(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-13
(45)【発行日】2024-05-21
(54)【発明の名称】消音構造及び消音方法
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20240514BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240514BHJP
G10K 11/175 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B60R13/08
B62D25/08 E
G10K11/175
(21)【出願番号】P 2023183107
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2020095215の分割
【原出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】杉本 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 直邦
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-317179(JP,A)
【文献】特開2004-168134(JP,A)
【文献】特開2004-168174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02,13/08
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサイドメンバーの下方を通過して車両の側方に漏れる
モータ音を低減させる消音構造であって、
前記サイドメンバーの下面に騒音反射部を重ねて備え、前記騒音反射部に、前記
モータから側方に離れるに従って下方に向かうように上下方向に対して傾斜する音反射面を有し、前記音反射面で受けた
モータ音を下方に反射して、前記サイドメンバーの下方を通過する
モータ音と干渉させる消音構造。
【請求項2】
車両のサイドメンバーの下方を通過して車両の側方に漏れるモータ音を低減させる消音方法であって、
前記サイドメンバーに重ねて設けた騒音反射部でモータ音を下方に反射して前記サイドメンバーの下方を通過するモータ音と干渉させる消音方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車外に漏れる音を低減可能な消音構造及び消音方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の消音構造として、エンジンを下方から覆うものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-170584号公報(段落[0013]、[0014]、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両のエンジンやモータを収容しているルームの側部には、車輪のドライブシャフトやタイロッドを通すために開口が設けられているため、その開口からサイドメンバーの下方を通過して車両の側方にエンジンやモータの音が漏れる。しかしながら、そのように側方に漏れる音を、上述した従来の消音構造では抑えることができないため、側方に漏れる音を抑える技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、車両のサイドメンバーの下方を通過して車両の側方に漏れるエンジン音を低減させる消音構造であって、前記サイドメンバーの下面に騒音反射部を重ねて備え、前記騒音反射部に、前記エンジンから側方に離れるに従って下方に向かうように上下方向に対して傾斜する音反射面を有し、前記音反射面で受けたエンジン音を下方に反射して、前記サイドメンバーの下方を通過するエンジン音と干渉させる消音構造である。ここで、サイドメンバーには、車両の前後方向の略全体に亘って延びるサイドメンバーと、車両のエンジンルームで前後方向に延びるフロントサイドメンバーの両方が含まれる。
【0006】
発明の第2態様は、前記音反射面は、曲率半径が20~30[mm]であり、かつ周長が30~50[mm]の円弧面である第1態様に記載の消音構造である。
【0007】
発明の第3態様は、前記音反射面は、上下方向に対する傾斜角が40~50[DEG]であり、かつ上下方向の寸法が20~30[mm]の平坦面である第1態様に記載の消音構造である。
【0008】
発明の第4態様は、前記音反射面の前後方向の両端部から突出し、前後方向で互いに対向する1対のサイド突壁を備える第1態様から第3態様の何れか1の態様に記載の消音構造である。
【0009】
発明の第5態様は、前記騒音反射部は、前記音反射面を表裏の一方の表面として備える音反射板と、前記音反射板の縁部から前記音反射面の反対側に張り出す取付板部とを、一体に備える樹脂の成形品であり、前記サイドメンバーの下面又は、前記サイドメンバーの側面に重ねられて前記サイドメンバーより下方に張り出すフェンダーライナーの下縁部に、前記取付板部が重ねて固定されている第4態様に記載の消音構造である。
【0010】
発明の第6態様は、前記音反射面の前後方向の途中位置から突出して前記音反射面を前後方向で仕切る仕切突壁を備える第1態様から第5態様の何れか1の態様に記載の消音構造である。
【0011】
発明の第7態様は、車両のサイドメンバーの下方を通過して車両の側方に漏れるエンジン音を低減させる消音方法であって、前記サイドメンバーに重ねて設けた騒音反射部でエンジン音を下方に反射して前記サイドメンバーの下方を通過するエンジン音と干渉させる消音方法である。
【0012】
発明の第8態様は、前記車両の側方に漏れるエンジン音のうち騒音レベルが最も高い周波数の音の騒音レベルを下げるように前記騒音反射部で反射させたエンジン音と前記サイドメンバーの下方を通過するエンジン音との位相をずらす第7態様に記載の消音方法である。
【発明の効果】
【0013】
発明の第1態様及び第7態様の消音構造及び消音方法によれば、エンジンから側方に向かったエンジン音の一部が、サイドメンバーの下面に重ねて備えられた騒音反射部の音反射面で反射して下方に向かい、騒音反射部より下側でエンジンから側方に真っ直ぐ進んだエンジン音と位相がずれた状態で交わって干渉する。これにより、サイドメンバーの下方を通過して側方に漏れるエンジン音が抑えられる。
【0014】
ここで、車両の側方に漏れるエンジン音のうち騒音レベルが最も高い周波数の音の騒音レベルを下げるように騒音反射部で反射させたエンジン音とサイドメンバーの下方を通過するエンジン音との位相をずらすことが好ましい(発明の第8態様)。そのためには、車両が普通自動車の場合に、音反射面は、エンジンから側方に離れるに従って下方に向かうように上下方向に対して傾斜していれば、円弧面でも平坦面でもよい。また、音反射面が円弧面である場合には、曲率半径が20~30[mm]であり、かつ周長が30~50[mm]の円弧面であることが好ましく(発明の第2態様)、音反射面が平坦面である場合には、上下方向に対する傾斜角が40~50[DEG]であり、かつ上下方向の寸法が20~30[mm]の平坦面であることが好ましい(発明の第3態様)。
【0015】
発明の第4態様及び発明の第6態様のように、音反射面の前後方向の両端部から1対のサイド突壁が突出した構造、又は音反射面の前後方向の途中位置から仕切突壁が突出した構造とすることで、音反射面で反射したエンジン音の車両の前後方向への拡がりが抑えられる。
【0016】
発明の第5態様の消音構造では、騒音反射部がサイドメンバー又はフェンダーライナーに対して固定される部品になっているので、サイドメンバー又はフェンダーライナーの形状が異なる車種の間で、騒音反射部の共通化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】フェンダーライナーを車両後方側から見た斜視図
【
図5】騒音反射器を(A)音反射面側から見た斜視図、(B)音反射面と反対側から見た斜視図
【
図6】側部開口から側方へ向かうエンジン音の流れを示す図
【
図7】(A)実施例1、(B)実施例2、(C)比較例1、の騒音反射器の構造を模式的に示す図
【
図10】(A)、(B)他の実施形態に係る騒音反射器の正断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図6を参照して、本開示の消音構造を有する車両90に係る第1実施形態を説明する。
図1に示した本実施形態の車両90は、例えばフロントにエンジン95が搭載され、前輪91が駆動される乗用車である。この車両90のエンジンルーム93は、下部と両側部とにカバー壁92A,92Bを有して、側方及び下方への音漏れが抑えられている。また、
図2に示すように、両側部のカバー壁92Aには、前輪91のドライブシャフト31とタイロッド32とをエンジンルーム93から導出するために側部開口92Cが形成されている。そして、側部開口92Cから側方への音漏れを抑えるために、本開示に係る消音構造がフロントサイドメンバー20の下面に設けられている。
【0019】
その消音構造の周辺は、具体的には以下のようになっている。
図1に示すように、フロントサイドメンバー20は、側部のカバー壁92Aの外側に位置し、例えば角筒構造をなして前後方向に延びている。また、
図3に示すように、フロントサイドメンバー20は、前端から後端寄り位置までは略水平な水平部20Aをなし、その水平部20Aより後側は、後下がりに傾斜した傾斜部20Bになっている。そして、ホイールハウス96が、フロントサイドメンバー20の水平部20Aの後部から傾斜部20Bの前部に亘る範囲に配置されている。
【0020】
図1に示すように、ホイールハウス96内のフェンダーライナー22には、フロントサイドメンバー20の外側面に重ねて固定される内側壁22Bが備えられている。また、フェンダーライナー22のうち前輪91を上方から覆う円弧壁22Aの頂上部には、前輪91のショックアブソーバー33が貫通していて、フェンダーライナー22をホイールハウス96内に組み付ける際にショックアブソーバー33を通すための切り欠き23が、
図4に示すように、円弧壁22Aの頂上部から内側壁22Bの下端部まで延びている。
【0021】
図3に示すように、フロントサイドメンバー20から下方に離れた位置にはサブフレーム21が備えられている。また、サブフレーム21の下面に前述のカバー壁92Bが重ねられている。そして、前述の側部開口92Cが、ホイールハウス96内で、フロントサイドメンバー20とサブフレーム21との間に開口している。
【0022】
側部開口92Cからの側方への音漏れを抑えるために、フロントサイドメンバー20の下面には、複数(例えば、3つ)の騒音反射器10が前後方向に並べて固定され、側部開口92Cに臨んでいる。そして、これら複数の騒音反射器10から本実施形態の消音構造が構成されている。なお、本実施形態では、各騒音反射器10が、特許請求の範囲の「騒音反射部」に相当する。
【0023】
騒音反射器10は、例えば樹脂の射出成形品であって、
図5に単体状態で示されている。
図5(A)に示すように、騒音反射器10は、フロントサイドメンバー20の長手方向(車両90の前後方向)に延びる帯状の取付板部12を備える。取付板部12の長手方向の両端寄り位置からは、
図5(B)に示すように、取付板部12と同じ幅の四角形のサイド突壁14が垂下され、それらサイド突壁14の間には音反射板11が設けられている。
【0024】
音反射板11は、1/4円の断面形状をなしてフロントサイドメンバー20の長手方向に延びている。また、音反射板11の外周面の半径は、取付板部12の幅と略同じ大きさをなしている。そして、取付板部12の幅方向の一方の板厚面と、音反射板11の上部の板厚面とが共有されるように取付板部12の一側部と音反射板11の上部とが一体になると共に、音反射板11の両端部が1対のサイド突壁14に接続されている。
【0025】
音反射板11の円弧の内面は、本開示に係る音反射面11Aをなしている。なお、音反射面11Aの曲率半径は、例えば、20~30[mm]、周長は30~50[mm]が好ましい。また、音反射面11Aには、音反射板11の長手方向を例えば3等分に仕切る位置に1対の仕切突壁15が設けられている。各仕切突壁15は、サイド突壁14のうち音反射板11の内面から張り出した部分と同じ形状をなしている。
【0026】
取付板部12のうちサイド突壁14より端部側は、固定部12Aをなし、そこには取付孔12Bが形成されている。そして、フロントサイドメンバー20の下面に形成された図示しない螺子孔に、取付孔12Bに通したボルトを締め付けて騒音反射器10がフロントサイドメンバー20に固定されている。
【0027】
なお、本実施形態の騒音反射器10は、例えば樹脂の射出成形品であるが、真空成形品でもよい。また、騒音反射器10は、樹脂製に限定されるものではなく、例えば、金属であってもよい。さらには、フロントサイドメンバー20の下面への固定は、ボルトには限定されず、リベット、接着剤であってもよいし、材質が金属であれば溶接等であってもよい。
【0028】
次に、本実施形態の騒音反射器10の作用効果について説明する。エンジンルーム91内で発生して側方に向かったエンジン音は、側部開口92Cからフロントサイドメンバー20とサブフレーム21との間を通って車外に漏れる。本実施形態では、複数の騒音反射器10が、フロントサイドメンバー20の下面に取り付けられて、騒音反射器10の音反射面11Aが、側部開口92Cに臨むように配置された構造となっている。従って、側部開口92Cから側方へ向かうエンジン音の経路は、
図6に示すように、音反射面11Aを経由する第1経路16Rと、音反射面11Aを経由しないで騒音反射器10の下方を通って直進し、車外に放出される第2経路17Rとに分かれる。
【0029】
第1経路16Rを通るエンジン音は、騒音反射器10の音反射面11Aで反射して下方に向かう。そして、第2経路17Rを通って直進するエンジン音と合流する。音反射面11Aで反射したエンジン音の波長は、直進したエンジン音の波長に対して位相がずれるので、合流したときに互いに干渉する。これにより、エンジン音は、車外に漏れる前にフロントサイドメンバー20の下方で低減される。
【0030】
ここで、車外に漏れるエンジン音のうち騒音レベルが最も高い周波数の音の騒音レベルを下げることで、エンジン音全体の騒音レベルを下げることができる。従って、エンジン音のピークとなる周波数帯域800~1250[Hz]の音を低減することが望まれる。本実施形態のように、音反射面11Aの曲率半径を20~30[mm]、周長を30~50[mm]とすると、周波数帯域800~1250[Hz]を中心とした周波数を中心として良好な低減効果を得ることができる。
【0031】
また、騒音反射器10には、1対のサイド突壁14が備えられているので、エンジン音が音反射板11Aの車両90の前後方向の端部で反射したときに、エンジン音が騒音反射器10から車両90の前後方向に逃げることを防止することができる。これにより、第1経路16Rを通るエンジン音を無駄なく下方に向かわせて、第2経路17Rを通るエンジン音と干渉させることができ、車外から漏れるエンジン音の低減効率を高めることができる。
【0032】
さらに、騒音反射器10には、1対の仕切突壁15が備えられているので、音反射面11Aで反射したエンジン音が車両90の前後方向へ拡がることを抑えることができる。これにより、第1経路16Rを通るエンジン音を無駄なく下方に向かわせて、第2経路17Rを通るエンジン音と効率よく干渉させることができる。
【0033】
ここで、騒音反射器10を、フロントサイドメンバー20の内側に配置すると各種の補器類と干渉し、フロントサイドメンバー20の外側に配置するとショックアブソーバー33と干渉する虞があるが、本実施形態では、騒音反射器10を、フロントサイドメンバー20の下方に配置するので、これらの部品と干渉する虞がなく、騒音反射器10の形状の自由度が高くなる。
【0034】
さらに、騒音反射器10は、別部品となっているので、フロントサイドメンバー20の形状が異なる車種の間で、騒音反射器10の共通化を図ることができる。しかも、駆動シャフト31及びタイロッド32等の位置や大きさに合わせて、取り付ける位置や数を適宜変更することができる。また、取付板部12を備えているので、取り付け作業も容易となる。
【0035】
[確認実験]
本開示の消音構造の消音効果を確認する実験について説明する。この実験では、本開示の消音構造を有する車両である以下の実施例1,2と、本開示の消音構造を有しない車両である以下の比較例1,2とが用意された。なお、実施例1,2,比較例1,2で使用した車両の本体は同じであり、例えば2000ccのフロントエンジンの4輪駆動の乗用車で、側部開口92Cのサイズは、幅約250[mm]、高さ約150[mm]である。
【0036】
(実施例及び比較例の構造)
実施例1は、
図7(A)に示されており、前記第1実施形態で説明した騒音反射器10を上記車両のフロントサイドメンバー20の下面に3つ備える。また、フロントサイドメンバー20は、騒音反射器10より幅広になっていて、騒音反射器10は、フロントサイドメンバー20の下面のうち外側に寄せて配置されている。この騒音反射器10の音反射面11Aの曲率半径は25[mm]になっている。また、騒音反射器10のうちフロントサイドメンバー20の長手方向に沿った長さは240[mm]、幅は26[mm]、高さは、26[mm]になっている。
【0037】
実施例2は、
図7(B)に示されており、実施例1の騒音反射器10を騒音反射器10Vと交換した構造になっている。その騒音反射器10Vは、騒音反射器10とは音反射板11Vの構造のみが異なる。即ち、騒音反射器10Vの音反射板11Vは、上下方向に対して例えば45[DEG]の傾斜角で傾斜した平板状をなし、その音反射板11Vの音反射面11Aは、下方に向かうに従ってエンジン30から離れるように傾斜した平坦面となっている。
【0038】
比較例1は、
図7(C)に示されており、第1実施形態の騒音反射器10の代わりに、実施例1の騒音反射器10を騒音反射器10Wと交換した構造になっている。その騒音反射器10Wは、騒音反射器10とは音反射板11Wの構造のみが異なる。即ち、騒音反射器10Wの音反射板11Wは、取付板部12の下面と直交するように平板状になっている。
【0039】
比較例2は、図示しないが、フロントサイドメンバー20の下面に騒音反射器を備えていない構造になっている。
【0040】
(実験方法)
実験は、上記した実施例1,2,比較例1,2の各車両で、ISO10844で規定されるISO路を、
図8に示すように、加速ラインであるA地点に時速50[km/h]で進入し、そこからスロットル全開加速を開始して20[m]走行後、加速終了ラインであるB地点でスロットル全閉にし、その間の騒音を測定した。マイク位置は、A地点、B地点のラインの中間地点であるP地点で、車両90の中心から7.5[m]離れ、かつ1.2[m]の高さに設置し、測定区間内の最大騒音レベルを測定結果とした。
【0041】
図9には、実施例1,2,比較例1,2の測定結果が示されている。この測定結果から、実施例1,2は、比較例1,2よりも、周波数帯域800~1250[Hz]での騒音レベルが小さくなっていることが分かる。これにより、実施例1及び2の騒音反射器10,10Vでは、第1経路16Rと第2経路17Rとの経路差の範囲が、周波数帯域800~1250[Hz]の波長の1/2倍を中心として規定されていると考えられる。つまり、実施例1及び2の騒音反射器10,10Vを備えることにより、騒音レベルが最も高い周波数の音の騒音レベルが低減されることが確認できた。
【0042】
また、比較例1の騒音反射器10Wでは、周波数帯域800~1250[Hz]で、比較例2よりも騒音レベルが大きくなってしまう領域があることが分かる。これにより、エンジン音を下方に向かわせる音反射面の構造は、側部開口92Cと対向する直立壁よりも下方に向かうに従ってエンジン30から離れるように傾斜する構造であることが好ましいことが確認できた。
【0043】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態において、騒音反射器10の音反射面11Aは、円弧面であったが、側部開口92C側を向いて、下方に向かうに従ってエンジン30から離れるように傾斜した平坦面(
図7(B)参照)で構成されていてもよい。この平坦面は、配置される上下方向に対する傾斜角が40~50[DEG]であり、かつ上下方向の寸法が20~30[mm]であることが好ましい。このような構成としても、
図9の実施例2に示されるように、周波数帯域800~1250[Hz]での騒音レベルを低減することができる。
【0044】
(2)上記実施形態において、騒音反射器10の取付板部12は、フロントサイドメンバー20の下面に重ねられていたが、
図10(A)に示すように、フェンダーライナー22Xの内側壁22XBの下端部が、フロントサイドメンバー20の下面よりも下方に張り出していて、内側壁22XBに騒音反射器10の取付板部12が重ねられる構成であってもよい。
【0045】
また、
図10(B)に示すように、フロントサイドメンバー20の下面よりも下方に張り出した内側壁22YBの下端部が屈曲してフロントサイドメンバー20の下面に重ねられた構成であってもよい。このとき、騒音反射器10の取付板部12は、内側壁22YBのうちフロントサイドメンバー20の下面に重ねられた部分に固定すればよい。
【0046】
(3)上記(2)の実施形態において、騒音反射器10は、フェンダーライナー22X,22Yに取り付ける別部品であったが、インテグラルヒンジを介してフェンダーライナー22X,22Yと一体に形成されていてもよい。
【0047】
(4)上記実施形態では、フロントにエンジン30が搭載された車両90のエンジンルーム93で前後方向に延びるフロントサイドメンバー20に騒音反射器10を備えた構成であったが、フロント以外にエンジン30を備えた車両90であって、車両90の前後方向の略全体に亘って延びるサイドメンバーに騒音反射器10を備えた構成であってもよい。
【0048】
(5)上記実施形態では、1対の仕切突壁15が音反射面11Aを仕切る間隔が、音反射面11Aの曲率半径と略同じ大きさとなっていたが、曲率半径より大きくなっていてもよいし、小さくなっていてもよい。また、仕切突壁15が備えられていなくてもよいし、1つ、又は3つ以上備えられていてもよい。
【0049】
(6)上記実施形態では、騒音反射器10は、側部開口92Cの上部の略全体に臨むように設けられていたが、側部開口92Cの上部の一部に臨むように設けられていてもよい。つまり、騒音反射器10は、3つ備えられていたが、2つ以下でもよい。また、側部開口92Cの前後方向の幅に合わせて4つ以上備えられていてもよい。
【0050】
(7)上記実施形態では、エンジン30を備えた車両90に適用されていたが、モータを備えた電気自動車や、モータ及びエンジンを備えたハイブリッド車に適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 騒音反射部
11A 音反射面
20 サイドメンバー
90 車両