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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】表面保護用塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/04 20060101AFI20240514BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20240514BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240514BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240514BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C09D167/04
C09D5/16
C09D7/61
B05D7/24 303B
B05D7/24 302V
B05D5/00 H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022552006
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2021034663
(87)【国際公開番号】W WO2022065323
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2020160954
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷野 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】筏井 淳内
(72)【発明者】
【氏名】今井 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】名部 玲乃
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌満
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/133284(WO,A1)
【文献】特開平4-230201(JP,A)
【文献】特開平11-199826(JP,A)
【文献】特開2004-300410(JP,A)
【文献】国際公開第2011/162359(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/221289(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカプロラクトン系重合体(A)酸化亜鉛(B)、及びモノカルボン酸化合物(C)を含有する表面保護用塗料組成物であり
ポリカプロラクトン系重合体(A)の酸価が、5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、かつ、
ポリカプロラクトン系重合体(A)中のカプロラクトンに由来する構成単位の含有量が、50質量%以上99.5質量%以下であり、
前記表面保護用塗料組成物が含有する重合体成分中、前記ポリカプロラクトン系重合体(A)の含有量が50質量%以上であり、
ポリカプロラクトン系重合体(A)100質量部に対する酸化亜鉛(B)の含有量が1質量部以上1,000質量部以下である、
表面保護用塗料組成物。
【請求項2】
前記ポリカプロラクトン系重合体(A)が、カルボン酸化合物(a)を開始剤とするε-カプロラクトンの重合反応により得られる重合体である、請求項1に記載の表面保護用塗料組成物。
【請求項3】
前記ポリカプロラクトン系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が、1,500以上50,000以下である、請求項1又は2に記載の表面保護用塗料組成物。
【請求項4】
前記表面保護用塗料組成物の固形分中の前記酸化亜鉛(B)の含有量が、0.5質量%以上80質量%以下である、請求項1~のいずれか1つに記載の表面保護用塗料組成物。
【請求項5】
前記表面保護用塗料組成物のキシレン/エタノール混合溶媒(キシレン/エタノール=70/30(質量比))可溶分の酸価が、10mgKOH/g以上500mgKOH/g以下である、請求項1~のいずれかに1つ記載の表面保護用塗料組成物。
【請求項6】
防汚塗料組成物である、請求項1~のいずれか1つに記載の表面保護用塗料組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1つに記載の表面保護用塗料組成物から形成された表面保護塗膜。
【請求項8】
請求項に記載の表面保護塗膜で被覆された表面保護塗膜付き基材。
【請求項9】
基材が、水に接する基材である、請求項に記載の表面保護塗膜付き基材。
【請求項10】
下記工程[1]及び[2]を含む、表面保護塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、請求項1~のいずれか1つに記載の表面保護用塗料組成物を塗装する工程
[2]基材上に塗装された表面保護用塗料組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
【請求項11】
請求項に記載された表面保護塗膜による表面保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護用塗料組成物、これを用いて形成された表面保護塗膜及び表面保護塗膜付き基材、表面塗膜付き基材の製造方法、並びに表面保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、海洋へのプラスチックの流入による環境問題が深刻化している。一方、人工構造物の表面の最も一般的な保護方法は塗膜によるものだが、通常、塗膜には有機ポリマーが多く含まれることから、偶発的な塗膜への機械的ダメージ等による塗膜片の剥落により、潜在的に海洋へのプラスチックの流入源(以下、海洋プラスチックともいう)となるリスクがある。
海洋プラスチックの対策としては、環境中に存在する生物による分解・消化を経て、最終的に二酸化炭素にまで分解する海洋生分解性を有するポリマーの利用が挙げられる。
このような海洋生分解に対応することが期待されている合成ポリマーとして、ポリカプロラクトンが挙げられ、例えば、特許文献1及び2に開示されているような塗料組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-109339号公報
【文献】特開平10-259240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1及び2に記載されているようなポリカプロラクトン系ポリマーであって、特にカプロラクトンに由来する構成単位の占める割合が高いものほど、当該ポリマーを含有する塗料組成物により形成された塗膜にクラックが発生する等の成膜性や、塗膜強度に問題を生じやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、海洋生分解性を有する重合体を使用しつつ、塗膜形成時にクラックの発生が抑制された表面保護塗膜が形成可能な表面保護用塗料組成物を提供することを目的とする。
更に、本発明は、前記表面保護用塗料組成物から形成された表面保護塗膜、前記表面保護塗膜で被覆された表面保護塗膜付き基材及びその製造方法、並びに、前記表面保護塗膜による表面保護方法を提供することを目的とする。
なお、本発明において、「表面保護塗膜」とは、基材の表面に該塗膜を形成することによって、基材の表面を保護する機能を有していればよく、具体的には、表面への水生生物の付着を抑制して、表面を保護する表面保護塗膜、基材表面の傷つきを保護する表面保護塗膜、基材表面の耐候性を向上させる表面保護塗膜等、その態様は特に限定されず、多岐にわたる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、下記構成によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の構成は以下のとおりである。
<1> ポリカプロラクトン系重合体(A)及び酸化亜鉛(B)を含有し、ポリカプロラクトン系重合体(A)の酸価が、5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、かつ、ポリカプロラクトン系重合体(A)中のカプロラクトンに由来する構成単位の含有量が、50質量%以上99.5質量%以下である、表面保護用塗料組成物。
<2> 前記表面保護用塗料組成物が含有する重合体成分中、前記ポリカプロラクトン系重合体(A)の含有量が50質量%以上である、<1>に記載の表面保護用塗料組成物。
<3> 前記ポリカプロラクトン系重合体(A)が、カルボン酸化合物(a)を開始剤とするε-カプロラクトンの重合反応により得られる重合体である、<1>又は<2>に記載の表面保護用塗料組成物。
<4> 前記ポリカプロラクトン系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が、1,500以上50,000以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の表面保護用塗料組成物。
<5> 前記表面保護用塗料組成物の固形分中の前記酸化亜鉛(B)の含有量が、0.5質量%以上80質量%以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の表面保護用塗料組成物。
<6> 前記表面保護用塗料組成物の溶剤可溶分の酸価が、10mgKOH/g以上500mgKOH/g以下である、<1>~<5>のいずれかに1つ記載の表面保護用塗料組成物。
<7> 防汚塗料組成物である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の表面保護用塗料組成物。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載の表面保護用塗料組成物から形成された表面保護塗膜。
<9> <8>に記載の表面保護塗膜で被覆された表面保護塗膜付き基材。
<10> 基材が、水に接する基材である、<9>に記載の表面保護塗膜付き基材。
<11> 下記工程[1]及び[2]を含む、表面保護塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、<1>~<7>のいずれか1つに記載の表面保護用塗料組成物を塗装する工程
[2]基材上に塗装された表面保護用塗料組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
<12> <8>に記載された表面保護塗膜による表面保護方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、海洋生分解性を有する重合体を使用しつつ、クラックの発生が抑制された表面保護塗膜が形成可能な表面保護用塗料組成物を提供することができる。
更に、本発明によれば、前記表面保護用塗料組成物から形成された表面保護塗膜、前記表面保護塗膜で被覆された表面保護塗膜付き基材及びその製造方法、並びに、前記表面保護塗膜による表面保護方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る表面保護用塗料組成物、これを用いた表面保護塗膜、表面保護塗膜付き基材及びその製造方法、並びに表面保護方法について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」及び「(メタ)アクリル」は、それぞれ「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、及び「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0009】
[表面保護用塗料組成物]
本発明に係る表面保護用塗料組成物(以下、「本組成物」、「塗料組成物」ともいう)は、ポリカプロラクトン系重合体(A)(以下、単に「重合体(A)」ともいう)及び酸化亜鉛(B)を含有し、ポリカプロラクトン系重合体(A)の酸価が、5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、かつ、ポリカプロラクトン系重合体(A)中のカプロラクトンに由来する構成単位の含有量が、50質量%以上99.5質量%以下である。
本発明によれば、海洋生分解性を有する重合体(A)を使用しつつ、クラックの発生が抑制された表面保護塗膜が形成可能な表面保護用塗料組成物を提供することができる。
【0010】
上述の効果が得られる詳細な機構は不明であるが、一部は以下のように考えられる。
カプロラクトンに由来する構成単位の含有量が50質量%以上99.5質量%以下である、ポリカプロラクトン系重合体(A)は、海洋生分解性を有する。従来、ポリカプロラクトン系重合体を塗料組成物に含有させても、塗膜を形成した際にクラックを発生する等、塗膜形成性に問題があった。
本発明では、表面保護用塗料組成物が、特定の酸価を有する重合体(A)を含有すると共に、酸化亜鉛(B)を含有することにより、重合体(A)が有する酸基と、酸化亜鉛(B)との間で弱い相互作用が生じたと考えられる。その結果、塗料としては流動性を確保しながらも、塗膜とした場合には、より相互作用が強くなり、重合体のポリマー鎖が架橋構造をとることで分子量が増大して、塗膜物性が改善し、クラックの発生が抑制されたものと考えられる。
【0011】
本発明の表面保護用塗料組成物は、基材(物品)の最表面に塗装される塗料組成物であり、基材表面の保護を目的とするものであれば特に限定されないが、塗膜が海洋生分解性を有することが好適な用途に使用されることが好ましい。
例えば、好ましい一態様としては、海洋へ接触、浸漬される船舶、漁業資材等への水生生物の付着を防止する、所謂防汚塗料組成物として使用することが挙げられる。
また、好ましい他の一態様としては、水生生物からの防汚を目的とせず、船舶の外舷や上甲板、橋梁、パイプラインの内外壁、タンク、掘削プラントやブイ等の海上構造物、港湾設備等の海洋への塗膜の流れ込みの可能性がある構造物の上塗り塗料組成物として使用することが挙げられる。
なお、現在、海洋へ接触、浸漬されないような種々のプラスチックが、海洋汚染の原因となることが環境汚染の点から問題となっている。従って、必ずしも海洋への塗膜の流れ込みが想定される物品の最表面に設けられる塗膜でないとしても、該塗膜が海洋生分解性を有することは、環境保護の観点から好ましいといえる。すなわち、本発明の表面保護用塗料組成物は、各種の塗料組成物への応用が期待される。
以下の説明において、「防汚塗料組成物」は、水生生物に対する防汚を目的とする表面保護用塗料組成物を意味し、「上塗り塗料組成物」は、直接的には水生生物に対する防汚を目的としない表面保護用塗料組成物を意味する。なお、前記「上塗り塗料組成物」は、物品の最上層に塗られ、水生生物の付着に対する防汚を目的とするものでなければ特に塗布の対象が限定されるものではなく、下塗り塗膜や中塗り塗膜上に塗装される塗料組成物に限定されるものではなく、例えば、プラスチック製の構造物等、下塗り層を必要としない被塗物に直接塗装する態様を含むものである。
なお、上述したように本発明の表面保護用塗料組成物は、種々の用途に適用可能であり、例えば、物品の表面に意匠性を付与するような塗料組成物や、耐傷性、耐ダメージ性を付与するような塗料組成物等にも適用可能である。
以下、本発明において、更に詳細に説明する。
【0012】
<ポリカプロラクトン系重合体(A)>
ポリカプロラクトン系重合体(A)(重合体(A))は、ポリカプロラクトン系の重合体であり5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の酸価を有する。
重合体(A)はカプロラクトンに由来する構成単位、好ましくはε-カプロラクトンに由来する構成単位を重合体中に50質量%以上99.5質量%以下含有する。海洋生分解性の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上であり、そして、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
重合体(A)に占めるカプロラクトンに由来する構成単位の割合が上記の範囲内であると、重合体(A)の海洋生分解性が良好であり、更に、該重合体(A)を含有する塗料組成物の塗装作業性及び貯蔵安定性に優れ、また、該塗料組成物から形成された塗膜の物性が良好となる。
なお、重合体(A)中のカプロラクトンに由来する構成単位の割合は、使用原材料の仕込み量をもとに決定してもよく、又は、NMR等の分析手法により重合体組成を分析して決定してもよい。
【0013】
重合体(A)の酸価は、5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは20mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは150mgKOH/g以下、より好ましくは100mgKOH/g以下である。
重合体(A)の酸価がこのような範囲にあると、該重合体(A)を含有する塗料組成物の製造作業性、塗装作業性、貯蔵安定性、及び成膜性が良好であり、また、形成された塗膜の防汚性、クラックの発生抑制性や強度等の物性が良好である。
なお、酸価とは、対象の成分1gを中和するために必要な水酸化カリウム(KOH)の量(mg)で定義され、mgKOH/gの単位で表されるものであり、対象物の酸基含有量を表すのに広く用いられる数値であり、JIS K 5601-2-1に準拠した方法等を用いて測定することで得られる。また、重合体を構成する各成分の酸価とその比率から酸価を算出してもよい。
【0014】
重合体(A)は、カルボン酸化合物(a)を開始剤とするε-カプロラクトンの重合反応により得ることが好ましい。カルボン酸化合物(a)を開始剤とすることにより、末端にカルボキシ基を有する重合体(A)が得られる。
カルボン酸化合物(a)としては、
酢酸、乳酸、安息香酸、アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマル酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、トール油脂肪酸等のモノカルボン酸化合物(a1);
コハク酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸等の多価カルボン酸化合物(a2);
アクリル酸、メタクリル酸等の酸基及びエチレン性不飽和基を含有する単量体を重合した(共)重合体(a3);
酸基を含有するポリエステル系重合体(a4);等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。
カルボン酸化合物(a)として、モノカルボン酸化合物(a1)を用いると、塗料組成物の塗装作業性及び貯蔵安定性に優れる重合体が得られ、中でもアビエチン酸、パラストリン酸、イソピマル酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸及びこれらを主成分とするロジン類を用いると海洋生分解に優れ、塗料組成物の塗装作業性及び貯蔵安定性に優れる重合体が得られる。なお、ロジン類としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン、水添ロジン、不均化ロジン、ロジン金属塩等のロジン誘導体、パインタールが挙げられ、モノカルボン酸化合物(a1)として、上述したロジン類を使用することも好ましい。また、モノカルボン酸化合物(a1)として、安息香酸を使用することも好ましく、安息香酸は、白色度の高い塗膜を容易に得ることができる点で好ましい。
カルボン酸化合物(a)として、多価カルボン酸化合物(a2)を用いると、塗料組成物の成膜性や塗膜の強度等の物性に優れる重合体が得られ、中でも、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸からなる群より選択される1種以上を用いると、良好な海洋生分解性を有する重合体が得られる点で好ましい。
また、多価カルボン酸化合物(a2)として、3価以上のカルボン酸化合物を用いると、塗料組成物の低温での成膜性等に特に優れる重合体が得られる点で好ましく、中でもヘキサヒドロトリメリット酸を用いると、更に塗装作業性に優れる塗料組成物を得られる点でより好ましい。
カルボン酸化合物(a)として、酸基及びエチレン性不飽和基を含有する単量体を重合した(共)重合体(a3)を用いると、塗料組成物の硬化性や塗膜の強度等の物性に優れる重合体が得られる点で好ましい。
酸基及びエチレン性不飽和基を含有する単量体を重合した(共)重合体(a3)は、酸基及びエチレン性不飽和基を含有する単量体以外の単量体との共重合体であってもよい。
【0015】
使用するカルボン酸化合物(a)の量は、後述する所望の酸価が得られるように、適宜調整すればよい。
なお、上記の反応に際し、必要に応じて触媒を使用してもよく、触媒としては公知の化合物、例えば有機スズ化合物(ジブチルスズジラウレート、ジラウリルスズオキサイド等)、金属アルコキシド(チタニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド等)、アルカリ金属化合物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等)、酸類及びその塩(硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ペンタフルオロアニリウムトリフラート等)、アンチモン化合物、モリブデン化合物、希土類金属錯体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
反応温度は特に限定されないが、好ましくは室温から200℃以下、より好ましくは室温から170℃以下、更に好ましくは150℃以下である。
また、反応時間は特に限定されないが、1時間以上24時間以下程度でよい。
【0016】
重合体(A)は、末端不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキル修飾ポリカプロラクトンをアクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸化合物と共重合することによって得てもよい。
末端不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキル修飾ポリカプロラクトンとしては、片末端(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ポリカプロラクトンが例示され、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを開始剤とするε-カプロラクトンの重合反応により得られる。
末端不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキル修飾ポリカプロラクトンとしては、市販されている製品を使用してもよく、具体的には、プラクセルFAシリーズ((株)ダイセル製)等が例示される。
【0017】
重合体(A)は、カルボン酸化合物(a)の内、水酸基を有する化合物や、上記以外の水酸基のみを有する化合物(b)を開始剤とするε-カプロラクトンの重合反応によって得たポリカプロラクトンを、更に酸無水物と反応させて得ることもできる。このような化合物(b)としてはエチレングリコール、グリセリン等が挙げられ、酸無水物としては、コハク酸無水物やアジピン酸無水物等が挙げられる。
【0018】
重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,500以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは2,500以上であり、そして、好ましくは50,000以下、より好ましくは40,000以下、更に好ましくは30,000以下である。重合体(A)の重量平均分子量がこのような範囲にあると、該重合体(A)を含有する塗料組成物の製造作業性、塗装作業性、貯蔵安定性が良好であり、更に、該塗料組成物により、物性に優れる塗膜を形成できる点で好ましい。
また、重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、同様の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上であり、そして、好ましくは30,000以下、より好ましくは25,000以下、更に好ましくは20,000以下、更に好ましくは15,000以下である。
なお、重合体(A)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、実施例に記載の方法により測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の値を意味する。
【0019】
本組成物が含有する重合体成分中、重合体(A)の含有量は、塗膜の生分解性向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、上限は特に限定されず、100質量%以下である。
なお、「重合体成分」とは、重量平均分子量が1,000以上であり、かつ、繰り返し単位を有する成分を意味する。
【0020】
本組成物の固形分中の重合体(A)の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
また、塗料組成物中の重合体(A)の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
塗料組成物の固形分中あるいは塗料組成物中の重合体(A)の含有量が上記範囲内であると、塗料組成物の製造作業性、塗装作業性、貯蔵安定性に優れ、形成される塗膜の物性に優れる点で好ましい。
【0021】
<酸化亜鉛(B)>
本組成物は、酸化亜鉛(B)を含有する。
該酸化亜鉛(B)の形状、平均粒径等は特に制限されず、本組成物は、形状や平均粒径等が異なる酸化亜鉛を2種以上含んでいてもよい。
本組成物が酸化亜鉛(B)を含有することで、成膜性や、クラックの発生抑制性等の物性や塗膜光沢、塗膜硬度、耐久性に優れる塗膜を形成することができる。上述したように、酸化亜鉛(B)と重合体(A)の酸基との間で弱い相互作用を形成することで、塗料の流動性は確保しながらも、塗膜状態ではより相互作用が強くなり、優れた物性が得られるものと考えられる。また、本組成物が海洋へ接触、浸漬される基材へ適用される場合、酸化亜鉛が生分解を引き起こす海中の生物種を適度に寄せ付けないことで、塗膜の状態では、生分解による重合体の急速な劣化を防いでいると考えられる。一方、機械的なダメージや水流により塗膜片が海水中に放出された場合には、水流等や加水分解により塗膜片が徐々に微細化し、重合体(A)と酸化亜鉛(B)の分離が進み、その結果、生分解が進むものと推定される。
【0022】
酸化亜鉛(B)の平均粒径(メディアン径)は、本組成物中での酸化亜鉛(B)の分散性の観点、及び得られる塗膜の防汚性を向上させる観点等から、酸化亜鉛(B)の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは2μm以下である。
なお、本明細書において、平均粒径(メディアン径)は、SALD-2200((株)島津製作所製)を用いてレーザー回析散乱法にて測定される値である。
【0023】
本組成物の固形分中の酸化亜鉛(B)の含有量は、成膜性や塗膜強度等の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
また、本組成物中の酸化亜鉛(B)の含有量は、同様の観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0024】
本組成物が、防汚塗料組成物である場合、本組成物の固形分中の酸化亜鉛(B)の含有量は、成膜性や塗膜強度等の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
また、本組成物が、防汚塗料組成物である場合、本組成物中の酸化亜鉛(B)の含有量は、同様の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0025】
本組成物が水生生物に対する防汚を直接の目的としない、上塗り塗料組成物である場合、本組成物の固形分中の酸化亜鉛(B)の含有量は、成膜性や塗膜強度等の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
また、本組成物が上塗り塗料組成物である場合、本組成部中の酸化亜鉛(B)の含有量は、同様の観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0026】
重合体(A)100質量部に対する酸化亜鉛(B)の含有量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは800質量部以下、更に好ましくは500質量部以下である。
本組成物が防汚塗料組成物である場合、重合体(A)100質量部に対する酸化亜鉛(B)の含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、更に好ましくは50質量部以上であり、そして、好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは800質量部以下、更に好ましくは500質量部以下である。
本組成物が上塗り塗料組成物である場合、重合体(A)100質量部に対する酸化亜鉛(B)の含有量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは500質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。
【0027】
<その他任意成分>
本組成物は必要に応じて、前記重合体(A)及び酸化亜鉛(B)以外のその他の任意成分、例えば、モノカルボン酸化合物(C)、生物忌避剤(D)、その他顔料(E)、消泡剤(F)、溶剤(G)、タレ止め剤・沈降防止剤(H)、可塑剤(I)、その他重合体(J)を含有していてもよい。
【0028】
〔モノカルボン酸化合物(C)〕
本組成物は、モノカルボン酸化合物(C)(以下、化合物(C)ともいう)を含有していてもよい。本組成物が該化合物(C)を含有する場合、塗料組成物の製造作業性、塗装作業性、貯蔵安定性が良好となり、形成される塗膜の外観やクラックの発生抑制性を良好とすることができる。
本組成物が化合物(C)を含有する場合、化合物(C)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
化合物(C)としては、例えば、R-COOH(Rは、炭素数10~40の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数3以上40以下の飽和もしくは不飽和の脂環式炭化水素基、又は前記飽和もしくは不飽和の脂環式炭化水素基の水素原子が、飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3~40の炭化水素基である)で表される化合物及びこれらの誘導体(例えば、金属エステル)が好ましい。
【0030】
化合物(C)としては、具体的には、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、イソピマル酸、ピマル酸、及びこれらを主成分とするロジン類、安息香酸、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸、バーサチック酸、ステアリン酸、ナフテン酸等が好ましく、これらの中でも、塗膜物性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、ロジン類が特に好ましい。
【0031】
ロジン類としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン;水添ロジン、不均化ロジン、ロジン金属塩等のロジン誘導体;パインタールなどが例示される。
また、化合物(C)としては、入手容易性に優れ、かつ、白色度の高い塗膜を容易に得ることができる点から、安息香酸も好ましい。
【0032】
化合物(C)は、モノカルボン酸の金属エステルであってもよい。該金属エステルとしては、例えば、亜鉛エステルや銅エステルが挙げられる。本組成物が該金属エステルを含有する場合、本組成物を調製する際の原料として、該金属エステルを用いてもよく、本組成物又は塗膜中で、該金属エステルを形成してもよい。
ここで、「金属エステル」とは、金属とカルボン酸とにより形成される塩であり、金属とカルボン酸とが結合することにより生成した化合物であることが好ましい。また、下記式(1)で表される2価金属エステル基を有する化合物がより好ましい。
【0033】
【化1】

(式(1)中、Mは金属を示し、*は結合位置を示す。)
【0034】
上記金属エステル基を構成する金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ネオジム、チタン、ジルコニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、及びアルミニウム等が挙げられる。なお、金属エステル基を構成する金属は、半金属を含むものではない。半金属としては、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルルが挙げられる。
式(1)中、Mは2価の金属であり、上述した金属の中から、2価金属を適宜選択して用いることができる。これらの中でも、ニッケル、銅、及び亜鉛等の第10~12族の金属が好ましく、銅、及び亜鉛がより好ましく、亜鉛が更に好ましい。
式(1)における*は結合位置を表し、任意の基、好ましくは任意の有機基に連結していることを示す。
【0035】
本組成物が化合物(C)を含有する場合、その含有量は、塗装作業性に優れる塗料組成物を容易に得ることができ、耐水性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の固形分中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
【0036】
本組成物が化合物(C)を含有する場合、重合体(A)及び化合物(C)の合計100質量部に対する酸化亜鉛(B)の含有量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは500質量部以下、より好ましくは300質量部以下、更に好ましくは150質量部以下である。
【0037】
〔生物忌避剤(D)〕
本組成物から形成された塗膜の防汚性を向上させるため、本組成物は、生物忌避剤(D)を更に含有してもよい。特に、塗膜が海洋へ接触、浸漬される構造物の表面保護に用いられる防汚塗料組成物である場合は、水生生物の付着を抑制するために、生物忌避剤(D)を含有することが好ましい。
本組成物が生物忌避剤(D)を含有する場合、本組成物中の生物忌避剤(D)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
生物忌避剤(D)としては、例えば、(+/-)-4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール(別名:メデトミジン)、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル(別名:トラロピリル)、銅ピリチオン及び亜鉛ピリチオン等の金属ピリチオン類、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(別名:DCOIT)、ピリジントリフェニルボラン、4-イソプロピルピリジン(N-B)メチル(ジフェニル)ボラン等のボラン-窒素系塩基付加物等、亜酸化銅、酸化銅、銅(金属銅)、チオシアン酸銅(別名:ロダン銅)が挙げられ、これらの中でも、メデトミジン、トラロピリル、銅ピリチオン及び亜鉛ピリチオン等の金属ピリチオン類、亜酸化銅を含むことが好ましい。
【0039】
本組成物が生物忌避剤(D)を含有する場合、その含有量は、十分な防汚性を有する塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の固形分中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0040】
生物忌避剤(D)は2種類以上を用いてもよく、この場合、貯蔵安定性に優れる防汚塗料組成物を容易に得ることができ、十分な防汚性を有し、耐水性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、適した組み合わせとしては、メデトミジンと銅ピリチオン、メデトミジンと亜鉛ピリチオン、メデトミジンと亜酸化銅と銅ピリチオン、亜酸化銅と銅ピリチオン、トラロピリルと亜鉛ピリチオンが挙げられる。
【0041】
なお、前記メデトミジンは下記式(2)で表される化合物である。
本組成物は、酸化亜鉛(B)を必須成分とするため、更にメデトミジンを含有すると、亜鉛-メデトミジン間の相互作用によると推定される寄与により、耐フジツボ性が、より長期にわたって優れる塗膜を容易に得ることができる。
【0042】
【化2】
【0043】
メデトミジンは、光学異性を有するが、その一方のみであっても、任意の比率の混合物であってもよい。
また、本組成物は、メデトミジンの一部又は全部として、イミダゾリウム塩や金属等への付加体を使用してもよい。この場合、本組成物を調製する際の原料として、イミダゾリウム塩や金属等への付加体を用いてもよく、本組成物又は塗膜中で、イミダゾリウム塩や金属等への付加体を形成してもよい。
【0044】
本組成物がメデトミジンを含有する場合、その含有量は、十分な防汚性を有する塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の固形分中、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0045】
また、本組成物がトラロピリルを含有する場合、その含有量は、十分な防汚性を有する塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の固形分中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
【0046】
前記金属ピリチオン類としては、銅ピリチオン及び亜鉛ピリチオンが好ましく、耐水性、クラックの発生抑制性、補修性に優れる塗膜を容易に得ることができ、特に、塗膜消耗度を抑制しながらも、長期にわたる防汚性を有する塗膜を容易に得ることができる等の点から、銅ピリチオンが好ましい。
本組成物が金属ピリチオン類を含有する場合、その含有量は、十分な防汚性を有する塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の固形分中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0047】
前記亜酸化銅としては、平均粒径(メディアン径)が0.1μm以上30μm以下程度の粒子であることが、長期にわたる防汚性を有する塗膜を容易に得ることができる等の点から好ましく、グリセリン、ステアリン酸、ラウリン酸、ショ糖、レシチン、鉱物油等によって表面処理されているものが、貯蔵時の長期安定性に優れる防汚塗料組成物を容易に得ることができる等の点で好ましい。
【0048】
前記亜酸化銅の市販品としては、例えば、NC-301(エヌシー・テック(株)製)、NC-803(エヌシー・テック(株)製)、Red Copp 97N Premium(AMERICAN CHEMET Co.製)、Purple Copp(AMERICAN CHEMET Co.製)、LoLoTint97(AMERICAN CHEMET Co.製)が挙げられる。
【0049】
本組成物が亜酸化銅を含有する場合、その含有量は、適度な塗膜消耗度を有し、十分な防汚性を有する塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の固形分中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0050】
〔その他顔料(E)〕
本組成物は、例えば、塗膜への着色や下地の隠ぺいを目的として、また、適度な塗膜強度に調整することを目的として、酸化亜鉛(B)や生物忌避剤(D)以外のその他顔料(E)を含有していてもよい。
本組成物がその他顔料(E)を含有する場合、その他顔料(E)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
その他顔料(E)としては、例えば、チタン白(酸化チタン)、弁柄(赤色酸化鉄)、黄色酸化鉄、カーボンブラック、ナフトールレッド、フタロシアニンブルー等の着色顔料;リン酸亜鉛、タルク、マイカ、クレー、カリ長石、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫化亜鉛等の体質顔料;導電顔料、蛍光顔料、アルミ顔料、ステンレス顔料等の機能性顔料;等が挙げられる。
【0052】
本組成物がその他顔料(E)を含有する場合、その含有量の総量は、形成される塗膜に求められる隠ぺい性や、塗料組成物の粘度によって適宜設定すればよいが、本組成物の固形分中、好ましくは1質量%以上70質量%以下である。
【0053】
表面保護用塗料組成物が、防汚塗料組成物である場合、その他顔料(E)の含有量の総量は、形成される塗膜に求められる隠蔽性や、塗料粘度の観点から、本組成物の固形分中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0054】
表面保護用塗料組成物が防汚塗料組成物である場合、その他顔料(E)としては、クラックの発生抑制性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、タルクを含むことが好ましく、本組成物がタルクを含有する場合、その含有量は、本組成物の固形分中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0055】
表面保護用塗料組成物が防汚塗料組成物である場合、その他顔料(E)としては、隠蔽性及び耐水性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、赤色酸化鉄(弁柄)を含むことが好ましく、本組成物が赤色酸化鉄を含有する場合、その含有量は、本組成物の固形分中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0056】
表面保護用塗料組成物が防汚塗料組成物である場合、その他顔料(E)としては、防汚性及び耐候性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、硫酸バリウムを含有してもよく、本組成物が硫酸バリウムを含有する場合、その含有量は、本組成物の固形分中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0057】
表面保護用塗料組成物が、水生生物に対する防汚を直接の目的としない、上塗り塗料組成物である場合、その他顔料(E)の含有量の総量は、形成される塗膜に求められる隠蔽性や、塗料粘度の観点から、本組成物の固形分中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0058】
表面保護用塗料組成物が、水生生物に対する防汚を直接の目的としない、上塗り塗料組成物である場合、その他顔料(E)としては、隠蔽性及びクラックの発生抑制に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、酸化チタンを含むことが好ましく、本組成物が酸化チタンを含有する場合、その含有量は、本組成物の固形分中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0059】
表面保護用塗料組成物が、水生生物に対する防汚を直接の目的としない、上塗り塗料組成物である場合、その他顔料(E)としては、塗料の製造作業性や塗装作業性を良好とし、クラックの発生抑制や耐水性、塗膜硬度に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、硫酸バリウムを含むことが好ましく、本組成物が硫酸バリウムを含有する場合、その含有量は、本組成物の固形分中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0060】
表面保護用塗料組成物が、水生生物に対する防汚を直接の目的としない、上塗り塗料組成物や路面標示用塗料である場合、その他顔料(E)としては、クラックの発生抑制やタレ止め性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、炭酸カルシウムを含むことが好ましく、本組成物が炭酸カルシウムを含有する場合、その含有量は、本組成物の固形分中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0061】
表面保護用塗料組成物が、路面標示用塗料である場合、その他顔料(E)としては、クラックの発生抑制やタレ止め性、強度に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、炭酸カルシウムを含むことが好ましく、本組成物が炭酸カルシウムを含有する場合、その含有量は、本組成物の固形分中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0062】
〔消泡剤(F)〕
本組成物は、消泡剤(F)を含有していてもよい。消泡剤としては、例えば、形成されようとする泡の表面を不均一にし、泡の形成を抑える作用を有する剤や、形成された泡の表面を局部的に薄くし、泡を破る作用を有する剤が挙げられる。本組成物が消泡剤を含有する場合、塗膜形成時の発泡に起因する塗膜の平滑性の低下を抑制することができる。
本組成物が消泡剤(F)を含有する場合、消泡剤(F)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
消泡剤(F)としては、シリコーン系消泡剤、非シリコーン系消泡剤が挙げられる。
シリコーン系消泡剤としては、例えば、界面活性を有するポリシロキサン又はその変性物を含む消泡剤が挙げられ、非シリコーン系消泡剤としては、シリコーン系消泡剤以外の消泡剤(ポリシロキサン又はその変性物を含まない消泡剤)が挙げられる。
シリコーン系消泡剤としては、例えば、オイル型、コンパウンド型、自己乳化型、エマルジョン型等の消泡剤が挙げられる。
非シリコーン系消泡剤としては、例えば、高級アルコール系、高級アルコール誘導体系、脂肪酸系、脂肪酸誘導体系、パラフィン系、ポリマー系(例:(メタ)アクリル重合体系)、ミネラルオイル系等の消泡剤が挙げられる。
【0064】
表面保護用塗料組成物の消泡性(特に、表面保護用塗料組成物を一定期間保管した後の消泡性)、塗膜の低摩擦抵抗性や外観及び/又は下地に対する塗膜の密着性等の点から、前記消泡剤(F)としては、シリコーン系消泡剤を含むことが好ましく、シリコーン系消泡剤のみを含むことがより好ましく、フッ素変性シリコーン系消泡剤を含むことが更に好ましく、フッ素変性シリコーン系消泡剤のみを含むことが特に好ましい。
なお、フッ素変性シリコーン系消泡剤とは、フッ素変性されたポリシロキサン構造を有する消泡剤である。
【0065】
消泡剤(F)としては、市販品を用いてもよい。
フッ素変性シリコーン系消泡剤の市販品としては、例えば、BYK-066N(ビックケミー・ジャパン(株)製)、FA-630(信越化学工業(株)製)等のフルオロシリコーンオイル系消泡剤が挙げられる。
フッ素変性シリコーン系消泡剤以外のシリコーン系消泡剤の市販品としては、例えば、KF-96(信越化学工業(株)製)、BYK-081(ビックケミー・ジャパン(株)製)等のシリコーンオイル系消泡剤が挙げられる。
非シリコーン系消泡剤の市販品としては、例えば、BYK-030(ビックケミー・ジャパン(株)製)等のミネラルオイル系消泡剤;ディスパロンOX68(楠本化成(株)製)、BYK-1790(ビックケミー・ジャパン(株)製)、ディスパロンOX-720(楠本化成(株)製)等のポリマー系消泡剤が挙げられる。
【0066】
本組成物が消泡剤(F)を含有する場合、その有姿での含有量は、重合体(A)の含有量100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。
なお、例えば、本組成物を調製する際に用いる消泡剤(F)として、固形分がa%の消泡剤を、重合体(A)100質量部に対し、b質量部用いる場合、前記消泡剤(F)の「有姿での含有量」は、b質量部となる。
【0067】
〔溶剤(G)〕
本組成物は、該組成物の粘度を調整すること等を目的として、必要に応じて、水又は有機溶剤等の溶剤(G)を含有していてもよい。なお、本組成物は、前記重合体(A)を合成する際に得られた重合体(A)を含む液体をそのまま用いてもよい。この場合、溶剤(G)としては、該液体に含まれる溶剤や、重合体(A)と必要に応じてその他任意成分とを混合する際に、別途添加される溶剤等が挙げられる。溶剤(G)としては、有機溶剤が好ましい。
本組成物が溶剤(G)を含有する場合、溶剤(G)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族系有機溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の脂肪族(炭素数1以上10以下、好ましくは2以上5以下程度)の一価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;が挙げられ、塗料組成物の製造作業性、塗装作業性、貯蔵安定性を良好とする観点から一価アルコール類、芳香族系有機溶剤を含有することが好ましく、n-ブタノール、イソブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、キシレンを含有することがより好ましい。
【0069】
本組成物が溶剤(G)を含有する場合、その含有量は、防汚塗料組成物の塗装方法に応じた所望の粘度となるように適宜設定すればよいが、本組成物中、通常0~50質量%程度が好ましい。溶剤(G)の含有量が多すぎる場合、タレ止め性の低下等の不具合が発生する場合がある。
【0070】
〔タレ止め剤・沈降防止剤(H)〕
本組成物は、該組成物の粘度を調整すること等を目的として、タレ止め剤・沈降防止剤(H)を含有していてもよい。
本組成物がタレ止め剤・沈降防止剤(H)を含有する場合、タレ止め剤・沈降防止剤(H)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
タレ止め剤・沈降防止剤(H)としては、例えば、有機粘土系ワックス(例:Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩)、有機系ワックス(例:ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、アマイドワックス、ポリアマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス)、有機粘土系ワックスと有機系ワックスとの混合物、合成微粉シリカが挙げられる。
【0072】
タレ止め剤・沈降防止剤(H)としては市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、ディスパロン305、ディスパロン4200-20、ディスパロンA630-20X、ディスパロン6900-20X(以上、楠本化成(株)製)、A-S-A D-120(伊藤製油(株)製)、CRAYTONE-MPZ(ビックケミー・ジャパン(株)製)、Bentone27(エレメンティススペシャリティーズ(株)製)、「Aerosil No.200」(日本エアロジル(株)製)が挙げられる。
【0073】
本組成物がタレ止め剤・沈降防止剤(H)を含有する場合、その含有量は、本組成物の固形分中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0074】
〔可塑剤(I)〕
本組成物は、塗膜に可塑性を付与すること等を目的として、可塑剤(I)を含有していてもよい。
本組成物が可塑剤(I)を含有する場合、可塑剤(I)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
可塑剤(I)としては、例えば、トリクレジルホスフェート(TCP)等のリン酸エステル;ジオクチルフタレート(DOP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)などのフタル酸エステル;アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジイソノニルなどのアジピン酸エステル;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(Hexamoll(登録商標)DINCH);クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ(2-エチルヘキシル)等のクエン酸エステル;DAIFATTY-101(大八化学工業(株)製)等の混基二塩基酸エステル等が挙げられる。本組成物がこのような可塑剤を含有すると、塗膜に良好な可塑性を付与できることに加え、塗料組成物の貯蔵安定性を高めることもできる。
【0076】
本組成物が可塑剤(I)を含有する場合、その含有量は、塗膜の可塑性を良好に保つことができる等の点から、本組成物の固形分中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0077】
〔その他重合体(J)〕
本組成物は、形成される塗膜に耐水性、クラックの発生抑制や強度を付与する等の目的から、前記重合体(A)以外のその他重合体(J)を含有していてもよい。
本組成物がその他重合体(J)を含有する場合、その他重合体(J)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
その他重合体(J)としては、例えば、重合体(A)以外のポリカプロラクトン系重合体(例えば、酸価が5mgKOH/g未満のポリカプロラクトン系重合体)、ポリエステル系重合体、(メタ)アクリル系(共)重合体((メタ)アクリル樹脂)、ビニル系(共)重合体(ポリビニルエチルエーテル等を含む)、塩素化パラフィン、n-パラフィン、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂類、ケトン樹脂が挙げられる。
【0079】
本組成物がその他重合体(J)を含有する場合、その含有量は、本組成物の固形分中、好ましくは0.1質量%以上40質量%以下である。
【0080】
<本組成物の調製方法>
本組成物は、公知の一般的な塗料組成物を調製する際に用いるのと同様の装置、方法等を用いて調製することができる。
具体的には、重合体(A)を合成した後、得られた重合体(A)又は重合体(A)を含む溶液と、酸化亜鉛(B)と、必要に応じてその他任意成分とを、一度に又は順次容器に添加して、撹拌、混合することで調製することができる。なお、この際には、重合体(A)と酸化亜鉛(B)とを、先に接触させることが好ましい。
【0081】
<本組成物の物性(溶剤可溶分の酸価)>
本組成物の溶剤可溶分の酸価は、硬化性や良好な塗膜物性を得られる等の点から、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは20mgKOH/g以上であり、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは300mgKOH/g以下である。
本発明における「溶剤可溶分の酸価」とは、塗料組成物中の揮発成分を除いた固形分のうち、後述する特定の溶剤に可溶な成分(混合物)の酸価を指す。該溶剤に可溶な成分は、主に、重合体、樹脂酸(ロジン、バーサチック酸等)等の塗膜の連続相を形成する成分であると考えられる。溶剤可溶分の酸価は、これらの成分の酸価の平均値となるため、塗膜の連続相の総合的な酸濃度を示し、これが前記範囲にあることで、前述の優れた効果を得ることができると考えられる。
【0082】
前記溶剤可溶分の酸価は、本組成物を溶剤で抽出して得た溶剤可溶分について、JIS K 5601-2-1:1999に準拠した方法等により測定することができる。抽出に用いる溶剤としては、一般的に、本組成物の連続相を形成する樹脂等の成分が溶解する観点から、キシレン/エタノール混合溶液(キシレン/エタノール=70/30(質量比)、以下の混合溶液は、全てこの質量比である)を用いる。
【0083】
前記溶剤可溶分の酸価は、具体的には、例えば以下の(1)~(6)の手順を経る方法により測定できる。
(1)秤量した溶剤除去後の本組成物とその約10倍となる質量のキシレン/エタノール混合溶液を遠沈管にとり十分に混合する。
(2)0℃、3,500rpmの条件にて遠心分離を30分間行った後、上澄みを抜き取って別の容器に移す。
(3)抽出残渣に再度(1)と同量のキシレン/エタノール混合溶液を加えて混合し、(2)と同条件で遠心分離を行い、上澄みを抜き取って1回目の上澄みを入れた容器に加える。この操作を更にもう1回繰り返す。
(4)前記3回の遠心分離で得られた上澄みの合計を抽出液とし、この抽出液の固形分質量%を測定する。固形分質量%は、抽出液から一部を秤量し、秤量した抽出液を108℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥させて残存した固形分の質量を測定し、秤量した抽出液中の固形分質量の割合を算出する。
(5)前記抽出液のうち、約5g程度をビーカーに入れ、該抽出液の質量を測定し、前記(4)で得た固形分質量%の値を用いて、該抽出液中のサンプルとなる溶剤可溶分の質量を計算してその値をx(g)とする。該抽出液をエタノールにて全体が50mLとなるように希釈する。
(6)前記(5)で作製した抽出液のエタノール希釈溶液、及び、ブランクとしてのエタノール50mLに対して、0.1mol/L水酸化カリウム溶液(アルコール性)(N/10)(関東化学(株)製)を用いて、20℃にて電位差滴定を行い、以下の式から酸価AVを算出する。
【0084】
AV={(V-V)×f×5.61}/x
x:サンプルの質量(g)
:エタノール希釈溶液に対する滴定値(mL)
:ブランクに対する滴定値(mL)
f:滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウム溶液のファクター
電位差滴定には、平沼自動滴定装置COM-1750(平沼産業(株)製)を用いる。
【0085】
なお、塗料組成物からのみではなく、形成された塗膜からも同様の方法により溶剤可溶分の抽出及びその酸価を測定できる。
【0086】
≪塗膜、塗膜付き基材及びその製造方法、並びに、基材の防汚方法(表面保護方法)≫
本発明に係る塗膜(以下「本塗膜」ともいう)は、前記本組成物から形成され、通常、本組成物を乾燥させることで得ることができる。該本塗膜は、通常、基材上に形成され、基材と、本塗膜とを有する本塗膜付き基材として使用される。
本塗膜付き基材の製造方法の好適例としては、本組成物を基材の少なくとも一部に設け、次いで乾燥する工程を含む方法が挙げられる。すなわち、本発明において、本塗膜付き基材の製造方法は、下記工程[1]及び[2]を含む製造方法であることが好ましい。
[1]基材に、本発明の表面保護用塗料組成物を塗装する工程
[2]基材上に塗装された表面保護用塗料組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
また、本発明に係る基材の表面保護方法は、基材の少なくとも一部に本塗膜を形成する工程を含む。前記本塗膜付き基材の製造方法は、基材の少なくとも一部に本塗膜を形成する工程を含むため、基材の表面保護方法であるともいえる。
【0087】
前記基材としては特に制限されないが、本組成物は、海洋に基材の一部や塗膜が流出するおそれのある構造物の表面基材であり、例えば、船舶(例:コンテナ船、タンカー等の大型鋼鉄船、漁船、FRP船、木船、ヨット等の船体外板。新造船又は修繕船のいずれも含む)、漁業資材(例:ロープ、漁網、漁具、浮き子、ブイ)、石油パイプライン、導水配管、循環水管、ダイバースーツ、水中メガネ、酸素ボンベ、水着、魚雷、火力・原子力発電所の給排水口等の構造物、海底ケーブル、海水利用機器類(海水ポンプ等)、メガフロート、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等における各種水中土木工事用構造物等の水中構造物、船舶の外舷や上甲板、タンク、ホールドの内面、橋梁、道路等が挙げられる。これらの中でも、水に接する又は面する基材は海洋への基材の一部や塗膜の流出の可能性が高いためその保護を行う意味で本発明の塗料組成物の利用が好ましい。
【0088】
前記基材は、防錆剤等のその他の処理剤により処理された基材や、表面にプライマー等の塗膜が形成されている基材であってもよく、未処理の基材そのものに塗布してもよい。更に、本塗膜が形成されている基材や、経年劣化した本塗膜が形成された基材でもよい。本塗膜が直接接する対象の種類は特に限定されない。
基材の材質としては、例えば、金属、コンクリート、アスファルト、樹脂材料、繊維強化樹脂材料、木質材料、紙が挙げられる。金属としては、具体的には、炭素鋼、ステンレス鋼等の鋼、アルミニウム、銅、銅合金、亜鉛が挙げられる。基材の形状については、板、管、半割管、球等、特に限定されない。
【0089】
前記本組成物を基材の少なくとも一部に設ける方法としては特に制限されないが、例えば、本組成物を基材に塗装する方法、基材を本組成物に浸漬(本組成物を基材に含浸)させる方法が挙げられる。
前記塗装する方法としては、刷毛、ローラー、スプレーを用いる方法等の公知の方法が挙げられる。
【0090】
前記乾燥の方法としては、例えば、常温(例:25℃)下で、好ましくは0.5~14日間程度、より好ましくは1~7日間程度放置する方法が挙げられる。なお、該乾燥の際には、加熱下で行ってもよく、送風しながら行ってもよい。
【0091】
本塗膜の乾燥後の厚さは、本塗膜の塗膜消耗度や、本塗膜の使用される用途、期間等に応じて任意に選択すればよいが、例えば、30μm以上1,000μm以下程度が好ましい。この厚さの塗膜を製造する方法としては、本組成物を1回の塗装あたり、好ましくは10μm以上300μm以下、より好ましくは20μm以上200μm以下の厚さの乾燥塗膜が得られるように、1回~複数回塗装する方法が挙げられる。
【0092】
また、前記本塗膜付き基材は、本塗膜を形成する工程(I’)、及び、得られた本塗膜を基材に貼付する工程(II’)を含む方法で製造することもできる。
工程(I’)は特に制限されず、例えば、前記本組成物を基材の少なくとも一部に設ける方法において、基材の代わりに、必要により離型処理された支持体を用いる方法が挙げられる。
工程(II’)も特に制限されず、例えば、特開2013-129724号公報に記載の方法が挙げられる。
【0093】
また、本発明の塗膜は表示用として用いられてもよい。該表示としては、船舶の喫水高さ計測するためのドラフトマークや、道路交通に関する規則や指示等の情報を示す各種の路面標示などが挙げられる。
【実施例
【0094】
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明するが、本発明は係る実施例により何ら制限されない。以下では、特にその趣旨に反しない限り、「部」は質量部の意味である。
なお、本明細書における各成分又は本組成物の「固形分」とは、各成分又は本組成物に溶剤として含まれる揮発成分を除いた成分を指し、各成分又は本組成物を108℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥させて得られたものと同義である。
【0095】
〔製造例1:ポリカプロラクトン系重合体溶液(A-1)の製造〕
撹拌機、還流冷却器、温度計、及び窒素導入管を備えた反応容器に、ε-カプロラクトン 99.0質量部、クエン酸 1.0質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら液温が100℃になるまで加熱した。クエン酸が溶解したことを確認した後、ペンタフルオロアニリウムトリフラート 0.05質量部を液中に加えた。次いで、液温が120℃になるまで昇温し、同温度を6時間維持した後、キシレン 100質量部を加え黄色透明の重合体溶液(A-1)を得た。使用した原材料、並びに重合体溶液(A-1)の特性値を表1に示す。
【0096】
〔製造例2~22:ポリカプロラクトン系重合体溶液(A-2)~(A-20)及び(J-1)~(J-2)の製造〕
製造例1において使用した原材料に替えて、表1に示す原材料の種類及び量に変更し、反応温度及び時間を適宜調整したことを除いては、製造例1と同様にして重合体溶液(A-2)~(A-20)及び(J-1)~(J-2)を調製した。使用した原材料、各原材料の酸価を基に算出した重合体の酸価、並びに重合体溶液(A-2)~(A-20)及び(J-1)~(J-2)の特性値を表1に示す。
【0097】
【表1-1】
【0098】
【表1-2】
【0099】
〔製造例23:ポリカプロラクトン系重合体溶液(A-21)の製造〕
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に、ε-カプロラクトン 70.0質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら液温が90℃になるまで加熱した。液温90℃を維持しながら、ε-カプロラクトン 20.0質量部、アクリル酸 10.0質量部、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル 4.0質量部及びt-ブチルパーオキシオクトエート 1.0質量部からなる混合物を、滴下ロートを用いて1時間かけて反応容器内に滴下した。滴下終了から1時間、液温90℃を維持した後、順次昇温し、液温100℃で1時間、液温110℃で1時間、それぞれ加熱撹拌を行った。次に、ペンタフルオロアニリウムトリフラート 0.05質量部を液中に加え、液温160℃に昇温し、同温度で6時間加熱撹拌した後、キシレン 100質量部を加え、黄色透明の重合体溶液(A-21)を得た。使用した原材料、並びに重合体溶液(A-21)の特性値を表2に示す。
【0100】
〔製造例24:ポリカプロラクトン系重合体溶液(A-22)の製造〕
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に、キシレン 46.2質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら液温100℃になるまで加熱した。滴下ロートを用いて、プラクセルFA-10L 135.7質量部、アクリル酸 5.0質量部、キシレン 13.1質量部、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル 1.0質量部及びt-ブチルパーオキシオクトエート 1.0質量部からなる混合物を2時間かけて反応容器内に滴下した。同温度を維持しつつ、滴下終了から1時間後、1.5時間後、2時間後にそれぞれt-ブチルパーオキシオクトエート 0.1質量部を加え、3時間加熱撹拌を続けた後、重合体溶液(A-22)を得た。使用した原材料、及び重合体溶液(A-22)の特性値を表2に示す。
【0101】
〔製造例25:ポリカプロラクトン系重合体溶液(J-3)の製造〕
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に、キシレン 46.2質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら液温100℃になるまで加熱した。滴下ロートを用いて、プラクセルFA-10L 142.9質量部、キシレン 11.0質量部及びt-ブチルパーオキシオクトエート 1.0質量部からなる混合物を2時間かけて反応容器内に滴下した。同温度を維持しつつ、滴下終了から1時間後、1.5時間後、2時間後にそれぞれt-ブチルパーオキシオクトエート 0.1質量部を加え、3時間加熱撹拌を続けた後、重合体溶液(J-3)を得た。使用した原材料、及び重合体溶液(J-3)の特性値を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
<重合体溶液の粘度>
重合体溶液の25℃における粘度は、E型粘度計(VISCOMETER TV-25:東機産業(株)製)により測定した。
【0104】
<重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定>
重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を下記条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定した。
GPC条件
装置:「HLC-8320GPC」(東ソー(株)製)
カラム:「TSKgel guardcolumn SuperMPHZ-M」(東ソー(株)製)×1本+「TSKgel SuperMultiporeHZ-M」(東ソー(株)製)×2本
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.35mL/min
検出器:RI
カラム恒温槽温度:40℃
標準物質:ポリスチレン
サンプル調製法:各製造例で調製された重合体溶液に溶離液を加えた後、メンブレンフィルターで濾過して得られたろ液をGPC測定サンプルとした。
【0105】
<重合体の海洋生分解性>
重合体の海洋生分解性の評価は、重合体の生分解により生じた二酸化炭素を水酸化ナトリウムに吸収させて減圧となった圧力から逆算することでBOD(生物化学的酸素要求量)を測定する装置である「Oxitop(登録商標)6」(WTW社製)を使用した。該装置を用いて、前記各重合体の固形分 32mgに対して広島湾の海水 164mLを添加し、23℃における150時間のBODを計測し、同時に試験した海水のみのBOD値を差し引き、投入した重合体の量から計算される理論上のBODに対する割合を以て、海洋生分解性の評価値とした。なお、上記重合体の固形分は、各重合体溶液を、例えば常温下で1週間乾燥させる等して、有機溶剤を除去したことで得られたものである。
前記重合体溶液(A-8)、(A-10)、(A-14)を乾燥させて得られた重合体固形分の海洋生分解性を評価したところ、それぞれ96%、85%、83%であり、いずれも評価値は70%以上であり、良好な海洋生分解性を有することを確認できた。
【0106】
<塗料組成物及び塗膜の製造>
・配合成分
塗料組成物に用いた各配合成分を表3に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
[実施例1~60及び比較例1~9]
表4~表7に記載の量(質量部)で、各成分を混合撹拌することで、塗料組成物を調製した。
なお、表4及び表5に示される塗料組成物は、水生生物に対する防汚を目的とした防汚塗料組成物を意図しており、また、表6に示される塗料組成物は、水生生物の防汚を目的としない、上塗り塗料組成物を意図しており、表7に示される塗料組成物は路面標示用塗料組成物を意図している。
また、表4~表7には、各塗料組成物の溶剤可溶分の酸価を示す。
【0109】
[評価]
得られた塗料組成物について、以下の評価を行った。
<塗膜外観試験>
ケイ酸カルシウム板(厚み5mm)に、前記実施例及び比較例で得られた表面保護用塗料組成物を、その乾燥膜厚が約300μmとなるように塗布し、25℃条件下で1日間乾燥させて、塗膜外観評価試験板を作製した。該試験板の塗膜表面を観察して下記〔塗膜外観の評価基準〕に従って評価した。結果を表4~表7に示す。
〔塗膜外観の評価基準〕
3:塗膜表面にクラックがない
2:塗膜表面に、長さ10mm未満のクラックを生じている
1:塗膜表面に、長さ10mm以上のクラックが生じている
【0110】
<耐ダメージ性試験>
サンドブラスト処理鋼板(縦150mm×横70mm×厚み1.6mm)に、エポキシ系防錆塗料(エポキシAC塗料、商品名「バンノー1500」、中国塗料(株)製)を、その乾燥膜厚が約100μmとなるように塗布し、1日乾燥させた後、その上に、エポキシ系中塗り塗料(商品名「バンノー1500R Z」、中国塗料(株)製)を、その乾燥膜厚が約100μmとなるように塗布し、1日乾燥させた。更にその上に、前記実施例1~39及び比較例1~4で得られた表面保護用塗料組成物を、その乾燥膜厚が約400μmとなるように塗布し、25℃条件下で7日間乾燥させて、耐ダメージ性試験板を作製した。
【0111】
前述のように作製した耐ダメージ性試験板に、JIS K 5600-5-3:1999の6.デュポン式に対応する方法に従って、落下高さ40cmから500gのおもりを落下させた後の塗膜の損傷を目視により、下記〔耐ダメージ性の評価基準〕に従って評価した。結果を表4及び5に示す。
〔耐ダメージ性の評価基準〕
4:落下したおもりの中心から、塗膜の剥がれが生じた長さが平均1mm未満
3:上記長さが平均1mm以上3mm未満
2:上記長さが平均5mm以上10mm未満
1:上記長さが平均10mm以上
【0112】
<防汚性試験>
サンドブラスト処理鋼板(縦100mm×横70mm×厚み2.3mm)に、エポキシ系防錆塗料(エポキシAC塗料、商品名「バンノー1500」、中国塗料(株)製)を、その乾燥膜厚が約100μmとなるように塗布し、1日乾燥させた後、その上に、エポキシ系中塗り塗料(商品名「バンノー1500R Z」、中国塗料(株)製)を、その乾燥膜厚が約100μmとなるように塗布し、1日乾燥させた。更にその上に、前記実施例1~39及び比較例1~4で得られた防汚塗料組成物を、その乾燥膜厚が約200μmとなるように塗布し、25℃条件下で7日間乾燥させて、防汚性試験板を作製した。
前述のように作製した防汚性試験板を、広島湾内にて、防汚塗膜を形成した試験板表面が速度約15ノット(kt)となるように回転する円筒に取り付けて、該速度で回転させながら、水面下約1メートルの位置に浸漬した。浸漬開始から6カ月後(動的6カ月)の防汚塗膜上の水生生物付着面積を測定し、下記〔水生生物付着面積による防汚性の評価基準〕に従って、防汚塗膜の防汚性を評価した。結果を表4及び表5に示す。
〔水生生物付着面積による防汚性の評価基準〕
5:防汚性試験板の、水生生物に占有されている面積の合計が、防汚塗膜全体の1%未満
4:上記面積が全体の1%以上10%未満
3:上記面積が全体の10%以上30%未満
2:上記面積が全体の30%以上70%未満
1:上記面積が全体の70%以上
【0113】
<塗膜光沢試験>
ケイ酸カルシウム板(厚み5mm)に、前記実施例40~58及び比較例5~7で得られた表面保護用塗料組成物を、その乾燥膜厚が約300μmとなるように塗布し、25℃条件下で1日間乾燥させて、塗膜光沢評価試験板を作製した。作製した試験板の光沢をISO2813に準拠した光沢計(BYK-Gardner GmbH社製、Micro-TRI-gloss with standard holder)を用いて測定し、85度光沢を評価値とした。結果を表6に示す。
なお、ケイ酸カルシウム板のような多孔質基材は、塗料組成物を塗装した際に、吸込み(基材中に塗料組成物が吸収される現象)が発生し、形成される塗膜の85度光沢が低くなりやすい傾向にあるため、上塗り塗料組成物としては、本試験において高い光沢を示す塗料組成物であることが好ましい。
【0114】
<塗膜硬度試験>
塩化ビニル板(厚み5mm)に、前記実施例40~58及び比較例5、6で得られた表面保護用塗料組成物を、その乾燥膜厚が約100μmとなるように塗布し、25℃条件下で7日間乾燥させて、塗膜硬度評価試験板を作製した。作製した試験板の硬度をISO1522に準拠した振り子式硬度計(エリクセン社製、硬度試験機 振り子式299型、振り子初期角度:6)を用いて測定し、評価値とした。結果を表6に示す。
なお、本試験における評価値が高い塗膜は、塗膜硬度が高く、物体との接触時にダメージが発生しにくい傾向にあり、上塗り塗料組成物としては、該評価値が20以上60以下であることが好ましい。
【0115】
【表4-1】
【0116】
【表4-2】
【0117】
【表5】
【0118】
【表6-1】
【0119】
【表6-2】
【0120】
【表7】
【0121】
本発明で使用する重合体(A)は海洋生分解性を有し、該重合体(A)及び酸化亜鉛(B)を含有する塗料組成物から形成された塗膜は、クラックの発生が抑制されていることが分かる。