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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ポリプロピレンコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20240514BHJP
   B29C 48/15 20190101ALI20240514BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240514BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B05D7/24 302G
B29C48/15
B29C48/305
B32B27/32 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022572486
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2021064072
(87)【国際公開番号】W WO2021239822
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】20176798.5
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ヴァング、イングボ
(72)【発明者】
【氏名】ガーライトナー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ベルンライトナー、クラウス
(72)【発明者】
【氏名】レスキネン、パウリ
(72)【発明者】
【氏名】ニーデルスエス、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヌミラ-パカリネン、アウリ
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01892264(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02978782(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03033389(EP,A1)
【文献】国際公開第2021/110815(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B29C 48/15
B29C 48/305
B32B 27/32
C08F 4/659
10/06
110/06
C09D 123/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ISO 1133に従って測定される10~40g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)、
・ISO 11357に従ってDSCによって決定される149~160℃の溶融温度Tm、及び
・GPCによって決定される2.4~4.5の分子量分布MWDを有するポリプロピレンを含むポリプロピレン組成物の、物品の押出コーティングのための使用。
【請求項2】
前記ポリプロピレンが、プロピレンホモポリマーである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ポリプロピレンが、13C NMRによって測定される、0.01~1.2モル%の、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数を有する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記ポリプロピレンが、シングルサイト触媒の存在下で製造されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記ポリプロピレンが、15~37g/10分のメルトフローレートMFR2及び/又はISO 11357に従ってDSCによって決定される150~158℃の溶融温度Tmを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記ポリプロピレンが、20~35g/10分のメルトフローレートMFR2及び/又はISO 11357に従ってDSCによって決定される153~157℃の溶融温度Tmを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ポリプロピレンが、GPCによって決定される2.5~4.5のMWD及び/又はISO 16152に従って決定される0.05~5重量%未満の冷キシレン可溶(XCS)画分を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記ポリプロピレンが、GPCによって決定された2.7~4.0のMWD及び/又はISO 16152に従って決定される0.1~4重量%の冷キシレン可溶(XCS)画分を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記ポリプロピレンが、ISO 11357に従ってDSCによって決定される100~130℃の範囲の結晶化温度Tc及び/又はISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される1200~1800MPaの曲げ弾性率を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記ポリプロピレンが、ISO 11357に従ってDSCによって決定される105~125℃の範囲の結晶化温度Tc及び/又はISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される1250~1650MPaの曲げ弾性率を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記ポリプロピレンが、ISO 11357に従ってDSCによって決定される110~120℃の範囲の結晶化温度Tc及び/又はISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される1300~1600MPaの曲げ弾性率を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
物品に押出コーティングする方法であって、
・ISO 1133に従って測定される10~40g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)、
・ISO 11357に従ってDSCによって決定される149~160℃の溶融温度Tm、及び
・GPによって決定される2.4~4.5の分子量分布MWD
を有するポリプロピレンを含むポリプロピレン組成物を、押出により物品上にコーティングする、方法。
【請求項13】
前記物品が、紙、板紙、繊維基材、及び/又は金属箔である、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項14】
コーティングされた物品であって、
・ISO 1133に従って測定される10~40g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)、
・ISO 11357に従ってDSCによって決定される149~160℃の溶融温度Tm、及び
・GPCによって決定される2.4~4.5の分子量分布MWD
を有するポリプロピレンを含むポリプロピレン組成物のコーティング層を有する、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出コーティング用ポリプロピレン組成物の使用、該ポリプロピレン組成物が使用される物品の押出コーティング方法、及び該ポリプロピレン組成物の層を有するコーティングされた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙、板紙、布、金属箔などの基材をプラスチックの薄層で押出コーティングすることは、大規模に行われている。コーティング組成物は、溶融ポリマー材料のフラックスが平らなダイを通過して数ミクロンの厚さを有するフィルムを得る第1工程で押し出される。第2工程、すなわちコーティング工程では、フィルムは支持体上に置かれ、冷却シリンダー上を通過する。冷却されると、ポリマーは支持体に付着する。高速押出コーティングでは、10g/10分以上の比較的高いメルトフローレートMFRが要求される。押出コーティング方法の説明は、例えば、R.A.V.Raff及びK.W.DoakによるCrystalline Olefin Polymers,Part II(Interscience Publishers、1964)、478~484頁又はVieweg,Schley及びSchwarz:Kunststoff Handbuch,Band IV,Polyolefine,Carl Hanser Verlag(1969)、20、412~420頁に記載されている。
【0003】
米国特許第3,418,396号は、高いメルトフローレートを有する押出コーティング用ポリプロピレン/ポリエチレン組成物を開示している。使用されるポリプロピレンは、特に食品用途の物品のコーティングには望ましくない高度のヘキサン抽出物を有することが開示されている。更に、ポリエチレンの存在は、高温に耐える組成物の能力を低下させる。しかしながら、レトルトパウチなどの一部の食品用途又は一部の医療用途の分野では、押出コーティングの十分な熱安定性を必要とする滅菌処理が必要である。
【0004】
ポリプロピレンは、メタロセン触媒などのシングルサイト触媒を使用して製造することも可能である。しかしながら、押出コーティングに必要な高いメルトフローレートは、通常、制御されたレオロジー、すなわち、過酸化物又は放射線(ビスブレーキングとも呼ばれる)の使用などにより、メルトフローレートを増加させる製造後のポリプロピレンの処理によって得られるものである。
【0005】
国際公開第2012/109449号は、放射線変性方法に基づく、押出コーティング用の高溶融強度ポリプロピレンを含む制御されたレオロジー配合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第3,418,396号
【文献】国際公開第2012/109449号
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、これらの変性は、例えばゲルの形成の原因となるポリプロピレンの著しい劣化をもたらすため、医療分野などの需要の高い用途におけるポリプロピレン組成物の使用が制限される。更に、ビスブレーキングは、酸化しやすいポリマー鎖の末端での二重結合の形成をもたらすので、ビスブレーキングされた材料の望ましくない味及び臭いが引き起こされる。これは、食品用途には望ましくない。
【0008】
したがって、改善されたシーリング特性及びホットタック特性を有し、ゲル含有量が低く、味及び臭いの問題が少なく、高温に耐えることができる、広範な種々の基材の押出コーティングに適している改善されたプロピレンポリマー組成物が依然として必要とされている。これらの特性を達成するために、該組成物は、LDPEなどの加工助剤の添加又はレオロジー制御材料の使用を必要とすべきではない。
【0009】
したがって、本発明は、
・ISO 1133に従って測定される10~40g/10分のメルトフローレートMFR(230℃/2.16kg)、
・ISO 11357に従ってDSCによって測定される149~160℃の溶融温度T、及び
・GPCによって決定される2.4~4.5の分子量分布MWD
を有するポリプロピレンを含むか又はこれらからなるポリプロピレン組成物の、物品の押出コーティングのための使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】発明例1(IE1)のシーリング曲線である。
図2】比較例2(CE2)のシーリング曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の使用におけるポリプロピレン組成物は、高速押出コーティングによく適しており、改善されたシーリング特性を示し、上記のような良好なコーティング樹脂のさらなる要件に適合している。
【0012】
好ましくは、ポリプロピレン組成物は、ビスブレーキングされた材料を含まない。したがって、特に好ましくは、ポリプロピレンは、ビスブレーキングされた材料でない。
【0013】
更に、好ましくは、ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマーであり、すなわち好ましくはプロピレンモノマー単位と1重量%までのエチレンなどの他のオレフィンモノマーとからなり、より好ましくはプロピレンモノマー単位と0.5重量%までのエチレンなどの他のオレフィンモノマーとからなり、最も好ましくはプロピレンモノマー単位からなるものである。
【0014】
ポリプロピレンの製造に使用される触媒は、特にポリマーの微細構造に影響を与える。したがって、メタロセン触媒を使用して調製されたポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ(ZN)触媒を使用して調製されたポリプロピレンと比較して、異なる微細構造を提供する。最も大きな違いは、メタロセンで製造されたポリプロピレンには部位欠陥が存在することであり、これはチーグラー・ナッタ(ZN)触媒によって製造したポリプロピレンには当てはまらない。
【0015】
プロピレンポリマーの部位欠陥には、2,1-エリトロ欠陥(2,le)、2,1-トレオ欠陥(2,It)及び3,1欠陥という3つの異なる種類があり得る。ポリプロピレンにおける部位欠陥の構造と形成メカニズムに関する詳細な説明は、Chemical Reviews 2000、100(4),1316~1327頁に見出すことができる。これらの欠陥は、以下に詳細に説明するように、13C NMRを用いて測定される。
【0016】
本発明で使用される用語「2,1部位欠陥」は、2,1-エリトロ部位欠陥及び2,1-トレオ部位欠陥の合計を定義する。
【0017】
好ましくは、ポリプロピレン中の2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数は、13C NMRで測定して、0.01~1.2モル%、より好ましくは0.4~0.85モル%、最も好ましくは0.45~0.8モル%である。
【0018】
本発明のプロピレン組成物に要求されるような部位欠陥の数を有するポリプロピレンは、通常、好ましくはシングルサイト触媒の存在下で調製される。
【0019】
本発明の使用におけるポリプロピレン組成物は、少なくとも80重量%のポリプロピレン、より好ましくは少なくとも90重量%のポリプロピレン、最も好ましくはポリプロピレンが組成物に存在する唯一のポリマー成分であること、すなわちポリプロピレン組成物がポリプロピレンからなり、任意に、本明細書で以下に記載されるような1つ以上の添加剤を含有する。添加剤の量は、存在する場合、通常、5重量%以下、好ましくは3重量%以下である。
【0020】
本発明の組成物に含まれるようなポリプロピレンは、ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃/2.16kg)が、好ましくは15~37g/10分、更により好ましくは20~35g/10分である。
【0021】
ISO 11357に従ってDSCによって決定されるポリプロピレンの溶融温度Tは、好ましくは150~158℃であり、更により好ましくは153~157℃である。
【0022】
更に、ポリプロピレンは、GPCによって決定される比較的小さい分子量分布を有する。ポリプロピレンは、好ましくは2.5~4.5、更により好ましくは2.7~4.0の分子量分布MWDを有する。
【0023】
更に、ポリプロピレンは、ヘキサン抽出物を少量しか含まないという利点を有する。したがって、ポリプロピレンは、FDA試験に従って測定される2.0重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満のヘキサン抽出物含有量を有する。
【0024】
加工を容易にするために、ポリプロピレンは、核剤非存在下でも適切な結晶化温度を有することも望ましい。
【0025】
したがって、好ましくは、ポリプロピレンは、ISO 11357に従ってDSCによって決定される100~130℃の範囲、より好ましくは105℃~125℃の範囲、例えば110℃~120℃の範囲の結晶化温度Tcを有する。
【0026】
ポリプロピレンは、好ましくは、ISO 16152に従って決定される0.05~5重量%未満、より好ましくは0.1~4重量%、最も好ましくは0.2~3重量%の冷キシレン可溶(XCS)画分を有する。
【0027】
更に、ポリプロピレンは、好ましくは、ISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される1200~1800MPa、より好ましくは1250~1650MPaの範囲、最も好ましくは1300~1600MPaの範囲の曲げ弾性率を有する。
【0028】
好ましくは、ポリプロピレンは、0.8超、更により好ましくは0.9超の分岐指数g’を有する。好ましい実施形態において、ポリプロピレンの分岐指数g’は、0.8超~1.0であり、最も好ましくは0.9超~1.0である。
【0029】
分岐指数g’は、分岐の程度を定義し、ポリマーの分岐の量と相関がある。分岐指数g’は、g’=[IV]br/[IV]linのように定義され、ここで、g’は分岐指数、[IV]brは分岐ポリプロピレンの固有粘度、[IV]linは分岐ポリプロピレンと同じ重量平均分子量(±10%の範囲内)を有する線状ポリプロピレンの固有粘度である。それにより、g’値が低いことは、高分岐ポリマーの指標となる。言い換えれば、g’値が減少すると、ポリプロピレンの分岐は増加する。この文脈で参照されるのは、B.H.Zimm及びW.H.Stockmeyer、J.Chem.Phys.17、1301(1949)を参照されたい。この文献は、参照により本明細書に含まれる。
【0030】
分岐指数g’を決定するために必要な固有粘度は、DIN ISO 1628/1、1999年10月に従って測定される(135℃のデカリン中)。
【0031】
好ましくは、押出コーティング用ポリプロピレン組成物は、0.8超、更により好ましくは0.9超の分岐指数g’を有する。好ましい実施形態において、ポリプロピレン組成物の分岐指数g’は、0.8超~1.0であり、最も好ましくは0.9超~1.0である。この場合、組成物全体が[IV]brに使用される。
【0032】
好ましくは、ポリプロピレンは、2つのポリマー画分(PPH-1)及び(PPH-2)を含むか、又はそれらからなる。画分(PPH-1)と画分(PPH-2)との間の分割は、好ましくは30:70~70:30であり、より好ましくは45:55~65:35であり、最も好ましくは55:45~60:40である。
【0033】
任意に、通常は5重量%未満の少量のプレポリマーがポリプロピレン中に存在してもよい。
【0034】
更に、(PPH-1)は、ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃/2.16kg)が10~50g/10分、より好ましくは15~40g/10分、最も好ましくは20~35g/10分の範囲にあること、及び/又は(PPH-2)は、ISO 1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃/2.16kg)が10~50g/10分、より好ましくは15~40g/10分、最も好ましくは20~35g/10分の範囲にあることが好ましい。
【0035】
好ましくは、ポリプロピレンは、メタロセン触媒の存在下で製造され、このメタロセン触媒は、国際公開第2013/007650号、国際公開第2015/158790号及び国際公開第2018/122134号に記載の実施形態のいずれか一つにおける錯体を含むメタロセン触媒であることが好ましい。
【0036】
活性な触媒種を形成するためには、通常、当該技術分野で周知の助触媒を用いることが必要である。メタロセン触媒を活性化するために使用される有機アルミニウム化合物又はホウ素含有助触媒又はそれらの組み合わせのような13族金属の1つ以上の化合物を含む助触媒は、本発明での使用に好適である。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、ホウ素含有助触媒、例えばホウ酸塩助触媒及びアルミノキサン助触媒を含む助触媒系が使用される。
【0038】
適切な助触媒は、国際公開第2013/007650号、国際公開第2015/158790号及び国際公開第2018/122134号に記載されており、そこに記載されているような実施形態のいずれか1つの助触媒が使用されることが好ましい。
【0039】
ポリプロピレンを製造するために使用される触媒系は、理想的には、外部担体に支持された固体微粒子の形態で提供される。
【0040】
使用される微粒子担体材料は、シリカ又はシリカ-アルミナのような混合酸化物である。シリカ担体を使用することが好ましい。
【0041】
特に好ましくは、担体は、例えば国際公開第94/14856号、国際公開第95/12622号及び国際公開第2006/097497号に記載されたものに類似するプロセスを用いて、錯体が微粒子担体の細孔に充填され得るように多孔質材料である。
【0042】
固体触媒系の調製は、国際公開第2013/007650号、国際公開第2015/158790号及び国際公開第2018/122134号にも記載されており、触媒系は、そこに記載された実施形態のいずれか1つに従って調製されることが好ましい。
【0043】
2つの画分(PPH-1)及び(PPH-2)を含む実施形態のいずれかにおけるポリプロピレンは、好ましくは、以下:
a)第1の反応器(R1)において、プロピレンを重合してポリマー画分(PPH-1)を得る工程と、
b)前記ポリマー画分(PPH-1)及び前記第1の反応器の未反応モノマーを第2の反応器(R2)に移送する工程と、
c)前記第2の反応器(R2)にプロピレンを供給する工程と、
d)前記第2の反応器(R2)において、前記ポリマー画分(PPH-1)の存在下でプロピレンを重合して(PPH-1)と完全混合されたポリマー画分(PPH-2)を得、結果として最終ポリプロピレンを得る工程と
を含むプロセスで製造され、ここで、好ましくは、重合は、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つにおいて、メタロセン触媒系の存在下で行われる。
【0044】
したがって、ポリプロピレンは、好ましくは、メタロセン触媒の存在下で、直列に接続された少なくとも2つの反応器を含むか、又はそれらからなる逐次重合プロセスによってプロピレンを重合することによって調製される。
【0045】
2つの重合段階のそれぞれは、溶液、スラリー、流動床、バルク又は気相で行うことができる。
【0046】
「重合反応器」という用語は、主な重合がそこで行われることを示すものとする。したがって、プロセスが1つ又は2つの重合反応器からなる場合、この定義は、系全体が、例えば予備重合反応器における予備重合工程を含むという選択肢を除外するものではない。「からなる」という用語は、主要な重合反応器の観点からの閉じた表現に過ぎない。
【0047】
「順次重合プロセス」という用語は、ポリプロピレンが直列に接続された少なくとも2つの反応器で製造されることを示す。したがって、このような重合系は、少なくとも第1の重合反応器(R1)及び第2の重合反応器(R2)、ならびに任意に第3の重合反応器(R3)を含む。
【0048】
第1の重合反応器(R1)は、好ましくはスラリー反応器であり、バルク又はスラリーで操作する任意の連続又は単純攪拌バッチタンク反応器又はループ反応器であることができる。バルクとは、少なくとも60%(w/w)のモノマーを含む反応媒体中での重合を意味する。本発明によれば、スラリー反応器は、好ましくは、(バルク)ループ反応器である。
【0049】
第2の重合反応器(R2)及び任意の第3の重合反応器(R3)は、好ましくは気相反応器(GPR)、すなわち第1の気相反応器(GPR1)及び第2の気相反応器(GPR2)である。本発明による気相反応器(GPR)は、好ましくは、流動床反応器、高速流動床反応器又は沈降床反応器、又はそれらの任意の組合せである。
【0050】
好ましい多段プロセスは、例えば欧州特許出願公開第0887379号、国際公開第92/12182号、国際公開第2004/000899号、国際公開第2004/111095号、国際公開第99/24478号、国際公開第99/24479号又は国際公開第00/68315号などの特許文献に記載のBorealisによって開発されたような「ループ気相」プロセス(BORSTAR(登録商標)技術として知られている)である。
【0051】
更に好適なスラリー気相プロセスは、BasellのSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0052】
好ましくは、上記で定義されたポリプロピレンの製造方法において、工程(a)の第1の反応器(R1)、すなわちループ反応器(LR)のようなスラリー反応器(SR)の条件は、以下の通りであってよい。
・温度は、40℃~110℃、好ましくは60℃~100℃、より好ましくは65~95℃の範囲内である。
・圧力は、20bar~80bar、好ましくは40bar~70barの範囲内である。
・水素は、それ自体既知の方法でモル質量を制御するために添加することができる。
【0053】
続いて、第1の反応器(R1)の反応混合物を第2の反応器(R2)、すなわち気相反応器(GPR1)に移送し、その条件は、好ましくは以下の通りである。
・温度は、50℃~130℃、好ましくは60℃~100℃の範囲内である。
・圧力は、5bar~50bar、好ましくは15bar~40barの範囲内である。
・水素は、それ自体既知の方法でモル質量を制御するために添加することができる。
【0054】
ポリプロピレン組成物は、スリップ剤、アンチブロック剤、UV安定剤、帯電防止剤、α核剤及び酸化防止剤を含む群から選択される1種以上の通常の添加剤を、好ましくは0.01~5.0重量%まで、より好ましくは0.05~3.0重量%の総量で含んでよい。
【0055】
スリップ剤は、表面に移行し、ポリマーとポリマーとの潤滑剤及び金属ローラーに対するポリマーの潤滑剤として作用し、結果として摩擦係数(CoF)を低下させる。例は、エルカミド(CAS番号112-84-5)、オレアミド(CAS番号301-02-0)、ステアロアミド(CAS番号124-26-5)又はそれらの組み合わせのような脂肪酸アミドである。
【0056】
酸化防止剤の例は、立体障害フェノール(例えばCAS番号6683-19-8、BASFからIrganox 1010 FF(商品名)としても販売されている)、リン系酸化防止剤(例えばCAS番号31570-04-4、ClariantからHostanox PAR 24(FF)(商品名)、又はBASFからIrgafos 168(FF)(商品名)としても販売されている)、硫黄系酸化防止剤(例えばCAS番号693-36-7、BASFからIrganox PS-802 FL(商品名)として販売されている)、窒素系酸化防止剤(例えば4,4’-ビス(1,1’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン)又は酸化防止剤の混合物である。
【0057】
酸捕捉剤の例は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛、合成ハイドロタルサイト(例えばSHT、CAS番号11097-59-9)、乳酸塩及びラクチレート、並びにステアリン酸カルシウム(CAS番号1592-23-0)及びステアリン酸亜鉛(CAS番号557-05-1)である。
【0058】
一般的なアンチブロッキング剤は、珪藻土などの天然シリカ(例えばCAS番号60676-86-0(SuperfFloss(商品名))、CAS番号60676-86-0(SuperFloss E(商品名))、又はCAS番号60676-86-0(Celite 499(商品名)))、合成シリカ(例えばCAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号7631-86-9、CAS番号112926-00-8、CAS番号7631-86-9、又はCAS番号7631-86-9)、ケイ酸塩(例えばケイ酸アルミニウム(カオリン)、CAS番号1318-74-7、ケイ酸アルミニウムナトリウム、CAS番号1344-00-9、焼成カオリン、CAS番号92704-41-1、ケイ酸アルミニウム、CAS番号1327-36-2、又はケイ酸カルシウムCAS番号1344-95-2)、合成ゼオライト(ナトリウムカルシウムアルミノシリケート水和物、CAS番号1344-01-0、又はナトリウムカルシウムアルミノシリケート水和物、CAS番号1344-01-0)である。
【0059】
好適なUV安定剤は、例えば、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-セバケート(CAS番号52829-07-9、Tinuvin 770)、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシ-ベンゾフェノン(CAS番号1843-05-6、Chimassorb 81)である。
【0060】
安息香酸ナトリウム(CAS番号532-32-1)のようなα核剤;アルミニウム-ヒドロキシ-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート]とミリスチン酸リチウムとの混合物(フランス、アデカパルマロールのAdekastab NA-21として市販されている)又は1,3:2,4-ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール(CAS番号135861-56-2、米国、MillikenのMillad 3988として市販されている)も添加することができる。
【0061】
好適な帯電防止剤は、例えば、グリセロールエステル(CAS番号97593-29-8)又はエトキシル化アミン(CAS番号71786-60-2又は61791-31-9)又はエトキシル化アミド(CAS番号204-393-1)である。
【0062】
通常、これらの添加剤は、各単一成分に対して100~1,000ppmの量で添加される。
【0063】
好ましくは、本発明の組成物には、少なくとも酸化防止剤が添加される。
【0064】
特に明記しない限り、本発明の説明は、上述した本発明の好ましい実施形態のいずれか1つ以上を、その最も一般的な特徴で説明した本発明と組み合わせることができるように理解されるべきである。
【0065】
本発明は、上述した実施形態のいずれかにおけるポリプロピレン組成物を押出により物品上にコーティングする物品の押出コーティング方法、及び上述した実施形態のいずれかにおけるポリプロピレン組成物を含むか、又はそれからなるコーティング層を有するコーティングされた物品に更に関する。
【0066】
押出コーティング方法は、従来の押出コーティング技術を使用して実施することができる。それゆえ、本発明による組成物は、典型的にはペレットの形態で押出装置に供給されてもよい。押出機からのポリマー溶融物は、好ましくはフラットダイを通過してコーティングされるべき基材に送られる。コーティングされた基材は、チルロールで冷却された後、エッジトリマーに送られて巻き取られる。
【0067】
ダイの幅は通常、使用する押出機の大きさに依存する。したがって、90mm押出機では600~1200mm、115mm押出機では900~2500mm、150mm押出機では1000~4000mm、200mm押出機では3000~5000mmの範囲の幅であることが好適である。ライン速度(ドローダウン速度)は、好ましくは75m/分以上、より好ましくは100m/分以上である。ほとんどの商業的に稼働している機械では、ライン速度は好ましくは300m/分を超えるか又は500m/分を超える。最新の機械は、最大1,000m/分、例えば300~800m/分のライン速度で動作するように設計されている。
【0068】
ポリマー溶融物の温度は、典型的には240~330℃である。本発明のポリプロピレン組成物は、単層コーティングとして、又は共押出法における外層として、基材上に押出すことができる。多層押出コーティングでは、上記で定義したようなポリマー層構造と任意に他のポリマー層を共押出することができる。所望又は必要に応じて、公知の方法でオゾン処理及び/又はコロナ処理を更に行うことが可能である。
【0069】
本発明による組成物を使用して得られる押出コーティングされた製品及び物品の主な最終用途は、牛乳、ジュース、ワイン又は他の液体用の液体包装、スナック、菓子、肉、チーズ及び医療製品用の軟質包装、洗剤カートン、オーブン又は電子レンジ用のカップ及び皿板、あるいは滅菌可能な食品包装のような硬質包装だけでなく、写真用紙又はペーパーリール及びリームラップなどの工業用途、ならびに技術用積層物、好ましくは滅菌可能及び/又はレトルト可能特性を備えたものなどの包装用途である。
【0070】
物品は、紙、板紙又はクラフト紙又は織布又は不織布などの繊維基材、アルミニウム箔などの金属箔、又は延伸ポリプロピレンフィルム、非延伸ポリプロピレンフィルム、PETフィルム、PAフィルム又はセロハンフィルム、金属蒸着フィルム又はそれらの組み合わせなどのプラスチックフィルムなどの、その上に押出コーティングによりコーティングを施すことができる任意の物品であり得る。
【0071】
好ましくは、物品は、紙、板紙、繊維基材、及び/又は金属箔である。
【0072】
以下では、本明細書で使用されるパラメータの測定及び決定方法を示し、図面を参照し、実施例及び比較例によって本発明を更に説明する。
【0073】
<測定方法及び決定方法>
a)メルトフローレートMFRの測定
MFR(230℃)は、ISO 1133(230℃、2.16kg荷重)に従って測定される。
【0074】
b)ポリマー分画PPH-2のメルトフローレートMFRの計算
【0075】
【数1】
【0076】
ここで、
w(A1)は、ポリマー画分PPH-1の重量分率[重量%]であり、
w(A2)は、ポリマー画分PPH-2の重量分率[重量%]であり、
MFR(A1)は、ポリマー画分PPH-1のメルトフローレートMFR(230℃)[g/10分]であり、
MFR(A)は、ポリプロピレン(PPH)全体のメルトフローレートMFR(230℃)[g/10分]であり、
MFR(A2)は、ポリマー画分PPH-2の計算されたメルトフローレートMFR(230℃)[g/10分]である。
【0077】
c)NMR分光法による微細構造の定量
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を更に用いて、ポリマーのコモノマー含有量及びコモノマー配列分布を定量した。定量的13C{H}NMRスペクトルは、H及び13Cについてそれぞれ400.15MHz及び100.62MHzで動作するBruker Advance III 400 NMR分光計を用いて、溶液状態で記録した。すべてのスペクトルは、13Cに最適化された10mm拡張温度プローブヘッドを用いて、すべての気体に窒素ガスを使用して125℃で記録した.約200mgの材料を3mlの1,2-テトラクロロエタン-d(TCE-d)にクロム-(III)-アセチルアセトナート(Cr(acac))と共に溶解し、溶媒中の緩和剤65mM溶液とした(Singh,G.,Kothari,A.,Gupta,V.,Polymer Testing 28 5 (2009),475)。均一な溶液を得るために、ヒートブロックでの最初の試料調製後、NMRチューブを回転式オーブンで少なくとも1時間更に加熱した。磁石に挿入した後、チューブを10Hzで回転させた。この設定は、主にエチレン含有量を正確に定量するために必要な高分解能及び定量性のために選択された。最適化されたチップ角、1秒間のリサイクル遅延、及びバイレベルのWALTZ16デカップリング方式を用いて、NOEなしの標準単一パルス励起を採用した(Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,B.,J.Mag.Reson.187(2007)225;Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.、Macromol.Rapid Commun.Rapid Commun.2007,28,1128)。1スペクトルあたり合計6144(6k)のトランジェントを取得した。
【0078】
定量的13C{H}NMRスペクトルは、独自のコンピュータプログラムを用いて処理、積分し、積分値から関連する定量的特性を決定した。すべての化学シフトは、溶媒の化学シフトを用いて、エチレンブロックの中心メチレン基(EEE)の30.00ppmを間接的に参照した。この手法により、この構造単位が存在しない場合でも、比較参照が可能であった。エチレンの取り込みに対応する特徴的なシグナルが観測された(Cheng,H.N.,Macromolecules 17 (1984),1950)。
【0079】
2,1エリトロ部位欠陥に対応する特徴的なシグナルが観察されたため(L.Resconi,L.Cavallo,A.Fait,F.Piemontesi,Chem.Rev.2000,100(4),1253、Cheng,H.N.,Macromolecules 1984,17,1950、及びW-J.Wang及びS.Zhu,Macromolecules 2000,33 1157に記載されている。)、測定された特性に対する部位欠陥の影響を補正する必要があった。他の種類の部位欠陥に対応する特徴的なシグナルは観察されなかった。
【0080】
コモノマー分率は、13C{H}スペクトルの全スペクトル領域にわたる複数のシグナルの積分を通じて、Wangらの方法(Wang,W-J.,Zhu,S.,Macromolecules 33 (2000),1157)を用いて定量した。この方法は、その堅牢性及び必要なときに部位欠陥の存在を考慮できることから選択された。積分領域は、遭遇したコモノマーの含有量の全範囲にわたって適用性を高めるためにわずかに調整された。
【0081】
PPEPP配列中の孤立したエチレンのみが観察される系では、存在しないことが知られている部位の非ゼロ積分の影響を低減するためにWangらの方法を修正した。このア手法は、そのような系のエチレン含有量の過大評価を減らし、絶対的なエチレン含有量を決定するために使用される部位の数を次のように減らすことによって達成された。
E=0.5(Sββ+Sβγ+Sβδ+0.5(Sαβ+Sαγ))
この一連の部位を使用すると、対応する積分方程式は次のようになる。
E=0.5(I+I+0.5(I+I))
ここでは、Wangらの論文で使用されたのと同じ表記を使用している(Wang,W-J.,Zhu,S.,Macromolecules 33 (2000),1157)。絶対的なプロピレン含有量に使用した方程式は変更しなかった。
【0082】
コモノマー組み込みのモルパーセントは、モル分率から計算された。
E[モル%]=100*fE
【0083】
コモノマー組み込みの重量パーセントは、モル分率から計算された。
E[重量%]=100*(fE*28.06)/((fE*28.06)+((1-fE)*42.08))
【0084】
トリアドレベルでのコモノマー配列分布は、Kakugoらの分析法(Kakugo, M.,Naito,Y.,Mizunuma,K.,Miyatake,T.Macromolecules 15 (1982) 1150)を用いて決定した。この方法は、より広い範囲のコモノマー含有量への適用性を高めるために、堅牢性及び積分領域がわずかに調整されていることから選択された。
【0085】
d)キシレン可溶分(XCS、重量%)
本発明で定義及び記載されるキシレン可溶(XS)画分は、ISO 16152に従って以下のように決定された。ポリマー2.0gを、攪拌下、135℃で250mlのp-キシレンに溶解させた。30分後、溶液を周囲温度で15分間冷却し、その後、25±0.5℃で30分間静置した。この溶液を濾紙で濾過し、2つの100mlフラスコに入れた。最初の100ml容器の溶液を窒素気流中で蒸発させ、残渣を90℃の真空下で一定重量に達するまで乾燥させた。次いで、キシレン可溶画分(%)を以下のように決定することができる。
XS%=(100*m*V0)/(m0*v)
m0=初期ポリマー量(g)
m=残渣の重量(g)
V0=初期体積(ml)
v=分析された試料の体積(ml)
【0086】
e)DSC分析、溶融温度(Tm)及び結晶化温度(Tc)
データは、TA Instrument Q2000示差走査熱量計(DSC)を用いて、5~7mgの試料について測定した。DSCは、ISO 11357/パート3/メソッドC2に従って、-30~+225℃の温度範囲で、10℃/分のスキャン速度で加熱/冷却/加熱サイクルで実行される。
【0087】
結晶化温度(Tc)及び結晶化エンタルピー(Hc)は冷却段階から決定され、溶融温度(Tm)及び溶融エンタルピー(Hm)は2回目の加熱段階から決定される。
【0088】
f)曲げ弾性率
曲げ弾性率は、EN ISO 1873-2に準拠して射出成形された80×10×4mmの試験棒に対してISO 178に従って決定される。
【0089】
g)ヘキサン抽出物
ヘキサン抽出率は、FDA法(federal registration、タイトル21、チャプター1、パート177、セクション1520、付属書B)に従い、溶融温度220℃及びチルロール温度20℃の単層キャストフィルムラインで製造した厚さ100μmのキャストフィルムに対して測定される。抽出は、50℃の温度及び30分の抽出時間で行われた。
【0090】
h)分子量特性
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散度(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、以下の方法に従って決定された。
【0091】
重量平均分子量Mw及び多分散性(Mw/Mn)(ここで、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)は、ISO 16014-1:2003及びISO 16014-4:2003に基づく方法により測定される。屈折率検出器及びオンライン粘度計を備えたWaters Alliance GPCV 2000装置を、TosoHaasからの3×TSK-ゲルカラム(GMHXL-HT)及び145℃で1mL/分の一定流速の溶剤としての1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB,200mg/Lの2,6-ジtertブチル-4-メチル-フェノールで安定化)とともに用いた。分析ごとに216.5μlの試料溶液を注入した。カラムセットは、0.5kg/モル~11500kg/モルの範囲にある19種類の狭いMWDポリスチレン(PS)標準と、十分に特性付けされた広いポリプロピレン標準のセットとの相対校正を用いて校正した。全ての試料は、5~10mgのポリマーを10mL(160℃で)の安定化TCB(移動相と同じ)に溶解させ、GPC装置にサンプリングする前に連続的に振とうしながら3時間保持するにより調製した。
【0092】
h)シーリング挙動
コーティングのシーリング挙動は、ホットタック力を測定することにより、以下のように決定した。
最大ホットタック力、すなわち力/温度図の最大値が決定され報告された。ホットタック測定は、ASTM F 1921の方法に従い、J&Bホットタック試験機で行った。この規格では、試料を幅15mmに切断する必要がある。試料は、ホットタック試験機に垂直に配置され、両端がメカニカルロックに取り付けられている。次に、試験機でシールし、そのホットシールを引き抜き、その抵抗力を測定する。
シーリングのパラメータは次のようであった。
【0093】
【表1】
【実施例
【0094】
シングルサイトメタロセン触媒を用いる本発明に係るポリプロピレン(本発明例1、IE1)を以下のように調製した。
触媒系IE1:
メタロセン(MC1)(rac-アンチジメチルシランジイル(2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチル-インデニル)(2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)インデニル)ジルコニウムジクロリド)
【0095】
【化1】
【0096】
を国際公開第2013/007650E2号に記載の手順に従って合成した。
【0097】
MAO-シリカ担体を以下のように調製した。機械式攪拌機及びフィルターネットを備えた鋼製反応器に窒素を流し、反応器温度を20℃に設定した。次に、600℃で予備焼成されたAGC Si-Tech CoからのシリカグレードDM-L-303(7.4kg)を供給ドラムから添加し、続いて手動バルブを使用して窒素で慎重に加圧及び減圧した。次に、トルエン(32kg)を添加した。この混合物を15分間攪拌した。次に、Lanxessからのトルエン中のMAOの30重量%溶液(17.5kg)を、70分以内に反応器の上部の供給ラインを介して添加した。その後、反応混合物を90℃まで加熱し、90℃で更に2時間攪拌した。スラリーを沈降させ、母液を濾過した。MAO処理した担体をトルエン(32kg)で90℃にて2回洗浄した後、沈降させ、濾過した。反応器を60℃に冷却し、固体をヘプタン(32.2kg)で洗浄した。最後にMAO処理したSiOを窒素流下で60℃にて2時間乾燥させ、次いで真空下(-0.5barg)で5時間攪拌しながら乾燥させた。MAO処理した担体は、12.6重量%のAlを含むことがわかった自由流動性白色粉末として回収された。
【0098】
最終的な触媒系を以下のように調製した。トルエン中の30重量%MAO(2.2kg)を、ビュレットを介して20℃で鋼製窒素ブランク反応器に添加した。次に、トルエン(7kg)を攪拌しながら添加した。メタロセンMC1(286g)を金属シリンダーから添加し、続いて1kgのトルエンで洗い流した。この混合物を20℃で60分間攪拌した。次に、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(336g)を金属シリンダーから添加し、続いて1kgのトルエンで洗い流した。この混合物を室温で1時間攪拌した。得られた溶液を、上記のように調製したMAO-シリカ担体の攪拌ケーキに1時間かけて添加した。ケーキを12時間放置し、続いてN流下で60℃にて2時間乾燥させ、更に、真空下(-0.5barg)で攪拌しながら5時間乾燥させた。乾燥させた触媒は、13.9重量%のAl及び0.26重量%のZrを含むピンク色の自由流動性粉末の形態でサンプリングされた。
【0099】
IE1の本発明ポリマーを調製するための重合は、上記のような触媒系を用いて、2反応器セットアップ(ループ-気相反応器(GPR1))及び予備重合器を備えたBorstarパイロットプラントにおいて行われた。
【0100】
IE1の重合条件とIE1及びCE2の樹脂の最終的な特性を表1に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
CE2の樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒を用いて調製され、参照される国際公開第2017/118612号の発明例で使用されるプロピレンホモポリマーに対応する。
【0103】
このポリマー粉末は、共回転二軸押出機Coperion ZSK 57で220℃にて0.1重量%の酸化防止剤(Irgafos 168FF);0.1重量%の立体障害フェノール(Irganox 1010FF);0.05重量%のステアリン酸カルシウムと混ぜ合わされた。
【0104】
上記のようにIE1及びCE2の混ぜ合わされた樹脂を用いて、以下のように樹脂を押出コーティングすることにより紙へのコーティング層を作製した。
【0105】
Beloitの共押出コーティングラインで押出コーティングを行った。そのラインはPeter CloerenのEBRダイ及び5層フィードブロックを備えていた。ダイ幅は1000mmであり、最適な作業幅は600~800mmである。ラインの設計最高速度は1000m/分であり、試験試料の製造中はライン速度を150m/分に維持した。
【0106】
上記のコーティングラインにおいて、UGクラフト紙70g/mを、上記に開示したIE1又はCE2の樹脂(層1、9g/m)と、ポリプロピレン樹脂WG341C(Borealisから市販、密度:910kg/m、メルトフローレート(230℃/2.16kg):25g/10分、溶融温度(DSC)161℃、ビカット軟化温度A、(10N)132℃)の層2(9g/m)とから構成される押出構造物を紙基材に付着させて被覆した。
【0107】
したがって、IE1の樹脂から構成される層1は、1.0の分岐指数g’を有した。
【0108】
ポリマー溶融物の温度は290℃に設定され、押出機の温度プロファイルは200~240~290~290℃とした。チルロールはマットであり、その表面温度は15℃であった。使用したダイスの開口部は0.65mmであり、ニップ距離は180mmであった。溶融フィルムは、ニップから基材側へ+10mmのところで初めて基材に接触した。加圧ロールの圧力は、3.0kp/cmであった。ライン速度は150m/分であった。
【0109】
各試料のホットタックは、90℃からホットタック力の測定値が1N未満となる温度までの温度範囲でホットタック力を試験することにより確立した。この規格では、少なくとも3回の平行測定を行うことが必要である。温度は10℃又は5℃刻みで上昇させた。
【0110】
IE1及びCE2のコーティングのホットタック力の測定結果を、それぞれ図1及び図2に示す。
【0111】
SIT値及びSET値は、ホットタック測定から得られたものである。本発明では、ホットタック力が2Nに達する温度(℃)を最低シーリング温度(SIT)と定義し、ホットタック力が2Nのままである温度(℃)を最高シーリング温度(SET)と定義する。
【0112】
最大ホットタック強度は、シーリング範囲の20℃間隔での最高強度(N)レベルと定義される。
【0113】
図1及び図2のデータからわかるように、IE1で調製されたコーティングは、より低いシーリング温度及びより高いシーリング力を提供する。
図1
図2