンバータの直流バス電流、及びコンバータの各相電流のうちの1つ又は複数を含む。電池パックの接線端子の電流は補助加熱機構を流れる電流及びコンバータの直流バス電流を含む。当業者が理解できるように、電池パックの接線端子の電流を制限すると、実際には電池の充放電電流が限制され、電池が過電流で充放電されて、電池に不可逆的な損傷をもたらすことを回避する。また、コンバータの各相電流を制限することにより、一方では、相電流がコンバータのパワーデバイスの電流上限値を超えることを回避し、他方では、誘導負荷の電流がその電流飽和領域に入ることを防止する。具体的には、いくつかの実施形態では、電流パラメータが予め設定された電流閾値を超える場合、予め設定された電流閾値に基づき、コンバータのパワーデバイスの駆動信号の所望の周波数及び所望のデューティサイクルを算出し、駆動信号の周波数及びデューティサイクルを所望の周波数及び所望のデューティサイクルに調整し、さらに電池パックの各充電サイクルの充電段階及び放電段階の時間を調整する。
【0022】
いくつかの実施形態では、予め設定された所望の電流閾値区間は加熱過程における加熱電流の許容範囲を特徴付ける。一実施例では、予め設定された所望の電流閾値区間は所望の加熱電流を中間値とする電流範囲であってもよい。例示的には、所望の加熱電流は所望のコンバータの直流バス電流であってもよい。
【0023】
本願の好ましい実施形態では、電池パックの充放電サイクルの充電段階と放電段階の時間は同じである。各充放電サイクルのそれぞれの充電段階と放電段階の時間を同じに設定することにより、放電段階で誘導負荷に貯蔵されたエネルギーを全て、充電段階で電池パックにフィードバックする。このような実施形態では、誘導負荷内のエネルギーを全て電池パックにフィードバックすると、一方では、電池パックのエネルギー消費量が最小化され、他方では、低温下での電池パックの過度の不平衡放電のため、電極電位が平衡電極電位から逸脱され、電池が分極され、さらに電池を不可逆的に損傷することを回避する。当業者が理解できるように、実際のニーズ及び作業条件に応じて、異なる変調戦略を使用してコンバータを駆動することでき、従って、各充放電サイクルの充電段階及び放電段階の時間は必要に応じて異なる値に設定されてもよい。
【0024】
本願のいくつかの実施形態では、誘導負荷はモータの巻線であり、コントローラは、モータを回転させないように、コンバータのスイッチモジュールを周期的にオン及びオフにするように制御するように構成される。当業者が理解できるように、電池パックがモータの駆動エネルギーとして機能する場合、実際の応用に応じて、モータは単相モータであってもよく、多相モータであってもよく、モータは交流モータであってもよく、直流モータであってもよく、具体的には、モータが三相非同期モータ、三相同期モータ又は直流ブラシレスモータなどである場合、誘導負荷はモータの固定子巻線であってもよく、モータがブラシ付き直流モータなどである場合、誘導負荷はモータの回転子巻線であってもよい。
【0025】
本願のいくつかの実施形態では、モータは三相モータであり、コンバータは、第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム及び第3相ブリッジアームを有する三相フルブリッジ回路であり、
コントローラは、
電池パックの充放電サイクルの放電段階で、2つ又は3つのスイッチモジュールをオンにし、オンにされたスイッチモジュールは異なる相ブリッジアームに位置し、且つ上部ブリッジアームに位置する少なくとも1つのスイッチモジュール及び下部ブリッジアームに位置する少なくとも1つのスイッチモジュールをオンにし、
電池パックの充放電サイクルの充電段階で、放電段階でオンにされたスイッチモジュールをオフにし、放電段階でオンにされたスイッチモジュールが位置する上部ブリッジアーム又は下部ブリッジアームに対応する下部ブリッジアーム又は上部ブリッジアームのスイッチモジュールをオンにするように構成される。
【0026】
理解できるように、コンバータの相数はモータの相数に対応してもよく、例えば、モータが四相モータである場合、コンバータは四相コンバータであってもよい。
【0027】
本願のいくつかの実施形態では、コントローラは、
電池パックの状態パラメータを取得し、
コンバータの温度及びモータの温度を取得し、
状態パラメータ、コンバータの温度又はモータの温度が対応するパラメータ安全範囲を超える場合、加熱停止要求を生成し、状態パラメータは、電圧、温度、荷電状態及び絶縁抵抗値のうちの少なくとも1つを含み、
加熱停止要求に応答して、コンバータの全てのスイッチモジュールがオフ状態にあるように制御し、且つ補助加熱機構と電池パックとの接続を切断するように構成される。
【0028】
本願のいくつかの実施形態では、コントローラは、
電池パックが取り付けられた車両の状態情報を取得し、
状態情報は車両が加熱条件にないことを指示する場合、加熱停止要求を生成し、状態情報は、車両の始動状態、ドア状態、衝突情報、高電圧状態、環境温度のうちの少なくとも1つを含み、
加熱停止要求に応答して、コンバータの全てのスイッチモジュールがオフ状態にあるように制御し、且つ補助加熱機構と電池パックとの接続を切断するように構成される。
【0029】
いくつかの実施形態では、補助加熱機構は加熱フィルムを含む。別のいくつかの実施形態では、補助加熱機構はPTCヒーターを含む。
【0030】
本願のいくつかの実施形態では、補助加熱機構は電池パックに直接に並列に接続され、補助加熱機構と電池パックとの間のスイッチを介して補助加熱機構と電池パックとの並列接続を制御する。本願の別のいくつかの実施形態では、補助加熱機構はDC-DC変換器を介して電池パックに並列に接続され、補助加熱機構とDC-DC変換器との間のスイッチを介して補助加熱機構と電池パックとの並列接続を制御する。DC-DC変換器によって補助加熱機構の両端の電圧を調整して、補助加熱機構の加熱電流及び加熱パワーを制御することができる。
【0031】
本願の第3態様は電力消費装置を提供し、前記電力消費装置は、電池パックと、本願の上記第2態様に記載の電池加熱システムと、を含む。電池パックは上記装置の電源として使用されてもよく、上記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。上記装置は、モバイルデバイス(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電気自動車(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電気自転車、電気スクーター、電気ゴルフカート、電気トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいがこれらに限定されない。上記装置はその使用ニーズに応じて電池を選択することができる。
【0032】
本願の技術案をより明確に説明するために、以下、本願の実施例に使用される必要がある図面を簡単に説明し、明らかなように、以下に説明される図面は本願のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者が創造的な労働を必要とせずに、さらに図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本願の一実施形態に係る電池パック加熱方法のフローチャートを示す。
【
図2】本願の一実施形態に係る電池パック加熱方法のフローチャートを示す。
【
図3】本願の一実施形態に係る補助加熱機構と電池パックとの接続を制御する方法のフローチャートを示す。
【
図4】本願の一実施形態に係る電池加熱システムの構造模式図を示す。
【
図5】本願の別の実施形態に係る電池パック加熱システムの構造模式図を示す。
【
図6】本願の一実施形態に係る電池パック加熱方法における予め設定された直軸電流の波形の模式図を示す。
【
図7】本願の一実施形態に係る電池パック加熱システムの制御モジュールの構造図を示す。
【
図8】本願の一実施形態に係る電池パック加熱システムにおける座標変換の模式図を示す。
【
図9】本願の一実施形態に係る電力消費装置の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本願の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態は本願の技術案をより明確に説明するためのものに過ぎないため、例としてのみ使用され、本願の保護範囲を限定するものではない。
【0035】
特に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語又は科学用語は、当業者が理解できる通常の意味を有し、本明細書に使用される用語は、具体的な実施形態を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するためのものではなく、本願の明細書、特許請求の範囲及び上記図面の簡単な説明における用語「含む」、「有する」及びそれらの任意の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図するものである。
【0036】
本願の実施形態の説明では、「第1」及び「第2」などの技術用語は、異なる対象を区別するためのものに過ぎず、相対的な重要性を指示又は暗示し、又は示した技術的特徴の数、特定の順序又は主従関係を暗黙的に説明するためのものとして理解できない。
【0037】
本明細書で言及されている「実施形態」は、実施形態を組み合わせて説明される特定の特徴、構造又は特性が本願の少なくとも1つの実施形態に含まれてもよいことを意味する。明細書の様々な位置に現れる該語句は必ずしも同じ実施形態を指すものではなく、他の実施形態と相互に排他的な独立又は代替の実施形態でもない。当業者は、本明細書で説明される実施形態が他の実施形態と組み合わせることができることを明確且つ暗黙的に理解できる。
【0038】
本願の実施形態の説明では、「及び/又は」という用語は、関連対象の関連関係を説明するためのものに過ぎず、3つの関係が存在し得ることを示し、例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在すること、AとBが同時に存在すること、Bが単独で存在することの3つの状況を示すことができる。また、本明細書における「/」という文字は、一般的に前後の関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0039】
本願の実施形態の説明では、特に明確且つ具体的に限定されない限り、「複数」という用語は、2つ以上(2つを含む)を意味する。本願の実施形態の説明では、特に明確に規定及び限定されない限り、「接続」、「連結」などの用語は広い意味で理解されるべきであり、例えば、機械的接続であってもよく、電気的接続であってもよく、直接接続であってもよく、中間媒体を介した間接的接続であってもよく、2つの素子内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本願の実施形態での具体的な意味を理解することができる。
【0040】
本明細書又は特許請求の範囲でステップを順番に説明する場合、これは、必ずしも実施形態又は態様が説明された順序に限定されることを意味するものではない。それと逆に、あるステップが別のステップに基づいて構築され、構築されたステップがその後に実行される必要がある(ただし、これは個々の場合に明らかになる)場合を除いて、さらに前記ステップを異なる順序で又は互いに並行して実行することも考えられる。従って、説明された順序は好ましい実施形態であってもよい。
【0041】
現在、電池は水力、火力、風力、太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システムに応用されるだけでなく、電気自転車、電動二輪車、電気自動車などの電動交通機関、軍事機器及び航空宇宙などの複数の分野に幅広く応用される。電池の応用分野が継続的に拡大されることに伴って、その市場の需要も絶えずに増加する。
【0042】
本発明者は、研究により、加熱フィルムによる加熱を使用する昇温速度が低いが、コストが高く、PTCヒーターによる加熱を使用する昇温速度が、加熱フィルムによる加熱を使用する昇温速度よりも高いが、その熱伝導媒体の粘度を非常に低い温度下で増加させるため、加熱効果を大幅に低下させ、電気励起加熱を使用する昇温速度が非常に速く、電池の温度が-30℃から10℃に上昇するのにかかる時間が約15分間であるが、電池の充放電電流、使用された変換回路及び励起素子を流れる電流などのパラメータで制限されることを発見する。しかしながら、15分間の待機時間は使用者にとって長すぎる可能性があるが、使用者は低温環境下で電池により給電された電力消費装置をできるだけ早く使用することを望んでいる。
【0043】
昇温速度を向上させるために、本発明者は、電気励起内部加熱方式及び外部加熱方式を組み合わせて使用することを想到する。これを基礎として、本発明者は、鋭意検討により、リチウム電池を例として、同じ電圧下で、加熱フィルムによる加熱を使用する昇温速度が一般的に0.2~0.4℃/minであり、PTCヒーターによる加熱を使用する昇温速度が一般的に0.3~0.6℃/minであり、電気励起内部加熱を使用する昇温速度が一般的に2℃/minであり、以上より、電気励起内部加熱の発熱効率が外部加熱(PTCヒーター/加熱フィルム)の3倍以上であることを発見する。
【0044】
これを基礎として、電気励起内部加熱方式及び外部加熱方式を組み合わせて使用する加熱効率を最適化するために、発明者は電池パック加熱方法を設計し、電池の放電段階で外部補助加熱機構と電池を並列に接続し、電池の充電段階で外部補助加熱機構と電池との接続を切断することにより、電池の放電段階でより大きな放電電流を生成して外部加熱源を増加させ、電池の充電段階で全てのエネルギーを内部加熱に使用し、エネルギーを十分に使用して、加熱効率を最適化させる。
【0045】
図1は本願の一実施形態に係る電池パック加熱方法100のフローチャートを示す。
図1に示すように、ステップ102において、加熱要求を受信するか否かを検出する。加熱要求を受信する場合、ステップ104に進み、そうでない場合、ステップ102を繰り返す。加熱要求は電池パックの電圧、温度及び/又は荷電状態などに基づいて生成されるものであってもよく、例えば、電圧が予め設定された電圧閾値よりも大きく、荷電状態(SOC:State Of Charge)が予め設定されたSOC閾値よりも大きく且つ温度が予め設定された温度閾値未満である場合、加熱要求を生成する。
【0046】
加熱要求に応答して、ステップ104において、電池パックと誘導負荷との間に接続されるコンバータのスイッチモジュールのオンとオフを制御して、電池パックと誘導負荷との間の放電と充電を制御する。
【0047】
コンバータのスイッチモジュールのオンとオフの制御コマンドに応答して、ステップ106において、電池パックが放電段階にあるか否かを判断する。電池パックが放電段階にある場合、補助加熱機構と電池パックを並列に接続する(ステップ108)。電池パックが放電段階にない場合、補助加熱機構と電池パックとの接続を切断する(ステップ110)。
【0048】
本願の実施形態では、電池の内部加熱及び外部の補助加熱機構による加熱を組み合わせ、さらに加熱速度を向上させ、加熱時間を短縮する。具体的には、電池の充放電過程で、充電電流及び放電電流が電池の内部抵抗を流れて熱量を生成して、電池を内部加熱する。電池の放電段階で、電池と補助加熱機構を並列に接続することにより電池を外部加熱し、電池の充電段階で、補助加熱機構を使用せずに電池を加熱する。コンバータ及び誘導負荷を流れる電流が制限されるため、電池の放電段階で、電池と補助加熱機構を並列に接続し、該技術案は、外部加熱源を増加させるだけでなく、内部抵抗を流れる放電電流を増加させ、加熱効率を向上させる。また、電池の充電段階で、充電エネルギーは誘導負荷が放電段階で貯蔵したエネルギーから供給され、同じ電圧下での電池の内部抵抗の発熱効率は外部補助加熱機構の発熱効率よりもはるかに高いため、電池の充電段階で補助加熱機構がオフにされ、これにより誘導負荷の全てのエネルギーが充電に使用され、加熱効率が最適になる。
【0049】
本願のいくつかの実施形態では、加熱要求を生成する前に、電池加熱条件を満たすか否かを決定する必要がある。具体的には、車両のモータの現在の動作状態、電池が故障するか否か、三相交流モータが故障するか否か、モータコントローラが故障するか否か及び熱伝導回路が故障するか否かを確認する必要があり、モータの現在の動作状態が非駆動状態であり、電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び熱伝導回路がいずれも故障しない場合、このとき、電池を加熱できることが示され、モータの現在の動作状態が駆動状態であり、又は電池、三相交流モータ、モータコントローラ及び熱伝導回路のいずれかが故障する場合、このとき、電池を加熱できないことが示される。
【0050】
本願のいくつかの実施形態では、レンジ情報及びモータ回転数情報を取得し、レンジ情報及びモータ回転数情報に基づいてモータの現在の動作状態を取得することにより、その後にモータの動作状態に基づいて電池パックが加熱条件を満たすか否かを判断する場合、レンジ情報及びモータ回転数情報に基づいて判断することができ、いずれかの条件が満たされない場合、電池パックを加熱することができず、車両が通常の走行状態下で電池パックを加熱し、さらに車両の性能に影響することを防止する。
【0051】
図2は本願の一実施形態に係る電池パック加熱方法200のフローチャートを示す。
図2を示すように、ステップ202において、加熱要求を受信するか否かを検出する。加熱要求を受信する場合、ステップ204に進み、そうでない場合、ステップ202を繰り返す。上記したように、加熱要求は電池パックの電圧、温度及び/又は荷電状態などに基づいて生成されるものであってもよく、例えば、電圧が予め設定された電圧閾値よりも大きく、SOCが予め設定されたSOC閾値よりも大きく且つ温度が予め設定された温度閾値未満である場合、加熱要求を生成する。
【0052】
加熱要求に応答して、ステップ204において、電池パックと誘導負荷との間に接続されるコンバータのスイッチモジュールを周期的にオン及びオフにするように制御して、電池パックと誘導負荷との間に周期的に放電及び充電するように制御する。
【0053】
その後、ステップ206において、電池パックの加熱に関連する電流パラメータを収集する。
【0054】
ステップ208において、収集された電池パックの加熱に関連する電流パラメータが予め設定された所望の電流閾値区間を超えるか否かを判断し、収集された電流パラメータが予め設定された所望の電流閾値区間を超える場合、予め設定された所望の電流閾値区間に基づき、電池パックの充放電サイクルの充電段階及び放電段階の時間を調整し、具体的には、コンバータのスイッチモジュールのスイッチ周波数を調整することにより充電段階及び放電段階の時間を調整する(ステップ210)。
【0055】
本願のいくつかの実施形態では、誘導負荷はモータの巻線であり、ステップ204において、モータを回転させないように、コンバータのスイッチモジュールを周期的にオン及びオフにするように制御する。当業者が理解できるように、電池パックがモータの駆動エネルギーとして機能する場合、実際の応用に応じて、モータは単相モータであってもよく、多相モータであってもよく、モータは交流モータであってもよく、直流モータであってもよく、具体的には、モータが三相交流非同期モータ、三相交流同期モータ又は直流ブラシレスモータなどである場合、誘導負荷はモータの固定子巻線であってもよく、モータがブラシ付き直流モータなどである場合、誘導負荷はモータの回転子巻線であってもよい。
【0056】
本願のいくつかの実施形態では、モータは三相交流モータであり、コンバータは、第1相ブリッジアーム、第2相ブリッジアーム及び第3相ブリッジアームを有する三相フルブリッジ回路であり、
【0057】
電池パックの充放電サイクルの放電段階で、2つ又は3つのスイッチモジュールをオンにし、オンにされたスイッチモジュールは異なる相ブリッジアームに位置し、且つ上部ブリッジアームに位置する少なくとも1つのスイッチモジュール及び下部ブリッジアームに位置する少なくとも1つのスイッチモジュールをオンにし、
【0058】
電池パックの充放電サイクルの充電段階で、放電段階でオンにされたスイッチモジュールをオフにし、放電段階でオンにされたスイッチモジュールが位置する上部ブリッジアーム又は下部ブリッジアームに対応する下部ブリッジアーム又は上部ブリッジアームのスイッチモジュールをオンにする。
【0059】
モータが三相交流モータである実施形態では、三相交流モータを駆動するための予め設定された直軸電流id及び予め設定された横軸電流iqを取得することができ、予め設定された直軸電流idは所望のコンバータの直流バス電流として設定されてもよく、予め設定された横軸電流iqは三相交流モータにより出力されたトルク値を目標範囲内にするように設定されてもよい。具体的には、予め設定された直軸電流idの方向は加熱過程で周期的に変化してもよく、予め設定された横軸電流iqは三相交流モータにより出力されたトルク値を非常に小さくするようにしてもよく、すなわち該トルクで車両を移動させることができず、車両の伝動機構の部品を損傷せず、小さな出力トルクのみを提供して車両の伝動機構のギア間の締付力を完了することができ、予め設定された横軸電流iqは複数回の実験によって得ることができる。
【0060】
三相交流モータの実施形態では、予め設定された直軸電流id及び予め設定された横軸電流iqを取得した後、三相コンバータのスイッチモジュールのオンオフ状態を制御することができ、すなわち三相コンバータのスイッチモジュールのオンオフ時間を制御して、電池パックの内部抵抗に予め設定された直軸電流idに基づいて熱量を生成させ、且つ加熱過程で予め設定された直軸電流id及び予め設定された横軸電流iqに基づいて三相コンバータを制御して三相交流モータの相電流を調整することができる。
【0061】
具体的には、
図6に示すように、加熱過程は複数の充放電サイクルを含み、各充放電サイクルは1つの予め設定された放電時間t1、1つの予め設定された充電時間t2及び2つの予め設定された切り替え時間t3、t4を含み、予め設定された直軸電流idは予め設定された放電時間t1内で方向が正であり且つ振幅が変化せず、予め設定された直軸電流idは予め設定された充電時間t2内で方向が負であり且つ振幅が変化せず、予め設定された直軸電流idは第1予め設定された切り替え時間t3内で方向が正から負に変化し、且つ振幅が変化し、予め設定された直軸電流idは第2予め設定された切り替え時間t4内で方向が負から正に変化し、且つ振幅が変化し、予め設定された放電時間t1と予め設定された充電時間t2は同じであり、第1予め設定された切り替え時間t3と第2予め設定された切り替え時間t4は同じであり、予め設定された加熱時間は予め設定された切り替え時間よりも大きい。各充放電サイクルのそれぞれの充電段階と放電段階の時間を同じに設定することにより、放電段階で誘導負荷に貯蔵されたエネルギーを全て、充電段階で電池パックにフィードバックする。このような実施形態では、誘導負荷内のエネルギーを全て電池パックにフィードバックすると、一方では、電池パックのエネルギー消費量が最小化され、他方では、低温下での電池パックの過度の不平衡放電のため、電極電位が平衡電極電位から逸脱され、電池が分極され、さらに電池を不可逆的に損傷することを回避する。
【0062】
ステップ208において、収集された電流パラメータが予め設定された所望の電流閾値区間を超えないと判断した場合、コンバータのスイッチモジュールのスイッチ周波数を調整せず、ステップ212に進む。
【0063】
ステップ212において、電池パックの状態パラメータ、コンバータの温度、モータの温度を取得し、車両の状態情報を取得し、電池パックの状態パラメータは、電圧、温度、荷電状態及び絶縁抵抗値のうちの少なくとも1つを含み、車両の状態情報は、車両の始動状態、ドア状態、衝突情報、高電圧状態、環境温度のうちの少なくとも1つを含む。
【0064】
次に、ステップ214において、取得された電池パックの状態パラメータ、コンバータの温度、モータの温度及び車両の状態情報に基づき、加熱停止条件を満たすか否かを判断し、具体的には、電池パックの状態パラメータ、コンバータの温度又はモータの温度が対応するパラメータ安全範囲を超えるか否かを判断し、及び車両の状態情報は車両が加熱条件にないことを指示するか否かを判断する。
【0065】
加熱停止条件を満たす場合、加熱停止要求を生成し、加熱を停止し(ステップ216)、具体的には、コンバータの全てのスイッチモジュールがオフ状態にあるように制御し、補助加熱機構と電池パックとの接続を切断する。加熱停止条件を満たさない場合、ステップ204に戻す。
【0066】
当業者が理解できるように、後続のステップに影響することなく、説明された順序とは異なる順序でステップ206~214が実行されてもよく、これらのステップは同時に実行されてもよい。
【0067】
図3は本願の一実施形態に係る補助加熱機構と電池パックとの接続を制御する方法300のフローチャートを示す。
図3を示すように、ステップ302において、加熱要求を受信する。加熱要求に応答して、ステップ304において、コンバータスイッチ駆動信号を生成する。次に、ステップ306において、
コンバータスイッチ駆動信号に基づき、電池パックが放電段階にあるか否かを判断する。
【0068】
電池パックが放電段階にある場合、補助加熱機構と電池パックを並列に接続する(ステップ310)。電池パックが放電段階にない場合、補助加熱機構と電池パックとの接続を切断する(ステップ312)。本願のいくつかの実施形態では、
図6に例示される予め設定された直軸電流idの波形を参照して、予め設定された放電時間t1で、補助加熱機構と電池パックを並列に接続し、予め設定された充電時間t2で、補助加熱機構と電池パックとの接続を切断する。
【0069】
図4は本発明の一実施形態に係る電池加熱システムの構造模式図を示す。電池加熱システムは、直流端子が電池パックP1の正極及び負極に接続されるコンバータP2と、コンバータP2の交流端子に接続される誘導負荷L1、L2、L3と、電池パックP1に並列に接続される補助加熱機構Raと、それぞれコンバータP2及びモータの巻線L1、L2、L3に接続されるコントローラP4であって、加熱要求に応答して、コンバータP2のスイッチモジュールを周期的にオン及びオフにするように制御して、電池パックP1とモータの巻線L1、L2、L3との間に周期的に放電及び充電するように制御し、電池パックP1の放電段階で、補助加熱機構Raと電池パックP1を並列に接続し、及び電池パックP1の充電段階で、補助加熱機構Raと電池パックP1との接続を切断するように構成されるコントローラP4と、を含む。該実施形態の補助加熱機構Raは加熱フィルムであってもよく、PTCヒーターであってもよい。電池パックP1の放電段階で、コントローラP4はスイッチK3及びK4をオンにして、補助加熱機構Raと電池パックP1を並列に接続し、及び電池パックP1の充電段階で、コントローラP4はスイッチK3及び/又はK4をオフにして、加熱フィルムと電池パックP1との接続を切断する。この実施形態では、2つのスイッチK3及びK4が例示され、理解できるように、この2つのスイッチは1つのスイッチに置き換えられてもよい。本願の一実施例では、
図6に例示される予め設定された直軸電流idの波形を参照して、第1予め設定された切り替え時間t3の開始時に、スイッチK3及びK4をオンにし、第2予め設定された切り替え時間t4の開始時に、スイッチK3及び/又はK4をオフにする。
【0070】
図4の実施形態では、モータP3は三相交流モータであり、コンバータP2は三相フルブリッジ回路である。理解できるように、
図4は1つの例示的な実施形態に過ぎず、実際の応用ニーズに応じて、モータP3は単相モータ、二相モータ、四相モータ又はより多くの相モータであってもよく、それに対応して、コンバータP2は単相回路、二相回路、四相回路又はより多くの相回路であってもよい。
【0071】
本願のいくつかの実施形態では、コントローラP4は電池管理システムP41、車両コントローラP43及びモータコントローラP42を含む。電池管理システムP41は電池パックP1の状態パラメータを取得することに用いられ、電池パックP1の状態パラメータが予め設定された加熱条件を満たす場合、車両コントローラP43に加熱要求を送信し、電池パックP1を加熱する時に取得された電池パックP1の状態パラメータが異常である場合、車両コントローラP43に加熱停止要求を送信する。本願のいくつかの実施形態では、電池パックP1の状態パラメータは、電圧、温度、SOC及び絶縁抵抗値のうちの少なくとも1つを含む。理解できるように、電池パックP1の状態パラメータは電池パックP1の状態を特徴付ける他のパラメータであってもよく、電池パックP1の電流、健康状態(SOH:State Of Health)、放電パワー、内部抵抗などを含むがこれらに限定されない。
【0072】
本願のいくつかの実施形態では、電池管理システムP41は電池パックP1の温度が予期温度閾値以上であると判定した場合、電池パックの温度が正常であり、それを加熱する必要がないことを特徴付ける情報を車両コントローラP43に報告して、車両コントローラP43が該情報に基づいて、電池管理システムP41に高電圧下で電源投入するように指示するための電源投入命令を電池管理システムP41に発行する。
【0073】
本願のいくつかの実施例では、電池パックP1の状態パラメータが電池パックP1の荷電状態を含む場合、予め設定された加熱条件は電池パックP1の荷電状態が荷電状態閾値よりも高いことを含む。荷電状態閾値は今回の加熱により消費される荷電状態を特徴付ける。荷電状態閾値は、動作シナリオ及び動作ニーズに応じて設定され、予期加熱温度、現在の温度、電池パックの自己加熱性能などを含むがこれらに限定されない。電池パックP1の荷電状態が荷電状態閾値よりも高い場合、電池パックP1の現在の電気量が加熱モードに入るのに必要な電気量を提供するのに十分であることが示され、電池パックP1の荷電状態が荷電状態閾値未満である場合、今回の加熱に十分な電気量を提供できないことが示される。
【0074】
モータコントローラP42はモータP3が非動作状態にあるか否かを監視し、車両コントローラP43にモータP3の動作状態情報を送信することに用いられ、及び、制御信号に応答して、コンバータP2のスイッチモジュールを周期的にオン及びオフにするように制御して、電池パックP1を加熱することに用いられる。
【0075】
本願のいくつかの実施例では、モータP3が非動作状態にあることは、モータP3が現在電気エネルギーを機械的エネルギーに変換する動作過程にないことを特徴付ける。いくつかの実施例では、モータP3が非動作状態にあることは、モータP3が停止状態にあるとも呼ばれる。いくつかの実施例では、モータコントローラP42はモータP3が動作状態にあると判定した場合、車両コントローラP43にモータP3が動作状態にあるという情報を報告して、車両コントローラP43に電池パック加熱システムを制御して電池パックP1を加熱することを停止させる。
【0076】
車両コントローラP43は電池パックP1が取り付けられた車両の状態情報を監視することに用いられ、及び、加熱要求、モータ動作状態情報及び加熱停止要求に応答して、モータコントローラP42に制御信号を送信することに用いられる。
【0077】
本願のいくつかの実施例では、電池パック加熱システムを制御する前に、さらに電池パック加熱システムの制御システムP4の各制御デバイスが通常の動作状態にあるか否かを確認する必要がある。該過程で、車両コントローラP43はさらに、車両の始動信号を検出した場合、車両コントローラP43の状態、電池管理システムP41の状態及びモータコントローラP42の状態が通常の動作状態にあるか否かを判断することに用いられる。
【0078】
いくつかの実施形態では、コンバータP2のスイッチモジュールP21、P22、P23、P24、P25、P26はモータコントローラP42により生成された駆動信号に基づいてオン及びオフにされる。特に、電池パックP1の充放電サイクルの放電段階で、これらのスイッチモジュールのうちの2つ又は3つのスイッチモジュールをオンにし、オンにされたスイッチモジュールは異なる相ブリッジアームに位置し、且つ上部ブリッジアームに位置する少なくとも1つのスイッチモジュール及び下部ブリッジアームに位置する少なくとも1つのスイッチモジュールをオンにし、換言すれば、P21、P24、P26をオンにするか、P22、P23、P26をオンにするか、P22、P24、P25をオンにするか、P21、P23、P26をオンにするか、P21、P24、P25をオンにするか、又はP22、P23、P25をオンにする可能性がある。電池パックP1の充放電サイクルの充電段階で、放電段階でオンにされたスイッチモジュールをオフにし、放電段階でオンにされたスイッチモジュールが位置する上部ブリッジアーム又は下部ブリッジアームに対応する下部ブリッジアーム又は上部ブリッジアームのスイッチモジュールをオンにする。
【0079】
コンバータP2の各スイッチモジュールは絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)チップ、IGBTモジュール、金属-酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などのパワースイッチデバイスのうちの1つ又は複数を含んでもよい。ここでは、スイッチモジュールの各IGBTデバイス及びMOSFETデバイスなどの組み合わせ方式及び接続方式については限定されない。上記パワースイッチデバイスの材料タイプについても限定されず、例えば、炭化ケイ素(すなわち、SiC)又は他の材料で製造されたパワースイッチデバイスを使用してもよい。なお、上記パワースイッチデバイスは逆並列ダイオードなどのダイオードを有する。具体的には、寄生ダイオード又は特に設置されたダイオードであってもよい。ダイオードの材料タイプについても限定されず、例えば、シリコーン(すなわち、Si)、炭化ケイ素又は他の材料で製造されたダイオードを使用してもよい。
【0080】
図5は本発明の別の実施形態に係る電池加熱システムの構造模式図を示す。
図5では、補助加熱機構はPTCヒーターであってもよく、加熱フィルムであってもよい。PTCヒーターの実施形態では、PTCヒーターはDC-DC変換器P5を介して電池パックP1に並列に接続される。いくつかの実施形態では、スイッチK3及びK4は常閉状態に維持され、電池パックP1の放電段階で、コントローラP4はスイッチK7をオンにして、PTCヒーターと電池パックP1を並列に接続し、及び電池パックP1の充電段階で、コントローラP4はスイッチK7をオフにして、PTCヒーターと電池パックP1との接続を切断する。DC-DC変換器P5によってPTCヒーターの両端の電圧を調整して、PTCヒーターの加熱電流及び加熱パワーを制御することができる。加熱電流を向上させることにより、加熱パワーを向上させることができ、これによりPTCヒーターの加熱パワーは電池パックP1の両端の電圧に限定されない。
【0081】
図4及び
図5に示される実施形態では、スイッチモジュールP21、P22、P23、P24、P25、P26のオンとオフ、特にオンオフ時間及びスイッチ周波数を制御することにより、モータコントローラP42は予め設定された直軸電流id及び予め設定された横軸電流iqに基づいて三相コンバータP2を制御して三相交流モータP3の相電流を調整させる。
図6を参照して説明されるように、モータコントローラP42は三相コンバータP2を制御して三相交流モータP3の相電流を調整させる過程で、予め設定された直軸電流idの方向は周期的に変化する。本願の実施形態では、モータコントローラP42は三相コンバータP2を制御して三相交流モータP3の相電流を調整させる過程で、予め設定された直軸電流idは、予め設定された放電時間t1及び予め設定された充電時間t2内で、電流の振幅が変化せずに、方向が順方向と逆方向に交互に変化するように制御され、このように、三相コンバータP2における同相
上下ブリッジアームのパワースイッチデバイス
のスイッチ回数が均一になり、デバイスの寿命のバランスが取られている。
【0082】
また、モータコントローラP42は三相コンバータP2を制御して三相交流モータP3の相電流を調整させる過程で、予め設定された横軸電流iqは一定の振幅を有する横軸電流であり、且つ該振幅は、大量の実験により得られ、モータ軸により出力されたトルク値を小さくする電磁トルクであり、且つ該電磁トルクで車両に移動させることができず、車両の伝動機構の部品を損傷せず、1つの小さな出力トルクのみを提供して車両の伝動機構のギアの隙間噛み合い又は締付力を完了することができる。
【0083】
本願のいくつかの実施形態では、コントローラP4は予め設定された直軸電流id及び予め設定された横軸電流iqに基づいて三相コンバータP2を制御して三相交流モータP3の相電流を調整させる場合、電池パックを加熱する前に、モータコントローラP42が三相交流モータP3の現在の三相電流値及びモータ回転子の位置角度情報を取得する必要があり、且つモータ回転子の位置角度情報に基づいて現在の三相電流値を直軸電流及び横軸電流に変換し、さらに加熱過程で直軸電流、横軸電流、予め設定された直軸電流及び予め設定された横軸電流に基づいて三相コンバータP2を制御して三相交流モータP3の相電流を調整させる。
【0084】
本願の一実施形態では、
図7に示すように、コントローラP4はフィードフォワードデカップリングユニットP423、座標変換ユニットP424、スイッチ信号取得ユニットP425をさらに含み、フィードフォワードデカップリングユニットP423は座標変換ユニットP424に接続され、座標変換ユニットP424はスイッチ信号取得ユニットP425及び三相交流モータP3に接続され、スイッチ信号取得ユニットP425はモータコントローラP42に接続され、モータコントローラP4
2は三相交流モータP3に接続される。具体的には、コントローラP4は直軸電流及び横軸電流を取得した後、直軸電流及び横軸電流をそれぞれ予め設定された直軸電流id及び予め設定された横軸電流iqと比較して、予め設定された直軸電流id及び予め設定された横軸電流iqに基づいて直軸電流及び横軸電流を調整し、さらに予め設定された直軸電流id及び予め設定された横軸電流iqに基づいて三相コンバータP2を制御する。予め設定された直軸電流id及び予め設定された横軸電流iqに基づいて直軸電流及び横軸電流を調整した後、該調整結果はフィードフォワードデカップリングユニットP423に出力され、フィードフォワードデカップリングユニットP423は
調整結果をデカップリングした後に直軸電圧Ud及び横軸電圧Uqを取得し、座標変換ユニットP424は直軸電圧Ud及び横軸電圧Uqに対して座標変換を行って第1電圧U
α及び第2電圧U
βを取得し、スイッチ信号取得ユニット
P425は第1電圧U
α及び第2電圧U
βに基づいてスイッチ信号を取得し、モータコントローラP42はスイッチ信号に基づいて三相コンバータP2を制御して三相交流モータP3の相電流を調整させる。このような実施形態では、予め設定された直軸電流id及び予め設定された横軸電流iqに基づいて取得された直軸電流及び横軸電流を調整することにより、対応する調整結果を取得し、且つ該調整結果を一連変化した後に三相コンバータP2のスイッチ信号を得て、モータコントローラP42に該スイッチ信号に基づいて三相コンバータP2を制御して三相交流モータP3の相電流を調整させ、三相交流モータの閉ループ制御の制御、及び加熱パワーの調整を実現し、電池加熱過程における有効性を強化し、モータなどの部品の損失を低減させる。
【0085】
本願の一実施形態では、コントローラP4がモータ回転子の位置角度情報及び三相交流モータP3の現在の三相電流値に基づいて直軸電流及び横軸電流を取得する具体的な過程は以下のとおりである。
【0086】
電池を加熱する前に、コントローラP4は三相交流モータP3の現在の三相電流値及びモータ回転子の位置角度情報を取得した後、座標変換ユニットP424は現在の三相電流値を自然座標系から静止座標系に変換し、且つモータ回転子の位置角度情報に基づいて静止座標系での現在の三相電流値を同期回転座標系での直軸電流及び横軸電流に変換する(
図8に示す)。
【0087】
このような実施形態では、現在の三相電流値を自然座標系から静止座標系に変換し、且つモータ回転子の位置角度情報に基づいて静止座標系での現在の三相電流値を同期回転座標系での直軸電流及び横軸電流に変換することにより、コントローラP4は取得された直軸電流及び横軸電流に基づいて三相コンバータP2を制御して三相交流モータP3の相電流を調整させる場合、同じ座標系の標準に基づき、調整過程における精度を向上させることができる。
【0088】
図7に示すように、三相交流モータP3の現在の三相電流値及びモータ回転子の位置角度情報を取得した後、座標変換ユニットP424はclark変換により自然座標系ABCでの変数を静止座標系α-βでの変数に変換し、その後、park変換により静止座標系α-βでの変数を同期回転座標系d-qでの変数に変換し、且つ座標変換全体に振幅が変化しない条件に従い、変換行列の前に変換係数2/3を追加する。
【0089】
具体的には、座標変換ユニットP424は、自然座標系ABCでの変数を静止座標系α-βでの変数に変換する場合、変換行列
【0090】
【0091】
に基づいて自然座標系ABCでの変数を変換するが、座標変換ユニットP424は、静止座標系α-βでの変数を同期回転座標系d-qでの変数に変換する場合、変換行列
【0092】
【0093】
に基づいて静止座標系α-βでの変数を変換し、次に、2つの変換を乗算して、自然座標系ABCから同期回転座標系d-qへの変換行列
【0094】
【0095】
を得ることができ、式中、θは三相交流モータP3の回転子直軸と三相交流モータP3のA相巻線との間の夾角(モータ回転子の位置角度情報)であり、変換行列T3s/2rの後に自然座標系ABCでの三相電流を横軸直軸電流に変換することができ、直軸電流は励磁電流であり、横軸電流はトルク電流であり、すなわち、横軸電流のみがモータ軸端の出力トルクに関連し、従って、加熱過程で、横軸電流を制御してモータ軸端のトルクの出力を制御することができる。
【0096】
三相交流モータP3のモータ軸端の出力トルク計算式
【0097】
【0098】
から分かるように、横軸電流iqがゼロである場合、モータ軸端にトルクを出力しないが、実際の使用中に横軸電流をゼロに制御し、すなわちモータの電磁トルクを生成しない場合、モータのゼロ位置を正確に取得する必要があり、モータのゼロ位置校正方法の精度及び信号収集精度などの要素によって制限されるため、モータのゼロ位置が正確ではない場合、制御アルゴリズムは横軸電流が終始にゼロであることを制御できず、さらに横軸電流値をゼロの付近に変動させ、その結果、車両を振動させ、振動強度が異なる動作条件下で異なり、このとき、車両内に運転手と乗客がいる場合、悪い運転経験が発生し、該欠陥を解消するために、本願では予め設定された横軸電流iqの振幅を一定の適切な値にリアルタイムに制御し、該値が車両を移動させたり振動させたりすることはできず、車両の伝動機構に潜在的な損傷を与えることはなく、単にモータ軸に振幅が小さなトルクを出力させ、伝動機構の機械的強度の許容範囲内にあり、このように、締付力と同様の効果を発生させ、伝動機構間の噛み合い隙間を削除し、運転手と乗客の良好な体験を確保することができ、さらに車両が電池パックの加熱を正常に実現することも確保でき、Teはモータ軸端の出力トルクを表し、pはモータポールペアの数を表し、
【0099】
【0100】
はモータの永久磁石フラックスを表し、Ldは直軸インダクタンスを表し、Lqは横軸インダクタンスを表し、idは直軸電流を表し、iqは横軸電流を表す。
【0101】
また、三相コンバータP2の同相ブリッジアームのパワースイッチのスイッチ回数の不均一によるデバイスの寿命の不均一の問題を防止するために、本願の実施形態に係る電池加熱システムは三相交流モータP3の相電流を調整する場合、方向が周期的に変化する予め設定された直軸電流を提供し、該予め設定された直軸電流は1つのサイクル内で、前半サイクルの電流方向が正であり、後半サイクルの電流方向が負であり、これにより三相コンバータP2の同相上下ブリッジアームのパワースイッチデバイスのスイッチ回数が均一になり、デバイスの寿命のバランスが取られている。
【0102】
さらに、収集された変数に対して座標変換を行って直軸電流及び横軸電流を取得した後、該直軸電流及び横軸電流をそれぞれ予め設定された直軸電流iq及び予め設定された横軸電流idと比較することができ、且つ比較結果をフィードフォワードデカップリングユニットP423にフィードバックし、フィードフォワードデカップリングユニットP423はフィードフォロード補償方式で変数を完全にデカップリングし、デカップリングが完了した後に取得された直軸電圧Ud及び横軸電圧Uqが座標変換ユニットP424に再伝送され、逆park変換行列
【0103】
【0104】
により静止座標系の電圧変数Uα及びUβを得て、その後、Uα及びUβがスイッチ信号取得ユニットP425に伝送され、スイッチ信号取得ユニットP425はスペースベクトルパルス幅変調アルゴリズム(SVPWM:space vector pulse width modulation)により三相コンバータP2を制御する6つのスイッチ信号を得て、モータコントローラP42は該6つのスイッチ信号に基づいて三相コンバータP2のパワースイッチデバイスをオン及びオフにするように制御し、これにより三相交流モータP3を流れる三相交流値の大きさを制御する。
【0105】
本願の実施形態では、電池パックP1の加熱過程で、いずれかのデバイスは温度が高すぎる場合にいずれも損傷するため、三相交流モータP3及び三相コンバータP2のパワーデバイスの温度をリアルタイムに監視する必要があり、三相コンバータP2又は三相交流モータP3のうちのいずれかの温度が温度閾値を超えると検出した場合、予め設定された直軸電流idの電流振幅を減少させ又は予め設定された直軸電流idをゼロにする。従って、三相交流モータP3を流れる三相巻線の相電流値も減少する又は0になり、このように、モータP3の発熱パワーを低減させ、さらに三相コンバータP2のパワーユニットの温度及び三相交流モータP3の三相巻線の温度を低減させ、これにより加熱効果を確保するとともに車両の部品を損傷しない。
【0106】
本願のいくつかの実施形態では、電池管理システムP41は電池パックP1の温度をリアルタイムに監視し、電池パックP1の温度が指定された加熱温度に達した場合、駆動用電池を加熱することを停止し、このとき、直軸電流を減少させる必要がある。このように設置すると、電池パックP1の過熱を効果的に防止して電池パックP1の損傷を防止し、電池パックP1の使用寿命を延ばす。
【0107】
図9は1つの例とする装置である。該装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。別の例とする装置は、携帯電話、タブレットPC、ノートパソコンなどであってもよい。別の例とする装置は、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよい。
【0108】
好ましい実施例を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な改良を行い、等価物でその中の部材を置き換えることができる。特に、構造上の矛盾がない限り、各実施例に記載されている各技術的特徴をいずれも任意の方式で組み合わせることができる。本発明は、本明細書に開示されている特定の実施例に限定されず、特許請求の範囲内にある全ての技術案を含む。
【符号の説明】
【0109】
100 電池パック加熱方法
135 スイッチ信号取得ユニット
200 電池パック加熱方法
300 方法
422 モータコントローラP
423 フィードフォワードデカップリングユニットP
424 座標変換ユニットP
425 スイッチ信号取得ユニットP