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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】回転工具及び切削加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20240514BHJP
   B23C 5/20 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
B23C5/10 D
B23C5/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022510595
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2021012197
(87)【国際公開番号】W WO2021193705
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2020054294
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】錦織 大典
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-176834(JP,A)
【文献】国際公開第2011/122676(WO,A1)
【文献】特表2015-521958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/10
B23C 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿って後端から先端にかけて延びた回転工具であって、
前記回転軸に沿って延びた円柱形状であるとともに、前記先端の側に位置するポケットを有するホルダと、
前記ポケットに位置する切削インサートと、を有し、
前記切削インサートは、
前記回転軸の回転方向の前方に位置するとともに、前記先端の側に位置する第1上辺を有する上面と、
前記上面の反対側に位置するとともに、前記先端の側に位置する第1下辺を有する下面と、
前記上面及び前記下面の間に位置する側面と、
前記第1上辺に位置する上切刃と、
前記第1下辺に位置する下切刃と、を有し、
前記側面は、
前記先端の側に位置する第1側面と、
前記ホルダの外周側に位置する第2側面と、
前記第2側面の反対側に位置する第3側面と、を有し、
前記第1上辺は、前記先端に向かって突出した凸形状であって、前記先端の側に位置する第1端を有し、
前記第1端は、前記第2側面よりも前記第3側面の近くに位置し、
前記第1下辺は、前記先端に向かって突出した凸形状であって、前記先端の側に位置する第2端を有し、
前記第2端は、前記第3側面よりも前記第2側面の近くに位置し、
前記上面の正面視において、前記第1側面は、前記第1端及び前記第2端に挟まれた先端領域を有し、前記先端領域は、前記後端に向かって窪み、
前記第1側面の正面視において、
前記第1上辺は、上方に向かって突出した凸形状であって、前記下面から最も離れて位置する第3端を有し、
前記第3端は、前記第2端の直上に位置する、回転工具。
【請求項2】
前記上面の正面視において、前記第1端を通るとともに前記第1上辺に直交する断面が第1断面であって、
前記第1断面において、前記側面が凹形状である、請求項1に記載の回転工具。
【請求項3】
前記上面の正面視において、前記第2端を通るとともに前記第1下辺に直交する断面が第2断面であって、
前記第2断面において、前記側面が凹形状である、請求項1又は2に記載の回転工具。
【請求項4】
前記第1側面の正面視において、
前記第1下辺は、下方に向かって突出した凸形状であって、前記上面から最も離れて位置する第4端を有し、
前記第4端は、前記第1端の直下に位置する、請求項1~3のいずれか1つに記載の回転工具。
【請求項5】
前記上面は、
前記上切刃に沿って位置するとともに、前記上切刃から離れるにしたがって前記下面に近づく上傾斜面と、
前記上傾斜面よりも前記上面の中央の近くに位置する平坦な上平坦面と、を有し、
前記上平坦面は、前記先端の側に位置する第5端を有し、
前記第5端は、前記第2側面よりも前記第3側面の近くに位置する、請求項1~4のいずれか1つに記載の回転工具。
【請求項6】
前記第3側面は、前記第1端よりも前記第5端の近くに位置する、請求項5に記載の回転工具。
【請求項7】
前記下面は、
前記下切刃に沿って位置するとともに、前記下切刃から離れるにしたがって前記上面に近づく下傾斜面と、
前記下傾斜面よりも前記下面の中央の近くに位置する平坦な下平坦面と、を有し、
前記下平坦面は、前記先端の側に位置する第6端を有し、
前記第6端は、前記第3側面よりも前記第2側面の近くに位置する、請求項1~6のいずれか1つに記載の回転工具。
【請求項8】
前記第2側面は、前記第2端よりも前記第6端の近くに位置する、請求項7に記載の回転工具。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の回転工具を回転させる工程と、
回転する前記回転工具を被削材に接触させる工程と、
前記回転工具を前記被削材から離す工程と、を備えた切削加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年3月25日に出願された日本国特許出願2020-054294号の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般的には、被削材の切削加工に用いられる回転工具及び切削加工物の製造方法に関する。より具体的には、フライス加工などに用いられる転削工具に関する。
【背景技術】
【0003】
金属などの被削材を切削加工する際に用いられる回転工具(切削工具)として、例えば国際公開第2010/114094号(特許文献1)、国際公開第2015/174200号(特許文献2)及び特表2010-523352号公報(特許文献3)に記載の切削工具が知られている。特許文献3に記載の切削工具は、切削インサートを有する。この切削インサートは、2つの端面(上面及び下面)と、周囲面と、端面及び周囲面の交わりに形成された切削刃(上切削刃及び下切削刃)と、を有する。切削刃は、回転軸線の先端に向かって突出した凸形状であるとともに、この凸形状の端部を基準として、外側に位置する主切削刃と、内側に位置する副切削刃と、を有する。周囲面は、上切削刃における端部及び下切削刃における端部を接続する領域を有する。この領域は、2つの端部を直線的に接続している。そのため、切削インサートを上面視した場合に、2つの端部を結ぶ外周縁が直線状である。
【0004】
引用文献3に記載の切削工具を用いて切削加工を行う場合、周囲面における上記の領域が被削材に接触することを避けるためには、アキシャルレーキを大きな負の値にする必要がある。すなわち、切削インサートを大きく前傾させる必要がある。しかしながら、切削インサートを大きく前傾させた場合、切削性が低下する恐れがある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の限定されない一面に基づく回転工具は、回転軸に沿って後端から先端にかけて延びた回転工具であって、前記回転軸に沿って延びた円柱形状であるとともに、前記先端の側に位置するポケットを有するホルダと、前記ポケットに位置する切削インサートと、を有する。前記切削インサートは、前記回転軸の回転方向の前方に位置するとともに、前記先端の側に位置する第1上辺を有する上面と、前記上面の反対側に位置するとともに、前記先端の側に位置する第1下辺を有する下面と、前記上面及び前記下面の間に位置する側面と、前記第1上辺に位置する上切刃と、前記第1下辺に位置する下切刃と、を有する。前記側面は、前記先端の側に位置する第1側面と、前記ホルダの外周側に位置する第2側面と、前記第2側面の反対側に位置する第3側面と、を有する。前記第1上辺は、前記先端に向かって突出した凸形状であって、前記先端の側に位置する第1端を有する。前記第1端は、前記第2側面よりも前記第3側面の近くに位置する。前記第1下辺は、前記先端に向かって突出した凸形状であって、前記先端の側に位置する第2端を有する。前記第2端は、前記第3側面よりも前記第2側面の近くに位置する。前記上面の正面視において、前記第1側面は、前記第1端及び前記第2端に挟まれた先端領域を有し、前記先端領域は、前記後端に向かって窪む。前記第1側面の正面視において、前記第1上辺は、上方に向かって突出した凸形状であって、前記下面から最も離れて位置する第3端を有する。前記第3端は、前記第2端の直上に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の限定されない一面の回転工具を示す斜視図である。
図2図1に示す回転工具を先端の側から見た平面図である。
図3図2に示す回転工具をA1方向から見た側面図である。
図4図1に示す領域B1を拡大した拡大図である。
図5図3に示す領域B2を拡大した拡大図である。
図6図1に示す回転工具における切削インサートを示す斜視図である。
図7図6に示す切削インサートを上面視した平面図である。
図8図6に示す切削インサートを上面視した平面図である。
図9図6に示す切削インサートを下面視した平面図である。
図10図8に示す切削インサートをA2方向から見た側面図である。
図11図8に示す切削インサートをA3方向から見た側面図である。
図12図8に示すXII-XII断面の断面図である。
図13図8に示すXIII-XIII断面の断面図である。
図14】本開示の限定されない一面の切削加工物の製造方法における一工程を示す概略図である。
図15】本開示の限定されない一面の切削加工物の製造方法における一工程を示す概略図である。
図16】本開示の限定されない一面の切削加工物の製造方法における一工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<回転工具>
以下、本開示の限定されない一面の回転工具1について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図では、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみが簡略化して示される。したがって、回転工具1は、参照する各図に示されない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各部材の寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0008】
回転工具1は、図1図5に示す限定されない一例のように、回転軸O1に沿って後端1aから先端1bにかけて延びてもよい。この回転工具1は、回転軸O1の周りで回転可能であってもよい。また、回転工具1は、フライス加工などに用いられる転削工具であってもよい。なお、図1などにおける矢印Y1は、回転軸O1の回転方向を示している。
【0009】
回転工具1は、ホルダ3及び切削インサート5(以下、「インサート5」ということがある)を有してもよい。
【0010】
ホルダ3は、回転軸O1に沿って延びた円柱形状であってもよい。円柱形状とは、概ね円柱形状であればよく、厳密な意味での円柱形状である必要はない。また、ホルダ3は、先端1bの側に位置するポケット7を有してもよい。ポケット7は、インサート5を取り付け可能な部位であってもよい。ポケット7は、ホルダ3の外周面及び先端1bの側の端面において開口してもよい。
【0011】
インサート5は、ポケット7に位置してもよい。なお、ポケット7は、1つのみであってもよく、また、複数であってもよい。図2に示す限定されない一例のように、ホルダ3が複数のポケット7を有する場合には、回転工具1が複数のインサート5を有してもよく、また、各ポケット7にインサート5が1つずつ位置してもよい。
【0012】
ホルダ3が複数のポケット7を有する場合において、これらのポケット7は、回転軸O1の周りにおいて等間隔で位置してもよく、また、不等間隔で位置してもよい。
【0013】
ホルダ3は、特定の大きさに限定されない。例えば、回転軸O1に沿った方向におけるホルダ3の長さは、60~300mm程度に設定されてもよい。また、回転軸O1に直交する方向におけるホルダ3の幅(径)は、8~40mm程度に設定されてもよい。
【0014】
インサート5は、図6図13に示す限定されない一例のように、上面9、下面11、側面13、上切刃15及び下切刃17を有してもよい。なお、上面9及び下面11は、便宜上の表現であり、上及び下の方向性を示すものではない。例えば、上面9は、インサート5を使用するときに上方を向く必要はない。これらの点は、上及び下の表現を含む他の部位においても同様である。
【0015】
上面9は、図2に示す限定されない一例のように、回転軸O1の回転方向Y1の前方に位置してもよい。また、上面9は、多角形状であってもよい。上面9は、図6に示す限定されない一例のように、概ね四角形状(長方形状)であってもよい。
【0016】
下面11は、上面9の反対側に位置してもよい。また、下面11は、上面9と同様に多角形状であってもよい。下面11は、概ね四角形状(長方形状)であってもよい。そして、インサート5は、多角板形状であってもよい。インサート5は、四角板形状であってもよい。
【0017】
なお、多角形状とは、厳密に多角形の形状である必要はない。例えば、上面9における複数の辺は、それぞれ厳密な直線でなくてもよく、上面9の正面視(上面視)において湾曲してもよい。また、互いに隣り合う辺の間に位置する上面9の角は、厳密な角でなくてもよい。言い換えれば、上面9における複数の角は、厳密な角でなくてもよい。角は、上面9を正面視した場合に、凸曲線形状であってもよく、また、直線及び曲線を組み合わせた形状であってもよい。
【0018】
上面9における複数の辺は、第1上辺19を含んでもよい。すなわち、上面9は、第1上辺19を有してもよい。第1上辺19は、先端1bの側に位置してもよい。上面9が、長辺及び短辺を有する四角形状である場合には、第1上辺19は短辺であってもよい。
【0019】
下面11における複数の辺は、第1下辺21を含んでもよい。すなわち、下面11は、第1下辺21を有してもよい。第1下辺21は、先端1bの側に位置してもよい。下面11が、長辺及び短辺を有する四角形状である場合には、第1下辺21は短辺であってもよい。
【0020】
上面9の中心及び下面11の中心を通る仮想直線が、インサート5の中心軸O2であってもよい。上面9が四角形状である場合には、上面9における対角線の交点を上面9の中心としてもよい。同様に、下面11が四角形状である場合には、下面11における対角線の交点を下面11の中心としてもよい。対角線の起点となるのは、四角形状を構成する各辺の延長線が交わる部分であってもよい。
【0021】
なお、上面9及び下面11の形状は、四角形状に限定されず、他の形状であってもよい。他の形状としては、例えば、三角形、五角形、六角形及び八角形などが挙げられ得る。上面9が四角形状でない場合には、例えば、上面9を正面視した場合における上面9の重心位置によって上面9の中心を特定してもよい。同様に、下面11が四角形状でない場合には、例えば、下面11を正面視(下面視)した場合における下面11の重心位置によって下面11の中心を特定してもよい。
【0022】
上面9は、上面9を正面視した場合において、中心軸O2を中心に180°の回転対称であってもよい。また、下面11は、下面11を正面視した場合において、中心軸O2を中心に180°の回転対称であってもよい。
【0023】
インサート5は、特定の大きさに限定されない。例えば、上面9を正面視した場合における最大幅は、6~25mm程度に設定されてもよい。また、上面9から下面11までの高さは、1~10mm程度に設定されてもよい。上面9から下面11までの高さとは、上面9及び下面11の間における中心軸O2に平行な方向での間隔の最大値を意味してもよい。また、上面9から下面11までの高さは、中心軸O2に沿った方向での側面13の幅と言い換えてもよい。
【0024】
側面13は、上面9及び下面11の間に位置してもよい。側面13は、図10に示す限定されない一例のように、上面9及び下面11に接続されてもよい。
【0025】
上切刃15は、第1上辺19に位置してもよい。上切刃15は、インサート5を用いて切削加工物を製造する際に、被削材を切削するために用いることが可能である。上切刃15は、第1上辺19の全体に位置してもよく、また、第1上辺19の一部のみに位置してもよい。
【0026】
インサート5が上切刃15を有する場合には、上面9及び側面13の一方がすくい面領域を有してもよく、また、上面9及び側面13のもう一方が逃げ面領域を有してもよい。図6に示す限定されない一例のように、上面9がすくい面領域を有し、且つ、側面13が逃げ面領域を有してもよい。
【0027】
下切刃17は、第1下辺21に位置してもよい。下切刃17は、上切刃15と同様に、インサート5を用いて切削加工物を製造する際に、被削材を切削するために用いることが可能である。下切刃17は、第1下辺21の全体に位置してもよく、また、第1下辺21の一部のみに位置してもよい。なお、インサート5が上切刃15及び下切刃17を有する場合には、インサート5が両面仕様になり得る。
【0028】
ここで、側面13は、第1側面23、第2側面25及び第3側面27を有してもよい。第1側面23は、先端1bの側に位置してもよい。上切刃15を用いて切削加工物を製造する際に、第2側面25は、ホルダ3の外周側に位置してもよい。上切刃15を用いて切削加工物を製造する際に、第3側面27は、ホルダ3の内周側に位置してもよい。なお、第2側面25及び第3側面27は、回転軸O1に沿って位置してもよい。第3側面27は、第2側面25の反対側に位置してもよい。
【0029】
下切刃17を用いて切削加工物を製造する際においては、上切刃15を用いて切削加工物を製造する際と比較して、インサート5が反転された状態でホルダ3に装着されてもよい。そのため、下切刃17を用いて切削加工物を製造する際においては、第3側面27は、ホルダ3の外周側に位置してもよい。また、下切刃17を用いて切削加工物を製造する際においては、第2側面25は、ホルダ3の内周側に位置してもよい。
【0030】
第1上辺19は、先端1bに向かって突出した凸形状であってもよい。また、第1上辺19は、先端1bの側に位置する第1端19aを有してもよい。より具体的には、第1上辺19は、第1上辺19における最も先端1bの側に位置する第1端19aを有してもよい。また、第1端19aは、第2側面25よりも第3側面27の近くに位置してもよい。言い換えれば、第1端19a及び第3側面27の間隔が、第1端19a及び第2側面25の間隔よりも小さくてもよい。
【0031】
上切刃15のうち第1端19aの近くに位置する部分は、上切刃15を用いて切削加工物を製造する際に、被削材の加工面(仕上げ面)に沿って位置する底刃として用いることが可能である。上切刃15のうち第1端19aから第2側面25にかけて位置する部分は、上切刃15を用いて切削加工物を製造する際に、主として被削材を加工する、いわゆる主切刃として用いることが可能である。上切刃15のうち第1端19aから第3側面27にかけて位置する部分は、上切刃15を用いて斜め沈み込み加工を行う際に、斜め沈み込み刃として用いることが可能である。
【0032】
第1下辺21は、先端1bに向かって突出した凸形状であってもよい。また、第1下辺21は、先端1bの側に位置する第2端21aを有してもよい。より具体的には、第1下辺21は、第1下辺21における最も先端1bの側に位置する第2端21aを有してもよい。また、第2端21aは、第3側面27よりも第2側面25の近くに位置してもよい。言い換えれば、第2端21a及び第2側面25の間隔が、第2端21a及び第3側面27の間隔よりも小さくてもよい。
【0033】
下切刃17のうち第2端21aの近くに位置する部分は、下切刃17を用いて切削加工物を製造する際に、被削材の加工面(仕上げ面)に沿って位置する底刃として用いることが可能である。下切刃17のうち第2端21aから第3側面27にかけて位置する部分は、下切刃17を用いて切削加工物を製造する際に、主として被削材を加工する、いわゆる主切刃として用いることが可能である。下切刃17のうち第2端21aから第2側面25にかけて位置する部分は、下切刃17を用いて斜め沈み込み加工を行う際に、斜め沈み込み刃として用いることが可能である。
【0034】
図7に示す限定されない一例のように、上面9の正面視において、第1側面23は、第1端19a及び第2端21aに挟まれた先端領域29を有してもよい。また、上面9の正面視において、先端領域29は、後端1aに向かって窪んでもよい。より具体的には、先端領域29は、上面9の正面視において、第1端19a及び第2端21aを結ぶ仮想直線L1よりも後端1aの側に位置するように後端1aに向かって窪んでもよい。
【0035】
上面9の正面視において、先端領域29が後端1aに向かって窪んでいる場合には、先端領域29が直線状である場合と比較して、アキシャルレーキを小さな負の値にし易い。そのため、インサート5の側面13(第1側面23)が被削材に接触することを避けつつ、且つ、切削性が高い。
【0036】
図8及び図12に示す限定されない一例のように、上面9の正面視において、第1端19aを通るとともに第1上辺19に直交する断面が、第1断面であってもよい。第1断面において、側面13(第1側面23)が凹形状であってもよい。この場合には、側面13(第1側面23)が被削材に接触しにくい。
【0037】
図8及び図13に示す限定されない一例のように、上面9の正面視において、第2端21aを通るとともに第1下辺21に直交する断面が、第2断面であってもよい。第2断面において、側面13(第1側面23)が凹形状であってもよい。この場合には、側面13(第1側面23)が被削材に接触しにくい。
【0038】
図11に示す限定されない一例のように、第1側面23の正面視(側面視)において、第1上辺19は、上方に向かって突出した凸形状であってもよい。また、第1側面23の正面視において、第1上辺19は、下面11から最も離れて位置する第3端19bを有してもよい。第1側面23の正面視において、第3端19bは、第2端21aの直上に位置してもよい。これらの場合には、上切刃15を用いて切削加工物を製造する際には、第3端19bによって第2端21aが被削材に接触しにくい。また、下切刃17を用いて切削加工物を製造する際には、第2端21aによって第3端19bが被削材に接触しにくい。
【0039】
なお、上記した第2端21aに対する第3端19bの位置関係は、第1側面23の正面視において、第2端21a及び第3端19bを結ぶ仮想直線L2が、中心軸O2に対して平行である、と言い換えてもよい。平行とは、厳密な平行に限定されず、±5°程度の傾斜を許容することを意味してもよい。
【0040】
第1側面23の正面視において、第1下辺21は、下方に向かって突出した凸形状であってもよい。また、第1側面23の正面視において、第1下辺21は、上面9から最も離れて位置する第4端21bを有してもよい。第1側面23の正面視において、第4端21bは、第1端19aの直下に位置してもよい。これらの場合には、上切刃15を用いて切削加工物を製造する際には、第1端19aによって第4端21bが被削材に接触しにくい。また、下切刃17を用いて切削加工物を製造する際には、第4端21bによって第1端19aが被削材に接触しにくい。
【0041】
なお、上記した第1端19aに対する第4端21bの位置関係は、第1側面23の正面視において、第1端19a及び第4端21bを結ぶ仮想直線L3が、中心軸O2に対して平行である、と言い換えてもよい。
【0042】
上面9は、図7に示す限定されない一例のように、上傾斜面31、及び、上平坦面33を有してもよい。上傾斜面31は、上切刃15に沿って位置してもよい。また、上傾斜面31は、上切刃15から離れるにしたがって下面11に近づいてもよい。上平坦面33は、上傾斜面31よりも上面9の中央(中心)の近くに位置してもよい。上平坦面33は、平坦な面であってもよい。平坦とは、概ね平坦であればよく、厳密な意味での平坦である必要はない。
【0043】
上傾斜面31は、上切刃15を用いて被削材を切削する際にすくい面領域として用いられてもよい。また、上平坦面33は、下切刃17を用いて被削材を切削する場合であって、インサート5をホルダ3に固定する際に、ホルダ3に当接(接触)する面として用いられてもよい。この場合、上平坦面33は座面として位置づけられてもよい。なお、上平坦面33は、中心軸O2に対して垂直であってもよい。垂直とは、厳密な垂直に限定されず、90°±5°程度の範囲を許容することを意味してもよい。
【0044】
上平坦面33は、先端1bの側に位置する第5端33aを有してもよい。より具体的には、上平坦面33は、上平坦面33における最も先端1bの側に位置する第5端33aを有してもよい。第5端33aは、第2側面25よりも第3側面27の近くに位置してもよい。言い換えれば、第5端33a及び第3側面27の間隔が、第5端33a及び第2側面25の間隔よりも小さくてもよい。上平坦面33がホルダ3への座面として用いられる場合において、第5端33aが上記に位置する際に、第5端33aが回転工具1における外周の近くに位置し易い。そのため、インサート5が安定してホルダ3に保持され易い。
【0045】
第3側面27は、第1端19aよりも第5端33aの近くに位置してもよい。言い換えれば、第3側面27及び第5端33aの間隔が、第3側面27及び第1端19aの間隔よりも小さくてもよい。上平坦面33が座面として用いられる場合において、第5端33aが上記に位置する際に、インサート5がより安定してホルダ3に保持され易い。
【0046】
下面11は、図9に示す限定されない一例のように、下傾斜面35、及び、下平坦面37を有してもよい。下傾斜面35は、下切刃17に沿って位置してもよい。また、下傾斜面35は、下切刃17から離れるにしたがって上面9に近づいてもよい。下平坦面37は、下傾斜面35よりも下面11の中央(中心)の近くに位置してもよい。下平坦面37は、平坦な面であってもよい。
【0047】
下傾斜面35は、下切刃17を用いて被削材を切削する際にすくい面領域として用いられてもよい。また、下平坦面37は、上切刃15を用いて被削材を切削する場合であって、インサート5をホルダ3に固定する際に、ホルダ3に当接(接触)する面として用いられてもよい。この場合、下平坦面37は座面として位置づけられてもよい。なお、下平坦面37は、中心軸O2に対して垂直であってもよい。
【0048】
下平坦面37は、先端1bの側に位置する第6端37aを有してもよい。より具体的には、下平坦面37は、下平坦面37における最も先端1bの側に位置する第6端37aを有してもよい。第6端37aは、第3側面27よりも第2側面25の近くに位置してもよい。言い換えれば、第6端37a及び第2側面25の間隔が、第6端37a及び第3側面27の間隔よりも小さくてもよい。下平坦面37がホルダ3への座面として用いられる場合において、第6端37aが上記に位置する際に、第6端37aが回転工具1における外周の近くに位置し易い。そのため、インサート5が安定してホルダ3に保持され易い。
【0049】
第2側面25は、第2端21aよりも第6端37aの近くに位置してもよい。言い換えれば、第2側面25及び第6端37aの間隔が、第2側面25及び第2端21aの間隔よりも小さくてもよい。下平坦面37が座面として用いられる場合において、第6端37aが上記に位置する際に、インサート5がより安定してホルダ3に保持され易い。
【0050】
インサート5は、貫通孔39を有してもよい。貫通孔39は、インサート5をホルダ3に固定する際に、例えば、ネジを挿入するために用いることが可能である。なお、インサート5をホルダ3に固定する際には、ネジの代わりに、例えば、クランプ部材を用いてもよい。
【0051】
貫通孔39は、側面13における互いに反対側に位置する領域において開口してもよく、また、上面9及び下面11において開口してもよい。図6に示す限定されない一例のように、貫通孔39は、上面9の中心及び下面11の中心において開口してもよい。貫通孔39の中心軸は、上面9の中心及び下面11の中心を通る仮想直線であってもよい。言い換えれば、貫通孔39の中心軸は、インサート5の中心軸O2と一致してもよい。
【0052】
インサート5は、上切刃15又は下切刃17の少なくとも一部がホルダ3から突出するようにポケット7に装着されてもよい。例えば、インサート5は、上切刃15がホルダ3から被削材に向かって突出するようにホルダ3に装着されてもよい。この場合には、下面11及び側面13がホルダ3に当接してもよい。
【0053】
インサート5は、ネジ41によって、ポケット7に装着されてもよい。すなわち、インサート5の貫通孔39にネジ41を挿入し、このネジ41の先端をポケット7に形成されたネジ孔に挿入して、ネジ41をネジ孔に固定させることによって、インサート5がホルダ3に装着されてもよい。
【0054】
ホルダ3の材質としては、例えば、鋼及び鋳鉄などが挙げられ得る。ホルダ3の材質が鋼の場合には、ホルダ3の靱性が高い。
【0055】
インサート5の材質としては、例えば、超硬合金及びサーメットなどが挙げられ得る。超硬合金の組成としては、例えば、WC-Co、WC-TiC-Co及びWC-TiC-TaC-Coが挙げられ得る。ここで、WC、TiC及びTaCは硬質粒子であってもよく、また、Coは結合相であってもよい。
【0056】
また、サーメットは、セラミック成分に金属を複合させた焼結複合材料であってもよい。サーメットの一例として、炭化チタン(TiC)又は窒化チタン(TiN)を主成分としたチタン化合物が挙げられ得る。インサート5の材質が上記の組成に限定されないことは言うまでもない。
【0057】
インサート5の表面は、化学蒸着(CVD)法又は物理蒸着(PVD)法を用いて被膜でコーティングされてもよい。被膜の組成としては、例えば、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)及びアルミナ(Al23)などが挙げられ得る。
【0058】
<切削加工物の製造方法>
次に、本開示の限定されない一面の切削加工物203の製造方法について図14図16を用いて説明する。
【0059】
切削加工物203は、被削材201を切削加工することによって作製されてもよい。切削加工物203の製造方法は、以下の工程を備えてもよい。すなわち、
(1)上記の限定されない実施形態に代表される回転工具1を回転させる工程と、
(2)回転する回転工具1を被削材201に接触させる工程と、
(3)回転工具1を被削材201から離す工程と、
を備えてもよい。
【0060】
具体的には、まず、図14に示す限定されない一例のように、回転工具1を回転軸O1の周りでY1方向に回転させながら被削材201に相対的に近づけてもよい。次に、図15に示す限定されない一例のように、回転工具1における上切刃15を被削材201に接触させて、被削材201を切削してもよい。そして、図16に示す限定されない一例のように、回転工具1を被削材201から相対的に遠ざけてもよい。
【0061】
以上のような工程を経る場合には、優れた加工性を発揮することが可能となる。具体的には、本開示の限定されない一面の切削加工物203の製造方法において、回転工具1を用いる場合には、インサート5の側面13が被削材201に接触することを避けつつ、且つ、切削性が高い。そのため、仕上げ面の精度が高い切削加工物203を得ることが可能となる。
【0062】
なお、図14図16に示す限定されない一例では、それぞれの工程において、被削材201を固定するとともに回転工具1を動かしているが、当然ながらこのような形態に限定されない。
【0063】
例えば、(1)の工程において、被削材201を回転工具1に近づけてもよい。同様に、(3)の工程において、被削材201を回転工具1から遠ざけてもよい。切削加工を継続する場合には、回転工具1を回転させた状態を維持して、被削材201の異なる箇所にインサート5の上切刃15を接触させる工程を繰り返してもよい。
【0064】
被削材201の材質としては、例えば、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄及び非鉄金属などが挙げられ得る。
【符号の説明】
【0065】
1・・・回転工具
1a・・後端
1b・・先端
3・・・ホルダ
5・・・切削インサート(インサート)
7・・・ポケット
9・・・上面
11・・・下面
13・・・側面
15・・・上切刃
17・・・下切刃
19・・・第1上辺
19a・・第1端
19b・・第3端
21・・・第1下辺
21a・・第2端
21b・・第4端
23・・・第1側面
25・・・第2側面
27・・・第3側面
29・・・先端領域
31・・・上傾斜面
33・・・上平坦面
33a・・第5端
35・・・下傾斜面
37・・・下平坦面
37a・・第6端
39・・・貫通孔
41・・・ネジ
201・・・被削材
203・・・切削加工物
O1・・・回転軸
O2・・・中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16