(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ビーム分岐装置及び分岐比調整方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/198 20210101AFI20240514BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240514BHJP
G02B 27/28 20060101ALN20240514BHJP
B23K 26/064 20140101ALN20240514BHJP
B23K 26/067 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
G02B7/198
G02B5/30
G02B27/28 Z
B23K26/064 Z
B23K26/067
(21)【出願番号】P 2022508165
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2021007108
(87)【国際公開番号】W WO2021187042
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2020045372
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】遠入 尚亮
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-251306(JP,A)
【文献】特開2010-172961(JP,A)
【文献】国際公開第2004/101211(WO,A1)
【文献】特開2013-71136(JP,A)
【文献】特開2019-84567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00
G02B 7/18-7/24
G02B 27/28
B23K 26/064
B23K 26/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光されたレーザビームを分岐させる偏光ビームスプリッタと、
入射するレーザビームを前記偏光ビームスプリッタまで導光する偏光方向調整光学系と
を有し、
前記偏光方向調整光学系は、
前記偏光ビームスプリッタに入射するレーザビームの経路上に、レーザビームの伝搬方向に順番に配置された第1反射鏡、第2反射鏡、及び第3反射鏡と、
前記第1反射鏡への入射光の偏光面と、前記第1反射鏡で反射された反射光の光軸とのなす角度を変化させる方向にあおり調整可能に前記第1反射鏡を支持する第1調整機構と、
前記第1調整機構によって前記第1反射鏡の姿勢を変化させたときに、前記第1反射鏡の反射光が前記第2反射鏡に入射する状態、及び前記第2反射鏡の反射光が前記第3反射鏡に入射する状態を維持させる方向に、移動可能にかつあおり調整可能に前記第2反射鏡を支持する第2調整機構と
を有するビーム分岐装置。
【請求項2】
前記第1調整機構は、前記第1反射鏡への入射光の光軸に対して垂直な平面内で反射光の光軸を変化させる方向にあおり調整可能に前記第1反射鏡を支持し、
前記第2調整機構は、前記第1反射鏡から前記第2反射鏡までの光路長、及び前記第2反射鏡から前記第3反射鏡までの光路長の少なくとも一方を変化させる方向に移動可能にかつあおり調整可能に前記第2反射鏡を支持する請求項1に記載のビーム分岐装置。
【請求項3】
前記第1反射鏡への入射光の光軸と、前記第3反射鏡の反射光の光軸とは、基準平面に対して平行である請求項1または2に記載のビーム分岐装置。
【請求項4】
前記第2反射鏡から前記第3反射鏡までのレーザビームの光軸が、前記基準平面に対して垂直であり、
前記第2調整機構は、前記基準平面に対して直交する方向に移動可能に前記第2反射鏡を支持する請求項3に記載のビーム分岐装置。
【請求項5】
直線偏光されたレーザビームを、偏光方向に応じて分岐比を変えて分岐させる偏光ビームスプリッタに入射するレーザビームの経路上に、レーザビームの伝搬方向に順番に第1反射鏡、第2反射鏡、及び第3反射鏡を配置し、
前記第1反射鏡への入射光の偏光面と、前記第1反射鏡で反射された反射光の光軸とのなす角度を変化させる方向に前記第1反射鏡のあおり調整を行い、
前記第2反射鏡の移動及びあおり調整を行うことにより、前記第1反射鏡の姿勢を変化させた後も、前記第1反射鏡の反射光が前記第2反射鏡に入射する状態、及び前記第2反射鏡の反射光が前記第3反射鏡に入射する状態を維持する分岐比調整方法。
【請求項6】
前記第1反射鏡のあおり調整を行う際に、前記第1反射鏡への入射光の光軸に対して垂直な平面内で反射光の光軸を変化させ、
前記第2反射鏡の移動及びあおり調整を行う際に、前記第1反射鏡から前記第2反射鏡までの光路長、及び前記第2反射鏡から前記第3反射鏡までの光路長の少なくとも一方を変化させる請求項5に記載の分岐比調整方法。
【請求項7】
前記第1反射鏡への入射光の光軸と、前記第3反射鏡の反射光の光軸とは、基準平面に対して平行である請求項5または6に記載の分岐比調整方法。
【請求項8】
前記第2反射鏡から前記第3反射鏡までのレーザビームの光軸が、前記基準平面に対して垂直であり、
前記第2反射鏡の位置及び姿勢を変化させる際に、前記第2反射鏡を前記基準平面に対して直交する方向に移動させる請求項7に記載の分岐比調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームを分岐させるビーム分岐装置及び分岐比調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工の効率を高めるために、レーザ発振器から出力されたパルスレーザビームの1つのパルスから2つのパルスを切り出して2本のレーザビームで加工を行う2軸レーザ加工装置が公知である(例えば、下記の特許文献1参照)。特許文献1に開示されたレーザ加工装置においては、パルスレーザビームの1つのパルスが、音響光学素子により時間軸上で2つのパルスに分離され、2つのパルスがそれぞれ異なる光路を伝搬する。音響光学素子は、1つのパルスから加工用のパルスを切り出す機能と、1本の光路を2本の光路に分岐させる機能とを持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音響光学素子により分岐された2本の光路のなす角度は小さい。このため、分岐後の2本の光路に配置すべき光学部品が空間的に干渉しやすくなり、光学部品を配置する位置が制約を受ける。音響光学素子に代えて、レーザビームを偏光方向に応じて2本の経路に分岐させる偏光ビームスプリッタを用いることにより、1本の光路を2本の光路に分岐させることが可能である。
【0005】
偏光ビームスプリッタの製造ばらつきにより、レーザビームの分岐比が個体間でばらつく。分岐された2本のレーザビームの強度を目標の値に設定するためには、偏光ビームスプリッタに入射するレーザビームの偏光方向を微調整して、P偏光成分とS偏光成分との強度比を微調整しなければならない。ブリュースターウィンドウを用いてP偏光成分とS偏光成分との強度比を調整することができる。P偏光成分とS偏光成分との強度比の調整のためのみにレーザビームの光路にブリュースターウィンドウを挿入すると、光学部品の個数が増加してしまう。増加した光学部品は、レーザビームの収束発散に、熱レンズ効果等の種々の悪影響を及ぼす。
【0006】
本発明の目的は、レーザビームの光路に挿入される光学部品の個数を増加させることなく、偏光ビームスプリッタに入射するレーザビームの偏光方向を微調整することが可能なビーム分岐装置及び分岐比調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
直線偏光されたレーザビームを分岐させる偏光ビームスプリッタと、
入射するレーザビームを前記偏光ビームスプリッタまで導光する偏光方向調整光学系と
を有し、
前記偏光方向調整光学系は、
前記偏光ビームスプリッタに入射するレーザビームの経路上に、レーザビームの伝搬方向に順番に配置された第1反射鏡、第2反射鏡、及び第3反射鏡と、
前記第1反射鏡への入射光の偏光面と、前記第1反射鏡で反射された反射光の光軸とのなす角度を変化させる方向にあおり調整可能に前記第1反射鏡を支持する第1調整機構と、
前記第1調整機構によって前記第1反射鏡の姿勢を変化させたときに、前記第1反射鏡の反射光が前記第2反射鏡に入射する状態、及び前記第2反射鏡の反射光が前記第3反射鏡に入射する状態を維持させる方向に、移動可能にかつあおり調整可能に前記第2反射鏡を支持する第2調整機構と
を有するビーム分岐装置が提供される。
【0008】
本発明の他の観点によると、
直線偏光されたレーザビームを、偏光方向に応じて分岐比を変えて分岐させる偏光ビームスプリッタに入射するレーザビームの経路上に、レーザビームの伝搬方向に順番に第1反射鏡、第2反射鏡、及び第3反射鏡を配置し、
前記第1反射鏡への入射光の偏光面と、前記第1反射鏡で反射された反射光の光軸とのなす角度を変化させる方向に前記第1反射鏡のあおり調整を行い、
前記第2反射鏡の移動及びあおり調整を行うことにより、前記第1反射鏡の姿勢を変化させた後も、前記第1反射鏡の反射光が前記第2反射鏡に入射する状態、及び前記第2反射鏡の反射光が前記第3反射鏡に入射する状態を維持する分岐比調整方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
第1反射鏡のあおり調整、及び第2反射鏡の移動及びあおり調整を行うことにより、光学部品の個数を増加させることなく、偏光ビームスプリッタに入射するレーザビームの偏光方向を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施例によるビーム分岐装置の概略斜視図である。
【
図2】
図2Aは、ビーム分岐装置の各光学部品の配置及びレーザビームの光軸の位置関係を示す概略平面図であり、
図2Bは、各光学部品の配置及びレーザビームの光軸の位置関係を示す概略側面図である。
【
図4】
図4は、
図1~
図3に示した実施例の変形例によるレーザ加工装置の概略図である。
【
図5】
図5は、他の実施例による偏光方向調整光学系の第1反射鏡、第2反射鏡、及び第3反射鏡の位置関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図3を参照して、一実施例によるビーム分岐装置について説明する。
図1は、一実施例によるビーム分岐装置の概略斜視図である。光学定盤10の上に、レーザ光源20、偏光方向調整光学系30、及び偏光ビームスプリッタ40が支持されている。偏光方向調整光学系30は、第1反射鏡31、第2反射鏡32、第3反射鏡33、第1調整機構36、及び第2調整機構37を含む。光学定盤10の上面をxy面とし、光学定盤10の上面の法線方向をz軸方向とするxyz直交座標系を定義する。例えば、xy面が水平面であり、z軸が鉛直上方を向く。
【0012】
図2Aは、各光学部品の配置及びレーザビームの光軸の位置関係を示す概略平面図であり、
図2Bは、x軸に沿って見たときの各光学部品の配置及びレーザビームの光軸の位置関係を示す概略側面図である。以下の説明では、
図1を参照しつつ、必要に応じて
図2A及び
図2Bを参照する。
【0013】
レーザ光源20は、直線偏光されたレーザビームを出力する。レーザ光源20から出力されたレーザビームの光軸は、光学定盤10の上面に対して平行である。例えば、レーザ光源20から出力されたレーザビームの光軸はxy面に平行であり、レーザビームはx軸の負の向きに伝搬する。本明細書において、xy面を基準平面という。このレーザビームの偏光方向PDはy軸に平行である。すなわち、偏光面はxy面に平行である。レーザ光源20から出力されたレーザビームは、第1反射鏡31、第2反射鏡32、及び第3反射鏡33で順番に反射されて偏光ビームスプリッタ40に入射する。
【0014】
第1反射鏡31は、入射するレーザビーム(以下、入射光という。)の偏光面、及び入射光の光軸を含み偏光面に対して直交する平面のいずれに対しても、反射したレーザビーム(以下、反射光という。)の光軸が斜めになる方向にレーザビームを反射する。例えば、第1反射鏡31による反射光の光軸は、基準平面(xy面)及びzx面のいずれに対しても斜めである(
図2B参照)。また、第1反射鏡31の反射光の光軸は、入射光の光軸に対して直交する。すなわち、第1反射鏡31の反射光の光軸はyz面に平行である(
図2A参照)。
【0015】
第1調整機構36は、第1反射鏡31への入射光の偏光面と、第1反射鏡31で反射された反射光の光軸とのなす角度を変化させる方向に、あおり調整可能に第1反射鏡31を支持する(
図2B参照)。第1反射鏡31のあおり調整を行うと、第1反射鏡31による反射光の光軸は、yz面に平行な面内で変化し、基準平面(xy面)からの傾斜角(以下、仰角θという。)が変化する。
【0016】
第2反射鏡32による反射光の光軸は、基準平面(xy面)に対して垂直である(
図2B参照)。第2調整機構37は、第1反射鏡31のあおり調整を行っても、第1反射鏡31の反射光が第2反射鏡32に入射する状態、及び第2反射鏡32の反射光が第3反射鏡33に入射する状態を維持する方向に移動可能に、かつあおり調整可能に第2反射鏡32を支持する(
図2B参照)。第2反射鏡32が移動しても、第2反射鏡32の反射光の光軸のxy面内における位置は変化しない。
【0017】
第3反射鏡33は、光学定盤10に固定されている。第3反射鏡33の反射光の光軸は基準平面(xy面)に対して平行であり、反射光はx軸の正の向きに伝搬する(
図2A参照)。すなわち、第3反射鏡33の反射光の伝搬方向は、第1反射鏡31の入射光の伝搬方向と反平行である。第3反射鏡33の反射光が偏光ビームスプリッタ40に入射する。第3反射鏡33の反射光の偏光方向PDは、仰角θ(
図2B参照)に応じてxy面に対して傾く。例えば、仰角θが45°のとき、第3反射鏡33の反射光の偏光面は、xy面に対して45°傾斜する。
【0018】
偏光ビームスプリッタ40は、入射するレーザビームを、x軸に平行な光路及びz軸に平行な光路の2つの光路に分岐させる。分岐比は、入射するレーザビームの偏光方向に依存する。第3反射鏡33の反射光の偏光面が、xy面に対して45°傾斜しているとき、偏光ビームスプリッタ40によるレーザビームの分岐比はほぼ1対1になる。
【0019】
図3は、第2調整機構37の概略正面図である。光学定盤10に支持部材51が固定されている。支持部材51は、yz面に平行な案内面を有する。支持部材51の案内面に、昇降部材53及び位置決めブロック52が、z軸方向に移動可能に取り付けられている。例えば、位置決めブロック52は、z軸方向に長い長孔55を通して支持部材51にネジ止めされる。昇降部材53は、z軸方向に長い複数の長孔56を通して支持部材51にネジ止めされる。昇降部材53の位置決め時には、まず位置決めブロック52を支持部材51に固定し、昇降部材53の下方を向く面を位置決めブロック52の上方を向く面に接触させる。
【0020】
昇降部材53にミラーホルダ54が取り付けられている。ミラーホルダ54に、第2反射鏡32があおり調整可能に支持されている。
【0021】
次に、上記実施例の優れた効果について説明する。
上記実施例では、第1調整機構36によって第1反射鏡31のあおり調整を行い、仰角θ(
図2B)を調整することにより、偏光ビームスプリッタ40に入射するレーザビームの偏光方向を調整することができる。すなわち、偏光ビームスプリッタ40に対するP偏光成分とS偏光成分の強度比を調整することができる。これにより、偏光ビームスプリッタ40の製造上のばらつきによる分岐比の個体差を吸収し、分岐された2本のレーザビームの強度を同一にすることができる。
【0022】
次に、第1反射鏡31のあおり調整の範囲、及び第2反射鏡32のx軸方向の移動範囲について説明する。第1反射鏡31のあおり調整の範囲は、偏光ビームスプリッタ40の分岐比の個体間のばらつきの大きさに依存して設定するとよい。第1反射鏡31のあおり調整の範囲を大きくすれば、偏光ビームスプリッタ40の分岐比の個体間の、より大きなばらつきに対応することが可能である。例えば、一般的な偏光ビームスプリッタ40の分岐比の個体間の通常のばらつきに対応できるようにするために、仰角θ(
図2B)の調整可能範囲が45°±1°の範囲を含むように、第1反射鏡31のあおり調整の範囲を設定するとよい。
【0023】
仰角θの調整可能範囲は、偏光ビームスプリッタ40の分岐比の個体間のばらつきを吸収できれば十分であり、過度に大きくする必要はない。仰角θ(
図2B)の調性可能範囲を大きくすると、第1反射鏡31の反射光が第2反射鏡32に入射する状態を維持するために、第2反射鏡32の移動可能範囲を大きくしなければならなくなる。すなわち、第2反射鏡32を移動可能に支持する支持部材51やミラーホルダ54(
図3)による調整可能範囲を大きくしなければならなくなる。第2反射鏡32の移動可能範囲を大きくし過ぎると、支持部材51やミラーホルダ54による対応が困難になる。このため、仰角θを45°±5°の範囲内で調整できるように、第1反射鏡31のあおり調整の範囲を設定するとよい。
【0024】
第1反射鏡31の入射光の光軸と、第3反射鏡33の反射光の光軸との間隔をLと表記すると、第3反射鏡33から第2反射鏡32までの高さはL×tanθになる。仰角θを45°±5°の範囲で調整できるようにした場合、第2反射鏡32の高さを、L×tan40°からL×tan50°の範囲内で移動可能にすればよい。この範囲で第2反射鏡32を移動可能にすれば、第1反射鏡31のあおり調整を行っても、第1反射鏡31の反射光が第2反射鏡32に入射する状態を維持することができる。一例として、間隔Lが143mmの場合、第3反射鏡33から第2反射鏡32までの高さを、120.0mm以上170.4mm以下の範囲で調整可能にするとよい。
【0025】
また、上記実施例で用いられている第1反射鏡31、第2反射鏡32、及び第3反射鏡33は、一般的に、レーザ光源20から出力されたレーザビームの偏光方向を45°旋回させるために必要な光学部品である。上記実施例では、偏光方向を微調整するための専用の光学部品、例えばブリュースターウィンドウ等をレーザビームの光軸上に追加配置することなく、偏光方向を微調整することが可能である。このため、光学部品点数が増加することによるレーザビームの収束発散への影響等を低減することができる。
【0026】
また、上記実施例では、第1反射鏡31のあおり調整を行って仰角θ(
図2B)を変化させても、第2反射鏡32と第3反射鏡33との間のレーザビームの光軸はxy面内方向に移動しない。このため、偏光方向の調整時に、第3反射鏡33の位置調整やあおり調整を行う必要はない。さらに、第1反射鏡31のあおり調整を行っても、レーザ光源20から出力されたレーザビームの光軸と、偏光ビームスプリッタ40に入射するレーザビームの光軸との間隔は不変である。したがって、偏光方向の調整を行っても、レーザ光源20と偏光ビームスプリッタ40との相対位置関係を調整する必要はない。
【0027】
次に、上記実施例の変形例について説明する。
上記実施例では、レーザ光源20から出力されたレーザビームの偏光方向がy軸方向と平行であるが、z軸方向と平行であってもよい。また、上記実施例では、レーザ光源20から出力されたレーザビームの伝搬方向と、偏光ビームスプリッタ40に入射するレーザビームの伝搬方向が反平行であるが、両者は平行であってもよい。
【0028】
上記実施例では、偏光ビームスプリッタ40で反射されたレーザビームの光軸をz軸に平行にしているが、y軸に平行にしてもよい。また、上記実施例では、第1反射鏡31の反射光の光軸をyz面内で変化させているが、x軸に対して傾いた平面内で変化させてもよい。
【0029】
次に、
図4を参照して、他の実施例によるレーザ加工装置について説明する。
図4は、本実施例によるレーザ加工装置の概略図である。光学定盤10の上面に、レーザ光源20、偏光方向調整光学系30、偏光ビームスプリッタ40、及び折り返しミラー23が支持されている。なお、必要に応じて、レーザビームのビーム径や発散収束を調整する光学部品、例えばアパーチャ、ビームエキスパンダ等が配置される。レーザ光源20から出力されたレーザビームが偏光方向調整光学系30により、偏光方向を調整されて、偏光ビームスプリッタ40に入射する。偏光方向調整光学系30として、
図1~
図3に示した実施例による偏光方向調整光学系30が用いられる。
【0030】
偏光方向調整光学系30で偏光方向が調整されたレーザビームが、偏光ビームスプリッタ40によって二分岐される。偏光ビームスプリッタ40で反射されたレーザビームは、光学定盤10に設けられた開口を通って、光学定盤10の下に配置されたビーム走査器24Aに入射する。偏光ビームスプリッタ40を直進したレーザビームは、折り返しミラー23によって下方に反射され、光学定盤10に設けられた開口を通って、光学定盤10の下に配置されたビーム走査器24Bに入射する。
【0031】
ビーム走査器24A、24Bで走査されたレーザビームは、それぞれ集光レンズ25A、25Bを通って加工対象物60A、60Bに入射する。加工対象物60A、60Bは、例えばプリント配線基板であり、レーザビームの入射によって穴明け加工が行われる。
【0032】
加工対象物60A、60Bは、移動機構70により、基板面内方向に移動可能に保持されている。移動機構70に、パワーメータ26が取り付けられている。2本のレーザビームのうち一方のレーザビームをパワーメータ26に入射させることにより、レーザビームのパワーを測定することができる。制御装置71が、レーザ光源20、ビーム走査器24A、24B、及び移動機構70を制御する。
【0033】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
パワーメータ26で2本のレーザビームのそれぞれのパワーを計測しながら、偏光方向調整光学系30によって偏光ビームスプリッタ40に入射するレーザビームの偏光方向を調整することにより、2本のレーザビームのパワーを等しくすることができる。偏光方向調整光学系30として、
図1~
図3に示した実施例による偏光方向調整光学系30が用いられているため、偏光方向を微調整するための専用の光学部品、例えばブリュースターウィンドウ等をレーザビームの光軸上に配置することなく、偏光方向を微調整することが可能である。
【0034】
次に、上記実施例の変形例について説明する。上記実施例では1つのパワーメータ26で2本のレーザビームのそれぞれのパワーを計測する構成をしているが、一変形例として、移動機構70に2つのパワーメータを取り付けてもよい。2つのパワーメータを取り付けると、2本のレーザビームのパワーを同時に計測することができる。このため、2本のレーザビームのパワーを等しくするための偏光方向調整光学系30の調整が容易になるという効果が得られる。
【0035】
次に、
図5を参照して、さらに他の実施例による偏光方向調整光学系について説明する。以下、
図1~
図3に示した実施例による偏光方向調整光学系30と共通の構成については説明を省略する。
【0036】
図5は、本実施例による偏光方向調整光学系30の第1反射鏡31、第2反射鏡32、及び第3反射鏡33の位置関係を示す概略図である。
図2Bに示した実施例では、第2反射鏡32の移動方向がz軸に平行である。このため、第1反射鏡31のあおり調整を行うと、第1反射鏡31と第2反射鏡32との間の光路長、及び第2反射鏡32と第3反射鏡33との間の光路長との両方が変化する。これに対して本実施例では、第1反射鏡31のあおり調整時に、第3反射鏡33のレーザビームの入射点を中心とした円弧38に沿って第2反射鏡32が移動する。このため、偏光方向の調整を行っても、第2反射鏡32と第3反射鏡33との間の光路長は変化せず、第1反射鏡31と第2反射鏡32との間の光路長のみが変化する。
【0037】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例においても、
図1~
図3に示した実施例と同様に、偏光方向を微調整するための専用の光学部品、例えばブリュースターウィンドウ等をレーザビームの光軸上に配置することなく、偏光方向を微調整することが可能である。
【0038】
次に、上記実施例の変形例について説明する。
上記実施例では、第1反射鏡31のあおり調整を行う際に、第2反射鏡32と第3反射鏡33との間の光路長を変化させず、第1反射鏡31と第2反射鏡32との間の光路長を変化させている。その逆に、第1反射鏡31と第2反射鏡32との間の光路長を変化させず、第2反射鏡32と第3反射鏡33との間の光路長を変化させる構成としてもよい。
【0039】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0040】
10 光学定盤
20 レーザ光源
23 折り返しミラー
24A、24B ビーム走査器
25A、25B 集光レンズ
26 パワーメータ
30 偏光方向調整光学系
31 第1反射鏡
32 第2反射鏡
33 第3反射鏡
36 第1調整機構
37 第2調整機構
38 円弧
40 偏光ビームスプリッタ
51 支持部材
52 位置決めブロック
53 昇降部材
54 ミラーホルダ
55、56 長孔
60A、60B 加工対象物
70 移動機構
71 制御装置