(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】高強度冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240514BHJP
C22C 38/38 20060101ALI20240514BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C22C38/00 301T
C22C38/38
C21D9/46 J
(21)【出願番号】P 2022552553
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(86)【国際出願番号】 IB2021050994
(87)【国際公開番号】W WO2021176285
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2020/051750
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イナシオ・ダ・ローザ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,リージア
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ドンウエイ
(72)【発明者】
【氏名】ドリエ,ジョゼ
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099922(JP,A)
【文献】国際公開第2018/011978(WO,A1)
【文献】特開2015-168841(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103535(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/105631(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/212047(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00
C22C 38/38
C21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、重量%で表される、
C:0.15~0.25%
Mn:2.4~3.5%
Si:0.30~0.90%
Cr:0.30~0.70%
Mo:0.05~0.35%
Al:0.001~0.09%
Ti:0.01~0.06%
B:0.0010~0.0040%
Nb:0.01~0.05%
P≦0.020%
S≦0.010%
N≦0.008%
を含み、組成の残余は鉄及び製錬から生じる不可避の不純物である化学組成を有し、該鋼板は、表面分率で、
- 80%~90%のマルテンサイト、
- 残余はフェライト及びベイナイト
からなる微細組織を有
し、
- フェライトが5%以上であり、
- ベイナイトが5%以上であり、
- 鋼板の引張強度が1450MPA以上である、
冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
ケイ素含有率が0.30%~0.70%の間に含まれる、請求項
1に記載の冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
請求項1に記載の冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、以下の連続工程
- 鋼を鋳造して半製品とし、該半製品は請求項1に記載の組成を有する工程、
- スラブを1150℃~1300℃に含まれる温度T
reheatまで再加熱する工程、
- 再加熱したスラブを850℃~950℃に含まれる最終圧延温度で熱間圧延し、熱間圧延鋼板を得る工程、次いで
- 該鋼板を250℃~650℃に含まれる巻取り温度T
coilまで冷却する工程、次いで
- 鋼板を該温度T
coilで巻き取り、巻き取られた鋼板を得る工程、次いで
- 鋼板を酸洗いする工程、
- 鋼板を500℃~650℃に含まれる焼鈍温度T
Aまで焼鈍し、鋼板を該温度T
Aに保持時間t
Aの間保持する工程、
- 任意に鋼板を酸洗いする工程、
- 熱間圧延鋼板を圧下率20%~80%の間で冷間圧延し、冷間圧延鋼板を得る工程、
- 冷間圧延鋼板をAc1~Ac3に含まれる均熱温度T
soakまで加熱し、鋼板を該温度T
soakに30秒~200秒に含まれる保持時間
t
soak
の間維持して、85%~95%のオーステナイト及び5%~15%のフェライトを得る工程、
- 鋼板を440℃~480℃に含まれる温度に冷却する工程、
- 450℃~480℃に含まれる温度T
Znで亜鉛浴に連続浸漬することにより鋼板を被覆する工程、
- 鋼板を510℃~550℃に含まれる合金化溶融亜鉛めっき温度T
GAまで再加熱し、鋼板を該温度T
GAで10秒~30秒に含まれる保持時間t
GAの間維持する工程、
- 再加熱した鋼板を室温まで冷却し、冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得る工程
を含む、製造方法。
【請求項4】
熱間圧延鋼板の前記焼鈍が、500℃~650℃に含まれる
焼鈍温度T
Aで該焼鈍温度における持続時間t
Aが1800秒~36000秒である不活性雰囲気中でのバッチ処理によって行われる、請求項
3に記載の冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項5】
熱間圧延鋼板の前記焼鈍が、550℃~650℃に含まれる
焼鈍温度T
Aで該焼鈍温度における持続時間t
Aが30秒~100秒である連続焼鈍によって行われる、請求項
3に記載の冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びこのような鋼板を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CO2排出量削減のための車両の軽量化は、自動車業界の大きな課題である。この軽量化は、安全性の要求と連動していなければならない。これらの要求を満たすために、1450MPaより高い引張強度を有する非常に高強度の鋼の需要が増加し、製鋼産業は新しい等級を継続的に開発するようになっている。
【0003】
これらの鋼は、通常、耐食性のような特性を改善する金属皮膜で被覆される。金属皮膜は鋼板の焼鈍後に溶融亜鉛めっきにより堆積できる。改善されたスポット溶接性を得るために、溶融めっきに続いて合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができ、その結果、鋼板上に亜鉛-鉄合金を得るために、鋼板の鉄が亜鉛めっきに向かって拡散する。
【0004】
刊行物WO2019188190号は、1470MPaより高い引張強度を有する、高強度の亜鉛めっき又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関する。このようなレベルの引張強度を得るために、鋼板の炭素含有率は0.200重量%~0.280重量%の間に含まれ、これは鋼板の溶接性を低下させることがある。また、フェライト及びベイナイト(パーライトとこの2つの和との合計量が2%未満である)の生成は、良好なレベルの引張強度を確保するために回避される。そのためには、冷間圧延後の均熱工程をAc3より高い温度で行う必要がある。
【0005】
刊行物WO2016199922号は、1470MPaより高い引張強度を有する高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関する。0.25%~0.70%の間の多量の炭素によりこの高いレベルの引張強度を得ることが可能になる。しかし、鋼板の溶接性が低下することがある。冷却の終了時に10%を超える残留オーステナイトを得るためには、合金化工程の後、鋼板を制御された方法で冷却しなければならない。この冷却工程の後、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、焼き戻しマルテンサイトを得、ベイナイト変態を促進し、炭素を残留オーステナイトに濃縮させ、所望の最終微細組織、すなわち、10%~60%の間の残留オーステナイト、5%未満の高温焼き戻しマルテンサイト、5%未満の低温焼き戻しマルテンサイト、10%未満のフレッシュマルテンサイト、15%未満のフェライト、10%未満のパーライトを含み、残余がベイナイトである最終微細組織を得るために焼き戻し工程に供される。これらの制御された冷却及び焼き戻し工程により、製造方法が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2019/188190号
【文献】国際公開第2016/199922号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、上記の問題を解決し、1450MPa以上の引張強度を有し、従来の方法の経路で容易に加工可能な合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することである。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、降伏強度YSは1050MPa以上である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、請求項1に記載の鋼板を提供することによって達成される。また、この鋼板は、請求項2~5のいずれかの特性を備えることができる。別の目的は、請求項6に記載の方法を提供することによって達成される。この方法はまた、請求項7~8のいずれかの特徴を備えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明を制限を導入することなく、実施例によって詳細に説明し例示する。
【0011】
以下、Ac3はその上では微細組織が完全にオーステナイトである温度を示し、Ac1はその上でオーステナイトが生成し始める温度を示す。
【0012】
これから本発明による鋼の組成を記載し、含有率を重量パーセントで表す。
【0013】
十分な強度を確保するためには、炭素含有率は0.15%~0.25%に含まれる。炭素含有率が高すぎると鋼板の溶接性が不十分となる。炭素含有率レベルが0.15%未満では十分な引張強度を達成することができない。
【0014】
十分な強度を確保し、ベイナイト変態を制限するためには、マンガン含有率は2.4%~3.5%に含まれる。添加が3.5%を超えると、中心部偏析のリスクは高まり、延性が損なわれる。オーステナイトを安定化させるとともに鋼板の強度及び焼入性を提供するためには、少なくとも2.4%のマンガンの量が必須である。好ましくは、マンガン含有率は2.5%~3.2%に含まれる。
【0015】
本発明によれば、ケイ素含有率は0.30%~0.90%に含まれる。ケイ素は固溶体の硬化に関与する元素である。少なくとも0.30%のケイ素の添加により、フェライト及びベイナイトの十分な焼き入れを得ることができる。0.90%を超えると、表面に酸化ケイ素が形成され、鋼の被覆性を損なう。また、ケイ素は溶接性を損なう可能性がある。好ましい実施形態において、ケイ素含有率は0.30%~0.70%に含まれる。他の好ましい実施形態では、ケイ素含有率は0.30%~0.50%に含まれる。
【0016】
本発明によれば、クロム含有率は0.30%~0.70%に含まれる。クロムは固溶体の硬化に関与する元素である。0.30%未満のクロム含有率レベルでは、十分な引張強度を達成することができない。十分な破断点伸び及び、限界コストを得るためには、クロム含有率を0.70%以下にしなければならない。
【0017】
本発明によれば、モリブデン含有率は0.05%~0.35%の間に含まれる。少なくとも0.05%のモリブデンの添加は鋼の焼入性を改善し、溶融めっきの前及び溶融めっき間のベイナイト変態を制限する。0.35%を超えると、モリブデンの添加は費用がかかり、必要とされる特性の観点から効果がない。好ましくは、モリブデン含有率は0.05%~0.20%の間に含まれる。
【0018】
本発明によれば、アルミニウム含有率は、製錬中の液相において鋼を脱酸するための非常に有効な元素であるため、0.001%~0.09%の間に含まれる。変態区間均熱後の冷却中の酸化問題及びフェライト形成を避けるために、アルミニウム含有率は0.09%より低い。好ましくは、アルミニウム量は0.001%~0.06%の間である。
【0019】
析出強化を提供し、BNの生成からホウ素を保護するためには、チタンは0.01%~0.06%の量で加える。
【0020】
本発明によれば、ホウ素含有率は0.0010%~0.0040%の間に含まれる。モリブデンと同様に、ホウ素は鋼の焼入性を向上させる。連続鋳造中のスラブ破損のリスクを避けるため、ホウ素含有率は0.0040%以下である。熱間圧延中のオーステナイト結晶粒を微細化し、析出強化を提供するためには、ニオブを0.01%~0.05%の間で添加する。
【0021】
鋼の組成の残りの部分は、鉄及び製錬から生じる不純物である。この点において、P、S及びNは少なくとも不可避的不純物である残留元素と考えられる。これらの含有率はSが0.010%未満、Pが0.020%未満、Nが0.008%未満である。
【0022】
これから、本発明による冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板の微細組織について説明する。
【0023】
冷間圧延後、冷間圧延鋼板を均熱温度Tsoakまで加熱し、保持時間tsoakの間該温度に維持するが、いずれも、この変態区間均熱の終了時に、85%~95%の間のオーステナイト及び5%~15%の間のフェライトからなる微細組織を有する鋼板を得るために選択される。
【0024】
オーステナイトの一部は、変態区間均熱後の冷却後、溶融めっき中にベイナイトに変態する。
【0025】
合金化溶融亜鉛めっき工程後の室温での冷却工程中に、オーステナイトはマルテンサイトに変態する。冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、表面分率で80%~90%の間のマルテンサイトからなる、最終微細組織を有し、残余はフェライト及びベイナイトである。
【0026】
これらの80%~90%のマルテンサイトは良好なレベルの引張強度を保証する。このマルテンサイトは、自動焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトを含む。
【0027】
合金化溶融亜鉛めっき工程が成功することを確実にするために、フェライト及びベイナイトの合計は10%~20%の間である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、フェライトは5%以上である。本発明の他の好ましい実施形態では、ベイナイトは5%以上である。
【0029】
本発明による冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、1450MPa以上の引張強度を有する。本発明の好ましい実施形態では、降伏強度YSは1050MPa以上である。TS及びYSはISO規格ISO6892-1に従って測定される。
【0030】
本発明による鋼板は、任意の適切な製造方法によって製造することができ、当業者は、それを規定することができる。しかし、以下の工程を含む本発明による方法を用いることが好ましい。
【0031】
さらに熱間圧延することができる半製品に、上記の鋼組成を提供する。半製品を1150℃~1300℃の温度に加熱するので、熱間圧延を容易にすることができ、最終熱間圧延温度FRTは850℃~950℃に含まれる。
【0032】
次いで、熱間圧延鋼を冷却し、250℃~650℃に含まれる温度Tcoilで巻き取る。
【0033】
巻き取り後、板を酸洗いして酸化を取り除く。
【0034】
冷間圧延性を改善するために、鋼板を500℃~650℃に含まれる焼鈍温度TAまで焼鈍し、保持時間tAの間該温度TAに維持する。
【0035】
焼鈍後、板を酸洗いして酸化を取り除くことができる。
【0036】
次に、20~80%の圧下率で鋼板を冷間圧延し、例えば0.7mm~3mmの間、又はさらに良好には0.8mm~2mmの範囲であることができる厚さを有する冷間圧延鋼板を得る。冷間圧延圧下率は、20%~80%の間に含まれることが好ましい。20%未満では、その後の熱処理中の再結晶化は満足なものではなく、冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板の延性を損なうことがある。80%を超えると、冷間圧延時に変形に要する力が高くなりすぎるであろう。
【0037】
次いで、冷間圧延鋼板をAc1~Ac3に含まれる均熱温度Tsoakまで再加熱し、30秒~200秒に含まれる保持時間tsoakの間、該温度Tsoakに維持して、この変態区間均熱の終了時に、85%~95%の間のオーステナイト及び5%~15%の間のフェライトを含む微細組織を得る。
【0038】
次いで、450℃~480℃に含まれる温度TZnで亜鉛浴中に連続浸漬することによる被覆前に、鋼板が被覆浴に近い温度に達するように、冷間圧延鋼板を440℃~480℃に含まれる温度まで冷却する。次いで、溶融めっき鋼板を510℃~550℃に含まれる合金化溶融亜鉛めっき温度TGAまで再加熱し、10秒~30秒に含まれる保持時間tGAの間、該温度TGAに維持する。
【0039】
次いで、この鋼板を室温まで冷却して、冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得る。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、500℃~650℃に含まれる熱処理温度TAで1800秒~36000秒に含まれる保持時間tAに間該TA温度で維持する不活性雰囲気でのバッチ処理によって、熱間圧延鋼板の焼鈍工程を実行する。
【0041】
本発明の他の好ましい実施形態では、550℃~650℃に含まれる熱処理温度TAで30秒~100秒に含まれる保持時間tAの間、該TA温度で維持する連続焼鈍によって、熱間圧延鋼板の焼鈍工程を実行する。
【0042】
次に、本発明を以下の実施例によって示すが、この実施例は決して限定的ではない
【実施例】
【0043】
組成を表1にまとめた2つの等級を半製品に鋳造し、表2にまとめた方法のパラメータに従い、鋼板に加工した。
【0044】
<表1-組成>
以下の表に試験された組成をまとめ、元素含有率を重量%で表す。
【0045】
【0046】
所与の鋼について、Ac1及びAc3を膨張率測定及び金属組織学的分析によって測定する。
【0047】
<表2-方法のパラメータ>
鋳造したままの鋼半製品を1200℃まで再加熱し、910℃の仕上げ圧延温度FRTで熱間圧延し、550℃の温度Tcoilで巻き取った。一部の鋼板をまず600℃の温度TAまで焼鈍し、保持時間tAの間該TA温度に維持し、その後酸洗する。その後、鋼板を圧下率45%で冷間圧延する。冷間圧延鋼板を均熱温度Tsoakまで再加熱し、tsoakの間該温度で維持し、460℃の温度TZnで亜鉛浴中で溶融めっきにより被覆した後、合金化溶融亜鉛めっきし、ここで合金化溶融亜鉛めっき温度TGAは510℃~550℃に含まれ、20秒のtGAの間該温度で維持する。以下の特定の条件を適用した。
【0048】
【0049】
冷間圧延鋼板を均熱後に分析し、対応する微細組織の要素を表3にまとめた。
【0050】
【0051】
均熱終了時のこの微細組織を定量化するために、均熱後に鋼板を焼入れし、100%のオーステナイトをマルテンサイトに変態させ、オーステナイトは室温で不安定である。したがって、マルテンサイト量は均熱終了時のオーステナイト量に相当する。次いで、マルテンサイト量及びフェライト量を画像解析により定量化する。
【0052】
次いで、冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板を分析し、対応する微細組織要素及び特性をそれぞれ表4及び表5にまとめた。
【0053】
【0054】
表面分率は以下の方法で決定する。試験片を冷間圧延合金化溶融亜鉛めっき鋼板から切り出し、研磨し、試薬(Nital)を用いてエッチングし、微細組織を明らかにする。各構成要素の表面分率の決定は、光学顕微鏡による画像解析で行う。マルテンサイトはフェライト及びベイナイトよりも暗いコントラストを有する。ベイナイトは、均熱後に焼き入れした試料及び合金化溶融亜鉛めっき後に冷却した試料のマルテンサイト分率の差を測定することにより定量化する。ベイナイトを、このベイナイト内部の炭化物により識別する。
【0055】
【0056】
合金化溶融亜鉛めっき工程の成功は、皮膜中の鉄の量を測定することによって検査する。皮膜中の鉄の含有率が7%~12%の間であれば、鋼は合金化溶融亜鉛めっきされている。
【0057】
実施例は、本発明による鋼板、すなわち実施例1及び2が、それらの特定の組成及び微細組織のため、合金化溶融亜鉛めっきの成功とともに全ての目標とする機械的特性を示す唯一のものであることを示す。80%~90%の間のマルテンサイトのため機械的特性が確保される。合金化溶融亜鉛めっき工程は、10%~20%の間に含まれることにより、合計でフェライト及びベイナイトの存在が確保される。
【0058】
試験例3及び4では、鋼Aを均熱の終了時に85%~95%の間のオーステナイト及び5%~15%の間のフェライトを確保する温度Tsoakを超えて加熱し、このため過度に多くのオーステナイトを形成し、十分なフェライトを形成しない。このため、溶融めっきの終了時にフェライト及びベイナイトの合計が10%未満しか形成されず、これが合金化溶融亜鉛めっき工程を妨げる。
【0059】
試験例5では、ベイナイト変態を遅らせる硬化元素であるモリブデンが存在しないことにより、溶融めっき終了時にフェライト及びベイナイトの合計の25%の形成がもたらされる。その結果、最後の冷却工程中に形成されたマルテンサイトが80%未満であり、低い値の機械的性質をもたらす。