(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】蓄電デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/645 20210101AFI20240514BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20240514BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M50/645
H01G11/80
H01G11/84
(21)【出願番号】P 2022057837
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 篤
(72)【発明者】
【氏名】山根 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】梅村 幸司
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-076784(JP,A)
【文献】特開2004-296195(JP,A)
【文献】特開2009-199819(JP,A)
【文献】特開2000-268811(JP,A)
【文献】特開2023-149327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/60-50/691
H01G 11/80
H01G 11/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
開口を有し内部に上記電極体を収容したケース本体と、
上記開口を封口した平板状で、蓋体厚み方向に貫通する注液孔を有する蓋体と、
上記電極体に導通し、上記蓋体を貫通して外部に延出する正極端子及び負極端子と、
上記蓋体と上記正極端子とを絶縁する正極絶縁部材と、
上記蓋体と上記負極端子とを絶縁する負極絶縁部材と、
上記蓋体のうち上記注液孔を囲む注液孔周囲部にエネルギービーム溶接されて上記注液孔を封止する注液栓と、を備える
蓄電デバイスであって、
上記蓋体の上記注液孔周囲部は、
上記注液孔を囲む環状で、上記蓋体の蓋外側平面よりも蓋体厚み方向内側に位置し蓋体厚み方向外側を向く環状の蓋側当接面を含む当接段部と、
上記当接段部を囲む環状で、上記蓋外側平面よりも蓋体厚み方向内側かつ上記蓋側当接面よりも蓋体厚み方向外側で上記蓋側当接面よりも孔径方向外側に位置し蓋体厚み方向外側を向く環状で平坦な外側環状段面を含む外側段部と、を有しており、
上記注液栓は、
上記外側段部よりも孔径方向内側に配置され、
蓋体厚み方向内側を向いて上記蓋側当接面に対向して当接する環状の栓側当接面、及び、
蓋体厚み方向外側を向く平坦な周縁外向面を含み、
上記当接段部に当接する環状の外周縁部を有しており、
上記蓋体の上記外側段部と上記注液栓の上記外周縁部との間に形成され、一旦溶融した後に固化した金属からなる環状の溶融固化部は、全周に亘り、
上記蓋体の上記蓋外側平面よりも蓋体厚み方向内側に位置しており、
上記外側環状段面に連なると共に上記周縁外向面に連なり、かつ、
上記外側環状段面及び上記周縁外向面のうち、蓋体厚み方向外側に位置する比較外側面から、蓋体厚み方向内側に位置する比較内側面に向かうほど、蓋体厚み方向内側に位置する
表面を有する
蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスであって、
前記正極絶縁部材と前記溶融固化部との間の正極最短距離、及び、
前記負極絶縁部材と上記溶融固化部との間の負極最短距離のうち、短い最短距離が、30mm以下である
蓄電デバイス。
【請求項3】
電極体と、
開口を有し内部に上記電極体を収容したケース本体と、
上記開口を封口した平板状で、蓋体厚み方向に貫通する注液孔を有する蓋体と、
上記電極体に導通し、上記蓋体を貫通して外部に延出する正極端子及び負極端子と、
上記蓋体と上記正極端子とを絶縁する正極絶縁部材と、
上記蓋体と上記負極端子とを絶縁する負極絶縁部材と、
上記蓋体のうち上記注液孔を囲む注液孔周囲部にエネルギービーム溶接されて上記注液孔を封止する注液栓と、
を備え、
上記蓋体の上記注液孔周囲部は、
上記注液孔を囲む環状で、上記蓋体の蓋外側平面よりも蓋体厚み方向内側に位置し蓋体厚み方向外側を向く環状の蓋側当接面を含む当接段部と、
上記当接段部を囲む環状で、上記蓋外側平面よりも蓋体厚み方向内側かつ上記蓋側当接面よりも蓋体厚み方向外側で上記蓋側当接面よりも孔径方向外側に位置し蓋体厚み方向外側を向く環状で平坦な外側環状段面を含む外側段部と、を有しており、
上記注液栓は、
上記外側段部よりも孔径方向内側に配置され、
蓋体厚み方向内側を向いて上記蓋側当接面に対向して当接する環状の栓側当接面、及び、
蓋体厚み方向外側を向く平坦な周縁外向面を含み、
上記当接段部に当接する環状の外周縁部を有しており、
上記蓋体の上記外側段部と上記注液栓の上記外周縁部との間に形成され、一旦溶融した後に固化した金属からなる環状の溶融固化部は、全周に亘り、
上記蓋体の上記蓋外側平面よりも蓋体厚み方向内側に位置しており、
上記外側環状段面に連なると共に上記周縁外向面に連なり、かつ、
上記外側環状段面及び上記周縁外向面のうち、蓋体厚み方向外側に位置する比較外側面から、蓋体厚み方向内側に位置する比較内側面に向かうほど、蓋体厚み方向内側に位置する
表面を有する
蓄電デバイスの製造方法であって、
溶接前の上記蓋体の上記外側段部は、
上記外側環状段面から孔径方向内側に拡がった拡大外側環状段面、及び、
上記拡大外側環状段面の内周端縁から蓋体厚み方向内側に延びて上記蓋側当接面に届き、孔径方向内側を向く内側段差面を有しており、
溶接前の上記注液栓の上記外周縁部は、
上記周縁外向面から栓径方向外側に拡がった拡大周縁外向面、及び、
上記拡大周縁外向面の外周端縁から栓厚み方向内側に延びて栓径方向外側を向く栓外周端面を有しており、
上記注液栓の上記栓側当接面が上記蓋体の上記蓋側当接面に対向して当接した状態に、上記注液栓を上記蓋体の上記外側段部よりも孔径方向内側に配置する栓配置工程と、
エネルギービームにより、上記蓋体の上記外側段部と上記注液栓の上記外周縁部とを、全周に亘り溶接する栓溶接工程と、を備え、
上記栓溶接工程は、
溶接前の上記蓋体の上記外側段部のうち、上記拡大外側環状段面及び上記内側段差面を含む孔径方向内側の一部と、
溶接前の上記注液栓の上記外周縁部のうち、上記拡大周縁外向面及び上記栓外周端面を含む栓径方向外側の一部と、を溶融させつつ行う
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
溶接前の前記蓋体の前記蓋側当接面から前記拡大外側環状段面までの高さH1が、
溶接前の上記注液栓の前記栓側当接面から前記拡大周縁外向面までの厚さT1の1.1~1.4倍(H1=1.1T1~1.4T1)である
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
溶接前の上記注液栓の前記栓側当接面から前記拡大周縁外向面までの厚さT2が、
溶接前の前記蓋体の前記蓋側当接面から前記拡大外側環状段面までの高さH2の1.1~1.4倍(T2=1.1H2~1.4H2)である
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス、及び、蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓋体で開口を封口したケース本体内に電極体及び電解液を収容すると共に、蓋体を貫通して外部に正極端子及び負極端子を延出させた密閉型電池などの密閉型の蓄電デバイスが知られている(特許文献1参照)。
このような蓄電デバイスでは、ケース本体内に電極体を収容し、蓋体で開口を封口した後に、蓋体に予め設けられていた注液孔を通じて電解液をケース内に注液し、その後、蓋体の注液口周囲部に注液栓の外周縁部をレーザ溶接して注液孔を封止することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蓋体の注液口周囲部に注液栓の外周縁部をレーザ溶接する際には、溶接部分からスパッタ(溶融した金属粒)が飛散し、蓋体の様々な部位に付着することがある。中でも、蓋体と蓋体を貫通して外部に延出する正極端子及び負極端子とを絶縁する正極絶縁部材や負極絶縁部材の表面にスパッタが付着するのは、正極或いは負極とケースとの間の絶縁特性を低下させる虞が高く、好ましくない。特に、スパッタが溶接部位から低い角度で飛び出して短い飛行距離で絶縁部材に衝突し付着する場合には、スパッタが山なりに飛散して比較的長い飛行距離を掛けて絶縁部材に衝突する場合に比して、更に好ましくない。スパッタの飛行距離が短いために、スパッタ(金属粒)が溶融したまま樹脂からなる絶縁部材に衝突し付着するため、スパッタが絶縁部材に深く食い込みがちで脱落しにくいためである。
【0005】
一方、蓋体のうち注液孔の周囲に注液栓の当接面を当接させる当接段部を凹設すると共に、この当接段部を囲む外側段部を設けて、この外側段部の径方向内側に注液栓を配置し、蓋体の外側段部と注液栓の外周縁部とをレーザ溶接しようとする場合、蓋体の外側段部の径方向寸法に比して、注液栓の外周縁部の径方向寸法を小さくせざるを得ないため、蓋体の外側段部と注液栓の外周縁部との間には隙間が生じる。しかも、この隙間の大きさを周方向に均一にできるとは限らないので、レーザ溶接によって生じる、溶融した後に固化した金属からなる溶融固化部の厚さが薄い部分が生じ、注液栓の封止特性が低くなる場合があった。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、正極絶縁部材や負極絶縁部材へのスパッタの付着を抑制し絶縁特性が良好で、蓋体の注液孔周囲部に注液栓を封止特性良好に溶接した蓄電デバイス、及び、この蓄電デバイスの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、電極体と、開口を有し内部に上記電極体を収容したケース本体と、上記開口を封口した平板状で、蓋体厚み方向に貫通する注液孔を有する蓋体と、上記電極体に導通し、上記蓋体を貫通して外部に延出する正極端子及び負極端子と、上記蓋体と上記正極端子とを絶縁する正極絶縁部材と、上記蓋体と上記負極端子とを絶縁する負極絶縁部材と、上記蓋体のうち上記注液孔を囲む注液孔周囲部にエネルギービーム溶接されて上記注液孔を封止する注液栓と、を備える蓄電デバイスであって、上記蓋体の上記注液孔周囲部は、上記注液孔を囲む環状で、上記蓋体の蓋外側平面よりも蓋体厚み方向内側に位置し蓋体厚み方向外側を向く環状の蓋側当接面を含む当接段部と、上記当接段部を囲む環状で、上記蓋外側平面よりも蓋体厚み方向内側かつ上記蓋側当接面よりも蓋体厚み方向外側で上記蓋側当接面よりも孔径方向外側に位置し蓋体厚み方向外側を向く環状で平坦な外側環状段面を含む外側段部と、を有しており、上記注液栓は、上記外側段部よりも孔径方向内側に配置され、蓋体厚み方向内側を向いて上記蓋側当接面に対向して当接する環状の栓側当接面、及び、蓋体厚み方向外側を向く平坦な周縁外向面を含み、上記当接段部に当接する環状の外周縁部を有しており、上記蓋体の上記外側段部と上記注液栓の上記外周縁部との間に形成され、一旦溶融した後に固化した金属からなる環状の溶融固化部は、全周に亘り、上記蓋体の上記蓋外側平面よりも蓋体厚み方向内側に位置しており、上記外側環状段面に連なると共に上記周縁外向面に連なり、かつ、上記外側環状段面及び上記周縁外向面のうち、蓋体厚み方向外側に位置する比較外側面から、蓋体厚み方向内側に位置する比較内側面に向かうほど、蓋体厚み方向内側に位置する表面を有する蓄電デバイスである。
【0008】
この蓄電デバイスでは、溶融固化部が蓋体の外側平面よりも蓋体厚み方向内側に位置している。このため、エネルギービーム溶接により溶融固化部を形成して溶接する際にスパッタが発生しても、そのうち低い角度で飛散するスパッタについては、この溶融固化部よりも蓋体厚み方向外側に位置する蓋体の蓋外側平面と外側段部との間の段差面などに衝突して、注液孔周囲部の外に飛散することが抑制される。かくして、溶融固化部から低い角度で飛散する溶融状態のスパッタが正極絶縁部材や負極絶縁部材に衝突して深く食い込むようにして付着することが抑制されている。
その一方、この蓄電デバイスでは、全周に亘り、溶融固化部の表面が、蓋体の外側段部の外側環状段面に連なると共に注液栓の周縁外向面に連なり、かつ、外側環状段面及び周縁外向面のうち、蓋体厚み方向外側に位置する比較外側面から、蓋体厚み方向内側に位置する比較内側面に向かうほど、蓋体厚み方向内側に位置している。即ち、全周に亘って、溶融固化部の表面に局所的に凹んだ部位がなく、比較外側面から比較内側面に向かって、溶融固化部の表面の蓋体厚み方向の位置が、徐々に蓋体厚み方向内側に変化している。このため、溶融固化部をなす溶融金属が局所的に少なくなって、溶融固化部の蓋体厚み方向の寸法が局所的に小さく、封止性能が低下した部位を有さない。
かくして、正極絶縁部材や負極絶縁部材へのスパッタの付着を抑制し絶縁特性が良好でありながら、蓋体の注液孔周囲部に注液栓を封止特性良好に溶接した蓄電デバイスとなる。
【0009】
蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池などの二次電池、リチウムイオンキャパシタなどのキャパシタが挙げられる。
また、エネルギービーム溶接としては、レーザ光を用いるレーザ溶接や電子線を用いる電子ビーム溶接などが挙げられる。
【0010】
蓋体の注液孔周囲部において、当接段部の内周面が注液孔をなす形態としても良いし、当接段部の孔径方向内側に、更に孔径方向内側に突出する段部が存在する形態としても良い。また、外側段部よりも孔径方向外側は外側平面に連なる形態としても良いし、外側段部の孔径方向外側に、外側段部とは間隔を空けて、蓋体の外側平面よりも蓋体厚み方向内側に位置する環状の溝部がさらに存在する形態としても良い。
【0011】
(2)更に上述の(1)に記載の蓄電デバイスであって、前記正極絶縁部材と前記溶融固化部との間の正極最短距離、及び、前記負極絶縁部材と上記溶融固化部との間の負極最短距離のうち、短い最短距離が、30mm以下である蓄電デバイスとすると良い。
【0012】
上述の蓄電デバイスでは、溶融固化部と正極絶縁部材或いは負極絶縁部材との最短距離が30mm以下と短い。このため、特に、前述の形態としたことによる、正極絶縁部材や負極絶縁部材へのスパッタの付着を抑制できる効果の利益が大きく、蓄電デバイスの絶縁特性を良好に保つことができる。
【0013】
(3)上記課題を解決するための本発明の他の態様は、電極体と、開口を有し内部に上記電極体を収容したケース本体と、上記開口を封口した平板状で、蓋体厚み方向に貫通する注液孔を有する蓋体と、上記電極体に導通し、上記蓋体を貫通して外部に延出する正極端子及び負極端子と、上記蓋体と上記正極端子とを絶縁する正極絶縁部材と、上記蓋体と上記負極端子とを絶縁する負極絶縁部材と、上記蓋体のうち上記注液孔を囲む注液孔周囲部にエネルギービーム溶接されて上記注液孔を封止する注液栓と、を備え、上記蓋体の上記注液孔周囲部は、上記注液孔を囲む環状で、上記蓋体の蓋外側平面よりも蓋体厚み方向内側に位置し蓋体厚み方向外側を向く環状の蓋側当接面を含む当接段部と、上記当接段部を囲む環状で、上記蓋外側平面よりも蓋体厚み方向内側かつ上記蓋側当接面よりも蓋体厚み方向外側で上記蓋側当接面よりも孔径方向外側に位置し蓋体厚み方向外側を向く環状で平坦な外側環状段面を含む外側段部と、を有しており、上記注液栓は、上記外側段部よりも孔径方向内側に配置され、蓋体厚み方向内側を向いて上記蓋側当接面に対向して当接する環状の栓側当接面、及び、蓋体厚み方向外側を向く平坦な周縁外向面を含み、上記当接段部に当接する環状の外周縁部を有しており、上記蓋体の上記外側段部と上記注液栓の上記外周縁部との間に形成され、一旦溶融した後に固化した金属からなる環状の溶融固化部は、全周に亘り、上記蓋体の上記蓋外側平面よりも蓋体厚み方向内側に位置しており、上記外側環状段面に連なると共に上記周縁外向面に連なり、かつ、上記外側環状段面及び上記周縁外向面のうち、蓋体厚み方向外側に位置する比較外側面から、蓋体厚み方向内側に位置する比較内側面に向かうほど、蓋体厚み方向内側に位置する表面を有する蓄電デバイスの製造方法であって、溶接前の上記蓋体の上記外側段部は、上記外側環状段面から孔径方向内側に拡がった拡大外側環状段面、及び、上記拡大外側環状段面の内周端縁から蓋体厚み方向内側に延びて上記蓋側当接面に届き、孔径方向内側を向く内側段差面を有しており、溶接前の上記注液栓の上記外周縁部は、上記周縁外向面から栓径方向外側に拡がった拡大周縁外向面、及び、上記拡大周縁外向面の外周端縁から栓厚み方向内側に延びて栓径方向外側を向く栓外周端面を有しており、上記注液栓の上記栓側当接面が上記蓋体の上記蓋側当接面に対向して当接した状態に、上記注液栓を上記蓋体の上記外側段部よりも孔径方向内側に配置する栓配置工程と、エネルギービームにより、上記蓋体の上記外側段部と上記注液栓の上記外周縁部とを、全周に亘り溶接する栓溶接工程と、を備え、上記栓溶接工程は、溶接前の上記蓋体の上記外側段部のうち、上記拡大外側環状段面及び上記内側段差面を含む孔径方向内側の一部と、溶接前の上記注液栓の上記外周縁部のうち、上記拡大周縁外向面及び上記栓外周端面を含む栓径方向外側の一部と、を溶融させつつ行う蓄電デバイスの製造方法である。
【0014】
この製造方法では、栓溶接工程でのエネルギービーム溶接において、溶接前の蓋体の外側段部の一部と注液栓の外周縁部の一部とをそれぞれ溶融させて、蓋体の外側段部と注液栓の外周縁部との間に溶融固化部を形成する。この溶接に当たり、溶接前の蓋体の外側段部と注液栓の外周縁部とに、蓋体厚み方向の高低差を設けておき、両者のうち相対的に蓋体厚み方向外側に位置する部位(比較外側面をなす部位)を溶融させた溶融金属の一部をも、両者間の隙間を埋めるなどに用いる。これにより、全周に亘って、溶融固化部の表面に局所的に凹んだ部位がなく、比較外側面から比較内側面に向かって、溶融固化部の表面の蓋体厚み方向の位置が、徐々に蓋体厚み方向内側に変化した溶融固化部を形成することができる。溶融固化部をなす溶融金属が局所的に少なくなって、溶融固化部の蓋体厚み方向の寸法が局所的に小さく、封止性能が低下した部位を有さない。
しかも、溶融固化部となる部位から低い角度で飛散するスパッタは、この溶融固化部よりも蓋体厚み方向外側に位置する蓋体の蓋外側平面と外側段部との間の段差面などに衝突して、注液孔周囲部の外に飛散することが抑制できる。かくして、溶融固化部から低い角度で飛散する溶融状態のスパッタが正極絶縁部材や負極絶縁部材に衝突して深く食い込むようにして付着することも抑制できる。
かくして、正極絶縁部材や負極絶縁部材へのスパッタの付着を抑制し絶縁特性が良好でありながら、蓋体の注液孔周囲部に注液栓を封止特性良好に溶接した蓄電デバイスとなる。
【0015】
(4)さらに上述の(3)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、溶接前の前記蓋体の前記蓋側当接面から前記拡大外側環状段面までの高さH1が、溶接前の上記注液栓の前記栓側当接面から前記拡大周縁外向面までの厚さT1の1.1~1.4倍(H1=1.1T1~1.4T1)である蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0016】
栓溶接工程(注液栓溶接)にあたっては、エネルギービームで蓋体の外側段部と注液栓の外周縁部とを溶融しつつ、形成された溶融固化部の先端(蓋体厚み方向内側の内側端)が、概ね蓋側当接面と同じ程度の位置になるように、溶融させるのが好ましい。浅すぎると溶接強度が低い一方、深すぎると蓋体の蓋体厚み方向全体が溶融しかねず、好ましくない。
一方、比較的大きくした蓋体の蓋側当接面から拡大外側環状段面までの高さH1が、注液栓の外周縁部の厚さ、即ち、栓側当接面から拡大周縁外向面までの厚さT1に比して大き過ぎる場合、即ち両者間に生じる段差が大きい場合には、両者にエネルギービームを照射すると、蓋体の外側段部と注液栓の外周縁部の溶融状態に差が生じ易い。具体的には、注液栓の外周縁部のうち栓径方向外側の栓外周端面付近は、栓厚み方向全体に溶融するが、蓋体の外側段部の孔径方向内側の部分のうち、蓋体厚み方向内側の部分が十分深くまで溶融出来ないために、溶融固化部の形状がいびつになり、蓋の注液孔周囲部の外側段部と注液栓の外周縁部との間の溶接が不完全になり易い。
他方、高さH1が厚さT1に比して余り大きくない場合には、蓋体の外側段部を溶融させた溶融金属の量が少なくなり、蓋体の外側段部と注液栓の外周縁部との隙間への溶融金属の充填量が不足しかねない。
【0017】
これに対し、上述のように、蓋側当接面から拡大外側環状段面までの高さH1を、注液栓の栓側当接面から拡大周縁外向面までの厚さT1の1.1~1.4倍とした。これにより、蓋体の注液孔周囲部の外側段部の孔径方向内側の部分を溶融させることによって、溶融固化部となる溶融金属(肉)を得ながら、蓋の注液孔周囲部の外側段部と注液栓の外周縁部との間に、良好な形態の溶融固化部を設けて、両者を溶接することができる。
【0018】
(5)或いは前述の(3)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、溶接前の上記注液栓の前記栓側当接面から前記拡大周縁外向面までの厚さT2が、溶接前の前記蓋体の前記蓋側当接面から前記拡大外側環状段面までの高さH2の1.1~1.4倍(T2=1.1H2~1.4H2)である蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0019】
前述したように、栓溶接工程(注液栓溶接)にあたっては、エネルギービームで蓋体の外側段部と注液栓の外周縁部とを溶融しつつ、溶融して形成された溶融固化部の先端が、概ね蓋側当接面と同じ程度の位置になるように、溶融させるのが好ましい。
一方、比較的大きくした注液栓の外周縁部の厚さT2、即ち、栓側当接面から拡大周縁外向面までの厚さT2が、蓋体の蓋側当接面から拡大外側環状段面までの高さH2に比して大き過ぎる場合、即ち両者間に生じる段差が大きい場合には、両者にエネルギービームを照射すると、蓋体の外側段部と注液栓の外周縁部の溶融状態に差が生じ易い。具体的には、蓋体の注液孔周囲部の外側段部の孔径方向内側の部分は深くまで溶融するが、注液栓の外周縁部のうち栓径方向外側の栓外周端面付近は、栓厚み方向内側の部分まで十分深くまで溶融出来ないために、溶融固化部の形状がいびつになり、蓋の注液孔周囲部の外側段部と注液栓の外周縁部との間の溶接が不完全になり易い。
他方、厚さT2が高さH2に比して余り大きくない場合には、注液栓の外周縁部を溶融させた溶融金属の量が少なくなり、蓋体の外側段部と注液栓の外周縁部との隙間への溶融金属の充填量が不足しかねない。
【0020】
これに対し、上述のように、注液栓の栓側当接面から拡大周縁外向面までの厚さT2を、蓋側当接面から拡大外側環状段面までの高さH2の1.1~1.4倍とした。これにより、注液栓の外周縁部のうち栓径方向外側の栓外周端面付近を溶融させることによって、溶融固化部となる溶融金属(肉)を得ながら、蓋の注液孔周囲部の外側段部と注液栓の外周縁部との間に、良好な形態の溶融固化部を設けて、両者を溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1,2及び変形形態1,2に係る電池の斜視図である。
【
図2】実施形態1,2及び変形形態1,2に係る電池の製造の各ステップを示すフローチャートである。
【
図3】実施形態1及び変形形態1に係り、電池の蓋体に注液栓を配置した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図4】実施形態1及び変形形態1に係り、電池の蓋体に配置した注液栓をレーザ溶接した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図5】実施形態2及び変形形態2に係り、電池の蓋体に注液栓を配置した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図6】実施形態2及び変形形態2に係り、電池の蓋体に配置した注液栓をレーザ溶接した状態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態1等に係る電池(蓄電デバイス)1の斜視図を、
図2に各工程のフローチャートを、
図3,
図4に電池1のうち蓋体40と注液栓80との関係を示す拡大断面図及び説明図を示す。なお、以下では、電池1の電池高さ方向AH、電池幅方向BH及び電池厚み方向CHを、
図1に示す方向と定めて説明する。この電池1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0023】
<実施形態1>
電池1は、ケース20と、ケース20の内部に収容された電極体10と、ケース20に固設された正極端子50P及び負極端子50N等から構成されている。電極体10は、ケース20内で、図示しない袋状の絶縁フィルムに覆われている。またケース20内には、電解液70が収容されており、その一部は電極体10内に含浸され、一部はケース20の底部に溜まっている。
【0024】
このうちケース20は、金属(本実施形態ではアルミニウム)からなり、一方(
図1において上方)が開口30Hを有する有底角筒状のケース本体30と、開口30H内を閉塞する形態でケース本体30に溶接された矩形板状の蓋体40とから構成されている。
【0025】
蓋体40のうち電池幅方向BHの一方(
図1において左上方)の端部付近には、アルミニウム材から構成され、蓋体40を貫通してケース20内から外部に延出する正極端子50Pが、正極絶縁部材60Pを介し蓋体40と絶縁された状態で、蓋体40に固設されている。この正極端子50Pは、ケース20内で電極体10の正極集電部10Pに接続し導通している。
また蓋体40のうち電池幅方向BHの他方(
図1において右下方)の端部付近には、銅材から構成され、蓋体40を貫通してケース20内から外部に延出する負極端子50Nが、負極絶縁部材60Nを介し蓋体40と絶縁された状態で、蓋体40に固設されている。この負極端子50Nは、ケース20内で電極体10の負極集電部10Nに接続し導通している。
【0026】
なお、正極絶縁部材60P及び負極絶縁部材60Nは、絶縁性樹脂からなり、本実施形態では、具体的にはPFAからなる。なお、絶縁部材60P,60Nを構成する絶縁性樹脂材としては、上述のPFAなどのフッ素樹脂のほか、PE,PP,PPSなど適宜の絶縁樹脂を用いることができる。
【0027】
また蓋体40のうち電池幅方向BHの中央付近には、ケース20の内圧が開弁圧を超えたときに破断して開弁する安全弁48が設けられている。また蓋体40のうち、負極端子50N寄り(
図1において右寄り)の注液孔周囲部42の中央には、ケース20の内外を連通する注液孔40LH(
図3,
図4参照)が穿孔されている。この注液孔40LHは、電解液70をケース20内に注液するのに用いられる。
【0028】
この注液孔40LHは、金属(本実施形態ではアルミニウム)からなる円板状の注液栓80で気密に封止されている。具体的には、蓋体40の注液孔周囲部42に配置した注液栓80で注液孔40LHを覆い、さらに、注液栓80を全周に亘って蓋体40の注液孔周囲部42に溶接したことにより封止を行っている。蓋体40と注液栓80の間には、これらをなす金属が一旦溶融した後に固化した円環状の溶融固化部90が形成されている。
図4に示すように、この環状の溶融固化部90は、全周に亘り、蓋体40の蓋外側平面40Uよりも蓋体厚み方向内側LTI(
図4において下方)に位置している。このため、レーザ溶接により溶融固化部90を形成して溶接する際に発生するスパッタ(図示しない)のうちでも、低い角度で飛散する溶融状態のスパッタは、外側段差面43UDなどに衝突して、正極絶縁部材60Pや負極絶縁部材60Nに衝突して深く食い込むようにして付着することが抑制されている。
【0029】
しかも、溶融固化部90は、蓋体40の外側段部43の外側環状段面43Uに連なると共に注液栓80の周縁外向面82Uに連なり、かつ、外側環状段面43U及び周縁外向面82Uのうち、蓋体厚み方向外側LTU(
図4において上方)に位置する外側環状段面43U(比較外側面)から、蓋体厚み方向内側に位置する周縁外向面82U(比較内側面)に向かうほど、蓋体厚み方向内側LTIに位置する表面90Sを有している。即ち、全周に亘って、溶融固化部90の表面90Sに局所的に凹んだ部位がなく、外側環状段面43Uから周縁外向面82Uに向かって、溶融固化部90の表面90Sの蓋体厚み方向LTの位置が、徐々に蓋体厚み方向内側LTIに変化している。このため、この電池1では、溶融固化部90をなす溶融金属が局所的に少なくなって、溶融固化部90の蓋体厚み方向LTの寸法が局所的に小さく、封止性能が低下した部位を有さない。
かくして、正極絶縁部材60Pや負極絶縁部材60Nへのスパッタの付着を抑制し絶縁特性が良好でありながら、蓋体40の注液孔周囲部42に注液栓80を封止特性良好に溶接した電池1となる。
【0030】
前述したように、本実施形態1の電池1では、注液孔40LH及び注液栓80は、蓋体40のうち、電池幅方向BHの中央よりも負極端子50N寄り(
図1において右下方)の部位に設けられている。このため、
図1から容易に理解できるように、注液栓80の溶接によって形成された環状の溶融固化部90と負極絶縁部材60Nの間の最短距離である負極最短距離LNは、溶融固化部90と正極絶縁部材60Pの間の最短距離である正極最短距離LPに比して、小さくされている。本実施形態の電池1(ケース20)では、正極最短距離LP及び負極最短距離LNのうち、より短い負極最短距離LNの大きさは、30mmよりも小さい概ね25mmである。このように溶融固化部90から絶縁部材60P,60Nまでの距離が近い場合には、溶融固化部90から飛散するスパッタの飛距離が小さく、溶融状態のスパッタが絶縁部材60P,60Nに衝突し深く食い込むようにして付着しやすい。しかし、本実施形態では、溶融固化部90が全周に亘り蓋体40の蓋外側平面40Uよりも蓋体厚み方向内側LTI(
図4において下方)に位置している。このため、低い角度で飛散する溶融状態のスパッタが負極最短距離LNの短い負極絶縁部材60Nに衝突するのを、効果的に抑制でき、電池1の絶縁特性を良好に保つことができる。
【0031】
なお、ケース20に収容された電極体10は、いわゆる扁平捲回型電極体であり、帯状の正極板11と帯状の負極板12とを、一対の帯状のセパレータ13を介して捲回し、電池厚み方向CHに押圧して扁平にしてなる。この電極体10は、横倒しの姿勢、即ち、捲回軸10Xを電池幅方向BHに一致する姿勢として、ケース20内に収容されている。電極体10のうち正極板11に導通する正極集電部10Pには正極端子50Pが接合されており、前述したように、この正極端子50Pは蓋体40を貫通して外部に延出している。また、電極体10のうち負極板12に導通する負極集電部10Nには負極端子50Nが接合されており、この負極端子50Nは蓋体40を貫通して外部に延出している。
【0032】
次いで、この電池1の製造方法について、
図2のフローチャート及び
図3,
図4の拡大断面図を用いて説明する。
まず、未封止電池形成工程S1においては、予め、公知の手法で扁平捲回型の電極体10を形成しておく。さらに、超音波溶接などの手法を用いて、未封止蓋体40Mに固設された正極端子50P及び負極端子50Nの内側端部に、電極体10の正極集電部10P及び負極集電部10Nをそれぞれ接合し、未封止蓋体40M及び電極体10を、正極端子50P及び負極端子50Nを介して一体化させる。さらに、箱状に折り曲げた樹脂フィルム(図示しない)で電極体10を覆っておく。
【0033】
そして、未封止電池形成工程S1のうち電極体収容工程S11において、未封止蓋体40Mと一体化した電極体10を、開口30Hを通じてケース本体30内に収容し、未封止蓋体40Mでケース本体30の開口30Hを塞ぐ。
【0034】
次いで、封口工程S12では、レーザ溶接などの手法を用いて、ケース本体30と未封止蓋体40Mとを、未封止蓋体40Mの全周に亘って溶接して、ケース20を形成する。
【0035】
続く注液工程S13では、未封止蓋体40Mの注液孔40LHを通じて、ケース20内に予め定めた量の電解液70を注液する。これにより、電極体10内に電解液70が含浸される。かくして、注液孔40LHを通じて、ケース20の内外が連通している未封止電池1Mを形成する。なお、次の栓配置工程S2及び栓溶接工程S3を行うのに先立ち、この未封止電池1Mについて、初充電やエージングなどの処理や、各種の試験を行っておくこともできる。
【0036】
栓配置工程S2では、
図3に示すように、この未封止電池1Mの未封止蓋体40Mのうち、注液孔周囲部42に未封止注液栓80Mを配置し、この未封止注液栓80Mで注液孔40LHを覆う。
【0037】
続く栓溶接工程S3では、未封止蓋体40Mの注液孔周囲部42と未封止注液栓80Mの外周縁部82とを、全周に亘りレーザビームLBを用いてレーザ溶接する。これにより、未封止蓋体40Mと未封止注液栓80Mとは、注液栓80が溶接された蓋体40となる。この蓋体40の注液孔周囲部42と注液栓80の外周縁部82との間には、これらをなす金属が一旦溶融した後に固化した溶融固化部90が環状に形成され、電極体10がケース20内に気密に封止された電池1が完成する(
図4参照)。
なお、完成した密閉型の電池1について、その後の出荷等に先立ち、各種の処理や試験を行うこともできる。
【0038】
次いで、栓配置工程S2に用いられる本実施形態の未封止蓋体40M及び未封止注液栓80Mについて説明する(
図3参照)。
なお、未封止蓋体40M及び蓋体40における、蓋体厚み方向LT、蓋体厚み方向外側LTU、及び、蓋体厚み方向内側LTIを、
図3に矢印で示す。蓋体厚み方向LTは、電池1においては、電池高さ方向AHに一致する。また、注液孔40LHの孔軸線LHXを中心とする孔径方向外側HDU、孔径方向内側HDIも、
図3に示す。電池1では、蓋体厚み方向PTは、電池高さ方向AHに一致する。これらの方向は、
図4~
図6においても同様である。
【0039】
さらに、未封止注液栓80M及び注液栓80における、栓厚み方向PT、栓厚み方向外側PTU、及び、栓厚み方向内側PTIも、
図3に矢印で示す。これらは、未封止注液栓80Mを未封止蓋体40Mの注液孔周囲部42内に配置した状態では、
図3に示すように、蓋体厚み方向LT、蓋体厚み方向外側LTU、及び、蓋体厚み方向内側LTIに一致する。また、未封止注液栓80M及び注液栓80の栓軸線PXを中心とする栓径方向外側PDU、栓径方向内側PDIも、
図3に示す。これらは、栓軸線PXが孔軸線LHXに一致するように、未封止注液栓80Mを未封止蓋体40Mの注液孔周囲部42内に配置した場合には、
図3に示すように、孔軸線LHXを中心とする孔径方向外側HDU、孔径方向内側HDIに一致する。但し、未封止注液栓80Mを未封止蓋体40Mの注液孔周囲部42内に位置ズレして配置した状態では、栓軸線PXは孔軸線LHXに一致しない場合もある。これらの方向も、
図4~
図6において同様である。
【0040】
未封止蓋体40Mは、蓋体厚み方向外側LTU(
図3において上方)を向く平板状の蓋外側平面40Uと、蓋体厚み方向内側LTI(
図3において下方)を向く平板状の蓋内側平面40Iと、を有する矩形平板状である。この未封止蓋体40Mの注液孔周囲部42は、注液孔40LHを囲む円環状の当接段部44と、この当接段部44を囲む円環状の外側段部43とを有している。
【0041】
更に詳細には、当接段部44は、未封止蓋体40Mを蓋体厚み方向LTに貫通する円孔状の注液孔40LHを囲む円環状で、蓋外側平面40Uよりも蓋体厚み方向内側LTIに位置し蓋体厚み方向外側LTUを向く円環状で平坦な蓋側当接面44Uを含んでいる。
【0042】
一方、外側段部43は、当接段部44を囲む円環状であり、蓋外側平面40Uよりも蓋体厚み方向内側LTIかつ蓋側当接面44Uよりも蓋体厚み方向外側LTUで蓋側当接面44Uよりも孔径方向外側HDUに位置し蓋体厚み方向外側LTUを向く円環状で平坦な外側環状段面43U、この外側環状段面43Uから孔径方向内側HDIに拡がった拡大外側環状段面143UEを有している。加えて、この拡大外側環状段面143UEの内周端縁143UEFから蓋体厚み方向内側LTIに延びて蓋側当接面144Uに届き、孔径方向内側HDIを向く内側段差面143IDを有している。
【0043】
一方、未封止注液栓80Mは、中央部分が栓厚み方向内側PTI(
図3において下方)に円錐台状に窪んだ中央部81と、この中央部81の周囲を囲む平板円環状の外周縁部82とを有する。このうち中央部81は、栓厚み方向外側PTUを向き円錐台状に窪んだ中央凹面81Rと、栓厚み方向内側PTIに向けて円錐台状に膨らんだ中央凸面81Pとを有している。また、外周縁部82は、蓋体厚み方向内側LTIを向く円環状で平板状の栓側当接面82Iと、栓厚み方向外側PTUを向く平板円環状の周縁外向面82U、及び、この周縁外向面82Uから栓径方向外側PDUに拡がった拡大周縁外向面82UEを有している。さらにこの拡大周縁外向面82UEのうち、栓径方向外側PDUの外周端縁82UEFからは、栓厚み方向内側PTIに向かって延び、栓側当接面82Iまで届き、栓径方向外側PDUを向く円筒状の栓外周端面82Tが形成されている。
【0044】
栓配置工程S2では、未封止電池1Mの未封止蓋体40Mのうち、注液孔周囲部42に未封止注液栓80Mを配置し、この未封止注液栓80Mで注液孔40LHを覆う。具体的には、未封止蓋体40Mの注液孔周囲部42の外側段部43の孔径方向内側HDIに、別途用意した未封止注液栓80Mを配置する。この栓配置工程S2において、未封止注液栓80Mの外周縁部82の栓側当接面82Iは、未封止蓋体40Mの当接段部44の蓋側当接面44Uに対向してこれに当接する。これにより、未封止注液栓80Mの円環状の外周縁部82は、未封止蓋体40Mの当接段部44に当接する。
図3に示すように、この状態で、未封止蓋体40Mの蓋側当接面44Uから拡大外側環状段面43UEまでの高さH1は、未封止注液栓80Mの栓側当接面82Iから拡大周縁外向面82UEまでの厚さT1に比して大きくなっている。即ち、未封止蓋体40Mの外側段部43と未封止注液栓80Mの外周縁部82との間に、蓋体厚み方向LTの高低差が設けられている。
【0045】
続く栓溶接工程S3では、レーザビームLBを照射して、未封止蓋体40Mの外側段部43のうち外側段部43のうち拡大外側環状段面43UE及び内側段差面43IDを含む孔径方向内側HDIの一部を溶融させる。これと共に、未封止注液栓80Mの外周縁部82のうち、拡大周縁外向面82UE及び栓外周端面82Tを含む栓径方向外側PDUの一部を溶融させて、全周に亘り蓋体40の外側段部43に注液栓80の外周縁部82をレーザ溶接する(
図4参照)。このレーザ溶接では溶加材は用いず、形成される溶融固化部90は、蓋体40及び注液栓80をなす金属(アルミニウム)のみからなる。
【0046】
本実施形態1では、前述したように、未封止蓋体40Mの外側段部43と未封止注液栓80Mの外周縁部82との間に、蓋体厚み方向LTの高低差を有しており、栓溶接工程S3のレーザ溶接を両者を溶融させつつ行う。このため、相対的に蓋体厚み方向外側LTUに位置する部位、本実施形態1では未封止蓋体40Mの外側段部43のうち孔径方向内側HDIの部位を溶融させた溶融金属の一部をも、未封止蓋体40Mの外側段部43と未封止注液栓80Mの外周縁部82との間の隙間を埋めるなどに用いて、溶融固化部90の形成に用いることができる。かくして、外側環状段面43Uに連なると共に周縁外向面82Uに連なり、外側環状段面43U(比較外側面)から周縁外向面82U(比較内側面)に向かうほど、蓋体厚み方向内側LTIに位置する表面90Sを有する溶融固化部90を、全周に亘り容易に形成することができる。このため、この電池1は、溶融固化部90をなす溶融金属が局所的に少なくなって、溶融固化部90の蓋体厚み方向LT(
図4において上下方向)の寸法が局所的に小さく、封止性能が低下した部位を有さない。
【0047】
また、電池1(封止後の蓋体40)の溶融固化部90は、全周に亘って、蓋体40の蓋外側平面40Uよりも蓋体厚み方向内側LTI(
図4において下方)に位置している。本実施形態1では、全周に亘って、溶融固化部90は蓋外側平面40Uよりも概ね0.2mm程度、蓋体厚み方向内側LTIに位置している。このため、レーザ溶接時に、溶融固化部90から低い角度で飛散する溶融状態のスパッタは、蓋外側平面40Uと外側段部43との間の外側段差面43UDに衝突するので、このようなスパッタが正極絶縁部材60Pや負極絶縁部材60Nに衝突して深く食い込むようにして付着することが抑制される。
【0048】
加えて本実施形態1では、前述したように、未封止蓋体40Mの蓋側当接面44Uから拡大外側環状段面43UEまでの高さH1(本実施形態では高さH1=0.5mm)は、未封止注液栓80Mの栓側当接面82Iから拡大周縁外向面82UEまでの厚さT1(本実施形態では厚さT1=0.4mm)に比して大きくなっている。この高さH1は、厚さT1の1.1.~1.4倍(H1=1.1T1~1.4T1)とすると良く、本実施形態では、1.25倍(H1=1.25T1)としてある。
【0049】
栓溶接工程S3にあたっては、
図4に示すように、形成された溶融固化部90の先端(蓋体厚み方向内側LTIの内側端)90Aが、蓋体厚み方向LTについて、概ね蓋側当接面44Uと同じ程度の位置になるように、溶融させるのが好ましい。先端90Aの位置が浅すぎると溶接強度が低い一方、深すぎると蓋体40の蓋体厚み方向LTの全体が溶融しかねず、好ましくない。
一方、高さH1が厚さT1に比して大き過ぎる場合には、両者に蓋体厚み方向外側LTUからレーザビームLBを照射すると、蓋体40の外側段部43と注液栓80の外周縁部82の溶融状態に差が生じ易い。具体的には、注液栓80の外周縁部82のうち栓外周端面82T付近は蓋体厚み方向LT全体に溶融するが、蓋体40の外側段部43の内側段差面43ID付近は深くまで十分溶融出来ないために、形成される溶融固化部90の形状がいびつになり、蓋体40の外側段部43と注液栓80の外周縁部82との溶接が不完全になり易い。
他方、高さH1が厚さT1に比して余り大きくない場合には、注液栓180の外周縁部182を溶融させた溶融金属の量が少なくなり、蓋体140の外側段部143と注液栓180の外周縁部182との隙間への溶融金属の充填量が不足しかねない。
【0050】
これに対し本実施形態1では、高さH1は、厚さT1の1.1.~1.4倍の範囲内の1.25倍としている。これにより、相対的に蓋体厚み方向外側LTUに位置する蓋体40の外側段部43を溶融させることによって、溶融固化部90となる溶融金属(肉)を得て、蓋体40の外側段部43と注液栓80の外周縁部82との間に、良好な形態の溶融固化部90を設けて、両者を溶接した電池1を製造することができる。
【0051】
<変形形態1>
上述した実施形態1では、蓋体40の外側段部43は、蓋体厚み方向外側LTUに、外側環状段面43Uと、これから孔径方向内側HDIに続く拡大外側環状段面43UEからなる平坦面を有するものとしていた。
しかし、
図3、
図4において破線で示すように、外側環状段面43Uの孔径方向外側HDUに、蓋体厚み方向内側LTIに窪んだ環状の外溝部45を設けるようにしても良い。
このように外溝部45を設けた場合には、栓溶接工程S3にあたって照射したレーザビームLBによる熱が、孔径方向外側HDU(
図3において、外溝部45を越えて左側)に逃げにくい。このため、蓋体40の外側段部43のうち孔径方向内側HDIの部分を溶融させやすくなり、更に容易に蓋体40の外側段部43に注液栓80の外周縁部82を溶接することができる。
【0052】
<実施形態2>
上述した実施形態1及び変形形態1では、未封止蓋体40Mの外側段部43を相対的に蓋体厚み方向外側LTUに位置させて、未封止蓋体40Mの外側段部43と未封止注液栓80Mの外周縁部82との間に、蓋体厚み方向LTの高低差を設けた例を示した。
これに対し、本実施形態2(
図5,
図6参照)では、未封止注液栓180Mの外周縁部182を相対的に蓋体厚み方向外側LTUに位置させて、未封止蓋体140Mの外側段部143と未封止注液栓180Mの外周縁部182との間に、蓋体厚み方向LTの高低差を設ける。
【0053】
即ち、未封止蓋体140Mも、蓋体厚み方向外側LTU(
図5において上方)を向く平板状の蓋外側平面140Uと、蓋体厚み方向内側LTI(
図5において下方)を向く平板状の蓋内側平面140Iと、を有する矩形平板状である。この未封止蓋体140Mの注液孔周囲部142も、注液孔140LHを囲む円環状の当接段部144と、この当接段部144を囲む円環状の外側段部143とを有している。
【0054】
このうち、当接段部144は、未封止蓋体140Mを貫通する円孔状の注液孔140LHを囲む円環状で、蓋外側平面140Uよりも蓋体厚み方向内側LTIに位置し蓋体厚み方向外側LTUを向く円環状で平坦な蓋側当接面144Uを含んでいる。
【0055】
一方、外側段部143は、当接段部144を囲む円環状で、蓋外側平面140Uよりも蓋体厚み方向内側LTIかつ蓋側当接面144Uよりも蓋体厚み方向外側LTUで蓋側当接面144Uよりも孔径方向外側HDUに位置し蓋体厚み方向外側LTUを向く円環状で平坦な外側環状段面143U及びこの外側環状段面143Uから孔径方向内側HDIに拡がった拡大外側環状段面143UEを含む外側段部143を有している。また、拡大外側環状段面143UEの内周端縁143UEFから蓋体厚み方向内側LTIに延びて蓋側当接面144Uに届き、孔径方向内側HDIを向く内側段差面143IDを有している。
【0056】
一方、未封止注液栓180Mも、栓厚み方向内側PTIに円錐台状に窪んだ中央部181と、その周囲を囲む平板円環状の外周縁部182とを有する。この外周縁部182は、蓋体厚み方向内側LTIを向く平板円環状の栓側当接面182Iと、栓厚み方向外側PTUを向く平板円環状の周縁外向面182U、及び、この栓径方向外側PDUに拡がった拡大周縁外向面182UEを有している。さらに拡大周縁外向面182UEの外周端縁82UEFから、栓厚み方向内側PTIに向かって延びて、栓側当接面182Iまで届き、栓径方向外側PDUを向く円筒状の栓外周端面182Tが形成されている。
【0057】
そして、栓配置工程S2では、未封止電池101Mの未封止蓋体140Mの注液孔周囲部142に未封止注液栓180Mを配置し、この未封止注液栓180Mで注液孔140LHを覆う。これにより、未封止注液栓180Mの外周縁部182の栓側当接面182Iは、未封止蓋体140Mの当接段部144の蓋側当接面144Uに対向してこれに当接し、未封止注液栓180Mの外周縁部182は、未封止蓋体140Mの当接段部144に当接する。
【0058】
但し、実施形態1等の外側段部43に比して、本実施形態2では、外側段部143の蓋体厚み方向LTの寸法が小さくされている。このため、
図5に示すように、未封止注液栓180Mの栓側当接面182Iから拡大周縁外向面182UEまでの厚さT1が、未封止蓋体140Mの蓋側当接面144Uから拡大外側環状段面143UEまでの高さH2に比して大きくなっている。これにより、未封止蓋体40Mの外側段部143と未封止注液栓180Mの外周縁部182との間に、蓋体厚み方向LTの高低差が設けられている。
【0059】
続く栓溶接工程S3では、レーザビームLBを照射して、未封止蓋体140Mの外側段部143のうち外側段部143のうち拡大外側環状段面143UE及び内側段差面143IDを含む孔径方向内側HDIの一部を溶融させる。これと共に、未封止注液栓180Mの外周縁部182のうち、拡大周縁外向面182UE及び栓外周端面182Tを含む栓径方向外側PDUの一部を溶融させて、全周に亘り蓋体140の外側段部143に注液栓180の外周縁部182をレーザ溶接する(
図6参照)。このレーザ溶接でも溶加材は用いず、形成される溶融固化部90は、蓋体40及び注液栓80をなす金属(アルミニウム)のみからなる。
【0060】
本実施形態2でも、未封止蓋体140Mの外側段部143と未封止注液栓180Mの外周縁部182との間に、蓋体厚み方向LTの高低差を有しており、栓溶接工程S3のレーザ溶接を両者を溶融させつつ行う。このため、相対的に蓋体厚み方向外側LTUに位置する部位、本実施形態2では未封止注液栓180Mの外周縁部182のうち栓径方向外側PDUの部位を溶融させた溶融金属の一部をも、未封止蓋体140Mの外側段部143と未封止注液栓180Mの外周縁部182との間の隙間を埋めるなどに用いて、溶融固化部190の形成に用いることができる。かくして、外側環状段面143Uに連なると共に周縁外向面182Uに連なり、周縁外向面182U(比較外側面)から外側環状段面143U(比較内側面)に向かうほど、蓋体厚み方向内側LTIに位置する表面190Sを有する溶融固化部190を、全周に亘り容易に形成することができる。このため、この電池1は、溶融固化部190をなす溶融金属が局所的に少なくなって、溶融固化部190の蓋体厚み方向LT(
図6において上下方向)の寸法が局所的に小さく、封止性能が低下した部位を有さない。
【0061】
また、電池101(封止後の蓋体140)の溶融固化部190は、全周に亘って、蓋体140の蓋外側平面140Uよりも蓋体厚み方向内側LTI(
図6において下方)に位置している。本実施形態2では、全周に亘って、溶融固化部190は蓋外側平面140Uよりも概ね0.2mm程度、蓋体厚み方向内側LTIに位置している。このため、レーザ溶接時に、溶融固化部190から低い角度で飛散する溶融状態のスパッタは、蓋外側平面140Uと外側段部143との間の外側段差面143UDに衝突するので、このようなスパッタが正極絶縁部材60Pや負極絶縁部材60Nに衝突して深く食い込むようにして付着することが抑制される。
かくして、正極絶縁部材60Pや負極絶縁部材60Nへのスパッタの付着を抑制し絶縁特性が良好でありながら、蓋体140の注液孔周囲部142に注液栓180を封止特性良好に溶接した電池101となる。
【0062】
加えて本実施形態2では、前述したように、未封止注液栓180Mの栓側当接面182Iから拡大周縁外向面182UEまでの厚さT2(本実施形態2では高さT2=0.5mm)は、未封止蓋体140Mの蓋側当接面144Uから拡大外側環状段面143UEまでの高さH2(本実施形態2では高さH2=0.4mm)に比して大きくなっている。この厚さT2は、高さH2の1.1.~1.4倍(T2=1.1H2~1.4H2)とすると良く、本実施形態では、1.25倍(T2=1.25H2)としてある。
【0063】
前述したように、栓溶接工程S3にあたっては、
図6に示すように、形成された溶融固化部190の先端190Aが、蓋体厚み方向LTについて、概ね蓋側当接面144Uと同じ程度の位置になるように、蓋体140の外側段部143と注液栓180の外周縁部182とを溶融させるのが好ましい。
一方、注液栓180の栓側当接面182Iから拡大周縁外向面182UEまでの厚さT2が、蓋体140の蓋側当接面144Uから拡大外側環状段面143UEまでの高さH2に比して大き過ぎる場合にも、蓋体140の外側段部143と注液栓180の外周縁部182の溶融状態に差が生じ易い。具体的には、蓋体140の外側段部143の孔径方向内側HDIの部分は深くまで溶融するが、注液栓180の外周縁部182のうち栓径方向外側PDUの栓外周端面182T付近は深くまで十分溶融出来ないために、溶融固化部190の形状がいびつになり、蓋体140の外側段部143と注液栓180の外周縁部182との溶接が不完全になり易い。
他方、厚さT2が高さH2に比して余り大きくない場合には、注液栓180の外周縁部182を溶融させた溶融金属の量が少なくなり、蓋体140の外側段部143と注液栓180の外周縁部182との隙間への溶融金属の充填量が不足しかねない。
【0064】
これに対し本実施形態2では、厚さT2を高さH2の1.1.~1.4倍の範囲内の1.25倍としている。これにより、相対的に蓋体厚み方向外側LTUに位置する注液栓180の外周縁部182を溶融させることによって、溶融固化部190となる溶融金属(肉)を得ながら、蓋体140の外側段部143と注液栓180の外周縁部182との間に、良好な形態の溶融固化部190を設けて、両者を溶接した電池101を製造することができる。
【0065】
<変形形態2>
上述した実施形態2では、実施形態1と同様、蓋体140の外側段部143は、蓋体厚み方向外側LTUに、外側環状段面143Uと、これから孔径方向内側HDIに続く拡大外側環状段面43UEからなる平坦面を有するものとしていた。
しかし、
図5、
図6において破線で示すように、外側環状段面143Uの孔径方向外側HDUに、蓋体厚み方向内側LTIに窪んだ環状の外溝部145を設けるようにしても良い。
このように外溝部145を設けた場合には、栓溶接工程S3にあたって照射したレーザビームLBによる熱が、孔径方向外側HDU(
図5において、外溝部145を越えて左側)に逃げにくい。このため、蓋体140の外側段部143のうち孔径方向内側HDIの部分を、ひいては注液栓180の外周縁部182の栓径方向外側PDUの部分を溶融させやすくなり、更に容易に蓋体140の外側段部143に注液栓180の外周縁部182を溶接することができる。
【0066】
以上において、本発明を実施形態1,2及び変形形態1,2に即して説明したが、本発明は実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。例えば実施形態等では、電極体10として、帯状の正極板11等を捲回して形成した扁平捲回型電極体を用いた例を示した。しかし、電極体10として、矩形状などで枚葉状の複数の正極板と、同じく矩形状などで枚葉状の複数の負極板とを、セパレータを介して交互に積層した積層型電極体を用いることも出来る。
【0067】
また実施形態1では、蓋体40として、当接段部44の孔径方向内側HDIは、注液孔40LHとした形態を説明した。しかし、
図3,
図4において破線で示すように、当接段部44の孔径方向内側HDIに、さらに孔径方向内側HDIに突出する段部47を設けた形態の蓋体40とすることもできる。また、実施形態1では、蓋体40として、外側段部43よりも孔径方向外側HDUは蓋外側平面40Uに連なる形態とした。しかし、
図3,
図4において破線で示すように、外側段部43の孔径方向外側HDUに、外側段部43とは間隔を空けて、蓋外側平面40Uよりも蓋体厚み方向内側LTIに凹む環状の溝部46をさらに形成した蓋体40の形態としても良い。
【符号の説明】
【0068】
1,101 電池(蓄電デバイス)
1M,101M 未封止電池
10 電極体
30 ケース本体
30H (ケース本体の)開口
40,140 蓋体
40M,140M 未封止蓋体
LT 蓋体厚み方向
LTI 蓋体厚み方向内側
LTU 蓋体厚み方向外側
40U,140U 蓋外側平面
40LH,140LH 注液孔
LHX (注液孔の)孔軸線
42,142 注液孔周囲部
HDI 孔径方向内側
HDU 孔径方向外側
43 外側段部(比較外側面)
143 外側段部(比較内側面)
43U,143U 外側環状段面
43UF (外側環状段面の)内周端縁
43UE,143UE 拡大外側環状段面
43UEF,143UEF (拡大外側環状段面の)内周端縁
H2 (蓋側当接面から拡大外側環状段面までの)高さ
H1 (蓋側当接面から外側凸部頂面までの)高さ
43ID,143ID (外側段部のうち当接段部に届く)内側段差面
43UD,143UD (外側段部のうち蓋外側平面に届く)外側段差面
44,144,244 当接段部
44U,144U 蓋側当接面
45 外溝部
60P 正極絶縁部材
60N 負極絶縁部材
LP 正極最短距離
LN 負極最短距離
80,180 注液栓
80M,180M 未封止注液栓
PX (注液栓の)栓軸線
PTI 栓厚み方向内側
PTU 栓厚み方向外側
PDI 栓径方向内側
PDU 栓径方向外側
T1 (栓側当接面から拡大周縁外向面までの)厚さ
82,182 外周縁部
82I,182I (外周端部の)栓側当接面
82U (外周端部の)周縁外向面(比較内側面)
182U (外周端部の)周縁外向面(比較外側面)
82UE,182UE 拡大周縁外向面
82UEF,182UEF (拡大周縁外向面の)外周端縁
82T,182T (外周縁部の)栓外周端面
T2(栓側当接面から栓凸部頂面までの)厚さ
SS (溶接前の注液栓の外周縁部と蓋体の外側段部との)隙間
SSX 最大隙間
HL1 仮想線
ARP 凸部領域
SP1 凸部断面積
ARS 最大隙間領域
SS1 最大隙間断面積
90,190 溶融固化部
90S,190S (溶融固化部の)表面
90A,190A (溶融固化部の蓋体厚み方向内側の)先端
S2 栓配置工程
LB レーザビーム(エネルギービーム)
S3 栓溶接工程