(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】エアロゾル発生装置及びその発熱モジュール
(51)【国際特許分類】
A24F 40/46 20200101AFI20240514BHJP
H05B 3/14 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A24F40/46
H05B3/14
(21)【出願番号】P 2022542085
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(86)【国際出願番号】 CN2020136246
(87)【国際公開番号】W WO2021139491
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】202010017511.X
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519403945
【氏名又は名称】深▲せん▼麦時科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】張幸福
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/219584(WO,A1)
【文献】特表2019-520787(JP,A)
【文献】特開2018-157822(JP,A)
【文献】特表2019-518430(JP,A)
【文献】特表2018-504130(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110511001(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0255831(US,A1)
【文献】中国実用新案第209031260(CN,U)
【文献】特開2001-052845(JP,A)
【文献】特開2019-106984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
H05B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形のエアロゾル発生装置に用いられる発熱モジュールであって、
前記発熱モジュールは、縦長のシート状絶縁マトリックス(121)と、前記
絶縁マトリックス(121)に一体的に焼結される発熱体(122)を含み
、
前記絶縁マトリックス(121)は対向する2つの表面を厚さ方向に貫通する貫通孔(1210)を含み、前記発熱体(122)は前記貫通孔(1210)内に嵌設され、
前記エアロゾル発生装置は取り外し可能に挿入される固形のエアロゾル発生基質に用いられる、ことを特徴とする発熱モジュール。
【請求項2】
前記マトリックス(121)は絶縁セラミックスであり、前記マトリックス(121)は、対向する2つの表面を厚さ方向に貫通する貫通孔(1210)を含み、
前記発熱体(122)は前記貫通孔(1210)内に嵌設され、前記発熱体(122)は少なくとも1つの導電性セラミックスを含むことを特徴とする請求項1に記載の発熱モジュール。
【請求項3】
前記発熱体(122)の中心軸線は前記マトリックス(121)の中心軸線と重なっており、
前記発熱体(122)は、縦向きに平行に間隔を置いて設置される2つの発熱アーム(1221)と、前記2つの発熱アーム(1221)を上端で直列に接続する接続部(1222)を含むことを特徴とする請求項2に記載の発熱モジュール。
【請求項4】
前記マトリックス(121)は上部に位置する尖端(1214)を含み、前記尖端(1214)はV字状をなしており、前記尖端(1214)の2つの尖端縁の夾角は60~120度であることを特徴とする請求項2に記載の発熱モジュール。
【請求項5】
前記発熱体(122)の厚さ方向における対向する2つの表面は、それぞれ、前記マトリックス(121)の厚さ方向における対向する2つの表面と面一であることを特徴とする請求項2に記載の発熱モジュール。
【請求項6】
前記絶縁セラミックスは、熱伝導性のセラミックス粉末で形成され、前記絶縁セラミックスは、酸化アルミニウム、ジルコニア、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素のうちの少なくとも1つを含み、
前記少なくとも1つの導電性セラミックスは高速イオン伝導体材料を含むことを特徴とする請求項2に記載の発熱モジュール。
【請求項7】
前記発熱体(122)は、少なくとも2つの並列又は直列の導電性セラミックスを含むことを特徴とする請求項2に記載の発熱モジュール。
【請求項8】
前記発熱モジュールは、更に、前記発熱体(122)の外部を覆う保護層を含み、前記保護層は、ガラス釉を焼成して形成される釉層であることを特徴とする請求項2に記載の発熱モジュール。
【請求項9】
前記発熱モジュールは、更に、前記マトリックス(121)の底部に設置される装着ベース(124)を含むことを特徴とする請求項2に記載の発熱モジュール。
【請求項10】
前記マトリックス(121)の底部の厚さ方向における対向する2つの側には装着部(1215)が形成されており、前記マトリックス(121)は、前記装着部(1215)を介して前記装着ベース(124)に凹凸により組み合わされることを特徴とする請求項9に記載の発熱モジュール。
【請求項11】
前記マトリックス(121)は、厚さが0.3~2.0mmであり、長さが18~31mmであり、幅が2~8mmであることを特徴とする請求項2に記載の発熱モジュール。
【請求項12】
前記発熱体(122)は、縦方向に前記マトリックス(121)の底端面まで延伸しており、
前記発熱モジュールは、更に、前記発熱体(122)にそれぞれ電気的に接続される2本の電極リード線(123)を含み、前記2本の電極リード線(123)は前記発熱体(122)の内部に埋設されることを特徴とする請求項2~11のいずれか1項に記載の発熱モジュール。
【請求項13】
前記発熱体(122)の底端面と前記マトリックス(121)の底端面との間には距離が存在し、
前記マトリックス(121)は、装着ベース(124)に接続される基部(1211)、エアロゾル発生基質(2)に挿入される挿入部(1213)、及び前記基部(1211)と前記挿入部(1213)を接続する中継部(1212)を含むことを特徴とする請求項2~11のいずれか1項に記載の発熱モジュール。
【請求項14】
前記発熱モジュールは、更に、前記発熱体(122)の底部における一方の側の表面に設置される導電層(125)を含み、前記導電層(125)は、スクリーン印刷又はコーティングにより前記マトリックス(121)の表面に形成されることを特徴とする請求項13に記載の発熱モジュール。
【請求項15】
前記発熱モジュールは、更に、前記導電層(125)にそれぞれ電気的に接続される2本の電極リード線(123)を含み、前記2本の電極リード線(123)の一端は、それぞれ、掛接方式で前記導電層(125)に溶接されることを特徴とする請求項14に記載の発熱モジュール。
【請求項16】
前記発熱モジュールは、更に、前記マトリックス(121)内に埋設され、且つ前記マトリックス(121)に一体的に焼結される2つの絶縁性の接続体(126)を含み、
前記2つの絶縁性の接続体(126)は絶縁セラミックスであり、前記2つの絶縁性の接続体(126)は、それぞれ前記発熱体(122)の両端に設置されることを特徴とする請求項13に記載の発熱モジュール。
【請求項17】
前記発熱モジュールは、更に、前記発熱体(122)にそれぞれ電気的に接続される2本の電極リード線(123)を含み、前記2本の電極リード線(123)は、それぞれ前記2つの絶縁性の接続体(126)の内部に埋設されることを特徴とする請求項16に記載の発熱モジュール。
【請求項18】
前記発熱体(122)の底端面は前記装着ベース(124)の上端面よりも高く、且つ、前記中継部(1212)の上端面よりも低いことを特徴とする請求項13に記載の発熱モジュール。
【請求項19】
前記基部(1211)の長さは5~10mmであり、前記挿入部(1213)の長さは10~18mmであることを特徴とする請求項18に記載の発熱モジュール。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の発熱モジュールを含むことを特徴とするエアロゾル発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、霧化の分野に関し、より具体的には、エアロゾル発生装置及びその発熱モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
非燃焼・加熱式電子タバコは、低温加熱式喫煙具とも称され、主として、発熱モジュールの通電後に温度を正確に制御してタバコ葉を加熱により霧化することで、低温条件下でタバコ葉内のタバコ葉抽出物を速やかに放出可能とする。これにより、消費者に従来の紙巻タバコを吸うときと同等の感覚を与えられるにも関わらず、放出される有害成分はより少なくなる。現在、国内外において、タバコ葉等のエアロゾル発生基質を加熱するための異なるタイプの発熱モジュールが登場している。
【0003】
現在のところ、発熱モジュールの加熱方式は、パイプ式の外周加熱又は中心嵌入加熱が一般的である。前者は加熱管でタバコスティックの外側を包囲するものを指し、後者は加熱チップ又は加熱ロッドをタバコスティック内に挿入するものを言う。加熱チップは、製造が容易である点や、使用しやすさ等の特性から幅広く応用されている。しかし、従来の加熱チップの導電軌道は、スクリーン印刷やコーティングによって絶縁セラミックス等のシート状基材の表面に形成されるのが一般的である。そのため、加熱チップを何度も抜き差しする過程で、導電軌道が加熱チップから浮き上がりやすく、接触不良が形成される結果、霧化効果に支障をきたしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術における上記の欠点に対し、改良した発熱モジュール及び当該発熱モジュールを有するエアロゾル発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が技術的課題を解決するために採用する技術方案は以下の通りである。
【0006】
即ち、エアロゾル発生装置に用いられる発熱モジュールを構成する。当該発熱モジュールは、縦長のシート状絶縁マトリックスと、前記マトリックスに一体的に焼結される発熱体を含む。
【0007】
いくつかの実施例において、前記マトリックスは絶縁セラミックスである。前記マトリックスは、対向する2つの表面を厚さ方向に貫通する貫通孔を含む。
【0008】
前記発熱体は前記貫通孔内に嵌設される。前記発熱体は少なくとも1つの導電性セラミックスを含む。
【0009】
いくつかの実施例において、前記発熱体の中心軸線は前記マトリックスの中心軸線と重なっている。
【0010】
前記発熱体は、縦向きに平行に間隔を置いて設置される2つの発熱アームと、前記2つの発熱アームを上端で直列に接続する接続部を含む。
【0011】
いくつかの実施例において、前記マトリックスは上部に位置する尖端を含む。前記尖端はV字状をなしており、前記尖端の2つの尖端縁の夾角は60~120度である。
【0012】
いくつかの実施例において、前記発熱体の厚さ方向における対向する2つの表面は、それぞれ、前記マトリックスの厚さ方向における対向する2つの表面と面一である。
【0013】
いくつかの実施例において、前記絶縁セラミックスは、熱伝導性のセラミックス粉末で形成される。前記絶縁セラミックスは、酸化アルミニウム、ジルコニア、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
前記少なくとも1つの導電性セラミックスは高速イオン伝導体材料を含む。
【0015】
いくつかの実施例において、前記発熱体は、少なくとも2つの並列又は直列の導電性セラミックスを含む。
【0016】
いくつかの実施例において、前記発熱モジュールは、更に、前記発熱体の外部を覆う保護層を含む。前記保護層は、ガラス釉を焼成して形成される釉層である。
【0017】
いくつかの実施例において、前記発熱モジュールは、更に、前記マトリックスの底部に設置される装着ベースを含む。
【0018】
いくつかの実施例において、前記マトリックスの底部の厚さ方向における対向する2つの側には装着部が形成されており、前記マトリックスは、前記装着部を介して前記装着ベースに凹凸により組み合わされる。
【0019】
いくつかの実施例において、前記マトリックスは、厚さが0.3~2.0mmであり、長さが18~31mmであり、幅が2~8mmである。
【0020】
いくつかの実施例において、前記発熱体は、縦方向に前記マトリックスの底端面まで延伸している。
【0021】
前記発熱モジュールは、更に、前記発熱体にそれぞれ電気的に接続される2本の電極リード線を含む。前記2本の電極リード線は前記発熱体の内部に埋設される。
【0022】
いくつかの実施例において、前記発熱体の底端面と前記マトリックスの底端面との間には距離が存在する。
【0023】
前記マトリックスは、装着ベースに接続される基部、エアロゾル発生基質に挿入される挿入部、及び前記基部と前記挿入部を接続する中継部を含む。
【0024】
いくつかの実施例において、前記発熱モジュールは、更に、前記発熱体の底部における一方の側の表面に設置される導電層を含む。前記導電層は、スクリーン印刷又はコーティングにより前記マトリックスの表面に形成される。
【0025】
いくつかの実施例において、前記発熱モジュールは、更に、前記導電層にそれぞれ電気的に接続される2本の電極リード線を含む。前記2本の電極リード線の一端は、それぞれ、掛接方式で前記導電層に溶接される。
【0026】
いくつかの実施例において、前記発熱モジュールは、更に、前記マトリックス内に埋設され、且つ前記マトリックスに一体的に焼結される2つの絶縁性の接続体を含む。
【0027】
前記2つの絶縁性の接続体は絶縁セラミックスであり、前記2つの絶縁性の接続体は、それぞれ前記発熱体の両端に設置される。
【0028】
いくつかの実施例において、前記発熱モジュールは、更に、前記発熱体にそれぞれ電気的に接続される2本の電極リード線を含む。前記2本の電極リード線は、それぞれ前記2つの絶縁性の接続体の内部に埋設される。
【0029】
いくつかの実施例において、前記発熱体の底端面は前記装着ベースの上端面よりも高く、且つ、前記中継部の上端面よりも低い。
【0030】
いくつかの実施例において、前記基部の長さは5~10mmであり、前記挿入部の長さは10~18mmである。
【0031】
本発明は、更に、上記いずれかで述べた発熱モジュールを含むエアロゾル発生装置を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明を実施することで、少なくとも以下の有益な効果を有する。即ち、発熱体と絶縁マトリックスを一体的に焼結することで、発熱体と絶縁マトリックスとの結合力を大幅に向上させられる。これにより、発熱モジュールを何度も抜き差しすることによる発熱体の接触不良又は浮き上がりが効果的に回避されて、霧化効果が最適化される。
【0033】
以下に、図面と実施例を組み合わせて、本発明につき更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明のいくつかの実施例における使用状態のエアロゾル発生装置の立体構造の概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すエアロゾル発生装置の断面構造の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施例における発熱モジュールの断面構造の概略図である。
【
図5a】
図5aは、本発明の第2実施例における発熱モジュールの平面構造の概略図である。
【
図5b】
図5bは、
図5aに示す発熱モジュールの第1の代替方案の平面構造の概略図である。
【
図5c】
図5cは、
図5aに示す発熱モジュールの第2の代替方案の平面構造の概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施例における発熱モジュールの断面構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の技術的特徴、目的及び効果がより明瞭に理解されるよう、図面を参照して本発明の具体的実施形態につき詳細に説明する。
【0036】
図1~2は、本発明のいくつかの実施例におけるエアロゾル発生装置1を示す。当該エアロゾル発生装置1は、取り外し可能に挿入される固形のエアロゾル発生基質2(例えば、タバコスティック)をロースト加熱することで、非燃焼状態でエアロゾル発生基質2内の抽出物を放出するために使用可能である。図示するように、いくつかの実施例において、エアロゾル発生基質2は円柱状とすることができる。エアロゾル発生装置1の上部には、エアロゾル発生基質2に適応するサイズの収容室10が設けられている。収容室10の上部は開放されており、エアロゾル発生基質2は、当該上部の開放口から収容室10内に挿入可能である。収容室10の近傍には、不使用時に当該収容室10を覆って収容室10への異物の進入を防止するためのスライド蓋15を設置可能である。
【0037】
いくつかの実施例において、当該エアロゾル発生装置1は、ハウジング11と、当該ハウジング11内に設置される発熱モジュール12、電池13及びマザーボード14を含み得る。マザーボード14は、発熱モジュール12、電池13に電気的に接続される。発熱モジュール12は、収容室10の底部から縦方向に収容室10内に伸入可能であり、エアロゾル発生基質2内に挿入されて、エアロゾル発生基質2にしっかりと接触する。電池13から電気が供給されると、発熱モジュール12は、収容室10内に挿入されたエアロゾル発生基質2をロースト加熱する。
【0038】
発熱モジュール12は、縦長のシート状絶縁マトリックス121、当該マトリックス121に結合される発熱体122、及び当該発熱体122にそれぞれ電気的に接続される2本の電極リード線123を含み得る。当該発熱体122の中心軸線は、発熱が均一となるよう、マトリックス121の中心軸線と重なっている。2本の電極リード線123は、電池13の正極及び負極にそれぞれ電気的に接続されて、当該発熱体122を電池13の正極及び負極に電気的に接続する。発熱体122とマトリックス121は一体的に焼結されている。焼結温度は1000度程度とすればよい。焼結成形方式によって、発熱体122とマトリックス121との結合力を大幅に向上させられるため、発熱モジュール12を何度も抜き差しすることによる発熱体122の接触不良又は浮き上がりが効果的に回避され、霧化効果が最適化される。
【0039】
いくつかの実施例において、当該マトリックス121は絶縁セラミックスとすることができる。絶縁セラミックスは、熱伝導性のセラミックス粉末で形成可能であり、酸化アルミニウム(Al2O3)、ジルコニア(ZrO)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0040】
発熱体122は、1つの導電性セラミックスで構成してもよいし、2つ又は2つ以上の直列或いは並列の導電性セラミックスで構成してもよい。導電性セラミックスは、結晶構造が次の4つの特徴を有する高速イオン伝導体材料とすることができる。
(1)特定の位置を占有するイオンで構造の主体が構成される。
(2)可動イオン数を遥かに超える数の大量の空位を有しており、移動するイオンが占有し得る空位が無秩序な副格子内に常に存在している。
(3)副格子の格子間にほぼ等しいエネルギー及び相対的に低い活性化エネルギーを有している。
(4)有利な経路で移動し得るよう、格子間に常に通路が存在している。
【0041】
何らかの高速イオン伝導体、特に、化学的計量化を満たす化合物の場合、低温下ではイオン伝導性の秩序構造が存在するが、高温下では、副格子構造が液体のような無秩序に変化することで、イオン運動が非常に容易となる。
【0042】
一般的な高速イオン伝導性セラミックス材料には、次の3種類が含まれる。
【0043】
(1)化合物中の金属原子の結合位置が比較的自由な銀、銅のハロゲン化物及びカルコゲン化物。例えば、α-AgI、Ag2S、Ag3SI、CuS、CuCl。
【0044】
(2)β-Al2O3構造を有する高移動度の1価のカチオン酸化物。例えば、Na2O・11Al2O3、Na3Zr2PO12。
【0045】
(3)フッ化カルシウム(CaF2)構造の高濃度欠陥を有する酸化物。例えば、CaO・ZrO2、Y2O3・ZrO2。
【0046】
マトリックス121には、対向する2つの表面を厚さ方向に貫通する貫通孔1210が開設されている。いくつかの実施例において、貫通孔1210は略U型をなし得る。当該発熱体122は貫通孔1210内に嵌設され、これに応じて、発熱体122は略U型をなしている。当該発熱体122の厚さ方向における対向する2つの面が、それぞれ、マトリックス121の厚さ方向における対向する2つの面と面一になるよう、当該発熱体122とマトリックス121の厚さは一致している。
【0047】
いくつかの実施例において、当該発熱モジュール12は、マトリックス121の装着及び固定に用いられる装着ベース124を更に含み得る。装着ベース124は、マトリックス121を成型したあと、プラスチックと2色成形することで形成すればよい。また、マトリックス121の底部の厚さ方向における対向する2つの側には装着部1215を形成可能である。マトリックス121は、2色射出成形時に装着ベース124との結合力が強化されるよう、装着部1215を介して装着ベース124に凹凸により組み合わされる。装着部1215は、孔、溝又は突起等の構造とすることができる。その他のいくつかの実施例において、装着部1215はマトリックス121の一方の側にのみ形成してもよい。また、装着ベース124をその他の構造形式としてもよい。例えば、マトリックス121の底部の厚さ又は幅方向における対向する2つの側が、それぞれ一体的に外側へ延伸することで装着ベース124を形成してもよい。或いは、装着ベース124及びマトリックス121をそれぞれ単独で製造してから組み付けてもよい。
【0048】
図3~4は、本発明の第1実施例における発熱モジュール12を示す。本実施例において、発熱体122は、縦方向にマトリックス121の底端面まで延伸可能である。また、2本の電極リード線123を当該発熱体122の内部に直接埋め込み可能である。
【0049】
いくつかの実施例において、マトリックス121は、固定に用いられる基部1211、エアロゾル発生基質2に挿入される挿入部1213、及び基部1211と挿入部1213を接続する中継部1212を含み得る。本実施例において、基部1211、中継部1212、挿入部1213の幅は一致している。当該幅Wは、2~8mmとすればよく、好ましくは4~6mmである。また、基部1211の長さL1は5~10mmとすればよい。装着部1215は基部1211に形成される。また、装着ベース124は、基部1211の長さの範囲内に設置すればよい。挿入部1213の長さL2は10~18mmとすればよい。また、マトリックス121の全体的な長さL3は18~31mmとすればよい。マトリックス121の厚さTは0.3~2.0mmとすればよい。
【0050】
いくつかの実施例において、挿入部1213は、エアロゾル発生基質2に挿入しやすいよう、上部に位置する尖端1214を含み得る。当該尖端1214は略V字状をなしており、2つの尖端縁の夾角αを60~120度とすればよい。その他の実施形態において、尖端1214は、例えば、円弧状、台形又は弧状というように、案内機能を有し、且つ幅が基部に向かうほど徐々に増大するその他の形状であってもよい。
【0051】
発熱体122は、縦向きに平行に間隔を置いて設置される2つの縦長の発熱アーム1221と、当該2つの発熱アーム1221を上端で直列に接続する接続部1222を含み得る。2本の電極リード線123は、それぞれ当該2つの発熱アーム1221の底部に埋設される。本実施例において、発熱アーム1221は、縦長方向において幅が一致している。その他の実施例において、当該発熱アーム1221は、縦長方向において幅が一致していなくてもよい。例えば、発熱アーム1221の幅は、上が広く下が狭くてもよいし、上が狭く下が広くてもよい。
【0052】
接続部1222は略V字状をなしており、2つの尖端縁が、マトリックス121の尖端1214における2つの尖端縁とそれぞれ平行になっている。接続部1222の2つの尖端縁は、それぞれ尖端1214の2つの尖端縁との距離が一致しているため、均一な発熱にとって有利である。
【0053】
発熱体122の外表面は、更に保護層で覆ってもよく、例えば、ガラス釉を焼成して形成される釉層を使用する。一般的に、当該層の厚さは0.1mm未満とする。当該保護層は、酸素や不純物による発熱体122の浸食作用を低下可能とするため、加熱時の発熱体122とエアロゾル発生基質2との反応発生が防止される。また、平滑度を向上させられるため、加熱後のエアロゾル発生基質2が発熱体122に付着するとの事態が減少する。
【0054】
図5aは、本発明の第2実施例における発熱モジュール12を示す。本実施例において、発熱体122の底端面とマトリックス121の底端面との間には一定の距離が存在している。また、2本の電極リード線123を接続するために、発熱体122の底部には導電層125を設置可能である。導電層125は、スクリーン印刷又はコーティングによりマトリックス121の表面に形成可能であり、且つ、発熱体122の底部の両端にそれぞれ接続される。導電層125には、例えば、Ag、Au、Cuといった抵抗率が小さく、発熱の少ない材料を採用すればよい。2本の電極リード線123の一端は、それぞれ、掛接方式で導電層125に溶接すればよい。本実施形態において、導電層125は発熱体122の同一側に設置され、これに対応して、2本の電極リード線123は発熱体122の同一側に設置される。また、その他の実施形態では、導電層125を発熱体122の両側に設置し、これに対応して、2本の電極リード線123を発熱体122の両側にそれぞれ設置してもよい。
【0055】
発熱体122は、縦向きに平行に間隔を置いて設置される2つの縦長の発熱アーム1221と、当該2つの発熱アーム1221を上端で直列に接続する接続部1222を含み得る。本実施例において、各発熱アーム1221は、いずれも下から上へ順次直列に接続される第1発熱部1221a、第2発熱部1221b及び第3発熱部1221cを含む。当該第1発熱部1221a、第2発熱部1221b及び第3発熱部1221cの幅は順に増大している。これにより、当該第1発熱部1221a、第2発熱部1221b及び第3発熱部1221cの電気抵抗が順に増加するため、エアロゾル発生基質2が一段とバランスよく加熱及びローストされる。発熱体122に勾配を有する電気抵抗分布を採用することで、発熱モジュール12はより良好なエネルギー利用率とより良好な温度場を有する。これにより、吸入時にベイパー量が増大し、吸入時の口当たりが一段と良好になる等の利点を有する。理解可能なように、発熱アーム1221は、電気抵抗が徐々に低減する3段式の構造に限らず、2段又は3段以上であってもよい。
【0056】
第1実施例と同様に、本実施例においても、マトリックス121は、固定に用いられる基部1211、エアロゾル発生基質2に挿入される挿入部1213、及び基部1211と挿入部1213を接続する中継部1212を含む。導電層125は、基部1211と中継部1212に設置可能である。導電層125の上端面(即ち、発熱体122の底端面)は、基部1211の上端面よりも高くなっている。これにより、装着ベース124の上端面と発熱体122の底端面との間に隙間ができるため、断熱に有利となる。発熱体122の底端面は、中継部1212の上端面より低くてもよい。これにより、エアロゾル発生基質2の下部が発熱体122の全てに接触するため、完全にローストするのに有利である。また、その他の実施例において、
図5bに示すように、発熱体122の底端面は中継部1212の上端面と面一であってもよい。また、その他のいくつかの実施例において、
図5cに示すように、発熱体122の底端面は中継部1212の
上端面よりやや高くてもよい。
【0057】
発熱体122は、縦向きに平行に間隔を置いて設置される2つの縦長の発熱アーム1221と、当該2つの発熱アーム1221を上端で直列に接続する接続部1222を含み得る。本実施例において、各発熱アーム1221は、いずれも下から上へ順次直列に接続される第1発熱部1221a、第2発熱部1221b及び第3発熱部1221cを含む。当該第1発熱部1221a、第2発熱部1221b及び第3発熱部1221cの幅は順に増大している。これにより、当該第1発熱部1221a、第2発熱部1221b及び第3発熱部1221cの電気抵抗が順に増加するため、エアロゾル発生基質2が一段とバランスよく加熱及びローストされる。発熱体122に勾配を有する電気抵抗分布を採用することで、発熱モジュール12はより良好なエネルギー利用率とより良好な温度場を有する。これにより、吸入時にベイパー量が増大し、吸入時の口当たりが一段と良好になる等の利点を有する。理解可能なように、発熱アーム1221は、電気抵抗が徐々に低減する3段式の構造に限らず、2段又は3段以上であってもよい。
【0058】
図6は、本発明の第3実施例における発熱モジュール12を示す。本実施例において、発熱体122の底端面とマトリックス121の底端面との間には一定の距離が存在している。当該発熱モジュール12は、更に、マトリックス121の貫通孔1210の両端(即ち、発熱体122の両端)にそれぞれ埋設される2つの絶縁性の接続体126を含み得る。当該2つの接続体126の底端面は、それぞれ縦向きにマトリックス121の底端面まで延伸し得る。当該2つの接続体126は、発熱体122、マトリックス121に一体的に焼結される。また、2本の電極リード線123がそれぞれ当該2つの接続体126内に埋設される。いくつかの実施例において、接続体126は絶縁セラミックスとすることができる。接続体126の構成材料は、マトリックス121の構成材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0059】
第1実施例と同様に、本実施例においても、マトリックス121は、固定に用いられる基部1211、エアロゾル発生基質2に挿入される挿入部1213、及び基部1211と挿入部1213を接続する中継部1212を含む。接続体126の上端面(即ち、発熱体122の底端面)は、基部1211の上端面よりも高くなっている。これにより、装着ベース124と発熱体122の間に隙間ができるため、断熱に有利となる。発熱体122の底端面は、中継部1212の上端面より低くてもよい。これにより、エアロゾル発生基質2の下部が発熱体122の全てに接触するため、完全にローストするのに有利である。その他の実施例において、発熱体122の底端面は中継部1212の上端面と面一であってもよいし、中継部1212の上端面よりやや高くてもよい。
【0060】
理解し得るように、上記の各技術的特徴は、制限なく任意に組み合わせて使用することが可能である。
【0061】
以上の実施例は本発明の好ましい実施形態を示したにすぎず、比較的具体的且つ詳細に記載したが、これにより本発明の権利範囲が制限されると解釈すべきではない。指摘すべき点として、当業者であれば、本発明の構想を逸脱しないことを前提に、上記の技術的特性を自由に組み合わせることも、若干の変形及び改良を行うことも可能であり、これらはいずれも本発明の保護の範囲に属する。従って、本発明の特許請求の範囲で行われる等価の変形及び補足は、いずれも本発明の請求項がカバーする範囲に属する。