(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】圧力式調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
A47J27/00 103N
A47J27/00 103P
(21)【出願番号】P 2020120362
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武志
(72)【発明者】
【氏名】中井 智彦
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-135223(JP,U)
【文献】実開昭60-192714(JP,U)
【文献】特開2007-312844(JP,A)
【文献】特開2018-140174(JP,A)
【文献】特開2020-062241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0163319(US,A1)
【文献】特開2008-143527(JP,A)
【文献】特開2002-332040(JP,A)
【文献】特開2008-104560(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0450045(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に収容され、上方に開口する内容器と、
補強部を有する基板部材を含み、前記本体に対して開閉可能に取り付けられ、前記内容器の開口を覆う蓋体と、
前記本体に固定される固定部と、前記固定部に対して回動可能に取り付けられると共に前記基板部材の第1側の端部に固定される可動部とを有するヒンジ機構と、を備え、
前記補強部は、樹脂製であり、前記蓋体が閉状態である時に、平面透視において、少なくとも前記内容器の開口の半分の領域を覆って
おり、
前記補強部は、上壁部と、下壁部と、前記上壁部と前記下壁部との間に架設される架設部とを有し、
前記上壁部と前記下壁部と前記架設部とにより、トラス構造が形成され、
前記トラス構造は、前記基板部材の部位のうち、前記ヒンジ機構の回動軸方向の両側の縁部に設けられている
圧力式調理器。
【請求項2】
前記補強部は、前記蓋体が閉状態である時に、平面透視において、前記可動部の固定部分から少なくとも前記内容器の開口の中心まで延びている
請求項
1に記載の圧力式調理器。
【請求項3】
前記本体は、係止部を有し、
前記蓋体が閉状態である時に前記係止部に係止される被係止部をさらに備え、
前記被係止部は、前記基板部材の前記
ヒンジ機構側の反対側の
端部に取り付けられる
請求項
1または
2に記載の圧力式調理器。
【請求項4】
前記トラス構造は、前記ヒンジ機構の回動軸方向の両側に開口している
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧力式調理器。
【請求項5】
前記トラス構造の前記ヒンジ機構側の部位の幅は、前記トラス構造の前記ヒンジ機構側の反対側の部位の幅よりも広い
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧力式調理器。
【請求項6】
前記補強部は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリアミドイミド(PAI)より成る群から選択される少なくとも一種の樹脂から形成される
請求項1から5のいずれか1項に記載の圧力式調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力式炊飯器などの圧力式調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「鍋を収容する調理器本体と、前記鍋の上端開口を閉塞する内蓋を有する蓋体と、加熱調理時に発生する蒸気の圧力に起因した前記蓋体の変形を防止する補強体であって、前記内蓋に対応する位置に開口部を有する蓋補強体とを備え、前記蓋体には、少なくとも加熱調理時において前記内蓋の中央部に対して上方側から当接して支持する支持部が配設されている、加熱調理器」が提案されている(例えば、特開2018-057535号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような加熱調理器では、蓋体の蓋補強体が板金部材であることが多い。このような加熱調理器では、蓋補強体の材料費が高くなり、アースをとるためのアース構造を設ける必要が生じる。このため、このような加熱調理器では、蓋体の製造コストが高くなってしまう。
【0005】
本発明の課題は、圧力式調理器の蓋体の製造コストをできるだけ抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧力式調理器は、
本体と、
前記本体に収容され、上方に開口する内容器と、
補強部を有する基板部材を含み、前記本体に対して開閉可能に取り付けられ、前記内容器の開口を覆う蓋体と、
前記本体に固定される固定部と、前記固定部に対して回動可能に取り付けられると共に前記基板部材の第1側の端部に固定される可動部とを有するヒンジ機構と、を備え、
前記補強部は、樹脂製であり、前記蓋体が閉状態である時に、平面透視において、少なくとも前記内容器の開口の半分の領域を覆っており、
前記補強部は、上壁部と、下壁部と、前記上壁部と前記下壁部との間に架設される架設部とを有し、
前記上壁部と前記下壁部と前記架設部とにより、トラス構造が形成され、
前記トラス構造は、前記基板部材の部位のうち、前記ヒンジ機構の回動軸方向の両側の縁部に設けられている。
【0007】
上記構成によれば、補強部の材料として材料費が金属より比較的安価な樹脂が用いられ、アースをとるためのアース構造を設ける必要がない。このため、この圧力式調理器では、蓋体の製造コストをできるだけ抑えることができる。また、上記構成によれば、基板部材に対して力が加わる圧力調理時に、補強部の補強効果によって、ヒンジ機構が変形・破損することや、可動部から基板部材がもげることを防止することができる。このため、この圧力式調理器では、圧力調理時に蓋体が本体から取れるおそれを低減することができる。また、上記構成によれば、補強部の補強効果を大きくすることができる。
【0008】
本発明では、
前記補強部は、前記蓋体が閉状態である時に、平面透視において、前記可動部の固定部分から少なくとも前記内容器の開口の中心まで延びていると好適である。
【0009】
本願発明者の鋭意検討の結果、蓋体が閉状態である時に、平面透視において補強部を可動部の固定部分から少なくとも内容器の開口の中心まで延ばすことで、補強部の補強効果が大きくなることが明らかとなった。
【0010】
本発明では、
前記本体は、係止部を有し、
前記蓋体が閉状態である時に前記係止部に係止される被係止部がさらに備えられ、
前記被係止部は、前記基板部材の前記ヒンジ機構側の反対側の端部に取り付けられると好適である。
【0011】
上記構成によれば、基板部材に対して力が加わる圧力調理時に、補強部の補強効果によって被係止部が変形・破損することや、被係止部から基板部材がもげることを防止することができる。このため、この圧力式調理器では、圧力調理時に蓋体が開くおそれを低減することができる。
【0012】
本発明では、
前記トラス構造は、前記ヒンジ機構の回動軸方向の両側に開口していると好適である。
【0013】
本発明では、
前記トラス構造の前記ヒンジ機構側の部位の幅は、前記トラス構造の前記ヒンジ機構側の反対側の部位の幅よりも広いと好適である。
【0014】
本発明では、
前記補強部は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリアミドイミド(PAI)より成る群から選択される少なくとも一種の樹脂から形成されると好適である。
【0015】
上記樹脂の剛性は、汎用樹脂(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)など)の剛性より比較的高い。このため、この圧力式調理器では、補強部の補強効果を大きくすることができる。また、上記樹脂の耐熱性は、汎用樹脂の耐熱性より優れている。このため、この圧力式調理器では、補強部が熱変形することを防止すると共に、食品の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る炊飯器の斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る炊飯器の中央縦断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る炊飯器を構成する基板部材の斜視図である。なお、本図において基板部材には爪部材およびヒンジ機構が取り付けられていると共に、圧力調整機構、安全機構および蒸気処理ユニット等が搭載されている。
【
図4】本発明の実施の形態に係る炊飯器を構成する基板部材、爪部材およびヒンジ機構の斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る炊飯器を構成する基板部材の側面図である。なお、本図において基板部材には爪部材およびヒンジ機構が取り付けられていると共に、圧力調整機構、安全機構および蒸気処理ユニット等が搭載されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<本発明の実施の形態に係る炊飯器の構成>
本発明の実施の形態に係る炊飯器100は、誘導加熱式の圧力炊飯器であって、
図1および
図2に示されるように、主に、本体110、内鍋130、蓋体140およびヒンジ機構150から構成される。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0018】
1.本体
本体110は、
図2に示されるように、主に、筐体111、断熱材(図示せず)、保温ヒータ112、誘導加熱コイル113、かまど部材122、フェライトコア組立体(図示せず)、サーミスタ114、送風ファン115、ヒートシンク116、電源回路基板118、自動巻取式電源コードユニット120および開閉レバー機構123から構成される。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0019】
(1)筐体
筐体111は、
図1および
図2に示されるように、主に、側壁111a、底壁111b、肩部材111cおよび保護枠111dから構成されており、断熱材(図示せず)、保温ヒータ112、誘導加熱コイル113、フェライトコア組立体、サーミスタ114、送風ファン115、ヒートシンク116、電源回路基板118および自動巻取式電源コードユニット120等を収容している。以下、筐体111の各構成要素について詳述する。
【0020】
側壁111aは、平面視において略長方形を呈する囲い壁であって、
図1および
図2に示されるように本体110の側面を覆っている。また、
図1および
図2に示されるように側壁111aの前方側の上部には、開閉レバー機構123が配設されている。
【0021】
底壁111bは、略方形の板状体であって、
図1および
図2に示されるように側壁111aの下側に嵌め込まれており、側壁111aの下側の開口を覆っている。そして、この底壁111bには、筐体111の外部の空気を内部に吸い込むための吸気口Os(
図2参照)、および、筐体111の内部の空気を外部に排出するための排気口(図示せず)が形成されている。なお、
図2に示されるように、吸気口Osの直上には、送風ファン115が配設されている。この送風ファン115が駆動されると、吸気口Osを通って外部の空気が筐体111の内部に吸い込まれ、それによって生じる空気流れにより内部の加熱空気が排気口から系外に排出される。
【0022】
肩部材111cは、平面視において略長方形を呈する枠体であって、
図1および
図2に示されるように側壁111aの上側に嵌合されており、側壁111aの上側の開口を覆っている。そして、この肩部材111cの下側には、保護枠111dのフランジ部材FPが取り付けられている。なお、肩部材111cの中央部には、内鍋130を通すための開口が形成されている。
【0023】
保護枠111dは、内鍋130を収容すると共に肩部材111cの形状を保持する役目を担っており、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の形状を保ちやすい材質から形成されている。そして、この保護枠111dは、
図2に示されるように、主に、フランジ部材FP、中間部材MPおよび底部材BPの3つの部材から構成されている。フランジ部材FPは、
図2に示されるように、保護枠111dの上側部分を構成している。そして、フランジ部材FPは、
図2に示されるように、中間部材MPの上側に取り付けられる。また、
図2に示されるように、フランジ部材FPの前部には、開閉レバー機構123の回動軸123aがフランジ部材FPの軸受部(図示せず)に挿通されるように開閉レバー機構123が取り付けられている。なお、フランジ部材FPの中央部には、内鍋130を通すための開口が形成されている。中間部材MPは、
図2に示されるように、略円筒状の部材であって、保護枠111dの中間部分を構成し、底部材BPに締結される。底部材BPは、
図2に示されるように、保護枠111dの下側部分を構成している。なお、
図2に示されるように、底部材BPの内側には、かまど部材122が取り付けられている。また、図示しないが、底部材BPの外側には、フェライトコア組立体が取り付けられている。また、底部材BPの底壁の中央部には、サーミスタ114を通すための開口が形成されている。
【0024】
(2)断熱材
断熱材は、保護枠111dの中間部材MPの側壁、保護枠111dの底部材BPの側壁および誘導加熱コイル113の外周に巻き付けられており、炊飯時において誘導加熱コイル113の熱が保護枠111dの中間部材MPの外側や保護枠111dの底部材BPの外側に流出するのを抑制する役割を担っている。
【0025】
(3)保温ヒータ
保温ヒータ112は、炊飯後に内鍋130を保温するための加熱源であって、
図2に示されるように、中間部材MPと内鍋130との間に配設されている。なお、保温時だけではなく炊飯時においても、内鍋130を加熱するために、保温ヒータ112が誘導加熱コイル113と共に使用されてもよい。
【0026】
(4)誘導加熱コイル
誘導加熱コイル113は、内鍋130を誘導加熱する誘導加熱源であって、
図2に示されるように保護枠111dの底部材BPの底壁および側壁下端部の外側に配設されている。
【0027】
(5)かまど部材
かまど部材122は、熱を内鍋130に効率的に蓄積させる役目を担っており、
図2に示されるように、内鍋130と保護枠111dの底部材BPとの間に配設されている。なお、
図2に示されるように、かまど部材122の上端部の直上には、保護枠111dの中間部材MPの底壁が位置している。つまり、かまど部材122は、保護枠111dの底部材BPに保護枠111dの中間部材MPが締結される前に、保護枠111dの底部材BPの内側に取り付けられる。よって、本発明の実施の形態に係る炊飯器100が組立てられた後において、内鍋130のようにかまど部材122を保護枠111dから自在に取り外すことができない。また、
図2に示されるように、かまど部材122の底壁の中央部には、サーミスタ114を通すための開口が形成されている。
【0028】
(6)フェライトコア組立体
フェライトコア組立体は、誘導加熱コイル113の周囲に配設されている。そして、上述の通り、フェライトコア組立体は、保護枠111dの底部材BPの外側に取り付けられる。フェライトコア組立体にはフェライトコアが収容され、このフェライトコアは、通電時に誘導加熱コイル113から発生する電磁波が外部に漏れ出るのを抑制する役目を担っている。
【0029】
(7)サーミスタ
サーミスタ114は、温度センサであって、
図2に示されるように、保護枠111dの底部材BPの底壁の中央部に形成された開口およびかまど部材122の底壁の中央部に形成された開口を通って、上方に向かって突出している。なお、このサーミスタ114は、コイルバネ等の付勢部材によって上方に付勢されている。すなわち、このサーミスタ114は、上下方向に沿って出没自在な状態とされている。また、このサーミスタ114は、内鍋検知センサ(図示せず)に組み込まれている。内鍋検知センサは、炊飯器内に内鍋130が存在するか否かを判断するためのものであって、サーミスタ114が下端位置まで下がると、検知信号を制御回路基板119のマイクロコンピュータに送信する。マイクロコンピュータは、検知信号を受信すると、炊飯器内に内鍋130が存在すると判断する。なお、マイクロコンピュータが、炊飯器100内に内鍋130が存在しないと判断した場合、炊飯運転が開始されない。
【0030】
(8)送風ファン
送風ファン115は、上述の通り、筐体111の底壁111bに形成される吸気口Osの直上に、回転軸が略上下方向に沿うようにして配設されている(
図2参照)。すなわち、この送風ファン115が駆動されると、外部の空気が吸気口Osから吸い込まれて筐体内に流入し、そのまま上方に向かって送られる。上方に向かって送られた外部の空気は、ヒートシンク116を通って電源回路基板118などに供給されて、それらの部材等を冷却する。
【0031】
(9)ヒートシンク
ヒートシンク116は、外部の空気と効率よく熱交換を行わせる部品であって、
図2に示されるように、電源回路基板118に取り付けられている。
【0032】
(10)電源回路基板
電源回路基板118は、電源回路を構成する基板であって、発熱部品、種々の電子部品、回路素子などを実装している。なお、この電源回路基板118は、
図2に示されるように、筐体111の後方側の下側の空間に収容されている。
【0033】
(11)自動巻取式電源コードユニット
自動巻取式電源コードユニット120は、電源コード(図示せず)および自動巻取機構(図示せず)等から構成されており、
図2に示されるように筐体111の後側の空間に収容されている。なお、
図1に示されるように、電源コードの先端には、差込プラグPLが配設されている。
【0034】
(12)開閉レバー機構
開閉レバー機構123は、上述の通り、保護枠111dのフランジ部材FPの前部に取り付けられている。なお、このとき、
図2に示されるように、開閉レバー機構123の回動軸123aが、保護枠111dのフランジ部材FPの軸受部に挿通されており、開閉レバー機構123は、回動軸123aを中心として上下に回動可能な構成となっている。使用者は、蓋体140を開状態とするとき、回動軸123aを中心として開閉レバー機構123を下方向に回動させる。すると、開閉レバー機構123の爪部(図示せず)と爪部材146の爪部146bとの係止状態(すなわち、蓋体140の閉状態)が解除され、ヒンジ機構150のトーションバネ150dの付勢力により蓋体140が上方に持ち上げられ、蓋体140が開状態となる。なお、使用者が蓋体140を閉状態とするとき、使用者は開閉レバー機構123を操作する必要がない。使用者がヒンジ機構150のトーションバネ150dの付勢力に逆らって蓋体140を本体110に向かってそのまま倒し込めば、開閉レバー機構123の爪部と爪部材146の爪部146bとが係止し、蓋体140の閉状態が維持される。
【0035】
2.内鍋
内鍋130は、上方に開口する椀状の鍋であって、肩部材111cの開口、保護枠111dのフランジ部材FPの開口および保護枠111dの中間部材MPの開口に挿通され、
図2に示されるように、かまど部材122を介して保護枠111dに所定の隙間をもって収容される。そして、内鍋130は、保護枠111dに収容された後であっても、自在に保護枠111dから取り外すことができる。なお、ここで、内鍋130は、種々のアルミニウム合金およびステンレス合金の多層体(クラッド材)であって、誘導加熱コイル113や保温ヒータ112によって加熱され得る。
【0036】
3.蓋体
蓋体140は、
図1~
図3に示されるように、主に、上側外装体141、下側外装体142、圧力調整機構143、基板部材144、内蓋145、爪部材146、安全機構147および蒸気処理ユニット148から構成されており、ヒンジ機構150を介して本体110に回動自在に取り付けられている。以下、蓋体140の各構成要素について詳述する。
【0037】
(1)上側外装体
上側外装体141は、
図1および
図2に示されるように、下側が開口する略直方体状の部材であって、基板部材144などの上側を覆っている。
【0038】
(2)下側外装体
下側外装体142は、平面視において略方形の板状体である。
図2、
図3および
図5に示されるように、下側外装体142の上側には基板部材144が配設され、下側外装体142の下側には内蓋145が配設される。なお、下側外装体142の前端部には、貫通口(図示せず)が形成されており、この貫通口に爪部材146の爪部146bが挿通される。
【0039】
(3)圧力調整機構
圧力調整機構143は、
図3および
図5に示されるように、基板部材144の中央部の上側に配設される。圧力調整機構143は、蓋体140が閉状態とされ圧力炊飯運転されている状態において、内鍋130の内部の圧力を1.03~1.3気圧に調整する。また、この圧力調整機構143は、圧力炊飯運転中、開閉レバー機構123の動作によって蓋体140が開くことがないように本体110内部の圧力を制御している。なお、本実施の形態において、この圧力調整機構143としては、特に限定されず、従前のものが採用されてもかまわない。
【0040】
(4)基板部材
基板部材144は、圧力調整機構143、安全機構147および蒸気処理ユニット148等などの部品・部材を支持する略長方形状の板部材であって、ポリフェニレンサルファイド(PPS)から形成されている。また、
図3および
図4に示されるように、基板部材144の前端部(より詳細には、後述の中央壁部144Lの前端部)に爪部材146が取り付けられており、後端部にヒンジ機構150が取り付けられている。また、基板部材144は、上述の通り下側外装体142の上側に配設されており、ネジ止めにより下側外装体142に取り付けられる。なお、平面視において、基板部材144の前後寸法および左右寸法はそれぞれ、下側外装体142の前部寸法および左右寸法とほぼ同じである。また、
図3に示されるように、基板部材144の中央部の上側には圧力調整機構143および安全機構147が配設されている。基板部材144は、
図3~
図5に示されるように、主に、中央壁部144L、側縁上壁部144a、側縁下壁部144b、架設部144c、段部144d、第1補強リブ144e、第2補強リブ144f、第3補強リブ144gおよび後端部内側壁部144hから形成されている。中央壁部144Lは、平面視において略長方形状の形状を呈する壁部位であって、
図3および
図4に示されるように、基板部材144の左右方向中央部(言い換えれば、側縁下壁部144bの間)に形成されている。
図4に示されるように、中央壁部144Lの前端部には貫通口144jおよびネジ受け部144kが形成されている。そして、この貫通口144jに爪部材146の爪部146bが挿通された後、このネジ受け部144kおよび爪部材146の本体部146aのネジ受け部146cにネジが螺入される。このようにして、
図3に示されるように、中央壁部144Lの前端部に爪部材146が取り付けられる。また、
図3および
図4に示されるように、中央壁部144Lの中心付近には中心壁部144Mが形成されており、中央壁部144Lにおいて中心壁部144Mの外側には円環状の凹部144Nが形成されている。側縁上壁部144aは、
図3~
図5に示されるように、基板部材144の左右の側縁部に形成されている。なお、この側縁上壁部144aは、
図3~
図5に示されるように側縁下壁部144bの上方に配置されている。側縁下壁部144bは、
図3~
図5に示されるように、基板部材144の左右の側縁部に形成されている。架設部144cは、
図3~
図5に示されるように、上下方向および斜め方向に延びるリブであって、側縁上壁部144aと側縁下壁部144bとの間や、側縁上壁部144aと段部144dとの間に架設される。段部144dは、
図3~
図5に示されるように、側縁下壁部144bの中央部において側縁下壁部144bより一段高く形成されている部位である。そして、
図3~
図5に示されるように、基板部材144の左右の側縁部において、側縁上壁部144a、側縁下壁部144b、架設部144cおよび段部144dからトラス構造TSが構築されている。第1補強リブ144eは、
図3および
図4に示されるように、円弧状のリブであり、凹部144Nの上面において前端付近から後端付近にかけて形成されている。第2補強リブ144fは、
図3および
図4に示されるように、前後方向および左右方向に延びるリブであり、凹部144Nの上面において前端付近および中央付近に形成されている。第3補強リブ144gは、
図3および
図4に示されるように、中心壁部144Mから放射状に延びるリブであり、凹部144Nの上面において前端付近から後端付近にかけて形成されている。そして、
図3および
図4に示されるように、凹部144Nにおいて、中央壁部144L、第1補強リブ144e、第2補強リブ144fおよび第3補強リブ144gから補強構造RSが構築されている。後端部内側壁部144hは、
図4および
図5に示されるように、側縁上壁部144aの後端部内側部位と側縁下壁部144bの後端部内側部位との間に形成されている。
図4に示されるように、後端部内側壁部144hにはネジ受け部144iが形成されている。そして、このネジ受け部144iとヒンジ機構150の可動部150bのネジ受け部150eとにネジが螺入される。このようにして、
図3および
図5に示されるように、基板部材144の後端部にヒンジ機構150の可動部150bが固定される。
【0041】
なお、図示しないが、蓋体140の閉状態時に平面透視において、トラス構造TSおよび補強構造RSは、ヒンジ機構150の可動部150bの固定箇所から爪部材146の固定箇所付近まで延びている。また、図示しないが、蓋体140の閉状態時に平面透視において、内鍋130の開口の全領域がトラス構造TSおよび補強構造RSによって覆われている。
【0042】
(5)内蓋
内蓋145は、
図2に示されるように、内鍋130の上方の開口を覆って密閉するための部材である。内蓋145は、上述の通り、下側外装体142の下側に配設されている。
【0043】
(6)爪部材
爪部材146は、板金から形成される金属製部材であって、
図3~
図5に示されるように、本体部146aおよび爪部146bから形成されている。本体部146aは、
図3~
図5に示されるように、板状体の部位である。
図4に示されるように、本体部146aの左右箇所にはネジ受け部146cが形成されている。上述の通り、このネジ受け部146cと基板部材144の中央壁部144Lのネジ受け部144kとにネジが螺入される。爪部146bは、
図3~
図5に示されるように、本体部146aの前側の左右箇所から下方に向かって延びた後に前方に向かって延びている。爪部146bは、上述の通り、基板部材144の中央壁部144Lの貫通口144jと下側外装体142の貫通口とに挿通され、蓋体140の閉状態時に開閉レバー機構123の爪部に係止される。
【0044】
(7)安全機構
安全機構147は、停電やプラグ抜けなどの断電時において、内鍋130の内部の圧力を解放するためのものであって、
図3に示されるように、基板部材144の中央部の上側、且つ、圧力調整機構143の近傍に配設されている。
【0045】
(8)蒸気処理ユニット
蒸気処理ユニット148は、炊飯時に内鍋130から上昇してくる水蒸気をトラップして内鍋130に戻すものであって、
図3および
図5に示されるように基板部材144の後部の上側に配設されている。
【0046】
4.ヒンジ機構
ヒンジ機構150は、上述の通り、蓋体140が本体110に対して回動自在となるように蓋体140を本体110に取り付けている。ヒンジ機構150は、
図2~
図5に示されるように、固定部150a、可動部150b、回動軸150cおよびトーションバネ150dから形成されている。固定部150aは、板金から形成される金属製部材であって、
図2に示されるように、本体110の後部の上部において保護枠111dのフランジ部材FPに固定されている。なお、図示しないが、固定部150aには、回動軸150cが挿通される軸受け部(図示せず)が形成されている。可動部150bは、板金から形成される金属製部材であって、回動軸150cが挿通される軸受け部(図示せず)が形成されている。そして、可動部150bは、回動軸150cにより固定部150aに軸支されており、固定部150aに対して回動可能である。また、
図4に示されるように、可動部150bの外側壁にはネジ受け部150eが形成されている。上述の通り、このネジ受け部150eと基板部材144の後端部内側壁部144hのネジ受け部144iとにネジが螺入されることにより、基板部材144の後端部に可動部150bが固定される。回動軸150cは、固定部150aの軸受け部および可動部150bの軸受け部に挿通され、固定部150aと可動部150bとを連結する。こうすることにより、可動部150bが固定部150aに対して回動可能になる(すなわち、可動部150bが回動軸150cを中心として回動可能になる。)。トーションバネ150dは、
図4に示されるように、回動軸150cの外周面を囲うように回動軸150cに取り付けられており、蓋体140を開方向に向かって付勢している。
【0047】
<本発明の実施の形態に係る炊飯器の特徴>
(1)
本実施の形態に係る炊飯器100では、基板部材144の左右の側縁部において、側縁上壁部144a、側縁下壁部144b、架設部144cおよび段部144dからトラス構造TSが構築されている。このため、この炊飯器100では、基板部材144の左右の側縁部における補強効果を大きくすることができる。
【0048】
(2)
本実施の形態に係る炊飯器100では、基板部材144(トラス構造TSおよび補強構造RSを含む)がポリフェニレンサルファイド(PPS)から形成されており、板金が用いられていない。このため、この炊飯器100では、基板部材144の補強構造形成のための材料費を安くすることができるだけでなく、アースをとるためのアース構造を設けずに済ませることができる。したがって、この炊飯器100では、蓋体140の製造コストをできるだけ抑えることができる。
【0049】
(3)
本実施の形態に係る炊飯器100では、基板部材144の後端部に可動部150bが固定される。このため、この炊飯器100では、基板部材144に対して力が加わる圧力調理時に、トラス構造TSおよび補強構造RSの補強効果によって、可動部150bから基板部材144がもげることを防止することができる。したがって、この炊飯器100では、圧力調理時に蓋体140が本体110から取れるおそれを低減することができる。
【0050】
(4)
本実施の形態に係る炊飯器100では、蓋体140の閉状態時に平面透視において、トラス構造TSおよび補強構造RSは、ヒンジ機構150の可動部150bの固定箇所から爪部材146の固定箇所付近まで延びている。このため、この炊飯器100では、基板部材144の補強効果を大きくすることができる。
【0051】
(5)
本実施の形態に係る炊飯器100では、基板部材144の中央壁部144Lの前端部に爪部材146が取り付けられる。このため、この炊飯器100では、基板部材144に対して力が加わる圧力調理時に、トラス構造TSおよび補強構造RSの補強効果によって、爪部材146から基板部材144がもげることを防止することができる。したがって、この炊飯器100では、圧力調理時に蓋体140が開く恐れを低減することができる。
【0052】
<変形例>
(A)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、基板部材144は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)から形成されていた。しかし、基板部材144は、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリアミドイミド(PAI)より成る群から選択されるいずれか一種の樹脂から形成されてもよいし、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリアミドイミド(PAI)より成る群から選択される少なくとも二種の樹脂から形成されてもよい。
【0053】
(B)
先の実施の形態に係る炊飯器100では内鍋130の開口の全領域がトラス構造TSおよび補強構造RSによって覆われていたが、内鍋130の開口の領域半分以上がトラス構造TSおよび補強構造RSに覆われてもよい。かかる場合であっても、十分な補強効果を得ることができるからである。
【0054】
(C)
先の実施の形態に係る炊飯器100ではヒンジ機構150の可動部150bの固定箇所から爪部材146の固定箇所付近までトラス構造TSおよび補強構造RSが延びていたが、トラス構造TSおよび補強構造RSは、ヒンジ機構150の可動部150bの固定箇所から内鍋130の開口の中心を越えた位置まで延びていればよい。かかる場合であっても、十分な補強効果を得ることができるからである。
【0055】
(D)
先の実施の形態では本発明が炊飯器100に適用されたが、本発明はホームベーカリーなどの他の調理器に適用されてもよい。
【0056】
なお、上記変形例(A)~(D)は各例単独で適用されてもよいし、複数の例が組み合わされて適用されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
100 炊飯器(圧力式調理器)
110 本体
130 内鍋(内容器)
140 蓋体
144 基板部材
144a 側縁上壁部(上壁部)
144b 側縁下壁部(下壁部)
144c 架設部
146 爪部材(被係止部)
150 ヒンジ機構
150a 固定部
150b 可動部
RS 補強構造(補強部)
TS トラス構造(補強部)