(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20240514BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20240514BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240514BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G09F9/30 349Z
G02F1/1333
G02F1/1335 510
G09F9/00 313
G09F9/30 349D
G09F9/30 349E
(21)【出願番号】P 2022164182
(22)【出願日】2022-10-12
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 寿史
【審査官】西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-189769(JP,A)
【文献】特開2005-189020(JP,A)
【文献】特開平10-031572(JP,A)
【文献】特開平07-294910(JP,A)
【文献】特開平09-114003(JP,A)
【文献】特開2017-155202(JP,A)
【文献】特開2006-309017(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010217(WO,A1)
【文献】特開2005-115349(JP,A)
【文献】特開2001-334203(JP,A)
【文献】特開2020-101781(JP,A)
【文献】特開2019-053014(JP,A)
【文献】特開2013-246103(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221205(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0390839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 5/06
G01D 11/28
G02B 5/00-5/136
G02F 1/1333
G02F 1/1335
G02F 1/13363
G03B 21/00-21/10
G03B 21/12-21/30
G03B 21/56-21/64
G03B 33/00-33/16
G04B 19/06
G06F 3/041
G06F 3/14
G09F 9/00-9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者側から順に前面板と、表示パネルとを備え、
前記前面板は、半透過部材と、前記半透過部材の前記観察者側に配置された意匠層と、前記半透過部材の前記観察者側と反対側に配置された反転意匠層とを備え、
前記半透過部材は、前記表示パネル側から入射された光を透過し、かつ前記観察者側から入射された光の一部を反射する部材であり、
前記反転意匠層は、前記意匠層の第一の意匠と平面視において重畳し、かつ前記第一の意匠と明度又は色相が反転した第二の意匠が設けられたものであ
り、
前記表示パネルと前記前面板との間に更に直線偏光板を備え、
前記半透過部材は、特定の振動方向の光を反射する反射軸と、前記反射軸と直交する透過軸とを有する反射型偏光板であり、
前記直線偏光板の透過軸と前記反射型偏光板の前記透過軸とは、平行であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第一の意匠及び前記第二の意匠は、無彩色を含み、
前記第二の意匠は、前記第一の意匠の明度を反転させたものであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記前面板上の任意の座標における前記第一の意匠の透過率をT1a、前記第二の意匠の透過率をT1bとし、前記前面板上の他の座標における前記第一の意匠の透過率をT2a、前記第二の意匠の透過率をT2bとし、前記半透過部材の透過率をTHとすると、
前記T1aと前記T1bと前記THの積と、前記T2aと前記T2bと前記THの積との差の絶対値は、30%以下であることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記前面板は、前記半透過部材よりも前記観察者側に、更にカラー偏光板を備えることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第一の意匠及び前記第二の意匠は、有彩色を含み、
前記第二の意匠の色は、前記第一の意匠の補色であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記前面板上の任意の座標における、波長λの光の前記第一の意匠の透過率をTλa、前記第二の意匠の透過率をTλb、前記半透過部材の透過率をTHとすると、
前記波長λが400~700nmの範囲において、前記Tλaと前記Tλbと前記THの積の最大値と最小値の差は、30%以下であることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記半透過部材は、金属薄膜、又は、異なる屈折率を有する複数の樹脂層の積層体
であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記反射型偏光板の前記透過軸と前記カラー偏光板の透過軸とは、平行であることを特徴とする請求項
4に記載の表示装置。
【請求項9】
前記前面板は、前記観察者側の最表面に凹凸形状を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記前面板の観察者側の最表面のヘイズは、30%以下であることを特徴とする請求項
9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記表示パネルは、一対の基板と、前記一対の基板に挟持された液晶層とを備えた液晶パネルであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項12】
前記表示パネルは、自発光パネルであ
り、
前記自発光パネルと前記前面板との間に更に1/4波長板を備えることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示画面を点灯すると所望の画像を表示する表示装置について、表示パネルを非点灯としたときに、周囲の部材や筐体等と調和し、表示パネルを目立たなくすることで、デザイン性を高めることが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、表示パネルと、該表示パネルの背後に配置されたバックライトとを備え、該バックライトは、該表示パネルの端部領域におけるバックライトの光量が該表示パネルの中央領域に比べて低くなるように設計されている表示素子が開示されている。
【0004】
特許文献2には、表示パネルと、該表示パネルの観察面側に配置されている半透過反射板とを備える表示装置であって、該半透過反射板は、反射型偏光板、及び、該反射型偏光板よりも観察面側に配置されているカラー偏光板を有する表示装置が開示されている。上記反射型偏光板の一例としては、ワイヤーグリッド偏光板等が挙げられる(例えば、特許文献3及び4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2021/228331号公報
【文献】国際公開第2018/008498号公報
【文献】特開2006‐201782号公報
【文献】特開2005‐195824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、表示装置のデザイン性を高める観点から、表示画面を非点灯にした非表示状態で、より自然に周囲の模様や色調と調和させることが求められている。本発明者は、多彩な色や、複雑な模様を表現する方法を検討し、表示パネルの前面側に、着色や模様等の意匠を付した前面板を配置し、表示パネルの非点灯時に、観察者に所望の意匠を視認させることを検討した。
【0007】
しかしながら、模様等を付した前面板を配置すると、非表示状態には意匠が見えるものの、表示画面を点灯した表示状態では、表示したい画像に前面板の模様等が重なって見えてしまうことがあった。例えば、前面板に木目模様の意匠を付与した場合には、表示画面を全面白表示とすると、木目模様が視認されてしまうことがあった。
【0008】
特許文献1に記載の表示素子では、表示パネルの前面に模様を付した前面板を配置すると、表示パネルを点灯させた場合に前面板の模様が見えてしまう。特許文献2に記載の表示装置では、単色のシンプルな装飾を付すことはできるが、表示画像にカラー偏光板の色が重なってしまい、表示画像が着色してしまうことがあった。そのため、より多彩で複雑な意匠を表現するためには、更なる検討の余地があった。
【0009】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、非表示状態では任意の意匠を視認させ、表示状態では上記意匠に妨げられずに表示画像を視認させる表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一実施形態は、観察者側から順に前面板と、表示パネルとを備え、上記前面板は、半透過部材と、上記半透過部材の上記観察者側に配置された意匠層と、上記半透過部材の上記観察者側と反対側に配置された反転意匠層とを備え、上記半透過部材は、上記表示パネル側から入射された光を透過し、かつ上記観察者側から入射された光の一部を反射する部材であり、上記反転意匠層は、上記意匠層の第一の意匠と平面視において重畳し、かつ上記第一の意匠と明度又は色相が反転した第二の意匠が設けられたものである表示装置。
【0011】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記第一の意匠及び上記第二の意匠は、無彩色を含み、上記第二の意匠は、上記第一の意匠の明度を反転させたものである表示装置。
【0012】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(2)の構成に加え、上記前面板上の任意の座標における上記第一の意匠の透過率をT1a、上記第二の意匠の透過率をT1bとし、上記前面板上の他の座標における上記第一の意匠の透過率をT2a、上記第二の意匠の透過率をT2bとし、上記半透過部材の透過率をTHとすると、上記T1aと上記T1bと上記THの積と、上記T2aと上記T2bと上記THの積との差の絶対値は、30%以下である表示装置。
【0013】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(3)のいずれかの構成に加え、上記前面板は、上記半透過部材よりも上記観察者側に、更にカラー偏光板を備える表示装置。
【0014】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記第一の意匠及び上記第二の意匠は、有彩色を含み、上記第二の意匠の色は、上記第一の意匠の補色である表示装置。
【0015】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(5)の構成に加え、上記前面板上の任意の座標における、波長λの光の上記第一の意匠の透過率をTλa、上記第二の意匠の透過率をTλb、上記半透過部材の透過率をTHとすると、波長λが400~700nmの範囲において、上記Tλaと上記Tλbと上記THの積の最大値と最小値の差は、30%以下である表示装置。
【0016】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(6)のいずれかの構成に加え、上記半透過部材は、金属薄膜、又は、異なる屈折率を有する複数の樹脂層の積層体ある表示装置。
【0017】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(6)のいずれかの構成に加え、上記半透過部材は、特定の振動方向の光を反射する反射軸と、上記反射軸と直交する透過軸とを有する反射型偏光板である表示装置。
【0018】
(9)また、本発明のある実施形態は、上記(8)の構成に加え、上記前面板は、上記半透過部材よりも上記観察者側に、更にカラー偏光板を備え、上記反射型偏光板の上記透過軸と上記カラー偏光板の透過軸とは、平行である表示装置。
【0019】
(10)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(9)のいずれかの構成に加え、上記前面板は、上記観察者側の最表面に凹凸形状を有する表示装置。
【0020】
(11)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(10)のいずれかの構成に加え、上記前面板の観察者側の最表面のヘイズは、30%以下であることを特徴とする表示装置。
【0021】
(12)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(11)のいずれかの構成に加え、上記表示パネルは、一対の基板と、上記一対の基板に挟持された液晶層とを備えた液晶パネルである表示装置。
【0022】
(13)また、本発明のある実施形態は、上記(12)の構成に加え、上記液晶パネルと上記前面板との間に更に直線偏光板を備え、上記半透過部材は、特定の振動方向の光を反射する反射軸と、上記反射軸と直交する透過軸とを有する反射型偏光板であり、上記直線偏光板の透過軸と上記反射型偏光板の上記透過軸とは、平行である表示装置。
【0023】
(14)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(11)のいずれかの構成に加え、上記表示パネルは、自発光パネルである表示装置。
【0024】
(15)また、本発明のある実施形態は、上記(14)の構成に加え、上記自発光パネルと上記前面板との間に更に直線偏光板及び1/4波長板を備え、上記半透過部材は、特定の振動方向の光を反射する反射軸と、上記反射軸と直交する透過軸とを有する反射型偏光板であり、上記直線偏光板の透過軸と上記反射型偏光板の上記透過軸とは、平行である表示装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、非表示状態では任意の意匠を視認させ、表示状態では上記意匠に妨げられずに表示画像を視認させる表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態1に係る表示装置の一例を示した断面模式図である。
【
図2】
図1に示した表示装置に含まれる光学部材の軸配置を示した説明図である。
【
図4】反転意匠層の一例を示した平面模式図である。
【
図5】表示状態における表示装置の平面模式図である。
【
図6】表示状態で画像を表示した表示装置の平面模式図である。
【
図7】非表示状態における表示装置の平面模式図である。
【
図8】第一の意匠の透過率と第一の意匠の透過率を説明するための前面板の断面模式図である。
【
図9】110~250階調のグレースケールを20階調毎に印刷した無彩色の測定サンプルの写真図である。
【
図10】
図9に示した無彩色の測定サンプルの全光線透過率を示したグラフである。
【
図11】グレースケールで印刷した意匠層と、対応する反転意匠層を示した測定サンプルの写真図である。
【
図12】
図11に示した意匠層と反転意匠層とを重ねた測定サンプルの写真図である。
【
図13】特定の有彩色と補色の透過率を示したグラフである。
【
図14】第一の意匠が青色で第二の意匠が黄色である場合の透過率を示したグラフである。
【
図15】第一の意匠が緑色で第二の意匠が紫色である場合の透過率を示したグラフである。
【
図16】観察者側に透明部材を有する前面板の一例を示した断面模式図である。
【
図17】背面側に透明部材を有する前面板の一例を示した断面模式図である。
【
図18】前面板及び表示パネルを筐体に格納した表示装置の断面模式図である。
【
図19】透過状態で表示画像を表示した
図18の表示装置の平面模式図である。
【
図20】実施形態2に係る表示装置の一例を示した断面模式図である。
【
図21】
図20に示した表示装置に含まれる光学部材の軸配置を示した説明図である。
【
図22】実施形態3に係る表示装置の一例を示した断面模式図である。
【
図23】
図22に示した表示装置に含まれる光学部材の軸配置を示した説明図である。
【
図24】非表示状態で木目模様を視認させる場合のカラー偏光板、意匠層及び反転意匠層の一例を示した平面模式図である。
【
図25】
図24に示したカラー偏光板、意匠層及び反転意匠層を有する前面板を用いた表示装置の非表示状態における平面模式図である。
【
図26】
図24に示したカラー偏光板、意匠層及び反転意匠層を有する前面板を用いた表示装置の表示状態における平面模式図である。
【
図27】実施形態3に係る表示装置の他の一例を示した断面模式図である。
【
図28】実施形態3に係る表示装置について、最表面に凹凸形状を有する構成の一例を示した断面模式図である。
【
図29】実施形態4に係る表示装置の一例を示した断面模式図である。
【
図30】実施形態4に係る表示装置について、直線偏光板及び1/4波長板を備える構成の一例を示した断面模式図である。
【
図31】
図30に示した表示装置に含まれる光学部材の軸配置を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。また、各実施形態の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【0028】
本明細書中、表示状態とは、特に明示しない限り、表示パネル側から光が出射され、その光が前面板を透過する状態をいう。上記表示状態は、表示パネル又はバックライトが点灯した状態(電源がオン)であり、表示パネルに所望の表示画像が表示される。非表示状態とは、特に明示しない限り、表示パネル側から光が出射されない状態をいう。上記非表示状態は、表示パネル又はバックライトが点灯していない状態(電源がオフ)である。非表示状態では、基本的に観察者側に光が出射されず、観察者は外光の反射光を観察することから、反射状態ともいう。
【0029】
本明細書中、2つの方向が直交するとは、2つの方向のなす角度が、好ましくは90°±3°の範囲内であり、より好ましくは90°±1°の範囲内であり、更に好ましくは90°±0.5°の範囲内である。また、2つの方向が平行であるとは、2つの方向のなす角度が、好ましくは0°±3°の範囲内であり、より好ましくは0°±1°の範囲内であり、更に好ましくは0°±0.5°の範囲内である。
【0030】
本明細書中、「観察者側」とは、観察者が表示装置を観察する面をいい「前面側」ともいう。「背面側」とは、観察者側と反対側の面をいう。
【0031】
<実施形態1>
実施形態1に係る表示装置は、観察者側から順に前面板と、表示パネルとを備え、上記前面板は、半透過部材と、上記半透過部材の上記観察者側に配置された意匠層と、上記半透過部材の上記観察者側と反対側に配置された反転意匠層とを備え、上記半透過部材は、上記表示パネル側から入射された光を透過し、かつ上記観察者側から入射された光の一部を反射する部材であり、上記反転意匠層は、上記意匠層の第一の意匠と平面視において重畳し、かつ上記第一の意匠と明度又は色相が反転した第二の意匠が設けられたものである。
【0032】
図1は、実施形態1に係る表示装置の一例を示した断面模式図である。
図2は、
図1に示した表示装置に含まれる光学部材の軸配置を示した説明図である。本明細書中、各表示装置の断面模式図中の矢印L1は、表示状態において表示パネルの背面側から射出される光の経路を示し、矢印L2は非表示状態における外光の経路を示す。
図2では、便宜上、
図1に示した表示装置の一部を抜粋し、各部材を離間して図示した。また、表示装置の右方向を0°方位とし、上記0°方位と直交する方位を90°方位とした。以降の光学部材の軸配置を示した説明図についても同様に、各部材を離間して図示する。
【0033】
図1に示したように、表示装置1は、観察者側から順に前面板100と、表示パネル110とを備える。実施形態1では、表示パネル110として液晶パネル110Aを用い、その背面にバックライト200を配置した構成について説明するが、表示パネル110の種類は特に限定されず、例えば、発光ダイオード(LED)を有するLEDパネル等の自発光パネルであってもよい。
【0034】
(液晶パネル)
実施形態1では、表示パネルとして、一対の基板と、上記一対の基板に挟持された液晶層とを備えた液晶パネル110Aを例示する。液晶パネル110Aは特に限定されず、上記一対の基板として、複数の薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子を有するアクティブマトリクス基板と、カラーフィルターを有するカラーフィルター基板を有する液晶パネルであってもよい。
【0035】
上記アクティブマトリクス基板としては、ゲート配線と上記ゲート配線と交差するソース配線とを有し、ゲート配線とソース配線の交点近傍にTFTが配置され、TFTと電気的に接続された画素電極が配置される構成が挙げられる。アクティブマトリクス基板又はカラーフィルター基板には、対向電極が設けられてもよい。表示装置は、ゲート配線が接続されたゲートドライバ、ソース配線が接続されたソースドライバ等の駆動回路を有してもよい。ゲートドライバを介して各画素に設けられたTFTのオン・オフが制御され、TFTがオンになると、ソースドライバを介して画素電極に電圧が印加され、画素電極と対向電極との間に電界が形成されて、液晶層中の液晶分子の配向を制御することで画像表示を行うことができる。
【0036】
図1に示したように、実施形態1では、液晶パネル110Aの前面側に第一の直線偏光板111が配置され、液晶パネル110Aの背面側に第二の直線偏光板112が配置される構成を例示する。
図2に示したように、第一の直線偏光板111の透過軸と第二の直線偏光板112の透過軸とは直交するように配置される。第一の直線偏光板111及び第二の直線偏光板112は、吸収型偏光板であってもよい。第一の直線偏光板111及び第二の直線偏光板112は、特に限定されず、液晶表示装置の分野において通常用いられるものを使用することができる。
【0037】
(バックライト)
実施形態1では、液晶パネル110Aの背面側にバックライト200が配置される。バックライト200は特に限定されず、一般的なバックライトを用いることができる。例えば、導光板の端面に光源を配置するエッジライト型でもよいし、光源を面内に多数配置して拡散板などで均整度を高めた直下型であってもよい。
【0038】
図1に示したように、第二の直線偏光板112とバックライト200とは、固定テープ51で貼り付けられてもよい。固定テープ51は、バックライト200の照射範囲を妨げないように、バックライト200の外縁(額縁領域)に配置されることが好ましい。固定テープ51は特に限定されず、表示装置の分野で使用されるものを用いることができる。
【0039】
(前面板)
図1に示したように、前面板100は、半透過部材10と、半透過部材10の観察者側に配置された意匠層20と、半透過部材10の観察者側と反対側に配置された反転意匠層30とを備える。前面板100は、表示パネル110の観察者側に配置され、表示パネル110側から入射された光の一部を透過する部材である。
【0040】
(半透過部材)
半透過部材10は、表示パネル110側から入射された光を透過し、かつ観察者側から入射された光の一部を反射する部材である。半透過部材10は、表示パネル110側から入射された光の全てを透過しなくてもよく、光の一部を透過すればよい。半透過部材10は、観察者側から入射された光(外光)の一部を反射し、外光の残りの光は透過することが好ましい。半透過部材10の外光反射率は、任意に設定できるが、30%以上であることが好ましく、典型的には50%である。上記反射率は、特に明示しない限り、400~700nmの可視光の波長帯域中の反射率をいう。
【0041】
半透過部材10としては、金属薄膜、又は、異なる屈折率を有する複数の樹脂層の積層体、反射型偏光板等が挙げられる。本明細書中、上記金属薄膜、又は、上記複数の樹脂層の積層体を「ハーフミラー」ともいい、実施形態1では、半透過部材としてハーフミラー10Aを用いる場合について説明する。
【0042】
上記金属薄膜は、アルミ、銀、チタン、タングステン等の金属薄膜が挙げられる。金属薄膜を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、金属蒸着、スパッタリング等が挙げられる。金属薄膜の厚さは、例え50nm~200nmである。異なる屈折率を有する複数の樹脂層の積層体としては、例えば、スリーエム社製の「DBEF」等を用いることができる。
【0043】
(意匠層)
意匠層20は、半透過部材10の観察者側に配置され、非表示状態で観察者に視認させたい模様を表した第一の意匠21を含む。上記特定の模様としては、特に限定されないが、例えばデザイン性のある幾何学模様、木目模様、特定の文字列、企業ロゴ等が挙げられる。
【0044】
(反転意匠層)
反転意匠層30は、半透過部材10の観察者側と反対側(意匠層20が配置された側と反対側)に配置される。反転意匠層30は、意匠層20の第一の意匠21と平面視において重畳し、かつ第一の意匠21と明度又は色相を反転させた第二の意匠31を含む。本明細書中、明度が反転するとは、少なくとも、任意の座標における第一の意匠21の透過率と第二の意匠31の透過率との積と、他の任意の座標における第一の意匠21の透過率と第二の意匠31の透過率との積との差の絶対値が、30%以下であることをいう。色相が反転するとは、任意の座標における、第一の意匠21の透過率と第二の意匠31の透過率の積が、波長λが400~700nmの範囲において、30%以内であることをいう。
【0045】
実施形態1に係る表示装置は、意匠層20の背面側に、半透過部材10を挟んで、第一の意匠21の明度又は色相を反転させた第二の意匠31を含む反転意匠層30を配置することで、意匠層20と反転意匠層30とを重ねた場合に、透過率をほぼ一定とすることができる。そのため、非表示状態では観察者は外光の反射光を受け取ることにより第一の意匠21の模様を視認する一方で、表示状態では観察者は表示パネル側からの透過光を主に受け取ることにより第一の意匠21の模様を視認せずに表示画像を視認することになる。
【0046】
実施形態1に係る表示装置は、表示パネル110側から前面板100に光が照射される表示状態においては、観察者から第一の意匠21が視認されずに、表示パネル110に画像を表示することができ、表示パネル110側から前面板100に光が照射されない非表示状態においては、観察者から第一の意匠21が視認されない表示装置ともいえる。
【0047】
なお、表示パネルの前面板側に着色や模様を付した前面板を配置する構成において、前面板が反転意匠層を有さず意匠層だけの場合は、前面板の面内で透過率分布にムラがあるため、表示状態において、意匠層に形成した特定の模様が視認され、表示画像と重なって見えるおそれがある。
【0048】
第一の意匠21及び第二の意匠31は、無彩色を含んでもよいし、有彩色を含んでもよい。本明細書中、「無彩色」とは、明度のみによって表される色をいう。本明細書中、「有彩色」とは、可視光領域(400~700nm)における透過率が一定でなく、例えば、400~700nm間で透過率に30%以上の差がある色をいう。
【0049】
<第一の意匠及び第二の意匠が無彩色を含む場合>
以下に第一の意匠及び第二の意匠が無彩色を含む場合について説明する。第一の意匠及び第二の意匠は、無彩色を含む。また、第二の意匠は、第一の意匠の明度を反転させたものである。
図3は、意匠層の一例を示した平面模式図である。
図4は、反転意匠層の一例を示した平面模式図である。
図3及び
図4では、観察者に視認させたい特定の模様が白色の丸と白色の四角の図形であり、白色の丸と白色の四角の図形を囲む周辺部分が黒色である場合について例示する。なお、本明細書中、平面模式図は全て観察者側から観察した平面図を表す。
【0050】
図3に示したように、意匠層20は第一の意匠21を含む。第一の意匠21は、白色の丸の図形部分21‐1及び四角の図形部分21‐2と、上記丸の図形部分21‐1と四角の図形部分21‐2を囲む周辺部分21‐3とを含む。
図3では、周辺部分21‐3は、丸の図形部分21‐1及び四角の図形部分21‐2よりも明度が低くなるように構成されている。
【0051】
図4に示したように、反転意匠層30は第二の意匠31を含む。観察者に視認させたい特定の模様が白色の丸と白色の四角の図形である場合、第二の意匠31は、明度が低い丸の図形部分31‐1及び四角の図形部分31‐2と、上記丸の図形部分31‐1及び四角の図形部分31‐2よりも明度が高い周辺部分31‐3とを含む。第二の意匠31の丸の図形部分31‐1は、第一の意匠21の丸の図形部分21‐1と明度が反転するように構成される。第二の意匠31の四角の図形部分31‐2は、第一の意匠21の四角の図形部分21‐2と明度が反転するように構成される。周辺部分31‐3は、周辺部分21‐3と明度が反転するように構成される。第二の意匠31は、平面視において第一の意匠21と同形状であることが好ましい。
【0052】
(表示状態)
図5は、表示状態における表示装置の平面模式図である。表示状態では、
図1中にL1で示したように、バックライト200から出射された光は、第二の直線偏光板112、液晶パネル110A、第一の直線偏光板111を透過し、更に前面板100の反転意匠層30、半透過部材10及び意匠層20を透過して観察者側に出射される。L1は、意匠層20と反転意匠層30の両方を透過し、前面板全体で透過率分布が均一になっているため、
図5に示したように、意匠層20に含まれる第一の意匠21の模様は視認されない。
【0053】
図6は、表示状態で画像を表示した表示装置の平面模式図である。表示状態では、液晶パネル110Aに所望の表示画像を表示し、観察者は前面板100越しに上記表示画像を見ることになる。表示状態で表示パネル110に表示される画像は、特に限定されないが、自動車等の速度メーター等を表示してもよい。
図6に示したように、観察者からは
図3の意匠層20に含まれる丸の図形部分21‐1と四角の図形部分21‐2は視認されず、意匠層20の第一の意匠21に妨げられずに表示画像(速度メーター)を見ることができる。
【0054】
(非表示状態)
図7は、非表示状態における表示装置の平面模式図である。非表示状態(反射状態)ではバックライト200は非点灯であり、前面板100に対して、表示パネル110側から表示光は照射されず、観察者側から光(外光)が入射される。
図1中にL2で示したように、観察者側から入射された光(外光)は、意匠層20を透過した後、半透過部材10で反射され、再び意匠層20を透過して観察者側に出射される。その結果、
図7に示したように、意匠層20に形成した第一の意匠21が視認される。
【0055】
なお、L2は意匠層20を2回通ることから、非表示状態で視認される第一の意匠21は、実際に印刷された第一の意匠21よりも濃くみえる。前面板上の任意の座標P1(x1、y1)における第一の意匠21の透過率をT1aとすると、非表示状態での第一の意匠21の透過率は、T1aの2乗となる。
【0056】
図8は、第一の意匠の透過率と第一の意匠の透過率を説明するための前面板の断面模式図である。
図8を用いて、
図3及び
図4に示した前面板上の任意の座標をP1(x1、y1)、他の座標をP2(x2、y2)の透過率を説明する。前面板上の任意の座標P1(x1、y1)における第一の意匠21の透過率をT1a、第二の意匠31の透過率をT1bとし、前面板上の他の座標P2(x2、y2)における第一の意匠21の透過率をT2a、第二の意匠31の透過率をT2bとし、半透過部材10の透過率をTHとする。第一の意匠21と第二の意匠31の明度は反転していることから、T1aとT1bの積、T2aとT2bの積はともに、ほぼ一定となる。半透過部材10の透過率が全面で一定(TH)である場合、T1aとT1bとTHの積と、T2aとT2bとTHの積も、ほぼ一定となる。
【0057】
上記T1aとT1bとTHの積とT2aとT2bとTHの積との差の絶対値を見た目の透過率αとすると、見た目の透過率αは下記式(1)で表される。下記αは、30%以下であることが好ましい。下記αが30%以下であると、非表示状態において、第一の意匠21の模様をより観察者から視認され難くすることができる。少なくとも波長550nmにおいて、下記αが30%以下であればよい。下記αは、20%以下であることがより好ましい。
見た目の透過率α=|(T1a×T1b×TH)-(T2a×T2b×TH)| (1)
【0058】
前面板100の任意の2点間の透過率の関係について説明したが、前面板全体について、第一の意匠21の透過率と第二の意匠31の透過率の積がほぼ一定となることが好ましい。また、上記表示装置の輝度を高める観点からは、意匠層20の面内で透過率が最小となる座標の反転意匠層30の透過率は、なるべく高いことが好ましく、透過率が100%に近い(印刷されていない)ことがより好ましい。
【0059】
以下に
図9~
図12を用いて、第一の意匠及び第二の意匠が無彩色である場合の透過率の検討結果を示す。
図9は、110~250階調のグレースケールを20階調毎に印刷した無彩色の測定サンプルの写真図である。
図9に示したように、インクジェットプリンタを用いて、透明シートに110、130、150、170、190,210、230及び250階調の正方形の図形を印刷した。上記透明シートとしては、厚さ125μmのPETシートを用いた。本明細書中、黒色(最も明度が低い階調)を0階調、白色(最も明度が高い階調)を255階調とする。
【0060】
図10は、
図9に示した無彩色の測定サンプルの全光線透過率を示したグラフである。
図9に示したグレースケール印刷の透過率を、日本電色工業株式会社製の濁度計NDH2000を用いて測定し、その結果を
図10に示した。本明細書中、透過率とはJIS K 7361‐1に準拠した方法で測定される全光線透過率をいう。
【0061】
図11は、グレースケールで印刷した意匠層と、対応する反転意匠層を示した測定サンプルの写真図である。
図11中の意匠層に示したように、透明シートに第一の意匠として階調をランダムに選んだ四角形の図形を9個印刷した。また、別の透明シートに、
図11中の反転意匠層に示したように、第一の意匠の明度を反転させた正方形の図形を第二の意匠として印刷した。
図11中、第一の意匠及び第二の意匠の写真図の下方に、それぞれの階調を記載した。
【0062】
図12は、
図11に示した意匠層と反転意匠層とを重ねた測定サンプルの写真図である。
図12に示したように、反転意匠層と反転意匠層を重ねると、ほぼ一定の明度となることが確認できた。
図10に示した階調と透過率の関係と、半透過部材の透過率THとを考慮して、前面板全体の透過率が所望の値の範囲となるように、意匠層の印刷部及び反転意匠層の反転印刷部の明度を選択することができる。
【0063】
<第一の意匠及び第二の意匠が有彩色を含む場合>
以下に、第一の意匠及び第二の意匠が有彩色を含む場合について説明する。第一の意匠及び第二の意匠は、有彩色を含んでもよい。また、第二の意匠の色は、第一の意匠の補色であってもよい。第二の意匠の色が第一の意匠の補色であることで、意匠層と反転意匠層を重ねた場合に、無彩色のように見せることができ、表示画像に意図しない色が重なって見えることを防ぐことができる。
【0064】
図13は、特定の有彩色と補色の透過率を示したグラフである。本明細書中、特定の有彩色に対する「補色」とは、特定の有彩色の透過率との積が、400~700nm間で30%以内となる透過率を持つ色をいう。
図13に示したように、特定の有彩色の400~700nm間での透過率をTa、透過率の最小値をTminとすると、Ta×Tb≦Tminとなる透過率Tbを有する色が特定の有彩色に対する補色といえる。Ta×Tbが無彩色となる色が補色なので、明度の違いで特定の有彩色に対する補色は複数存在することになる。ただし、Ta×Tbで表される無彩色が暗い(透過率低い)と、表示装置の輝度が低くなるので、Ta×TbはTminに近い値であることが好ましく、Ta×TbとTminの差は20%以下であることがより好ましい。なお、実際には印刷に用いるインクの波長透過率特性は材料に依存するため、完全に透過率が一定となる無彩色を得ることは難しく、30%程度の透過率差が発生する。
【0065】
具体的に、
図3に示した丸の図形と四角の図形について、非表示状態で丸の図形を青色、四角の図形を緑色、丸の図形と四角の図形を囲む周辺部分を黒色として視認させたい場合について説明する。具体的には、
図3に示した第一の意匠21について、丸の図形部分21‐1が青色、四角の図形部分21‐2が緑色、周辺部分21‐3がグレーである場合を例示する。この場合、
図4に示した第二の意匠31では、丸の図形部分31‐1は上記青色の補色(例えば黄色)、四角の図形部分32‐2は上記緑色の補色(例えば紫色)、周辺部分32‐3は上記グレーの周辺部分21‐3と明度が反転した色となる。
【0066】
前面板上の任意の座標における、波長λの光の第一の意匠21の透過率をTλa、第二の意匠31の透過率をTλb、半透過部材10の透過率をTHとすると、波長λが400~700nmの範囲において、上記Tλaと上記Tλbと上記THの積の最大値と最小値の差は、30%以下であることが好ましい。このような構成とすることで、表示状態において、観察者から見た場合に彩度が低く、より無彩色に近い色に見せることができるため、表示画像に意図しない色が重なって見えることを効果的に防ぐことができる。Tλaと上記Tλbと上記THの積の最大値と最小値の差は、20%以下であることがより好ましい。
【0067】
図14は、第一の意匠が青色で第二の意匠が黄色である場合の透過率を示したグラフである。
図3及び
図4中の丸の図形部分の任意の点P
1(x
1,y
1)について、
図3の第一の意匠21‐1が青色で、
図4の第二の意匠31‐1が黄色である場合について説明する。第一の意匠21‐1の波長λの光の透過率をTλaP
1とし、第二の意匠31‐1波長λの光の透過率をTλbP
1とすると、
図14に示したように、第一の意匠21‐1の透過率TλaP
1は、400~500nm付近で高い透過率を示し、青色に見えることが分かる。一方、第二の意匠31‐1の透過率をTλbP
1は、500~700nm付近で高い透過率を示し、黄色に見えることが分かる。青色の第一の意匠21‐1と黄色の第二の意匠31‐1とを重ねると、TλaP
1×TλbP
1×THは可視光領域の400~700nm全域でほぼ一定となり、無彩色に近い色に見える。
【0068】
図15は、第一の意匠が緑色で第二の意匠が紫色である場合の透過率を示したグラフである。
図3及
図4中の四角の図形部分の任意の点P
3(x
3,y
3)について、
図3の第一の意匠21‐2が緑色であり、
図4の第二の意匠31‐2が紫色である場合について説明する。第一の意匠21‐2の波長λの光の透過率をTλaP
3とし、第二の意匠31‐2の波長λの光の透過率をTλbP
3とすると、
図15に示したように、第一の意匠21‐2の透過率TλaP
3は、480~610nm付近で高い透過率を示し、緑色に見えることが分かる。一方、第二の意匠31‐1の透過率をTλbP
1は、400~530nm付近及び590~700nm付近で高い透過率を示し、紫色に見えることが分かる。緑色の第一の意匠21‐2と紫色の第二の意匠31‐2とを重ねると、TλaP
3×TλbP
3×THは可視光領域の400~700nm全域でほぼ一定となり、無彩色に近い色に見える。
【0069】
上記では丸の図形部分の任意の点P1と四角の図形部分の任意の点P3の2点間の透過率の関係について説明したが、前面板全体について、波長400~700nmの範囲における、第一の意匠21の透過率Tλaと第二の意匠31の透過率Tλbと半透過部材10の透過率THの積の最大値と最小値の差が、30%以下であることがより好ましい。なお、すべての波長において完全に透過率を一定にすることは印刷材料の都合上難しいため、ある程度一定の範囲内に収まるように調整することで表示の違和感を緩和することができる。
【0070】
第一の意匠21及び第二の意匠31が有彩色である場合も、第一の意匠21及び第二の意匠31が無彩色である場合と同様に、任意の座標における見た目の透過率αが30%以下であることが好ましい。
【0071】
第一の意匠21及び第二の意匠31は、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷法によって形成することができる。第一の意匠21及び第二の意匠31は、半透過部材10の前面側の面及び背面側の面に直接印刷されてもよい。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の透明な基材に第一の意匠21及び第二の意匠31をそれぞれ印刷し、半透過部材10の前面側及び背面側に貼り合わせてもよい。上記印刷に用いるインクは、染料又は顔料であってもよい。拡散性が少なく、表示画像がぼやけないという観点からは、上記印刷には染料を用いることが好ましい。
【0072】
意匠層20と上記反転意匠層30との距離は、1mm以下であることが好ましい。上記構成とすることで、表示装置を斜めから見た場合に、第一の意匠21の模様と第二の意匠31の模様とがずれることで、模様の境界が観察者に視認されることを防ぐことができる。
【0073】
前面板100の表面は平面であってもよいし、曲面であってもよい。前面板100の表面が曲面である場合、前面板100は前面側に湾曲していても、背面側に湾曲してもよい。前面板100の表面が曲面である場合、前面板100の最表面の曲率半径は、例えば50cm~150cmであってもよい。
【0074】
表示パネル110と前面板100とは、間隔を空けて配置されても、接着されていてもよい。空気層との界面反射をなくし、外光下での視認性を向上できる観点からは、表示パネル110と前面板100とが接着されていることが好ましい。表示パネル110と前面板100との間には、粘着層を有してもよい。
図1では、液晶パネル110Aの前面側に配置された第一の直線偏光板111と前面板100とが、第一の粘着層50を介して貼り合わされた例を示した。
【0075】
第一の粘着層50に用いる接着剤は、透明性が高いものであれば特に限定されず、液晶表示装置の分野において通常用いられるものを使用することができ、アクリル系、ウレタン系の粘着剤や粘着シートを用いることができる。第一の粘着層50の厚みは0.3mm以下であることが好ましい。第一の粘着層50の厚みは0.3mm以下とすることで、顔料が光を拡散することに起因して表示画像がぼやけることを抑制することができる。顔料粒子により光拡散(ヘイズ)が大きくなる傾向があり、表示画像がぼけてしまうおそれがあるが、粘着層の厚みを薄くすることで、表示画像がぼやけることを抑制することができる。
【0076】
図示していないが、前面板100の観察者側にハードコート層を有してもよい。ハードコート層は透明(例えば、全光線透過率が90%以上)であることが好ましい。ハードコート層を配置することで、耐傷性を向上させ、意匠層20を保護することができる。ハードコート層としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等のコーティング層が挙げられる。
【0077】
図16は、観察者側に透明部材を有する前面板の一例を示した断面模式図である。
図17は、背面側に透明部材を有する前面板の一例を示した断面模式図である。実施形態1に係る表示装置は、前面板100の観察者側又は背面側に更に透明部材60を有してもよい。透明部材60を配置することで、強度を挙げることができる。透明部材60は、前面板100を平面又は曲面に保持するための基材としての機能も有する。透明部材60は粘着層を介して前面板100に貼り付けられてもよい。
【0078】
図16に示したように、前面板100の観察者側に透明部材60を有する場合、意匠層20に傷がつかないように保護することができる。前面板100の背面側に透明部材60を有する場合、強度を得つつ、マットな質感でより素材に近い前面板にすることができる。
【0079】
透明部材60としては、ガラス、アクリル、ポリカーボネート等の透光性の基板が挙げられる。透明部材60は、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。
【0080】
図示していないが、斜め方向からの視野角を制限する視野角制御フィルムを配置してもよい。視野角制御フィルムは、例えば、バックライトと液晶パネルの間に配置してもよい。非表示状態で斜め方向から観察すると、意匠層20の第一の意匠21と反転意匠層30の第二の意匠31とがずれて模様の境界が見えることがあるため、視野角制御フィルムを配置して斜め方向からの視野角を制限し、主に正面方向から表示が見えるようにすることで、模様がずれて見えないようにすることができる。
【0081】
上記視野角制御フィルムとしては、斜め方向からの視野角を制限できるものであれば特に限定されないが、例えば、ルーバーフィルムを用いてもよい。ルーバーフィルムとしては、例えば、透明フィルムの表面に複数の微細な線状の遮光部材が配置されたもの等が挙げられる。
【0082】
図示していないが、半透過部材10よりも前面側に、更に拡散層を有してもよい。拡散層を有することで、前面側から観察した表示装置の外観がマットになりデザイン的に好まれる場合がある。拡散層としては、表示装置の分野で一般的に使用されるものを用いることができ、例えば、樹脂ビーズ等の拡散粒子を含む樹脂層や、異方性拡散と呼ばれる特定の偏光のみ拡散する層(異方性拡散層)であってもよい。
【0083】
異方性拡散層を配置する場合は、液晶パネル110Aの前面側に配置された第一の直線偏光板111の透過軸方向の光は拡散せず、吸収軸方向の光が拡散するように、配置角度を設定することが好ましい。このように配置することで、表示パネル110側からの透過光は阻害せず、半透過部材10の反射光のみを拡散することができる。
【0084】
図1に示したように、前面板100は、表示パネル110よりも面積が大きくてもよい。平面視において、前面板100の表示パネル110からはみ出した領域には、黒色層40が配置されてもよい。表示パネル110からはみ出した領域の反転意匠層30の裏に黒色層40を配置することで、表示装置の額縁領域に配置されたベゼルやフレーム等の部材が見えないようにすることができる。黒色層40は、黒色の顔料や染料を用いた印刷部であってもよいし、遮光テープであってよい。
【0085】
(筐体)
実施形態1に係る表示装置は、更に、前面板100と表示パネル110とを格納する筐体300を備えてもよい。
図18は、前面板及び表示パネルを筐体に格納した表示装置の断面模式図である。前面板100の表示パネル110からはみ出した領域を額縁領域とし、表示パネル110から出射された光が透過する領域を表示領域とすると、
図18に示したように、額縁領域に固定テープ51を配置し、筐体300と固定してもよい。表示パネル110やバックライト200を駆動する駆動回路が形成された回路基板301等は、筐体300内部に格納されてもよい。
【0086】
筐体300は、前面板100と表示パネル110とを格納できるものであれば特に限定されず、金属製であっても、樹脂製であってもよい。また、筐体300の形状は、
図18に示した形状に検定されない。
【0087】
図19は、透過状態で表示画像を表示した
図18の表示装置の平面模式図である。
図19に示したように、前面板100は、平面視において筐体300に囲まれていてもよい。筐体300は、表面に意匠層20と類似の模様を有してもよい。筐体300の表面に、意匠層20と類似の模様を施すことで、前面板100と筐体300との一体感が増し、更にデザイン性を高めることができる。例えば、筐体300の色を前面板100の非表示状態での模様や色彩と同等の色にしておくことによって、表示パネル110の非表示状態で、筐体300と前面板100の境界が視認され難くすることができる。
【0088】
同等の色とは、定量的には、色差ΔEが6.5以下であることが好ましく、3.2以下であることがより好ましい。色差ΔEとは、L*a*b*色空間での2点間の距離で、下記式(2)で算出されるものをいう。
ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2 (2)
【0089】
<実施形態2>
実施形態2では、半透過部材として反射型偏光板を用いる形態について例示する。
図20は、実施形態2に係る表示装置の一例を示した断面模式図である。
図21は、
図20に示した表示装置に含まれる光学部材の軸配置を示した説明図である。実施形態1と重複する構成については説明を省略する。
【0090】
図20に示したように、実施形態2に係る表示装置は、半透過部材として反射型偏光板10Bを有する。反射型偏光板10Bは、特定の振動方向の光を反射する反射軸と、上記反射軸と直交する透過軸とを有する。反射型偏光板10Bは、入射光のうちの反射軸と平行な方向の偏光を反射し、その反射軸と直交する方向の偏光を透過させる。また、液晶パネル110Aと前面板100との間に第一の直線偏光板111を備えてもよい。
【0091】
反射型偏光板10Bとしては、反射型偏光板フィルム(スリーエム社製の「DBEF‐D2」、「DBEF‐D3‐260T」、「DBEF‐D4‐400」等)やワイヤーグリッド偏光板等が挙げられる。ワイヤーグリッド偏光板としては、上記特許文献3及び4に開示されたものが挙げられる。
【0092】
表示状態では、
図20中にL1で示したように、バックライト200から出射された光は、第二の直線偏光板112、液晶パネル110A、第一の直線偏光板111を透過し、更に前面板100の反転意匠層30、反射型偏光板10B及び意匠層20を透過して観察者側に出射される。実施形態2でも、表示状態において、意匠層20に含まれる第一の意匠21の模様を視認させずに表示画像を視認させことができる。
【0093】
図21に示したように、第一の直線偏光板111の透過軸と反射型偏光板10Bの透過軸とは、平行であることが好ましい。表示パネル110側から第一の直線偏光板111を透過した光は、第一の直線偏光板111の透過軸方向に振動する直線偏光であるため、第一の直線偏光板111の透過軸と反射型偏光板10Bの上記透過軸とが平行であると、上記直線偏光はほとんどロスなく反射型偏光板10Bを透過できる。そのため、実施形態1よりも前面板100の透過率を高めることができ、表示状態における表示装置の輝度を高めることができる。半透過部材として反射型偏光板10Bを用いる場合は、上述のハーフミラーの反射率を50%と仮定すると、ハーフミラーを用いた場合と比較して約2倍の輝度を得ることができる。
【0094】
非表示状態では、
図20中にL2で示したように、観察者側から入射された光(外光)は、意匠層20を透過した後、反射型偏光板10Bで反射され、再び意匠層20を透過して観察者側に出射される。半透過反射板は、観察面側から入射された光のうち、反射軸方向に振動する直線偏光のほとんど全てを反射し、観察面側に出射する。実施形態2でも、非表示状態において意匠層20に含まれる第一の意匠21を視認させことができる。
【0095】
前面板100の背面側に上述の透明部材60を配置する場合、透明部材60の位相差(リタデーションともいう)は30nm 以下であることが好ましく、位相差がないことがより好ましい。透明部材60に位相差があると、表示パネル110から出射した光の偏光状態が変化し、上記光が反射型偏光板10Bを設計通りに透過せず、表示装置の輝度が下がったり、色が付いたりすることがある。
【0096】
なお、
図20では、液晶パネル110Aの前面側に直線偏光板(第一の直線偏光板111)を備える場合を例示したが、半透過部材として反射型偏光板を用いる場合、第一の直線偏光板111がなくても液晶パネル110Aを用いて表示を行うことも可能である。製造コストを削減する観点からは、第一の直線偏光板111は無くてもよいが、斜め方向から見た場合のコントラストを向上させる観点からは、第一の直線偏光板111を配置した方がよい。
【0097】
<実施形態3>
実施形態3では、前面板が、半透過部材よりも観察者側に、更にカラー偏光板を備える形態について例示する。
図22は、実施形態3に係る表示装置の一例を示した断面模式図である。
図23は、
図22に示した表示装置に含まれる光学部材の軸配置を示した説明図である。実施形態1と重複する構成については説明を省略する。
【0098】
図22に示したように、カラー偏光板70、意匠層20、半透過部材10(反射型偏光板10B)、反転意匠層30の順に配置されてもよい。以下では、半透過部材として反射型偏光板を用いた構成を例示するが、実施形態1のように半透過部材としてハーフミラーを用いた構成に対しても、カラー偏光板を適用することができる。
【0099】
カラー偏光板70は、透過軸と、該透過軸と直交する吸収軸とを有し、該透過軸方向に振動する偏光は透過し、吸収軸方向の偏光は、可視光の波長帯域中の特定の波長成分のみ透過し、その他は吸収する特性を有する吸収型偏光板をいう。カラー偏光板70の吸収軸を着色軸ともいう。透過軸方向の偏光は透明に見えるが、吸収軸方向の偏光は色が付いて見えるため、カラー偏光板70を配置することで、表示状態では、表示画像に影響を与えることなく表示を行うことができ、非表示状態において特定の色を付けることができ、デザイン性を高めることができる。
【0100】
カラー偏光板70は、例えば、二色性のある染料を染色させたプラスチックフィルムを延伸することによって作製することができる。なお、染色とは、水中に染料を分散させ、この分散液中にフィルムを浸漬することにより、フィルム内部へ染料を浸透させることをいう。
【0101】
カラー偏光板70としては、ポラテクノ社製のカラー偏光板等を用いることができる。カラー偏光板70が吸収する波長、すなわち非表示状態において視認される色は、染料の種類やフィルムの構成を変えることで、適宜設定することができる。
【0102】
表示状態では、
図22中にL1で示したように、バックライト200から出射された光は、第二の直線偏光板112、液晶パネル110A、第一の直線偏光板111を透過し、更に前面板100の反転意匠層30、反射型偏光板10B、意匠層20及びカラー偏光板70を透過して観察者側に出射される。
【0103】
図23に示したように、反射型偏光板10Bの上記透過軸とカラー偏光板70の透過軸とは、平行であることが好ましい。更に、反射偏型光板の透過軸は、第一の直線偏光板111の透過軸及び反射型偏光板10Bの透過軸と平行になるように配置されてもよい。第一の直線偏光板111の透過軸と反射型偏光板10Bの透過軸とカラー偏光板70の透過軸とが平行とすることで、第一の直線偏光板111を透過した直線偏光は、ほとんどロスなく反射型偏光板10B及びカラー偏光板70を透過できる。そのため、表示状態での表示装置の輝度を高くすることができる。実施形態3でも、表示状態において、意匠層20に含まれる第一の意匠21の模様を視認させずに表示画像を視認させることができる。なお、表示状態では、後述する非表示状態とは異なり、出射光に色は付かない。
【0104】
非表示状態では、
図22中にL2で示したように、観察者側から入射された光(外光)は、カラー偏光板70及び意匠層20を透過した後、L2は反射型偏光板10Bで反射され、再び意匠層20及びカラー偏光板70を透過して観察者側に出射される。観察面側から入射された光のうち、カラー偏光板70の透過軸方向に振動する光、及び、カラー偏光板70の吸収軸(着色軸)方向に振動する光のうち特定の波長の光は、カラー偏光板70を透過する。一方で、カラー偏光板70の吸収軸方向に振動する光のうち、上記特定の波長以外の波長の光は吸収される。そのため、観察者からは色が付いて見える。
【0105】
実施形態3でも、非表示状態において、意匠層20に含まれる第一の意匠21を視認させることができ、更に、特定の色(反射色)を付けることができる。上述の筐体の色を上記反射色と同等の色にしておくことによって、非表示状態で、まるでディスプレイが無いようなデザインを実現できる。
【0106】
カラー偏光板70を用いる場合、意匠層20及び反転意匠層30は無彩色を含んでもよいし、有彩色を含んでもよい。第一の意匠21及び第二の意匠31が有彩色を含む場合、補色の組み合わせにより多少の色彩のずれが発生することもあるため、無彩色を含む第一の意匠21及び第二の意匠31とカラー偏光板70とを組み合わせることで、複雑な模様をカラーで表現することができる。
【0107】
特に、実施形態3のカラー偏光板を用いる構成は、全体的に特定の色見に着色され、かつ、模様が付加されているような意匠を表現するのに好適である。以下に、カラー偏光板を用いて木目模様を表す場合について説明する。
図24は、非表示状態で木目模様を視認させる場合のカラー偏光板、意匠層及び反転意匠層の一例を示した平面模式図である。
図24中、(a)はカラー偏光板、(b)は意匠層、(c)は反転意匠層の平面模式図を示す。
【0108】
図24に示したように、(a)のカラー偏光板は、非表示状態において木目模様のベース色となる色が視認されることが好ましく、例えば、茶色系の色であってもよい。(b)の意匠層は、木目の繊維等の濃淡を模した木目模様が印刷される。上記木目模様を、黒色、焦げ茶色等で印刷にすることで、ベース色となる(a)のカラー偏光板は表示装置から発する偏光は吸収せず透過し、(b)の意匠層の木目模様よる最低限の吸収だけであるため、輝度をあまり下げることなく木目模様を表現することができる。(c)の反転意匠層は、意匠層が無彩色の第一の意匠を含む場合は、明度が反転された第二の意匠を含み、意匠層が有彩色の第一の意匠を含む場合は、色相及び明度が反転された第二の意匠を含む。
【0109】
図25は、
図24に示したカラー偏光板、意匠層及び反転意匠層を有する前面板を用いた表示装置の非表示状態における平面模式図である。非表示状態では、観察者からは、カラー偏光板70の茶色系の色と意匠層20に印刷された木目印刷部とが重なって、木目模様が視認される。
図25では、筐体300にも木目模様を印刷した例を示した。非表示状態で視認される木目模様と同様の印刷を筐体300に付しておくことで、非表示状態では、前面板100と筐体300との境界(
図25中の点線部分)が視認されず、表示パネル110が存在していないように見せることができる。
【0110】
図26は、
図24に示したカラー偏光板、意匠層及び反転意匠層を有する前面板を用いた表示装置の表示状態における平面模式図である。
図26に示したように、表示状態では、第一の意匠21の模様及びカラー偏光板70の色に妨げられることなく、表示画像を視認することができる。
【0111】
図22に示したように、カラー偏光板70は、第二の粘着層52を介して前面板100と貼り合わされてもよい。第二の粘着層52としては、第一の粘着層50と同様のものを用いることができる。第二の粘着層52の位相差は30nm以下であることが好ましく、位相差がないことがより好ましい。第二の粘着層52に位相差があると、反射型偏光板10Bを透過する透過光又は反射型偏光板10Bで反射される反射光の偏光状態が変化し、表示装置の輝度が下がったり、意図しない色が付いたりすることがある。
【0112】
図27は、実施形態3に係る表示装置の他の一例を示した断面模式図である。上述の
図22では、意匠層20の前面側にカラー偏光板70を配置した例を説明したが、意匠層20とカラー偏光板70の配置は逆であってもよい。
図27に示したように、意匠層20、カラー偏光板70、半透過部材10(反射型偏光板10B)、反転意匠層30の順に配置されてもよい。
【0113】
図27の構成とする場合、反射型偏光板10Bとカラー偏光板70と粘着層の合計厚みは、例えば1mm以下であることが好ましい。上記構成とすることで、非表示状態で斜め方向から見た場合でも、模様の境界を視認し難くすることができる。反射型偏光板10Bとカラー偏光板70と粘着層の合計厚みが厚すぎると、非表示状態で斜めから見た場合に、意匠層20の第一の意匠21と反転意匠層30の第二の意匠31とがずれて、模様の境界が見えてしまうことがある。
【0114】
図28は、実施形態3に係る表示装置について、最表面に凹凸形状を有する構成の一例を示した断面模式図である。前面板100は、上記観察者側の最表面に凹凸形状80を有してもよい。前面板100の観察者側の最表面に微細な凹凸形状80を付すことで、質感を向上させることができる。凹凸形状80は他の実施形態と組み合わせてもよい。
【0115】
凹凸形状80は、例えば、梨地等のランダムな形状であってもよいし、ヘアライン等の周期的に連続する形状であってもよい。また、凹凸形状80は、意匠層20の模様に同調する形状であってもよい。例えば、意匠層20が木目模様の第一の意匠を有する場合は、凹凸形状80も木目模様に応じた凹凸であることが好ましい。
【0116】
凹凸形状80を形成する方法としては、例えば、透明樹脂層を前面板100の最表面に配置される部材に対して、金型転写等によりエンボス加工を施す方法、エンボス加工が施された透明樹脂層を前面板100の最表面に設ける方法、インクジェット印刷等によって前面板100の最表面に透明樹脂を塗布する方法等が挙げられる。
【0117】
前面板100の観察者側の最表面のヘイズは、30%以下であることが好ましい。上記ヘイズは、JIS K 7136準拠した方法で測定される。凹凸形状80を有する場合でも、最表面のヘイズが30%を超えると、表示画像がぼやけて見えることがある。
【0118】
<実施形態4>
実施形態4では、表示パネルが自発光パネルである形態について例示する。
図29は、実施形態4に係る表示装置の一例を示した断面模式図である。実施形態1と重複する構成については説明を省略する。
【0119】
自発光パネル110Bは、パネル内部に発光素子を備えた自ら発光できるパネルであり、バックライト等の外部の光源を必要としない。自発光パネル110Bとしては、公知のものを用いることができ、有機発光ダイオード(OLED:Organic light Emitting Diode)を含むOLEDパネル等が挙げられる。
【0120】
発光ダイオードの構成は、特に限定されず、例えば、陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、陽極をこの順で積層されたものが挙げられる。表示パネルがOLEDである場合、上記発光層は、発光材料として蛍光材料、燐光材料等を含んでもよい。
【0121】
表示状態では、
図29中にL1で示したように、自発光パネル110Bから出射された光は、前面板100の反転意匠層30、半透過部材10及び意匠層20を透過して観察者側に出射される。実施形態4でも、表示状態において、意匠層20に含まれる第一の意匠21の模様を視認させずに表示画像を視認させることができる。
【0122】
OLED等の自発光パネルは、観察者側に出射される光が偏光ではないため、前面板100に用いられる半透過部材10は、ハーフミラーであっても、反射型偏光板であっても、表示装置の輝度はあまり変わらない。
【0123】
非表示状態については、実施形態1又は2と同様であるため説明は省略する。実施形態4でも、非表示状態において、意匠層20に含まれる第一の意匠21の模様を視認させずに表示画像を視認させることができる。
【0124】
実施形態4に係る表示装置は、自発光パネル110Bと前面板との間に更に直線偏光板及び1/4波長板を備えもよい。
図30は、実施形態4に係る表示装置について、直線偏光板及び1/4波長板を備える構成の一例を示した断面模式図である。
図31は、
図30に示した表示装置に含まれる光学部材の軸配置を示した説明図である。以下、実施形態4で用いられる直線偏光板を第三の直線偏光板ともいい、第一及び第二の直線偏光板と同様のものを用いることができる。
【0125】
1/4波長板114は、入射光に対して1/4の位相差を与える位相差板であれ特に限定されない。1/4波長板114は、例えば波長550nmの光に対して1/4波長(厳密には、137.5nm)の面内位相差を付与する位相差板をいい、120nm以上、150nm以下の面内位相差を付与するものであればよい。
【0126】
表示状態では、
図30中にL1で示したように、自発光パネル110Bから出射された光は、1/4波長板114、第三の直線偏光板113を透過し、更に前面板100の反転意匠層30、反射型偏光板10B及び意匠層20を透過して観察者側に出射される。実施形態4でも、表示状態において、意匠層20に含まれる第一の意匠21の模様を視認させずに表示画像を視認させることができる。
【0127】
自発光パネル110Bと前面板100との間に第三の直線偏光板113を配置する場合、半透過部材10は反射型偏光板であることが好ましい。また、
図31に示したように、上記直線偏光板の透過軸と上記反射型偏光板10Bの上記透過軸とは、平行であることが好ましい。反射型偏光板10Bの透過軸を、第三の直線偏光板113と平行になるように設置することで、第三の直線偏光板113を透過した直線偏光はほとんどロスなく反射型偏光板10Bを透過できる。そのため、表示状態における表示装置の輝度を高めることができる。
【0128】
1/4波長板114は進相軸と、上記進相軸と直交する遅相軸を有してもよい。1/4波長板114の進相軸は、第三の直線偏光板113の透過軸と実質的に45°の角度を成すように配置されてもよい。実質的に45°とは、好ましくは45°±3°の範囲内であり、より好ましくは45°±1°の範囲内であり、更に好ましくは45°±0.5°の範囲内である。
【0129】
非表示状態については、実施形態1又は2と同様に、意匠層20に含まれる第一の意匠21の模様を視認させずに表示画像を視認させることができる。なお、非表示状態だけではなく、表示状態でも、観察者側から入射された光の一部が第三の直線偏光板113を透過し、自発光パネル110Bの表面や内部の部材によって観察者側に反射されることがある。直線偏光板と1/4波長板114とを組み合わせることで円偏光板として機能させ、自発光パネル110Bの表面等での外光反射を低減することができる。
【0130】
実施形態1~4に係る表示装置は、例えば、自動車のインストルメントパネル(instrument panel)として用い、速度メーター等の計器類を表示してもよいし、家電の操作パネル等に用いてもよい。
【0131】
<表示システム>
本発明の他の一実施形態は、実施形態1~4の表示装置と、上記表示装置の周囲の照度を測定する光センサーと、上記光センサーで検出した照度に応じて、上記表示装置に含まれる上記表示パネルの輝度を調整する輝度制御部とを備える表示システムであってもよい。
【0132】
実施形態1~4の表示装置は、バックライトや自発光パネルを点灯した表示状態であっても、周囲が明るい環境で用いると、意匠層に形成した第一の意匠の模様が視認される場合がある。そのため、強い外光が当たるような環境下で使用する場合は、表示装置の輝度を高めることで、第一の意匠の模様が視認され難くなり、表示画像を見やすくすることができる。
【0133】
一例として、表示装置と光センサーと輝度制御部とを備えた表示システムについて説明する。上記表示システムにより、外光の照度に合わせて、表示装置の輝度が自動で調整されることが好ましい。上記光センサーは、例えば、上記表示装置の周囲の照度を測定するセンサーである。上記光センサーは、表示装置の観察者側付近の照度を測定できればよく、表示装置の観察者側の表面の照度を測定してもよいし、上記観察者側の表面から離れた位置の照度を測定してもよい。
【0134】
上記輝度制御部は、上記光センサーで検出した照度に応じて、上記表示パネルの輝度を調整する。上記輝度制御部は、例えば、上記表示装置の観察者側の照度が高い場合は、上記表示パネルの輝度が高くなるように制御してもよい。例えば、周囲の照度が1万ルクス以上など直射日光が当たるような環境である場合に、表示パネルの輝度を1500cd/m2以上に高くなるように制御すると、表示装置が見えやすくなる。また、上記表示装置の観察者側の照度が低い場合は、上記表示パネルの輝度が低くなるように制御してもよい。例えば周囲の照度が10ルクス以下など暗い環境である場合に、表示パネルの輝度を100cd/m2以下に低くなるように制御すると、表示が眩しすぎずに見えやすくなることがある。
【符号の説明】
【0135】
1:表示装置
10:半透過部材
10A:ハーフミラー
10B:反射型偏光板
20:意匠層
21:第一の意匠
30:反転意匠層
31:第二の意匠
40:黒色層
50:第一の粘着層
51:固定テープ
52:第二の粘着層
60:透明部材
70:カラー偏光板
80:凹凸形状
100:前面板
110:表示パネル
110A:液晶パネル
110B:自発光パネル
111:第一の直線偏光板
112:第二の直線偏光板
113:第三の直線偏光板
114:1/4波長板
200:バックライト
300:筐体
301:回路基板