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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】デジタル印刷システム用の中間転写部材
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
B41J2/01 101
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023077758
(22)【出願日】2023-05-10
(62)【分割の表示】P 2020571467の分割
【原出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2023106460
(43)【公開日】2023-08-01
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】62/689,852
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/715,822
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/748,569
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/828,501
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514210005
【氏名又は名称】ランダ コーポレイション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002723
【氏名又は名称】高法弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ランダ,ベンジオン
(72)【発明者】
【氏名】ゴラル,トマー
(72)【発明者】
【氏名】ブルカトヴスキー,ヴィタリー
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-167498(JP,A)
【文献】特開2018-084617(JP,A)
【文献】特開2006-154289(JP,A)
【文献】特開2017-072776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷システムであって、
インク画像を標的基板に転写するように構成された可撓性中間転写部材(ITM)であって、前記ITMは、複数の層のスタックを備え、かつ、前記ITMに沿う1つ以上のそれぞれのマーキング位置において、前記複数の層のうちの少なくとも1つの少なくとも一部の中に彫刻された構造を備える1つ以上のマーカを有する、ITMと、
前記ITMに対する既定の位置に配置され、かつ、前記マーカのそれぞれの位置を示す信号を生成するように構成された少なくとも1つの感知アセンブリであって、前記感知アセンブリは、赤外(IR)または紫外(UV)の放射線を前記ITMに当て、かつ、前記1つ以上のマーカから放出された放射線の少なくとも一部を感知することに応答して前記信号を生成するように構成された光源を備える、感知アセンブリと、
前記ITMと前記感知アセンブリとの間に配置され、かつ、第1のスリットおよび第2のスリットを有するスリットアセンブリであって、前記第1のスリットおよび前記第2のスリットは、互いに既定の距離を置いて形成され、かつ、前記スリットアセンブリを介して、前記光源から放出されたUVまたはIR放射線を備える1つ以上の光ビームを通すように構成され、前記マーカのうちの所与のマーカが前記第1のスリットと一直線上にある時に、前記感知アセンブリは、前記第1のスリットと一直線上にある所与のマーカの位置を示す第1の信号を生成するように構成され、前記所与のマーカが前記第2のスリットと一直線上にある時に、前記感知アセンブリは、前記第2のスリットと一直線上にある所与のマーカの位置を示す第2の信号を生成するように構成される、スリットアセンブリと、
前記第1の信号および前記第2の信号を受信し、かつ、前記第1の信号および前記第2の信号に基づいて、前記印刷システム内のプロセスを制御し、かつ前記ITMの変形を検出するように構成されたプロセッサと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記層のスタックは、少なくとも、(a)前記放射線の強度を、そこから反射しないように減衰するように構成された非反射性層、および、(b)前記非反射性層の上に形成され、かつ、前記放射線の少なくとも一部を通すように構成された透明層を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記マーカのうちの少なくとも1つは、前記彫刻された構造の少なくとも一部を充填し、かつ、前記放射線の一部の少なくともいくらかを反射するように構成された充填材料を備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記感知アセンブリは、前記IRまたは前記UVを備える放出された放射線の少なくとも一部を感知するように構成されたセンサを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムはファイバアセンブリを備え、前記ファイバアセンブリは、前記スリットアセンブリと前記感知アセンブリとの間に配置され、かつ、前記スリットアセンブリを通過する光ビームを前記感知アセンブリへ伝達するように構成された複数の光ファイバを有する、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記光ビームは、前記第1のスリットを通過する第1の光ビーム、および、前記第2のスリットを通過する第2の光ビームを備え、前記システムは、前記第1のスリットおよび前記第2のスリットの間に配置され、かつ、前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームを分離するように構成されたシールドを備える、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記マーカは、少なくとも、前記所与のマーカ、および、前記所与のマーカからマーカ間距離を置いて位置する隣接マーカを備え、前記マーカ間距離は前記既定の距離よりも大きい、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記ITMが前記第1のスリットおよび前記第2のスリットに対して既定の速度で動く時に、前記プロセッサは、前記既定の速度ならびに前記第1の信号および前記第2の信号に基づいて、前記ITMの変形を検出するように構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
方法であって、
(i)インク画像を標的基板に転写するように構成された可撓性中間転写部材(ITM)であって、前記ITMは、複数の層のスタックを備え、かつ、前記ITMに沿う1つ以上のそれぞれのマーキング位置において、前記複数の層のうちの少なくとも1つの少なくとも一部の中に彫刻された構造を備える1つ以上のマーカを有する、ITMと、(ii)前記ITMに対する既定の位置に配置され、かつ、前記マーカのそれぞれの位置を示す信号を生成するように構成された少なくとも1つの感知アセンブリであって、前記感知アセンブリは、赤外(IR)または紫外(UV)の放射線を前記ITMに当て、かつ、前記1つ以上のマーカから放出された放射線の少なくとも一部を感知することに応答して前記信号を生成するように構成された光源を備える、感知アセンブリと、(iii)前記ITMと前記感知アセンブリとの間に配置され、かつ、第1のスリットおよび第2のスリットを有するスリットアセンブリであって、前記第1のスリットおよび前記第2のスリットは、互いに既定の距離を置いて形成され、かつ、前記スリットアセンブリを介して、前記光源から放出されたUVまたはIR放射線を備える1つ以上の光ビームを通すように構成される、スリットアセンブリと、を備える印刷システムにおいて、前記マーカのうちの所与のマーカが前記第1のスリットと一直線上にある時に、前記第1のスリットと一直線上にある所与のマーカの位置を示す第1の信号を生成することと、
前記所与のマーカが前記第2のスリットと一直線上にある時に、前記第2のスリットと一直線上にある所与のマーカの位置を示す第2の信号を生成することと、
前記第1の信号および前記第2の信号を受信することと、
前記第1の信号および前記第2の信号に基づいて、前記印刷システム内のプロセスを制御し、かつ前記ITMの変形を検出することと、
を備える、方法。
【請求項10】
前記層のスタックは、少なくとも、(a)前記放射線の強度を、そこから反射しないように減衰するように構成された非反射性層、および、(b)前記非反射性層の上に形成され、かつ、前記放射線の少なくとも一部を通すように構成された透明層を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マーカのうちの少なくとも1つは、前記彫刻された構造の少なくとも一部を充填し、かつ、前記放射線の一部の少なくともいくらかを反射するように構成された充填材料を備え、前記第1の信号および前記第2の信号を生成することは、前記放射線の反射された部分の少なくともいくらかに基づいて前記第1の信号および前記第2の信号を生成することを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の信号および前記第2の信号を生成することは、前記IRまたは前記UVを備える放出された放射線の少なくとも一部を感知することを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記システムはファイバアセンブリを備え、前記ファイバアセンブリは、前記スリットアセンブリと前記感知アセンブリとの間に配置され、かつ、前記スリットアセンブリを通過する光ビームを前記感知アセンブリへ伝達するように構成された複数の光ファイバを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記光ビームは、前記第1のスリットを通過する第1の光ビーム、および、前記第2のスリットを通過する第2の光ビームを備え、前記方法は、前記第1のスリットおよび前記第2のスリットの間に配置されたシールドを用いて前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームを分離することを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記マーカは、少なくとも、前記所与のマーカ、および、前記所与のマーカからマーカ間距離を置いて位置する隣接マーカを備え、前記マーカ間距離は前記既定の距離よりも大きい、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記ITMを前記第1のスリットおよび前記第2のスリットに対して既定の速度で動かし、かつ、前記既定の速度ならびに前記第1の信号および前記第2の信号に基づいて、前記ITMの変形を検出することを備える、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にデジタル印刷に関し、特に、デジタル印刷システムの動作における制御のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル印刷におけるプロセスを制御するための様々な方法およびデバイスが、当技術分野において既知である。
【0003】
たとえば、PCT特許出願PCT/IB2013/051727号は、たとえば中間転写部材(ITM)を備える印刷システムのための制御装置および方法を説明する。いくつかの実施形態は、ITMの速度および/または張力および/または長さの調整に関する。いくつかの実施形態は、移動ITMにおけるインクの堆積の調整に関する。いくつかの実施形態は、ITMの動作に関連する1または複数のイベントをユーザに警告するように構成された装置に関する。
【0004】
米国特許第5,889,534号は、回転ドラム部材の外側表面に結合された印刷媒体の共通画像素子位置、すなわち画素へ向かって推進される複数のインク液滴の各々が、ドラム表面の一部におけるわずかな変動にかかわらず同じ画素位置に精密に到達するように、ドラムベースのデジタル印刷エンジンを特徴付ける方法を説明する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で説明される本発明の実施形態は、可撓性中間転写部材(ITM)、1または複数の感知アセンブリ、およびプロセッサを含むシステムを提供する。可撓性ITMは、複数の層のスタックを含み、ITMに沿った1または複数のそれぞれのマーキング位置において層の少なくとも1つに彫刻された1または複数のマーカを有し、ITMは、表面にインク画像を形成するためにインク供給システムからインク液滴を受け取り、インク画像を標的基板に転写するように構成される。1または複数の感知アセンブリは、ITMに対する1または複数のそれぞれの既定の位置に配置され、マーカのそれぞれの位置を示す信号を生成するように構成される。プロセッサは、信号を受信し、信号に基づいて、ITMにおけるインク液滴の堆積を制御するように構成される。
【0006】
いくつかの実施形態において、マーカの少なくとも1つは、グリッドマーカ、動き符号化コード、1次元(1D)バーコード、2次元(2D)バーコード、および3次元(3D)バーコードから成るリストから選択された少なくとも1つのコードを含む。他の実施形態において、2Dバーコードは、クイックレスポンス(QR)コードおよびAZTECコードの少なくとも1つを含む。また他の実施形態において、マーカの少なくとも1つは、円形、長方形、正方形、および星形から成るリストから選択された幾何学的形状を有する。
【0007】
実施形態において、システムは、各光源がそれぞれの感知アセンブリに面し、またはそれぞれのセンサに結合されるように感知アセンブリの少なくとも1つにそれぞれ関連付けられた1または複数の光源を含み、光源の各々は、ITMを照明するように構成される。他の実施形態において、システムはスリットアセンブリを含み、スリットアセンブリは、ITMと感知アセンブリとの間に配置され、互いに既定の距離を置いて形成された、スリットアセンブリを介して光源から放出された1または複数の光ビームを通すように構成された第1および第2のスリットを有し、マーカのうちの所与のマーカが第1のスリットと一直線上にある時、感知アセンブリは、第1のスリットと一直線上にある所与のマーカの位置を示す第1の信号を生成するように構成され、所与のマーカが第2のスリットと一直線上にある時、感知アセンブリは、第2のスリットと一直線上にある所与のマーカの位置を示す第2の信号を生成するように構成され、プロセッサは、第1および第2の信号に基づいて、ITMの変形を検出するように構成される。
【0008】
いくつかの実施形態において、システムは、スリットアセンブリと感知アセンブリとの間に配置され、スリットアセンブリを通過する光ビームを感知アセンブリへ伝達するように構成された複数の光ファイバを有するファイバアセンブリを含む。他の実施形態において、光ビームは、第1のスリットを通過する第1の光ビームおよび第2のスリットを通過する第2の光ビームを含み、システムは、第1および第2のスリットの間に配置され、第1および第2の光ビームを分離するように構成されたシールドを含む。また他の実施形態において、マーカは、所与のマーカと、所与のマーカからマーカ間距離を置いて位置する隣接マーカとを少なくとも含み、マーカ間距離は、既定の距離よりも大きい。
【0009】
実施形態において、ITMが第1および第2のスリットに対して既定の速度で動く時、プロセッサは、既定の速度および第1および第2の信号に基づいて、ITMの変形を検出するように構成される。他の実施形態において、光源の少なくとも1つは、可視光、赤外(IR)光、および紫外(UV)光の1つを放出するように構成され、感知アセンブリの少なくとも1つは、それぞれの光源から放出された光を感知するように構成される。また他の実施形態において、マーカの少なくとも1つは、磁性材料を含み、感知アセンブリの少なくとも1つは、磁性材料と感知アセンブリとの間に生成された磁界を感知し、感知された磁界に基づいて、信号を生成するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態において、システムは、少なくとも1つのステーションまたはアセンブリを含み、プロセッサは、信号に基づいて、システムの少なくとも1つのステーションまたはアセンブリの動作を制御するように構成される。他の実施形態において、少なくとも1つのステーションまたはアセンブリは、(a)画像形成ステーション、(b)押付けステーション、(c)ITMガイドシステム、(d)1または複数の乾燥アセンブリ、(e)ITM処理ステーション、および(f)画像品質制御ステーションから成るリストから選択される。また他の実施形態において、画像形成ステーションは、1または複数の印刷ヘッドを備える印刷バーを少なくとも含み、画像形成ステーションは、インク供給システムに結合され、そこからインクを受け取り、印刷ヘッドを用いてITMにインク液滴を塗布するように構成される。
【0011】
実施形態において、押付けステーションは、インク画像を標的基板に転写するように構成された回転可能押付けシリンダおよび回転可能圧力シリンダを含み、プロセッサは、信号に基づいて、(a)押付けシリンダと圧力シリンダとの係合および係合解除のタイミング、(b)押付けシリンダおよび圧力シリンダの少なくとも1つの運動プロファイル、および(c)係合解除された押付けシリンダと圧力シリンダとの間隙のサイズから成るリストから選択された少なくとも1つの動作を制御するように構成される。他の実施形態において、プロセッサは、信号に基づいて、ITMに堆積したインク液滴を乾燥するために乾燥アセンブリの少なくとも1つによって付与される乾燥プロセスを制御するように構成される。また他の実施形態において、プロセッサは、信号に基づいて、ITMガイドシステムの1または複数のローラの速度を制御するように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、信号に基づいて、ITM処理ステーションにおけるITMの冷却プロセス、洗浄プロセス、および処理プロセスの少なくとも1つを制御するように構成される。他の実施形態において、プロセッサは、信号に基づいて、ITM処理ステーションにおけるITMへの処理液の付与を制御するように構成される。また他の実施形態において、プロセッサは、信号に基づいて、画像品質制御ステーションによって取得および処理されたインク画像のデジタル画像の少なくとも1つの撮像パラメータを制御するように構成される。
【0013】
実施形態において、1または複数のマーカは、ITMの少なくとも一部に沿って形成された連続マーカを含む。他の実施形態において、ITMに彫刻されたマーカの少なくとも1つは、ITM層の少なくとも1つに形成された構造の少なくとも一部を埋めるように構成された充填材料を含む。また他の実施形態において、充填材料は、磁性材料と感知アセンブリとの間に磁界を生成する磁性材料を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、充填材料は、ITM層の少なくとも1つの少なくとも1つの光学特性を変化させ、またはITM全体の少なくとも1つの光学特性を変化させるように構成される。他の実施形態において、充填材料は、シリコンポリマー、ポリウレタン、金属、シリコン系顔料、および磁性材料から成る材料のリストのうちの少なくとも1つの材料を含む。また他の実施形態において、充填材料は、シリコンポリマーへの化学親和力、0℃~180℃の温度範囲における機械的および化学的安定性、耐薬品性、および30ショアAより大きい表面硬さから成る属性のリストから選択された少なくとも1つの属性を有する。
【0015】
実施形態において、複数の層のスタックは、第1の層と、第1の層上に配置された第2の層とを少なくとも含み、マーカの少なくとも1つは、第2の層を貫通して彫刻され、第1の層内へ延びる。他の実施形態において、複数の層のスタックは、第1の層と、第1の層上に配置された第2の層とを少なくとも含み、マーカの少なくとも1つは、第1および第2の層の少なくとも1つの少なくとも一部に彫刻される。
【0016】
本発明の実施形態によると、可撓性中間転写部材(ITM)、1または複数の感知アセンブリ、およびプロセッサを含むシステムが更に提供される。可撓性ITMは、(a)複数の層のスタックと、(b)ITMに沿った1または複数のそれぞれのマーキング位置において可撓性層の少なくとも1つと一体化された1または複数のマーカとを含み、ITMは、表面にインク画像を形成するためにインク供給システムからのインク液滴を受け取り、インク画像を標的基板に転写するように構成される。1または複数の感知アセンブリは、ITMに対する1または複数のそれぞれの既定の位置に配置され、マーカのそれぞれの位置を示す信号を生成するように構成される。プロセッサは、信号を受信し、信号に基づいて、ITMにおけるインク液滴の堆積を制御するように構成される。
【0017】
いくつかの実施形態において、マーカは、可撓性層の少なくとも1つに彫刻された1または複数の3次元(3D)マーカを含む。
【0018】
本発明の実施形態によると、中間転写部材(ITM)を生成するための方法が更に提供され、方法は、1または複数の層を提供することを含む。1または複数のマーカは、1または複数の層の少なくとも1つに、その一体部分を成すように形成される。
【0019】
いくつかの実施形態において、1または複数の層を提供することは、(a)そこに衝突する光の強度を減衰するための不透明層、および(b)そこに衝突する光の強度を通すための透明層を少なくとも提供することを含む。他の実施形態において、1または複数のマーカを形成することは、不透明層の少なくとも一部を除去し、透明層の少なくとも一部を保持することを含む。また他の実施形態において、マーカを形成することは、1または複数の層の少なくとも1つの少なくとも一部にマーカの少なくとも1つを彫刻することを含む。
【0020】
本発明の実施形態によると、表面にインク画像を形成するためにインク液滴を受け取り、インク画像を標的基板に転写するために構成された中間転写部材(ITM)が更に提供され、ITMは、1または複数の層と、ITMに沿った1または複数のそれぞれのマーキング位置において1または複数の層の少なくとも1つと一体化された1または複数のマーカとを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、ITMに彫刻されたマーカの少なくとも1つは、ITM層の少なくとも1つに形成された構造の少なくとも一部を埋めるように構成された充填材料を含む。他の実施形態において、マーカの少なくとも1つは、可撓性層の少なくとも1つに印刷されたインクマーカを含む。また他の実施形態において、マーカの少なくとも1つは、可撓性層の少なくとも1つに印刷された1または複数の3次元(3D)マーカを含む。
【0022】
実施形態において、1または複数の層は、そこに衝突する光の強度を、そこを貫通して伝送されないように減衰するように構成された不透明層を含み、不透明層の少なくとも一部は、それぞれのマーキング位置の1または複数において除去される。他の実施形態において、1または複数の層は、(a)そこに衝突する光の強度を、そこから反射しないように減衰するように構成された非反射性層と、(b)そこに衝突する光の強度を通すように構成された透明層とを少なくとも含む。また他の実施形態において、1または複数の層は、そこに衝突する光の強度を、そこから反射しないように減衰させるように構成された非反射性層を含み、非反射性層の少なくとも一部は、それぞれのマーキング位置の1または複数において除去される。
【0023】
いくつかの実施形態において、層の少なくとも1つは、長さ軸に沿って折り畳まれ、連続ループを形成するように互いに結合された第1および第2の端部を有する。他の実施形態において、連続ループは、間接印刷システムの1または複数のローラの周囲に巻き付けられ、ローラによってガイドされるように構成される。また他の実施形態において、ITMは、間接印刷システムの1または複数のドラムの周囲に巻き付けられるように構成される。いくつかの実施形態において、マーカの少なくとも1つは、1または複数の層の少なくとも1つの少なくとも一部に彫刻される。
【0024】
実施形態において、連続ループは、シートおよび連続ウェブから成るリストから選択された標的基板にインク画像を転写するように構成される。他の実施形態において、層の少なくとも2つは、互いに位置合わせされ、共通の第1および第2の端部を有し、少なくとも2つの層は、長さ軸に沿って折り畳まれ、第1および第2の端部は、連続ループを形成するように互いに結合される。また他の実施形態において、マーカは、ITMの伸張量を示すように構成される。
【0025】
本発明の実施形態によると、表面にインク画像を形成するためにインク液滴を受け取り、インク画像を標的基板に転写するために構成された中間転写部材(ITM)が更に提供され、ITMは、1または複数の層と、ITMに沿った1または複数のそれぞれのマーキング位置において層の少なくとも1つに彫刻された1または複数のマーカとを含む。
【0026】
本発明の実施形態によると、中間転写部材(ITM)、1または複数の感知アセンブリ、およびプロセッサが更に提供される。ITMは、(a)1または複数の層と、(b)ITMに沿った1または複数のそれぞれの位置において1または複数の層の少なくとも1つに一体化された1または複数のマーカとを含む。ITMは、インク供給システムからインク画像を受け取り、インク画像を標的基板に転写するように構成される。1または複数の感知アセンブリは、ITMに対する1または複数のそれぞれの既定の位置に配置され、マーカのそれぞれの位置を示す信号を生成するように構成される。プロセッサは、信号を受信し、信号に基づいて、ITMにおける画像の配置を制御するように構成される。
【0027】
いくつかの実施形態において、ITMは、伸張するように構成され、信号に基づいて、プロセッサは、ITMの伸張量を推定するように構成される。
【0028】
本発明の実施形態によると、中間転写部材(ITM)、1または複数の感知アセンブリ、およびプロセッサを含む印刷システムが更に提供される。ITMは、(a)1または複数の層と、(b)ITMに沿った1または複数のそれぞれの位置において1または複数の層の少なくとも1つに一体化された1または複数のマーカとを含み、ITMは、印刷流体を供給するように構成された画像形成ステーションから印刷流体の画像を受け取り、画像を標的基板に転写するように構成される。1または複数の感知アセンブリは、ITMに対する1または複数のそれぞれの既定の位置に配置され、マーカのそれぞれの位置を示す信号を生成するように構成される。プロセッサは、信号を受信し、信号に基づいて、ITMにおける画像の配置を制御するように構成される。
【0029】
いくつかの実施形態において、1または複数の層の少なくとも1つは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、エラストマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、メタクリル酸系エラストマー、ゴム、ポリウレタン、ポリカーボネート、およびアクリルから成るリストから選択された少なくとも1つの材料を含む。他の実施形態において、印刷流体は、少なくとも1つの着色剤を含む液体を含む。また他の実施形態において、印刷流体は、1または複数の種類の着色剤含有スラリーを含む。
【0030】
実施形態において、印刷流体は、インクを含む。他の実施形態において、印刷流体は、トナーを含む。また他の実施形態において、ITMは、(a)インクジェット、(b)電子写真、(c)リソグラフィ、(d)フレキソ印刷、および(e)グラビア印刷から成るリストから選択されたプロセスまたはプロセスの組み合わせを実行するように構成される。
【0031】
本発明の実施形態によると、表面にインク画像を形成するためにインク液滴を受け取り、インク画像を標的基板に転写し、連続経路に沿って動くために構成された中間転写部材(ITM)が更に提供され、ITMは、第1および第2の長手方向エッジと、1または複数のガイド要素とを含む。第1および第2の長手方向エッジは、ITMの長手方向軸に沿って延びる。1または複数のガイド要素は、第1および第2の長手方向エッジに沿って配置され、連続経路に沿ってITMを動かすために印刷システムのガイドサブシステムと係合するように構成される。ガイド要素の少なくとも1つは、それぞれのガイド要素に沿った1または複数のそれぞれのマーキング位置に位置する1または複数のマーカを含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、ガイド要素は、第1および第2の長手方向エッジに沿って形成された1または複数の側方構造を含む。構造は、ITMに少なくとも長手方向の力を付与するためにガイドサブシステムのそれぞれのガイドトラックと係合するように構成され、側方構造の少なくとも1つは、マーカの少なくとも1つを含む。他の実施形態において、側方構造の少なくとも2つは、第1および第2の長手方向エッジの少なくとも1つに沿って互いに既定の間隔を置いて位置する。また他の実施形態において、ガイド要素の少なくとも1つは、ジップファスナを含み、側方構造は、ジップファスナの歯を含む。
【0033】
実施形態において、歯の1または複数は、マーカとしての機能を果たす。他の実施形態において、歯の少なくとも1つは、ITMの長手方向ITM寸法の0.003%~0.05%である長手方向マーカ寸法を有し、長手方向マーカ寸法および長手方向ITM寸法は、ITMの長手方向軸に沿って測定される。また他の実施形態において、ジップファスナは、500より多い数の歯を含み、歯の1または複数は、マーカとしての機能を果たす。
【0034】
本発明は、図面とともに取り上げられる、以下の発明を実施するための形態から、より詳しく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態に係る、デジタル印刷システムの概略側面図である。
図2A】本発明の実施形態に係る、位置感知アセンブリの概略側面図である。
図2B】本発明の実施形態に係る、位置感知アセンブリの概略側面図である。
図2C】本発明の実施形態に係る、位置感知アセンブリの概略側面図である。
図3A】本発明の他の実施形態に係る、位置感知アセンブリの概略側面図である。
図3B】本発明の他の実施形態に係る、位置感知アセンブリの概略側面図である。
図3C】本発明の他の実施形態に係る、位置感知アセンブリの概略側面図である。
図4A】本発明のいくつかの実施形態に係る、デジタル印刷システムのブランケットの概略上面図である。
図4B】本発明のいくつかの実施形態に係る、デジタル印刷システムのブランケットの概略上面図である。
図4C】本発明のいくつかの実施形態に係る、デジタル印刷システムのブランケットの概略上面図である。
図4D】本発明のいくつかの実施形態に係る、デジタル印刷システムのブランケットの概略上面図である。
図5A】本発明のいくつかの実施形態に係る、デジタル印刷システムのブランケットの概略断面図である。
図5B】本発明のいくつかの実施形態に係る、デジタル印刷システムのブランケットの概略断面図である。
図5C】本発明のいくつかの実施形態に係る、デジタル印刷システムのブランケットの概略断面図である。
図6】本発明のいくつかの実施形態に係る、デジタル印刷システムのブランケットにマーカを生成するためのプロセスシーケンスの概略断面図である。
図7】本発明のいくつかの実施形態に係る、デジタル印刷システムのブランケットにマーカを生成するためのプロセスシーケンスの概略断面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る、位置感知アセンブリの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
概観
以下で説明される本発明の実施形態は、デジタル印刷システムの精度を向上させるための方法および装置を提供する。
【0037】
いくつかの実施形態において、デジタル印刷システムは、本明細書においてブランケットとも称される移動可撓性中間転写部材(ITM)と、たとえば画像形成ステーション、インク乾燥ステーション、および押付けステーションなどのいくつかのステーションとを備え、ITMは、ステーション間をガイドシステムによって回転する。画像形成ステーションは、画像を形成するためにITMにインク液滴を塗布するように構成された複数の印刷バーを備える。インク乾燥ステーションは、ITMに塗布されたインク画像を乾燥するように構成され、押付けステーションは、インク画像を、ITMから、たとえば紙シートまたは連続ウェブなどの標的基板へ転写するように構成される。
【0038】
デジタル印刷システムは、ブランケット処理ステーションを更に備えてよく、ここで、ブランケットは、画像形成ステーションへ戻される前に、処理液を用いて洗浄、冷却、および処理される。
【0039】
デジタル印刷システムは、これらのステーションおよびデジタル印刷システムの他の構成要素の動作を制御するように構成されたプロセッサを更に備える。印刷プロセスにおいて、インク画像を精密に形成するためにITMにインク液滴を正確に堆積させ、その後、インク画像をITMから標的基板へ高精度で転写することが重要である。印刷プロセスの精度は、とりわけ、ITMの動きおよび挙動(たとえば延伸)を可能な限り精密かつ継続的に監視する能力に依拠する。
【0040】
原則として、ITM表面にラベルを貼り付け、ラベルを用いてITMの動きを制御することが可能であるが、そのようなラベルは、印刷プロセスにおけるITM動作の高デューティサイクルによって時間とともに劣化(たとえば剥離または摩耗)し得る。開示される実施形態において、少なくともいくつかのマーカはITMに形成され、ITMの制御のために用いられる。
【0041】
いくつかの実施形態において、ITMは、たとえばITM層またはITM表面に構造を形成すること、マーカを彫刻すること、および/またはITMの1または複数の層にインクを噴射および/または3次元(3D)構造を印刷すること、またはこれらの組み合わせなどの様々な技術を用いてITMの製造中に形成され得るマーカのセットを備える一体化エンコーダを備える。たとえば、マーカは、ITM表面に溝を彫刻し、その後、溝内に3D構造を印刷することによって形成され得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、デジタル印刷システムのプロセッサは、ITMに関する1または複数の位置に取り付けられたセンサから、それぞれのエンコーダマーカの位置を示す信号を受信するように構成される。プロセッサは更に、信号に基づいて、ITMを動かすように構成されたデジタル印刷システムのローラおよびダンサを制御することによって、ITMの運動プロファイル(たとえば速度、加速度、および減速度)を制御するように構成される。
【0043】
いくつかの実施形態において、ITM表面にマーカを彫刻することは、たとえばレーザマーキング、レーザアブレーション、および/または直接部分マーキング(たとえば機械パンチングおよび/またはピンニング)などの任意の適当な技術を用いて実行され得る。彫刻マーカは、任意の適当なサイズおよび形状のフットプリント(たとえば上面視で円形、長方形、正方形、または星形)またはプロファイル(たとえば断面視で穴、溝、または階段形状)を有してよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、彫刻マーカは、マーカに機械的支持を提供するため、およびエンコーダのマーカに特徴を追加するために、適当な充填材料で全体的または部分的に充填され得る。たとえば、充填材料は、彫刻マーカおよび/またはITM表面に磁気材料を塗布することによってITMの磁気特性を変化させ得る。代替または追加として、充填材料は、たとえば充填材料に様々な種類の顔料を添加することによって、彫刻マーカおよび/またはITM表面および/またはITMの少なくとも1つの層の光学特性を変化させ得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、エンコーダは、たとえばグリッドマーカ、クイックレスポンス(QR)コード、AZTECコード、またはこれらの組み合わせなど、マーカとしての機能を果たし得る様々な種類の符号化構造を備えてよい。これらのマーカは、たとえば光学系センサ(たとえば可視光、赤外線、紫外線)または磁気系センサなど、任意の適当な種類のセンサを用いて感知され得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、1または複数のエンコーダは、一般にITMの斜面に位置し、ITMに沿って交互に配置された様々な種類のマーカを備えてよい。追加または代替として、様々な種類のマーカは、ITMの異なるそれぞれの位置においてグループ化され得る。
【0047】
開示される技術は、たとえばインク画像を形成するためのITMへのインク液滴の堆積、インク液滴の乾燥、ITMから標的基板へのインク画像の転写、および画像形成ステーションへ戻る前のITMの処理など、デジタル印刷システムの複数の動作を正確に制御することによって、印刷画像の品質を向上させる。開示される技術は、たとえばローラにロータリエンコーダを一体化する必要性を低減することによって、デジタル印刷システムの複雑性を低減するために用いられ得る。また、開示されるエンコーダは、デジタル印刷システムにおいて一般に用いられる高デューティサイクルにおいても高い耐久性を示すように設計および製造される。
システム説明
【0048】
図1は、本発明の実施形態に係る、デジタル印刷システム11の概略側面図である。いくつかの実施形態において、システム11は、画像形成ステーション212、乾燥ステーション214、押付けステーション216、およびブランケット処理ステーション50を循環する回転可撓性ブランケット210を備える。本発明の文脈および特許請求の範囲において、「ブランケット」および「中間転写部材(ITM)」という用語は、同義的に用いられ、以下で詳しく説明するように、インク画像を受け取り、標的基板へインク画像を転写するように構成された中間部材として用いられる層のスタックを備える可撓性部材を指す。
【0049】
いくつかの実施形態において、画像形成ステーション212は、たとえば任意の適当な種類のインク(たとえばインクジェットインク)および/または液体トナーおよび/または着色剤含有スラリー、および少なくとも1つの着色剤を含む他の液体など、様々な種類の印刷流体を供給するように構成される。以下の説明は、水性インクに言及するが、他の任意の種類の印刷流体にも適用可能である。
【0050】
動作モードにおいて、画像形成ステーション212は、ブランケット210の表面の上側ランに、デジタル画像42の、本明細書において「インク画像」(不図示)とも称されるミラーインク画像を形成するように構成される。その後、インク画像は、ブランケット210の下側ランの下に位置する標的基板(たとえば紙、折り畳み箱、またはシートまたは連続ウェブ状の任意の適当な可撓性包装材)に転写される。
【0051】
本発明の文脈において、「ラン」という用語は、その上でブランケット210がガイドされる所与の任意の2つのローラ間にある、ブランケット210の長さまたは部分を指す。
【0052】
いくつかの実施形態において、設置中、ブランケット210は、溶接、糊付け、テーピングによって(たとえば、ストリップの両エッジを重ね合わせる連結ストリップとともに、カプトン(登録商標)テープ、室温加硫シリコン(RTV)液体接着剤、または熱可塑性接着剤を用いて)、または他の任意の適当な方法を用いて、連続ブランケットループ(不図示)を形成するためにエッジとエッジとを接着され得る。ブランケット210の端部を接合する任意の方法は、本明細書においてシームと称される不連続性をもたらすことがあり、シームにおけるブランケット210の厚さまたは化学および/または機械特性の不連続性の増大を回避することが望ましい。シームの設置に関する方法およびシステムの一例は、参照によってその開示が本願に組み込まれる、米国仮特許出願第62/532,400号において詳しく説明される。
【0053】
いくつかの実施形態において、画像形成ステーション212は、各々が、たとえばシアン(C)、マゼンタ(M)、黄色(Y)、および黒色(K)などの4つの異なる色の1つを堆積させるように構成された、インク供給システムに連結された4つの個別の印刷バー222を備える。他の実施形態において、ステーション212は、任意の適当な構成で間隔を置いてステーション212内に配置された任意の適当な数の印刷バー222を備えてよい。インク供給システムは、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄色(Y)、および黒色(K)の水性インクを印刷バー222へ供給するように構成された複数のインク槽(不図示)を更に備える。他の実施形態において、インク供給システムは、各色について複数のインク槽を備えてよく、任意選択的に、上述されていない追加の色のための追加のインク槽を備えてよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、印刷バー222の各々は、ブランケット210の表面にインク画像(不図示)を形成するためにブランケット210の表面に様々な色のインク液滴を噴射するように構成された1または複数の印刷ヘッドを組み込む。
【0055】
いくつかの実施形態において、印刷バー222は、たとえば黒色を含む様々な濃淡の灰色などの様々な濃淡の同じ色を堆積させるように構成され、または、2つ以上の印刷バー22に関して、同じ色、たとえば黒色を堆積させるように構成される。
【0056】
いくつかの実施形態において、システム11は、本明細書において中間乾燥ステーション(不図示)とも称され印刷バー222間に位置し得る、および/または、図1に示すように画像形成ステーション212の後に位置し得る乾燥ステーション224を備えてよい。乾燥ステーション224は、形成中のインク画像を部分的に乾燥するために、ブランケット210の表面に温風(または他の気体)を吹き付けるように構成される。
【0057】
印刷バーの間を流れる温風は、たとえば、印刷ヘッドの表面における凝縮の低減および/または付随物(たとえば、主要インク液滴の周囲に分散した残留物または小液滴)の処理、および/または印刷ヘッドのインクジェットノズルの詰まり防止を支援してよく、ブランケット210上の様々な色のインク液滴が不所望に混ざり合うことも防ぐ。いくつかの実施形態において、各印刷バー222は、所与の位置における印刷色の濃度を制御するために、ブランケット210上の所与の位置において同じ色の1または複数の液滴を噴射するように構成される。たとえば、黒色インクの1つの液滴は、薄灰色の印刷色をもたらし得るが、ブランケット210に堆積した黒色インクの3つの液滴は、所与の位置において濃灰色または黒色をもたらし得る。
【0058】
乾燥ステーション214において、ブランケット210に形成されたインク画像は、インクをより完全に乾燥させ、液体キャリアの大部分を蒸発させ、粘着性を持つ点まで加熱される樹脂および着色剤の層のみを残すために、放射線および/または温風に晒される。
【0059】
押付けステーション216において、ブランケット210は、圧縮性ブランケット219を搬送するように構成された押付けシリンダ220および圧力シリンダ218の間を通過する。
【0060】
いくつかの実施形態において、システム11は、たとえばブランケット210、画像形成ステーション212、および本明細書で説明される他の構成要素の動きなど、システム11の複数のステーションおよび他の構成要素を制御するように構成された制御盤12を備える。いくつかの実施形態において、制御盤12は、たとえばブランケット210およびステーション212の動きを制御するため、およびそれらからの信号を受信するための適当なフロントエンドおよびインタフェース回路を有するプロセッサ20、一般に汎用プロセッサを備える。いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、印刷システムによって用いられる機能を実行するためにソフトウェアにプログラムされてよく、プロセッサは、ソフトウェアに関するデータをメモリ22に格納する。ソフトウェアは、たとえばネットワークを介して電子形式でプロセッサ20にダウンロードされてよく、または、たとえば光学、磁気、または電子メモリ媒体などの非一時的有形媒体において提供され得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、制御盤12は、プロセッサ20から受信したデータおよび画像またはシステム10の入力デバイス40を用いてユーザ(不図示)によって挿入された入力を表示するように構成されたディスプレイ34を備える。いくつかの実施形態において、制御盤12は、他の任意の適当な構成を有してよく、たとえば、制御盤12およびディスプレイ34の代替構成は、その開示が参照によって本願に組み込まれる米国特許第9,229,664号において詳しく説明される。
【0062】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、メモリ22に格納された画像のパターンの1または複数のセグメントを備えるデジタル画像42をディスプレイ34に表示するように構成される。パターンは、システム11によって印刷される画像の特徴を定義するための1または複数のデジタルファイルに格納される。
【0063】
いくつかの実施形態において、システム11は、制御盤12と、システム11の全ての構成要素、モジュール、およびステーションとの間を電気的に接続するように構成された1または複数の配電盤235を備える。システム11の電気配線およびルーティングの構成は、単に例として簡略化され示されており、他の適当な構成が用いられてもよいことが理解される。
【0064】
いくつかの実施形態において、本明細書において冷却ステーションとも称されるブランケット処理ステーション50は、たとえば、ブランケットを冷却および/またはブランケット210の外側表面に処理液を付与すること、および/またはブランケット210の外側表面を洗浄することによって、ブランケットを処理するように構成される。ブランケット処理ステーション50において、ブランケット210が画像形成ステーション212へ入る前に、ブランケット210の温度は所望の値まで低減され得る。処理は、ブランケット210に、ブランケットの外側表面に冷却および/または洗浄および/または処理液を付与するために構成された1または複数のローラまたはブレードの上を通過させることによって実行され得る。いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、ブランケット210の温度を監視し、ブランケット処理ステーション50の動作を制御するために、たとえば温度センサ(不図示)から、ブランケット210の表面温度を示す信号を受信するように構成される。そのような処理ステーションの例は、たとえば、それらの開示が全て参照によって本願に組み込まれるPCT国際公開WO2013/132424号およびWO2017/208152号において説明される。
【0065】
図1の例において、ステーション50は、ローラ252と253との間に取り付けられるが、ステーション50は、押付けステーション216と画像形成ステーション212との間の他の任意の適当な位置でブランケット50に隣接して取り付けられ得る。
【0066】
シート226または連続ウェブ(不図示)は、供給スタック228から適当な運搬機構(不図示)によって搬送され、押付けシリンダ220と圧力シリンダ218との間に位置するニップを通過する。ニップ内で、インク画像を搬送するブランケット210の表面は、インク画像がシート226の表面に押し付けられ、ブランケット210の表面から綺麗に分離されるように、圧力シリンダ218の圧縮性ブランケット219によってシート226(または他の適当な基板)にしっかりと押圧される。その後、シート226は、出力スタック230へ運搬される。
【0067】
いくつかの実施形態において、印刷バー222は、矢印290によって表されたブランケット210の移動軸に沿って、互いに既定の間隔を置いて位置する。いくつかの実施形態において、システム11は、たとえばローラ232、240、242、および253などの様々な種類のローラを更に備える。実施形態において、これらのローラの少なくともいくつかは、画像形成ステーション212の下での所望の(一般に一定の)速度でのブランケット210の動きを可能にするように、制御盤12のプロセッサ20によって制御される。ただし、ブランケット210の滑らかではない、または振動を伴う移動は、1または複数の色を備えるインク画像の堆積に影響を及ぼし、一般に、色対色レジストレーションの精度に影響を及ぼし得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、システム11は、ダンサ250および252とも称される2つの動力付き緊張ローラを備える。ダンサ250および252は、ニップの前後でブランケット210におけるたるみの長さを制御するように構成され、それらの動きは、それぞれのダンサに隣接した両頭矢印によって概略的に表される。また、経年によるブランケット210の任意の延伸は、システム11のインク画像載置性能に影響を及ぼすことはなく、緊張ダンサ250および252によってより多くのたるみを緊張させることを必要とするのみである。
【0069】
いくつかの実施形態において、(たとえば以下の図2Aに示す)ロータリエンコーダは、ローラ232、240、242、および253、およびダンサ250および252の少なくとも1つに組み込まれる。ロータリエンコーダは、それぞれのローラまたはダンサの角変位を示す回転に基づく位置信号を生成するように構成される。
【0070】
ローラ232、240、242、および253、およびダンサ250および252の構成および動作は、たとえば、それらの開示が全て参照によって本願に組み込まれる米国特許出願公開2017/0008272号、および上述したPCT国際公開WO2013/132424号において更に詳しく説明される。
【0071】
いくつかの実施形態において、ブランケット210は、図1に概略的に示し、以下で図2~7においていくつかの実施形態で示すように、ブランケットに沿って形成(たとえば彫刻)された1または複数のマーカ33を備えるエンコーダを備える。ただし、マーカ33は、以下で説明するように、任意の適当な構成でブランケット210全体に分散し、またはブランケット層の1または複数に埋め込まれ得る。また、エンコーダは、マーカ33の代替または追加として、ブランケット210の少なくとも一部に沿って形成された少なくとも1つの連続マーカ(不図示)を備えてよい。連続マーカは、たとえば、以下で詳しく説明するように、ブランケット210の層の上または間にインクを噴射すること、または他の任意の適当な技術を用いることによって生成され得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、システム11は、たとえば、ブランケット210に隣接した1または複数のそれぞれの既定の位置に配置された、図内の8つの感知アセンブリ55A・・・55Hなどの複数の感知アセンブリを更に備える。感知アセンブリは、マーカ33の感知に応答して、たとえばマーカ33のそれぞれの位置を示す位置信号などの電気信号を生成するように構成される。図1の構成例において、感知アセンブリ55Aは、移動ブランケット210の所与のセクションが画像形成ステーション212の下を移動する前に、所与のセクションに彫刻されたマーカ33のそれぞれの位置を示す位置信号を生成するように、ローラ242の上に配置される。本発明の文脈および特許請求の範囲において、「信号」という用語は、感知アセンブリによって感知される、たとえば位置信号などの様々な種類の電気信号を指してよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、感知アセンブリ55Bは、「C」と表記されたシアン(および/または他の任意の)印刷バー222に結合されてよく、感知アセンブリ55Cは、「M」および「K」と表記された印刷バー222の間に配置され、感知アセンブリ55Dおよび55Eはそれぞれ乾燥ステーション214の前後に位置し、感知アセンブリ55F~55Hは、ブランケット210の下側ランに隣接した様々な位置に固定される。他の実施形態において、システム11は、ブランケット210に隣接した任意の適当な位置に固定された他の任意の適当な数の感知アセンブリ55を備えてよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、1または複数の同様のまたは異なる感知アセンブリは、印刷システム11に沿ったステーション、たとえば画像形成ステーション212、乾燥ステーション214、押付けステーション216、ブランケット処理ステーション50、およびシステム11の他のステーションの1または複数に関連付けられてよく、これらのステーションに隣接した任意の位置に位置し、上述したように信号を生成することを可能にし得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、感知アセンブリ55A~55Hは、ブランケット210の増分運動に対応する各マーカ33の位置を示す信号を生成するように構成される。実施形態において、感知アセンブリ55A~55Hは、これらの位置信号を受信し、位置信号に基づいて、たとえばブランケット210の運動などのいくつかのプロセスを制御するように構成されたプロセッサ20に電気的に接続される。
【0076】
いくつかの実施形態において、感知アセンブリ55A~55Hから受信した信号は、システム11の様々なステーションおよびモジュールを制御するために用いられ得る。たとえば、ステーション212において、これらの信号は、インク液滴噴射のタイミングまたは時間シーケンス、および印刷バー222の各印刷ヘッドからの噴射のプロファイルを設定する波形を設定するために用いられ得る。乾燥プロセスにおいて、感知アセンブリ55A~55Hから受信した信号は、たとえば、中間および乾燥ステーション214の温度および空気流量を設定するために用いられ得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、感知アセンブリ55A~55Hから受信した信号は、押付けステーション216のプロセスを制御するため、たとえば、シリンダ218および220の係合および係合解除のタイミングおよびそれらのそれぞれの運動プロファイルを制御するため、シリンダ218と220との間隙のサイズを制御するため、ブランケットシームの位置に関して押付けステーション216の動作を同期するため、およびステーション216の他の任意の適当な動作を制御するために用いられ得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、感知アセンブリ55A~55Hから受信した信号は、たとえば洗浄プロセスおよび/またはブランケット210への処理液の付与を制御するため、およびブランケット処理プロセスの他の全ての態様を制御するためなど、ブランケット処理ステーション50の動作を制御するために用いられ得る。
【0079】
また、感知アセンブリ55A~55Hから受信した信号は、システム11の動作の温度態様および熱交換態様を制御するシステム11の任意のサブシステムを制御するために、各ローラが個々に、および互いに同期した、システム11の全てのローラおよびダンサの動作を制御するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、感知アセンブリ55A~55Hから受信した信号は、システム11のブランケット撮像動作を制御するために用いられ得る。たとえば、標的基板に印刷された画像のデジタル画像を取得するように構成された画像品質制御ステーション(不図示)から得られたデータに基づいて、システム11の他の任意の構成要素の動作を制御するためである。
【0080】
図1の例において、ローラ232は、ブランケット210の上側ランに位置し、画像形成ステーション212に隣接して通過する時のブランケット210の緊張を維持するように構成される。また、ブランケット210の表面における、形成ステーション212によるインク液滴の正確な噴射および堆積およびそれに伴うインク画像の配置をもたらすように、画像形成ステーション212の下でのブランケット210の速度を制御することが特に重要である。
【0081】
いくつかの実施形態において、押付けシリンダ220は、移動ブランケット210から、ブランケット210と押付けシリンダ220との間を通過する標的基板へインク画像を転写するために、ブランケット210と周期的に係合および係合解除される。いくつかの実施形態において、周期的な係合は、ブランケット210の下側ランにおけるたるみ部分における機械的振動を誘発する。システム11は、上側ランの緊張を維持し、下側ランにおける機械的振動による影響を受けないようにブランケット210の上側ランを実質的に隔離するために、上述したローラおよびダンサを用いてブランケット210にトルクを付与するように構成される。
【0082】
いくつかの実施形態において、感知アセンブリ55A~55Hから受信した位置信号に基づいて、プロセッサ20は、ブランケット210の上側ランの緊張を維持し、下側ランにおける機械的振動による影響を受けないように隔離するために、各ローラおよびダンサによってブランケット210に付与されたトルクを制御するように構成される。たとえば、乾燥ステーション214は、画像形成ステーション212によって形成されたインク画像を乾燥するために、ブランケット210に輻射熱および/または温風を当てる。場合によっては、当てられた輻射熱および/または温風は、乾燥ステーション214の下を通過する時のブランケット210の熱膨張をもたらし得る。いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、ステーション214の前後に位置する感知アセンブリ55Dおよび55Eによって生成された位置信号に基づいて、熱膨張の表示を受信するように構成される。感知アセンブリ55Dおよび55Eによって生成された位置信号に基づいて、プロセッサ20は、ブランケット210を緊張状態に、かつ画像形成ステーション212および乾燥ステーション214の下を規定速度で動くように維持するために、ローラ240、232、および242におけるトルクレベルを設定するように構成される。
【0083】
他の実施形態において、感知アセンブリ55Gおよび55Fから受信した位置信号に基づいて、プロセッサ20は、ブランケット210を緊張状態に、かつ押付けステーション216およびブランケット210をガイドする他のローラにおける規定の運動プロファイル(たとえば速度、加速度、および減速度)に従って動くように維持するために、ダンサ250および252およびローラ253によってブランケット210に付与されるトルクレベルを設定するように構成される。ただし、プロセッサ20は、シリンダ218および220の運動プロファイルを調和させ、それらの間で実行される係合および係合解除も制御するように構成される。
【0084】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は更に、ブランケット210の表面におけるインク画像の正確な堆積を可能にするために、感知アセンブリ55A~55Dから受信した位置信号に基づいて、インク液滴を方向付ける印刷バー222の動作と、ブランケット210が画像形成ステーション212の下で動く実際の瞬間速度とを同期させるように構成される。
【0085】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は更に、システム11のいくつかのステーションおよびモジュールによってデジタル印刷プロセス中に実行される追加のプロセスステップを制御するように構成される。たとえば、画像形成ステーション212によってインク液滴を噴射するプロセスを制御すること、適当な熱量を精密なタイミングでブランケット210に当てることによってインク画像を乾燥するために乾燥ステーション214の動作を制御すること、ブランケット210に処理液を付与するように構成されたブランケット処理ステーションを制御すること、ブランケット210からそれぞれのシート226へのインク画像の精密な転写を可能にするために押付けシリンダ220および圧力シリンダ218の動作を制御することである。
【0086】
図1の例において、感知アセンブリ55A~55Fは、ブランケット210によって形成されたループの外側に取り付けられ、感知アセンブリ55Gおよび55Hは、ループの内側に取り付けられる。この構成は、図2A~2Cおよび図3A~3Cにおいて詳しく示される2つの異なる種類の感知アセンブリ55を示すために例として提供される。他の典型的な構成において、システム11は、任意の適当な数の様々な種類の感知アセンブリを備えてよい。感知アセンブリは、任意の適当な構成でブランケット210に隣接して取り付けられ得る。
【0087】
システム11の構成は、本発明を明確化するために、単に例として簡略化され提供される。上述した印刷システム11において説明された構成要素、モジュール、およびステーション、および追加の構成要素および構成は、たとえば、それらの開示が全て参照によって本願に組み込まれる、米国特許第9,327,496号および第9,186,884号、PCT国際公開WO2013/132438号、WO2013/132424号、およびWO2017/208152号、米国特許出願公開第2015/0118503号および第2017/0008272号において詳しく説明される。
【0088】
いくつかの実施形態において、感知アセンブリ55A~55Hから受信した信号は、任意の適当な種類のITMを用いてデジタル印刷プロセスを実行する他の構成のデジタル印刷システムのステーション、モジュール、および構成要素の動作を制御するために用いられ得る。たとえば、連続ウェブに印刷するように構成されたシステム、および両面印刷システムとも称される、シートの両面に印刷するように構成されたシステムを制御するためである。これらのウェブ印刷および両面印刷システムは、システム11の構成への追加または代替として、たとえば複数の押付けステーション216および様々な構成のローラおよびダンサなどの様々なモジュールおよびステーションを備えてよい。そのようなウェブ印刷および両面印刷システムの典型的なモジュールおよびステーションは、たとえば、その開示が参照によって全て本願に組み込まれる、PCT国際公開WO2013/132424号および米国特許出願公開第2015/0054865号において詳しく説明される。
【0089】
他の実施形態において、画像形成ステーション212は、上述したように液滴を噴射すること、または他の任意の適当な間接印刷技術を用いることによって、印刷流体(たとえばインク、トナー)を塗布するように構成される。たとえば、画像形成ステーション212は、印刷される画像を表す静電荷像を印加するように構成された光荷電ステーション、および転写部材(たとえばブランケット210またはドラム)の表面に印加された対向電界に引き付ける荷電粒子を備える1または複数の色の印刷流体を備えてよい。その後、転写部材は、上述したように画像をシート226または他の任意の標的基板へ転写するように構成される。
【0090】
本発明の実施形態によって対処される特定の問題を例示するため、およびそのようなシステムの性能を向上させるためのこれらの実施形態の適用を論証するために、システム11の特定の構成が例として示される。ただし、本発明の実施形態は決して、この特定の種類のシステム例に限定されず、本明細書で説明される原理は、当技術分野において既知である他の任意の種類の印刷システム、特に中間転写部材を用いる印刷システム、すなわち、たとえば印刷される画像を転写するためにブランケットまたはドラムを用いる間接印刷システム、(たとえばリソグラフィ、フレキソ印刷、およびグラビア印刷技術を用いる)オフセット印刷システム、デジタル印刷システム(すなわちインクジェットおよび電子写真)、またはそのようなシステムの任意の組み合わせに同様に適用され得る。いくつかの実施形態において、ITMは、たとえばインクジェット、電子写真、リソグラフィ、フレキソ印刷、およびグラビア印刷などであるがこれに限定されないプロセスまたはプロセスの組み合わせを実行するように構成される。これらの実施形態において、印刷システムは、(たとえばリソグラフィおよび/またはフレキソ印刷および/またはグラビア印刷プロセスを用いる)任意の種類のオフセット印刷システム、または(たとえばインクジェットおよび/または電子写真プロセスを用いる)任意の種類のデジタル印刷システム、またはこれらの組み合わせを備えてよい。
ブランケットに一体化されたマーカのそれぞれの位置を示す信号の生成
【0091】
図2Aは、本発明の実施形態に係る、位置感知アセンブリ260の概略側面図である。いくつかの実施形態において、アセンブリ260は、たとえば、上述の図1の感知アセンブリ55A~55Hの中の任意の感知アセンブリと置き換えられ得る。上述の図1において説明したように、ブランケット210は、任意の適当な処理技術を用いてブランケット210内に形成されブランケット210の一体部品を構成する複数のマーカ33を備える。
【0092】
いくつかの実施形態において、ブランケット210は、たとえば少なくとも一部の波長の光に対し透明であってよい層273、および一般に光に対し不透明な層277などの複数の層を備える。本発明の文脈および特許請求の範囲において、「不透明層」という用語は、そこに衝突する光の実質的な強度を、光がそこを貫通して伝送されないように減衰するように適合された層を指す。
【0093】
また、本発明の文脈において、「透明層」という用語は、そこへ衝突する光の実質的な強度を通過させるように適合された層を指し、「無反射層」という用語は、そこへ衝突する光の実質的な強度を、光がそこから反射しないように減衰させるように適合された層を指す。理解される点として、層の不透明性、透明性、および反射性は、たとえば層の厚さおよびそれぞれの層に当たる光の波長などの様々なパラメータに依存する。
【0094】
たとえばブランケット210などの任意の適当なブランケットのスタック層の構造に関連する詳細な実施形態は、たとえば、本発明の図6および図7において、およびその開示が参照によって本願に組み込まれるPCT国際公開WO2017/208144号において提供される。
【0095】
いくつかの実施形態において、マーカ33は、少なくとも不透明層277が部分的に除去され、たとえば層273などの少なくとも1つの透明層がスタック内に残るように、ブランケット製造プロセスの任意の適当な段階において、ブランケット層の1または複数における、本明細書においてマーキング位置とも称される予定の位置でブランケットを彫刻することによって形成され得る。
【0096】
マーカ33の彫刻構成は、光の少なくとも一部の通過を可能にするが、ブランケット210の少なくとも1つの不透明層を有する部分は、光が感知アセンブリ260または他の任意の適当な光感知アセンブリに到達することを妨げるように構成される。
【0097】
これらの実施形態において、マーカ33は、たとえばレーザマーキング、レーザアブレーション、レーザ彫刻、パンチングまたはピンニング技術を用いる直接部分マーキング(DPM)、インク噴射、3次元(3D)印刷、磁気材料の配置、層のスタックに磁性顔料の混合物を形成すること、または他の任意の適当な処理技術などであるがこれに限定されない任意の適当なプロセスを用いて生成され得る。いくつかの実施形態において、マーカ33の表面は、たとえば機械処理、化学処理、およびレーザ処理、たとえば熱アブレーションなどであるがこれに限定されない任意の適当な技術を用いて、様々な程度の表面粗さおよび質感を形成するために更に処理され得る。
【0098】
上記技術の1または複数を用いることは、たとえばブランケット210から不透明層を除去すること、ブランケット210の層間に適当な材料を配置すること、および/またはブランケット210の1または複数の層の表面に材料を配置すること(たとえばインク噴射、3D印刷)によって、ブランケット210の構造と一体化したエンコーダの形成を可能にすることに留意する。
【0099】
上述の図1において説明したように、ローラおよびダンサは、矢印290によって表された移動軸に沿ってブランケット210を動かすように構成される。図2Aの例において、ローラ266および268の各々は、上述の図1において説明したローラおよびダンサのいずれかに取って代わってよく、移動軸に沿ってブランケット210を動かすように構成される。
【0100】
いくつかの実施形態において、ロータリエンコーダ272は、ローラ266に組み込まれ、ローラ266の角変位を示す回転に基づく位置信号を生成するように構成される。エンコーダ272は更に、ブランケット210の運動制御を向上させるために、これらの回転に基づく位置信号をプロセッサ20に提供するように構成される。
【0101】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ260は、この例において発光ダイオード(LED)262である、LED262の上面265に設けられた開口部(不図示)を通して任意の適当な波長または波長範囲を有する光ビーム264を発するように構成された任意の適当な種類の光源を備える。
【0102】
図2Aの例において、LED262は、表面265がブランケット210の下面267に略平行であり、LED262の軸263と略直交するように、ブランケット210に対して取り付けられる。
【0103】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ260は、LED262から発された光ビーム264を感知し、任意の適当な座標系における、および/またはシステム11内の任意の参照点に対する各マーカ33の位置を示す位置信号を生成するように構成されたセンサ271を更に備える。実施形態において、光ビーム264は、可視光範囲(すなわち400nm~700nm)内である任意の波長または波長範囲を有してよい。他の実施形態において、光ビーム264は、赤外(IR)範囲(すなわち700nm~1mm)または紫外(UV)範囲(すなわち10nm~400nm)内である波長または波長範囲を有してよい。アセンブリ260の構成において、光ビーム264は、本明細書において「背面光」または「拡散光」とも称される。
【0104】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ260は、ブランケット210とセンサ271との間に設けられたスリット274を更に備える。実施形態において、スリット274は、光ビーム264の少なくとも一部をセンサ271へ通すように構成された開口部275または複数のそのような開口部を有する。
【0105】
システム11の動作中、ブランケット210は、矢印290の方向に動き、光ビーム264は、ブランケット210の表面267に衝突する。ブランケット210のフルスタック層を備える部分がLED262より上を通る時、光ビーム264は層277によって遮断され、その結果、センサ271によって感知され得ない。対照的に、マーカ33を備える部分がLED262より上を通る時、光ビーム264の少なくとも一部のビームは、透明層273を通過し、センサ271によって感知され得る。
【0106】
位置感知アセンブリ260は、LED262によって伝送され、透明層(たとえば層273)、彫刻マーカ33、スリット274の開口部275を通過してセンサ271へ到達する光ビーム264のビームを感知することによって位置信号を生成することに留意する。他の実施形態において、以下で図3Aおよび図3Bにおいて説明するように、光は、マーカ33を通過するのではなく、マーカ33によって反射され得る。
【0107】
図2Bは、本発明の実施形態に係る、位置感知アセンブリ270の概略側面図である。いくつかの実施形態において、アセンブリ270は、たとえば上述の図1の感知アセンブリ55A~55Hの中の任意の感知アセンブリに取って代わり得る。いくつかの実施形態において、アセンブリ270およびアセンブリ260は、主にLED構成に関して異なる同様の構成を有する。いくつかの実施形態において、LED262は、LED262の軸269が軸263に対して既定の角度276で傾斜するように、位置感知アセンブリ270内に取り付けられる。この構成は、たとえば、アセンブリ270の動作ならびに製造容易性およびサービス性を高め得る。
【0108】
システム11の動作中、ブランケット210が矢印290の方向へ動く期間において、LED262は、ブランケット210の表面267に衝突する光ビーム264を発するように構成される。ブランケット210の少なくとも1つの不透明層(たとえば層277)を備える部分がLED262より上を通る時、光ビーム264は層277によって遮断され、その結果、センサ271に到達することができない。マーカ33を備える部分がLED262より上を通る時、光ビーム264の少なくとも一部のビームは、透明層273を通過し、センサ271によって感知され得る。
【0109】
図2Cは、本発明の実施形態に係る、位置感知アセンブリ280の概略側面図である。位置感知アセンブリ280は、たとえば上述の図1の感知アセンブリ55A~55Hの中の任意の感知アセンブリに取って代わり得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ280は、ブランケット210の表面267に衝突するレーザビーム286を発するように構成されたレーザ282を備える。レーザビーム286は、上述した範囲、たとえば可視、IRまたはUV、または他の任意の適当な波長の1つから選択された波長を有してよい。
【0111】
図2Cの実施形態例において、ローラ268は、ロータリエンコーダを備えなくてもよく、システム11に組み込まれたロータリエンコーダまたは他の任意の種類のエンコーダの代わりにマーカ33が用いられ得る。実施形態において、ブランケット210に一体化されたエンコーダを構成するマーカ33は、システム11の任意のエンコーダに加えて、またはその代わりに用いられ得る。この実施形態において、システム11のローラのいずれもエンコーダを組み込まなくてよいことに留意する。上述の図1において説明したように、マーカ33は、システム11の様々なステーションおよびモジュールの動作を制御するため、および上述した他の構成のシステム、たとえば両面印刷システムおよびウェブ印刷システムを制御するために用いられ得る。他の実施形態において、たとえば図2Bに示すエンコーダ272などの任意の適当なロータリエンコーダは、ローラ268の少なくとも1つに一体化され得る。
【0112】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ280は、レーザ282から発されたビーム286を感知し、ビーム286の感知に応答して、システム11内の任意の参照点に対する各マーカ33の位置を示す位置信号を生成するように構成されたセンサ284を備える。代替実施形態において、レーザ282がブランケット210より上に位置し、ブランケット210の層273の下に位置するセンサ284へ向かってビーム286を方向付けるように、センサ284およびレーザ282の位置(たとえばIRレーザ)は入れ替えられ得る。
【0113】
システム11の動作中、ブランケット210は、矢印290の方向へ動き、レーザビーム286は、ブランケット210の表面267に衝突する。ブランケット210のフルスタックの層を備える部分がLED262より上を通る時、レーザビーム286は、層277によって遮断され、その結果、センサ284によって感知され得ない。対照的に、マーカ33を備える部分がLED262より上を通る時、少なくともある程度の強度のレーザビーム286は、透明層273を通過し、センサ284によって感知され得る。
【0114】
位置感知アセンブリ280は、彫刻マーカ33の透明層(たとえば層273)を通過してセンサ284に到達するレーザビーム286の光子を感知することによって、位置信号を生成することに留意する。
【0115】
いくつかの実施形態において、センサ284に到達する光子の属性(たとえば角度)を制御するために、ブランケット210とセンサ284との間に、たとえば上述の図2Aおよび図2Bに示すスリット274などの適当なスリット(不図示)が取り付けられ得る。いくつかの実施形態において、レーザ光源の使用は、感知アセンブリ280の横方向分解能を向上させ、より狭小なマーカ33を用いることを可能にし得る。(たとえばLEDの代わりに)レーザ光源を使用することは、センサの感度を高めるために、センサ284の光飽和または投光も防ぎ得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、ブランケット210は、伸張性材料で作られるため、システム11の動作中、伸び縮みすることができる。伸張量は、ブランケット層の材料、およびたとえば印刷および乾燥温度、ブランケット210の運動プロファイル(たとえば速度、加速度、および減速度)などといった印刷プロセスの様々なパラメータに依存する。
【0117】
いくつかの実施形態において、マーカ33は、ブランケット210に一体化されることにより、ブランケット可撓性およびその伸張の程度を反映し、および/またはブランケット210の伸張量を示すように構成される。たとえば、ブランケット210がたとえば1パーセント伸びると、マーカ33を備える層277の隣接した部分間の距離は、1パーセント、またはブランケット210の伸張量を示す他の量だけ増大してよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、マーカ33は、ブランケット210と同じ可撓性を有することにより、上述した1パーセントの伸張の例において説明したように、ブランケット210の挙動を模倣するように構成される。
【0119】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、上述した感知アセンブリから、マーカ33の伸張量を示す信号を受信し、信号に基づいて、ブランケット210の伸張量を推定するように構成される。プロセッサ20は更に、推定されたブランケット210の伸張量に基づいて、印刷プロセスの様々なパラメータを調整するように構成される。たとえば、プロセッサ20は、ブランケット210の運動プロファイル、およびブランケット210の表面に塗布される印刷バー222からのインク噴射のタイミングを調整してよい。
【0120】
図3Aは、本発明の実施形態に係る、位置感知アセンブリ300の概略側面図である。いくつかの実施形態において、アセンブリ300は、たとえば上述の図1の感知アセンブリ55A~55Hの中の任意の感知アセンブリに取って代わり得る。いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ300は、たとえばブランケット310に一体化されたマーカ333などの1または複数のマーカを感知し、マーカの感知に応答して、それぞれのマーカ333の位置を示す位置信号を生成するように構成される。
【0121】
いくつかの実施形態において、ブランケット310は、たとえば上述の図2Aに示す透明層273および不透明層277などの複数の層を備える。不透明層277は、非反射性層でもあることに留意する。ブランケット310は、非反射性層277に、またはそれらの間に配置された他の任意の層(不図示)に付与され得る反射性層379を備えてよい。
【0122】
図3Aの例において、マーカ333は、層379にパターンを彫刻することによって形成される。パターンは、たとえばレーザアブレーションまたは様々なエッチングプロセスなどの任意の適当な技術を用いて層379から材料を除去することによって形成され得る。追加または代替として、マーカ333は、層333の少なくとも一部を彫刻した後に配置された光反射ラベルを備えてよい。
【0123】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ300は、上述の図2Cのレーザ282と同様の特性を有し得るレーザ306を備える感知モジュール340を備える。レーザ306は、層379の上面302に対して略直角または他の任意の適当な角度に、かつマーカ333上に方向付けられた入射ビーム386を発するように構成される。いくつかの実施形態において、感知モジュール340は、上述の図2Cのセンサ284と同様の特性を有し得る、マーカ333から反射した拡散ビーム387を感知するように構成されたセンサ308を更に備える。
【0124】
いくつかの実施形態において、マーカ333の彫刻パターンは、ビーム387がセンサ308によって感知されるように、ビーム387を角度312で反射するように構成された、表面302に対して既定の角度で傾斜した1または複数の表面、この例において複数の三角形334を備えてよい。感知モジュール340におけるセンサ308の位置は、角度312に対応することに留意する。
【0125】
他の実施形態において、層379は、マーカ333において部分的または完全に除去されてよく、上述した反射性ラベルは、傾斜表面を備えてよく、マーカ333のレーザに面した表面に結合(たとえば接着)され得る。
【0126】
上述の図2Cにおいて説明したように、ローラ268は、矢印290で示される移動方向にブランケット310を動かすように構成され、上述の図2Aにおいて説明したように、プロセッサ20に回転に基づく位置信号を提供するためにロータリエンコーダ272を更に備えてよい。
【0127】
図3Bは、本発明の実施形態に係る、位置感知アセンブリ360の概略側面図である。いくつかの実施形態において、アセンブリ360は、たとえば、上述の図1の感知アセンブリ55A~55Hの中の任意の感知アセンブリに取って代わり得る。いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ360は、たとえばブランケット320に一体化されたマーカ335などの1または複数のマーカを感知し、マーカ335の感知に応答して、それぞれのマーカ335の位置を示す位置信号を生成するように構成される。
【0128】
いくつかの実施形態において、ブランケット320は、たとえば、それぞれ上述の図2Aおよび図3Aにおいて示された層277および379などの複数の層を備える。ブランケット320は、上面369および下面371を有する層373を更に備える。
【0129】
図3Bの例において、マーカ335は、層379および277を彫刻することによって形成され、その結果、表面369を感知アセンブリ360に露出させる。
【0130】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ360は、表面302および369に略直角に入射ビーム386を方向付けるように構成されたレーザ306を備える感知モジュール350を備える。いくつかの実施形態において、感知モジュール340は、上述の図3Aのセンサ308と同様の特性を有する、マーカ335から反射した拡散ビーム388を感知するように構成されたセンサ309を更に備える。
【0131】
いくつかの実施形態において、層373は、ビーム386に対し透明であるが、ローラ268の外側表面368は、ビーム386を反射し、センサ309に向けられたビーム388を生成するように構成される。
【0132】
図3Cは、本発明の実施形態に係る、位置感知アセンブリ390の概略側面図である。いくつかの実施形態において、アセンブリ390は、たとえば、上述の図1の感知アセンブリ55A~55Hの中の任意の感知アセンブリに取って代わり得る。いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ390は、たとえばブランケット330に一体化されたマーカ392などの1または複数のマーカを感知し、マーカ392の感知に応答して、それぞれのマーカ392の位置を示す位置信号を生成するように構成される。
【0133】
いくつかの実施形態において、ブランケット330は、上述の図3Bに示すアセンブリ360のブランケット320の構造と実質的に同様の層構造、または他の任意の適当な層構造を有してよい。
【0134】
図3Cの例において、マーカ394は、上述した彫刻方法を用いて層379および277の少なくとも一部に溝396または穴を彫刻し、磁性層394を層373に付与することによって溝396の少なくとも一部を埋めることによって形成される。いくつかの実施形態において、磁性層394は、磁性層394の上面398がブランケット330の表面302と同一平面であるように、溝396内に付与される。他の実施形態において、表面398が表面302より上に延びるように、表面398と371との間の距離は、表面302と371との間の距離よりも大きくてよい。
【0135】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ390は、マーカ392が磁気センサ319に隣接して通る時に生成される磁界(不図示)を感知するように構成された磁気センサ319を備える。上述したように、位置感知アセンブリ390は、センサ319によって感知された磁界に基づいて、マーカ392の位置を示す位置信号を生成するように構成される。
ブランケットに一体化されたマーカの形状および位置の制御
【0136】
図4Aは、本発明の実施形態に係る、ブランケット400の概略上面図である。ブランケット400は、たとえばシステム11のブランケット210に取って代わり得る。いくつかの実施形態において、ブランケット400は、以下で図6および図7において詳しく説明される複数層のスタック(不図示)を備える可撓性基板402を備える。いくつかの実施形態において、基板402は、ブランケット400の幅であるY軸に沿って位置する、本明細書において端部404および406と称される2つのエッジを有する。端部404および406は、矢印290と略平行であり、Y軸と直交する。
【0137】
いくつかの実施形態において、ブランケット400は、ブランケット400の一体部品であり、ブランケット400の製造プロセス中に形成され、それぞれのバッファ412によって分離された複数のマーカ408を備えるリニアエンコーダを備える。
【0138】
図4Aの例において、エンコーダ401は、端部404に隣接して形成され、エンコーダ401の位置は、本明細書において基板402およびブランケット400の斜面と称され、マーカ408は、各バッファ412がそれぞれ2つの隣り合うマーカ408を分離するようにバッファ412と交互に配置され、またはその逆である。各マーカ408は、既定の長さ415および幅416を有し、長さ415およびそれぞれの隣り合うバッファ412の合計サイズが各マーカ408のピッチ414を定める。図4Aの実施形態例において、各マーカ408は、実質的に同様の形状、サイズ(たとえば長方形状の場合は長さおよび幅)、およびピッチを有する。他の実施形態において、マーカの形状、サイズ、ピッチ、および位置の少なくとも1つは、基板402に沿って変化してよい。たとえば、ブランケットは、交互に配置された2種類のマーカ、または上述した構成の他の任意の適当な変形例を備えてよい。幅416のサイズは一般に、マーカ408が、基板402の表面に形成されたインク画像と重なり合わないように、端部404と406との間の距離(たとえば約15mm)よりも小さいことに留意する。
【0139】
上述の図2Aにおいて説明したように、マーカ408は、ブランケット400の多層構造を彫刻することによって形成され得るが、追加または代替として、たとえばインク噴射、3次元(3D)印刷、ブランケットの層間および/または外側層の上に磁性材料を付与することなど、他の適当な処理技術を用いて形成されてよい。
【0140】
図4Bは、本発明の実施形態に係る、ブランケット410の概略上面図である。ブランケット410は、たとえばシステム11のブランケット210に取って代わり得る。いくつかの実施形態において、ブランケット410は、それぞれブランケット410の端部404および406に隣接して形成された、本明細書において基板402の斜面とも称される2つのリニアエンコーダ411および413を備える。エンコーダ411は、それぞれのバッファ422と交互に配置され、バッファ422によって分離された複数のマーカ418を備え、それぞれのバッファ422に結合されたマーカ418の毎ペアがマーカピッチ424を形成する。同様に、エンコーダ413は、それぞれのバッファ432と交互に配置され、バッファ432によって分離された複数のマーカ428を備え、それぞれのバッファ432に結合されたマーカ428のペアがマーカピッチ434を形成する。
【0141】
図4Bの例において、エンコーダ411および413は、互いに実質的に同一であり、それぞれ端部404および406から実質的に同じ距離に形成される。ブランケット400のエンコーダ401と同様、エンコーダ411および413は、ブランケット410の一体部品であり、一般に、ブランケット410の製造プロセス中に形成される。
【0142】
図4Cは、本発明の実施形態に係る、ブランケット420の概略上面図である。ブランケット420は、たとえばシステム11のブランケット210に取って代わり得る。いくつかの実施形態において、ブランケット420は、それぞれブランケット420の端部404および406に隣接して形成された2つの異なるリニアエンコーダ421および423を備える。エンコーダ421は、それぞれのバッファ442と交互に配置され、バッファ442によって分離された、幅446を有する複数の実質的に同一のマーカ438を備え、マーカピッチ444は、互いに結合されたマーカ438およびバッファ442のペアを備える。同様に、エンコーダ423は、それぞれのバッファ452と交互に配置され、バッファ452によって分離された、幅456を有するマーカ448を備え、マーカピッチ454は、互いに結合されたマーカ448およびバッファ452のペアを備える。
【0143】
図4Cの例において、エンコーダ421および423は互いに異なり、たとえば、幅446は幅456よりも大きく、ピッチ444はピッチ454よりも大きい。また、エンコーダ421および423は、それぞれ端部404および406から実質的に同一の距離、または異なる距離に形成され得る。エンコーダ421および423は、ブランケット420の一体部品であり、一般に、上述した製造技術の1または複数を用いて、ブランケット420の製造プロセス中に形成される。
【0144】
ブランケット400、410、および420の構成は、本発明の明確性のために単に例として提供される。他の実施形態において、たとえばエンコーダ401などのエンコーダは、たとえばグリッドマーカ、動き符号化コード、1次元(1D)バーコード、2次元(2D)バーコード、および3次元(3D)バーコードなどの任意の適当な種類のマーカを備えてよい。また、2Dバーコードの各々は、クイックレスポンス(QR)コード、AZTECコード、および/または他の任意の種類の2Dバーコードを備えてよい。
【0145】
追加または代替として、3Dバーコードは、ブランケット層の1または複数に3D構造(たとえば溝、穴、または階段)を彫刻することによって、および/またはブランケットのトポグラフィックな外側表面を形成する3D構造を生成すること(たとえば、層間に3D構造を形成することにより、ブランケットの外側表面にトポグラフィを形成すること)によって、および/または、彫刻された3D構造内に3D構造(たとえば上述の図3Aの三角形334)を生成することによって生成され得る。上述したように、3D構造は、外側層の少なくとも1つの一部としてブランケット層間に形成されてよく、または、ブランケットの外側層の上面に配置され得る。
【0146】
また、3D構造は、ブランケットの製造中に、3D印刷または他の任意の適当な技術を用いて形成され得る。3D構造の最上面は、彫刻構造内(たとえばブランケット層間)に、またはブランケットの外側層の表面と同一表面上にあってよく、または、ブランケットの外側層の表面から突出することに留意する。
【0147】
同様に、1Dおよび2Dバーコードは、3D構造を生成するために適用された上述の技術の少なくとも1つを用いて形成され得る。たとえば、ブランケットに1Dまたは2D構造を彫刻し、充填材料の外側表面がブランケットの外側層の外側表面と同一平面上にあるように彫刻構造を充填材料で埋めることによる。
【0148】
他の実施形態において、マーカは、ブランケットの外側層の外側表面における既定の位置に構造を彫刻し、彫刻構造の表面のみに付着するように適合されたインク液滴を噴射することによって形成され得る。追加または代替として、マーカは、ブランケット層間および/またはブランケットの外側層の上にインク液滴を噴射することによって生成され得る。
【0149】
上述の図2Cにおいて説明したように、ブランケット(たとえばブランケット420)は、システム11の動作中に伸張するように構成される。
【0150】
いくつかの実施形態において、エンコーダ(たとえばエンコーダ421および423)は、ブランケット420に一体化されることにより、ブランケット420の伸張量を示すように構成される。図4Cの例において、ブランケット420が、たとえば1パーセント拡張すると、マーカ438および448ならびにそれぞれのバッファ422および452の少なくとも1つは、1パーセント、またはブランケット420の伸張量を示す他の量だけ拡張し得る。
【0151】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、感知アセンブリから、マーカ438および448ならびにバッファ422および452の伸張量を示す信号を受信し、信号に基づいて、ブランケット420の伸張量を推定するように構成される。推定された伸張量に基づいて、プロセッサ20は、ブランケット420の伸張を補償するために印刷プロセスの様々なパラメータを調整してよい。
【0152】
図4Dは、本発明の他の実施形態に係る、ブランケット430の概略上面図である。ブランケット430は、たとえばシステム11のブランケット210に取って代わり得る。いくつかの実施形態において、ブランケット430は、ブランケット430の長手方向軸291に沿って配置されたガイド要素を備える。図4Dの例において、ガイド要素は、たとえば上述した端部404および406などのブランケット430の長手方向エッジに結合された、本明細書においてジップファスナ433とも称される、2つの部品(一般に2分割)のジッパを備える。他の実施形態において、ジップファスナ433の片方のみが、ブランケット430のそれぞれの長手方向エッジと係合する。代替実施形態において、ブランケット430は、他の任意の適当な種類のガイド要素を備えてよい。
【0153】
いくつかの実施形態において、ジップファスナ433は、矢印290によって表された移動軸に沿ってブランケット430を動かすために、長手方向軸291に沿って、システム10のガイドサブシステムと係合するように構成される。いくつかの実施形態において、ガイドサブシステムは特に、上述の図1において説明した上記ローラ(たとえばローラ232、240、242、および253)と、以下で詳しく説明するようにブランケット430と係合するように構成されたガイドトラック435とを備えてよい。
【0154】
図4Dに示す実施形態例において、1つのジップファスナ433が、ガイドサブシステムのそれぞれのガイドトラック435と係合する。この構成は、概念上の明確性のため、および以下に示すジップファスナ433の詳細な説明のために示される。他の実施形態において、システム10のガイドサブシステムは、ブランケット430の両側に位置する2つのガイドトラック435を備えてよい。実施形態において、ブランケット430の両方のジップファスナ433が、長手方向軸291に平行な連続経路に沿って、両方のそれぞれのガイドトラック435と係合する。
【0155】
いくつかの実施形態において、ジップファスナ433とガイドトラック435との係合は、基板402のY軸方向の緊張を維持するために、ガイドサブシステムがブランケット430に横方向の張力を付与することを可能にする。また係合は、矢印290によって表された移動軸の方向に、連続経路に沿ってブランケット430を回転させるために、ガイドサブシステムが基板402に長手方向の力を付与することも可能にする。
【0156】
いくつかの実施形態において、ジップファスナ433は、実質的に同一または異なる材料で作られ、端部404および406の少なくとも1つに縫い付けられ、または他の方法で結合され得るストリップ465を備える。
【0157】
いくつかの実施形態において、ガイドサブシステムは、様々な種類のガイド要素を備えてよく、たとえばストリップ465は、互いに異なる等級の弾性を有してよい。システム10および他の構成の印刷システムにおいて様々な種類のITMとともに用いるために適したジップファスナの例は、たとえば、それらの開示が全て参照によって本願に組み込まれるPCT特許出願公開WO2013/136220号およびPCT特許出願PCT/IB2018/058009号において詳しく説明される。
【0158】
いくつかの実施形態において、ジップファスナ433は、ストリップ465の長手方向エッジに沿って形成された複数の同様のまたは異なる側方構造を備え、この例において、側方構造は、約1cmまたは他の任意の適当なサイズの幅466および約5.5mmまたは他の任意の適当なサイズの長さ468を有する歯458を備える。歯458は、本明細書においてバッファ462と称されるそれぞれの既定の間隔と交互に配置され、それぞれの既定の間隔によって分離される。この構成において、ジップファスナ433は、1つの歯458および1つのバッファ462のペアを備える、約7.5mmまたは他の任意の適当なサイズのマーカピッチ464を備える。
【0159】
実施形態において、ジップファスナ433は、たとえば3000~8200の歯であるがこれに限定されない任意の適当な数の歯458を備えてよい。この実施形態において、単一の歯458の長さ468は、ブランケット430の全長の約0.003%~0.005%であってよい。他の実施形態において、各ジップファスナ433は、500個超過の歯458、たとえば約1375個の歯458を備えてよく、それぞれ端部404および406に結合された2つのジップファスナ433の場合、ブランケット430は、合計約2750個の歯458を備えてよい。この実施形態において、単一の歯458の長さ468は、ブランケット430の全長の約0.05%であってよい。これらの実施形態において、本明細書において長手方向マーカ寸法とも称される単一の歯458の長さ468は、本明細書において長手方向ITM寸法とも称されるブランケット430の全長の約0.003%~0.05%であってよい。
【0160】
いくつかの実施形態において、ガイドサブシステムのガイドトラック435は、互いに既定の間隔を置いて長手方向軸291に沿って位置する歯459(または他の任意の適当な種類の側方構造)を備える。いくつかの実施形態において、歯459および458は、ジップファスナ433とそれぞれのガイドトラック435との上述した係合を可能にするサイズ、形状、および配置を有する。
【0161】
いくつかの実施形態において、ジップファスナ433の少なくとも1つは、たとえば歯458、バッファ462、マーカピッチ464、またはこれらの任意の適当な組み合わせなどのマーカを有するリニアエンコーダとして作用してよい。
【0162】
いくつかの実施形態において、システム11は、たとえば上述の図1の感知アセンブリ55A~55Hなどの感知アセンブリを備える。感知アセンブリは、ジップファスナ433のマーカの少なくとも1つを感知することに応答して、たとえばそれぞれのマーカのそれぞれの位置を示す位置信号などの電気信号を生成するように構成される。
【0163】
上述したように、感知アセンブリ55A~55Hから受信した位置信号に基づいて、プロセッサ20は、ブランケット430の上側ランの緊張を維持し、かつ下側ランにおける機械的振動による影響から隔離されるように維持するために、各ローラによってブランケット430に付与されたトルクを制御するように構成される。
【0164】
いくつかの実施形態において、基板402の伸張に応答して、上述のジップファスナ433のマーカは、ブランケット430の伸張量を示すように構成される。たとえば、1または複数のバッファ462のサイズ、およびマーカピッチ464が拡大し得る。
【0165】
いくつかの実施形態において、歯458は、感知アセンブリ55A~55Hから受信した位置信号の精度を高めるような形状であってよい。たとえば、歯458は、高い反復性で感知アセンブリ55A~55Hによって感知され得る少なくとも1つの鋭利なエッジを有してよい。たとえば、歯458の1または複数は、たとえば丸形、長方形、正方形、台形、または星形などであるがこれに限定されない任意の適当な幾何学的形状を有してよい。
【0166】
いくつかの実施形態において、ジップファスナ433の1または複数のマーカ、たとえば歯458またはバッファ462は、感知アセンブリ55A~55Hの感知反復性を高め得る突起および/または貫入を有してよい。
【0167】
他の実施形態において、ジップファスナ433の1または複数の歯458または他の任意のマーカは、システム11に取り付けられた1または複数の適当な磁気感知アセンブリによって感知され得る磁性材料を備えてよい。
【0168】
追加または代替として、ジップファスナ433の少なくともいくつかのマーカ(たとえば歯458またはバッファ462)は、感知アセンブリ55A~55Hの感知反復性を更に高め得る特徴的な仕切りを有する2色以上を有してよい。
【0169】
代替実施形態において、各ジップファスナ433は、ブランケット430が、たとえば上述の図4Cのブランケット420において説明したように端部404および406に近接した2つの異なるエンコーダを備え得るように、様々な構成のマーカを有してよい。
【0170】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、2つのそれぞれの位置信号セットを生成するために2つの異なるエンコーダを用いてよい。異なる位置信号は、基板402の表面にインク画像を付与するプロセスにおける2つの異なる態様を制御するために用いられ得る。
【0171】
いくつかの実施形態において、マーカのセットは、たとえば幅またはバッファサイズ、またはピッチ、またはこれらの組み合わせなどにおいて、互いに異なってよい。
【0172】
いくつかの実施形態において、ジップファスナ433のマーカの少なくとも1つは、たとえば上述の図3Cにおいて説明したグリッドマーカまたは動き符号化コードなどの少なくとも1つのコードを備えてよい。
【0173】
他の実施形態において、ジップファスナ433のマーカの少なくとも1つは、1次元(1D)バーコード、2次元(2D)バーコード、または3次元(3D)バーコードを備えてよい。たとえば、少なくともいくつかの歯458、またはバッファ462、またはこれらの組み合わせは、そこに模様付けまたは彫刻、または印刷された上述のバーコードの少なくとも1つを有してよい。
【0174】
ジップファスナ433の構成は、本発明の実施形態によって対処される動き制御問題を例示するため、およびシステム11の印刷性能を向上させるためのこれらの実施形態の適用を論証するために、例として示される。ただし、本発明の実施形態は決して、この特定の種類のエンコーダに限定されることはなく、本明細書で説明される原理は、他の任意の種類の印刷システムにおいて用いられる他の種類の基板および転写部材にも同様に適用され得る。
【0175】
図5Aは、本発明の実施形態に係る、ブランケット500の概略側面図である。ブランケット500は、たとえばシステム11のブランケット210に取って代わり得る。いくつかの実施形態において、ブランケット500は、厚さ531を有する基板502の1または複数の層に彫刻された複数の3D構造504(たとえば、上述の図4Cにおいて説明された溝または穴)を備える。
【0176】
図5Aの実施形態例において、全ての構造504は、実質的に同一の幅508および深さ515を有し、それぞれのバッファ514によって分離される。また、構造504は、上面516および下面511に対して略直交する側壁506を有する対称的な断面形状を有する。深さ対厚さ比、たとえば深さ515と厚さ531との比は、0.01~0.99の任意の値を有し得ることに留意する。
【0177】
上述の図4Cに示すように、彫刻の後、構造504は、本明細書において充填材層(図5Aには不図示)とも称される、任意の適当な充填材料で少なくとも部分的に充填され得る。
【0178】
他の実施形態において、深さ対厚さ比は、構造間で異なり得る。たとえば、少なくとも2つの3D構造は、異なるレベルの深さ515を有してよい。また、図5Aの例において、表面511は、それぞれ上面および下面516および510と略平行である。代替実施形態において、表面511は、表面516および510のいずれかと平行でなくてよく、たとえば、片側において傾斜し、側壁506間に異なる長さが生じる。
【0179】
図5Bは、本発明の実施形態に係る、ブランケット520の略断面図である。ブランケット520は、たとえばシステム11のブランケット210に取って代わり得る。いくつかの実施形態において、ブランケット520は、間を分離するバッファ534および均一な深さ525を有する、基板522の1または複数の層に彫刻された複数の3D構造524(たとえば上述の図4Cにおいて説明された溝または穴)を備える。
【0180】
図5Bの実施形態例において、少なくとも2つの構造524は、それぞれ上面および下面536および521の少なくとも1つと側壁526との間に非直角を有する傾斜側壁を有する。その結果、表面521において測定された側壁526間の幅528は、上面536の高さにおいて側壁526間で測定された幅530よりも小さい。
【0181】
代替実施形態において、ブランケット520は、異なる構造524間で不均一な深さ525、および/または表面536、521、および533のうち少なくとも1つの傾斜表面、および/またはブランケット520の構造における他の任意の変化を備えてよい。変化は、設計によって意図されたものであり、またはブランケット520の製造プロセスにおける変動による不所望のものであり得る。
【0182】
システム11によって実行されるインク画像載置プロセスにおける2つの異なる態様を制御するために用いられ得る、2つのそれぞれの位置信号セットを生成するために、感知アセンブリ(たとえば上述の図1のアセンブリ55A~55H)によって2つの幅セット(たとえば幅528および530)が用いられ得ることに留意する。たとえば、2つの位置信号セットは、ブランケット520の表面533と536との間の応力および/または歪みを示してよい。
【0183】
図5Cは、本発明の実施形態に係る、ブランケット540の概略断面図である。ブランケット540は、たとえばシステム11のブランケット210に取って代わり得る。いくつかの実施形態において、ブランケット540は、間を分離するバッファ554を有する、交互に配置され、基板542の1または複数の層に彫刻された複数の少なくとも2つの異なる3D構造543および544(たとえば上述の図4Cにおいて説明された溝または穴)を備える。ブランケット540は、どの構造543も2つの隣り合う構造544を有し、またはその逆であるように、交互に配置された構造543および544の2つのセットを有する。
【0184】
図5Cの実施形態例において、構造543および544は、均一な深さ545を有するが、それらの側壁は異なっている。構造543の側壁546は、(上述の図5Aに示すブランケット500の側壁506と同様に)表面521および536の少なくとも1つに略直交するが、構造544の側壁588は(上述の図5Bに示すブランケット520の側壁526と同様に)傾斜し、表面521および536の少なくとも1つと直交しない。
【0185】
いくつかの実施形態において、ブランケット540の構成は、交互に配置され、または他の任意の適当な構成で配置された2つ以上のエンコーダの組込みを可能にし得る。たとえば、構造543は、両表面556および541において側壁546間に実質的に同一の幅548を有するが、構造544は、表面541において同様の幅548を有し得るが、表面556の高さにおいて一般により大きな幅550を有し得る。
【0186】
いくつかの実施形態において、システム11のプロセッサ20は、感知アセンブリ(たとえば上述の図3Bのアセンブリ360)から、構造543および544から生成された1または複数の位置信号セットを受信するように構成される。たとえば、第1および第2のセットは、それぞれ構造543および544の表面556から感知された異なる反射を備え、第3のセットは、構造543および544の両方の表面541から感知された2倍の密度の反射を備える。ブランケット540の構成例は、ユーザに、ブランケット540に隣接して取り付けられた1または複数の感知アセンブリから受信した複数のコードを提供する。各コードは、ブランケット540の表面556(または、たとえば後述の図7に示す他の上面)におけるインク画像配置の制御に関連する様々な態様に対処し得る。
ブランケットに一体化されたエンコーダを生成するための方法
【0187】
図6は、本発明の実施形態に係る、一体型マーカを備えるブランケット600を製造するためのプロセスシーケンスの断面図を概略的に示す図である。ブランケット600は、たとえばシステム11のブランケット210に取って代わり得る。
【0188】
プロセスは、ブランケット600を備える典型的な5層のスタックをキャリア616上に準備するステップ1において開始する。
【0189】
いくつかの実施形態において、キャリア616は、たとえば主にアルミニウム、ニッケル、および/またはクロミウムから成る、またはそれらを備える可撓性ホイルなどの可撓性ホイルで形成され得る。実施形態において、ホイルは、本明細書においてポリエステルとも称されるアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)、たとえばヒュームドアルミニウム金属で被覆されたPETのシートを備える。
【0190】
いくつかの実施形態において、キャリア616は、帯電防止ポリマー膜、たとえばポリエステル膜で形成され得る。帯電防止膜の特性は、たとえばアンモニウム塩などの様々な添加物をポリマー組成物に添加することなど、様々な技術を用いて得られ得る。
【0191】
いくつかの実施形態において、キャリア616は、本明細書においてキャリア接触面とも称される、50nm未満程度の粗さ(Ra)を有する研磨平坦表面(不図示)を有する。
【0192】
いくつかの実施形態において、流動性の第1の硬化性組成物(不図示)が提供され、そこから、キャリア接触面に剥離層602が形成される。いくつかの実施形態において、剥離層602は、たとえばシステム11の画像形成ステーション212からインク画像を受け取り、上述の図1に示され説明された、たとえばシート226などの標的基板へインク画像を転写するように構成されたインク受取り面603を備える。層602、特に表面603は、後述するように、表面603とインク画像との間の、本明細書において後退角(RCA)とも称される濡れ角によって測定される、インク画像に対する低い離型力を有するように構成されることに留意する。
【0193】
低い離型力は、表面603から基板226へのインク画像の完全な転写を可能にする。いくつかの実施形態において、剥離層602は、一般に、たとえばビニル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの透明シリコンエラストマで、または他の任意の適当な種類のシリコンポリマーで作られ、一般に50μmの厚さ、または10μmよりも大きい他の任意の適当な厚さを有してよい。
【0194】
いくつかの実施形態において、流動性の第1の硬化性材料は、ビニル官能性シリコンポリマー、たとえば、末端ビニル基、たとえばビニル末端ポリジメチルシロキサンに加えて、少なくとも1つの横型ビニル基を備えるビニルシリコンポリマーを備える。
【0195】
いくつかの実施形態において、流動性の第1の硬化性材料は、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、末端ビニル基に加えてポリシロキサン鎖に少なくとも1つの横型ビニル基を備えるビニル官能性ポリジメチルシロキサン、架橋剤、および付加硬化型触媒を備えてよく、任意選択的に、硬化抑制剤を更に備える。
【0196】
図6の例において、剥離層602は、5~200μmの厚さに均され、120~130℃で約2~10分硬化された、PET系キャリア616に均一に塗布され得る。インク転写表面603の疎水性は、0.5~5マイクロリットル(μl)の蒸留水液滴の場合、約60°のRCAを有し得ることに留意する。いくつかの実施形態において、剥離層602の表面605は、著しく大きい、一般におよそ90°のRCAを有してよい。
【0197】
いくつかの実施形態において、インク転写表面603を生成するために用いられたPETキャリアは、典型的な40°未満のRCAを有してよい。全ての接触角測定は、ドイツ国ハンブルク州Borsteler Chaussee85、22453所在のKruss(登録商標)社によって製造される接触角分析器「Easy Drop」FM40Mk2を用いて、および/またはオーストラリア国ニューサウスウェールズ州ゴスフォード所在のParticle and Surface Sciences社によって製造されるDataphysics OCA15 Proを用いて行われた。
【0198】
いくつかの実施形態において、剥離層602は、いくつかの種類の材料に対し低い離型力を有し得るので、層602は、たとえば上述の図4A図4B、および図4Cにおいて説明された基板402の斜面において、マーカのために指定された位置に塗布されなくてよい。これらの実施形態の更なる詳細は後述される。
【0199】
いくつかの実施形態において、ブランケット600は、本明細書においてコンフォーマル層とも称される、一般に黒色顔料添加物を有するPDMSで作られたコンプライアンス層604を備える。コンプライアンス層604は、剥離層602に塗布され、典型的な150μmの厚さ、または100μm以上である他の任意の適当な厚さを有してよい。コンプライアンス層604は、選択された波長の光の実質的な強度を、そこを通って伝送されないように、および/またはそこから反射されないように減衰するように構成されることに留意する。
【0200】
理解される点として、減衰の程度は、たとえば層の厚さおよび感知アセンブリによって発される光の波長などの様々なパラメータに依存する。たとえば、UV波長(10nm~400nm)は、可視光(400nm~700nm)に比べて大きな減衰を有し得る。
【0201】
いくつかの実施形態において、コンプライアンス層604は、剥離層602とは異なる機械特性(たとえば、張力へのより大きな抵抗)を有してよい。そのような所望の特性の差は、たとえば、剥離層602と異なる組成を用いること、剥離層602の製剤を調製するために用いられる成分間で特性を変えること、および/またはそのような製剤への更なる成分の添加、および/または異なる硬化条件の選択によって得られ得る。たとえば、充填材粒子の添加は、剥離層602に対してコンプライアンス層604の機械強度を高め得る。
【0202】
いくつかの実施形態において、コンプライアンス層604は、剥離層602および表面603が、インク画像が押し付けられる基板(たとえばシート226)の表面輪郭を近接して辿ることを可能にする弾性特性を有する。インク転写表面603の反対側にコンプライアンス層604を付着させるは、コンプライアンス層604の材料に加えて粘着または接着組成物の適用を伴い得る。
【0203】
いくつかの実施形態において、ブランケット600は、本明細書において支持層607またはブランケット600のスケルトンとも称される、コンプライアンス層604に付与され、以下で詳しく説明される補強スタック層を備える。いくつかの実施形態において、支持層607は、ローラおよびダンサによってブランケット600に付与されたトルクによって生じ得る変形または断裂への改善された機械耐性をブランケット600に提供するように構成される。いくつかの実施形態において、ブランケット600のスケルトンは、製織ガラス繊維層608とともに形成される、PDMSまたは他の任意の適当な材料で作られた接着層606を備える。いくつかの実施形態において、層606および608は、支持層607の厚さが一般に100μmを超えるように、それぞれ約150μmおよび112μmの典型的な厚さ、または他の任意の適当な厚さを有してよい。
【0204】
他の実施形態において、スケルトンは、他の任意の適当なプロセスを用いて、たとえば層606を配置し、その後、そこへ層608を結合して重合すること、または他の任意のプロセスシーケンスを用いることによって生成され得る。
【0205】
いくつかの実施形態において、重合化プロセスは、商業上「付加硬化」として知られている、白金触媒によるヒドロシリル化触媒反応に基づいてよい。
【0206】
他の実施形態において、ブランケット600のスケルトンは、ブランケット600がシステム11において張力を保持されている時の伸張に耐えるための十分な構造的一体性をブランケット600に提供するために、ウェブまたは織物の形状の任意の適当な繊維強化材を備えてよい。スケルトンは、後に硬化され硬化後に可撓性を保っている任意の適当な樹脂で繊維強化材をコーティングすることによって形成され得る。
【0207】
代替実施形態において、支持層607は、独立して硬化された樹脂に埋め込まれ、および/または植え込まれた繊維のように、個別に形成され得る。この実施形態において、支持層607は、接着層を介してコンプライアンス層604に付着してよく、任意選択的に、その場で支持層607を硬化する必要性を排除する。この実施形態において、支持層607は、その場でコンプライアンス層604上に形成されても個別に形成されても、約100マイクロメートル~約500μmの厚さを有してよく、その一部は、一般に約50μm~300μmの間で変化する繊維または織物の厚さによるものである。ただし、支持層607の厚さは、上記値に限定されない。
【0208】
いくつかの実施形態において、ブランケット600は、一般に透明のPDMSで作られ、上述の図1において説明されたシステム11のローラおよびダンサとブランケット600とを物理的に接触させるように構成された、本明細書においてグリップ層とも称される高摩擦層610を備える。層610は、比較的軟性の材料で作られるが、ローラに面した表面は、ブランケット600がローラおよびダンサによって付与されるトルクに滑動することなく耐えるように高い摩擦力を有することに留意する。実施形態例において、層610は、100μmの厚さを有し得るが、たとえば10μm~1mmなど、他の任意の適当な厚さを有してよい。
【0209】
図6のステップ1を実装する追加の実施形態は、たとえば、その開示が参照によって本願に組み込まれるPCT国際公開WO2017/208144号において詳しく説明される。
【0210】
ステップ2において、プロセスは、ブランケット600を備える層の1または複数において、本明細書においてマーカ612とも称される3D構造(たとえば溝、穴、または階段)を彫刻することを備える。ステップ2は、マーカ612が形成されるブランケット600の斜面の断面図を示すことに留意する。図4A図4B、および図4Cに示すように、マーカは、ブランケットの上面に形成されたインク画像と重なり合わないように、ブランケットの斜面に形成される。したがって、図6および図7の断面図は、ブランケットのインク画像とは別の領域を表すことが理解される。
【0211】
ステップ2の例において、マーカ612は、層602および604に形成され、任意選択的に、少なくとも層602を貫通して、任意選択的に層604も貫通して彫刻されてよく、更に、層606の少なくとも一部にまで延びてよい。いくつかの実施形態において、マーカ612は、たとえばレーザマーキングまたはレーザアブレーションなどのレーザ技術を用いて、200μmを超える深さまで彫刻される。他の実施形態において、マーカ612の少なくとも1つは、層602、604、および606の1または複数の少なくとも一部に彫刻され得る。たとえば、1または複数のマーカ612の第1のグループは、層602の一部または厚さ全体に彫刻されてよく、1または複数のマーカ612の第2のグループは、層602の厚さ全体を貫通し、層604の一部または厚さ全体に彫刻されてよく、1または複数のマーカ612の第3のグループは、層602および604の厚さ全体を貫通し、層606の一部または厚さ全体に彫刻され得る。
【0212】
また他の実施形態において、マーカ612の1または複数は、層602、604、および606を備えるスタックの少なくとも1層の少なくとも一部に彫刻されてよく、1または複数の他のマーカ612は、スタックの1または複数の他の層の少なくとも一部に彫刻され得る。たとえば、1または複数のマーカ612は、層602の一部または厚さ全体に彫刻されてよく、1または複数の他のマーカ612は、本明細書で説明された任意の適当な彫刻プロセスを用いて、層604および/または606の一部または厚さ全体に彫刻され得る。
【0213】
他の実施形態において、マーカ612は、たとえば上述の図2Aにおいて説明したようなパンチングまたはピンニング技術を用いるDPMなどの他の任意の適当なプロセスを用いて、または他の任意の適当な処理技術を適用することによって彫刻され得る。
【0214】
いくつかの実施形態において、マーカ612は、たとえば図4Aに示すマーカ408などの正方形、たとえば図4Bおよび図4Cにそれぞれ示すマーカ418および438などの長方形を有してよい。追加または代替として、たとえば円形、楕円形、星形などの他の適当な形状が用いられてもよい。いくつかの形状例は、上述の図4A図4B、および図4Cにおいて説明される。
【0215】
いくつかの実施形態において、マーカ612は、断面視において、上述の図5Aに示す直角側壁506を有するブランケット500の3D構造504、または上述の図5Aに示す傾斜側壁526を有するブランケット520の構造524、またはたとえば図5Cに示すこれらの組み合わせ、またはたとえば上述の図5A図5B、および図5Cにおいて説明した他の任意の適当な形状など、任意の適当な形状を有してよい。
【0216】
ステップ3において、プロセスは、マーカ612の彫刻3D構造内に、本明細書において充填材層614とも称される充填材料を付与することを備える。上述したように、剥離層602は、マーカ612の彫刻3D構造を埋めるように構成された、たとえば充填材層614などの数種類の材料に対する低い離型力を有してよい。
【0217】
充填材層614は、層604およびブランケット600の他の層に付着するが、層602に付着しないように構成されることに留意する。いくつかの実施形態において、層602は、たとえば上述のステップ1において、および上述の図4Aおよび図4Cにおいて更に詳しく説明したようなブランケット600の斜面など、マーカ612のために指定された位置には付与されなくてよい。他の実施形態において、層602は、ステップ1においてブランケット600全体に付与され、ステップ3において層614を付与する前にブランケット600の斜面から除去され得る。
【0218】
いくつかの実施形態において、充填材層614は、PDMSベースの層602、604、および606に適合するように、シリコンポリマーに対する化学親和力を有するように構成される。追加または代替として、層614は、ブランケット600の可撓性を維持するために、任意の適当な弾性率を有してよい。
【0219】
いくつかの実施形態において、充填材層614は、0℃~180℃の温度範囲において機械的および化学的安定性を有するように構成され、すなわち、充填材層614の化学および機械特性は、それらが室温で存在すると維持され、耐薬品性であり、たとえば熱分解、重量減少、または特性損失が発生しない。
【0220】
いくつかの実施形態において、層614は、ブランケット600に匹敵する、またはそれを超える、耐摩耗性および耐擦傷性(たとえば30ショアAを超える表面硬さ)を有するように構成される。また、層614は、たとえば透明性、反射性および色などの光学属性、磁気属性、および耐機械(たとえば引張)応力性を制御するために様々な種類の添加物を受け入れるように構成される。
【0221】
斜面からの層602の除去は、たとえば、斜面の選択された位置をエッチングすること、または他の適当な技術を用いることによって実行され得る。他の実施形態において、層602は、マーカ612を備えるブランケット600のそれぞれの斜面に充填材層614を付与する前に、ブランケット600の斜面の少なくとも1つから除去され得る。ステップ3によって、図6のプロセスシーケンスは終了する。
【0222】
ブランケット600の構成は、本発明を明確にするために単に例として提供される。他の実施形態において、ブランケット600は、単一の層または他の任意の適当な数の層を備えてよい。これらの実施形態において、ブランケット600の層の少なくとも1つは、たとえばポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン、エラストマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、メタクリル酸系エラストマー、ゴム、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル、およびこれらの材料の少なくとも2つの組み合わせなどであるがこれに限定されない他の任意の適当な材料を備えてよい。
【0223】
追加または代替として、ブランケット600は、ブランケット600の2つ以上の層に穴および/または溝を彫刻すること(または他の任意の適当な技術を用いること)によって形成され得る3次元(3D)マーカを備えてよい。たとえば、ブランケット600は、L字形3Dマーカまたは逆T字形3Dマーカを備えてよい。そのような実施形態において、3Dマーカの大きな横方向部分は、たとえば層606を彫刻することによって形成されてよく、3Dマーカのより小さな部分(たとえば「L」字の「棒」部分または逆「T」字の「足」部分)は、層604を彫刻することによって形成され得る。上述した感知アセンブリは、任意の透明または部分的に透明な層を通してそのような3Dマーカを感知してよく、ブランケット600は、任意の所望の形状を有する増加した密度のマーカを備えてよい。したがって、プロセッサ20は、印刷プロセス制御の強化においてプロセッサ20を支援し得る、当該ブランケットにおけるより大量かつより貴重な情報を受信し得ることにより、標的基板へ印刷された画像の品質を向上させ得る。
【0224】
図7は、本発明の実施形態に係る、一体型マーカ710を備えるブランケット700を製造するためのプロセスシーケンスの断面図を概略的に示す図である。ブランケット700は、たとえばシステム11のブランケット210に取って代わり得る。
【0225】
いくつかの実施形態において、図7における層は、上述の図6における層と同様であるが、異なるそれぞれのプロセスシーケンスを受ける。したがって図7は、プロセスの異なるシーケンスを強調する。
【0226】
プロセスは、剥離層704をポリエステル(PET)基板702に付与し、その後、剥離層704の重合化を伴うステップ1において開始する。その後、コンプライアンス層706が剥離層704に付与される。
【0227】
いくつかの実施形態において、後述のステップ2に示す彫刻プロセス中にコンプライアンス層706を保護するために、任意の適当なポリマー材料(たとえばプラスチック)で作られた層708がコンプライアンス層706に付与され得る。他の実施形態において、プロセスのステップ1は、層708を付与することなく、コンプライアンス層706を付与した後に終了され得る。
【0228】
ステップ2において、プロセスは、本明細書においてマーカ710とも称される3D構造をブランケット700の1または複数の層に彫刻することを備える。彫刻は、上述した彫刻技術のいずれかを用いて実行され得る。図7に示す実施形態例において、3D構造は、層706を貫通して彫刻される。
【0229】
いくつかの実施形態において、彫刻プロセスに加え、層708が除去され、プロセスのステップ2が終了する。上述のステップ1において説明した他の実施形態において、層708は層706に付与されない。これらの実施形態において、プロセスのステップ2は、層706の外側表面およびマーカ710の3D構造を彫刻プロセスの残余副産物から洗浄するという追加のサブステップを備えてよい。
【0230】
ステップ2は、デジタル印刷プロセス中にブランケット700の剥離層704に付与されたインク画像と重なり合わない領域にマーカ710が形成される、ブランケット700の斜面の断面図を示すことに留意する。
【0231】
ステップ3において、プロセスは、ガラス繊維層714に付与される、本明細書において充填材層712とも称される充填材料を備えるスタックを付与することを備える。いくつかの実施形態において、充填材層712は、マーカ710の彫刻3D構造を埋め、層706に結合されるように構成される。いくつかの実施形態において、充填材料712は、剥離層704の内側部分(たとえばバルク)に付着するように構成されるが、層704の外側表面は一般に、幅広い選択肢の材料、たとえば充填材料712への低い付着力を示す。
【0232】
いくつかの実施形態において、層712および714は、単一の動作で層706およびマーカ710の両方に付与され、その後、層712は重合化される。代替実施形態において、層712および714は、他の任意の適当なシーケンスを用いて配置され得る。
【0233】
ステップ4において、プロセスは、ガラス繊維層714にグリップ層716を付与することを備える。いくつかの実施形態において、グリップ層716は、高摩擦層610と実質的に同一であり、ブランケット700とシステム11のローラおよびダンサとの強固な接触を可能にするように構成される。その後、基板702は、たとえばチャネルエッチングなどの任意の適当な技術を用いて除去され得る。
【0234】
本明細書で説明される実施形態は主に、基板およびウェブへのデジタル印刷プロセスにおいて用いられるブランケット(ITM)を扱うが、本明細書で説明される方法およびシステムは、たとえばブランケットがドラムの周囲に巻き付けられ、ローラによってガイドされない間接印刷システムにおいて用いられるドラムブランケットなど、他の応用において用いられてもよい。本明細書で説明される方法およびシステムは、ITMの動きが精密に制御されるように、ITMを用いる任意の印刷システムにおいて用いられてもよい。
【0235】
したがって、上述した実施形態は、例として引用されていること、および本発明は、本明細書において特に示され説明されたものに限定されないことが理解される。むしろ、本発明の範囲は、本明細書で上述した様々な特徴の組み合わせおよび部分的組み合わせ、ならびに上記説明を閲読した当業者が思い至る、従来技術には開示されていないそれらの変形例および修正例の両方を含む。参照によって本特許出願に組み込まれる文書は、本出願の一体部分であると見なされるものであるが、これらの組み込まれた文書において任意の用語が本明細書において明示的または暗示的になされた定義と矛盾するように定義される場合、この限りではなく、本出願における定義のみが考慮されるべきである。
ブランケットの伸張の検出および補償
【0236】
図8は、本発明の他の実施形態に係る、位置感知アセンブリ800の概略断面図である。いくつかの実施形態において、システム11は、たとえば上述の図1のブランケット210に取って代わり得るブランケット802を備えてよい。たとえば上述の図2A~2Cにおいて説明したように、システム11は、矢印290によって表された移動方向に、既定の制御された速度でブランケット802を動かすように構成される。
【0237】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ800は、たとえば互いに距離813を置いてブランケット802に彫刻された(または他の任意の適当な技術を用いて形成された)マーカ804および806などのマーカの位置を検出し、ブランケット802の伸張を示す信号を生成するように構成される。以下で詳しく説明するように、開示される技術は、所与のマーカに関して、所与のマーカの2つ以上のそれぞれの位置を示す2つ以上の信号を取得してよい。これらの技術は、距離813の実際の長さを推定するため、すなわち、たとえば過剰な伸張によってブランケット802が変形しているかを検出するために、マーク付きブランケットの複数のマーカに適用され得る。
【0238】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ800は、たとえば上述の図2A~2Cおよび図3A~3Cにおいて詳しく説明したような、たとえば1または複数のLED、1または複数のレーザ、または他の任意の適当な種類の光源などの光源816を備える。光源816は、ブランケット802のマーカ804および806を通過し得る、たとえば光ビーム815および817などの複数の光ビームを放出し、方向付けるように構成される。光ビーム815および817は一般に、互いに同一であることに留意する。
【0239】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ800は、互いに距離811を置いて位置し、上述したようにマーカ804および806を通過した光ビーム815および817をそれぞれ通すように適合された2つ以上のスリット810および812を有するスリットアセンブリ808を備える。いくつかの実施形態において、スリット810と812との間の距離811は、本明細書においてマーカ間距離とも称される、マーカ804と806との間の距離813よりも小さい。いくつかの実施形態において、スリットアセンブリ808は、スリット810と812との間で散乱した光または迷光を遮断するように構成されたシールド814を備える。すなわち、シールド814は、後述するように、光ビーム815および817の各々が2つの個別のチャネルで位置感知アセンブリ800を通って伝達されるように、光ビーム815と817とを分離するように構成される。
【0240】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ800は、ファイバアセンブリ818の下面821と上面823との間に横たわる複数の光ファイバ820の束を有するファイバアセンブリ818を備える。いくつかの実施形態において、表面821および823は、光ビーム815および817に対し透明であり、光ファイバ820は、ファイバアセンブリ818を通して光ビーム815および817を伝達するように構成される。
【0241】
いくつかの実施形態において、位置感知アセンブリ800は、たとえば上述の図2A~2Cにおいて説明したセンサ271または284などであるがこれに限定されないセンサ822を備える。追加または代替として、センサ822は、光ビーム815および817を感知し、感知した光ビームの強度を示す電気信号を生成するように構成された、適当な種類のフォトダイオードまたは他の任意の適当な感知装置を備えてよい。
【0242】
図8の実施形態例において、システム11は、所定の速度で、矢印290によって表された移動方向にブランケット802を動かし、光源816は、光ビーム815および817を放出する。マーカ804がスリット810と一直線になると、光ビーム815は、マーカ804、およびスリット810およびファイバアセンブリ818を通過し、センサ822によって感知され、センサ822は感知された光ビーム815の強度およびマーカ804の第1の位置を示す、本明細書において第1の信号とも称される電気信号824を出力する。その後、システム11は、矢印290の方向に既定の速度でブランケット802を動かし続ける。マーカ804がスリット812と一直線になると、光ビーム817は、マーカ804、およびスリット812およびファイバアセンブリ818を通過し、センサ822によって感知され、センサ822は感知された光ビーム817の強度およびマーカ804の第2の位置を示す、本明細書において第2の信号とも称される電気信号826を出力する。
【0243】
図8の構成例において、位置感知アセンブリ800は、単一のマーカ(たとえばマーカ804)の2つのそれぞれの位置を示す2つの信号を生成するように構成されることに留意する。他の実施形態において、同様の技術が、必要な変更を加えて他の構成で実装されてよく、位置感知アセンブリ800は、単一のマーカから他の任意の適当な数の信号を取得するように適合され得る。
【0244】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、信号824および826を受信し、ブランケット802の既定の移動速度および電気信号824および826に基づいて、スリット810と812との間でマーカ804が移動した距離を示す距離827を推定するように構成される。プロセッサ20は更に、ブランケット802が、たとえば伸張によって変形しているか否かを検出するために、推定された距離827と(スリット810と812との間の)既定の距離811とを比較するように構成される。たとえば、等しい値の距離811および827は、ブランケット802が変形または伸張していないことを示し得るが、計算された距離827が既定の距離811よりも大きい場合、プロセッサ20は、システム11による過剰な引張応力によって、またはブランケットの経年劣化または他の任意の理由によってブランケット802が変形していることを警告するように構成される。
【0245】
いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、ブランケット802の伸張を制御および補償するために1または複数の閾値を保持してよい。たとえば、距離827が第1の閾値の値だけ距離811よりも大きい場合、プロセッサ20は、伸張したブランケットの警告をディスプレイ34に表示してよく、また、プロセッサ20は、ブランケットの伸張を補償するために、ブランケット802の移動速度またはシステム11の他のプロセスパラメータを調整してよい。距離827が第2のより大きな閾値だけ距離811よりも大きい場合、プロセッサは、システム11の動作を停止するメッセージを表示してよく、および/またはブランケット802の過剰な伸張を補償するために他の任意の適当な動作を実行してよい。
【0246】
この特定の構成の位置感知アセンブリ800およびマーク付きブランケット802は、本発明の実施形態によって対処される、たとえばブランケットの伸張などの特定の問題を例示するため、およびたとえばシステム11などのデジタル印刷システムの性能を向上させるためのこれらの実施形態の適用を論証するために、例として示される。しかし、本発明の実施形態は決して、この特定の種類のシステム例に限定されることはなく、本明細書で説明される原理は、他の種類の位置感知アセンブリおよび/またはブランケットおよび/または印刷システムに同様に適用され得る。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8