IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベットの特許一覧

特許7488344メタノール製造のための方法及び反応装置
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】メタノール製造のための方法及び反応装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/152 20060101AFI20240514BHJP
   C07C 29/76 20060101ALI20240514BHJP
   C07C 31/04 20060101ALI20240514BHJP
   C01B 3/50 20060101ALI20240514BHJP
   B01J 23/80 20060101ALI20240514BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
C07C29/152
C07C29/76
C07C31/04
C01B3/50
B01J23/80 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022547685
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 EP2021052262
(87)【国際公開番号】W WO2021156179
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2024-01-29
(31)【優先権主張番号】PA202000146
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シェルネホフ・エーミル・アンドレアス
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/063872(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/121980(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0016655(US,A1)
【文献】特開平7-304698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C01B
B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールの製造方法であって、次のステップ
(a)水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含む新鮮なメタノール合成ガスを提供するステップ;
(b)前記の新鮮なメタノール合成ガスの流れを、メタノール触媒の存在下に第一のメタノール反応ユニット中に導入して反応させて、メタノール及び未転化合成ガスを含む第一の流出物流を得るステップ;
(c)前記第一の流出物流に含まれる未転化のメタノール合成ガスと、第二のメタノール反応ユニットからの未転化のメタノール合成ガスとを含む、リサイクルガス流を提供するステップ、
(d)前記リサイクルガス流を、メタノール触媒の存在下に、前記第二のメタノール反応ユニット中に導入して反応させるステップ;
(e)メタノールと未転化のメタノール合成ガスとを含む第二の流出物流を、前記の第二のメタノール反応ユニットから取り出すステップ;
(f)前記第一の流出物流と、前記第二の流出物流の一部とを組み合わせるステップ;
(g)前記の組み合わされた流出物を冷却して、メタノール含有液体流と前記リサイクル流とに分離するステップ;及び
(h)前記第二の流出物流の残部パージガス流として取り出すステップ、
を含み、ここで、第二の流出物流の前記残部が、前記第一及び第二の流出物流を組み合わせる前に、パージガス流として取り出される、
前記方法。
【請求項2】
前記パージガス流中に含まれる水素のうちの少なくとも一部を、回収し、そしてステップb)にリサイクルする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リサイクル流の一部を、前記第一のメタノール反応ユニット中に導入する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記新鮮なメタノール合成ガスの一部を、前記第二のメタノール反応ユニット中に導入する、請求項1~3のいずれか一つに記載の記載の方法。
【請求項5】
前記第一及び第二のメタノール反応ユニットが、直列に及び/または並行に接続された、沸騰水冷却式反応器、ガス冷却式反応器、急冷式反応器及び断熱式に稼働される反応器から選択される一基以上の反応器を含む、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
メタノール製造方法で使用するための反応装置であって、
それぞれメタノール触媒を含む第一及び第二のメタノール反応ユニット;
新鮮な合成ガスのプロセスガス流を、前記第一のメタノール反応ユニット中に導入するためのプロセスガス流通路、及び未転化の合成ガスを前記第二のメタノール反応ユニットに循環させるための循環通路;
第一のメタノール含有流出物流を前記第一の反応ユニットから取り出し、そして前記第二の反応ユニットから第二のメタノール含有流出物流を取り出すための第二の流出物通路中の混合点に送るための第一の流出物通路;
前記第二の流出物通路中の前記混合点の下流に配置された、未転化合成ガスからメタノールを分離するための分離手段;
前記第二のメタノール反応ユニットの上流に配置された、前記分離手段間の循環通路中に配置された循環器;及び
前記循環通路に接続され及び前記第二の流出物通路中の前記混合点の上流に配置されたパージガスライン、
を含む、前記反応装置。
【請求項7】
前記パージガスラインが、水素回収ユニットに接続されている、請求項6に記載の反応装置。
【請求項8】
新鮮な合成ガスのガス流に水素を送るために、前記水素回収ユニット及び前記プロセスガス流通路に接続された通路を更に含む、請求項6に記載の反応装置。
【請求項9】
未転化の合成ガスの一部を、前記循環通路から前記プロセスガス流通路に送るための分割流通路を更に含む、請求項6~8のいずれか一つに記載の反応装置。
【請求項10】
新鮮な合成ガスの前記プロセスガス流の一部を前記循環通路に送るための分割流通路を更に含む、請求項6~9のいずれか一つに記載の反応装置。
【請求項11】
前記第一及び第二の反応ユニットが、直列に及び/または並行に接続された、沸騰水冷却式反応器、ガス冷却式反応器、急冷式反応器及び断熱式に稼働される反応器から選択される一基以上のメタノール反応器を含む、請求項6~10のいずれか一つに記載の反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノール合成ガスの触媒転化によるメタノール製造方法、及びこの方法を実施するための反応装置に関する。
【0002】
より具体的には、メタノールは本発明によって二つの反応ユニットで製造され、この際、第一のユニットは、新鮮な合成ガスをベースにワンス・スルー(once-through)方式で稼働され、ここで、この新鮮な合成ガスは、場合により、第二の反応ユニットの流出物から分離された未転化の合成ガスと混合され、及び第二の反応ユニットは、場合により新鮮な合成ガスと混合された未転化の合成ガスを使用した合成ループで稼働される。
【背景技術】
【0003】
酸化炭素類及び水素からメタノールへの反応は、平衡制限的であり、メタノール触媒のワンパス当たりのメタノールへの合成ガスの転化率は、高反応性合成ガスを用いた場合でも比較的低い。
【0004】
ワンス・スルーメタノール合成方法における低いメタノール生産収率の故に、当技術分野における一般的なプラクチスは、反応流出物から分離された未転化の合成ガスをリサイクルし、そしてこのリサイクルガスで新鮮な合成ガスを希釈することである。
【0005】
その結果、これは、典型的には、直接に接続された一つ以上の反応器を備え、これらの反応器が、反応器流出物から分離器で分離されたリサイクルされた未転化ガスで希釈された新鮮な合成ガスを、またはメタノールと未転化合成ガスとを含む反応器流出物をベースに稼働される、いわゆるメタノール合成ループとなる。リサイクル比(リサイクルガス:新鮮な合成供給ガス)は、通常のプラクチスでは、1:1から7:1までである。
【0006】
ワンス・スルー式反応ユニットと、メタノール合成ループにおいてリサイクルされた未転化合成ガスをベースに稼働される反応ユニットとを備えたメタノールプロセス設計では、最適なガス組成物は、前記ワンス・スルー反応ユニットに、またはリサイクルされた未転化合成ガスをベースに稼働される反応ユニットに対し、リサイクルガス及び供給バイパスガスにより設定することができる。ワンス・スルー反応ユニットからの流出物は、合成ループにおける反応ユニットからの流出物と混合される。製造されたメタノールは、分離ユニットの上流での冷却後に、混合流出物から分離される。反応ユニットからの組み合わされた混合流出物中に含まれる分離された未転化合成ガスは、合成ループにおいて反応ユニットにリサイクルされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
装置の節約のために、メタノール含有流出ガスの冷却及び分離は、複合型冷却トレイン中で行うことができる。しかし、このような複合型冷却トレインは、二つの異なるリサイクルガス、すなわちワンス・スルー反応ユニットからのリサイクルガスと、合成ループ反応ユニットからのリサイクルガスとを混合する。不活性ガスの増加を防ぐためには、組み合わされたリサイクルされた未転化合成ガスの一部をループから排除する必要があり、それにより、活性反応体を必要以上に排除してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡潔さのために、以下の記載及び特許請求の範囲において、「ワンス・スルー反応ユニット」は、「第一のメタノール反応ユニット」と称し、そして「合成ループ反応ユニット」は、「第二のメタノール反応ユニット」と称す。
【0009】
以下の記載及び特許請求の範囲で使用される「メタノール触媒」という用語は、水素、一酸化炭素及び二酸化炭素からメタノールへの転化に活性な任意の触媒を指す。これらの触媒は、本発明の一部ではなく、特許文献に詳しく開示されているものである。
【0010】
本発明に使用するために好適なメタノール触媒は、一例としては、既知の銅-亜鉛ベース触媒である。
【0011】
それ故、本発明の主たる原理は、第二のメタノールユニットの流出物を第一の反応ユニットからの流出物と組み合わせる前に、第二のメタノール反応ユニットの流出物から高温のパージガスを取り出すことである。
【0012】
この高温のパージガスは、冷却トレインにおいて並びに不活性成分の最大含有量及び最低の活性において複合装置を可能とし、これは、僅か一つの追加の小型クーラーを用いて、あまりに多くの反応体を失うことなく、より効果的なパージを可能にする。
【0013】
「不活性」という用語は、メタノール合成において化学的に反応性ではない、メタノール合成ガスに含まれる成分を指す。
【0014】
それ故、本発明は、メタノールの製造方法であって、
(a)水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含む新鮮なメタノール合成ガスを提供するステップ;
(b)前記の新鮮なメタノール合成ガス流を、メタノール触媒の存在下に第一のメタノール反応ユニット中に導入して反応させ、そしてメタノールと未転化合成ガスとを含む第一の流出物流を得るステップ;
(c)前記第一の流出物流に含まれる未転化のメタノール合成ガスと、第二のメタノール反応ユニットからの未転化のメタノール合成ガスとを含む、リサイクルガス流を提供するステップ、
(d)前記リサイクルガス流を、メタノール触媒の存在下に、前記の第二のメタノール反応ユニット中に導入して反応させるステップ;
(e)メタノールと未転化のメタノール合成ガスとを含む第二の流出物流を、前記の第二のメタノール反応ユニットから取り出すステップ;
(f)前記第一の流出物流と、前記第二の流出物流の一部とを組み合わせるステップ;
(g)前記の組み合わされた流出物を冷却して、メタノール含有液体流とリサイクル流とに分離するステップ;及び
(h)前記第二の流出物流の残部パージガス流として取り出すステップ、
を含み、ここで、第二の流出物流の前記残部が、前記第一及び第二の流出物流を組み合わせる前に、パージガス流として取り出される、
前記方法である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による方法の一部の用途では、新鮮な合成ガスのモジュールM=(H-CO)/(CO+CO)を、このガスに水素を加えることにより調節することが望ましい。水素はパージガスから回収し、そして合成ガスコンプレッサより上流で該プロセスにリサイクルすることができる。
【0016】
それ故、本発明の一つの態様では、前記パージガス流に含まれる水素のうちの少なくとも一部は、回収され、そしてステップb)にリサイクルされる。
【0017】
前記第一のメタノール反応ユニットにおけるメタノール反応のための最適な条件を提供するためには、前記リサイクル流の一部は、更に他の態様では、第一のメタノール反応ユニット中に導入される。
【0018】
更に別の態様の一つでは、前記新鮮なメタノール合成ガスの一部は、第二のメタノール反応ユニット中に導入され、第二のメタノール反応ユニットにおけるメタノール合成のための最適な条件を供する。
【0019】
前記第一及び第二のメタノール反応ユニットは、直列に及び/または並行に接続された、沸騰水冷却式反応器、ガス冷却式反応器、急冷式反応器及び断熱式に稼働される反応器から選択される一基以上の反応器を含むことができる。
【0020】
更に本発明は、メタノール製造方法で使用するための反応装置を提供し、該装置は、
それぞれメタノール触媒を含む第一及び第二メタノール反応ユニット;
新鮮な合成ガスのプロセスガス流を、前記第一のメタノール反応ユニット中に導入するためのプロセスガス流通路、及び未転化の合成ガスを前記第二のメタノール反応ユニットに循環させるための循環通路;
第一のメタノール含有流出物流を前記第一の反応ユニットから取り出し、そして前記第二の反応ユニットから第二のメタノール含有流出物流を取り出すための第二の流出物通路中の混合点に送るための第一の流出物通路;
前記第二の流出物通路中の前記混合点の下流に配置された、未転化合成ガスからメタノールを分離するための分離手段;
前記第二のメタノール反応ユニットの上流に配置された、前記分離手段間の循環通路中に配置された循環器;及び
前記循環通路に接続され及び前記第二の流出物通路中の前記混合点の上流に配置されたパージガスライン、
を含む。
【0021】
本発明による反応装置の一つの態様では、前記パージガスラインは、水素回収ユニットに接続される。
【0022】
本発明の一つの態様では、新鮮な合成ガスのガス流に水素を送るために、通路が水素回収ユニット及びプロセスガス流通路に接続される。
【0023】
本発明の一つの態様では、該反応装置は、新鮮な合成ガスのガス流に水素を送るために、前記水素回収ユニット及び前記プロセスガス流通路に接続された通路を更に含む。
【0024】
本発明の態様の一つでは、該反応装置は、未転化の合成ガスの一部を、前記循環通路から前記プロセスガス流通路に送るための分割流通路を更に含む。
【0025】
本発明の態様の一つでは、該反応装置は、新鮮な合成ガスの前記プロセスガス流の一部を前記循環通路に送るための分割流通路を更に含む。
【0026】
上記の態様における前記第一及び第二の反応ユニットは、直列に及び/または並行に接続された、沸騰水冷却式反応器、ガス冷却式反応器、急冷式反応器及び断熱式に稼働される反応器から選択される一基以上のメタノール反応器を含むことができる。