(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】検出器及び検出器の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/624 20210101AFI20240514BHJP
H01J 40/02 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G01N27/624
H01J40/02
(21)【出願番号】P 2022171281
(22)【出願日】2022-10-26
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷池 康司郎
(72)【発明者】
【氏名】有木 幸市
(72)【発明者】
【氏名】松本 真己子
(72)【発明者】
【氏名】小坂 知裕
(72)【発明者】
【氏名】寺西 知子
(72)【発明者】
【氏名】池田 友成
(72)【発明者】
【氏名】紀藤 賢一
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-054877(JP,A)
【文献】国際公開第2022/219825(WO,A1)
【文献】米国特許第7098449(US,B1)
【文献】国際公開第2009/066640(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0319176(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0048699(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 27/92
H01J 40/00 - H01J 40/20
G01N 21/00 - G01N 21/83
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01N 15/00 - G01N 15/1492
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面を有する第1基板と、
前記第1基板の前記第1主面と間隔を空けて対向する第2主面を有する第2基板と、
前記第1基板の前記第1主面に設けられる第1電極と、
前記第2基板の前記第2主面に設けられて前記第1電極と間隔を空けて対向し、前記第1電極との間に検出対象物である荷電粒子の流路を形成する第2電極と、
前記第1基板の前記第1主面または前記第2基板の前記第2主面に設けられて前記第1電極及び前記第2電極に対して前記流路の下流側に配され、前記荷電粒子を捕集する第3電極と、
前記第1基板の前記第1主面と前記第2基板の前記第2主面との間に介在し、前記流路に沿って延在する第1スペーサと、
前記第1基板の前記第1主面と前記第2基板の前記第2主面との間に介在し、前記流路に沿って延在し、前記第1スペーサとの間に前記流路を挟んで配される第2スペーサと、
前記第1基板の前記第1主面と前記第2基板の前記第2主面との間に介在し、前記流路に沿って延在し、前記第1スペーサに対して前記流路側とは反対側に配される第3スペーサと、
前記第1基板の前記第1主面と前記第2基板の前記第2主面との間に介在し、前記流路に沿って延在し、前記第2スペーサに対して前記流路側とは反対側に配される第4スペーサと、を備える検出器。
【請求項2】
前記第3スペーサは、前記第1スペーサとの間に間隔を空けて配され、
前記第4スペーサは、前記第2スペーサとの間に間隔を空けて配される請求項1記載の検出器。
【請求項3】
前記第3スペーサは、前記第1スペーサとの間の間隔が、前記第1スペーサと前記第2スペーサとの間の間隔よりも小さく、
前記第4スペーサは、前記第2スペーサとの間の間隔が、前記第1スペーサと前記第2スペーサとの間の間隔よりも小さい請求項2記載の検出器。
【請求項4】
前記第3スペーサは、前記第1スペーサとの間の間隔が、前記第1スペーサの幅寸法以下とされ、
前記第4スペーサは、前記第2スペーサとの間の間隔が、前記第2スペーサの幅寸法以下とされる請求項2または請求項3記載の検出器。
【請求項5】
前記第1スペーサ、前記第2スペーサ、前記第3スペーサ及び前記第4スペーサは、互いの幅寸法が等しい請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の検出器。
【請求項6】
前記第1スペーサ、前記第2スペーサ、前記第3スペーサ及び前記第4スペーサは、それぞれ光及び熱の少なくとも一方の付与により硬化する硬化材と、前記硬化材に分散配合されるスペーサ粒子と、を含むスペーサ材からなる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の検出器。
【請求項7】
第1基板に備わる第1主面に第1電極を、第2基板に備わる第2主面に第2電極を、前記第1基板の前記第1主面または前記第2基板の前記第2主面に第3電極を、それぞれ設け、
前記第1基板の前記第1主面と前記第2基板の前記第2主面との少なくとも一方にスペーサ材を塗布し、
前記第1主面と前記第2主面とを対向させ、前記第1電極と前記第2電極との間に検出対象物である荷電粒子の流路を形成させるよう、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせ、前記スペーサ材を硬化させており、
前記スペーサ材の塗布に際しては、前記第1主面と前記第2主面とのうちの一方において前記流路に沿う第1方向に沿って延在する第1領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とのうちの一方において前記第1領域との間に間隔を空けた位置にあって前記第1方向に沿って延在する第2領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とのうちの一方において前記第1領域に対して前記第2領域とは反対側にあって前記第1方向に沿って延在する第3領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とのうちの一方において前記第2領域に対して前記第1領域とは反対側にあって前記第1方向に沿って延在する第4領域に前記スペーサ材を塗布し、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせ、前記第1領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第1主面と前記第2主面との間に介在する第1スペーサを設け、前記第2領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第1主面と前記第2主面との間に介在して前記第1スペーサとの間に前記流路を挟んで配される第2スペーサを設け、前記第3領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第1主面と前記第2主面との間に介在して前記第1スペーサに対して前記流路側とは反対側に配される第3スペーサを設け、前記第4領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第1主面と前記第2主面との間に介在して前記第2スペーサに対して前記流路側とは反対側に配される第4スペーサを設ける検出器の製造方法。
【請求項8】
前記スペーサ材の塗布に際しては、前記第1主面と前記第2主面とのうちの他方において前記第1方向に沿って延在する第5領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とのうちの他方において前記第5領域との間に間隔を空けた位置にあって前記第1方向に沿って延在する第6領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とのうちの他方において前記第5領域に対して前記第6領域とは反対側にあって前記第1方向に沿って延在する第7領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とのうちの他方において前記第6領域に対して前記第5領域とは反対側にあって前記第1方向に沿って延在する第8領域に前記スペーサ材を塗布し、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせ、前記第1領域に塗布された前記スペーサ材と前記第5領域に塗布された前記スペーサ材とを一体化させ、前記第2領域に塗布された前記スペーサ材と前記第6領域に塗布された前記スペーサ材とを一体化させ、前記第3領域に塗布された前記スペーサ材と前記第7領域に塗布された前記スペーサ材とを一体化させ、前記第4領域に塗布された前記スペーサ材と前記第8領域に塗布された前記スペーサ材とを一体化させ、
前記第1領域及び前記第5領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第1スペーサを設け、前記第2領域及び前記第6領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第2スペーサを設け、前記第3領域及び前記第7領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第3スペーサを設け、前記第4領域及び前記第8領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第4スペーサを設ける請求項7記載の検出器の製造方法。
【請求項9】
前記第1基板を複数含む第1マザー基板であって複数の前記第1主面を含む第3主面を有する第1マザー基板と、前記第2基板を複数含む第2マザー基板であって複数の前記第2主面を含む第4主面を有する第2マザー基板と、を製造し、
前記第3主面と前記第4主面とのうちの一方に前記スペーサ材を塗布し、
前記第1マザー基板と前記第2マザー基板とを貼り合わせ、
前記スペーサ材を硬化させ、
前記第1マザー基板及び前記第2マザー基板を分割して複数の検出器を製造しており、
前記第1マザー基板における複数の前記第1基板の配列間隔と、前記第2マザー基板における複数の前記第2基板の配列間隔と、を、前記第1領域と前記第2領域との間の間隔の1.4倍以上で1.9倍以下の範囲とする請求項7または請求項8記載の検出器の製造方法。
【請求項10】
前記第1マザー基板における複数の前記第1基板の配列間隔と、前記第2マザー基板における複数の前記第2基板の配列間隔と、を、前記第1領域と前記第2領域との間の間隔の1.5倍以上で1.8倍以下の範囲とする請求項9記載の検出器の製造方法。
【請求項11】
前記第1マザー基板における複数の前記第1基板の配列間隔と、前記第2マザー基板における複数の前記第2基板の配列間隔と、を、前記第1領域と前記第2領域との間の間隔の1.6倍以上で1.7倍以下の範囲とする請求項9記載の検出器の製造方法。
【請求項12】
前記第1基板を複数含む第1マザー基板であって複数の前記第1主面を含む第3主面を有する第1マザー基板と、前記第2基板を複数含む第2マザー基板であって複数の前記第2主面を含む第4主面を有する第2マザー基板と、を製造し、
前記第3主面と前記第4主面とのうちの一方に前記スペーサ材を塗布し、
前記第1マザー基板と前記第2マザー基板とを貼り合わせ、
前記スペーサ材を硬化させ、
前記第1マザー基板及び前記第2マザー基板を分割して複数の検出器を製造しており、
前記第1マザー基板の製造に際しては、複数の前記第1基板が、前記第1主面に沿い且つ前記第1方向と交差する第2方向に沿って並んで配される前記第1マザー基板を製造し、
前記第2マザー基板の製造に際しては、複数の前記第2基板が、前記第2主面に沿い且つ前記第2方向に沿って並んで配される前記第2マザー基板を製造し、
前記スペーサ材の塗布に際しては、前記第3主面と前記第4主面とのうちの一方において前記第1方向に沿って延在する第9領域と、前記第1方向に沿って延在する第10領域と、に前記スペーサ材を塗布し、
前記第9領域は、複数の前記第3領域のうちの前記第2方向について一方の端に位置する前記第3領域よりも前記第2方向について端寄りの位置に配され、
前記第10領域は、複数の前記第4領域のうちの前記第2方向について他方の端に位置する前記第4領域よりも前記第2方向について端寄りの位置に配され、
前記第1マザー基板と前記第2マザー基板とを貼り合わせ、前記第9領域及び前記第10領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第3主面と前記第4主面との間に介在する第1ダミースペーサであって、複数の前記第3スペーサのうち、前記第2方向について前記一方の端に位置する前記第3スペーサよりも前記第2方向について端寄りの位置に配される第1ダミースペーサと、前記第3主面と前記第4主面との間に介在する第2ダミースペーサであって、複数の前記第4スペーサのうち、前記第2方向について前記他方の端に位置する前記第4スペーサに対して前記第2方向について端寄りの位置に配される第2ダミースペーサと、を設ける請求項7または請求項8記載の検出器の製造方法。
【請求項13】
前記スペーサ材の塗布に際しては、前記スペーサ材に熱硬化性材料を含む硬化材を含ませ、
前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせる際には、前記第1基板及び前記第2基板を加圧し、加熱する請求項7または請求項8記載の検出器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、検出器及び検出器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イオン移動度によりイオンを分離検出する検出器の一例として下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1には、検出器としてイオン移動度分離装置が記載されている。特許文献1に記載のイオン移動度分離装置においては、一対の平板電極の少なくとも一つが、第一の導電性を有する第一電極部と、第二の導電性を有する第二電極部と、第一電極部と第二電極部とに挟まれて設置される第一の導電性及び第二の導電性より小さい第三の導電性を有する第三電極部と、を含み、第一電極部と第二電極部と第三電極部が、流路と垂直になるように並べて設置され、電圧制御部が、第一電極部と第二電極部に各々異なる直流電圧を印加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載のイオン移動度分離装置は、一対の平板電極がそれぞれ設けられる一対の基板と、一対の基板をイオンが含まれたガス流路と外雰囲気とのリークがないよう区画接着し、その間の間隔を保持するスペーサと、を有する。一対の基板の間の間隔は、一対の平板電極に印加される電圧値やイオンの透過率等に影響し、特許文献1では50μm以上2mm以下程度に設定される。ここで、検出器の製造に際し、一対の基板の間の間隔を狙いの値にするには、スペーサの高さを狙いの値とすることが求められる。しかしながら、スペーサの高さを、例えば上記した50μm以上2mm以下程度の狙いの値に安定的に制御するのは難しく、スペーサの高さがばらつき易いという問題があった。
【0005】
なお、一対の基板の間の間隔を安定化させる技術としては、液晶パネルに係るセルギャップを安定化させる技術がある。しかし、液晶パネルのセルギャップは、数μm程度であり、検出器を構成する一対の基板の間の間隔に比べると、桁違いに小さい。このため、液晶パネルに係るセルギャップを安定化させる技術を用いて、検出器を構成する一対の基板の間の間隔を安定化させるのは困難であった。
【0006】
本明細書に記載の技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、第1基板と第2基板との間の間隔を安定化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本明細書に記載の技術に関わる検出器は、第1主面を有する第1基板と、前記第1基板の前記第1主面と間隔を空けて対向する第2主面を有する第2基板と、前記第1基板の前記第1主面に設けられる第1電極と、前記第2基板の前記第2主面に設けられて前記第1電極と間隔を空けて対向し、前記第1電極との間に検出対象物である荷電粒子の流路を形成する第2電極と、前記第1基板の前記第1主面または前記第2基板の前記第2主面に設けられて前記第1電極及び前記第2電極に対して前記流路の下流側に配され、前記荷電粒子を捕集する第3電極と、前記第1基板の前記第1主面と前記第2基板の前記第2主面との間に介在し、前記流路に沿って延在する第1スペーサと、前記第1基板の前記第1主面と前記第2基板の前記第2主面との間に介在し、前記流路に沿って延在し、前記第1スペーサとの間に前記流路を挟んで配される第2スペーサと、前記第1基板の前記第1主面と前記第2基板の前記第2主面との間に介在し、前記流路に沿って延在し、前記第1スペーサに対して前記流路側とは反対側に配される第3スペーサと、前記第1基板の前記第1主面と前記第2基板の前記第2主面との間に介在し、前記流路に沿って延在し、前記第2スペーサに対して前記流路側とは反対側に配される第4スペーサと、を備える。
【0008】
(2)また、上記検出器は、上記(1)に加え、前記第3スペーサは、前記第1スペーサとの間に間隔を空けて配され、前記第4スペーサは、前記第2スペーサとの間に間隔を空けて配されてもよい。
【0009】
(3)また、上記検出器は、上記(2)に加え、前記第3スペーサは、前記第1スペーサとの間の間隔が、前記第1スペーサと前記第2スペーサとの間の間隔よりも小さく、前記第4スペーサは、前記第2スペーサとの間の間隔が、前記第1スペーサと前記第2スペーサとの間の間隔よりも小さくてもよい。
【0010】
(4)また、上記検出器は、上記(2)または上記(3)に加え、前記第3スペーサは、前記第1スペーサとの間の間隔が、前記第1スペーサの幅寸法以下とされ、前記第4スペーサは、前記第2スペーサとの間の間隔が、前記第2スペーサの幅寸法以下とされてもよい。
【0011】
(5)また、上記検出器は、上記(1)から上記(4)のいずれかに加え、前記第1スペーサ、前記第2スペーサ、前記第3スペーサ及び前記第4スペーサは、互いの幅寸法が等しくてもよい。
【0012】
(6)また、上記検出器は、上記(1)から上記(5)のいずれかに加え、前記第1スペーサ、前記第2スペーサ、前記第3スペーサ及び前記第4スペーサは、それぞれ光及び熱の少なくとも一方の付与により硬化する硬化材と、前記硬化材に分散配合されるスペーサ粒子と、を含むスペーサ材からなってもよい。
【0013】
(7)本明細書に記載の技術に関わる検出器の製造方法は、第1基板に備わる第1主面に第1電極を、第2基板に備わる第2主面に第2電極を、前記第1基板の前記第1主面または前記第2基板の前記第2主面に第3電極を、それぞれ設け、前記第1基板の前記第1主面と前記第2基板の前記第2主面との少なくとも一方にスペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とを対向させ、前記第1電極と前記第2電極との間に検出対象物である荷電粒子の流路を形成させるよう、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせ、前記スペーサ材を硬化させており、前記スペーサ材の塗布に際しては、前記第1主面と前記第2主面とのうちの一方において前記流路に沿う第1方向に沿って延在する第1領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とのうちの一方において前記第1領域との間に間隔を空けた位置にあって前記第1方向に沿って延在する第2領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とのうちの一方において前記第1領域に対して前記第2領域とは反対側にあって前記第1方向に沿って延在する第3領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とのうちの一方において前記第2領域に対して前記第1領域とは反対側にあって前記第1方向に沿って延在する第4領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせ、前記第1領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第1主面と前記第2主面との間に介在する第1スペーサを設け、前記第2領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第1主面と前記第2主面との間に介在して前記第1スペーサとの間に前記流路を挟んで配される第2スペーサを設け、前記第3領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第1主面と前記第2主面との間に介在して前記第1スペーサに対して前記流路側とは反対側に配される第3スペーサを設け、前記第4領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第1主面と前記第2主面との間に介在して前記第2スペーサに対して前記流路側とは反対側に配される第4スペーサを設ける。
【0014】
(8)また、上記検出器の製造方法は、上記(7)に加え、前記スペーサ材の塗布に際しては、前記第1主面と前記第2主面とのうちの他方において前記第1方向に沿って延在する第5領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とのうちの他方において前記第5領域との間に間隔を空けた位置にあって前記第1方向に沿って延在する第6領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とのうちの他方において前記第5領域に対して前記第6領域とは反対側にあって前記第1方向に沿って延在する第7領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1主面と前記第2主面とのうちの他方において前記第6領域に対して前記第5領域とは反対側にあって前記第1方向に沿って延在する第8領域に前記スペーサ材を塗布し、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせ、前記第1領域に塗布された前記スペーサ材と前記第5領域に塗布された前記スペーサ材とを一体化させ、前記第2領域に塗布された前記スペーサ材と前記第6領域に塗布された前記スペーサ材とを一体化させ、前記第3領域に塗布された前記スペーサ材と前記第7領域に塗布された前記スペーサ材とを一体化させ、前記第4領域に塗布された前記スペーサ材と前記第8領域に塗布された前記スペーサ材とを一体化させ、前記第1領域及び前記第5領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第1スペーサを設け、前記第2領域及び前記第6領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第2スペーサを設け、前記第3領域及び前記第7領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第3スペーサを設け、前記第4領域及び前記第8領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第4スペーサを設けてもよい。
【0015】
(9)また、上記検出器の製造方法は、上記(7)または上記(8)に加え、前記第1基板を複数含む第1マザー基板であって複数の前記第1主面を含む第3主面を有する第1マザー基板と、前記第2基板を複数含む第2マザー基板であって複数の前記第2主面を含む第4主面を有する第2マザー基板と、を製造し、前記第3主面と前記第4主面とのうちの一方に前記スペーサ材を塗布し、前記第1マザー基板と前記第2マザー基板とを貼り合わせ、前記スペーサ材を硬化させ、前記第1マザー基板及び前記第2マザー基板を分割して複数の検出器を製造しており、前記第1マザー基板における複数の前記第1基板の配列間隔と、前記第2マザー基板における複数の前記第2基板の配列間隔と、を、前記第1領域と前記第2領域との間の間隔の1.4倍以上で1.9倍以下の範囲としてもよい。
【0016】
(10)また、上記検出器の製造方法は、上記(9)に加え、前記第1マザー基板における複数の前記第1基板の配列間隔と、前記第2マザー基板における複数の前記第2基板の配列間隔と、を、前記第1領域と前記第2領域との間の間隔の1.5倍以上で1.8倍以下の範囲としてもよい。
【0017】
(11)また、上記検出器の製造方法は、上記(9)に加え、前記第1マザー基板における複数の前記第1基板の配列間隔と、前記第2マザー基板における複数の前記第2基板の配列間隔と、を、前記第1領域と前記第2領域との間の間隔の1.6倍以上で1.7倍以下の範囲としてもよい。
【0018】
(12)また、上記検出器の製造方法は、上記(7)から上記(11)のいずれかに加え、前記第1基板を複数含む第1マザー基板であって複数の前記第1主面を含む第3主面を有する第1マザー基板と、前記第2基板を複数含む第2マザー基板であって複数の前記第2主面を含む第4主面を有する第2マザー基板と、を製造し、前記第3主面と前記第4主面とのうちの一方に前記スペーサ材を塗布し、前記第1マザー基板と前記第2マザー基板とを貼り合わせ、前記スペーサ材を硬化させ、前記第1マザー基板及び前記第2マザー基板を分割して複数の検出器を製造しており、前記第1マザー基板の製造に際しては、複数の前記第1基板が、前記第1主面に沿い且つ前記第1方向と交差する第2方向に沿って並んで配される前記第1マザー基板を製造し、前記第2マザー基板の製造に際しては、複数の前記第2基板が、前記第2主面に沿い且つ前記第2方向に沿って並んで配される前記第2マザー基板を製造し、前記スペーサ材の塗布に際しては、前記第3主面と前記第4主面とのうちの一方において前記第1方向に沿って延在する第9領域と、前記第1方向に沿って延在する第10領域と、に前記スペーサ材を塗布し、前記第9領域は、複数の前記第3領域のうちの前記第2方向について一方の端に位置する前記第3領域よりも前記第2方向について端寄りの位置に配され、前記第10領域は、複数の前記第4領域のうちの前記第2方向について他方の端に位置する前記第4領域よりも前記第2方向について端寄りの位置に配され、前記第1マザー基板と前記第2マザー基板とを貼り合わせ、前記第9領域及び前記第10領域に塗布された前記スペーサ材を硬化させることで、前記第3主面と前記第4主面との間に介在する第1ダミースペーサであって、複数の前記第3スペーサのうち、前記第2方向について前記一方の端に位置する前記第3スペーサよりも前記第2方向について端寄りの位置に配される第1ダミースペーサと、前記第3主面と前記第4主面との間に介在する第2ダミースペーサであって、複数の前記第4スペーサのうち、前記第2方向について前記他方の端に位置する前記第4スペーサに対して前記第2方向について端寄りの位置に配される第2ダミースペーサと、を設けてもよい。
【0019】
(13)また、上記検出器の製造方法は、上記(7)から上記(11)のいずれかに加え、前記スペーサ材の塗布に際しては、前記スペーサ材に熱硬化性材料を含む硬化材を含ませ、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせる際には、前記第1基板及び前記第2基板を加圧し、加熱する。
【発明の効果】
【0020】
本明細書に記載の技術によれば、第1基板と第2基板との間の間隔を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る検出セルを備える移動度分析装置の構成を示す概略図
【
図2】実施形態1に係る移動度分析装置に備わる制御部のブロック図
【
図3】実施形態1に係る移動度分析装置によって得られたFAIMSスペクトルを表すマップグラフ
【
図5】実施形態1に係る検出セルにおける
図4のv-v線断面図
【
図6】実施形態1に係る検出セルの正断面図であって、
図4を拡大した正断面図
【
図9】実施形態1に係る第1マザー基板の第3主面上に塗布装置によってスペーサ材を塗布する動作を示す断面図
【
図10】実施形態1に係るスペーサ材が塗布された第1マザー基板の正断面図
【
図11】実施形態1に係るスペーサ材が塗布された第2マザー基板の正断面図
【
図12】実施形態1に係るスペーサ材が塗布された第1マザー基板と、スペーサ材が塗布された第2マザー基板と、を貼り合わせる前の状態を示す正断面図
【
図13】実施形態1に係るスペーサ材が塗布された第1マザー基板と、スペーサ材が塗布された第2マザー基板と、を貼り合わせる前の状態を示す側断面図
【
図14】実施形態1に係る第1マザー基板と2マザー基板とを貼り合わせて硬化材を硬化させた状態を示す正断面図
【
図15】実施形態1に係る第1マザー基板と2マザー基板とを貼り合わせて硬化材を硬化させた状態を示す側断面図
【
図16】実施形態1に係る比較実験1の比較例1の検出セル及び連成検出セルを示す正断面図
【
図17】実施形態1に係る比較実験1の比較例2の検出セル及び連成検出セルを示す正断面図
【
図18】実施形態1に係る比較実験1の検証結果を示す表
【
図19】実施形態2に係る第1マザー基板と2マザー基板とを貼り合わせて硬化材を硬化させた状態を示す正断面図
【
図20】実施形態2に係る比較実験2の検証結果を示す表
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
実施形態1を
図1から
図18によって説明する。本実施形態では、例えば、電界非対称イオン移動度分析法システム(FAIMS:field asymmetric ion mobility spectrometry)を用いた移動度分析装置1(以下、単に「分析装置」という。)を示す。この分析装置1は、例えば匂いに含まれる成分を分析するのに用いられることから、匂いセンサの一種であると言える。なお、各図面の一部にはX軸、Y軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で示した方向となるように描かれている。
【0023】
分析装置1は、
図1に示すように、イオン化源10と、検出セル(検出器)20と、ポンプ30(送気装置の一例)と、制御部40と、を含む(
図2を参照)。以下、各要素について説明する。
【0024】
イオン化源10は、分析対象の化合物(試料)の原子及び分子をイオン化する装置である。化合物がイオン化源10によってイオン化されると、検出セル20において検出可能な荷電粒子(試料イオン)となる。この荷電粒子が、検出セル20の検出対象物である。イオン化源10のイオン化手法は特に制限されず、従来の各種のイオン化源を用いることができる。具体的には、イオン化手法としては、例えば、電子衝撃(Electron Impact:EI)法、化学イオン化法、ガス放電法、光イオン化法、脱着イオン化法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法、熱イオン化法、及び周囲イオン化法等や、これらを組み合わせた方法などであってよく、検出したい成分をイオン化できるイオン化源を適宜選択するとよい。本例では、具体的には図示しないが、イオン化源10として針電極を備えており、この針電極によって大気圧下でコロナ放電を発生させることにより反応イオンを生じさせ、試料原子や試料分子と反応させることで、間接的に荷電粒子を発生させるようにしている。荷電粒子は、分析対象のイオンに限定されず、反応物イオン、イオンクラスタ等であってもよい。
【0025】
イオン化源10としては、上記の針電極の他、ニッケル同位体(63Ni)やアメリシウム同位体(241Am)等を含む放射性イオン源を備え、放射性イオン源から発生される試料をイオン化するイオン化ユニットや、紫外線パルスレーザ発振器を備え、紫外線パルスレーザ光を照射して試料を直接的にアブレーションしてイオン化するイオン化ユニット等であってもよい。イオン化源10によって生成された荷電粒子は、大気、キャリアガス等の雰囲気ガス(中性のバッファガス)が、後述するポンプ30によって送気されることで発生する気流に乗って、検出セル20に向けて送られる。
【0026】
ポンプ30は、荷電粒子を含む雰囲気ガスを、検出セル20内を流れ方向に沿って移動させるための要素である。本実施形態のポンプ30は、流れ方向について検出セル20の下流側に設置されている。ポンプ30としては、イオン化源10によって生成された荷電粒子を、後述する検出セル20に所定の速度で送ることができる各種の送気装置を用いることができる。ポンプ30の送気機構は特に制限されず、ダイアフラム式、回転翼式、ピストン式、ロータリーベーン式、その他の送気装置等であってよい。検出セル20の大きさ等にもよるが、ポンプ30として、一例では、最大吐出圧力が約0.03MPa以下程度、送気量約1L/min以下程度のマイクロブロアを用いることができる。例えば、圧電セラミックスによる高周波振動(例えば超音波振動)によってダイアフラムを変動させるようにしたマイクロブロアによると、脈動を抑制して送気できる点において、本実施形態で用いるポンプ30として好ましい。
【0027】
検出セル20は、イオン化源10で生成された荷電粒子を、移動度の差に基づいて分離(フィルタリング)して所定の移動度の荷電粒子ごと検出する要素である。検出セル20は、第1電極21、第2電極22、第1基板23(支持体の一例)、第2基板24(支持体の一例)、検出電極(第3電極)26、及び偏向電極27を含む。検出セル20のこれらの各要素は、チャンバ内に配置されていてもよい。
【0028】
第1電極21及び第2電極22は、互いに対向して配置されることで、平行平板型の一対のフィルタ電極を構成する。第1電極21及び第2電極22は、対向する主面同士が平行をなしている。第1電極21と第2電極22との間には、所定の間隔が空けられている。そして、第1電極21と第2電極22との間には、荷電粒子の流路25が形成されている。以下では、流路25に沿う方向(荷電粒子が流れる方向)を「第1方向」とする。第1方向は、荷電粒子の流れ方向であるとも言える。第1方向は、各図面のX軸方向と一致している。また、以下では、第1電極21及び第2電極22の主面に沿い、第1方向と直交(交差)する方向を「第2方向」とする。第2方向は、各図面のY軸方向と一致している。流路25は、イオン分離空間(ドラフト空間)を含む。本例の第1電極21及び第2電極22はそれぞれ、後述する第1基板23及び第2基板24の対向面上に備えられている。また、以下では、第1電極21から第2電極22へ向かう方向を「第3方向」とする。第3方向は、第1電極21及び第2電極22における主面の法線方向である。第3方向は、各図面のZ軸方向と一致している。
【0029】
第1電極21及び第2電極22の形状や大きさ等は、特に制限されない。本例の第1電極21及び第2電極22はそれぞれ、X軸方向(第1方向)にやや長尺の矩形状をなしている。第1電極21及び第2電極22のX軸方向に沿う寸法は、これに限定されるものではないが、例えば、0.1cm以上(例えば、1cm以上)程度であり、50cm以下(例えば、10cm以下)程度とすることができる。第1電極21及び第2電極22の厚みは、特に制限されず、例えば、それぞれ独立して、50nm以上1μm以下程度の範囲で適宜設定することができる。第1電極21及び第2電極22の厚みは、典型的には600nm以下、例えば400nm以下であり、また、典型的には100nm以上、例えば200nm以上とすることができる。
【0030】
第1電極21と第2電極22との間の距離(フィルタギャップ)は、厳密には制限されない。フィルタギャップは、狭くすることでイオン分離空間に形成する電界の強度(後述する分散電圧に相当)を効果的に高めることができるために好ましい。しかし、フィルタギャップは、狭すぎると第1電極21と第2電極22との間で放電やエアフローの乱流が生じやすくなるという背反がある。したがって、フィルタギャップは、例えば50μm以上程度であって、例えば1mm以下程度とするとよい。
【0031】
第1電極21及び第2電極22を構成する材料は、特に制限されない。第1電極21及び第2電極22を構成する材料は、両電極21,22間に後述する電界を発生させることができる各種の導電性材料であればよく、金属材料、無機導電性材料、及び有機導電性材料のいずれであってもよい。検出対象である試料及びそのイオンが金属腐食性を示すことが考えられる場合は、第1電極21及び第2電極22の表面を構成する導電性材料として、無機導電性材料及び有機導電性材料のいずれかを採用するとよい。第1電極21及び第2電極22を構成する金属材料としては特に制限はなく、例えばArFエキシマレーザを用いたリソグラフィ技術によって第1電極21及び第2電極22を作製する場合、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、Cr(クロム)、モリブデン(Mo)、Ta(タンタル)、及びタングステン(W)等の高導電性金属の中から選択されるいずれか1種類の金属やその金属の合金、いずれか2種以上を含む合金等によって構成するとよい。これらの金属材料は、例えば上層側から順に、W/Ta,Ti/Al,Ti/Al/Ti,またはCu/Ti等の積層構造として、下地(典型的には、第1基板23や第2基板24)に対する密着性等の物性を高めるようにしてもよい。無機導電性材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium-Zinc-Oxide)、IGZO(Indium-Gallium-Zinc-Oxide)、ZnO等が挙げられる。有機導電性材料としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン類等が挙げられる。第1電極21及び第2電極22は、金属材料、無機導電性材料、及び有機導電性材料のいずれか2種以上を積層して構成してもよい。
【0032】
第1基板23及び第2基板24は、互いの主面が対向するよう配される。第1基板23は、第1電極21及び偏向電極27を支持する要素である。第1基板23の一対の主面のうち、第2基板24と対向する主面が、第1主面23Aとされる。第1基板23の第1主面23Aには、第1電極21及び偏向電極27が設けられる。第1基板23は、第1電極21と偏向電極27とをX軸方向に離間した位置に備える。第2基板24は、第2電極22及び検出電極26を支持する要素である。第2基板24の一対の主面のうち、第1基板23と対向する主面が、第2主面24Aとされる。第2基板24の第2主面24Aには、第2電極22及び検出電極26が設けられる。第2基板24は、第2電極22と検出電極26とをX軸方向に離間した位置に備える。第1基板23及び第2基板24は、互いに長尺の矩形をなす平板状である。流路25におけるポンプ30の送気方向(荷電粒子の移動方向)は、第1基板23及び第2基板24の長手方向(X軸方向)と一致しており、その上流側に第1電極21及び第2電極22が配され、下流側に、検出電極26及び偏向電極27が配されている。
【0033】
本実施形態の第1基板23及び第2基板24は、電気絶縁性を有する各種の絶縁性材料によって構成することができる。絶縁性材料としては、室温(例えば25℃)における体積抵抗率が107Ωcm以上(例えば、1010Ωcm以上、1012Ωcm以上、さらには1015Ωcm以上)の材料が挙げられ、例えば、上記体積抵抗率を有する有機材料または無機材料等であってよい。これに限定されるものではないが、本実施形態においては、上記電極をリソグラフィ技術によって好適に形成できるとの観点から、第1基板23及び第2基板24として、平板状のガラス基板を用いている。第1基板23及び第2基板24の厚みに制限はないが、例えば、0.1mm~1mm程度(一例として、0.5mm、0.7mm等)とすることが例示される。
【0034】
検出電極26は、検出セル20に導入された荷電粒子が接触することでその電荷を受け取る要素である。検出電極26は、第1電極21及び第2電極22に対して流路25の下流側に並んで配される第3電極である。検出電極26は、荷電粒子を受ける捕集面を有している。また、検出電極26は、制御部40と接続されている。このような構成によって、検出電極26は、捕集面において受け取った荷電粒子の量を制御部40にて把握することができるようになっている。検出電極26の詳しい構成については、後に改めて説明する。
【0035】
偏向電極27は、検出セル20に導入された荷電粒子を検出電極26に捕集させるように、荷電粒子を検出電極26に向けて偏向させるための要素である。偏向電極27は、第1電極21及び第2電極22に対して流路25の下流側に並んで配される電極である。偏向電極27は、検出電極26に対向するように配置される。偏向電極27は、後述する第2電位調整部42に接続されている。偏向電極27は、第2電位調整部42によって電圧が印加されることによって、検出電極26と偏向電極27との間に荷電粒子を検出電極26に偏向させる電界を形成することが可能とされる。検出電極26と偏向電極27との間は、イオン分離空間を通過した荷電粒子を検出するための検出空間である。
【0036】
検出電極26及び偏向電極27の形状は、特に制限されない。検出電極26及び偏向電極27の厚みは、それぞれ、例えば1μm以下程度であってよく、典型的には600nm以下、例えば500nm以下、400nm以下、200nm以下などであってよい。また、検出電極26及び偏向電極27の厚みは、それぞれ独立して、10nm以上程度であってよく、典型的には50nm以上、例えば100nm以上であってよい。検出電極26及び偏向電極27を構成する材料及びその構造については、上記の第1電極21及び第2電極22と同様であってよい。また、第1基板23及び第2基板24の少なくとも一方には、上記した各電極21,22,26,27への給電を行うための電極や配線等が設けられている。
【0037】
制御部40は、分析装置1の駆動を制御する要素である。本実施形態の制御部40は、
図2に示すように、検出セル20と接続されている。より具体的には、制御部40は、第1電極21、第2電極22、検出電極26及び偏向電極27と接続されており、これらの動作を制御することができるように構成されている。また、本実施形態の制御部40は、付加的に、イオン化源10、ポンプ30に接続されるとともに、分析装置1に電力を供給するための外部電源と接続できるようになっている。
【0038】
制御部40は、各種情報等を送受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(central processing unit:CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、各種の情報を記憶する記憶部Mと、計時機能を有するタイマT等と、を有するマイクロコンピュータによって構成されている。これに限定されるものではないが、ROMには、例えば、後述する第1電位調整部41、第2電位調整部42及び第3電位調整部43のそれぞれについて電圧を印加するために用いられるコンピュータプログラム、データベース、データテーブルや、検出された荷電粒子の量に基づく各種解析処理を行うためのコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納されていてもよい。また記憶部Mには、例えば、分析対象のID情報、検出された荷電粒子の量に関する情報、各種解析処理に用いられる情報、解析結果等に関する情報等を格納することができる。
【0039】
制御部40は、第1電位調整部41と、第2電位調整部42と、第3電位調整部43と、計測部44と、イオン化源制御部45と、流量調整部46と、を備える。これらの各部は独立して、ハードウェアによって構成されていてもよいし、CPUがプログラムを実行することにより機能的に実現されていてもよい。
【0040】
第1電位調整部41は、少なくとも第1電極21と第2電極22との間に分散電圧DVを印加するとともに、この分散電圧DVを制御する要素である。第1電極21と第2電極22との間に分散電圧DVが印加されると、第1電極21と第2電極22との間に電界が形成される。本実施形態において、第1電位調整部41は、第1電極21に接続され、第1電極21に対して分散電圧DVを印加するようになっている。従って、第1電極21は、分散電極であると言える。分散電圧DVは、正と負の両方の極性を示す双極性パルス電圧である。正と負の両方の極性における電位は、典型的には、非対称に切り替えられる。電圧波形は、高電界を形成する高電圧レベルVHである期間THと、低電界を形成する低電圧レベルVLである期間TLと、を交互に含む非対称パルス波形となっている。この電圧波形において、電圧の時間平均はゼロとなるように設定されている。ここで、イオンの移動度は、低電界中では電界強度によらず一定であるが、高電界中では電界強度に依存してその値が変化する。そこで第1電位調整部41は、典型的にはパルス電圧発生装置等の可変電圧発生器に接続されており、例えば、矩形波状の分散電圧を印加できるようになっている。ただし、分散電圧の波形はこれに限定されず、正弦波や、矩形波と複合派の中間形状等であってよい。
【0041】
第1電極21と第2電極22との間のイオン分離空間には、後述する流量調整部46によるポンプ30の駆動によって、試料イオンを含むキャリアガス(典型的には中性)の流れが一定の流速で形成されている。ここで、第1電位調整部41によって高電圧レベルVHの電圧が印加されることで、イオン分離空間に高電界が形成される。また、第1電位調整部41によって低電圧レベルVLの電圧が印加されることで、イオン分離空間に低電界が形成される。高電界と低電界とでは、極性が異なっている。このような非対称な電界が交互に発生する環境に試料イオンが送られると、試料イオンは、第1電極21及び第2電極22に交互に引き寄せられながらジグザグに進行する。このとき、第1電極21または第2電極22に大きく偏向された試料イオンは、第1電極21または第2電極22に衝突し、第1電極21と第2電極22との間を通過できない。第1電極21と第2電極22との間でバランスした試料イオンのみが、第1電極21と第2電極22との間を通過して、下流側の検出電極26に送られる。
【0042】
第2電位調整部42は、第1電極21と第2電極22との間に補償電圧CVを印加するとともに、この補償電圧CVを制御する要素である。本実施形態において、第2電位調整部42は、第2電極22に接続され、第2電極22に対して補償電圧CVを印加するようになっている。従って、第2電極22は、補償電極であると言える。上記のとおり、試料イオンは、第1電極21と第2電極22との間に形成されたドリフト電界の中でバランスしたもののみが、第1電極21と第2電極22との間を通過する。第1電位調整部41により第1電極21に分散電圧DVを印加し、第2電位調整部42により第2電極22に補償電圧CVを印加することで、第1電極21と第2電極22との間を通過するイオン種を変化させることができる。補償電圧CVは、直流電圧である。また補償電圧CVは、例えば、所定の分散電圧DVごとに、一定の変化率及び周期TCVで大きさを変化させる(換言すれば、周期TCVで下限電圧VCVLから上限電圧VCVHの間を変化させる)。これにより、移動度の異なるイオン種を順に検出空間に送ることができる。
【0043】
第3電位調整部43は、検出電極26と偏向電極27との間に所定の電位差を付与する要素である。これにより、イオン分離空間を通過して検出空間に侵入した試料イオンを、検出電極26に向けて偏向させることができる。本実施形態において、第3電位調整部43は、偏向電極27に接続され、偏向電極27に対して電位を付与するようになっている。第2電位調整部42は、検出セル20に導入された試料イオンがプラスイオンであれば、検出電極26に対して偏向電極27が高電位となるように、検出セル20に導入された試料イオンがマイナスイオンであれば、検出電極26に対して偏向電極27が低電位となるように、偏向電極27の電位を調整する。
【0044】
計測部44は、検出電極26に到達した荷電粒子の数を検出する要素である。計測部44は、検出電極26に接続されており、検出電極26に到達した荷電粒子の量に基づく電流値を、トランスインピーダンス回路により電圧値に変換してイオン量を取得する。計測部44は、荷電粒子の数量を計測するだけでなく、例えば第1電位調整部41と協働して、荷電粒子を定性及び定量することができるように構成されていてもよい。計測部44によって計測された荷電粒子の数量等に関する情報は、例えば、記憶部Mに記憶される。
【0045】
イオン化源制御部45は、イオン化源10に接続されており、イオン化源10の動作を制御できるように構成されている。イオン化源制御部45は、例えば、イオン化源10において針電極に印加する電圧の極性をプラスとマイナスとで切り替えることで、発生させる荷電粒子の極性を、プラスイオンとマイナスイオンとに切り替えることができるようになっている。これに限定されるものではないが、イオン化源制御部45が、マイナスの荷電粒子を発生させたときは、第1電位調整部41、第2電位調整部42及び第3電位調整部43は、マイナスの荷電粒子が流路25を通過できるように、第1電極21及び偏向電極27に印加する電圧をそれぞれ調整する。また、イオン化源制御部45が、プラスの荷電粒子を発生させたときは、第1電位調整部41、第2電位調整部42及び第3電位調整部43は、プラスの荷電粒子が流路25を通過できるように、第1電極21及び偏向電極27に印加する電圧をそれぞれ調整する。
【0046】
流量調整部46は、ポンプ30に接続されており、ポンプ30の動作を制御できるように構成されている。流量調整部46は、例えば、ポンプ30の駆動と停止のタイミングや、ポンプ30に備えられたファンの回転速度を制御することで、検出セル20内の気体の流速等を調整できるようになっている。
【0047】
第1電位調整部41により第1電極21に印加される分散電圧DVと、第2電位調整部42により第2電極22に印加される補償電圧CVと、検出電極26からの電気信号と、の関係から、
図3に示すようなFAIMSスペクトルを得ることができる。
図3は、分析条件(補償電圧DV及び分散電圧CV)と、その分析条件によって検出される試料イオン量(イオン電流)と、の関係を例示したマップグラフである。
図3における縦軸が分散電圧DV(単位は「V」)であり、横軸が補償電圧CV(単位は「V」)である。
図3のグラフにおいては、検出された試料イオンの量が多い分析条件ほど、当該分析条件が濃い色で示されるようになっている。
図3に示すようなFAIMSスペクトルを得るには、例えば分散電圧DVを最小値に設定し、補償電圧CVを下限電圧V
CVLから上限電圧V
CVHに至るまで変化させるスキャンを行う。それから分散電圧DVを最小値よりも大きい値に変更し、再び補償電圧CVのスキャンを行う。この補償電圧CVのスキャンを、分散電圧DVが最大値になるまで繰り返し行えばよい。
【0048】
次に、検出セル20の詳しい構成について
図4から
図6を参照して説明する。検出セル20は、
図4及び
図5に示すように、第1基板23の第1主面23Aと第2基板24の第2主面24Aとの間に介在する複数のスペーサ50~53を有する。複数のスペーサ50~53により第1基板23の第1主面23Aと第2基板24の第2主面24Aとの間の間隔(第1間隔、セルギャップ)T1を所定の大きさに保持することができる。本実施形態では、第1主面23Aと第2主面24Aとの間の間隔T1に係る目標値は、例えば100μmとされる。従って、本実施形態に係る検出セル20のセルギャップT1は、一般的な液晶パネルのセルギャップが数μm程度であるのに比べると、数十倍程度と桁違いに大きい。また、第1主面23Aと第2主面24Aとの間の間隔T1は、既述したフィルタギャップと概ね等しい。複数のスペーサ50~53は、いずれも流路25に沿う方向であるX軸方向に沿って直線的に延在している。複数のスペーサ50~53の長さ寸法(X軸方向についての寸法)は、第1基板23及び第2基板24の長さ寸法と同じ程度とされる。
【0049】
複数のスペーサ50~53には、
図4及び
図5に示すように、第1スペーサ50と、第1スペーサ50との間に流路25を挟んで配される第2スペーサ51と、第1スペーサ50に対して流路25側とは反対側に配される第3スペーサ52と、第2スペーサ51に対して流路25側とは反対側に配される第4スペーサ53と、が含まれる。第1スペーサ50及び第2スペーサ51は、流路25に臨んで配されており、流路25のX軸方向についての範囲を画定している。第1スペーサ50と第2スペーサ51との間の間隔(第2間隔)D1は、流路25の幅寸法に相当しており、その具体的な寸法は、例えば15mm程度とされる。第3スペーサ52は、第1スペーサ50に対して流路25側とは反対側に配され、第4スペーサ53は、第2スペーサ51に対して流路25側とは反対側に配されている。従って、第3スペーサ52及び第4スペーサ53は、流路25での荷電粒子の流動を妨げることなく、流路25における第1基板23と第2基板24との間の間隔T1を安定的に保つことができる。
【0050】
第3スペーサ52は、
図4及び
図5に示すように、第1スペーサ50との間に間隔(第3間隔)D2を空けて配される。第4スペーサ53は、第2スペーサ51との間に間隔(第4間隔)D3を空けて配される。このように、第3スペーサ52が第1スペーサ50とは物理的に分離され、第4スペーサ53が第2スペーサ51とは物理的に分離されている。これにより、各スペーサ50~53の独立性が担保されるので、各スペーサ50~53の機能、すなわち流路25における第1基板23と第2基板24との間の間隔T1を保持する機能(間隔保持機能)が安定的に発揮される。
【0051】
第3スペーサ52は、
図4及び
図5に示すように、第1スペーサ50との間の間隔D2が、第1スペーサ50と第2スペーサ51との間の間隔D1よりも小さい位置に配される。第4スペーサ53は、第2スペーサ51との間の間隔D3が、第1スペーサ50と第2スペーサ51との間の間隔D1よりも小さい位置に配される。このように、第3スペーサ52は、第1スペーサ50に対して第2スペーサ51よりも近い配置となり、第4スペーサ53は、第2スペーサ51に対して第1スペーサ50よりも近い配置となる。このような配置の第3スペーサ52及び第4スペーサ53によって第1基板23及び第2基板24のうち、第1スペーサ50付近の部分の剛直性が向上し、第2スペーサ51付近の部分の剛直性が向上する。従って、第1基板23及び第2基板24のうち、X軸方向について第1スペーサ50と第2スペーサ51との間にある部分(Z軸方向について流路25を挟む部分)に撓み等の変形が生じ難くなる。これにより、第1主面23Aと第2主面24Aとの間の間隔T1が、流路25の全幅にわたって均等化され易くなるので、流路25における第1基板23と第2基板24との間の間隔T1がより安定的に保たれる。
【0052】
第3スペーサ52は、
図4及び
図5に示すように、第1スペーサ50との間の間隔D2が、第1スペーサ50の幅寸法W1以下となる位置に配される。第4スペーサ53は、第2スペーサ51との間の間隔D3が、第2スペーサ51の幅寸法W2以下となる位置に配される。具体的には、第1スペーサ50と第3スペーサ52との間の間隔D2は、第1スペーサ50の幅寸法W1よりも小さい。同様に、第2スペーサ51と第4スペーサ53との間の間隔D3は、第2スペーサ51の幅寸法W2よりも小さい。なお、第1スペーサ50におけるY軸方向についての中央位置から第3スペーサ52におけるY軸方向についての中央位置までの間隔は、第1スペーサ50の幅寸法W1よりも大きいものの、第1スペーサ50の幅寸法W1の2倍よりは小さい。同様に、第2スペーサ51におけるY軸方向についての中央位置から第4スペーサ53におけるY軸方向についての中央位置までの間隔は、第2スペーサ51の幅寸法W2よりも大きいものの、第2スペーサ51の幅寸法W2の2倍よりは小さい。このように、第3スペーサ52が第1スペーサ50に対して第1スペーサ50の幅寸法W1よりも近い位置に配され、第4スペーサ53が第2スペーサ51に対して第2スペーサ51の幅寸法W2よりも近い位置に配される。このような配置の第3スペーサ52及び第4スペーサ53によって第1基板23及び第2基板24のうち、第1スペーサ50付近の部分の剛直性が向上し、第2スペーサ51付近の部分の剛直性がより向上する。これにより、流路25における第1基板23と第2基板24との間の間隔T1が一層安定的に保たれる。また、第1スペーサ50と第3スペーサ52との間の間隔D2は、第2スペーサ51と第4スペーサ53との間の間隔D3とほぼ等しい。
【0053】
第1スペーサ50の幅寸法W1と、第2スペーサ51の幅寸法W2と、第3スペーサ52の幅寸法W3と、第4スペーサ53の幅寸法W4と、は、
図4及び
図5に示すように、互いに等しい。各スペーサ50~53の幅寸法W1~W4は、具体的には0.7mm程度とされる。このようにすれば、検出セル20の製造において、第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53を設ける際の条件を同じにすることができる。これにより、検出セル20の製造が容易になる。また、各スペーサ50~53の機械的強度が均等になることから、間隔保持機能がより安定的に発揮される。
【0054】
第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53は、
図6に示すように、それぞれスペーサ材54からなる。スペーサ材54は、光及び熱の少なくとも一方の付与により硬化する硬化材54Aと、硬化材54Aに分散配合されるスペーサ粒子54Bと、を含む。硬化材54Aは、例えば加熱に伴って硬化する熱硬化性樹脂材料(熱硬化性材料)を含む。スペーサ粒子54Bは、硬化材54Aへの分散性を考慮して、例えば、ガラスファイバやシリコン系樹脂等からなる。スペーサ粒子54Bの粒径D4は、第1主面23Aと第2主面24Aとの間の間隔T1に係る目標値とほぼ等しく、例えば100μm程度とされる。検出セル20の製造において、第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53を設ける際には、スペーサ材54を第1基板23の第1主面23Aと第2基板24の第2主面24Aとの少なくとも一方に塗布し、硬化材54Aを硬化させる。第1基板23と第2基板24との間の間隔T1は、スペーサ材54に含まれるスペーサ粒子54Bの粒径D4に準じた大きさとなる。第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53のそれぞれが上記したスペーサ材54からなるので、流路25における第1基板23と第2基板24との間の間隔T1を安定的に保つことができる。
【0055】
本実施形態は以上のような構造であり、続いて検出セル20の製造方法を説明する。検出セル20は、検出セル20が複数連なってなる連成検出セル20Mを作製し、この連成検出セル20Mを分割することで、製造される。このような製造方法において、連成検出セル20Mは、
図7及び
図8に示すように、第1基板23が複数連なってなる第1マザー基板60と、第2基板24が複数連なってなる第2マザー基板61と、を貼り合わせて形成される。
【0056】
検出セル20の製造に際しては、第1マザー基板60及び第2マザー基板61をそれぞれ製造し、製造した第1マザー基板60及び第2マザー基板61にスペーサ材54を塗布し、第1マザー基板60と第2マザー基板61とを貼り合わせ、スペーサ材54を硬化させて連成検出セル20Mを得る。そして、連成検出セル20Mを分割することで、複数の検出セル20を効率的に製造することができる。
【0057】
第1マザー基板60及び第2マザー基板61の構成について説明する。第1マザー基板60は、
図7に示すように、X軸方向及びY軸方向に沿って複数ずつ並ぶ第1基板23を含む。第1マザー基板60は、複数の第1主面23Aを含む第3主面60Aを有する。第2マザー基板61は、
図8に示すように、X軸方向及びY軸方向に沿って複数ずつ並ぶ第2基板24を含む。第2マザー基板61は、複数の第2主面24Aを含む第4主面61Aを有する。
【0058】
第1マザー基板60の製造に際しては、
図7に示すように、第1マザー基板60の第3主面60Aに含まれる複数の第1主面23Aに複数ずつの第1電極21及び偏向電極27を設ける。第2マザー基板61の製造に際しては、
図8に示すように、第2マザー基板61の第4主面61Aに含まれる複数の第2主面24Aに複数ずつの第2電極22及び検出電極26を設ける。
【0059】
上記のようにして製造された第1マザー基板60及び第2マザー基板61に対してそれぞれスペーサ材54を塗布する。スペーサ材54の塗布に際しては、
図9に示すように、塗布装置70が用いられる。塗布装置70は、スペーサ材54を吐出するノズル70Aと、ノズル70Aにスペーサ材54を供給するディスペンサ70Bと、を少なくとも有する。ノズル70Aは、スペーサ材54が吐出される吐出口が、ステージ上に搭載された第1マザー基板60の第3主面60Aまたは第2マザー基板61の第4主面61Aと間隔を空けて対向して配される。なお、
図9では、代表として第2マザー基板61を図示しているが、第1マザー基板60も同様である。ノズル70Aと、第3主面60Aまたは第4主面61Aと、の間には、スペーサ粒子54Bの粒径D4よりも大きい間隔が空けられており、その間隔は例えば105μm程度とされる。ディスペンサ70Bは、ノズル70Aに対して上側に配されており、ノズル70Aへのスペーサ材54の供給量を調整することができる。ディスペンサ70Bに貯留されるスペーサ材54において、硬化材54Aに分散配合されるスペーサ粒子54Bの濃度は、例えば3wt%~5wt%程度とされる。
【0060】
上記のような構成の塗布装置70を用いてスペーサ材54は、
図9に示すように、第3主面60Aまたは第4主面61Aに塗布される。ここで、硬化材54Aの粘度を高くすれば、第3主面60Aまたは第4主面61Aに塗布されるスペーサ材54に含まれる硬化材54Aの高さを大きくする上で有用である反面、ノズル70Aに目詰まりが生じ易くなってしまう。本実施形態では、第1主面23Aと第2主面24Aとの間の間隔T1に係る目標値が100μmと、液晶パネルのセルギャップに比べると桁違いに大きいため、硬化材54Aの高さが100μmになるよう、硬化材54Aの粘度を高くするのは難しい、という事情がある。そこで、本実施形態では、第1マザー基板60と第2マザー基板61との双方にスペーサ材54を塗布する手法を採っている。この手法を採ることで、第3主面60Aまたは第4主面61Aに塗布された硬化材54Aの高さが、第1主面23Aと第2主面24Aとの間の間隔T1に係る目標値に満たなくても、第3主面60Aと第4主面61Aとの間に介在する形で設けられる各スペーサ50~53の高さを、間隔T1に係る目標値に近い大きさとすることができる。硬化材54Aの粘度は、ノズル70Aの目詰まりを回避できる程度に低く設定されている。具体的には、第3主面60Aまたは第4主面61Aに塗布された硬化材54Aの高さH1は、スペーサ粒子54Bの粒径D4よりも小さく、例えば60μm程度とされる。
【0061】
塗布装置70を用いてスペーサ材54は、
図7及び
図10に示すように、第1マザー基板60の第3主面60Aにおける特定の領域に選択的に塗布される。すなわち、スペーサ材54は、第3主面60Aに含まれる複数の第1主面23Aにおける4つずつの領域23A1~23A4と、第3主面60AのうちのY軸方向についての両端付近に位置する2つずつの領域60A1,60A2と、にそれぞれ塗布される。詳しくは、スペーサ材54は、第1主面23Aにおいて、第1領域23A1と、第1領域23A1との間に間隔D5を空けた位置にある第2領域23A2と、第1領域23A1に対して第2領域23A2とは反対側にある第3領域23A3と、第2領域23A2に対して第1領域23A1とは反対側にある第4領域23A4と、に塗布される。第1領域23A1、第2領域23A2、第3領域23A3及び第4領域23A4は、いずれもX軸方向に沿って延在する。第1領域23A1と第2領域23A2との間の間隔D5は、第1スペーサ50と第2スペーサ51との間の間隔D1とほぼ同じである(
図4を参照)。塗布装置70のノズル70Aと第1マザー基板60とをX軸方向に沿って相対変位させつつ各領域23A1~23A4にスペーサ材54を塗布する。
【0062】
スペーサ材54は、
図7及び
図10に示すように、第3主面60Aにおいて、Y軸方向について一方(
図7の右側)の端に位置する第3領域23A3EよりもY軸方向について端寄りの位置に配される第9領域60A1と、Y軸方向について他方(
図7の左側)の端に位置する第4領域23A4EよりもY軸方向について端寄りの位置に配される第10領域60A2と、に塗布される。第9領域60A1及び第10領域60A2は、いずれもX軸方向に沿って延在する。ここで、第3主面60Aに含まれる各第1主面23Aにおいては、第1電極21に対してY軸方向について一方(
図7の右側)に第1領域23A1及び第3領域23A3が偏在し、Y軸方向について他方(
図7の左側)に第2領域23A2及び第4領域23A4が偏在している。第9領域60A1は、第3主面60Aにおいて、Y軸方向について第1領域23A1及び第3領域23A3が偏在する側(
図7の右側)の端付近の位置に配されている。第10領域60A2は、第3主面60Aにおいて、Y軸方向について第2領域23A2及び第4領域23A4が偏在する側(
図7の左側)の端付近の位置に配されている。なお、第3主面60Aに含まれる複数の第3領域23A3を区別する場合には、Y軸方向について一方の端に位置する第3領域23A3の符号に添え字Eを、区別せずに総称する場合には、符号に添え字を付さないものとする。同様に、第3主面60Aに含まれる複数の第4領域23A4を区別する場合には、Y軸方向について他方の端に位置する第4領域23A4の符号に添え字Eを、区別せずに総称する場合には、符号に添え字を付さないものとする。第9領域60A1と第3領域23A3Eとの間の間隔D6は、Y軸方向について隣り合う第1基板23(第1主面23A)の間の間隔D7とほぼ同じである。間隔D7は、Y軸方向に沿って並ぶ複数の第1基板23の配列間隔D7である。また、第9領域60A1と第3領域23A3Eとの間の間隔D6は、第1領域23A1と第2領域23A2との間の間隔D5とほぼ同じである。これらの間隔D5~D7は、例えば15mm程度とされる。塗布装置70のノズル70Aと第1マザー基板60とをX軸方向に沿って相対変位させつつ各領域60A1~60A2にスペーサ材54を塗布する。
【0063】
塗布装置70を用いてスペーサ材54は、
図8及び
図11に示すように、第2マザー基板61の第4主面61Aにおける特定の領域に選択的に塗布される。すなわち、スペーサ材54は、第4主面61Aに含まれる複数の第2主面24Aにおける4つずつの領域24A1~24A4と、第4主面61AのうちのY軸方向についての両端付近に位置する2つずつの領域61A1,61A2と、にそれぞれ塗布される。詳しくは、スペーサ材54は、第2主面24Aにおいて、第5領域24A1と、第5領域24A1との間に間隔D5を空けた位置にある第6領域24A2と、第5領域24A1に対して第6領域24A2とは反対側にある第7領域24A3と、第6領域24A2に対して第5領域24A1とは反対側にある第8領域24A4と、に塗布される。第5領域24A1、第6領域24A2、第7領域24A3及び第8領域24A4は、いずれもX軸方向に沿って延在する。第5領域24A1と第6領域24A2との間の間隔D8は、第1スペーサ50と第2スペーサ51との間の間隔D1とほぼ同じである(
図4を参照)。塗布装置70のノズル70Aと第2マザー基板61とをX軸方向に沿って相対変位させつつ各領域24A1~24A4にスペーサ材54を塗布する。
【0064】
スペーサ材54は、
図8及び
図11に示すように、第4主面61Aにおいて、Y軸方向について一方(
図8の左側)の端に位置する第7領域24A3EよりもY軸方向について端寄りの位置に配される第11領域61A1と、Y軸方向について他方(
図8の右側)の端に位置する第8領域24A4EよりもY軸方向について端寄りの位置に配される第12領域61A2と、に塗布される。第11領域61A1及び第12領域61A2は、いずれもX軸方向に沿って延在する。ここで、第4主面61Aに含まれる各第2主面24Aにおいては、第1電極21に対してY軸方向について一方(
図8の左側)に第5領域24A1及び第7領域24A3が偏在し、Y軸方向について他方(
図8の右側)に第6領域24A2及び第8領域24A4が偏在している。第11領域61A1は、第4主面61Aにおいて、Y軸方向について第5領域24A1及び第7領域24A3が偏在する側(
図8の左側)の端付近の位置に配されている。第12領域61A2は、第4主面61Aにおいて、Y軸方向について第6領域24A2及び第8領域24A4が偏在する側(
図8の右側)の端付近の位置に配されている。なお、第4主面61Aに含まれる複数の第7領域24A3を区別する場合には、Y軸方向について一方の端に位置する第7領域24A3の符号に添え字Eを、区別せずに総称する場合には、符号に添え字を付さないものとする。同様に、第4主面61Aに含まれる複数の第8領域24A4を区別する場合には、Y軸方向について他方の端に位置する第8領域24A4の符号に添え字Eを、区別せずに総称する場合には、符号に添え字を付さないものとする。第11領域61A1と第7領域24A3Eとの間の間隔D9は、Y軸方向について隣り合う第2基板24(第2主面24A)の間の間隔D10とほぼ同じである。間隔D10は、Y軸方向に沿って並ぶ複数の第2基板24の配列間隔D10である。また、第11領域61A1と第7領域24A3Eとの間の間隔D9は、第5領域24A1と第6領域24A2との間の間隔D8とほぼ同じである。これらの間隔D8~D10は、例えば15mm程度とされる。塗布装置70のノズル70Aと第2マザー基板61とをX軸方向に沿って相対変位させつつ各領域61A1~61A2にスペーサ材54を塗布する。
【0065】
上記のようにして第1マザー基板60及び第2マザー基板61の双方にスペーサ材54を塗布したら、
図12及び
図13に示すように、第1マザー基板60の第3主面60Aと、第2マザー基板61の第4主面61Aと、が対向するよう、第1マザー基板60と第2マザー基板61とを配置する。この状態で第1マザー基板60と第2マザー基板61とをZ軸方向に沿って相対変位させ、第1マザー基板60及び第2マザー基板61の貼り合わせを行う。貼り合わせに伴って、
図14及び
図15に示すように、第1マザー基板60の第3主面60Aに塗布されたスペーサ材54と、第2マザー基板61の第4主面61Aに塗布されたスペーサ材54と、が一体化される。
【0066】
詳しくは、第1マザー基板60及び第2マザー基板61が貼り合わせられると、
図14及び
図15に示すように、第1領域23A1に塗布されたスペーサ材54と、第5領域24A1に塗布されたスペーサ材54と、が一体化される。また、第2領域23A2に塗布されたスペーサ材54と、第6領域24A2に塗布されたスペーサ材54と、が一体化される。また、第3領域23A3に塗布されたスペーサ材54と、第7領域24A3に塗布されたスペーサ材54と、が一体化される。また、第4領域23A4に塗布されたスペーサ材54と、第8領域24A4に塗布されたスペーサ材54と、が一体化される。また、第9領域60A1に塗布されたスペーサ材54と、第11領域61A1に塗布されたスペーサ材54と、が一体化される。また、第10領域60A2に塗布されたスペーサ材54と、第12領域61A2に塗布されたスペーサ材54と、が一体化される。
【0067】
上記のようにして第1マザー基板60及び第2マザー基板61を貼り合わせたら、第1マザー基板60及び第2マザー基板61をZ軸方向に加圧するとともに加熱する。すると、第3主面60A(第1主面23A)と第4主面61A(第2主面24A)との間の間隔が、スペーサ材54に含まれるスペーサ粒子54Bの粒径D4とほぼ同じになるとともに、スペーサ材54に含まれる硬化材54Aが硬化される。これにより、連成検出セル20Mが製造される。連成検出セル20Mにおいて、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20(第1基板23及び第2基板24)の配列間隔は、第1スペーサ50と第2スペーサ51との間の間隔D1と等しい。第1領域23A1及び第5領域24A1に塗布されたスペーサ材54によって第1スペーサ50が設けられる。第2領域23A2及び第6領域24A2に塗布されたスペーサ材54によって、第1スペーサ50との間に流路25を挟む位置に第2スペーサ51が設けられる。第3領域23A3及び第7領域24A3に塗布されたスペーサ材54によって、第1スペーサ50に対して流路25側とは反対側に第3スペーサ52が設けられる。第4領域23A4及び第8領域24A4に塗布されたスペーサ材54によって、第2スペーサ51に対して流路25側とは反対側に第4スペーサ53が設けられる。
【0068】
第9領域60A1及び第11領域61A1に塗布されたスペーサ材54によって、Y軸方向について一方の端(
図14の左側)に位置する第3スペーサ52EよりもY軸方向について端寄りの位置に第1ダミースペーサ62が設けられる。第10領域60A2及び第12領域61A2に塗布されたスペーサ材54によって、Y軸方向について他方(
図14の右側)の端に位置する第4スペーサ53Eに対してY軸方向について端寄りの位置に第2ダミースペーサ63が設けられる。なお、連成検出セル20Mに備わる複数の第3スペーサ52を区別する場合には、Y軸方向について一方の端に位置する第3スペーサ52の符号に添え字Eを、区別せずに総称する場合には、符号に添え字を付さないものとする。同様に、連成検出セル20Mに備わる複数の第4スペーサ53を区別する場合には、Y軸方向について他方の端に位置する第4スペーサ53の符号に添え字Eを、区別せずに総称する場合には、符号に添え字を付さないものとする。第1ダミースペーサ62によって複数ずつの第1基板23及び第2基板24のうち、Y軸方向について一方の端に位置する第3スペーサ52Eを有する第1基板23及び第2基板24の間の間隔T1を、安定的に保つことができる。第2ダミースペーサ63によって複数ずつの第1基板23及び第2基板24のうち、Y軸方向について他方の端に位置する第4スペーサ53Eを有する第1基板23及び第2基板24の間の間隔T1を、安定的に保つことができる。
【0069】
上記のようにして製造された連成検出セル20Mを分割することで、
図4及び
図5に示される構成の検出セル20を複数製造することができる。製造された検出セル20においては、第1基板23と第2基板24との間の間隔T1は、第1主面23Aと第2主面24Aとの間に介在していて流路25に沿って延在する第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53によって保持される。このうち、第3スペーサ52は、第1スペーサ50に対して流路25側とは反対側に配され、第4スペーサ53は、第2スペーサ51に対して流路25側とは反対側に配されているので、流路25での荷電粒子の流動を妨げることなく、流路25における第1基板23と第2基板24との間の間隔T1を安定的に保つことができる。また、
図12及び
図13に示すように、第1マザー基板60(第1基板23)と第2マザー基板61(第2基板24)との双方にスペーサ材54を塗布しているので、例えば第1基板23の各領域23A1~23A4及び第2基板24の各領域24A1~24A4に対して塗布可能なスペーサ材54の高さに限度がある場合であっても、第1基板23と第2基板24との間の間隔T1を目標値にし易くなる。
【0070】
次に、本実施形態に係る検出セル20の優位性を検証するため、以下の比較実験1を行った。比較実験1では、本段落以前に説明した構成の検出セル20を実施例1とし、実施例1よりもスペーサの数を減らした検出セル80を比較例1とし、実施例1よりもスペーサの数を増やした検出セル90を比較例2とした。実施例1に係る検出セル20は、本段落以前に説明した製造方法により製造されており、連成検出セル20Mを分割することで、複数が製造されている。実施例1に係る検出セル20は、Y軸方向についての片端に2つのスペーサが配される二重スペーサ構造である。なお、実施例1に係る連成検出セル20MにおいてY軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20(第1基板23及び第2基板24)の配列間隔は、第1スペーサ50と第2スペーサ51との間の間隔D1と等しく、その具体的な寸法は、15mmとされる。比較例1,2に係る検出セル80,90は、設けるスペーサの数が異なる点を除いては、実施例1と同様であり、連成検出セル80M,90Mを分割することで、複数が製造されている。
【0071】
比較例1に係る検出セル80及び連成検出セル80Mは、
図16に示される通りである。比較例1に係る検出セル80は、第1基板81と第2基板82との間に介在する第1スペーサ83と、第1スペーサ83との間に流路84を挟んで配される第2スペーサ85と、を有する。比較例1に係る検出セル80は、実施例1に係る検出セル20から第3スペーサ52及び第4スペーサ53を除去した構成であると言える。比較例1に係る検出セル80は、Y軸方向についての片端に1つのスペーサが配される一重スペーサ構造である。比較例1に係る検出セル80における第1基板81と第2基板82との間の間隔T2の目標値は、実施例1に係る検出セル20の同目標値と同じであり、具体的には100μmである。比較例1に係る検出セル80における第1スペーサ83と第2スペーサ85との間の間隔は、実施例1に係る検出セル20における間隔D1(
図4及び
図6を参照)と同じである。なお、比較例1に係る連成検出セル80MにおいてY軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル80(第1基板81及び第2基板82)の配列間隔は、第1スペーサ83と第2スペーサ85との間の間隔と等しく、その具体的な寸法は、15mmとされる。
【0072】
比較例2に係る検出セル90及び連成検出セル90Mは、
図17に示される通りである。比較例2に係る検出セル90は、第1基板91と第2基板92との間に介在する第1スペーサ93と、第1スペーサ93との間に流路94を挟んで配される第2スペーサ95と、第1スペーサ93に対して流路94側とは反対側に配される第3スペーサ96と、第2スペーサ95に対して流路94側とは反対側に配される第4スペーサ97と、第3スペーサ96に対して第1スペーサ93側とは反対側に配される第5スペーサ98と、第4スペーサ97に対して第2スペーサ95側とは反対側に配される第6スペーサ99と、を有する。比較例2に係る検出セル90は、実施例1に係る検出セル20に、第5スペーサ98及び第6スペーサ99を追加した構成であると言える。比較例2に係る検出セル90は、Y軸方向についての片端に3つのスペーサが配される三重スペーサ構造である。比較例2に係る検出セル90における第1基板91と第2基板92との間の間隔T3の目標値は、実施例1に係る検出セル20の同目標値と同じであり、具体的には100μmである。比較例2に係る検出セル90における第1スペーサ93と第2スペーサ95との間の間隔は、実施例1に係る検出セル20における間隔D1(
図4及び
図6を参照)と同じである。第1スペーサ93と第3スペーサ96との間と、第2スペーサ95と第4スペーサ97との間と、第3スペーサ96と第5スペーサ98との間と、第4スペーサ97と第6スペーサ99との間と、には、それぞれ等しい間隔が空けられており、その大きさは、実施例1に係る検出セル20における間隔D2,D3(
図4及び
図6を参照)と同じである。なお、比較例2に係る連成検出セル90MにおいてY軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル90(第1基板91及び第2基板92)の配列間隔は、第1スペーサ93と第2スペーサ95との間の間隔と等しく、その具体的な寸法は、15mmとされる。
【0073】
比較実験1では、上記のような構成の実施例1及び比較例1,2に係る各連成検出セル20M,80M,90Mを分割することで、各検出セル20,80,90を複数ずつ製造し、製造された各検出セル20,80,90における第1基板23,81,91と第2基板24,82,92との間の間隔T1,T2,T3をそれぞれ測定した。各検出セル20,80,90において間隔T1,T2,T3を測定する位置は、各検出セル20,80,90のうちのY軸方向についての中央位置である。各検出セル20,80,90のうちのY軸方向についての中央位置は、第1スペーサ50,83,93及び第2スペーサ51,85,95から最も遠い位置であり、第1基板23,81,91や第2基板24,82,92に撓み等の変形が生じた場合にその変形量が最大となる位置である。測定結果に基づき、間隔T1,T2,T3の平均値及び標準偏差を算出した。間隔T1,T2,T3の平均値及び標準偏差を算出した結果は、
図18の表に示される通りである。
【0074】
図18の表に示される検証結果について説明する。
図18によれば、実施例1に係る間隔T1の平均値は、95.4μmであり、目標値(100μm)に最も近い値となっている。間隔T1の平均値と目標値との差分は、4.6μmであった。間隔T1の標準偏差は、0.7μmであった。比較例1に係る間隔T2の平均値は、88.7μmであり、目標値から最も遠い値となっている。間隔T2の平均値と目標値との差分は、11.3μmであった。間隔T2の平均値と、間隔T1の平均値と、の差分は、6.7μmであった。間隔T2の標準偏差は、0.7μmであり、間隔T1の標準偏差と同値であった。比較例2に係る間隔T3の平均値は、93.5μmであった。間隔T3の平均値と目標値との差分は、6.5μmであった。間隔T3の平均値と、間隔T1の平均値と、の差分は、1.9μmであった。間隔T3の平均値と、間隔T2の平均値と、の差分は、4.8μmであった。間隔T3の標準偏差は、1.3μmであり、間隔T1の標準偏差や間隔T2の標準偏差の二倍弱の値であった。
【0075】
以上の検証結果に基づけば、実施例1は、間隔T1の平均値が目標値に最も近い上、間隔T1の標準偏差が最小値であることから、間隔T1を目標値に近似した値に安定的に保つことができている、と言える。一方、比較例1は、間隔T2の標準偏差が最小値であるものの、間隔T2の平均値が目標値から最も遠いという問題がある。比較例2は、間隔T3の平均値が目標値に二番目に近く且つ間隔T2の平均値よりも間隔T1の平均値に近い値であるものの、間隔T3の標準偏差が大きく、間隔T3がばらつき易いという問題がある。実施例1に係る間隔T1の平均値が目標値に最も近い値となった理由は、第3スペーサ52及び第4スペーサ53によって各基板23,24の支持強度が十分に得られるとともに、スペーサ50~53の設置数が過剰にならず、スペーサ50~53の高さの仕上がりが安定しているため、と推考される。実施例1に係る間隔T1の標準偏差が最小値となった理由は、スペーサ50~53の設置数が過剰にならず、スペーサ50~53の高さの仕上がりが安定しているため、と推考される。
【0076】
比較例1に係る間隔T2の平均値が目標値から最も遠い値となった理由は、実施例1よりもスペーサ83,85の設置数が少なく、スペーサ83,85による各基板81,82の支持強度が不足し、基板81,82に撓み等の変形が生じ易くなるため、と推考される。比較例1に係る間隔T2の標準偏差が最小値となった理由は、スペーサ83,85の設置数が過剰にならず、スペーサ83,85の高さの仕上がりが安定しているため、と推考される。比較例2に係る間隔T3の平均値が目標値に二番目に近い値となった理由は、実施例1よりもスペーサ93,95~99の設置数が多く、スペーサ93,95~99による各基板91,92の支持強度が十分であるものの、スペーサ93,95~99の設置数が過剰となり、スペーサ93,95~99の高さの仕上がりにばらつきが生じ易いことが影響している、と推考される。比較例2に係る間隔T3の標準偏差が最大値となった理由は、スペーサ93,95~99の設置数が過剰となり、スペーサ93,95~99の高さの仕上がりにばらつきが生じ易いため、と推考される。
【0077】
以上説明したように本実施形態の検出セル(検出器)20は、第1主面23Aを有する第1基板23と、第1基板23の第1主面23Aと間隔T1を空けて対向する第2主面24Aを有する第2基板24と、第1基板23の第1主面23Aに設けられる第1電極21と、第2基板24の第2主面24Aに設けられて第1電極21と間隔を空けて対向し、第1電極21との間に検出対象物である荷電粒子の流路25を形成する第2電極22と、第1基板23の第1主面23Aまたは第2基板24の第2主面24Aに設けられて第1電極21及び第2電極22に対して流路25の下流側に配され、荷電粒子を捕集する検出電極(第3電極)26と、第1基板23の第1主面23Aと第2基板24の第2主面24Aとの間に介在し、流路25に沿って延在する第1スペーサ50と、第1基板23の第1主面23Aと第2基板24の第2主面24Aとの間に介在し、流路25に沿って延在し、第1スペーサ50との間に流路25を挟んで配される第2スペーサ51と、第1基板23の第1主面23Aと第2基板24の第2主面24Aとの間に介在し、流路25に沿って延在し、第1スペーサ50に対して流路25側とは反対側に配される第3スペーサ52と、第1基板23の第1主面23Aと第2基板24の第2主面24Aとの間に介在し、流路25に沿って延在し、第2スペーサ51に対して流路25側とは反対側に配される第4スペーサ53と、を備える。
【0078】
第1電極21と第2電極22との間に生じる電界によって第1電極21と第2電極22との間に形成される流路25における荷電粒子の通過の可否が制御される。流路25を通過した荷電粒子は、第1電極21及び第2電極22に対して流路25の下流側に配される検出電極26により捕集され、検出される。第1基板23及び第2基板24は、第1電極21が設けられる第1主面23Aと、第2電極22が設けられる第2主面24Aと、が間隔T1を空けて対向している。第1基板23と第2基板24との間の間隔T1は、第1主面23Aと第2主面24Aとの間に介在していて流路25に沿って延在する第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53によって保持される。このうち、第3スペーサ52は、第1スペーサ50に対して流路25側とは反対側に配され、第4スペーサ53は、第2スペーサ51に対して流路25側とは反対側に配されているので、流路25での荷電粒子の流動を妨げることなく、流路25における第1基板23と第2基板24との間の間隔T1を安定的に保つことができる。
【0079】
また、第3スペーサ52は、第1スペーサ50との間に間隔D2を空けて配され、第4スペーサ53は、第2スペーサ51との間に間隔D3を空けて配される。このようにすれば、第3スペーサ52が第1スペーサ50とは物理的に分離され、第4スペーサ53が第2スペーサ51とは物理的に分離される。これにより、各スペーサ50~53の独立性が担保されるので、各スペーサ50~53の機能、すなわち流路25における第1基板23と第2基板24との間の間隔T1を保持する機能(間隔保持機能)が安定的に発揮される。
【0080】
また、第3スペーサ52は、第1スペーサ50との間の間隔D2が、第1スペーサ50と第2スペーサ51との間の間隔D1よりも小さく、第4スペーサ53は、第2スペーサ51との間の間隔D3が、第1スペーサ50と第2スペーサ51との間の間隔D1よりも小さい。このようにすれば、第3スペーサ52は、第1スペーサ50に対して第2スペーサ51よりも近い配置となり、第4スペーサ53は、第2スペーサ51に対して第1スペーサ50よりも近い配置となる。このような配置の第3スペーサ52及び第4スペーサ53によって第1基板23及び第2基板24のうち、第1スペーサ50付近の部分の剛直性が向上し、第2スペーサ51付近の部分の剛直性が向上する。これにより、流路25における第1基板23と第2基板24との間の間隔T1がより安定的に保たれる。
【0081】
また、第3スペーサ52は、第1スペーサ50との間の間隔D2が、第1スペーサ50の幅寸法W1以下とされ、第4スペーサ53は、第2スペーサ51との間の間隔D3が、第2スペーサ51の幅寸法W2以下とされる。このようにすれば、第3スペーサ52が第1スペーサ50に対して第1スペーサ50の幅寸法W1よりも近い位置に配され、第4スペーサ53が第2スペーサ51に対して第2スペーサ51の幅寸法W2よりも近い位置に配される。このような配置の第3スペーサ52及び第4スペーサ53によって第1基板23及び第2基板24のうち、第1スペーサ50付近の部分の剛直性が向上し、第2スペーサ51付近の部分の剛直性が向上する。これにより、流路25における第1基板23と第2基板24との間の間隔T1がより安定的に保たれる。
【0082】
また、第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53は、互いの幅寸法W1~W4が等しい。第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53を設ける際の条件を同じにすることができる。これにより、当該検出セル20の製造が容易になる。
【0083】
また、第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53は、それぞれ光及び熱の少なくとも一方の付与により硬化する硬化材54Aと、硬化材54Aに分散配合されるスペーサ粒子54Bと、を含むスペーサ材54からなる。第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53を設ける際には、スペーサ材54を第1基板23の第1主面23Aと第2基板24の第2主面24Aとの少なくとも一方に塗布し、硬化材54Aを硬化させる。第1基板23と第2基板24との間の間隔T1は、スペーサ材54に含まれるスペーサ粒子54Bの粒径D4に準じた大きさとなる。第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53のそれぞれが上記したスペーサ材54からなるので、流路25における第1基板23と第2基板24との間の間隔T1を安定的に保つことができる。
【0084】
また、本実施形態に係る検出セル20の製造方法は、第1基板23に備わる第1主面23Aに第1電極21を、第2基板24に備わる第2主面24Aに第2電極22を、第1基板23の第1主面23Aまたは第2基板24の第2主面24Aに検出電極26を、それぞれ設け、第1基板23の第1主面23Aと第2基板24の第2主面24Aとの少なくとも一方にスペーサ材54を塗布し、第1主面23Aと第2主面24Aとを対向させ、第1電極21と第2電極22との間に検出対象物である荷電粒子の流路25を形成させるよう、第1基板23と第2基板24とを貼り合わせ、スペーサ材54を硬化させており、スペーサ材54の塗布に際しては、第1主面23Aと第2主面24Aとのうちの一方、例えば第1主面23Aにおいて流路25に沿う第1方向に沿って延在する第1領域23A1にスペーサ材54を塗布し、第1主面23Aと第2主面24Aとのうちの一方、例えば第1主面23Aにおいて第1領域23A1との間に間隔D5を空けた位置にあって第1方向に沿って延在する第2領域23A2にスペーサ材54を塗布し、第1主面23Aと第2主面24Aとのうちの一方、例えば第1主面23Aにおいて第1領域23A1に対して第2領域23A2とは反対側にあって第1方向に沿って延在する第3領域23A3にスペーサ材54を塗布し、第1主面23Aと第2主面24Aとのうちの一方、例えば第1主面23Aにおいて第2領域23A2に対して第1領域23A1とは反対側にあって第1方向に沿って延在する第4領域23A4にスペーサ材54を塗布し、第1基板23と第2基板24とを貼り合わせ、第1領域23A1に塗布されたスペーサ材54を硬化させることで、第1主面23Aと第2主面24Aとの間に介在する第1スペーサ50を設け、第2領域23A2に塗布されたスペーサ材54を硬化させることで、第1主面23Aと第2主面24Aとの間に介在して第1スペーサ50との間に流路25を挟んで配される第2スペーサ51を設け、第3領域23A3に塗布されたスペーサ材54を硬化させることで、第1主面23Aと第2主面24Aとの間に介在して第1スペーサ50に対して流路25側とは反対側に配される第3スペーサ52を設け、第4領域23A4に塗布されたスペーサ材54を硬化させることで、第1主面23Aと第2主面24Aとの間に介在して第2スペーサ51に対して流路25側とは反対側に配される第4スペーサ53を設ける。
【0085】
少なくとも第1電極21が設けられた第1基板23の第1主面23Aと、少なくとも第2電極22が設けられた第2基板24の第2主面24Aと、の少なくとも一方に、スペーサ材54を塗布する。このとき、スペーサ材54は、第1主面23Aと第2主面24Aとのうちの一方、例えば第1主面23Aにおける第1領域23A1、第2領域23A2、第3領域23A3及び第4領域23A4のそれぞれに塗布される。第1領域23A1、第2領域23A2、第3領域23A3及び第4領域23A4は、いずれも流路25に沿う第1方向に沿って延在している。その後、第1主面23Aと第2主面24Aとが対向するよう、第1基板23と第2基板24とを貼り合わせ、スペーサ材54を硬化させる。すると、第1基板23と第2基板24との間の間隔T1は、第1主面23Aと第2主面24Aとの間に介在していて流路25に沿って延在する第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53によって保持される。このうち、第3スペーサ52は、第1スペーサ50に対して流路25側とは反対側に配され、第4スペーサ53は、第2スペーサ51に対して流路25側とは反対側に配されているので、流路25での荷電粒子の流動を妨げることなく、流路25における第1基板23と第2基板24との間の間隔T1を安定的に保つことができる。
【0086】
また、スペーサ材54の塗布に際しては、第1主面23Aと第2主面24Aとのうちの他方、例えば第2主面24Aにおいて第1方向に沿って延在する第5領域24A1にスペーサ材54を塗布し、第1主面23Aと第2主面24Aとのうちの他方、例えば第2主面24Aにおいて第5領域24A1との間に間隔D8を空けた位置にあって第1方向に沿って延在する第6領域24A2にスペーサ材54を塗布し、第1主面23Aと第2主面24Aとのうちの他方、例えば第2主面24Aにおいて第5領域24A1に対して第6領域24A2とは反対側にあって第1方向に沿って延在する第7領域24A3にスペーサ材54を塗布し、第1主面23Aと第2主面24Aとのうちの他方、例えば第2主面24Aにおいて第6領域24A2に対して第5領域24A1とは反対側にあって第1方向に沿って延在する第8領域24A4にスペーサ材54を塗布し、第1基板23と第2基板24とを貼り合わせ、第1領域23A1に塗布されたスペーサ材54と第5領域24A1に塗布されたスペーサ材54とを一体化させ、第2領域23A2に塗布されたスペーサ材54と第6領域24A2に塗布されたスペーサ材54とを一体化させ、第3領域23A3に塗布されたスペーサ材54と第7領域24A3に塗布されたスペーサ材54とを一体化させ、第4領域23A4に塗布されたスペーサ材54と第8領域24A4に塗布されたスペーサ材54とを一体化させ、第1領域23A1及び第5領域24A1に塗布されたスペーサ材54を硬化させることで、第1スペーサ50を設け、第2領域23A2及び第6領域24A2に塗布されたスペーサ材54を硬化させることで、第2スペーサ51を設け、第3領域23A3及び第7領域24A3に塗布されたスペーサ材54を硬化させることで、第3スペーサ52を設け、第4領域23A4及び第8領域24A4に塗布されたスペーサ材54を硬化させることで、第4スペーサ53を設ける。
【0087】
スペーサ材54の塗布に際しては、スペーサ材54は、第1主面23Aと第2主面24Aとのうちの他方、例えば第2主面24Aにおける第5領域24A1、第6領域24A2、第7領域24A3及び第8領域24A4のそれぞれにも塗布される。第5領域24A1、第6領域24A2、第7領域24A3及び第8領域24A4は、いずれも第1方向に沿って延在している。その後、第1基板23と第2基板24とを貼り合わせると、第1領域23A1に塗布されたスペーサ材54と第5領域24A1に塗布されたスペーサ材54とが一体化され、第2領域23A2に塗布されたスペーサ材54と第6領域24A2に塗布されたスペーサ材54とが一体化され、第3領域23A3に塗布されたスペーサ材54と第7領域24A3に塗布されたスペーサ材54とが一体化され、第4領域23A4に塗布されたスペーサ材54と第8領域24A4に塗布されたスペーサ材54とが一体化される。スペーサ材54を硬化させると、第1領域23A1及び第5領域24A1に塗布されて一体化したスペーサ材54により第1スペーサ50が設けられ、第2領域23A2及び第6領域24A2に塗布されて一体化したスペーサ材54により第2スペーサ51が設けられ、第3領域23A3及び第7領域24A3に塗布されて一体化したスペーサ材54により第3スペーサ52が設けられ、第4領域23A4及び第8領域24A4に塗布されて一体化したスペーサ材54により第4スペーサ53が設けられる。このように、第1基板23と第2基板24との双方にスペーサ材54を塗布しているので、例えば各基板23,24の各領域23A1~23A4,24A1~24A4に対して塗布可能なスペーサ材54の高さに限度がある場合であっても、第1基板23と第2基板24との間の間隔T1を目標値にし易くなる。
【0088】
また、第1基板23を複数含む第1マザー基板60であって複数の第1主面23Aを含む第3主面60Aを有する第1マザー基板60と、第2基板24を複数含む第2マザー基板61であって複数の第2主面24Aを含む第4主面61Aを有する第2マザー基板61と、を製造し、第3主面60Aと第4主面61Aとのうちの一方にスペーサ材54を塗布し、第1マザー基板60と第2マザー基板61とを貼り合わせ、スペーサ材54を硬化させ、第1マザー基板60及び第2マザー基板61を分割して複数の検出セル20を製造しており、第1マザー基板60の製造に際しては、複数の第1基板23が、第1主面23Aに沿い且つ第1方向と交差する第2方向に沿って並んで配される第1マザー基板60を製造し、第2マザー基板61の製造に際しては、複数の第2基板24が、第2主面24Aに沿い且つ第2方向に沿って並んで配される第2マザー基板61を製造し、スペーサ材54の塗布に際しては、第3主面60Aと第4主面61Aとのうちの一方、例えば第3主面60Aにおいて第1方向に沿って延在する第9領域60A1と、第1方向に沿って延在する第10領域60A2と、にスペーサ材54を塗布し、第9領域60A1は、複数の第3領域23A3のうちの第2方向について一方の端に位置する第3領域23A3Eよりも第2方向について端寄りの位置に配され、第10領域60A2は、複数の第4領域23A4のうちの第2方向について他方の端に位置する第4領域23A4Eよりも第2方向について端寄りの位置に配され、第1マザー基板60と第2マザー基板61とを貼り合わせ、第9領域60A1及び第10領域60A2に塗布されたスペーサ材54を硬化させることで、第3主面60Aと第4主面61Aとの間に介在する第1ダミースペーサ62であって、複数の第3スペーサ52のうち、第2方向について一方の端に位置する第3スペーサ52Eよりも第2方向について端寄りの位置に配される第1ダミースペーサ62と、第3主面60Aと第4主面61Aとの間に介在する第2ダミースペーサ63であって、複数の第4スペーサ53のうち、第2方向について他方の端に位置する第4スペーサ53Eに対して第2方向について端寄りの位置に配される第2ダミースペーサ63と、を設ける。
【0089】
第1マザー基板60の第3主面60Aと、第2マザー基板61の第4主面61Aと、のうちの一方にスペーサ材54を塗布する。このとき、スペーサ材54は、第3主面60Aと第4主面61Aとのうちの一方、例えば第3主面60Aに含まれる複数ずつの第1領域23A1、第2領域23A2、第3領域23A3及び第4領域23A4に加えて、第9領域60A1及び第10領域60A2のそれぞれに塗布される。その後、第3主面60Aと第4主面61Aとが対向するよう、第1マザー基板60と第2マザー基板61とを貼り合わせ、スペーサ材54を硬化させる。スペーサ材54が硬化されると、複数ずつの第1スペーサ50、第2スペーサ51、第3スペーサ52及び第4スペーサ53に加えて、第1ダミースペーサ62及び第2ダミースペーサ63が設けられる。貼り合わせた第1マザー基板60及び第2マザー基板61を分割することで、複数の検出セル20を製造することができる。
【0090】
第1ダミースペーサ62は、複数の第3スペーサ52のうち、第2方向について一方の端に位置する第3スペーサ52Eよりも第2方向について端寄りの位置に配されている。従って、複数ずつの第1基板23及び第2基板24のうち、第2方向について一方の端に位置する第3スペーサ52Eを有する第1基板23及び第2基板24の間の間隔T1を、第1ダミースペーサ62によって安定的に保つことができる。第2ダミースペーサ63は、複数の第4スペーサ53のうち、第2方向について他方の端に位置する第4スペーサ53Eよりも第2方向について端寄りの位置に配されている。従って、複数ずつの第1基板23及び第2基板24のうち、第2方向について他方の端に位置する第4スペーサ53Eを有する第1基板23及び第2基板24の間の間隔T1を、第2ダミースペーサ63によって安定的に保つことができる。
【0091】
また、スペーサ材54の塗布に際しては、スペーサ材54に熱硬化性材料を含む硬化材54Aを含ませ、第1基板23と第2基板24とを貼り合わせる際には、第1基板23及び第2基板24を加圧し、加熱する。第1基板23と第2基板24とが貼り合わせられると、第1基板23及び第2基板24が加圧されつつ加熱されることで、スペーサ材54に含まれる硬化材54Aが硬化され、第1主面23Aと第2主面24Aとの間の間隔が所望の大きさとなる。
【0092】
<実施形態2>
実施形態2を
図19または
図20によって説明する。この実施形態2では、連成検出セル120Mにおける複数の検出セル120の配置を変更した場合を示す。なお、上記した実施形態1と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0093】
本実施形態に係る連成検出セル120Mは、
図19に示すように、第1マザー基板160における複数の第1基板123の配列間隔D11と、第2マザー基板161における複数の第2基板124の配列間隔D12と、が、第1領域123A1と第2領域123A2との間の間隔D5(第1スペーサ50と第2スペーサ51との間の間隔D1)よりも大きい。連成検出セル120Mにおいて、上記した配列間隔D11及び配列間隔D12は、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル120の配列間隔と同義である。従って、上記した配列間隔D11及び配列間隔D12は、同値である。具体的には、上記した配列間隔D11及び配列間隔D12は、上記した間隔D5の1.4倍以上で1.9倍以下の範囲とされる。好ましくは、上記した配列間隔D11及び配列間隔D12は、上記した間隔D5の1.5倍以上で1.8倍以下の範囲とされる。より好ましくは、上記した配列間隔D11及び配列間隔D12は、上記した間隔D5の1.6倍以上で1.7倍以下の範囲とされる。本実施形態では、
図19に示される連成検出セル120Mは、上記した配列間隔D11及び配列間隔D12は、上記した間隔D5の約1.7倍程度であり、その数値はいずれも25mm程度である。なお、第1領域123A1と第2領域123A2との間の間隔D5は、実施形態1と同じ15mmである。
【0094】
次に、本実施形態に係る検出セル120の優位性を検証するため、以下の比較実験2を行った。比較実験2では、実施形態1の比較実験1にて説明した実施例1及び比較例1,2に係る各連成検出セル20M,80M,90M(
図14,
図16及び
図17を参照)として、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔を変更したもの複数を作成した。具体的には、各連成検出セル20M,80M,90Mとして、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔を、8mm(0.5倍),15mm(1倍),18mm(1.2倍),21mm(1.4倍),22mm(1.5倍),24mm(1.6倍),25mm(1.7倍),27mm(1.8倍),29mm(1.9倍)としたものを作成した。なお、各連成検出セル20M,80M,90Mにおいて、第1スペーサ(第1領域23A1)50,83,93と第2スペーサ(第2領域23A2)51,85,95との間の間隔は、15mmで一定としている。なお、上記した配列間隔の数値に括弧書きした倍率の数値は、第1スペーサ50,83,93と第2スペーサ51,85,95との間の間隔に対するY軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔の比率である。実施例1に係る複数の連成検出セル20Mのうち、上記した配列間隔を25mm(1.7倍)としたものが、本実施形態に係る連成検出セル120Mであり、上記した配列間隔を15mm(1倍)としたものが、実施形態1に係る連成検出セル20Mである。
【0095】
比較実験2では、上記した実施例1及び比較例1,2に係る各連成検出セル20M,80M,90Mを複数ずつ作成し、それらを分割することで、各検出セル20,80,90を複数ずつ製造し、製造された各検出セル20,80,90における第1基板23,81,91と第2基板24,82,92との間の間隔T1,T2,T3をそれぞれ測定した。間隔T1,T2,T3の測定方法は、比較実験1に記載した通りである。測定結果に基づき、間隔T1,T2,T3の平均値及び標準偏差を算出した。間隔T1,T2,T3の平均値及び標準偏差を算出した結果は、
図20の表に示される通りである。なお、
図20の表には、第1スペーサ50,83,93と第2スペーサ51,85,95との間の間隔に対するY軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔の比率を、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔の数値に括弧付けで表記している。
【0096】
図20の表に示される検証結果について説明する。
図20によれば、実施例1及び比較例1,2は、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔が大きくなるに連れて、間隔T1,T2,T3の平均値が大きくなる傾向にあることが分かる。具体的には、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔が8mm(0.5倍)から15mm(1倍)になるまでは、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔が1mm大きくなると、間隔T1,T2,T3の平均値が0.13μm~0.14μm程度大きくなる。つまり、間隔T1,T2,T3の平均値の増加率は、0.13μm~0.14μmとなる。Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔が15mm(1倍)以上では、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔が1mm大きくなると、間隔T1,T2,T3の平均値が0.4μm~0.5μm程度大きくなる。つまり、間隔T1,T2,T3の平均値の増加率は、0.4μm~0.5μmとなる。従って、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔が15mm(1倍)、すなわち第1スペーサ50,83,93と第2スペーサ51,85,95との間の間隔以上になると、間隔T1,T2,T3の平均値の増加率が急激に高くなる傾向にある、と言える。
【0097】
実施例1及び比較例1,2は、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔が15mm(1倍)以上では、同配列間隔が大きくなっても、間隔T1,T2,T3の標準偏差が殆ど変化しない傾向であることが分かる。Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔が8mm(0.5倍)の場合は、同配列間隔が15mm(1倍)以上の場合に比べると、間隔T1,T2,T3の標準偏差が約1.57倍程度とされる。従って、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔が15mm(1倍)、つまり第1スペーサ50,83,93と第2スペーサ51,85,95との間の間隔以上であれば、間隔T1,T2,T3の標準偏差が十分に低下する傾向にある、と言える。
【0098】
比較例1の検証結果について詳しく説明する。比較例1に係る間隔T2の平均値の最大値が94.5μmとされる。従って、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル80の配列間隔がいずれの数値であっても、比較例1に係る間隔T2の平均値は、目標値(100μm)に対する差分が-5μmよりも小さい。このことから、比較例1では、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル80の配列間隔をどのように設定したとしても、流路84における第1基板81と第2基板82との間の間隔T2を目標値に近い値とすることが困難である。
【0099】
比較例2の検証結果について詳しく説明する。Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル90の配列間隔が27mm(1.8倍)~29mm(1.9倍)の範囲においては、比較例2に係る間隔T3の平均値は、目標値(100μm)に対する差分が±2μmの範囲となっている。しかしながら、比較例2に係る間隔T3の標準偏差の最小値は、1.2μmとされる。このため、比較例2に係る間隔T3の平均値を目標値に近い値(±2μmの範囲)にできたとしても、標準偏差が1.2μmと大きいことから、間隔T3にばらつきが生じ易い。結果として、比較例2に係る間隔T3を安定的に保つことは困難である。
【0100】
実施例1の検証結果について詳しく説明する。まず、Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20の配列間隔が15mm(1倍)~29mm(1.9倍)の範囲においては、実施例1に係る間隔T1の平均値は、目標値(100μm)に対する差分が±5μmの範囲となっている。上記した配列間隔が15mm(1倍)~29mm(1.9倍)の範囲の場合は、間隔T1の平均値の増加率が0.43μm~0.5μmの範囲であり、上記した配列間隔が8mm(0.5倍)~15mm(1倍)の範囲の場合における間隔T1の平均値の増加率である0.13μmに比べると、十分に大きい。上記した配列間隔が15mm(1倍)~29mm(1.9倍)の範囲の場合は、間隔T1の標準偏差が、0.6μm~0.7μmの範囲であり、上記した配列間隔が8mm(0.5倍)の場合における間隔T1の標準偏差である1.1μmに比べると、十分に小さい。従って、軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20の配列間隔が15mm(1倍)以上とすることで、間隔T1の標準偏差を十分に抑制しつつ、間隔T1の平均値を効率的に目標値に近づけることができる。
【0101】
Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20の配列間隔が21mm(1.4倍)~29mm(1.9倍)の範囲においては、実施例1に係る間隔T1の平均値は、目標値(100μm)に対する差分が±2μmの範囲となっている。また、上記した配列間隔が21mm(1.4倍)~29mm(1.9倍)の範囲においては、実施例1に係る間隔T1の標準偏差は、0.6μmとなっている。従って、上記した配列間隔が21mm(1.4倍)~29mm(1.9倍)の範囲であれば、上記した配列間隔を21mm(1.4倍)よりも小さくした場合に比べると、実施例1に係る間隔T1を目標値に近い値±2μmに安定的に保つことができる。一方、上記した配列間隔を29mm(1.9倍)より、大きくした場合、増加率の傾向より実施例1に係る間隔T1は、さらに大きくなり目標値から遠ざかる事が推考される。加えて、配列間隔を過剰に広げることにより、各マザー基板(第1マザー基板160及び第2マザー基板161)に対する取り数が減り、生産性が低下する。従って、上記した配列間隔が21mm(1.4倍)~29mm(1.9倍)の範囲である方が、間隔T1の安定性だけでなく生産性の観点でも好ましい。
【0102】
Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔の数値が22mm(1.5倍)~27mm(1.8倍)の範囲においては、実施例1に係る間隔T1の平均値は、目標値(100μm)に対する差分が±1.5μmの範囲となっている。また、上記した配列間隔が22mm(1.5倍)~27mm(1.8倍)の範囲においては、実施例1に係る間隔T1の標準偏差は、0.6μmとなっている。従って、上記した配列間隔が22mm(1.5倍)~27mm(1.8倍)の範囲であれば、上記した配列間隔を22mm(1.5倍)よりも小さくした場合や27mm(1.8倍)よりも大きくした場合に比べると、実施例1に係る間隔T1を目標値により近い値(±1.5μm)に安定的に保つことができる。
【0103】
Y軸方向に沿って並ぶ複数の検出セル20,80,90の配列間隔の数値が24mm(1.6倍)~25mm(1.7倍)の範囲においては、実施例1に係る間隔T1の平均値は、目標値(100μm)に対する差分が±0.5μmの範囲となっている。また、上記した配列間隔が24mm(1.6倍)~25mm(1.7倍)の範囲においては、実施例1に係る間隔T1の標準偏差は、0.6μmとなっている。従って、上記した配列間隔が24mm(1.6倍)~25mm(1.7倍)の範囲であれば、上記した配列間隔を24mm(1.6倍)よりも小さくした場合や25mm(1.7倍)よりも大きくした場合に比べると、実施例1に係る間隔T1を目標値にさらに近い値(±0.5μm)に安定的に保つことができる。
【0104】
以上説明したように本実施形態によれば、第1基板123を複数含む第1マザー基板160であって複数の第1主面123Aを含む第3主面160Aを有する第1マザー基板160と、第2基板124を複数含む第2マザー基板161であって複数の第2主面124Aを含む第4主面161Aを有する第2マザー基板161と、を製造し、第3主面160Aと第4主面161Aとのうちの一方にスペーサ材154を塗布し、第1マザー基板160と第2マザー基板161とを貼り合わせ、スペーサ材154を硬化させ、第1マザー基板160及び第2マザー基板161を分割して複数の検出セル120を製造しており、第1マザー基板160における複数の第1基板123の配列間隔D11と、第2マザー基板161における複数の第2基板124の配列間隔D12と、を、第1領域123A1と第2領域123A2との間の間隔D5の1.4倍以上で1.9倍以下の範囲とする。
【0105】
第1マザー基板160の第3主面160Aと、第2マザー基板161の第4主面161Aと、のうちの一方にスペーサ材154を塗布する。このとき、スペーサ材154は、第3主面160Aと第4主面161Aとのうちの一方、例えば第3主面160Aに含まれる複数ずつの第1領域123A1、第2領域123A2、第3領域123A3及び第4領域123A4のそれぞれに塗布される。その後、第3主面160Aと第4主面161Aとが対向するよう、第1マザー基板160と第2マザー基板161とを貼り合わせ、スペーサ材154を硬化させる。スペーサ材154が硬化されると、複数ずつの第1スペーサ150、第2スペーサ151、第3スペーサ152及び第4スペーサ153が設けられる。貼り合わせた第1マザー基板160及び第2マザー基板161を分割することで、複数の検出セル120を製造することができる。
【0106】
ここで、仮に、複数の第1基板123の配列間隔D11と、複数の第2基板124の配列間隔D12と、が、第1領域123A1と第2領域123A2との間の間隔の1.4倍よりも小さい場合は、第1基板123と第2基板124との間の間隔T1の平均値が目標値に対して±2μmよりも大きくなる。一方、複数の第1基板123の配列間隔D11と、複数の第2基板124の配列間隔D12と、が、第1領域123A1と第2領域123A2との間の間隔の1.9倍よりも大きくなる場合は、第1基板123と第2基板124との間の間隔T1の平均値が目標値に対して+2μmよりも大きくなると推考される。加えて、配列間隔を過剰に広げることにより、各マザー基板(第1マザー基板160及び第2マザー基板161)に対する取り数が減り、生産性が低下する。その点、複数の第1基板123の配列間隔D11と、複数の第2基板124の配列間隔D12と、が、第1領域123A1と第2領域123A2との間の間隔の1.4倍以上で1.9倍以下の範囲とされることで、第1基板123と第2基板124との間の間隔T1の平均値が目標値に対して±2μm以下になる。これにより、流路125における第1基板123と第2基板124との間の間隔T1をより安定的に保つことができる。加えて、複数の第1基板123の配列間隔D11と、複数の第2基板124の配列間隔D12と、を、過剰に広げることなく生産性の低下を回避することができる。
【0107】
また、第1マザー基板160における複数の第1基板123の配列間隔D11と、第2マザー基板161における複数の第2基板124の配列間隔D12と、を、第1領域123A1と第2領域123A2との間の間隔の1.5倍以上で1.8倍以下の範囲とする。仮に、複数の第1基板123の配列間隔D11と、複数の第2基板124の配列間隔D12と、が、第1領域123A1と第2領域123A2との間の間隔の1.5倍よりも小さい場合や1.8倍よりも大きい場合は、第1基板123と第2基板124との間の間隔T1の平均値が目標値に対して±1.5μmよりも大きくなる。その点、複数の第1基板123の配列間隔D11と、複数の第2基板124の配列間隔D12と、が、第1領域123A1と第2領域123A2との間の間隔の1.5倍以上で1.8倍以下の範囲とされることで、第1基板123と第2基板124との間の間隔T1の平均値が目標値に対して±1.5μm以下になる。これにより、流路125における第1基板123と第2基板124との間の間隔T1をより安定的に保つことができる。
【0108】
また、第1マザー基板160における複数の第1基板123の配列間隔D11と、第2マザー基板161における複数の第2基板124の配列間隔D12と、を、第1領域123A1と第2領域123A2との間の間隔の1.6倍以上で1.7倍以下の範囲とする。仮に、複数の第1基板123の配列間隔D11と、複数の第2基板124の配列間隔D12と、が、第1領域123A1と第2領域123A2との間の間隔の1.6倍よりも小さい場合や1.7倍よりも大きい場合は、第1基板123と第2基板124との間の間隔T1の平均値が目標値に対して±0.5μmよりも大きくなる。その点、複数の第1基板123の配列間隔D11と、複数の第2基板124の配列間隔D12と、が、第1領域123A1と第2領域123A2との間の間隔の1.6倍以上で1.7倍以下の範囲とされることで、第1基板123と第2基板124との間の間隔T1の平均値が目標値に対して±0.5μm以下になる。これにより、流路125における第1基板123と第2基板124との間の間隔T1をより安定的に保つことができる。
【0109】
<他の実施形態>
本明細書が開示する技術は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0110】
(1)第1基板23,123と第2基板24,124との間の間隔T1の具体的な数値は、例えば50μm~1mmの範囲において、適宜に変更可能である。その場合、スペーサ粒子54Bの粒径D4の具体的な数値も、例えば50μm~1mmの範囲において、適宜に変更可能である。
【0111】
(2)第1スペーサ50,150と第2スペーサ51,151との間に空けられる間隔(流路の幅寸法)D1の具体的な数値は、適宜に変更可能である。
【0112】
(3)第1スペーサ50,150と第3スペーサ52,152との間に空けられる間隔D2の具体的な数値は、適宜に変更可能である。その場合、間隔D2は、第1スペーサ50,150の幅寸法W1と同じか幅寸法W1よりも大きくてもよい。
【0113】
(4)第2スペーサ51,151と第4スペーサ53,153との間に空けられる間隔D3の具体的な数値は、適宜に変更可能である。その場合、間隔D3は、第2スペーサ51,151の幅寸法W2と同じか幅寸法W2よりも大きくてもよい。
【0114】
(5)第1スペーサ50,150と第3スペーサ52,152との間に間隔が空けられなくてもよい。その場合、第1スペーサ50,150と第3スペーサ52,152との少なくとも一部ずつが繋がる。
【0115】
(6)第2スペーサ51,151と第4スペーサ53,153との間と、にそれぞれ間隔が空けられなくてもよい。その場合、第2スペーサ51,151と第4スペーサ53,153との少なくとも一部ずつが繋がる。
【0116】
(7)各スペーサ50~53,150~153の具体的な幅寸法は、適宜に変更可能である。例えば、各スペーサ50~53,150~153のうちの一部の幅寸法が他の幅寸法とは異なっていてもよいが、各スペーサ50~53,150~153の幅寸法が全て異なっていてもよい。
【0117】
(8)第1マザー基板60,160における第1領域23A1,123A1と第2領域23A2,123A2との間の間隔D5の具体的な数値は、適宜に変更可能である。それに応じて第1マザー基板60,160における複数の第1基板23,123の配列間隔D11と、第2マザー基板61,161における複数の第2基板24,124の配列間隔D12と、についても具体的な数値についても適宜に変更可能である。
【0118】
(9)第1マザー基板60,160(第1基板23,123)に対するスペーサ材54,154の塗布量(硬化材の高さ)と、第2マザー基板61,161(第2基板24,124)に対するスペーサ材54,154の塗布量と、が異なっていてもよい。
【0119】
(10)第1マザー基板60,160における複数の第1基板23,123の具体的な設置数は、適宜に変更可能である。同様に、第2マザー基板61,161における複数の第2基板24,124の具体的な設置数は、適宜に変更可能である。
【0120】
(11)第1ダミースペーサ62及び第2ダミースペーサ63のうちのいずれか片方または両方を省略してもよい。
【0121】
(12)硬化材54Aは、例えば光の照射に伴って硬化する光硬化性樹脂材料を含んでもよい。光硬化性樹脂材料には、紫外線の照射に伴って硬化する紫外線硬化性樹脂材料等が含まれる。また、硬化材54Aは、熱硬化性樹脂材料と光硬化性樹脂材料とを混合して構成されてもよい。
【0122】
(13)第1電極21、第2電極22、検出電極26及び偏向電極27は、一部が第3スペーサ52,152または第4スペーサ53,153の外側に引き出されてもよい。それ以外にも、第1電極21、第2電極22、検出電極26及び偏向電極27のそれぞれに接続される複数の配線を第1基板23,123及び第2基板24,124に設けるようにし、それらの配線をスペーサ50~53,150~153の内外に通してもよい。
【0123】
(14)第1基板23,123に第2電極22及び偏向電極27等が設けられ、第2基板24,124に第1電極21及び検出電極26等が設けられてもよい。
【0124】
(15)第2電極22に分散電圧DV及び補償電圧CVを共に印加してもよい。その場合、第1電極21は、接地等すればよい。
【0125】
(16)第1電極21に補償電圧CVを印加し、第2電極22に分散電圧DVを印加することも可能である。
【0126】
(17)検出器は、検出セル20,120に加えて制御部40の一部または全てを含んでもよい。
【0127】
(18)FAIMS以外の分析法システムを用いた分析装置であってもよい。
【0128】
(19)検出セル20,120の製造方法の変形例として、第1マザー基板60,160と第2マザー基板61,161とを真空環境下で貼り合わせてもよい。具体的には、第1マザー基板60,160と第2マザー基板61,161とを貼り合わせる前に、第1マザー基板60,160と第2マザー基板61,161とのいずれか一方、あるいは両方(双方)における外周側端部に、全ての検出セル20,120を取り囲む、スペーサ材54,154と同材料からなる環状のシール部を設ける。また、この時、シール部が第1ダミースペーサ62及び第2ダミースペーサ63を兼ねていてもよい。具体的には、一方の端に位置する第3スペーサ52EよりもY軸方向について端寄りの位置と、他方の端に位置する第4スペーサ53EよりもY軸方向について端寄りの位置と、に検出セル20,120の配列間隔でシール部を設ける。この場合、各ダミースペーサ(第1ダミースペーサ62及び第2ダミースペーサ63)を省略することができるので、各マザー基板(第1マザー基板60,160及び第2マザー基板61,161)に対する取り数が減り、生産性が低下するのを回避することができる。シール部を設けるタイミングは、スペーサ材54,154を塗布するタイミングの前後いずれかのタイミングであってもよいが、スペーサ材54,154を塗布するのと同じタイミングであってもよい。シール部を設けた後に、第1マザー基板60,160及び第2マザー基板61,161を真空槽内に収容し、真空槽内を真空引きする。真空環境となった真空槽内において第1マザー基板60,160と第2マザー基板61,161とを貼り合わせたら、真空槽内の真空状態を破り、大気圧環境に戻す。このような製造方法を採用した場合、第1基板23,123及び第2基板24,124のうち、X軸方向について第1スペーサ50,150と第2スペーサ51,151との間にある部分が、流路25,125を狭めるよう変形し易くなることが懸念される。その点、第3スペーサ52,152及び第4スペーサ53,153によって第1基板23,123及び第2基板24,124のうち、第1スペーサ50,150付近の部分の剛直性が向上し、第2スペーサ51,151付近の部分の剛直性が向上することで、上記のような変形が第1基板23,123及び第2基板24,124に生じ難くなる効果が得られ、好適である。
【0129】
(20)第1マザー基板60,160と第2マザー基板61,161とを真空環境下で貼り合わせる手法として、上記した(19)のようにシール部を設ける以外の手法を採ることも可能である。例えば、第1マザー基板60,160と第2マザー基板61,161とを貼り合わせたものを、袋状の部材の内部に収容し、その袋状の部材を真空引きする。所定時間が経過したら、袋状の部材内の真空状態を破り、大気圧環境に戻す。
【符号の説明】
【0130】
20,120…検出セル(検出器)、21…第1電極、22…第2電極、23,123…第1基板、23A…第1主面、23A1,123A1…第1領域、23A2,123A2…第2領域、23A3…第3領域、23A3E…一方の端に位置する第3領域、23A4…第4領域、23A4E…他方の端に位置する第4領域、24,124…第2基板、24A…第2主面、24A1…第5領域、24A2…第6領域、24A3…第7領域、24A4…第8領域、25,125…流路、26…検出電極(第3電極)、50,150…第1スペーサ、51,151…第2スペーサ、52,152…第3スペーサ、52E…一方の端に位置する第3スペーサ、53,153…第4スペーサ、53E…他方の端に位置する第4スペーサ、54,154…スペーサ材、54A…硬化材、54B…スペーサ粒子、60,160…第1マザー基板、60A,160A…第3主面、61,161…第2マザー基板、61A,161A…第4主面、60A1…第9領域、60A2…第10領域、62…第1ダミースペーサ、63…第2ダミースペーサ