(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】量子ドット、その形成方法、および、それを有する発光装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240514BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20240514BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240514BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/08 A
C09K11/08 G
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2022181924
(22)【出願日】2022-11-14
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】202210216097.4
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】314014379
【氏名又は名称】隆達電子股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嚴 珮▲そう▼
(72)【発明者】
【氏名】謝 佳純
(72)【発明者】
【氏名】王 輝平
(72)【発明者】
【氏名】童 鴻鈞
(72)【発明者】
【氏名】李 育群
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-115598(JP,A)
【文献】特表2022-514317(JP,A)
【文献】特開2022-032916(JP,A)
【文献】特表2021-523530(JP,A)
【文献】特開2021-190635(JP,A)
【文献】特開2020-158755(JP,A)
【文献】特開2014-169421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0050437(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0324268(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0086733(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0088232(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0118755(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0203561(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111349440(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20-5/28
C09K 11/08
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドットであって、
コアと、
前記コアのコア表面周辺で、不連続に分布する第一シェル、および、
前記コアと前記第一シェルの間に位置し、且つ、前記コアを封入する第二シェル、を有し、
前記第二シェルは、不規則状の外表面を有することを特徴とする量子ドット。
【請求項2】
さらに、前記第一シェルと前記第二シェル間に、ギャップを有し、前記ギャップは、0nm以上、且つ、10nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の量子ドット。
【請求項3】
前記第一シェルの厚さ、前記第二シェルの厚さ、および、前記ギャップの合計は、0nmより大きく、且つ、35nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の量子ドット。
【請求項4】
前記第二シェルの前記不規則状の外表面は、凹凸外表面であり、前記凹凸外表面
の最下部
と最上部間の高度差は、0nmより大きく、且つ、5nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の量子ドット。
【請求項5】
前記凹凸外表面は、窪み幅を有する窪み部分を有し、前記窪み幅は、0nmより大きく、且つ、10nm以下であることを特徴とする請求項4に記載の量子ドット。
【請求項6】
前記第一シェルは、複数のスタックされた粒子を有することを特徴とする請求項1に記載の量子ドット。
【請求項7】
さらに、前記第二シェルの前記外表面上に、リガンドを有することを特徴とする請求項1に記載の量子ドット。
【請求項8】
さらに、前記第二シェルを封入する第一透明層を有することを特徴とする請求項1に記載の量子ドット。
【請求項9】
前記第一透明層は、不規則状の外表面を有することを特徴とする請求項8に記載の量子ドット。
【請求項10】
さらに、前記第一透明層中に位置し、且つ、前記第一シェルを封入する第二透明層を有することを特徴とする請求項9に記載の量子ドット。
【請求項11】
前記第一シェル、および、前記第二シェルは、同じ材料を有することを特徴とする請求項1に記載の量子ドット。
【請求項12】
量子ドットの形成方法であって、
コア溶液を提供し、前記コア溶液が、複数のコアを有する工程と、
シェル前駆体溶液を、前記コア溶液に提供して、量子ドット前駆体溶液を形成する工程と、
前記量子ドット前駆体溶液を加熱して、量子ドットを合成する工程、
を有し、
前記シェル前駆体溶液は、一注入速度で、前記コア溶液に注入され、前記コア溶液中の前記コア含有量が、1当量としてみなされるとき、前記シェル前駆体溶液の前記注入速度は、0.016-1.6eq/分であり
、
前記シェル前駆体溶液を、前記コア溶液に提供する前記工程は、
第一注入速度で、第一シェル前駆体溶液を注入する工程、および、
第二注入速度で、第二シェル前駆体溶液を注入する工程、を有し、
前記コア溶液中の前記コア含有量が、1当量としてみなされるとき、前記第一注入速度は、0.016-1.6eq/分、前記第二注入速度は、0.016-1.6eq/分であり、且つ、前記第一注入速度は、前記第二注入速度以上であることを特徴とする
形成方法。
【請求項13】
さらに、前記量子ドットを合成後、精製工程を実行する工程を有することを特徴とする請求項12に記載の形成方法。
【請求項14】
発光装置であって、
第一光線を発光する光源、および、
前記第一光線の一部を吸収するとともに、前記第一光線の前記一部を、第二光線に変換する波長変換素子、
を有し、前記波長変換素子は、請求項1の量子ドットを有することを特徴とする発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット、その形成方法、および、それを有する発光装置に関するものであって、特に、水分、および、酸素に対して、優れた耐性を有する量子ドット、その形成方法、および、それを有する発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
量子ドット(Quantum dots、QD)は、ナノスケールの半導体材料である。量子ドットは、通常、数百から数千個の原子により形成される球状、あるいは、球体に似た結晶構造を有する。量子ドットは、高い彩度という長所を有する波長変換材料であり、よって、広色域(WCD)ディスプレイ技術にとって高度に有利である。
【0003】
しかし、量子ドットは、水と酸素の存在下で、酸化しやすい。量子ドットの酸化は、たとえば、それらの発光波長のシフト、発光スペクトルの半値全幅の拡大、および、量子効率の衰退等の問題を引き起こす。よって、酸素と水分に対して、良好な抵抗、あるいは、耐性を有する量子ドットを探すことが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の必要性を考慮して、本発明は、酸素、あるいは、水分に対して、良好な抵抗、あるいは、耐性を有する量子ドットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、コア、第一シェル、および、第二シェルを有する量子ドットを提供する。第一シェルは、コア表面の周辺で、不連続に分布する。コア表面は、コアの表面として定義される。第二シェルは、コアと第一シェルの間に位置する。第二シェルは、コアを封入する。第二シェルは、不規則状の外表面を有する。
【0006】
いくつかの実施形態において、量子ドットはさらに、第一シェルと第二シェル間に、ギャップを有する。ギャップは、0nm以上、且つ、10nm以下である。
【0007】
いくつかの実施形態において、第一シェルの厚さ、第二シェルの厚さ、および、ギャップの合計は、0nmより大きく、且つ、35nm以下である。
【0008】
いくつかの実施形態において、第二シェルの不規則状の外表面は、凹凸外表面であり、凹凸外表面中の最下部と最上部間の高度差は、0nmより大きく、且つ、5nm以下である。
【0009】
いくつかの実施形態において、凹凸外表面は、窪み幅を有する窪み部分を有し、且つ、窪み幅は、0nmより大きく、且つ、10nm以下である。
【0010】
いくつかの実施形態において、第一シェルは、複数のスタックされた粒子を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、量子ドットは、さらに、第二シェルの外表面上に、リガンド(ligand)を有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、量子ドットは、さらに、第二シェルを封入する第一透明層を有する。
【0013】
いくつかの実施形態において、第一透明層は、不規則状の外表面を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、量子ドットは、さらに、第一透明層中に位置し、且つ、第一シェルを封入する第二透明層を有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、第一シェル、および、第二シェルは、同じ材料で形成される。
【0016】
本発明の一実施形態は、量子ドットの形成方法を提供し、本方法は、複数のコアを有するコア溶液を提供する工程と、シェル前駆体溶液を、コア溶液に提供して、量子ドット前駆体溶液を形成する工程と、量子ドット前駆体溶液を加熱して、量子ドットを合成する工程、を有し、シェル前駆体溶液は、一注入速度で、コア溶液に注入され、且つ、コア溶液中のコア含有量が、1当量としてみなされるとき、シェル前駆体溶液の注入速度は、0.016-1.6eq/分である。
【0017】
いくつかの実施形態において、シェル前駆体溶液を、コア溶液に提供する工程は、第一注入速度で、第一シェル前駆体溶液を注入する工程、および、第二注入速度で、第二シェル前駆体溶液を注入する工程、を有し、コア溶液中のコア含有量が、1当量としてみなされるとき、第一注入速度は、0.016-1.6eq/分、第二注入速度は、0.016-1.6eq/分であり、且つ、第一注入速度は、第二注入速度以上である。
【0018】
いくつかの実施形態において、量子ドットの形成方法はさらに、さらに、量子ドットを合成後、精製工程を実行する工程を有する。
【0019】
このほか、本発明の一実施形態は、発光装置を提供し、発光装置は、第一光線を発光する光源、および、第一光線の一部を吸収するとともに、第一光線の一部を、第二光線に変換する波長変換素子を有し、波長変換素子は、上述の量子ドットを有する。
【発明の効果】
【0020】
上記の本発明の実施形態によると、本発明の量子ドットは、不規則状の外表面を有する第二シェル、および、コアのコア表面周辺で、不連続に分布する第一シェルを有する。ここで開示される量子ドットは、上述のシェル構造を有するので、たとえば、水分、酸素、および、遊離基のような環境中の潜在的な破壊因子に対する高い耐性を有することができ、よって、ここで開示される量子ドットは、高い信頼性と長い発光寿命を有する。ここで開示される量子ドットの形成方法は、高い信頼性と長い発光寿命を有する量子ドットを形成することができ、上述の量子ドットを有する発光装置は、さらに、高い信頼性と長い発光寿命を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
添付図面を参照し、以下の詳細な記述から、本発明の態様をより理解することができる。注意すべきことは、業界の標準的技法において、各種特徴は、尺寸通りに描かれていないことである。実際、各種特徴の尺寸は、討論を明瞭にするため、任意に増加、あるいは、減少する。
【0022】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による量子ドットの形成方法のフローチャートである。
【0023】
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による量子ドットの概略図である。
【0024】
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による量子ドットの概略図である。
【0025】
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による量子ドットの概略図である。
【0026】
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による量子ドットの概略図である。
【0027】
【
図6】本発明のいくつかの実施形態による発光装置の概略図である。
【0028】
【
図7】本発明のいくつかの実施形態による量子ドットの透過型電子顕微鏡(TEM)イメージを示す図である。
【0029】
【
図8】本発明のいくつかの実施形態による量子ドットのTEMイメージを示す図である。
【0030】
【
図9】本発明のいくつかの実施形態による量子ドットのTEMイメージを示す図である。
【0031】
【
図10】本発明のいくつかの実施形態による量子ドットのTEMイメージを示す図である。
【0032】
【
図11】本発明の実施例の量子ドットの発光強度の時間に伴う変化を示す折線図である。
【0033】
【
図12】比較例の量子ドットのTEMイメージを示す図である。
【0034】
【
図13】本発明の実施例と比較例の発光装置の窒素環境下での発光強度の時間に伴う変化を示す折線図である。
【0035】
【
図14】本発明の実施例と比較例の発光装置の一般環境下での発光強度の時間に伴う変化を示す折線図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の記述は、本発明の一般原則を説明することを目的としてなされているものであって、限定的な意味で参酌されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによって最も規定されるものである。
【0037】
以下の開示は、多くの異なる実施形態、あるいは、例を提供して、提供される主題の異なる特徴を実施する。特定の例の素子と配置が以下で記述されて、本発明を簡潔にする。これらはもちろん、単なる例であり、限定することを意図しない。たとえば、記述中の第一特徴が第二特徴上、あるいは、上方に形成される、というのは、第一特徴、および、第二特徴が接触して形成される実施形態を含み、また、追加特徴が第一特徴と第二特徴間で形成され、第一特徴、および、第二特徴は直接接触しない実施形態も含む。
【0038】
理解すべきことは、追加操作は、これらの実施形態中で記述される段階の前、その間、あるいは、後に提供されることである。記述されるいくつかの段階は、異なる実施形態で代替、あるいは、省略される。
【0039】
さらに、空間的相対用語、たとえば、 “下方”、“下”、“低い”、“上方”、“その上”、“高い”等は、図面中の一素子や特徴と別の素子や特徴間の関係を描写することを容易にするために設けられている。空間的相対用語は、使用中や操作中の異なる方位、および、図面中で示される方位を包括する。装置が異なる方位に回転する(90度回転、あるいは、その他の方位)とき、ここで用いられる空間的に相対的な形容詞も同様に、それに従って解釈される
【0040】
ここで、“約”、“およそ”、“実質上”という用語は、通常、状態値の+/-20%、特に、状態値の+/-10%、状態値の+/-5%、状態値の+/-3%、状態値の+/-2%、状態値の+/-1%、および、さらに、状態値の+/-0.5%を意味する。本発明の状態値は近似値である。特定の記述がないとき、状態値は、“約”や“実質上”の意味を含む。さらに、製造プロセスの偏差や変動を考慮するとき、用語“同じ”は、“約”や“実質上”の意味も含む。一方、"a-b"という表現は、範囲が、a以上の値、および、b以下の値を有することを表す。
【0041】
別に定義されない限り、ここで用いられる全用語(技術、および、科学用語を含む)は、当業者により普通に理解されるものと同じ意義を有する。さらに理解できることは、たとえば、辞書により通常定義される用語は、相関技術の上下文中で、同じ意味を有すると解釈されるべきであり、特に定義されない限り、理想化された意味、または、過度に正式な意味として解釈されない。
【0042】
以下で開示される異なる実施形態は、同じ参照符号、および/または、記号を再使用する。これらの重複は、簡潔、且つ、明瞭にすることが目的であり、各種実施形態、および/または、以下で開示される構造間の特定の関係を制限することを意図しない。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態は、量子ドットの形成方法を提供する。
図1は、本発明のいくつかの実施形態による量子ドットの形成方法1のフローチャートである。
図1に示されるように、量子ドットの形成方法1は、コア溶液を提供する工程S101、シェル前駆体溶液を、コア溶液に提供して、量子ドット前駆体溶液を形成する工程S103、および、量子ドット前駆体溶液を加熱して、量子ドットを合成する工程S105、を有する。
【0044】
工程S101中で提供されるコア溶液は、複数のコアを有する。いくつかの実施形態において、コア溶液を提供する工程S101は、第一コア前駆体溶液と第二コア前駆体溶液を混合して、コア前駆体混合物を形成する工程、および、コア前駆体混合物を加熱して、コアを形成する工程、を有する。いくつかの実施形態において、第一コア前駆体溶液、および、第二コア前駆体溶液は、混合と加熱工程の後、無機導体材料、あるいは、無機半導体材料を有するコアを形成することができる任意の材料を有する。いくつかの実施形態において、第一コア前駆体溶液、および/または、第二コア前駆体溶液は、第II族、第III族、第IV族、第V族、第VI族、あるいは、それらの任意の組み合わせの無機半導体材料を有する。
【0045】
工程S103において、シェル前駆体溶液を、工程S101から得られたコア溶液に提供して、量子ドット前駆体溶液を形成する。いくつかの実施形態において、シェル前駆体溶液は、後続工程で、工程S101でコアを封入するシェルを形成することができる材料を有する。シェルは、工程S101のコアと同じ材料、あるいは、工程S101のコアの格子と適合する材料を有する。いくつかの実施形態において、シェル前駆体溶液は、第II族、第III族、第IV族、第V族、第VI族、あるいは、それらの任意の組み合わせの無機半導体材料を有する。コア溶液とシェル前駆体溶液の当量比は、約1:100-1:1である。いくつかの実施形態において、工程S103において、シェル前駆体溶液を、コア溶液に提供して、量子ドット前駆体溶液を形成する工程は、シェル前駆体溶液を、約1~2時間の注入時間で、一注入速度で、工程S101から得られたコア溶液中にゆっくりと注入する工程を有する。コア溶液中のコア含有量が、1当量としてみなされるとき、シェル前駆体溶液の注入速度は、約0.016-1.6eq/分である。いくつかの実施形態において、シェル前駆体溶液の注入速度は、約0.05-1.6eq/分、約0.06-1.6eq/分、約0.05-1.55eq/分、約0.06-1.55eq/分、約0.05-1.5eq/分、あるいは、約0.06-1.5eq/分である。シェル前駆体溶液の注入速度が、約0.016-1.6eq/分であるとき、シェル前駆体溶液とコア溶液中の分子は、適当な反応時間を有する。これにより、これらの分子は、それらの間の引力、および、反発力により、後続の段階で、不規則なシェルを形成すると同時に、量子ドットの発光特性を維持することができる。シェル前駆体溶液の注入速度が、0.016eq/分より遅いとき、シェル前駆体溶液とコア溶液中の分子間の反応時間は長すぎる場合がある。これにより、これらの分子は、バルクを形成しやすく、且つ、後続工程で形成される量子ドットは、発光特性を喪失する場合がある。シェル前駆体溶液の注入速度が、約1.6eq/分より速いとき、シェル前駆体溶液とコア溶液中の分子間の作用力とシェルの成長速度は、均衡がとれない。これにより、後続の段階で形成されるシェルは、大きなシェルギャップを有し、且つ、コア周辺で、集まることができず、よって、環境破壊因子に対する良好な抵抗、あるいは、耐性を有する量子ドットを形成することができなくなる。
【0046】
いくつかの実施形態において、シェル前駆体溶液は、第一シェル前駆体溶液、および、第二シェル前駆体溶液を有する。このような実施形態において、工程S103は、第一注入速度で、第一シェル前駆体溶液を注入する工程、および、第二注入速度で、第二シェル前駆体溶液を注入する工程、を有する。コア溶液中のコア含有量が、1当量としてみなされるとき、第一注入速度は、約0.016-1.6eq/分、第二注入速度は、約0.016-1.6eq/分である。第一注入速度は、第二注入速度以上である。いくつかの実施形態において、第一注入速度は、約0.1-1.6eq/分、約0.15-1.6eq/分、約0.2-1.6eq/分、約0.3-1.6eq/分、約0.15-1.55eq/分、約0.2-1.55eq/分、約0.3-1.55eq/分、約0.15-1.5eq/分、約0.2-1.5eq/分、あるいは、約0.3-1.5eq/分である。いくつかの実施形態において、第二注入速度は、約0.05-1.3eq/分、約0.05-1.2eq/分、約0.05-1.0eq/分、約0.06-1.3eq/分、約0.06-1.2eq/分、あるいは、約0.06-1.0eq/分である。いくつかの実施形態において、第一シェル前駆体溶液が注入された後、第二シェル前駆体溶液が注入され、且つ、第一注入速度は、第二注入速度以上である。いくつかの実施形態において、第二シェル前駆体溶液は、二回、注入され、第一シェル前駆体溶液は、第二シェル前駆体溶液の二回の注入間に注入され、且つ、第一注入速度は、第二注入速度以上である。いくつかの実施形態において、第一シェル前駆体溶液、および/または、第二シェル前駆体溶液は、後続工程で、工程S101でコアを封入するシェルを形成することができる材料を有する。シェルは、工程S101のコアと同じ材料、あるいは、工程S101のコアの格子と適合する材料を有する。いくつかの実施形態において、第一シェル前駆体溶液、および/または、第二シェル前駆体溶液は、第II族、第III族、第IV族、第V族、第VI族、あるいは、それらの任意の組み合わせの無機半導体材料を有する。
【0047】
工程S105において、工程S103中で得られた量子ドット前駆体溶液を加熱して、量子ドットを合成する。工程S105中で形成される量子ドットは、コア-シェル構造を有する量子ドットである。いくつかの実施形態において、工程S105中で形成される量子ドットは、
図2に示されるようなコア-シェル構造を有する。いくつかの実施形態において、量子ドットの形成方法は、さらに、量子ドットを合成後、精製工程を実行する工程S107を有する。いくつかの実施形態において、工程S107の精製工程は、有機溶剤により、量子ドットを含有する量子ドット溶液を洗浄するとともに、その後、量子ドット溶液を遠心分離機にかけて、純化された量子ドットを得る工程を有する。
【0048】
図2は、本発明のいくつかの実施形態による量子ドット20の概略図である。
図2に示されるように、量子ドット20は、コア201、第一シェル205、および、第二シェル203を有する。
【0049】
コア201は、量子ドット20の発光コアである。いくつかの実施形態において、コア201の平均直径は、9nm以上である、且つ、20nm以下である。いくつかの実施形態において、コア201は、無機導体材料、あるいは、無機半導体材料で構成される。無機半導体材料の例は、それらに制限されないが、第II-VI族、第III-V族、第IV-VI族、および/または、第IV族の半導体材料を有する。無機半導体材料の特定の例は、それらに制限されないが、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSTe、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTeSnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、CsPbX3、あるいは、Cs4PbX6を含み、Xは、塩素、臭素、ヨウ素、あるいは、それらの任意の組み合わせである。
【0050】
図2に示されるように、第二シェル203は、コア201を封入する。第二シェル203は、不規則状の外表面2031を有する。つまり、第二シェル203の外表面2031は、不均一な厚さの複数の領域を有する。第二シェル203の厚さが徐々に減少する領域が、窪み部分として定義され、厚さが一番薄い窪み部分の領域や地点が、窪み部分の底部分として定義される。第二シェル203の厚さの範囲は、0nm以上、且つ、5nm以下である。第二シェル203の形状は不規則なので、コア201の一部表面が、第二シェル203により封入されないとき、コア201の表面の未封入部分に対応する第二シェルの部分の厚さは、0である。たとえば、いくつかの実施形態において、第二シェルは、0nm以上、且つ、4nm以下である、あるいは、0nmより大きく、且つ、3nm以下である。いくつかの実施形態において、第二シェル203の不規則状の外表面2031は、少なくとも一つの窪み部分を有する。窪み部分は、
図2に示されるように、窪み幅wを有する。いくつかの実施形態において、窪み幅wは、第二シェル203の一領域中の二個の頂部間の距離に対応する(用語“頂部”とは、第二シェル203中、両側の厚さが、領域、あるいは、地点の厚さより小さい一領域のことを示す)。窪み部分の数量が2より多い実施形態において、窪み部分の窪み幅は、同じてあってもよいし、異なっていてもよい。
図2に示されるように、第二シェル203の外表面2031は、複数の窪み部分2037を有し、各窪み部分2037は、互いに同じ、あるいは、異なる窪み幅wを有する。いくつかの実施形態において、窪み幅wは、0nmより大きく、且つ、10nm以下である。いくつかの実施形態において、窪み幅wは、0nmより大きく、且つ、7nm以下である、0nmより大きく、且つ、5nm以下であるか、あるいは、0nmより大きく、且つ、3nm以下である。さらに、窪み部分は底部を有する。底部は、第二シェル203の厚さが一番薄い窪み部分の領域、あるいは、地点である。底部とコア201間に、距離dを有する。窪み部分の数量が2より多い実施形態において、
図2に示されるように、窪み部分の底部とコア201間の距離dは、互いに同じ、あるいは、異なる。第二シェル203中の窪み部分の底部とコア201間の距離dの最小部分は、第二シェル203の最下部2033として定義される。第二シェル203の厚さが0であるとき、距離dは0である。第二シェル203中の厚さが一番厚い領域、あるいは、地点は、最上部2035として定義される。いくつかの実施形態において、最下部2033と最上部2035間に、高度差がある。高度差は、0nmより大きく、5nmより小さい。
【0051】
第一シェル205は、コア201のコア表面2011周辺で、不連続に分布し、且つ、第二シェル203は、コア201と第一シェル205間に位置する。
図2に示されるように、第一シェル205と第二シェル203間に、ギャップgがあり、且つ、第一シェル205は、第二シェル203の外表面2031周辺で、不連続に分布する。第二シェル203の厚さが0の実施形態において、第二シェル203から第一シェル205のギャップgは、コア201と第一シェル205間のギャップに等しい(と当量である)。第一シェル205と第二シェル203の外表面2031の異なる部分間のギャップgは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。ギャップgは、0nm以上、且つ、10nm以下である。いくつかの実施形態において、ギャップgは、0nm以上、且つ、7nm以下である、0nm以上、であり、且つ、5nm以下である、あるいは、0nm以上、且つ、3nm以下である。いくつかの実施形態において、第一シェル205は、粒子のような構造を有する。この実施形態において、第一シェル205は、コア201、および、第二シェル203周辺の複数の粒子を有する。いくつかの実施形態において、
図3に示されるように、第一シェル205の粒子は、互いにスタックされる。いくつかの実施形態において、第一シェル205のスタックされた粒子の数量は、4以下である。いくつかの実施形態において、第一シェル205のスタックされた粒子の数量は、3以下である。この実施形態において、第一シェル205の粒子の平均直径は、0nmより大きく、且つ、5nm以下である。たとえば、いくつかの実施形態において、第一シェル205の粒子の平均直径は、1nm以上、且つ、5nm以下である、1以上である、且つ、4nm以下である、2以上、且つ、5nm以下である、あるいは、2以上、且つ、4nm以下である。
図2は、第一シェル205が複数の粒子を有する一実施形態を示す。この実施形態において、第二シェル203の外表面2031と第一シェル205中に含まれる各粒子間に、ギャップgを有し、ギャップgのサイズは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、第一シェル205と第二シェル203の厚さ、および、ギャップgの合計は、0nmより大きく、且つ、35nm以下である。たとえば、合計は、0nmより大きく、且つ、30nm以下である、0nmより大きく、且つ、25nm以下である、0nmより大きく、且つ、20nm以下である、1nm以上である、且つ、25nm以下である、2nm以上である、且つ、25nm以下である、5nm以上である、且つ、25nm以下である等である。たとえば、第一シェル205のスタックされた粒子の数量が4であるこの実施形態において、第一シェル205と第二シェル203の厚さ、および、ギャップgの合計は、0nmより大きく、且つ、35nm以下である。第一シェル205のスタックされた粒子の数量が3であるこの実施形態において、第一シェル205と第二シェル203、および、ギャップgの厚さの合計は、0nmより大きく、且つ、30nm以下である。第一シェル205のスタックされた粒子の数量が2であるこの実施形態において、第一シェル205と第二シェル203、および、ギャップgの厚さの合計は、0nmより大きく、且つ、25nm以下である。第一シェル205のスタックされた粒子の数量が1であるこの実施形態において、第一シェル205と第二シェル203、および、ギャップgの厚さの合計は、0nmより大きく、且つ、20nm以下である。いくつかの実施形態において、第一シェル205、および、第二シェル203は、コア201と同じ材料、あるいは、コア201の材料の格子と適合する材料を有する。いくつかの実施形態において、第一シェル205、および、第二シェル203は、同じ材料を有する。
【0053】
量子ドット20の第一シェル205が、コア201のコア表面2011周辺で、不連続に分布するとともに、第二シェル203が、不規則状の外表面2031を有するので、量子ドット20も、不規則な表面を有する。"量子ドット20の最大直径長さ"という表現は、量子ドット20を封入する最小の仮想ボックスの最長長さを示す。
図2に示されるように、量子ドット20の最大直径長さは、Y方向の長さ(直径の長さ)L1、X方向の長さ(直径の長さ)L2、および、量子ドット20を封入する最小の仮想ボックスQVZ方向(図示しない)の長さ中の最長長さである。さらに詳細には、最大直径L1、および/または、L2は、コア201の最大直径、第二シェル203の最大厚さ、第一シェル205と第二シェル203間の最大ギャップ、および、第一シェル205の最大直径を有し、第一シェル205は、複数の粒子を有し、且つ、第一シェル205のスタックされた粒子の数量はNである。第一シェル205のスタックされた粒子の数量が、4以下である実施形態において、最大直径L1、および/または、L2は、30nm以上、且つ、90nm以下である。第一シェル205のスタックされた粒子の数量が、3以下である実施形態において、最大直径L1、および/または、L2は、30nm以上である、且つ、80nm以下である。第一シェル205のスタックされた粒子の数量が、2以下である実施形態において、最大直径L1、および/または、L2は、30nm以上、且つ、70nm以下である。第一シェル205のスタックされた粒子の数量が、1以下である実施形態において、最大直径L1、および/または、L2は、30nm以上、且つ、60nm以下である。最小直径L1、および/または、L2は、コア201の最小直径、第二シェル203の最小厚さ、および、第一シェル205と第二シェル203間のギャップを有する。この場合、第一シェル205のスタックされた粒子の数量が0なので、最小直径L1、および/または、L2は、第一シェル205の粒子の直径を有さない。これにより、最小直径L1、および/または、L2は、9nmより大きい。第一シェル205、および、第二シェル203の上記構造により、環境中に存在する量子ドット20のコア201を破壊する破壊因子は、第一シェル205と第二シェル203の外側、あるいは、第一シェル205と第二シェル203間に閉じ込められる。これにより、量子ドット20のコア201は、環境中の破壊因子によりダメージを受けるのを防止することができ、環境中の破壊因子に対する量子ドット20の抵抗、あるいは、耐性が増加する、あるいは、量子ドット20の信頼性、あるいは、発光寿命がさらに、増加する。
【0054】
図3は、本発明のいくつかの実施形態による量子ドット30の概略図である。
図3に示されるように、量子ドット30は、コア201、第一シェル205、第二シェル203、および、リガンド207を有する。量子ドット30のコア201、第一シェル205、および、第二シェル203の組成と構造は、量子ドット20のコア201、第一シェル205、および、第二シェル203と同じである。以下は、リガンド207だけを記述する。
【0055】
図3に示されるように、リガンド207は、第二シェル203の外表面2031周辺と、ギャップg中に位置する。リガンド207は、さらに、量子ドット30の表面の立体障害を増加させて、環境破壊因子を、第一シェル205、第二シェル203、および/または、リガンド207の外側に追い込む、あるいは、環境破壊因子を、第一シェル205、第二シェル203、および/または、リガンド207間に閉じ込める能力を増加する。これにより、環境破壊因子の量子ドット30の抵抗、あるいは、耐性が増加する、あるいは、量子ドット30の信頼性、あるいは、発光寿命がさらに、増加する。リガンド207は、極性リガンド、あるいは、無極性リガンドを有する。リガンド207の例は、それらに制限されないが、アルキルホスフィン、アルキルアミン、アリールアミン、ピリジン、脂肪酸、チオフェン、チオール化合物、カルベン化合物、あるいは、それらの任意の組み合わせを有する。脂肪酸の例は、それらに制限されないが、オレイル酸、ステアリン酸、ラウリン酸、あるいは、それらの任意の組み合わせを有する。アルキルアミンの例は、それらに制限されないが、オレイルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、あるいは、それらの任意の組み合わせを有する。カルベン化合物の例は、それらに制限されないが、1-オクタデセンを有する。アルキルホスフィンの例は、それらに制限されないが、トリオクチルホスフィンを有する。いくつかの実施形態において、リガンド207の長さは、約1-2.5nm、約1.2-2.3nm、約1.3-2.0nm、あるいは、約1.5-1.9nmである。
【0056】
リガンド207はギャップg中に位置するので、ここで開示される量子ドット30の最大直径は、実質上、量子ドット20の最大直径と等しい。第一シェル205のスタックされた粒子の数量が、4以下である実施形態において、量子ドット30の最大直径は、30nm以上、且つ、90nm以下である。第一シェル205のスタックされた粒子の数量が、3以下である実施形態において、量子ドット30の最大直径は、30nm以上、且つ、80nm以下である。第一シェル205のスタックされた粒子の数量が、2以下である実施形態において、量子ドット30の最大直径は、30nm以上、且つ、70nm以下である。第一シェル205のスタックされた粒子の数量が、1以下である実施形態において、量子ドット30の最大直径は、30nm以上、且つ、60nm以下である。同様に、量子ドット30の最小直径は、9nmより大きい。
【0057】
いくつかの実施形態において、
図4、および、
図5に示されるように、さらに、量子ドットの外側に、透明層が形成されて、第二シェルを封入する。
図4は、本発明のいくつかの実施形態による量子ドット40の概略図である。
図5は、本発明のいくつかの実施形態による量子ドット50の概略図である。
【0058】
図2に示される量子ドット20が、
図4中で例として用いられる。
図4において、第二シェル203を封入する透明層401が、さらに、
図2に示される量子ドット20上に形成されて、量子ドット40を形成するが、本発明はこの限りではない。いくつかの実施形態において、
図3に示される量子ドット30上の第二シェル203を封入する透明層401を形成することにより、さらに、量子ドット40が形成される。いくつかの実施形態において、透明層401は、第一シェル205、および、第二シェル203両方を封入するとともに、
図4に示される球体構造を形成する。透明層401は酸化物を有する。酸化物の例は、それらに制限されないが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、あるいは、それらの任意の組み合わせを有する。いくつかの実施形態において、透明層401は、約0-25nmの厚さである。いくつかの実施形態において、球体構造の粒子サイズは、9nm以上、且つ、140nm以下である、つまり、約9-140nmの平均直径を有する。いくつかの実施形態において、球体構造の平均直径は、約12-130nm、約15-130nm、約20-125nm、約25-100nm、約30-90nm、約30-80nm、約30-70nm、あるいは、約30-60nmである。この実施形態において、量子ドット40が球体構造を有するので、量子ドット20と同じ方法を用いることにより得られる最大直径は、量子ドット40の平均直径と同じである。透明層401を有することにより、環境破壊因子に対する量子ドット40の抵抗、あるいは、耐性は、さらに増加し、これにより、さらに、量子ドット40の信頼性、あるいは、発光寿命を改善することができる。
【0059】
図2に示される量子ドット20は、
図5中で例として用いられる。
図5において、第二シェル203を封入する第一透明層501、および、第一シェル205を封入する第二透明層503が、さらに、
図2に示される量子ドット20上に形成されて、量子ドット50を形成するが、本発明はこれに制限されない。いくつかの実施形態において、量子ドット50は、
図3に示される量子ドット30上に、さらに、第二シェル203を封入する第一透明層501、および、第一シェル205を封入する第二透明層503を形成することにより形成される。いくつかの実施形態において、第一透明層501は、共形で、第二シェル203上に形成されるともに、第二シェル203を封入する。第二透明層503は、共形で、第一シェル205上に形成されるとともに、第一シェル205を封入する。これにより、第一透明層501、および、第二透明層503を有する量子ドット50は、依然として、
図5に示されるような不規則な外表面を有する。いくつかの実施形態において、第二透明層503は、第一透明層501中に位置する。第一透明層501、および、第二透明層503の材料と厚さは、透明層401の材料と厚さと同じなので、ここで説明を繰り返さない。いくつかの実施形態において、量子ドット50は、9nm以上、且つ、1に等しいか、あるいは、40nmより小さい最大直径、つまり、約9-140nmの最大直径を有する。いくつかの実施形態において、量子ドット50の最大直径は、約12-140nm、約15-130nm、約20-125nm、約25-100nm、約30-90nm、約30-80nm、約30-70nm、あるいは、約30-60nmである。"量子ドット50の最大直径長さ"という表現は、量子ドット20と同じ方法を用いることにより得られる最長長さを示し、ここで説明を繰り返さない。第一透明層501、および、第二透明層503を有することにより、環境破壊因子に対する量子ドット50の抵抗、あるいは、耐性は、さらに、増加し、これにより、さらに、量子ドット50の信頼性、あるいは、発光寿命を改善する。
【0060】
上記の量子ドット20、30、40、および、50が、発光装置中に用いられて、高い信頼性、および、長い寿命を提供することができる。
図6は、本発明のいくつかの実施形態による発光装置2の概略図である。
図6に示されるように、発光装置2は、光源60、および、波長変換素子10を有するLEDチップの発光装置である。光源60は、発光ダイオードチップであり、第一波長を有する第一光線を発射する。波長変換素子10は、光源60により発射される第一光線の一部を吸収するとともに、第一光線の一部を、第二波長を有する第二光線に変換する。いくつかの実施形態において、第一波長は、第二波長と異なる。波長変換素子10は、マトリクス70、および、マトリクス70中に均一に分散した量子ドット20を有するが、本発明はそれらに制限されない。いくつかの実施形態において、波長変換素子10中の量子ドット20のいくつか、あるいは、すべては、上述の量子ドット30-50の一つ、あるいは、それ以上により代替される。マトリクス70は、透明樹脂、たとえば、アクリル樹脂、有機シリコン樹脂、アクリレート変性のポリウレタン、アクリレート変性の有機シリコン樹脂、あるいは、エポキシ樹脂を有する。いくつかの実施形態において、波長変換素子10は、さらに、マトリクス70中で、均一に分散した拡散粒子を有する。拡散粒子は、マトリクス70に入射する第一光線を拡散し、これにより、波長変換素子10を通過する第一光線の経路が増加する。拡散粒子は、無機粒子、有機高分子粒子、あるいは、それらの任意の組み合わせを有する。無機粒子の例は、それらに制限されないが、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、あるいは、それらの任意の組み合わせを有する。有機高分子粒子の例は、それらに制限されないが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリウレタン(PU)、あるいは、それらの任意の組み合わせを有する。
【0061】
いくつかの実施形態において、発光装置2は、チップレベルパッケージ(CSP)構造であり、光源60はフリップチップ発光ダイオードチップ、波長変換素子10は量子ドット薄膜である。波長変換素子10は、発光ダイオードチップの上表面を封入する、あるいは、発光ダイオードチップの上表面と側面を封入する。量子ドット薄膜は、量子ドット20、30、40、および、50から構成される群から選択される一つ以上の量子ドットを有する。
【0062】
いくつかの実施形態において、発光装置2は、白色発光装置である。白色発光装置2において、量子ドット20は、赤色量子ドット、および、緑色量子ドットを有し、且つ、光源60は、青色発光ダイオードチップであり、あるいは、量子ドット20は、赤色量子ドット、緑色量子ドット、および、青色量子ドットを含み、光源60は、UV発光ダイオードチップである。本発明は、複数の上述の白色発光装置2を含むバックライトユニットを提供する。本発明は、上述のバックライトユニットを含むディスプレイ装置を提供する。
【0063】
さらに、量子ドット20、30、40、および、50は、量子ドット層(QD層)に用いられ、量子ドット層は、透明マトリクス、および、量子ドット20、30、40、および、50から構成される群から選択される量子ドットを有する。透明マトリクスは、たとえば、アクリル樹脂、有機シリコン樹脂、アクリレート変性のポリウレタン、アクリレート変性のシリコン樹脂、あるいは、エポキシ樹脂を有する。このほか、量子ドット層は、液晶ディスプレイに適用される。
【0064】
本発明の上記、および、その他の目的、特徴、および、長所をさらに明瞭に、わかりやすくするため、量子ドットを準備するいくつかの実施例、および、比較例が以下で与えられる。これらの例において、量子ドットが用いられて、発光装置を準備する。発光装置は、水分と酸素をブロックしない一般の環境下、および、水分と酸素がない窒素環境下で燃やされて、酸素、あるいは、水分に対する量子ドットの耐性と信頼性を観察する。これらの例は、本発明のいくつかの実施形態による量子ドットの形成方法により形成される量子ドットの特性、本発明のいくつかの実施形態による量子ドットにより達成される効果、および、本発明のいくつかの実施形態による発光装置の特性を特定する。しかし、以下の実施例、および、比較例は、単に、説明のためのものであり、この開示の実施における制限として解釈されるべきではない。
【0065】
[コア溶液の作成]
【0066】
<第一コア前駆体溶液>
【0067】
64mgの酸化カドミウム(CdO)、1615mgの酸化亜鉛(ZnO)、20mlのオレイン酸(OA)、および、80mlの1-オクタデセン(ODE)を、250mlの三つ口丸底フラスコに入れて、混合物を形成した。混合物を150℃で、約120分加熱し、100mTorrでポンピングするとともに、窒素、あるいは、不活性ガスを三口フラスコに導入して、4当量のカドミウム-亜鉛(Cd-Zn)溶液を、第一コア前駆体溶液として得た。
【0068】
<第二コア前駆体溶液>
【0069】
655mgのセレニウム(Se)粉末、148mgの硫黄(S)粉末、および、8gのトリオクチルホスフィン(TOP)をビーカーに入れて、混合物を得るとともに、攪拌して、澄まし、窒素で密封して、セレニウム-硫黄混合物を、第二コア前駆体溶液として得た。
【0070】
[シェル前駆体溶液の作成]
【0071】
<第一シェル前駆体溶液>
【0072】
5.6gの無水亜鉛アセテート、4gのオレイン酸(OA)、および、20gの1-オクタデセン(ODE)を、50mlの三つ口丸底フラスコに入れて、150℃で、約30分加熱し、澄まして、その後、窒素で密封して、0.7当量のZn-OA溶液を、第一キトサン前駆体溶液として得た。
【0073】
<第二シェル前駆体溶液>
【0074】
352mgの硫黄粉末、および、5.5gのトリオクチルホスフィン(TOP)をビーカーに入れて、攪拌し、澄ますとともに、窒素を通すことにより密封して、1当量のS-TOP溶液を、第二シェル前駆体溶液として得た。
【0075】
[量子ドットの作成]
【0076】
1当量の第一コア前駆体溶液を、280℃で加熱して、3分間反応させた。1当量の第二コア前駆体溶液を、加熱済みの第一コア前駆体溶液に注入するとともに、320℃まで加熱して、10分間、反応させ、コア溶液を形成した。第二シェル前駆体溶液をコア溶液に注入して、10分間、反応させた。その後、コア溶液を250℃で冷却した。1当量の第一キトサン前駆体溶液を、コア溶液中に、以下の表1で列記される注入速度で注入した。1当量の第二シェル前駆体溶液を、コア溶液中に、0.9eq/分の注入速度で注入して、量子ドット前駆体溶液を得た。量子ドット前駆体溶液を250℃で、90分加熱して、量子ドットを合成した。量子ドットを含有する溶液は、室温で冷却するとともに、100mlのメタノール/80mlのトルエンで、四回、繰り返して洗浄し、その後、量子ドット溶液を遠心分離して、例1~例5の純化された量子ドットを得た。
【0077】
例1~例5の量子ドットの構造を、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子、型式JEMー2100F)で分析した。
図7は、本発明の例1の量子ドットの透過型電子顕微鏡(TEM)イメージである。
図8は、例2の量子ドットのTEMイメージである。
図9は、例3の量子ドットのTEMイメージである。
図10は、例4のTEMイメージである。例5の量子ドットの量子効率は低すぎて、TEMイメージを撮影できない。例1~例5の量子ドットの最大直径は、
図7~
図10に従って測定した。例1~例5の量子ドットの量子効率は、蛍光分光計(Fluoromax-4 Spectrofluorometer)により測定した。例1~例5の量子ドットを含む発光ダイオードの光度は、輝度測定器(維明企業股 有限公司/型式6122)により測定し、測定されたデータは、
図11の折り畳み線図を作成するのに用いた。例1~例5の量子ドットの作成時の第一シェル前駆体溶液の注入速度、および、例1~例5の量子ドットの最大直径、および、量子効率は、以下の表1で示される。ここで、量子ドットの最大直径は、50個の量子ドットのランダムサンプルで、平均値を求めた。
【表1】
【0078】
図7~
図10と併せて、表1から分かるように、第一シェル前駆体溶液の注入速度が速すぎるとき、形成される量子ドットの最大直径は小さくなり、シェル間のギャップが大きく、且つ、シェルは、コア周辺に集合しない。表1から、さらに、第一シェル前駆体溶液の注入速度が遅くなる時、量子ドットの量子効率が低下することがわかる。注入速度が、0.20eq/分であるとき、量子効率は40より低い。
図11は、本発明の実施例の量子ドットの発光強度の時間に伴う変化を示す折線図である。
図11から、第一シェル前駆体溶液の注入速度が遅くなる時、量子ドットの発光強度の減衰は、第一シェル前駆体溶液の注入速度が遅くなるのに伴って、減少することがわかり、これは、第一シェル前駆体溶液の注入速度が遅くなると、得られた量子ドットの発光強度の減衰が低いほど、量子ドットの信頼性が向上することを示す。
【0079】
[比較例の量子ドットの作成]
【0080】
1当量の第一コア前駆体溶液を、280℃で加熱して、3分間、反応させた。1当量の第二コア前駆体溶液を、加熱済みの第一コア前駆体溶液に注入し、その後、320℃で、10分間、反応させて、コア溶液を形成した。第二シェル前駆体溶液を、コア溶液に注入して、10分間、反応させた。その後、コア溶液を、250℃で冷却した。1当量の第一シェル前駆体溶液を、急速に、コア溶液に注入した。1当量の第二シェル前駆体溶液を、コア溶液に注入して、量子ドット前駆体溶液を得た。量子ドット前駆体溶液を、250℃で、20分加熱して、量子ドットを合成した。量子ドットを含む溶液を、室温で冷却するとともに、100mlのメタノール/80mlのトルエンで、繰り返し、四回、洗浄し、その後、量子ドット溶液を遠心分離して、比較例の純化された量子ドットを得た。比較例の量子ドットの量子効率は、蛍光分光計(Fluoromax-4 Spectrofluorometer)により測定した。比較例の量子ドットの量子効率は65%であった。比較例の量子ドットの構造は、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子、型式JEMー2100F)で分析した。
図12は、比較例の量子ドットのTEMイメージである。
図12から分かるように、比較例の量子ドットのシェルは滑らかであり、且つ、比較例の量子ドットのシェルは、コアのコア表面周辺に、不連続位置を有さない。比較例の量子ドットの最大直径は、
図12で測定されるように、11.6±1.6nmであった。
【0081】
[発光装置の作成]
【0082】
例1の量子ドット、および、比較例の量子ドットを、有機シリコン樹脂と混合した後、約450-460nmの波長、約34.6mWの屈折力、および、約0.35*0.70mmのウェハサイズを有する青色発光ダイオードチップ上にコートして、実施例の発光装置、および、比較例の発光装置を得た。
【0083】
[発光装置の性能試験]
【0084】
20mAの電流、3.0Vの駆動電圧、および、15mAの連続照明電流で、水分と酸素を隔絶する一般環境下で、実施例の発光装置、および、比較例の発光装置を、約100時間、点灯させた。実施例の発光装置、および、比較例の発光装置は、水分と酸素がない窒素環境において、約1000時間、点灯させた。輝度測定器(維明企業股 有限公司/型式6122)により、それぞれ、実施例の発光装置、および、比較例の発光装置の発光強度の時間に伴った減衰の程度を測定するとともに、得られたデータを用いて、
図13、および、
図14で示されるような折線図を作成した。
図13は、本発明の実施例と比較例の発光装置の窒素環境下での発光強度の時間に伴う変化を示す折線図である。
図14は、本発明の実施例と比較例の発光装置の一般環境下での発光強度の時間に伴う変化を示す折線図である。
【0085】
図13から分かるように、窒素環境下で、比較例の発光装置は、1000時間の発光後、その発光強度は、初期光度より約50%減少する。実施例の発光装置は、1000時間の発光後、その発光強度は、約20%減少する。
図14から分かるように、一般環境下で、比較例の発光装置は、100時間の発光後、その発光強度は、初期光度と比較して、約20%減少する。実施例の発光装置は、100時間の発光後、その発光強度は、初期光度と比較すると、わずか10%だけ減少する。上述の実験結果から、実施例の発光装置は、窒素環境でも、一般環境でも、比較例の発光装置よりも、高い信頼性、あるいは、長い発光寿命を有することが明らかである。言い換えると、滑らかなシェルを有する比較例の量子ドットと比較すると、本発明の量子ドットは、環境中の破壊因子に対して、高い抵抗、あるいは、よい耐性を有する。これにより、本発明の量子ドットは、高い信頼性、あるいは、長い発光寿命を有する。
【0086】
実施形態の構成要素が上記で概説されて、当業者は、本発明の実施形態の視点をよりよく理解することができる。当業者なら理解すべきことは、それらは、本発明の実施形態に基づいて、その他のプロセス、あるいは、構造を設計、あるいは、修正して、ここで記述される実施形態と同じ目的、および/または、長所を達成することができることである。当業者ならさらに分かるように、このような等価構造は、本開示の精神と範囲と矛盾せず、且つ、それらは、本開示の精神と範囲を逸脱しない限り、各種変化、置換、代替することが可能である。これにより、本開示の保護範囲は、請求項により定義される。このほか、本発明で、いくつかの好ましい実施形態が開示されたが、それらは、本開示を制限することを意図しない。
【0087】
明細書中で、たとえば、“特徴”、“利益”等の用語が用いられているが、本発明を用いて達成されるすべての特徴、および、利益が、本発明の任意の単一の実施形態中で達成されるのではない。一方、特徴、および、利益に関連する用語は、実施形態と併せて記述される特定の特徴、利益、あるいは、特性が、本発明の少なくとも一つの実施形態中に含まれることを意味すると理解される。よって、明細書中の用語“特徴”、“利益”等の用語は、必ずしも、同じ実施形態を表さない。
【0088】
さらに、一つ以上の実施形態において、任意の適当な方式で、本発明中で記述される特徴、利益、および、特性が結合される。ここでの記述に従って、当業者なら、特定の実施形態の一つ以上の特定の特徴、あるいは、利益がない状況下でも、本発明を実現することができることが理解できる。ほかの例では、追加特徴、および、利益が、いくつかの実施形態中で示され得るが、これらの特徴、および、利益は、本発明の全実施形態中で示されなくてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…量子ドットの形成方法
2…発光装置
10…波長変換素子
20、30、40、50…量子ドット
201…コア
2011…コア表面
203…第二シェル
2031…外表面
2033…最下部
2035…最上部
2037…窪み部分
205…第一シェル
207…リガンド
401、501、503…透明層
60…光源
70…マトリクス
g…ギャップ
w…埋め込み幅
d…距離
QV…仮想ボックス
L1、L2…長さ
S101、S103、S105、S107…工程