(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/64 20060101AFI20240515BHJP
A47C 7/46 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
B60N2/64
A47C7/46
(21)【出願番号】P 2020016051
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】山内 直人
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-153959(JP,U)
【文献】特開2017-081194(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016219509(DE,A1)
【文献】特開2014-104865(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0368969(US,A1)
【文献】特開2009-172145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/64
A47C 7/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の背部を支持する支持面を有するシートであって、
前記支持面を介して人を加圧するように前記シート内に高さ方向に列状に配置された複数の流体袋と、
前記複数の流体袋の内部にそれぞれ流体を供給し、前記複数の流体袋を個別に加圧する加圧部と、
前記複数の流体袋内の流体の圧力をそれぞれ検出する圧力検出部と、
前記シートに人が着座した後に加圧を開始させ、前記圧力検出部により検出された圧力が所定値になるまで、または所定時間が経過するまで、前記複数の流体袋を加圧するように前記加圧部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、人が着座後に前記複数の流体袋の加圧が開始されてから前記圧力検出部により検出された圧力が前記所定値になるまでに要する時間または前記所定時間が経過したときの前記圧力検出部により検出された圧力に基づいて、前記シートに着座した人の姿勢を判定する姿勢判定部を有することを特徴とするシート。
【請求項2】
請求項1に記載のシートにおいて、
シートフレームと、該シートフレームを覆うように設けられるパッドと、該パッドを被覆する表皮と、をさらに備え、
前記複数の流体袋は、前記パッドの前面に配置されることを特徴とするシート。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシートにおいて、
前記制御部は、人が着座後に前記加圧部による加圧が開始される前に、前記複数の流体袋の内部が減圧状態となるように前記加圧部を制御することを特徴とするシート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のシートにおいて、
前記複数の流体袋に供給される流体は、空気であることを特徴とするシート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のシートにおいて、
前記姿勢判定部により判定された人の姿勢に基づいて、前記支持面に対する加圧力を変更する加圧力変更手段をさらに備えることを特徴とするシート。
【請求項6】
請求項5に記載のシートにおいて、
前
記加圧力変更手
段は、前記流体袋よりも小型に形成されることを特徴とするシート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のシートにおいて、
前記制御部は、高さ方向における下方に位置する前記流体袋の圧力が前記所定値になるまたは前記所定時間が経過すると、当該流体袋の加圧を停止し、当該流体袋の上方に位置する次の流体袋の加圧が開始されるように前記加圧部を制御することを特徴とするシート。
【請求項8】
請求項
5に記載のシートにおいて、
前記圧力検出部は、第1圧力検出部であり、
前記加圧力変更手段は、第1加圧力変更手段であり、
前記支持面に作用する人の自重による左右方向の圧力を検出する第2圧力検出部と、
前記第2圧力検出部により検出された左右方向の圧力に基づいて、前記支持面の左側および右側に対する加圧力を変更する第2加圧力変更手段と、をさらに備えることを特徴とするシート。
【請求項9】
請求項8に記載のシートにおいて、
前記複数の流体袋は、複数の第1流体袋であり、
前記第2加圧力変更手段は、左右一対の複数の第2流体袋を有し、
前記第2圧力検出部は、前記複数の第2流体袋の圧力をそれぞれ検出し、
前記加圧部は、前記複数の第2流体袋の内部にさらに流体を供給するように構成され、
前記所定値および前記所定時間は、それぞれ第1所定値および第1所定時間であり、
前記制御部は、前記シートに人が着座した後、前記第2圧力検出部により検出された圧力が第2所定値になるまで、または第2所定時間が経過するまで、前記複数の第2流体袋を加圧するようにさらに前記加圧部を制御し、
前記姿勢判定部は、前記複数の第2流体袋の加圧が開始されてから前記第2圧力検出部により検出された圧力が前記第2所定値になるまでに要する時間または前記第2所定時間が経過したときの前記第2圧力検出部により検出された圧力に基づいて、前記シートに着座した人のさらに左右方向の姿勢を判定することを特徴とするシート。
【請求項10】
請求項9に記載のシートにおいて、
前記シートの骨格をなすシートフレームと、
前記複数の第1流体袋と前記複数の第2流体袋とを含み、前記シートフレームに支持される流体袋ユニットと、をさらに備えることを特徴とするシート。
【請求項11】
車両の乗員の背部を支持するシートバックを有するシートであって、
前記シートバックの着座面を介して乗員を加圧するように前記シートバック内に高さ方向に列状に配置された複数の流体袋と、
前記複数の流体袋の内部にそれぞれ流体を供給し、前記複数の流体袋を個別に加圧する加圧部と、
前記複数の流体袋内の流体の圧力をそれぞれ検出する圧力検出部と、
前記シートバックに乗員が着座した後に加圧を開始させ、前記圧力検出部により検出された圧力が所定値になるまで、または所定時間が経過するまで、前記複数の流体袋を加圧するように前記加圧部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、乗員が着座後に前記複数の流体袋の加圧が開始されてから前記圧力検出部により検出された圧力が前記所定値になるまでに要する時間または前記所定時間が経過したときの前記圧力検出部により検出された圧力に基づいて、前記シートバックに着座した乗員の姿勢を判定する姿勢判定部を有することを特徴とするシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックを有するシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数個の空気袋が内蔵されたシートバックを有する車両用シートが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載のシートでは、予め乗員が乗車する前に複数個の空気袋に空気が導入され、複数個の空気袋がそれぞれ所定の空気袋状態に設定される。そして、この状態で乗員が着座したときの空気袋の内部圧力の変化状態に応じて、乗員にとって負担がかからないようなシート形状が選定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のシートでは、シート形状の選定のために、予め乗員が着座していない状態で複数個の空気袋に空気を導入し、複数個の空気袋を所定の空気袋状態に設定しておく必要がある。このため、乗員が着座する前に待機時間が必要となり、乗員にとって煩わしい。また、所定空気圧の状態になる前に乗員が着座すると、機能性が損なわれるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、人の背部を支持する支持面を有するシートであり、支持面を人に向けて加圧するようにシート内に高さ方向に列状に配置された複数の流体袋と、複数の流体袋の内部にそれぞれ流体を供給し、複数の流体袋を個別に加圧する加圧部と、複数の流体袋内の流体の圧力をそれぞれ検出する圧力検出部と、シートに人が着座した後、圧力検出部により検出された圧力が所定値になるまで、または所定時間が経過するまで、複数の流体袋を加圧するように加圧部を制御する制御部と、を備える。制御部は、複数の流体袋の加圧が開始されてから圧力検出部により検出された圧力が所定値になるまでに要する時間または所定時間が経過したときの圧力検出部により検出された圧力に基づいて、シートに着座した人の姿勢を判定する姿勢判定部を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、人が着座する前の待機時間を設けることなく、着座状態の人の姿勢を容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るシートの概略構成を示す斜視図。
【
図2】
図1のシートを構成するシートフレームの要部構成を概略的に示す斜視図。
【
図3】
図1のシートバック内におけるエアセルの配置を概略的に示す断面図。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るシートに用いられる空気制御装置の構成を示すブロック図。
【
図6】
図5のECUで実行される処理の一例を示すフローチャート。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るシートに用いられるエアセルの配置を示す正面図。
【
図9】本発明の第3実施形態に係るシートに用いられる互いに形態の異なるエアセルの位置関係を示すシートバックの要図断面図。
【
図10】本発明の第3実施形態に係るシートに用いられる複数のエアセルの配置を示す斜視図。
【
図11】本発明の第3実施形態に係るシートに用いられる空気制御装置の要部構成を示すブロック図。
【
図12】本発明の変形例であるシートクッションの要部構成を示す断面図。
【
図15】本発明の変形例であるシートに内蔵される加圧機構の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
-第1実施形態-
以下、
図1~
図7を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態に係るシートは、例えば車両の運転席や助手席に設けられる車両用シートとして構成される。なお、第1実施形態に係るシートを、他の乗り物用シートとして用いることもでき、乗り物用シート以外に用いることもできる。したがって、シートに着座する人は乗員に限らない。
【0009】
図1は、本発明の第1実施形態に係るシート100の概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、シート100は、乗員の臀部を支持するシートクッション1と、乗員の腰部および背部を支持するシートバック2と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト3とを有する。なお、以下ではシート100に着座した乗員を基準にして図示のように前後方向、左右方向および上下方向を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
【0010】
シートクッション1は、前後方向および左右方向に延在し、上方から見ると全体が略矩形状を呈する。シートバック2は、上下方向および左右方向に延在し、前方から見ると全体が略矩形状を呈する。シート100は、内部にシートフレーム(
図2)を有し、シートフレームを覆うようにウレタン樹脂製のパッド301とパッド301の表面の表皮302とを有する。シートクッション1の上面およびシートバック2の前面は、乗員が着座する着座面100aを構成し、着座面100aは、パッド301と表皮302とを介してシートフレームから支持される。
【0011】
シートバック2の左側面(例えばドアの反対側)には、回動可能にアームレスト5が支持される。シートバック2(
図2のサイドフレーム221,222)の下端部は、左右一対のリクライニング機構6を介してシートクッション1の後端部に、左右方向に延在する軸部6aを支点にして前後方向に傾動可能に支持される。
【0012】
図2は、本発明の第1実施形態に係るシート100を構成するシートフレーム200の要部構成を概略的に示す斜視図である。
図2に示すように、シートフレーム200は、シートクッション1の骨格を構成するシートクッションフレーム210と、シートバック2の骨格を構成するシートバックフレーム220とを有する。シートクッションフレーム210は、前後方向に延在する左右一対のサイドフレーム211,212と、サイドフレーム211,212同士をそれぞれ連結する前後一対の連結フレーム213,214とを有する。
【0013】
シートバックフレーム220は、上下方向に延在する左右一対のサイドフレーム221,222と、サイドフレーム221,222同士を連結する上下一対の連結フレーム223,224とを有する。上側の連結フレーム223は、パイプ部材を略U字状に折り曲げて形成され、パイプ部材の両端部がサイドフレーム221,222の上端部を構成する。パイプ部材の両端部には、サイドフレーム221,222の一部である略板状のサイドフレーム(サイドプレート221a,222a)が接合される。サイドプレート221a,222aは、上下方向に細長にかつ前後方向に幅広に構成される。左側のサイドプレート221aの左面には、衝突時の乗員保護用のサイドエアバッグユニット7が取り付けられる。
【0014】
サイドフレーム221,222と連結フレーム223,224との間の空間には、略矩形状の支持プレート225が配置される。支持プレート225は、乗員の着座面100aからの自重を受け止める受圧板を構成する。支持プレート225は、シートバックフレーム220により支持される。例えば、図示のように支持プレート225の下端部が支持部226を介して連結フレーム224に支持されるとともに、上端部が左右一対のワイヤ状の支持部227を介して連結フレーム223から支持される。なお、支持プレート225は、左右のサイドフレーム221,222に支持されるようにしてもよい。
【0015】
支持プレート225の前面には、複数(図では4個)のエアセル10が上下方向に並んで配置される。エアセル10は、空気が封入されることで膨張し、空気が排出されることで圧縮する流体袋であり、正面視略矩形状に構成される。エアセル10の膨張および圧縮により、着座面100aへの押圧力が変化し、これにより乗員に対する加圧力が変化する。なお、複数のエアセル10を、下から順番に1番目エアセル11、2番目エアセル12、3番目エアセル、4番目エアセル14と呼ぶ。
【0016】
図3は、シートバック2内のエアセル10の配置を概略的に示す断面図である。
図3に示すように、1番目エアセル11は乗員の腰痛下部の位置に対応して配置され、2番目エアセル12は腰椎上部の位置に対応して配置され、3番目エアセル13は胸椎下部の位置に対応して配置され、4番目エアセル14は胸椎上部の位置に対応して配置される。さらにシート100には、シートクッション1およびシートバック2の着座面100aに、乗員の着座の有無を検出する着座センサ31が配置される。
【0017】
複数のエアセル11~14は、それぞれ支持プレート225と前面プレート228との間に配置される。前面プレート228は、支持プレート225よりも剛性の低い可撓性を有する材質(例えば樹脂材)により構成される。前面プレート228は、エアセル10の膨張および圧縮により変形し、側面視の形状、すなわち湾曲形状が変化する。これにより、前面プレート228を介してパッド301が前方に押圧され、着座面100aに対し加圧力が作用する。また、前面プレート228の上にエアセル10を追加して加圧力を増加させることができる。
【0018】
エアセル10の個数や配置は、
図3のものに限らない。
図4は、
図3の変形例を示す図である。
図4の例では、上下方向に3つのエアセル11~13が並べて配置される。すなわち、1番目エアセル11が乗員の骨盤の位置に対応して配置され、2番目エアセル12が腰の位置に対応して配置され、3番目エアセル13が肩の位置に対応して配置される。なお、
図3、4の前面プレート228を省略し、着座面100a側のパッド301の裏面(後面)を、エアセル10により直接押圧するようにしてもよい。
【0019】
図2に示すように、左側のサイドプレート221aの内側面(右面)には、エアポンプ41とバルブユニット42とが取り付けられる。エアポンプ41は、エアセル10に供給する空気(圧縮空気)の供給源として機能する。エアポンプ41は、その回転軸に連結された電動モータ41aの回転により駆動され、エアポンプ41の駆動により圧縮空気が生成される。図示は省略するが、エアポンプ41は、電動モータ41aの回転時(エアポンプ41の駆動時)に生じる作動音の外部への放出を抑えるため、袋やケース等のカバー部材によって覆われ、カバー部材により周囲が覆われた状態で、サイドプレート221aに取り付けられる。
【0020】
バルブユニット42は、エアポンプ41から各エアセル10に供給される空気の流れを制御する複数(
図5では1つのみ図示)の電磁バルブ42aを有する。電磁バルブ42aは、エアポンプ41と各エアセル10との間の空気通路を開閉するオンオフ式の電磁弁や、エアセル10内の空気を大気に開放可能に切り換えられる電磁切換弁などにより構成される。電磁バルブ42aの駆動により、各エアセル10に空気が供給(加圧)または各エアセル10から空気が排出(減圧)される。バルブユニット42は、内圧測定用のセンサと大気圧測定用のセンサとを有する。
【0021】
エアポンプ41とバルブユニット42の取り付け位置は、
図2のものに限らない。例えば、サイドプレート221aの外側面(左面)にエアポンプ41とバルブユニット42とを取り付けるようにしてもよい。右側のサイドプレート222aの内側面または外側面にエアポンプ41とバルブユニット42とを取り付けるようにしてもよい。
【0022】
各エアセル10への空気の流れは、空気供給制御装置によって制御される。
図5は、本発明の第1実施形態に係るシート100に用いられる空気制御装置30の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、空気制御装置30は、電子制御ユニット(ECU)50と、ECU50にそれぞれ接続された着座センサ31(
図3)と、モード選択部32と、圧力センサ33と、電動モータ41a(
図2)と、電磁バルブ42a(
図2)とを有する。なお、図示は省略するが、空気制御装置30は、大気圧測定用のセンサ(大気圧センサ)をさらに有し、この大気圧センサもECU50に接続される。
【0023】
モード選択部32は、例えば車両の操作パネルに設けられた、乗員が操作可能な選択スイッチにより構成され、乗員のモード選択部32の操作により、最適モードと姿勢補正モードのいずれかの加圧モードが選択される。最適モードは、乗員の姿勢に追従して乗員が不快と感じないようにシートバック2の加圧状態を制御するモードである。姿勢補正モードは、乗員の骨盤を適正状態とするために乗員の姿勢を矯正するようにシートバック2の加圧状態を制御するモードである。モード選択部32を、スマートフォンやタブレット等の携帯端末により構成することもできる。
【0024】
圧力センサ33は、エアセル11~14に対応してそれぞれ設けられた複数の圧力センサ33(
図5では1つのみ図示)であり、エアセル11~14内の空気の圧力をそれぞれ検出する。圧力センサ33は、例えばエアセル11~14に接続してそれぞれ設けられ、あるいはエアセル11~14に連通する空気通路に接続してそれぞれ設けられる。電磁バルブ22aに圧力センサ33を接続して設けることもできる。圧力センサ33により検出される圧力は、大気圧センサにより検出された大気圧により補正される。すなわち、大気圧は、地上での気圧を1とすると、高さ高くなるにつれて下がる。したがって、大気圧センサにより検出される気圧が標準的な気圧の場合には、圧力センサ33の検出値をそのまま用いてエアセル11~14の圧力が制御されるが、検出される気圧が所定範囲から外れると、大気圧センサにより検出された気圧に応じて圧力センサ33の検出値を補正し、補正値を用いてエアセル11~14の圧力が制御される。
【0025】
ECU50は、CPU、ROM、RAM、およびその他の周辺回路を有する演算処理装置を含んで構成され、例えばシートクッション1の下方あるいは内部に配置される。ECU50は、支持プレート225の裏面に取り付けられてもよい。ECU50は、機能的構成として、姿勢判定部51と、姿勢制御部52とを有する。
【0026】
姿勢判定部51は、圧力センサ33からの信号に基づいて電動モータ41aおよび電磁バルブ42aに制御信号を出力し、乗員の姿勢を判定する。具体的には、エアセル11~14内が減圧された初期状態において、着座センサ31により乗員の着座が検出されると、電動モータ41aを駆動してエアポンプ41を作動するとともに、電磁バルブ42aの駆動によりエアセル11~14を順次加圧する。すなわち、1番目エアセル11内の圧力が所定値Paに達するまで1番目エアセル11を加圧し、次いで、2番目エアセル12内の圧力が所定値Paに達するまで2番目エアセル12を加圧し、次いで、3番目エアセル13内の圧力が所定値Paに達するまで3番目エアセル13を加圧し、次いで、4番目エアセル14内の圧力が所定値Paに達するまで4番目エアセル14を加圧する。2番目エアセル12を加圧するとき、1番目エアセル11を減圧してから加圧するようにしてもよく、減圧せずに加圧してもよい。3番目エアセル13、4番目エアセル14を加圧するときも同様に、他のエアセルを減圧してから加圧するようにしてもよく、減圧せずに加圧してもよい。
【0027】
姿勢判定部51は、上述の加圧動作を行うことにより得られた加圧時間、すなわち1番目エアセル11内の圧力が所定値Paに達するまでに要した第1時間t1、2番目エアセル12内の圧力が所定値Paに達するまでに要した第2時間t2、3番目エアセル13内の圧力が所定値Paに達するまでに要した第3時間t3、および4番目エアセル14内の圧力が所定値Paに達するまでに要した第4時間t4をそれぞれメモリに記憶する。姿勢判定部51は、これら取得した時間t1~t4の差異に応じて、乗員の姿勢、すなわち乗員に対しシートバック2から加圧力が作用する前の乗員の姿勢である中立姿勢を判定する。
【0028】
例えば、第1時間t1や第2時間t2よりも第3時間t3や第4時間t4の方が長い場合、姿勢判定部51は、乗員の姿勢が猫背であると判定する。反対に、第3時間t3や第4時間t4よりも第1時間t1や第2時間t2が長い場合、姿勢判定部51は、乗員の姿勢が反腰であると判定する。一方、第1時間t1~第4時間t4の差異が小さい場合、標準姿勢(いわゆるS字姿勢)であると判定する。このような判定は、例えば、予めメモリに第1時間t1~第4時間t4と乗員の姿勢との対応関係を記憶しておき、この対応関係を用いることで可能となる。
【0029】
姿勢制御部52は、モード選択部32により選択された加圧モードと姿勢判定部51により判定された姿勢とに応じて電動モータ41aと電磁バルブ42aとに制御信号を出力し、乗員の姿勢を制御する。例えば最適モードが選択された場合、姿勢制御部52は、乗員が中立姿勢を容易に維持できるような、すなわち乗員が中立姿勢のままシートバック2の着座面100aに全体にわたって均一に支持されるような各エアセル11~14の目標圧力(第1目標圧力と呼ぶ)を演算する。そして、圧力センサ33による検出される各エアセル11~14の圧力が第1目標圧力となるように、エアセル11~14をそれぞれ加圧する。
【0030】
一方、姿勢補正モードが選択された場合、姿勢制御部52は、乗員の骨盤が予めメモリに記憶された所定の状態となるような目標圧力(第2目標圧力と呼ぶ)を演算する。そして、圧力センサ33による検出される各エアセル11~14の圧力が第2目標圧力となるように、エアセル11~14をそれぞれ加圧する。
【0031】
図6は、予めメモリに記憶されたプログラムに従いECU50で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば車両ドアの開閉後に、着座センサ31により乗員の着座が検出されると、開始される。なお、制御開始時には、エアセル11~14はそれぞれ減圧状態であり、かつ、エアセル10の番号を表すnは1に設定される。
【0032】
図6に示すように、まず、ステップS1で、電動モータ41aに制御信号を出力してエアポンプ41を始動するとともに、n番目エアセル10(エアセル11~14のいずれか)を加圧するように電磁バルブ42aに制御信号を出力する。初期状態ではn=1であるため、初めに1番目エアセル11が加圧される。次いで、ステップSで、タイマがカウント(計時)を開始する。次いで、ステップS3で、圧力センサ33により検出された加圧中のエアセル10の圧力が所定値Paに到達したか否かを判定する。ステップS3で肯定されるとステップS4に進み、否定されるとステップS2に戻る。
【0033】
ステップS4では、エアセル10の圧力が加圧開始から所定値Paに到達するまでに要した時間、すなわちタイマにより計測された時間t1~t4をメモリに記憶する。次いで、ステップS5で、全てのエアセル11~14の加圧が完了したか否かを判定する。例えば1番目エアセル11、2番目エアセル12および3番目エアセル13のずれかが加圧された直後は、ステップS5で否定されてステップS6に進む。ステップS6では、nに1を加算してnを更新し、ステップS1に戻る。これにより、1番目エアセル11の後に2番目エアセル12が、2番目エアセル12の後に3番目エアセル13が、3番目エアセル13の後に4番目エアセル14が、それぞれ加圧される。この場合、加圧済のエアセル11~13を減圧した後に、新たなエアセル12~14を加圧するようにしてもよく、減圧せずに加圧してもよい。
【0034】
ステップS5で肯定されるとステップS7に進み、ステップS4で記憶された第1時間t1~第4時間t4を用い、乗員の姿勢を判定する。例えば、乗員が猫背、反腰、標準姿勢のいずれであるかを判定する。次いで、ステップS8で、モード選択部32からの信号を読み込み、乗員により選択された加圧モードを判定する。ステップS8で最適モードと判定されると、ステップS9に進む。ステップS9では、最適モードに応じた各エアセル11~14の第1目標圧力を演算するとともに、各エアセル11~14の圧力が第1目標圧力となるように、圧力センサ33の検出値を参照しながら電磁バルブ42aに制御信号を出力し、エアセル11~14の加圧力を制御する。すなわち、最適圧力で加圧調整する。これによりエアセル11~14から乗員への押圧力、すなわち乗員に対する加圧力が乗員の中立姿勢を保つような値に調整される。
【0035】
一方、ステップS8で姿勢補正モードと判定されるとステップS10に進む。ステップS10では、姿勢補正モードに応じた各エアセル11~14の第2目標圧力を演算するとともに、各エアセル11~14の圧力が第2目標圧力となるように、圧力センサ33の検出値を参照しながら電磁バルブ42aに制御信号を出力し、エアセル11~14の加圧力を制御する。すなわち、姿勢補正モードで加圧調整する。これによりエアセル11~14から乗員への押圧力、すなわち乗員に対する加圧力が骨盤を適正状態とするような値に調整される。
【0036】
図6では、エアセル11~14内の圧力が所定値Paに到達するまでの第1時間t1~第4時間t4を計測し、これら時間t1~t4を用いて乗員の中立姿勢を判定するようにしたが、中立姿勢の判定の手法はこれに限らない。
図7は、
図6の変形例を示すフローチャートである。なお、
図6と同一の箇所には、同一の符号を付す。
図7では、n番目エアセル10の加圧開始後にタイマのカウントを開始した後(ステップS1、ステップS2)、ステップS11に進み、所定時間taが経過したか否かを判定する。所定時間taは、例えばエアセル11~14が最大に加圧されるのに要する時間よりも短い時間に設定される。ステップS11で肯定されるとステップS12に進み、否定されるとステップS2に進む。
【0037】
ステップS12では、圧力センサ33により検出された、所定時間ta経過時点における加圧中のエアセル10の圧力をメモリに記憶する。これによりメモリには、1番目エアセル11の加圧時の圧力(第1圧力P1)、2番目エアセル12の加圧時の圧力(第2圧力P2)、3番目エアセル13の加圧時の圧力(第3圧力P3)、および4番目エアセル14の加圧時の圧力(第4圧力P4)が、順次記憶される。ステップS13では、ステップS12に記憶された第1圧力P1~第4圧力P4を用いて、乗員の姿勢(中立姿勢)を判定する。
【0038】
例えば第1圧力P1や第2圧力P2が第3圧力P3や第4圧力P4よりも大きい場合、乗員が猫背であると判定し、反対に、第3圧力P3や第4圧力P4が第1圧力P1や第2圧力P2よりも大きい場合、乗員が反腰であると判定する。一方、第1圧力P1~第4圧力P4の差異が小さい場合、標準姿勢であると判定する。なお、姿勢の判定は、例えば予めメモリに各エアセル11~14の圧力と姿勢との対応関係を記憶しておき、この対応関係を用いることで可能となる。
【0039】
第1実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用シート100は、乗員の腰部および背部を支持するシートバック2を有する(
図1)。このシート100は、人の背部を支持する支持面、すなわちシートバック2の着座面100aを介して乗員を加圧するようにシートバック2内に高さ方向に列状に配置された複数のエアセル11~14と、複数のエアセル11~14の内部にそれぞれ空気を供給し、複数のエアセル11~14を個別に加圧するエアポンプ41およびバルブユニット42と、複数のエアセル11~14内の空気の圧力をそれぞれ検出する圧力センサ33と、シートバック2に乗員が着座した後、圧力センサ33により検出された圧力が所定値Paになるまで、または所定時間taが経過するまで、複数のエアセル11~14を加圧するようにエアポンプ41(電動モータ41a)およびバルブユニット42(電磁バルブ42a)を制御するECU50と、を備える(
図2,5)。ECU50は、複数のエアセル11~14の加圧が開始されてから圧力センサ33により検出された圧力が所定値Paになるまでに要する時間(第1時間t1~第4時間t4)、または所定時間taが経過したときの圧力センサ33により検出された圧力(第1圧力P1~第4圧力P4)に基づいて、シートバック2に着座した乗員の姿勢を判定する姿勢判定部51を有する(
図5)。
【0040】
この構成によれば、予め複数のエアセル11~14内の圧力を所定値に設定しておく必要がなく、乗員の着座後に、乗員の姿勢判定を開始することができる。このため、姿勢判定の準備動作が完了するまで乗員が着座せずに待機するといった必要がなく、姿勢判定時の乗員にとっての煩わしさを抑制することができる。
【0041】
(2)シート100は、姿勢判定部51により判定された乗員の姿勢に基づいて、着座面100aに対する加圧力を変更するための姿勢制御部52をさらに備える(
図5)。これにより乗員の姿勢を適切に制御できる。
【0042】
(3)ECU50は、乗員の着座後にエアポンプ41およびバルブユニット42の駆動による加圧が開始される前に、複数のエアセル11~14の内部が減圧状態となるようにエアポンプ41およびバルブユニット42を制御する。これにより加圧開始前の初期状態で各エアセル11~14は減圧されており、乗員の着座後に即座に姿勢判定の処理を開始できる。
【0043】
(4)乗員を加圧するための流体袋として、空気が封入された複数のエアセル11~14が用いられる(
図2)。これにより加圧用の流体袋を簡易に構成することができ、シートバック2に容易に加圧部を内蔵することができる。
【0044】
-第2実施形態-
図8を参照して本発明の第2実施形態について説明する。以下では第1実施形態との相違点を主に説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、エアセル10の構成である。すなわち、上記第1実施形態では、複数のエアセル11~14をシートバック2の高さ方向に一列に配置したが、第2実施形態では、高さ方向に複数例(例えば2列)配置するように構成する。
【0045】
図8は、支持プレート225上におけるエアセル10の配置を示す正面図である。
図8に示すように、エアセル10は、各列に4個ずつ配置された左右2列、すなわち計8個のエアセル11~18を有する。これらエアセル11~18は支持プレート225の前面にそれぞれ膨張および圧縮可能に取り付けられ、全体が支持プレート225と一体にユニット化して構成される。なお、
図8のユニット化されたエアセル11~18を、エアセルユニットAUと称する。
【0046】
複数のエアセル10は、具体的には、最下部に左右に並べて配置された1番目エアセル11および2番目エアセル12と、エアセル11,12の上方に左右に並べて配置された3番目エアセル13および4番目エアセル14と、エアセル13,14の上方に左右に並べて配置された5番目エアセル15および6番目エアセル16と、最上部に左右に並べて配置された7番目エアセル17および8番目エアセル18とを含む。右側のエアセル12,14,16,18を右列エアセル10R、左側のエアセル11,13,15,17を左列エアセル10Lと呼ぶことがある。
【0047】
エアセル11~18内の空気の圧力は、それぞれ圧力センサ33により検出される。第2実施形態における空気制御装置30の構成は、
図5に示したものと同一であり、各エアセル11~18は、圧力センサ33により検出された圧力に基づいて、
図6,7に示したのと同様に加圧される。すなわち、姿勢判定部51は、1番目エアセル11~8番目エアセル18を順次加圧し、複数のエアセル11~18の加圧が開始されてから圧力センサ33により検出された圧力が所定値Paになるまでに要する時間(第1時間t1~第8時間t8)または所定時間taが経過したときの圧力センサ33により検出された圧力(第1圧力P1~第8圧力P8)に基づいて、シートバック2に着座した乗員の姿勢を判定する(ステップS7、ステップS13)。
【0048】
この姿勢判定には、乗員の着座時の高さ方向の姿勢判定だけでなく、左右方向の姿勢判定も含まれる。すなわち、姿勢判定部51は、互いに同一高さに配置された左列エアセル10Lと右列エアセル10R(例えば1番目エアセル11と2番目エアセル12、3番目エアセル13と4番目エアセル14等)の圧力センサ33の検出値の差に基づいて、乗員の着座時の左右のねじれ方向の姿勢(ねじれの有無)も同時に判定する。
【0049】
姿勢制御部52も、第1実施形態と同様、姿勢判定部51により判定された乗員の姿勢とモード選択部32により選択された加圧モードとに応じてエアセル11~18の加圧力を制御する。この場合、姿勢判定部51により判定された乗員のねじれ方向の姿勢に応じて、左右で異なる押圧力となるように加圧力を調整することができ、乗員に対しより良好に加圧力を付与できる。
【0050】
このように第2実施形態では、複数のエアセル11~18が右列エアセル10Rと左列エアセル10Lとを有する(
図8)。圧力センサ33は、着座面100aに作用する乗員の自重による右列エアセル10Rの圧力および左列エアセル10Lの圧力をそれぞれ検出する。ECU50(姿勢制御部52)は、圧力センサ33により検出された右列エアセル10Rおよび左列エアセル10Lの圧力(例えば同一高さに位置するエアセル10R,10Lの圧力差)に基づいて、着座面100aの左側および右側に対する加圧力を変更する。これにより、乗員の左右のねじれ方向の姿勢に応じて着座面100aに加圧力を付与することができ、乗員の着座時の快適性が向上する。
【0051】
この場合、左右のエアセル11~18には、それぞれシートバック2に乗員が着座した後、圧力センサ33により検出された圧力が所定値Paになるまで、または所定時間taが経過するまで、空気が供給される。そして、ECU50(姿勢判定部51)は、複数のエアセル11~18の加圧が開始されてから圧力センサ33により検出された圧力が所定値Paになるまでに要する時間t1~t8または所定時間taが経過したときの圧力センサ33により検出された圧力P1~P8に基づいて、シートバック2に着座した乗員の左右方向の姿勢を判定する。このため、乗員の高さ方向の姿勢だけでなく、ねじれ方向の姿勢も適切に判定できる。
【0052】
第2実施形態では、左列エアセル10Lおよび右列エアセル10Rが、エアセルユニットAUとして支持プレート225とともにユニット化して構成される(
図8)。これにより、左右に分離して配置された複数のエアセル11~18を、シートバック2内に容易に組み込むことができる。
【0053】
-第3実施形態-
図9~
図11を参照して本発明の第3実施形態について説明する。なお、以下では第1実施形態との相違点を主に説明する。第3実施形態が第1実施形態と異なるのは、エアセルの構成である。すなわち、第1実施形態では、乗員の姿勢判定とその後の姿勢制御とを、同一のエアセル10のみを用いて行うようにしたが、第3実施形態では、エアセル10とは別に姿勢制御用のエアセルが用いられる。
図9は、エアセル10とエアセル20との位置関係を示すシートバック2の要部断面図であり、
図10は、複数の姿勢制御用のエアセル20の配置を示すシート100の要部斜視図である。なお、
図10にはエアセル11~14の配置を点線で示す。
【0054】
図9に示すように、エアセル20は、エアセル10に比べて小型に構成され、パッド301の前面に配置される。より詳しく、エアセル20は、パッド301と、表皮302との間に介装される。このようにエアセル20がパッド301の前側に配置されることで、エアセル20による加圧力が着座面100aに伝わりやすく、乗員に対する良好な姿勢制御を実現できる。
【0055】
図10に示すように、シートバック2内の複数のエアセル20は、左右方向に分かれて高さ方向に列状に配置される。すなわち、複数のエアセル20は、シートバック2の最下部に配置された左右一対の第1エアセル21および第2エアセル22と、エアセル21,22の上方に配置された左右一対の第3エアセル23および第4エアセル24と、エアセル23,24の上方に配置された左右一対の第5エアセル25および第6エアセル26と、エアセル25,26の上方に配置された左右一対の第7エアセル27および第8エアセル28とを有する。右側のエアセル22,24,26,28を右列エアセル20R、左側のエアセル21,23,25,27を左列エアセル20Lと呼ぶことがある。
【0056】
前方から見ると、エアセル20は、それぞれエアセル10と重なるように配置される。すなわち、エアセル21,22はエアセル11に、エアセル23,24はエアセル12に、エアセル25,26はエアセル13に、エアセル27,28はエアセル14に、それぞれ重なるよう配置される。エアセル20の配置や個数は上述したものに限らない。例えば、シートバック2の最上部のエアセル14よりも上方に、左右一対のエアセル20を配置してもよい。
【0057】
エアセル20は、シートバック2だけでなく、シートクッション1にも配置される。例えばシートクッション1の表皮302の裏側(下側)に、左右に分かれて前後方向に列状に配置される。なお、シートクッション1の右側の複数のエアセル20を右列エアセル29R、左側の複数のエアセル20を左列エアセル29Lと呼ぶことがある。シートクッション1のエアセル29L,29Rは、乗員の大腿部を揉捏するために用いることができる。揉捏用として用いる場合、エアセル29L,29Rを周期的に加圧すればよい。
【0058】
図11は、本発明の第3実施形態に係るシート100に用いられる空気制御装置30の構成を示すブロック図である。なお、
図5と同一の箇所には同一の符号を付す。
図11に示すように、空気制御装置30は、
図5と同様、ECU50と、着座センサ31と、モード選択部32と、圧力センサ33と、電動モータ41aと、電磁バルブ42aとを有する。さらに
図5とは異なり、ECU50に接続された圧力センサ34と、電磁バルブ43aとを有する。
【0059】
圧力センサ34は、エアセル21~29に対応してそれぞれ設けられた複数の圧力センサ(
図11では1つのみ図示)であり、エアセル21~29内の空気の圧力をそれぞれ検出する。電磁バルブ43aは、エアポンプ41から各エアセル21~29に供給される空気の流れを制御する複数(
図11では1つのみ図示)の電磁バルブであり、図示しないバルブユニットに組み込まれる。このバルブユニットは、例えばサイドプレート221aの内側面に、バルブユニット42に隣接して配置される。
【0060】
姿勢判定部51は、第1実施形態と同様、エアセル11~14を加圧して乗員の姿勢を判定する。一方、姿勢制御部52は、エアセル11~14とエアセル21~28とを加圧して乗員の姿勢を制御する。より具体的には、姿勢制御部52は、モード選択部32により選択された加圧モードと姿勢判定部51により判定された姿勢とに応じて、エアセル11~14,21~28の目標圧力をそれぞれ算出する。そして、エアセル11~14,21~28の圧力が目標圧力となるように、圧力センサ33,34の検出値を参照しながら電動モータ41aと電磁バルブ42a,43aとに制御信号を出力し、乗員の姿勢を制御する。
【0061】
なお、エアセル21~28を順次加圧して、乗員の姿勢を判定するようにしてもよい。すなわち、エアセル21~28を、姿勢判定用のエアセルとして用いることもできる。エアセル21~28は、シートバック2の左右に配置されるため、第2実施形態と同様、乗員の左右のねれ方向の姿勢も検出することもできる。この場合、姿勢判定用のエアセル10を省略してもよい。エアセル21~28を、姿勢制御用ではなく揉捏用として用いてもよい。
【0062】
上記実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、いくつかの変形例について説明する。上記実施形態では、エアポンプ41をシートバック2に配置するようにしたが、シートクッション1に配置するようにしてもよい。
図12は、その一例を示すシートクッション1の要部構成を示す断面図である。
図12に示すように、シートクッション1は、パッド301の下方に配置されてパッド301を支持する布製の面状部材101と、面状部材101の下方に配置された樹脂製の構造体102とを有する。構造体102は、面状部材101を支持するように設けられる。
【0063】
図13は、面状部材101と構造体102の斜視図である。
図13に示すように、面状部材101は、平面視略矩形状に構成され、その前後両端部にフック101a,101bがそれぞれ設けられる。構造体102は、面状部材101の外形形状に対応して形成され、その前後両端部にフック102a,102bがそれぞれ設けられる。
図12に示すように、フック101a,102aは、シートクッションフレーム210の左右方向に延在する連結フレーム215に引っ掛けられ、フック101b、102bは、シートクッションフレーム210の後端部の連結フレーム214(
図2)に引っ掛けられ,これにより面状部材101と構造体102がシートクッションフレーム210から支持される。
【0064】
構造体102の下方には、エアポンプ41が配置される。エアポンプ41は、例えば構造体102の底面にボルト41bを介して取り付けられる。エアポンプ41にはエアチューブ41cの一端部が接続される。エアチューブ41cは、フック101b,102bの左右方向の隙間を介してシートバック2に向けて配策され、エアチューブ41cを介してエアセル10に圧縮エアが供給される。このようにシートクッション1にエアポンプ41を配置することで、シート100を大型化することなく、エアポンプ41を容易に配置できる。また、エアポンプ41は乗員の頭部から離れて配置されるため、エアポンプ41の作動音を乗員は感じにくく、乗員の快適性が向上する。
【0065】
図14は、
図1の変形例を示すシート100の斜視図である。
図14では、シートバック2の右側にシートベルト4が設けられる。シートベルト4は、ヘッドレスト3の右側におけるシートバック2の上端部に支持されるとともに、シートバック2の下端部の左右両側で支持される、いわゆる3点式のシートベルトである。このようにシートバック2の右側にシートベルト4が設けられることで、シートバック2の右側は左側よりも高強度に構成される。したがって、図示は省略するが、左側のリクライニング機構6は単一のギヤ機構を有するのに対し、右側のリクライニング機構6は左右一対のギヤ機構を有し、右側のリクライニング機構6は左側のリクライニング機構6よりも大型に構成される。
【0066】
このため、シート100の右側よりも左側にスペース的な余裕を生じやすい。したがって、この場合には上述したように右側のサイドフレーム222よりも左側のサイドフレーム221にエアポンプ41とバルブユニット42とを取り付けるようにすることが好ましい(
図2)。但し、シートバック2にシートベルト4が設けられる場合、シートベルト4が設けられない場合(
図1)と比較して、シートバック2に取り付けられる部品の増加やシートバック2の大型化などにより、エアポンプ41の配置のレイアウト上の制約が大きくなる。この点を考慮すると、
図12に示すように、エアポンプ41をシートクッション1側に配置することが好ましい。
【0067】
上記実施形態では、乗員の姿勢判定後に、エアセル10,20により乗員に対し加圧するようにしたが、姿勢判定後の乗員に対する加圧を、エアセル10,20とは別の加圧機構を用いて行うようにしてもよい。
図15は、その一例である加圧機構70の正面図であり、
図16は、断面図である。
図15,16に示すように、加圧機構70は、上下方向に延在する左右一対のフレーム(右フレーム71、左フレーム72)と、右フレーム71と左フレーム72との間かつフレーム71,72よりも後方に配置され、上下方向に延在する中央フレーム73とを有する。フレーム71~73の前側には、左右方向に延在する可動フレーム74が配置される。加圧機構70は、例えば前面プレート228(
図3)の後方に前面プレート228に面して配置される。
【0068】
可動フレーム74の左右両端部は、ガイド74a,74bを介してフレーム71,72に係合し、可動フレーム74は、左右のフレーム71,72に沿って上下方向に移動可能に支持される。中央フレーム73には、上下方向に延在するボールねじ75が回転可能に支持される。ボールねじ75は、中央フレーム73の下端部に取り付けられたモータ76により回転駆動される。ボールねじ75には、可動フレーム74の後面に設けられたナット77が螺合する。これにより、ボールねじ75の回転に応じて、可動フレーム74が上下方向に移動する。
【0069】
可動フレーム74には、
図15に示すように、前方から見て略U字状の左右一対のアーム81が設けられる。アーム81は左右方向に延在し、その左右方向内側端部(右側のアーム81の左端部および左側のアーム81の右端部)がそれぞれ可動フレーム74に、前後方向に回動可能に支持される。
図16に示すように、アーム81は、左右方向外側かつ前方に向けて傾斜した傾斜部81aを有する。可動フレーム74の前側には、左右一対の可動ブロック82が配置される。
図15,16に示すように、可動ブロック82の上下両端部は可動フレーム74に係合し、可動ブロック82は、可動フレーム74の前面に沿って左右方向に移動可能に支持される。可動ブロック82の前面には、左右方向内側かつ後方に向けて傾斜した係合面82aが形成され、係合面82aにアーム81の傾斜部81aが当接される。
【0070】
可動フレーム74には、左右方向に延在するボールねじ83が回転可能に支持される。ボールねじ83の右端部は、可動フレーム74の右端面に取り付けられたモータ84に連結され、ボールねじ83はモータ84により回転駆動される。ボールねじ83は、可動ブロック82を左右方向に貫通する。可動ブロック82には、ねじ孔82bが設けられ、ボールねじ83がねじ孔82bと螺合する。ボールねじ83は、例えば右側が右ねじであり、左側が左ねじとして構成される。
【0071】
モータ84が一方向に回転すると、左右の可動ブロック82がそれぞれ左右方向内側に向けて移動し、アーム81の左右外側端部が、
図16の矢印に示すように前方に移動する。これによりアーム81が点線で示すように変形し、前面プレート228がアーム81により押動されて乗員に対する加圧力が増加する。一方、モータ84が反対方向に回転すると、左右の可動ブロック82がそれぞれ左右方向外側に向けて移動し、アーム81の左右外側端部が後方に移動する。これによりアーム81の左右外側端部が後方に移動し、乗員に対する加圧力が減少する。
【0072】
なお、上記実施形態では、空気が封入された複数のエアセル10,20を複数の流体袋として用いたが、流体袋に他の気体あるいは液体を封入するようにしてもよい。上記実施形態では、エアポンプ41とバルブユニット42とを用いてエアセル10を加圧するようにしたが、複数の流体袋を個別に加圧することが可能であれば、加圧部の構成はいかなるものでもよい。上記実施形態では、複数のエアセル10内の空気の圧力を圧力センサ33により検出するようにしたが、圧力検出部および第1圧力検出部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、乗員の着座検知後に、圧力センサ33により検出された圧力が所定値Paになるまで、または所定時間taが経過するまで、ECU50が電動モータ41aと電磁バルブ42aとを制御してエアセル10を加圧するようにしたが、制御部の構成は上述したものに限らない。例えば複数のエアセル10を1つずつ加圧するのではなく、まとめて加圧するようにしてもよい。
【0073】
上記実施形態では、姿勢判定部51により判定された乗員の姿勢に基づいて、エアセル10の加圧力を調整するようにしたが、着座面100aに対する加圧力を変更する加圧力変更手段および第1加圧力変更手段の構成は上述したものに限らない。例えば、加圧機構70(
図15,16)を加圧力変更手段として用いてもよい。上記実施形態では、乗員の着座後に姿勢判定する際に、エアセル10を減圧状態から加圧を開始するようにしたが、減圧状態とせずに、すなわち減圧状態以外の状態から加圧を開始してもよい。上記第2実施形態では、高さ方向に配置された複数のエアセル11,13,15等(第1流体袋)と、左右方向に配置された複数のエアセル11,12等(第2流体袋)とを、支持プレート225に取り付けてエアセルユニットAUを構成したが、流体袋ユニットの構成はこれに限らない。
【0074】
上記第2実施形態では、右列エアセル10Rと左列エアセル10Lの圧力をそれぞれ検出する左右一対の圧力センサ33(第2圧力検出部)の検出値に基づいて乗員の左右方向の姿勢を判定するとともに、右列エアセル10Rと左列エアセル10Lの圧力を調整することで、着座面100aの左側および右側に対する加圧力を変更するようにしたが、第2圧力変更手段は上述したものに限らない。第3実施形態における左右のエアセル20の圧力を検出する圧力センサ34を、第2圧力検出部として用いるとともに、第2加圧力変更手段として右列エアセル20Rと左列エアセル20Lの圧力を調整するようにしてもよい。
【0075】
上記実施形態では、複数のエアセル10により、シートバック2の着座面を乗員に向けて加圧するようにしたが、シートバックを有しないシートにおいては、乗員の背部を支持する支持面を人に向けて加圧するように、シート内に高さ方向(人の背の延在する方向)に列状にエアセルなどの流体袋を配置してもよい。
【0076】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 シートクッション、2 シートバック、10,20 エアセル、33 圧力センサ、41 エアポンプ、42 バルブユニット、50 ECU、51 姿勢判定部、52 姿勢制御部、100 シート