IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エヴィデント・サイエンティフィック・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-周囲温度検出器を有するX線機器 図1
  • 特許-周囲温度検出器を有するX線機器 図2
  • 特許-周囲温度検出器を有するX線機器 図3
  • 特許-周囲温度検出器を有するX線機器 図4
  • 特許-周囲温度検出器を有するX線機器 図5
  • 特許-周囲温度検出器を有するX線機器 図6
  • 特許-周囲温度検出器を有するX線機器 図7
  • 特許-周囲温度検出器を有するX線機器 図8
  • 特許-周囲温度検出器を有するX線機器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】周囲温度検出器を有するX線機器
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20240514BHJP
   G01T 1/17 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G01N23/223
G01T1/17 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022562112
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 US2021025938
(87)【国際公開番号】W WO2021207175
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】63/007,487
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522396539
【氏名又は名称】エヴィデント・サイエンティフィック・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ハードマン
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/117276(WO,A1)
【文献】特開平05-212027(JP,A)
【文献】特開2001-119583(JP,A)
【文献】特開平10-260487(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079525(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G01T 1/00-7/12
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線分析器であって、
X線源によって照射された検査対象からの二次X線を検出し、対応するエネルギー信号を提供するように構成された少なくとも1つの検出器であって、前記エネルギー信号が、パルス高さを有するパルスを含み、前記パルス高さが、少なくとも1つの前記検出器の温度誘発パルス漏れによって引き起こされたオフセットを含む、少なくとも1つの検出器と、
少なくとも1つの前記検出器に関連する環境温度を検知するように構成された温度センサと、
前記エネルギー信号を処理し、検知された前記環境温度に従って、X線事象の温度補償出力を提供するように構成された信号プロセッサであって、前記信号プロセッサが、前記環境温度に従って前記パルス高さのゲインを調整するように、かつ、前記環境温度に従ってゲインが調整された前記パルス高さのオフセットを補償するように構成されている温度補償器を含む、信号プロセッサと、を備え
前記信号プロセッサが、前記ゲインに寄与し、前記パルスを生成するように構成された二次段増幅器を含み、前記二次段増幅器が、第2の温度を測定する第2の温度センサと接触している、X線分析器。
【請求項2】
前記温度補償器が、前記パルス高さを拡大されたパルス幅で補償することによって、前記出力のエネルギー分解能を調整するように更に構成されている、請求項1に記載のX線分析器。
【請求項3】
前記温度補償器が、前記ゲインの温度依存性及び前記オフセットの温度依存性を指定する較正表を更に含む、請求項1に記載のX線分析器。
【請求項4】
前記較正表が、前記検査対象及び較正温度での前記パルス高さが既知である較正手順において、経験的に導出される、請求項3に記載のX線分析器。
【請求項5】
前記信号プロセッサが、少なくとも1つの前記検出器と熱的に接触しており、前記パルスを生成するように構成されている前置増幅器を含み、前記調整されたゲインが、前置増幅器ゲインである、請求項1に記載のX線分析器。
【請求項6】
前記温度センサが、少なくとも1つの前記検出器と物理的に接触している、請求項1に記載のX線分析器。
【請求項7】
前記X線源を発生させるためのX線発生器を更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のX線分析器。
【請求項8】
X線検査を提供する方法であって、
X線源からのX線によって照射された検査対象からの二次X線を検出器によって検出するステップと、
対応するエネルギー信号を提供するステップであって、前記エネルギー信号が、パルス高さを有するパルスを含み、前記パルス高さが、前記検出器の温度誘発パルス漏れによって引き起こされたゼロオフセットを含む、提供するステップと、
第1の温度センサを使用することによって、前記検出器に関連する環境温度を測定するステップと、
第2の温度センサを使用することによって、二次段増幅器に関連する第2の温度を測定するステップと、
前記エネルギー信号を処理し、X線事象の温度補償出力を提供するステップであって、前記環境温度及び前記第2の温度に従って前記パルス高さのゲインを調整するステップと、前記環境温度に従ってゲインが調整された前記パルス高さのゼロオフセットを補償するステップと、を含む、処理し、提供するステップと、を含み、
前記二段増幅器が、前記ゲインに寄与し、前記パルスを生成するように構成されている、方法。
【請求項9】
前記処理し、提供するステップが、前記パルス高さを拡大されたパルス幅で補償することによって、前記出力のエネルギー分解能を調整することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ゲインの前記調整が、前記エネルギー信号を処理するように構成された増幅器の前記ゲインを調整することである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記X線源からのX線を生成するステップを更に含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
X線源からのX線によって照射された検査対象からの二次X線を検出器によって検出することと、
対応するエネルギー信号を提供することであって、前記エネルギー信号が、パルス高さを有するパルスを含み、前記パルス高さが、前記検出器の温度誘発パルス漏れによって引き起こされたゼロオフセットを含む、提供することと、
検出器に関連する環境温度を測定することと、
二次段増幅器に関連する第2の温度を測定することと、
前記エネルギー信号を処理し、X線事象の温度補償出力を提供することであって、前記環境温度及び前記第2の温度に従って前記パルス高さのゲインを調整することと、前記環境温度に従ってゲインが調整された前記パルス高さのゼロオフセットを補償することと、を含む、処理し、提供することと、を行わせる、実行可能な命令を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記二次段増幅器が、前記ゲインに寄与し、前記パルスを生成するように構成されている、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月9日に出願された米国仮特許出願第63/007,487号の優先権の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の例示的な実装形態は、X線分析を行うための機器に関し、より具体的には、検出器の温度制御を必要とせずに、可変周囲温度で動作するエネルギー分散検出器を使用するX線分析器に関する。
【背景技術】
【0003】
蛍光X線(XRF)機器などのX線分光計機器は、試料から放射されたX線のエネルギー分布を測定するように構成されている。放射されたX線のエネルギースペクトルから、試料材料の化学組成を計算することができる。このような機器では、X線エネルギースペクトルが、エネルギー分散型半導体検出器で測定され、検出器に入射するX線は、半導体において電子・正孔対を発生させ、検出器は、それによって、X線エネルギーに比例する電荷を収集する。電荷は、通常、検出器に近接して位置するフィールド効果トランジスタ(FET)などの電荷感応前置増幅器によって受信され、増幅される。電荷感応前置増幅器は、各入射X線からの電荷を、X線エネルギーに比例する高さの電圧パルス信号に変換する。次いで、電圧パルス信号は、通常、X線機器内の少なくとも1つのプリント回路基板(PCB)上に位置する1つ以上の第2の段増幅器によって、更に増幅され得る。
【0004】
エネルギー分散型半導体X線検出器は、通常、冷却され、一定の低温を維持するように制御される。なぜなら、周囲温度では、半導体における熱誘発電子・正孔対から発生する漏れ電流が高すぎる可能性があるからである。漏れ電流は、温度によって変化する連続的なバックグラウンドノイズを発生させ、X線発生信号の正確な測定を妨げる可能性がある。-10℃~-20℃の範囲の温度まで冷却することは、通常、熱電冷却デバイスなどで達成される。しかしながら、冷却を提供し、検出器と周囲環境との間の熱的隔離を維持する必要は、X線検出器のコスト及び複雑さを増加させる。冷却デバイスには電力を供給する必要があり、冷却が効果的に機能するためには、熱伝導及び結露を防止するために、検出器は真空又は減圧環境にある必要がある。
【0005】
周囲温度で動作する検出器を有する機器では、冷却電力を提供する必要はない。更に、検出器は真空下にある必要はなく、これは、検出器ウィンドウが典型的に高いレベルの真空を維持する必要がないことを意味する。周囲温度計のウィンドウの機能は、光、埃、水分を検出器チップから遠ざけ、X線を入れることのみである。次いで、ウィンドウは、潜在的に、より安価な材料で作ることができ、真空封入の処理及び包装コストが、回避され得る。しかしながら、正確かつ繰り返し可能な測定結果を達成するために、検出器の性能の温度依存性を修正する必要がある。
【0006】
したがって、X線検出機器が冷却を必要とせず、したがって、現在の実務において使用される検出器よりも著しく小さく、安価で、より少ない電力を使用するX線分析機器の必要性が存在する。冷却の必要性を取り除き、信頼性の高い正確な結果を生成することは、低コストの手持ち型又は携帯型のX線分析機器にとって特に有利である。
【発明の概要】
【0007】
本開示の例示的な実装形態では、検査対象の元素組成を判定するためのX線分析器が提供される。例示的な実装形態では、分析器は、X線源によって照射された検査対象からの二次X線(例えば、蛍光X線)を検出し、対応するエネルギー信号を提供するように構成された検出器を備える。分析器はまた、検知器の近傍の温度を検知するように構成された温度センサを備える。分析器は、エネルギー信号を処理し、X線事象のための温度補償出力を提供するように構成された信号プロセッサを更に備える。
【0008】
エネルギー信号は、パルス高さを有するパルスを含み、温度補償出力は、温度に従ってパルス高さのゲインへの調整を含む。更に、パルスは、検出器の温度誘発漏れによって引き起こされたオフセットを提示し、温度補償出力は、温度に従ったオフセットでのパルス高さの調整を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示による、X線分析器の例示的な実装の概略図である。
図2】検出器温度の変化に関連付けられたパルス高さの変化及び本開示の例示的な実装形態による、温度補償を導出する方法を示す図である。
図3】検出器温度の変化に関連付けられたパルス漏れによって引き起こされたエネルギー信号の変化及び本開示の例示的な実装形態による、温度補償を導出する方法を示す図である。
図4】本開示の例示的な実装形態による、エネルギーの関数としてのパルス高さ、並びに異なるゲイン及び漏れオフセットに基づいて温度補償を導出する方法を示す図である。
図5】本開示による、検出器温度変化に対する所望の範囲のゲイン応答を達成するために、より小さい検出器を使用することによって代替的な実装形態の基礎を示す図である。
図6】本開示の例示的な実装形態による、検出器及び2つの温度センサを有するX線分析器の概略図である。
図7】本開示の例示的な実装形態による、検出器及び1つの温度センサを有するX線分析器の概略図である。
図8】本開示の例示的な実装形態による、温度制御なしで動作する少なくとも1つの検出器を有するX線分析器を考案する方法のフローチャートである。
図9】本開示の例示的な実装形態による、少なくとも1つの周囲温度検出器で、X線機器を動作させる代替的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照すると、本開示の例示的な実装形態では、X線源2及びX線検出器6を有するX線分析器1又は検出システムが提供される。好ましくは、X線検出器は、周囲温度で、又は軸温制御なしで動作するシリコンドリフト検出器(SDD)である。X線源は、X線検査又は較正動作中に検査対象4に照射するための一次X線を発生させるように構成されている。検出器6は、好ましくは、一次X線によって照射されたときに検査対象4から放射された二次X線を検出するように構成されている。X線分析器1はまた、プロセッサ100を含む。プロセッサ100は、検出器6によって受信されたエネルギー信号をまとめて処理するために、ハードウェア、ファームウェア、若しくはソフトウェア、又はハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアの任意の組み合わせを含む。本明細書に記載のプロセッサ100は、検査に関連する全ての信号及び値を処理する施設を指し、離散的又は一体的な電子機器又は回路を含むことができる。本開示によるX線分析器1は、少なくとも1つの温度センサ10を備える。プロセッサ100は、検出システムによって生成された電子パルスのゲイン、ゼロオフセット及び分解能の温度誘発変化を考慮して、X線エネルギースペクトルを補正するように更に構成されている。
【0011】
本開示の実装形態において、温度センサ10は、検出器6に関連する温度を検知するように構成されている。検出器6が任意の冷却又は温度安定化施設を有しない場合、二次X線に対する検出器の応答は変化し、この変化は実質的であり、検出器の動作温度に依存する。分析器1が、X線応答(二次X線)を表すスペクトルの正確かつ繰り返し可能な読み取りを提供するために、温度変化による検出器応答の変化は、プロセッサ100によって補償される。
【0012】
従来のシステムは、温度制御システムなしでは周囲温度で動作せず、システムは、ゼロオフセット及び分解能の変動を補償しない。
【0013】
表1は、検出器の温度の関数としての前置増幅器のゲインセットの例を示す。(前置増幅器は、検出器の近くで使用され得、検出器と同じ熱環境を共有し得る。例示的な実装形態の詳細な説明については、図6及び図7を参照されたい)。なお、摂氏マイナス20度(-20℃)以上の温度では、ゲインはすぐに変化し、0℃~-5℃の間では、ゲインは1℃当たり約1%変化している。0℃~20℃(室温)の間では、ゲインの変化率が更に速くなることが予想できる。また、プリント回路基板(PCB)上に位置する典型的な第2の段増幅器のゲインの温度依存性の測定値(図示せず)は、依存性がかなり小さいことを示す(1℃当たり約0.01%)。
【0014】
表1は、温度と前置増幅器のゲインとの間に一般的な関係があることを示している。関係は、温度の低下に伴うゲインの増加又は減少であり得る。本明細書に開示される実装形態では、X線分析器は、温度の変化に従って前置増幅器のゲインを調整する。分解能の変化は、図3に関して後述する。前置増幅器及び二次段増幅器の使用は、図6及び図7に関連する説明において後で紹介される。
【0015】
【表1】
【0016】
ゲイン及び分解能の温度依存性
温度による前置増幅器ゲインの変化は、表1又は図2に示されるような経験的測定によって、又は理論的方法によって予測され得る。したがって、温度に対するゲインの機能的依存性が観察され、検出器の温度又は前置増幅器の温度が測定される場合、温度の変化としてのシステムのゲインドリフトは、動的ゲイン補正によって補正され得る。実装形態では、ゲインは、全ての温度での調整されたゲインが、選択された標準温度での測定された又は理論的に予測されたゲインに対応するように、修正され得る。
【0017】
図2図5は、本開示による、検出器の温度変化が検出器の性能に影響する方法、及び温度に対する補償が達成される方法を説明するために提示される。図2に見ることができるように、X線の入射によって検出器において発生する電圧パルス信号の高さは、X線エネルギーに比例するだけでなく、検出器温度の影響を受ける。パルスの高さ対時間の3つのプロットは、概念的には、3つの検出器の温度について示されている。1つは「冷たい」、1つは「温かい」、1つは「熱い」である。図2に見るように、パルス高さは3つの検出器温度全てに対して異なっている。例えば、H1及びH2は、「冷たい」検出器及び「温かい」検出器について対応して異なるパルス高さである。
【0018】
また、温度上昇によって引き起こされたパルス漏れは、「温かい」及び「熱い」と標識付けされた傾斜した波形に見られるように、パルスの高さの測定をパルス時間外に「ドリフト」させる。パルス漏れに対する補償も考慮されることが好ましい。パルス漏れに関連する係数は、「ゼロオフセット」と呼ばれ、温度にも依存する。分光計におけるゼロオフセットは、ゼロエネルギーの理論的X線から生じる信号である。典型的には、このオフセット信号は、パルス高さに一定の寄与を加える検出器のパルス漏れに起因する。検出器の温度を変化させると、漏れ電流の量、ひいてはオフセットも変化する。この効果の補正は、スペクトルエネルギースケールの精度を向上させる。例えば、「冷たい」検出器のパルス高応答(その温度を較正温度とする)を使用する場合、パルス高の平均値を使用する場合、プロット「温かい」に対してパルス高調整Δを適用する必要がある。当業者であれば、本開示を読むと、平均値以外の値がかかる補償に使用され得ることを理解すべきである。そのような実装形態は、全て本開示の範囲内であるべきである。
【0019】
温度補償は、異なるレベルで動的に実行できることに留意されたい。ゲイン補正のために、X線パルスは、既知の検出器温度で測定され、ゲインは、必要な「最低」レベルで補正され得る。ゲイン補正が生じ得るX線検出器システムのレベルは、それぞれハードウェアレベル、ファームウェアレベル、ソフトウェアレベルの最低レベルから最高レベルまでリストされている。ハードウェアレベルでは、ゲインに対する補正は、測定温度出力に基づいてシステムのゲインを調整することによって、各X線は、測定されるにつれて(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)レベルで、又は前置増幅器レベルで)リアルタイムで適用され得る。ファームウェアレベルでは、プログラムが実行されると、マイクロ秒タイムスケールでのゲインの補正を引き起こすようにプログラムを設計することができる。ソフトウェアレベルでは、プログラムはミリ秒以上のタイムスケールでゲインを補正するように設計することができる。動的ゲイン補正は、レベルのいずれかのレベルで実施され得、選択されたレベルは、検出器温度の変化率及び所望の測定の長さに依存する。例えば、検出器チップ温度が何秒にもわたってゆっくりと変化している場合、全スペクトルが1秒未満で収集された場合には、各X線パルスを補正する必要がなく、この場合には、ソフトウェアレベルでの時折のゲイン補正が適切であってもよい。検出器温度の変化がミリ秒のタイムスケールにわたって測定可能な効果を有する場合、ファームウェア又はハードウェアレベルでの補正は適切であり得る。
【0020】
補償をハードウェアレベルで直接行うために、X線分析器1の1つの実装形態は、温度の変化に直接応答して、離散的な方式ではなく、連続的な方式で増幅器ゲインを調整する回路を有し得る。ゲイン調整は、温度に応答する検出器の特性に応じて、線形又は非線形であり得る。このような代替的な実装形態は全て、本開示の範囲内である。
【0021】
図3は、検出器6によって受信されたエネルギー信号の態様としてのX線事象の数対パルス高さを示す図である。図3に見ることができるように、パルス漏れの影響は、検出器温度がそれぞれ「冷たい」及び「温かい」場合、2つの応答における検出器温度変化によって引き起こされることが示されている。一般に、検出器温度が高いほど、パルス高さ分布は広がる。各事象数パルス高さプロットの総面積は、特定の二次X線応答の場合と同じである。本開示による実装形態は、ある温度から別の温度へのパルス高さ変化におけるオフセットΔに従って温度補償を提供することを含む。
【0022】
図4は、2つの検出器温度、T及びTについてのパルス高さ対エネルギーにおける検出器の応答を示すグラフである。ラインH=GEは、ゼロオフセットを考慮せずに、検出器温度T図2の「冷たい」検出器の温度)について、補償されていない増幅器ゲインGを有するパルス高さ対エネルギーを表す。ラインH=GEは、ゼロオフセットを考慮せずに、検出器温度T図2の「熱い-1」検出器の温度)について、補償された増幅器ゲインGを有するパルス高さ対エネルギーを表す。ラインH=GE+Δは、温度変化によって引き起こされたパルス漏れを考慮して、ゼロオフセットΔで更に調整された検出器温度Tについて、補償されたゲインGを有するパルス高さ対エネルギーを表す。
【0023】
その関係は次のように要約できる:
【数1】
【0024】
X線分析装置の分野におけるエネルギー分解能は、半値全幅(FWHM)として頻繁に表され、エネルギー単位で与えられる。X線分光法の場合、通常は電子ボルト(eV)で表される。図3に戻ると、半分の高さでの各チャートについてWR及びWRとして表されるエネルギー分解能は、「冷たい」検出器から「温かい」検出器への温度の変化に伴って変化する。同じ材料からのエネルギースペクトルは、測定時に周囲温度(したがって、検出器温度に影響を与える)に応じて変化し得るため、機器のエネルギー分解能の変化は望ましくない。典型的には、これは、スペクトルが特定の元素のX線を表すために、エネルギー範囲を使用して処理されるためである。分解能が悪化すると、測定されたエネルギーの分布が他の隣接するピークと重複することがある。これにより、単純な領域モデルではどのピークが信号に寄与したかを判定できないため、重複領域のデータを使用することが困難となる。
【0025】
漏れ電流の変動により、検出システムのエネルギー分解能も温度に依存する。この効果はまた、温度の関数としての検出器及び前置増幅器のエネルギー分解能の測定によって、表1に示される。エネルギー分解能は、0℃~-5℃の温度で、1℃当たり約1.4%の速度で増加する。エネルギー分解能変化は、主に半導体検出器の温度変化に起因する。
【0026】
エネルギー分解能の変化の影響を軽減するために、温度に対するエネルギー分解能の依存性は、理論的及び経験的方法によって予測され得、したがって、エネルギー分解能の変化は、好適な補正アルゴリズムによって補償され得る。そのような補正アルゴリズムの実装形態では、スペクトル分解能は、任意選択的に、より低い分解能を提供するために人工的に変更(拡大)され得るが、検出器がより温かいときには(WRをWRに増加させるため)、依然としてその反応と一致する。好ましくは、システムは、最高設計温度で「最悪の状況」に較正される。これはスペクトルを狭めるよりも拡大する方が容易であるためである。この任意の較正ステップでは、ピークを人工的に拡大して、スペクトル分解能を全ての温度で効果的に同じにすることができる。
【0027】
図5を参照すると、温度誘発ゲインドリフトは、検出器温度変化に指数関数的であり、X線分析器の機能に著しく悪影響を及ぼす。これは、同じエネルギーのX線が、取得時の温度に応じて異なる出力パルス高さを発生させ、X線スペクトルの誤差及び試料の誤った元素分析をもたらす可能性があるからである。検出器のサイズが小さいほど、そのようなゲインドリフトの影響が小さいことが更に観察される。したがって、本開示のいくつかの実装形態において、X線分析器は、温度変化への依存性を低減するために、1つのより大きな検出器ではなく複数のより小さい検出器を使用するように構成されている。これは、冷却システムを使用せずに分析器を動作させるソリューションにも貢献できる。複数の検出器が必要な場合、複数のより小さな検出器は、冷却システムを無効にするソリューションの一部であり得る。より小さい検出器は、温度変動に対する感応性が低いという利点を有し得るが、より小さい検出器は、それらのより小さい面積のために、より効率が悪い場合がある。低い効率を補償するために、より大きな検出器の面積に近似する総面積を有する小さな検出器のアレイを使用してもよい。
【0028】
要約すると、上記で説明したような温度補償を提供する方法は、本明細書で以前に説明した方程式及び/又は方法に従って、表にデータを提供することによって実施することができる。データ表は、異なる検出器温度のために分析器1で動作する前に行われるゲイン較正手順の間に生成され得る。
【0029】
図6は、X線分析器1の一例のブロック図である。例示的な実装形態では、X線分析器は、温度制御なしで全て動作する前置増幅器8と、第2の段増幅器9と、を更に備える。検出器6、前置増幅器8、及び第1の温度センサ10は、互いの熱的な接触においてパッケージングされるように構成されている。例示の目的のために、温度センサ10は、温度測定値Taを出力する。第2の段増幅器9は、好ましくは、前置増幅器8から別個のPCB上にあるように構成されており、温度測定値Tbを出力する第2の温度センサ11と熱的に接触している。温度センサ10及び11は、任意のタイプの温度検知デバイスであり得る。好ましい実装形態では、温度センサ10及び11は、サーミスタ、ダイオード、又は焦電センサなどのコンパクトで低コストの固体センサである。X線分析器1が動作しているとき、温度センサ10は、検出器6及び前置増幅器8の温度を表す温度測定値Taを連続的に生成し、温度センサ11は、第2の段増幅器9の温度を表す温度測定値Tbを連続的に生成する。
【0030】
図2図4に関して本明細書で前述したゲイン、ゼロオフセット、及びエネルギー分解能の温度依存性を取り除く方法は、前置増幅器8及び/又は二次段増幅器9のゲイン調整に独立して適用され得ることに留意されたい。
【0031】
更に図6を参照すると、上記で説明したように、測定精度、再現性、及び分解能の観点からの分析器1の性能は、著しい温度依存性を有する。これは主に、前置増幅器又はFET8が通常温度感受性であるため、増幅の第1の段のゲインの温度依存性に起因する。分析器1の性能の温度依存性は、二次増幅器9などの後続の増幅段のゲインにも関連する。
【0032】
検出器6は、好ましくはSDDである。なぜなら、このタイプの検出器は、そのエネルギー分解能が室温でかなり良好であるように、低い容量を有するからである。しかしながら、他のタイプの検出器は、それが予想される温度範囲にわたる性能の予想を満たす場合に使用され得る。
【0033】
二次X線が検出器6に衝突するとき、前置増幅器8は、第2の段増幅器9に入力される出力電圧のステップアップを生成し、これは、更なる増幅されたパルス信号を生成する。増幅されたパルス信号は、X線エネルギーの補正されていない測定値であるパルス振幅を測定するように構成されたパルス高さ測定ユニット12に入力される。(パルス高さの説明については、図2及び関連する説明を参照されたい)。なお、パルス高さ測定ユニット12はまた、前置増幅器9からの信号の更なる増幅及び/又は形成を提供する他の電子機器からの測定値を受信してもよい。本開示によるパルスゲイン及びオフセット調整ユニット14は、パルス高さ測定ユニット12からの補正されていないエネルギー測定値、並びに温度センサ10及び11からの温度測定値Ta及び/又はTbを受信する。パルスゲイン及びオフセット調整ユニット14は、温度測定値Ta及びTbに基づいて、ゲイン、ゼロオフセットに関する温度依存情報を組み込む。ゲイン及びゼロオフセット依存性は、図2図5に関連付けられた説明に詳細に説明される。ゲイン較正手順は、55Fe源からの5.9keV X線などの標準エネルギーX線源を検出器6に照射することを含み得、図2図5に説明される方法を使用する。本開示で説明される方法では、既知の温度Ta及びTbのためのパルス高さ測定ユニット12を使用することによって、既知のパルス高さをパルス高さの出力で測定されたパルス高さと比較するための較正を実行することができる。
【0034】
ゲイン及びゼロオフセット依存情報により、パルスゲイン及びオフセット調整ユニット14は、パルス高さ測定ユニット12の出力に対して、温度依存性を取り除き、補償されたパルス高さを得るように調整を加えることができる。したがって、調整されたパルス高さは温度に依存せず、選択された標準動作温度に調整されたパルス高さを表す。次いで、プロセッサ100は、複数のX線からの調整されたパルス高さを蓄積して、調整されたエネルギースペクトルを形成するスペクトルビルダ16に入力として調整されたパルス高さを供給する。なお、入射X線ごとに、パルスゲイン及びオフセット調整ユニット14は、温度Ta及びTbの別個及び個別のリアルタイム測定値を取得してもよい。
【0035】
調整されたエネルギースペクトルの分解能は、依然として望ましくない温度依存性を示し得る。任意選択的に、スペクトル分解能拡大ユニット18は、調整されたエネルギー分解能が常に選択された固定温度に対応する既知の最終エネルギー分解能に対応するように、エネルギー分解能を調整するように構成されている。好ましい実装形態では、選択された固定温度は、測定値又は一連の測定値の最大温度であり得る。最大温度を判定するために、スペクトル分解能拡大ユニット18は、任意選択的に、温度測定値Ta及びTbの入力を受信し得る。次いで、スペクトル分解能拡大ユニット18は、最大温度での既知の分解能に一致するように、より低い温度で取得されたスペクトルの分解能を人工的に拡大する。分解能の拡大は、一般に、当該技術分野で既知の方法によって適用され、完全なスペクトルの取得後に適用される。
【0036】
上述したように、PCB上に位置する第2の段増幅器9のゲインの温度依存性は、検出器6に近接して位置する電荷感応前置増幅器8のゲインの温度依存性よりもかなり小さい。更に、ゼロオフセット及びエネルギー分解能の両方の温度依存性は、主に検出器6の半導体材料の温度の関数である。したがって、温度依存性補正の大部分は温度Taに由来し、温度Tbに由来する補正の大きさは小さい。したがって、図7は、図6の第2の温度センサ11が省略されているX線機器1の例を示す。X線機器1における第2の温度センサの省略は、X線機器1におけるような2つの温度変数の代わりに、1つの温度変数のみに関連する補正アルゴリズム及び経験的較正の簡略化を含む、機器の簡略化を可能にする。
【0037】
図8は、検出器の温度制御なしに分散型X線分析を行うX線分析器(例えば、図6のX線分析器1)の方法の例の図である。図8の方法は、測定が長い場合かつ/又は周囲温度が急速に変化している場合に適用され、その結果、単一の測定の過程で著しい温度変化が生じる。ステップ30では、温度センサ10及び任意選択的な温度センサ11は、それぞれ、検出器及び第2の段増幅器から温度測定値Ta及び任意選択的にTbを取得する。図8のステップ32~42は、温度補償器を実装するために、図6のプロセッサ100によって実行することができる。ステップ32では、パルス高さ測定ユニット12は、検出器6に入射するX線によるパルス高さを測定する。温度測定Ta及びTbに基づいて、パルスゲイン及びオフセット調整ユニット14は、ステップ34においてパルス高さを調整する。温度測定Taに基づいて、ステップ36において、ゼロオフセット、パルスゲイン及びオフセット調整ユニット14は、パルス高さを調整する。ステップ34及び36では、パルス高さ及びゼロオフセットはともに、式1に従って、かつ図2図4に関連付けられて説明された方法に従って、選択された標準動作温度でのそれらの値に対応するように調整される。ステップ38では、スペクトルビルダ16は、調整されたパルスをスペクトルに追加する。ステップ40では、検出器6に入射する複数のX線について、ステップ30~38の方法が繰り返される。ステップ42では、任意選択的に、測定が終了し、完全なスペクトルが取得された後、スペクトル分解能拡大ユニット18は、選択された固定温度での分解能に対応するように、スペクトルにおけるピークの幅を拡大する。最後に、ステップ44では、調整されたスペクトルを使用して、検査試料の元素組成を計算する。
【0038】
図9は、検出器の温度制御なしに分散型X線分析を行うX線分析器(例えば、図6のX線分析器1)の代替的な方法の図である。図9の方法は、測定が短い場合かつ/又は周囲温度がゆっくりと変化している場合に適用され、その結果、単一の測定の過程で著しい温度変化が発生しない。ステップ30では、温度センサは、Ta及びTbの温度測定を行う。図9のステップ32~42は、温度補償器を実装するために、図6のプロセッサ100によって実行することができる。ステップ32では、検出器6はX線入射を受信し、パルス高さ測定ユニット12はパルス高さを測定する。ステップ32は、スペクトルビルダ16が測定パルス高さを伴うパルスを追加するステップ38に続く。ステップ40では、ステップ32及び38の方法は、測定が完了するまで、検出器6に入射する複数のX線について繰り返される。したがって、ステップ40の完了時に、温度の調整されていない完全なスペクトルが得られる。
【0039】
ステップ34’、36’、及び42では、調整されていないスペクトルは、異なる測定値間の温度変化を考慮して調整される。温度測定値Ta及びTbに基づいて、パルスゲイン及びオフセット調整ユニット14は、ステップ34’でスペクトルエネルギースケールを調整し、選択された標準動作温度での測定又は計算されたエネルギースケールに対応する。温度測定Taに基づいて、全スペクトルのゼロオフセットは、選択された標準動作温度で測定又は計算されたゼロオフセットに対応するようにステップ36’で調整される。ステップ38’では、温度測定Taに基づいて、スペクトル分解能拡大ユニット18は、選択された固定温度での分解能に対応するようにスペクトルにおけるピークの幅を拡大する。X線分析器のプロセッサは、図2図4に関して本明細書で前述される方法に従って、ステップ34’、36’、及び42を実行することに留意されたい。最後に、ステップ44では、調整されたスペクトルを使用して、検査試料の元素組成を計算する。
【0040】
なお、図8及び図9の方法における温度測定値Tbの使用は任意選択的である。したがって、ステップ30、34及び34’は、温度測定値T2への参照を省略するように修正されてもよい。
【0041】
図8及び図9の方法の組み合わせ及び変形例を使用してもよいことにも留意されたい。例えば、図8の方法は、全てのパルスではなく、選択された時間後又は選択された数のパルス後にのみ、ステップ34及び36の補正が適用されて使用され得る。あるいは、図9の方法は、測定全体ではなく、測定の一部のために、又は選択された測定時間が経過するまで、発生するステップ40の繰り返しで使用されてもよい。
【0042】
図のフローチャート及びブロック図は、本開示の様々な実装形態による、コンピュータプログラム製品によって実行可能な装置、方法、並びにアーキテクチャ、機能、及び動作を示し得る。フローチャート又はブロック図の各ブロックは、モジュール、プログラムセグメント、ユニット、又はコードの一部を表し得、これらは、指定された論理機能を実行するための1つ以上の実行可能命令を含み得る。したがって、本明細書に記載の方法は、記載された特定の実施例に限定されず、むしろ、方法ステップのうちのいずれかは、特許請求の範囲を具体化する結果を達成するために、必要に応じて、並列又は連続して行われ得る。更に、ブロック図又はフローチャートの各ブロック及びブロックの組み合わせは、指定された機能又は動作を実行するための専用のハードウェアベースのシステムによって、又は専用のハードウェア及びコンピュータ命令の組み合わせによって実装されてもよい。
【0043】
追加の説明及び実施例
実施例1は、X線源によって照射された検査対象からの二次X線を検出し、対応するエネルギー信号を提供するように構成された少なくとも1つの検出器と、検出器に関連する温度を検知するように構成された温度センサと、エネルギー信号を処理し、X線事象のために温度補償出力を提供するように構成された信号プロセッサと、を備える、主題(X線分析器など)を含む。
【0044】
実施例2では、実施例1の主題は、任意選択的に、温度補償器を含む信号プロセッサを含む。
【0045】
実施例3では、実施例2の主題は、パルス高さを有するパルスを含むエネルギー信号を含み、温度補償器は、温度に従ってパルス高さのゲインを調整するように構成されている
【0046】
実施例4では、実施例3の主題は、任意選択的に、検出器の温度誘発パルス漏れによって引き起こされたオフセットを含むパルス高さを有するパルスを含むエネルギー信号を提供する検出器を含み、温度補償器は、温度に応じてオフセットでパルス高さを補償するように構成されている。
【0047】
実施例5では、実施例4の主題は、任意選択的に、パルス高さを拡大されたパルス幅で補償することによって、出力のエネルギー分解能を調整するように構成された温度補償器を含む。
【0048】
実施例6では、実施例4の主題は、任意選択的に、ゲインの温度依存性及びオフセットの温度依存性を指定する較正表を含む温度補償器を含む。
【0049】
実施例7では、実施例6の主題は、任意選択的に、検査対象及び較正温度でのパルス高さが既知である較正手順において、経験的に導出された較正表を含む。
【0050】
実施例8では、実施例3~7の1つ又は任意の組み合わせに記載の主題は、任意選択的に、X線検出器と熱的に接触しており、パルスを生成するように構成されている前置増幅器を含む、信号プロセッサを含み、調整されたゲインが、前置増幅器ゲインである。
【0051】
実施例9では、実施例3~7の1つ又は任意の組み合わせに記載の主題は、任意選択的にゲインに寄与し、パルスを生成するように構成された二次段増幅器を含む信号プロセッサを含み、二次段増幅器が、第2の温度を測定する第2の温度センサと接触している。
【0052】
実施例10では、実施例1~9の1つ又は任意の組み合わせに記載の主題は、任意選択的に、検出器と物理的に接触している温度センサを含む。
【0053】
実施例11では、実施例1~10の1つ又は任意の組み合わせに記載の主題は、任意選択的に、X線源を発生させるX線発生器を含む。
【0054】
実施例12は、主題(X線検査を提供する方法など)を含むか、又は任意選択的に、実施例1~11の1つ又は任意の組み合わせと組み合わせて、源X線によって照射された検査対象からの二次X線を検出することと、対応するエネルギー信号を提供することと、検出器に関連する温度を測定することと、エネルギー信号を処理することと、X線事象について温度補償出力を提供することと、を含む、そのような主題を含む。
【0055】
実施例13では、実施例12に記載の主題は、任意選択的に、パルス高さを有するパルスを含むエネルギー信号を提供することを含み、処理し、提供するステップは、測定された温度に従ってパルス高さのゲインを調整することを含む。
【0056】
実施例14では、実施例13の主題は、任意選択的に、検出器によって提供された検出ステップを含み、パルスが、検出器の温度誘発パルス漏れによって引き起こされたゼロオフセットを含み、処理し、提供するステップが、温度に応じてパルス高さをゼロオフセットで補償することを含む。
【0057】
実施例15では、実施例14の主題は、任意選択的に、パルス高さを拡大されたパルス幅で補償することによって、出力のエネルギー分解能を調整することを含む、処理及び提供するステップを含む。
【0058】
実施例16では、実施例13~15の1つ又は任意の組み合わせに記載の主題は、任意選択的に、エネルギー信号を処理するように構成された増幅器のゲインを調整することを含む、ゲインを調整することを含む。
【0059】
実施例17では、実施例12~16の1つ又は任意の組み合わせに記載の主題は、任意選択的に、温度センサを使用することによって実施される、温度を測定するステップを含む。
【0060】
実施例18では、実施例12~17の1つ又は任意の組み合わせに記載の主題は、任意選択的に、源X線を生成するステップを含む。
【0061】
実施例19は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、源X線によって照射された検査対象からの二次X線を検出することと、対応するエネルギー信号を提供することと、検出器に関連する温度を測定することと、エネルギー信号を処理することと、X線事象のための温度補償出力を提供することと、を含む動作を実行させる実行可能命令を含むコンピュータ可読記憶媒体を備える、主題を含むことができるか、又は実施例1~18の1つ又は任意の組み合わせと組み合わせて、かかる主題を含むことができる。
【0062】
実施例20では、実施例19に記載の主題は、任意選択的に、非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、プロセッサに、温度に従ってパルス高さを有するパルスを含むエネルギー信号を提供させるその命令を含み、パルスが、検出器の温度誘発パルス漏れによって引き起こされたゼロオフセットを含み、温度に従うゼロオフセットでのパルス高さの補償を含む温度補償出力を提供する、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。
【0063】
これらの非限定的な例は、任意の順列で組み合わせることができる。本発明の例示的な実装では、処理することは、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせで実施され得る。例えば、処理することは、プロセッサ、記憶媒体、又はプロセッサ(揮発性及び不揮発性メモリ及び/又は記憶素子を含む)によって読み取り可能な他の製品、少なくとも1つの入力デバイス、及び1つ以上の出力デバイスを各々含む、プログラム可能なコンピュータ/マシン上で実行されるコンピュータプログラムにおいて実施され得る。本発明の特定の実装形態では、プログラムコードが、処理を実行し、出力情報を生成するために入力デバイスを使用して入力されたデータに適用され得る。
【0064】
本発明の様々な例示的な実装形態は、例示的な実装形態としてのみ前述の図面を参照して説明されており、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定される。これらの例示的な実装形態は、当業者が本発明をよりよく理解し、次いで本発明を更に実施することを可能にするためにのみ提供され、いかなる方法においても本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0065】
更に、本発明の例示的な実装形態は、記載された実装形態の具体的な詳細の一部又は全てなしに、特許請求の範囲に従って実施されてもよい。したがって、本発明は、本明細書に開示される構造及び方法を有すると考えられ得る多数の代替的、修正的、及び同等の実装形態を包含し、そのような代替的実装形態は、添付の特許請求の範囲の原理から逸脱することなく、その範囲内で使用され得る。
【0066】
明確化のために、本発明に関連する技術分野で既知の技術材料は、本発明が不必要に不明瞭にならないように詳細に説明されていない。したがって、本発明の上記の実装形態は、例示的であり、限定的ではないとみなされるべきであり、本発明は、本明細書で与えられる例示的な実装形態の詳細に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲及び同等物内で修正され得る。
【0067】
更に、本明細書で使用される用語「comprise」、「include」及び「have」並びにそれらの派生的及び同様の表現は、オープンである(すなわち、「含む(comprising/including)が、これらに限定されない」)と理解されるべきである。「に基づく」という用語は、「に少なくとも部分的に基づく」ことを意味し、「1つの実装形態」という用語は、「少なくとも1つの実装形態」を意味し、「別の実装形態」という用語は、「少なくとも1つの更なる実装形態」を示す。他の用語の関連する定義が本開示に提供されている。
【0068】
本発明は、その特定の実装形態に関して説明されてきたが、様々な設計が、本開示の教示に基づいて考案され得、全て本開示の範囲内であることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9