IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タイガー魔法瓶株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電気炊飯器 図1
  • 特許-電気炊飯器 図2
  • 特許-電気炊飯器 図3
  • 特許-電気炊飯器 図4
  • 特許-電気炊飯器 図5
  • 特許-電気炊飯器 図6
  • 特許-電気炊飯器 図7
  • 特許-電気炊飯器 図8
  • 特許-電気炊飯器 図9
  • 特許-電気炊飯器 図10
  • 特許-電気炊飯器 図11
  • 特許-電気炊飯器 図12
  • 特許-電気炊飯器 図13
  • 特許-電気炊飯器 図14
  • 特許-電気炊飯器 図15
  • 特許-電気炊飯器 図16
  • 特許-電気炊飯器 図17
  • 特許-電気炊飯器 図18
  • 特許-電気炊飯器 図19
  • 特許-電気炊飯器 図20
  • 特許-電気炊飯器 図21
  • 特許-電気炊飯器 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】電気炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
A47J27/00 109Z
A47J27/00 103R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020149975
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044381
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】玉城 信一
(72)【発明者】
【氏名】内野 稚賀男
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-050440(JP,A)
【文献】特開平02-121611(JP,A)
【文献】特開平07-335950(JP,A)
【文献】特開2009-206622(JP,A)
【文献】特開2008-145927(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087237(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、該炊飯器本体の開口部後端側にヒンジ軸を介して開閉可能に軸支され、閉状態において炊飯器本体の開口部を覆う蓋体と、該蓋体の内側に設けられた第1のマイコンを有する第1の電気基板と、上記炊飯器本体の内側に設けられた第2のマイコンを有する第2の電気基板とを備え、上記第1のマイコンを有する第1の電気基板および第2のマイコンを有する第2の電気基板には、それぞれ発光部および受光部が設けられ、それら発光部および受光部が相互にフレキシブルな導光体を介して光通信可能に接続されている電気炊飯器であって、
上記第1のマイコンを有する第1の電気基板および第2のマイコンを有する第2の電気基板各々の発光部および受光部を光通信可能に接続するフレキシブルな導光体は、上記ヒンジ軸の背面側を通して配設されていることを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
炊飯器本体と、該炊飯器本体の開口部後端側にヒンジ軸を介して開閉可能に軸支され、閉状態において炊飯器本体の開口部を覆う蓋体と、該蓋体の内側に設けられた第1のマイコンを有する第1の電気基板と、上記炊飯器本体の内側に設けられた第2のマイコンを有する第2の電気基板とを備え、上記第1のマイコンを有する第1の電気基板および第2のマイコンを有する第2の電気基板には、それぞれ発光部および受光部が設けられ、それら発光部および受光部が相互にフレキシブルな導光体を介して光通信可能に接続されている電気炊飯器であって、
上記ヒンジ軸が中空のパイプ構造よりなり、上記第1のマイコンを有する第1の電気基板および第2のマイコンを有する第2の電気基板各々の発光部および受光部を光通信可能に接続するフレキシブルな導光体は、それぞれ上記中空のパイプ構造よりなるヒンジ軸の内側を一端側から他端側に貫通して配設されていることを特徴とする電気炊飯器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、蓋体側および本体側の両方に制御部を備え、それらをワイヤレス状態で相互に送受信可能とした電気炊飯器の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電気炊飯器では、蓋体側に操作スイッチや液晶パネル、マイコンユニットを備えたマイコン基板(表示基板)、本体側にワークコイルやヒータ等の加熱手段の出力を制御する制御基板(電源基板)を設けたものが多くなっており、これらマイコン基板と制御基板は、一般にフレキシブルフラットケーブル(FFC)を用いて相互に接続され、必要な信号の送受信が行われるようになっている(例えば、特許文献1及び特許文献2の電気炊飯器の構成を参照)。
【0003】
フレキシブルフラットケーブルは、絶縁体中に複数本の平型導体を水平方向に並設して構成されており、容易に多芯化できるとともに、厚さが薄いので可撓性に優れ、実装スペースが小さい所や可動部にも比較的容易に設置することができる。
【0004】
そのため、一端側を蓋体内部のマイコン基板のコネクタに接続し、他端側を蓋体内部の隙間を通して後方に延出し、蓋体および本体の後部において蓋体を上下に開閉可能に支持しているヒンジ部の背面とヒンジ部を覆うヒンジカバーとの間の隙間を介して本体内部に導入し、同導入端側を本体側制御基板のコネクタに接続するのに適している。
【0005】
しかし、平型導体であるフレキシブルフラットケーブルの場合、蓋体側マイコン基板からヒンジ部を介して本体側制御基板まで長く延びており、その間において各種のノイズを拾ってしまう問題がある(特に金属製のヒンジ軸、ヒンジコイルよりなるヒンジ部は、ノイズ源となりやすい)。これらの侵入ノイズはマイコンユニット誤動作の原因になり、炊飯器制御機能の信頼性を阻害する。また、フレキシブルフラットケーブルは、それ自体がノイズの輻射源となるので、EMI対策上の考慮が求められる。このため、コネクタ部へのノイズフィルタの設置やケーブル面へのノイズ抑制シートの貼り付けなどのシールド措置も採用されているが、十分な対策とはなり得ていない。
【0006】
さらに、フレキシブルフラットケーブルの場合、可撓性があるとは言っても、あくまでも平型の薄い導体を絶縁体で挟んで形成されたものであり、蓋体後端部のヒンジユニット部で局部的な折り曲げが繰り返されると、どうしても耐久性に限界が生じる。特許文献1、2の場合、この点についての一応の対策が採られているが、本質的な解決には至っていない。特許文献2の場合、フレキシブルフラットケーブルの長さを長くすることになり、よりノイズを拾いやすく、また輻射しやすくなる。
【0007】
そこで、このような問題を解決するために、フォトカプラ方式で蓋体と本体を光学的に結合し、相互に光通信可能とした電気炊飯器も提案されている(特許文献3の電気炊飯器の構成を参照)。このような構成による場合、少なくとも蓋体が閉じられ、蓋体と本体が光学的に結合している場合には、蓋体側のマイコンと本体側のマイコンとの光信号での送受信が可能であり、フレキシブルフラットケーブルを廃止することができる。送受信部は光学的に結合しているので、電磁的なノイズの影響を受けず、電磁的なノイズの輻射源となることもない。また、耐久性を考慮する必要がなく、蓋体の開閉もスムーズになる。
【0008】
さらに、同特許文献3の電気炊飯器では、蓋体側に受電部、本体側に給電部を設け、それらを蓋体閉状態において電磁誘導可能に結合することによって、本体側から蓋体側にワイヤレスでの給電をも可能としている。したがって、給電用の電源ケーブルも廃止することができ、蓋体と本体は完全なワイヤレス化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2011-239903号公報
【文献】特開2019-24951号公報
【文献】特開2019-154651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献3の場合、蓋体側のマイコンと本体側のマイコン相互の間で光通信を行うためのフォトカプラによる光学的な結合、本体側給電部から蓋体側受電部に給電を行う電磁的な結合の何れもが蓋体が閉じていることを条件として実現されるようになっており、蓋体が開いている場合には結合状態が実現されず、通信も給電も行うことができない。
【0011】
したがって、同構成の電気炊飯器の場合、例えば保温状態において蓋を開け、内鍋内のご飯をよそってしまった後に保温を取り消そうとしても、そのままでは取り消すことができず、一旦蓋を閉めて保温状態に戻し、改めて取り消しキーを押さなければならず、非常に使い勝手が悪い。そのため、蓋開放状態においても操作キーの操作を可能とした電気炊飯器(例えば特開2017-79833号公報を参照)には適用することができない。
【0012】
本願発明は、このような問題を解決するためになされたもので、蓋体および本体それぞれに相互に対応する発光部および受光部を設け、該発光部および受光部相互をフレキシブルな導光体を介して光学的に接続し、光通信可能とすることによって、電磁ノイズや静電気の影響を受けることなく、蓋体の開閉状態如何にかかわらず、ワイヤレスでの適正な送受信を行えるようにした電気炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、上記の目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0014】
(1)請求項1の発明の課題解決手段
この請求項1の発明の課題解決手段は、炊飯器本体と、該炊飯器本体の開口部後端側にヒンジ軸を介して開閉可能に軸支され、閉状態において炊飯器本体の開口部を覆う蓋体と、該蓋体の内側に設けられた第1のマイコンを有する第1の電気基板と、上記炊飯器本体の内側に設けられた第2のマイコンを有する第2の電気基板とを備え、上記第1のマイコンを有する第1の電気基板および第2のマイコンを有する第2の電気基板には、それぞれ発光部および受光部が設けられ、それら発光部および受光部が相互にフレキシブルな導光体を介して光通信可能に接続されている電気炊飯器であって、
上記第1のマイコンを有する第1の電気基板および第2のマイコンを有する第2の電気基板各々の発光部および受光部を光通信可能に接続するフレキシブルな導光体は、上記ヒンジ軸の背面側を通して配設されていることを特徴としている。
【0015】
このように、蓋体側第1のマイコンを有する第1の電気基板および本体側第2のマイコンを有する第2の電気基板各々に、それぞれ発光部および受光部を設け、それら発光部および受光部をフレキシブルな導光体を介して相互に光通信可能に接続すると、蓋体側第1のマイコンを有する第1の電気基板の発光部からの発光信号(送信信号)がフレキシブルな導光体を介して確実に本体側第2のマイコンを有する第2の電気基板の受光部に入力(受信)され、また、本体側第2のマイコンを有する第2の電気基板の発光部からの発光信号(送信信号)が同じくフレキシブルな導光体を介して確実に蓋体側第1のマイコンを有する第1の電気基板の受光部に入力(受信)されるようになる。
【0016】
これにより、蓋体側第1のマイコンを有する第1の電気基板と本体側第2のマイコンを有する第2の電気基板との間に双方向の光通信路が形成され、従来のフレキシブルフラットケーブルと全く同様の送受信が可能となる。しかも、この発光部、導光体、受光部よりなる双方向の光通信路は、光学的な伝送路であり、電磁ノイズや静電気の影響を全く受けないので、フレキシブルフラットケーブルの場合のような電磁ノイズ侵入による誤作動や電磁ノイズ輻射の問題は生じない。したがって、機器全体のEMI対策、EMC試験等の設計負荷を軽くすることができる。また、電気的な導体によるハーネスと異なって、電気抵抗によるエネルギーロスがなく、消費電力も低減される。
【0017】
この場合、上記発光部の発光デバイスには、例えば発光ダイオード、受光部の受光デバイスには、フォトダイオードまたはフォトトランジスタが用いられ、光には、例えば赤外線(近赤外線)又は可視光線が採用される。発光ダイオードは、駆動信号に対する応答速度が速く、高速点滅が可能である。したがって、後述するような1秒間に数万回のレベルの搬送パルスでの駆動に適している。受光部のフォトダイオードまたはフォトトランジスタの応答速度も同様であり、同様の搬送パルスで送信された光の点滅信号を受光して速やかに光電変換することができる。
【0018】
また、この場合、上記フレキシブルな導光体は、要求される送信距離も短く、点灯時における発光部の発光を導波管的に受光部に伝搬しさえすれば良いので、平型の薄い導体を絶縁体で挟んで多芯構造に形成したフレキシブルフラットケーブルと違って、発光部および受光部のデバイスの大きさ、発光角および受光角(ビーム角)に対応した所定光路径のシンプルな構造の導光体で足りる。
【0019】
そのような導光体の一例として、例えば光チューブ(導光チューブ)または光ケーブル(導光ケーブル)が採用される。ここで採用される光チューブには、例えば周壁部の断面変形強度が高くて、曲げても断面形状が変化しないが、チューブ全体としては高い柔軟性、可撓性があるシリコンゴムチューブなどが採用される。その結果、ヒンジ部の背後を通して配設した場合にヒンジ部のヒンジ軸と接触するようなことがあっても殆どストレスを受けることがなくなり、耐久性が高くなる。そして、同シリコンゴムチューブの内周面は、軸方向に照射された赤外線又は可視光線が全反射するような反射率の高い反射面に形成される。
【0020】
このような構成の場合、発光部で照射された殆どの光は、光チューブの一端から浅い進入角で光チューブ内の光伝送路(チューブ内空間)に入り、干渉することなく内周の反射面で全反射しながら、他端側受光部に効率良く伝搬される。したがって、発光部から受光部に至る光の伝搬効率が高くなり、信号の送受信性能が高くなる。
【0021】
また、光ケーブルとしては、例えば屈折率が高くて透明なコア部と同コア部の外周を覆う屈折率の低いクラッド部よりなる2層構造のケーブル体が採用される。このような構成の場合、発光部で照射された殆どの光は、ケーブルの一端から浅い進入角でコア部に入り、コア部とクラッド部の境界面で全反射しながら、干渉することなく他端側受光部に効率良く伝搬される。したがって、光チューブの場合と同様に信号の送受信性能が高くなる。
【0022】
また、この場合にも、上記コア材及びクラッド材に十分な可撓性のある合成樹脂材を選ぶことにより、蓋体の開閉に対応して柔軟に曲成し得るしなやかな導光体に容易に構成することができる。その結果、ヒンジ部の背後を通して配設した場合にヒンジ部のヒンジ軸と接触するようなことがあっても殆どストレスを受けることがなくなり、耐久性が高くなる。
【0023】
そして、この発明の課題解決手段では、上記の構成を前提として、上記第1のマイコンを有する第1の電気基板および第2のマイコンを有する第2の電気基板各々の発光部および受光部を相互に光通信可能に接続するフレキシブルな導光体は、上記ヒンジ軸の背面側を通して配設されていることを特徴としている。
【0024】
このように、第1のマイコンを有する第1の電気基板および第2のマイコンを有する第2の電気基板各々の発光部および受光部を相互に光通信可能に接続するフレキシブルな導光体をヒンジ軸の背面側を通して配設した場合、従来のフレキシブルケーブルの場合と同様に、光チューブが途中のヒンジ軸部分で、蓋体閉状態で例えば90度、蓋体開状態で110度の軸直交方向の局部的な曲げ変形を受ける。
【0025】
しかし、同導光体は、上記のように単なるシンプルなチューブ構造で、可撓性に長け、強度も高い。そして、従来のフレキシブルケーブルのような断線という問題は生じない。
【0026】
(2)請求項2の発明の課題解決手段
この請求項2の発明の課題解決手段は、炊飯器本体と、該炊飯器本体の開口部後端側にヒンジ軸を介して開閉可能に軸支され、閉状態において炊飯器本体の開口部を覆う蓋体と、該蓋体の内側に設けられた第1のマイコンを有する第1の電気基板と、上記炊飯器本体の内側に設けられた第2のマイコンを有する第2の電気基板とを備え、上記第1のマイコンを有する第1の電気基板および第2のマイコンを有する第2の電気基板には、それぞれ発光部および受光部が設けられ、それら発光部および受光部が相互にフレキシブルな導光体を介して光通信可能に接続されている電気炊飯器であって、
上記ヒンジ軸が中空のパイプ構造よりなり、上記第1のマイコンを有する第1の電気基板および第2のマイコンを有する第2の電気基板各々の発光部および受光部を光通信可能に接続するフレキシブルな導光体は、それぞれ上記中空のパイプ構造よりなるヒンジ軸の内側を一端側から他端側に貫通して配設されていることを特徴としている。
【0027】
このように、蓋体側第1のマイコンを有する第1の電気基板および本体側第2のマイコンを有する第2の電気基板各々に、それぞれ発光部および受光部を設け、それら発光部および受光部をフレキシブルな導光体を介して相互に光通信可能に接続すると、蓋体側第1のマイコンを有する第1の電気基板の発光部からの発光信号(送信信号)がフレキシブルな導光体を介して確実に本体側第2のマイコンを有する第2の電気基板の受光部に入力(受信)され、また、本体側第2のマイコンを有する第2の電気基板の発光部からの発光信号(送信信号)が同じくフレキシブルな導光体を介して確実に蓋体側第1のマイコンを有する第1の電気基板の受光部に入力(受信)されるようになる。
【0028】
これにより、蓋体側第1のマイコンを有する第1の電気基板と本体側第2のマイコンを有する第2の電気基板との間に双方向の光通信路が形成され、従来のフレキシブルフラットケーブルと全く同様の送受信が可能となる。しかも、この発光部、導光体、受光部よりなる双方向の光通信路は、光学的な伝送路であり、電磁ノイズや静電気の影響を全く受けないので、フレキシブルフラットケーブルの場合のような電磁ノイズ侵入による誤作動や電磁ノイズ輻射の問題は生じない。したがって、機器全体のEMI対策、EMC試験等の設計負荷を軽くすることができる。また、電気的な導体によるハーネスと異なって、電気抵抗によるエネルギーロスがなく、消費電力も低減される。
【0029】
この場合、上記発光部の発光デバイスには、例えば発光ダイオード、受光部の受光デバイスには、フォトダイオードまたはフォトトランジスタが用いられ、光には、例えば赤外線(近赤外線)又は可視光線が採用される。発光ダイオードは、駆動信号に対する応答速度が速く、高速点滅が可能である。したがって、後述するような1秒間に数万回のレベルの搬送パルスでの駆動に適している。受光部のフォトダイオードまたはフォトトランジスタの応答速度も同様であり、同様の搬送パルスで送信された光の点滅信号を受光して速やかに光電変換することができる。
【0030】
また、この場合、上記フレキシブルな導光体は、要求される送信距離も短く、点灯時における発光部の発光を導波管的に受光部に伝搬しさえすれば良いので、平型の薄い導体を絶縁体で挟んで多芯構造に形成したフレキシブルフラットケーブルと違って、発光部および受光部のデバイスの大きさ、発光角および受光角(ビーム角)に対応した所定光路径のシンプルな構造の導光体で足りる。
【0031】
そのような導光体の一例として、例えば光チューブ(導光チューブ)または光ケーブル(導光ケーブル)が採用される。ここで採用される光チューブには、例えば周壁部の断面変形強度が高くて、曲げても断面形状が変化しないが、チューブ全体としては高い柔軟性、可撓性があるシリコンゴムチューブなどが採用される。その結果、ヒンジ部の背後を通して配設した場合にヒンジ部のヒンジ軸と接触するようなことがあっても殆どストレスを受けることがなくなり、耐久性が高くなる。そして、同シリコンゴムチューブの内周面は、軸方向に照射された赤外線又は可視光線が全反射するような反射率の高い反射面に形成される。
【0032】
このような構成の場合、発光部で照射された殆どの光は、光チューブの一端から浅い進入角で光チューブ内の光伝送路(チューブ内空間)に入り、干渉することなく内周の反射面で全反射しながら、他端側受光部に効率良く伝搬される。したがって、発光部から受光部に至る光の伝搬効率が高くなり、信号の送受信性能が高くなる。
【0033】
また、光ケーブルとしては、例えば屈折率が高くて透明なコア部と同コア部の外周を覆う屈折率の低いクラッド部よりなる2層構造のケーブル体が採用される。このような構成の場合、発光部で照射された殆どの光は、ケーブルの一端から浅い進入角でコア部に入り、コア部とクラッド部の境界面で全反射しながら、干渉することなく他端側受光部に効率良く伝搬される。したがって、光チューブの場合と同様に信号の送受信性能が高くなる。
【0034】
また、この場合にも、上記コア材及びクラッド材に十分な可撓性のある合成樹脂材を選ぶことにより、蓋体の開閉に対応して柔軟に曲成し得るしなやかな導光体に容易に構成することができる。
【0035】
そして、この発明の課題解決手段では、上記の構成を前提として、さらに上記ヒンジ軸が中空のパイプ構造よりなり、上記第1のマイコンを有する第1の電気基板および第2のマイコンを有する第2の電気基板各々の発光部および受光部を相互に光通信可能に接続するフレキシブルな導光体は、それぞれ上記中空のパイプ構造よりなるヒンジ軸の内側を一端側から他端側に貫通して配設されていることを特徴としている。
【0036】
上記請求項の発明の課題解決手段のように、上記第1のマイコンを有する第1の電気基板および第2のマイコンを有する第2の電気基板各々の発光部および受光部を相互に光通信可能に接続するフレキシブルな導光体は、上記ヒンジ軸の背面側を通して配設することも可能である。
【0037】
しかし、そのようにした場合、途中のヒンジ軸部分で、蓋体閉状態で例えば90度、蓋体開状態で110度の軸直交方向の局部的な曲げ変形が繰り返される。そのため、シンプルなチューブ構造で、強度が高いとはいえ、ある程度の疲労、断面変形が生じる。
【0038】
これに対し、ヒンジ軸を中空のパイプ構造とし、フレキシブルな導光体を同中空パイプ構造のヒンジ軸の一端側から他端側に、その内側を貫通する状態で配設すると、軸直交方向の局部的な曲げ変形が解消され、疲労度、断面変形度が有効に低減される。もちろん、蓋体開閉時においてヒンジ軸部分のチューブ部に若干の軸捩り方向の変形が生じるが、ヒンジ軸内貫通部分の長さは十分に左右に長いので、その長さによって変形量が吸収され、局部的な変形にはなりにくい。したがって、疲労度や断面変形量は殆ど問題にしなくて済むようになる。
【発明の効果】
【0039】
以上の結果、本願発明の電気炊飯器によると、従来のフレキシブルフラットケーブル等ワイヤーハーネスで構成される電気配線材から制御部への電磁ノイズの侵入、電気配線材から外部への電磁ノイズの放射、蓋体の開閉による断線の恐れが確実に解消され、炊飯器制御性能の信頼性を大きく向上させることができる。
【0040】
また、フォトカプラ方式の場合と異なり、蓋体の開閉状態如何にかかわらず、双方向での通信、制御を可能とすることができる。また、光通信による通信速度の高速化により、炊飯器制御の応答性を大きく向上させることができ、より高機能な電気炊飯器を実現することができる。
【0041】
また、蓋体および本体側の各マイコンが光通信機能を持つことにより、蓋体側および本体側の各電気基板周りに外部との光通信を可能とするIoT絡みの周辺機器を設置することも容易となり、より多機能化が図られる。
【0042】
また、光通信という電気抵抗のないワイヤレス通信ラインの実現により、消費電力の低減、配線コスト、接続作業コストの低減も実現される。
【0043】
さらに、送受信デバイスにLC回路を用いた磁界共振型のワイヤレス送電装置を設けた場合、蓋体と本体との間を完全なワイヤレス状態(ハーネスロス状態)とすることができ、ハーネスの接続作業が完全になくなるので、製造時における組み立て作業が著しく楽になる。
【0044】
その結果、誤った電源ケーブル接続作業による基板破壊などもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】この出願の発明の第1の実施の形態に係る電気炊飯器の炊飯器本体の構成を示す平面図である。
図2】同電気炊飯器の炊飯器本体の内部の構成を示す図1のA-A線切断部での断面図である。
図3】同電気炊飯器の炊飯器本体の内部の構成を示す蓋開状態における図1のA-A線切断部での断面図である。
図4】同電気炊飯器の炊飯器本体の要部の構成(図3の仮想線で囲んだ部分の構成)を示す拡大断面図である。
図5】同電気炊飯器における蓋体側マイコン基板回路および炊飯器本体側制御基板回路各々の構成とそれら相互の接続関係の概略を示すブロック図である。
図6】同電気炊飯器における蓋体側マイコン基板の主マイコンユニットから炊飯器本体側制御基板の副マイコンユニットに符号化情報を送信する第1の光学的送受信手段の構成を示す概略図である。
図7】同電気炊飯器における炊飯器本体側制御基板の副マイコンユニットから蓋体側マイコン基板の主マイコンユニットに符号化情報を送信する第2の光学的送受信手段の構成を示す概略図である。
図8】同電気炊飯器における蓋体側マイコン基板の主マイコンユニットから炊飯器本体側制御基板の副マイコンユニットおよび炊飯器本体側制御基板の副マイコンユニットから蓋体側マイコン基板の主マイコンユニットに各々符号化情報を送信する送受信手段部分における導光体(光チューブ)の構成を示す斜視図である。
図9】同電気炊飯器における図8の導光体(光チューブ)の構成を示す端面図である。
図10】同電気炊飯器における図8の導光体(光チューブ)の導光作用を示す斜視図である。
図11】同電気炊飯器における蓋体側マイコン基板の主マイコンユニットから炊飯器本体側制御基板の副マイコンユニットに符号化情報を送信する第1の光学的送受信手段の回路構成を示す概略図である。
図12】同電気炊飯器における炊飯器本体側制御基板の副マイコンユニットから蓋体側マイコン基板の主マイコンユニットに符号化情報を送信する第2の光学的送受信手段の回路構成を示す概略図である。
図13】同電気炊飯器における図11の第1の光学的送受信手段および図12の第2の光学的送受信手段各々で使用される、(a)送信すべき符号化情報(コマンドおよび各種データ)、(b)送信用の搬送パルス、(c)送信される変調パルスの各波形を示す図である。
図14】同電気炊飯器の図13(c)の送信される変調パルスにおける方形パルスの周期Tと発光部の点滅周期T/2との関係を示す一部拡大図である。
図15】同電気炊飯器における図8の導光体(光チューブ)を複数本並設一体化した変形例に係る複合光チューブの構成を示す切断部端面図である。
図16】この出願の発明の第2の実施の形態に係る電気炊飯器の炊飯器本体のヒンジユニット部における導光体(光チューブ)の配設構造を示す蓋体開状態の背面図である。
図17】同電気炊飯器の炊飯器本体のヒンジユニット部における導光体(光チューブ)の配設構造を示す要部の拡大断面図である。
図18】この出願の発明の第3の実施の形態に係る電気炊飯器における蓋体側マイコン基板の主マイコンユニットから炊飯器本体側制御基板の副マイコンユニットおよび炊飯器本体側制御基板の副マイコンユニットから蓋体側マイコン基板の主マイコンユニットに各々符号化情報を送信する送受信手段部分における導光体(光ケーブル)の構成を示す斜視図である。
図19】同電気炊飯器における図18の導光体(光ケーブル)の導光作用を示す説明用斜視図である。
図20】同電気炊飯器における図18の導光体(光ケーブル)を複数本並設一体化した変形例に係る複合光ケーブルの構成を示す切断部端面図である。
図21】この出願の発明の第4の実施の形態に係る電気炊飯器における蓋体側マイコン基板回路および炊飯器本体側制御基板回路各々の構成とそれら相互の接続関係の概略を示すブロック図である。
図22】同電気炊飯器におけるワイヤレス送電システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、添付の図1図22の図面を参照して、この出願の発明を実施するための第1~第4の実施の形態の構成および作用について、それぞれ詳細に説明する。
【0047】
<第1の実施の形態に係る電気炊飯器の構成>
先ず、図1図4には、この出願の発明の第1の実施の形態にかかる開閉可能な蓋体を備えた電気炊飯器の炊飯器本体および蓋体各部分の構成が、また図5には、同電気炊飯器の蓋体側および炊飯器本体側制御回路部分の構成が示されている。
【0048】
すなわち、この出願の発明の第1の実施の形態に係る電気炊飯器は、例えば図1図5に示すように構成されており、その基本的な構成部分として、電気炊飯器本体1と、該電気炊飯器本体1の開口部一端側に軸支され、該電気炊飯器本体1の開口部を開閉可能に覆う蓋体2と、該蓋体2の内側に設けられた第1の電気基板であるマイコン基板(表示基板)50と、上記電気炊飯器本体1の内側に設けられた第2の電気基板である制御基板(電源基板)60と、上記第1の電気基板であるマイコン基板50側第1の発光部52と第2の電気基板である制御基板60側第1の受光部61を上記蓋体2の軸支部であるヒンジユニット9の後端部外周面側を通して相互に光学的に接続する第1の導光体71と、上記第2の電気基板である制御基板60側第2の発光部64と第1の電気基板であるマイコン基板50側第2の受光部53を上記蓋体2の軸支部であるヒンジユニット9の後端部外周面側を通して相互に光学的に接続する第2の導光体72とを備えて構成されている。
【0049】
すなわち、先ず電気炊飯器本体1(以下、単に炊飯器本体という)は、例えば図1および図2に示されるように、米および水を収容する電磁誘導加熱可能な金属製の内鍋3と、該内鍋3を任意に収納セットし得るように形成された内ケース(保護枠)4と、該内ケース4の底部側に電磁誘導コイル5を介して設けられたコイル台6と、該コイル台6および上記内ケース4を保持する外部筺体である有底筒状の外ケース7と、該外ケース7の上端と上記内ケース4の上端とを連結一体化している肩部材8とから構成されており、この炊飯器本体1の上部側開口部には、該上部側開口部を開閉可能に覆蓋する蓋体2が上記肩部材8の後端側部分で軸支部であるヒンジユニット9を介して相対回転可能に軸着され、上下方向に開閉自在に取り付けられている。
【0050】
上記炊飯器本体1の上部側開口部は、上記肩部材8によって周囲を囲繞されており、上記内ケース4の底壁部4a上には、内鍋3の底壁部3aが載置されるようになっている。上記内ケース4の底壁部4aの中央部には、センタセンサ嵌挿穴4bが設けられており、該センタセンサ嵌挿穴4bを介して下方側からセンタセンサ(底センサ)10が当該内鍋3の底壁部3aに当接するように臨まされており、これにより内鍋3の温度(ご飯の温度)が検出されるようになっている。
【0051】
上記内ケース4の上部側外周面には、炊飯および保温時において加熱手段として機能する例えば保温ヒータ(胴ヒータ)11が設けられており、炊飯時および保温時において上記内鍋3の側壁部3bを有効かつ均一に加熱するようになっている。
【0052】
一方、符号12は、上記外ケース7の底部側開口部を閉じている底ケースであり、この底ケース12の後端側所定幅部分には、炊飯器本体内に冷却用の空気を取り入れるための空気吸い込みグリル12aが設けられており、その上部には所定の電装品収納空間が形成されている。そして、この電装品収納空間部分に、ワークコイル5を駆動制御するIGBTを含むワークコイル駆動回路や保温ヒータ11を駆動制御する保温ヒータ駆動回路、電源電圧整流用のダイオードブリッジよりなる整流回路、平滑回路、その他の電子部品67、IGBT冷却用の放熱フィン68等を備えた第2の電気基板である制御基板(電源基板)60が制御基板カバー66を介して設けられている。
【0053】
制御基板60には、後述の図5に詳細に示すように、その上端側左側部に位置して、マイコン基板50側主マイコンユニット40Aによりパルス変調された第1の発光部52からの符号化情報(コマンドおよび制御データ)を第1の導光体71を介して受光し、光電変換する第1の受光部61と、制御基板60側副マイコンユニット40Bによりパルス変調された符号化情報(コマンドおよび制御データ)を光電変換し、第2の導光体72を介してマイコン基板50側の第2の受光部53に伝送する第2の発光部64とがペア状態で設けられている。
【0054】
炊飯器本体1の上記制御基板カバー66と外ケース7との間には、図1図2に示すような上下方向(肩部材8のヒンジ部設置位置)までストレートに伸びて連通するコードリール設置空間が形成されており、その中央から下端部に位置してコードリール69が設けられている。
【0055】
次に、上記炊飯器本体1の上部側開口部を閉じる蓋体2の構成について、詳細に説明する。
【0056】
すなわち、蓋体2は、例えば図1および図2に示されるように、その上部側本体面を構成する合成樹脂製の上板(本体カバー)21と、該上板21の内側(下側)に設けられた同じく合成樹脂製の下板(ポリカバー)22と、該下板22の本体部の内側(下側)に重合固定される蓋ヒータ23を有する金属製の放熱板24と、該放熱板24の下方に設けられ、その外周縁部分にゴム製のパッキン25を有する合成樹脂製の枠部材26を介して上記下板22に着脱可能に取り付けられている金属製の内蓋27とから構成されている。
【0057】
また、該蓋体2の上記上板21の上部側には、例えば図1および図2に示すような所定の厚さを有する合成樹脂製の銘板20が重合一体化されており、該銘板20の前半分部分には、フックボタン(蓋開閉ボタン)20a、予約、炊飯、取り消し、時分、保温、メニュー等の各種操作スイッチ20b,20c,20d、20e,20f,20g、液晶表示部(その表示面)20hが設けられている。フックボタン(蓋開放ボタン)20aは、上板21に設けられたフックボタン設置口にその上端側操作面部分を下方側から臨ませる形で、上下方向に昇降可能に支持されている。
【0058】
また、該蓋体2の上記上板21には、上記予約、炊飯、取り消し、時分、保温、メニュー等の各種操作スイッチ20b,20c,20d、20e,20f,20gおよび液晶表示部(その表示面)20hの下方側に位置して、それら予約、炊飯、取り消し、時分、保温、メニュー等の各種操作スイッチ20b,20c,20d、20e,20f,20g、液晶表示部20hおよび後述する主マイコン(図5の40A)を実装した第1の電気基板であるマイコン基板50を収納する所定の深さの電装品収納箱28が設けられており、同電装品収納箱28内に、それら各種操作スイッチ20b,20c,20d、20e,20f,20g、液晶表示部20h(液晶パネル20i)および後述する主マイコン(図5の40A)を実装した第1の電気基板であるマイコン基板50が収納されている。
【0059】
マイコン基板50には、後述の図5に詳細に示すように、その後端側左側部に位置して、当該マイコン基板50側主マイコンユニット40Aによりパルス変調された符号化情報(コマンドおよび制御データ)を光電変換し、第1の導光体71を介して制御基板60側の第1の受光部61に伝送する第1の発光部52と、制御基板60側第2の発光部64から第2の導光体72を介して伝送される副マイコンユニット40Bによりパルス変調された符号化情報(コマンドおよび制御データ)を光電変換して受信する第2の受光部53がペア状態で設けられている。
【0060】
上記電装品収納箱28の後端壁側左側部には、上記第1の導光体71の送信端側端部および上記第2の導光体72の受信端側端部をマイコン基板50の第1の発光部52、第2の受光部53部分まで導入する導入口が設けられている(図示省略)。
【0061】
また、該蓋体2の後部側部分には、平面視略方形の比較的面積の大きなスチームキャップ収納溝が設けられており、該スチームキャップ収納溝に、お粘成分を回収しながら蒸気のみを外部に逃がすとともに炊飯工程において上記内鍋3内の圧力を調節する蒸気孔を備えたスチームキャップ31が設けられている。符号31aは、同スチームキャップ31の蒸気放出口であり、その上流側の蒸気孔には蒸気センサ32が設けられている。
【0062】
蓋体2を炊飯器本体1に取り付けているヒンジユニット9は、例えば図2および図3に詳細に示すように、蓋体2の上板21後端側を上下方向に回動可能に支持する軸支部であり、ヒンジ軸9a、左右一対のヒンジ軸支持部材(図示省略)により構成され、ヒンジ軸9aの外周部分には、蓋体2を開方向に回動付勢するヒンジコイル9bが巻装されている。
【0063】
上記ヒンジ軸9aおよびヒンジ軸支持部材は、上述した肩部材(肩部材本体)8後端の内周側所定幅部分に設けられたヒンジユニット設置部上に固定して設けられている。そして、同状態において、上記ヒンジ軸9aおよびヒンジ軸支持部材の背面側には、ヒンジカバー(背面カバー)14が外ケース7と一体に設けられている。このヒンジカバー14は、上記ヒンジユニット設置部の下端から上記ヒンジ軸9a、ヒンジコイル9bの上部位置まで延び、その上端側をヒンジコイル9bの上部を覆うように所定寸法前方側に曲成してアール面を形成している。そして、このアール面の内側のヒンジ軸9aとの空間が、上述した第1、第2の導光体71,72のスムーズな円弧状のガイド空間(自由な変形空間)となるように構成されている。
【0064】
第1、第2の導光体71,72は、例えば図8および図9に示すように、内側に光伝送路70を形成した所定の径の中空の光チューブ(導光チューブ)よりなり、その内周面は赤外線が全反射する反射面70aに形成されている。この中空の光チューブには、例えば周壁部の断面変形強度が高くて、曲げても断面形状が変化しないが、チューブ全体としては高い柔軟性、可撓性があるシリコンゴムチューブなどが採用される。このような高い柔軟性、可撓性がある光チューブよりなる第1、第2の導光体71,72は、例えば図1および図2に示すように、マイコン基板50の第1の発光部52および第2の受光部53と制御基板60の第1の受光部61と第2の発光部64とを光通信可能に接続しており、マイコン基板50の第1の発光部52および第2の受光部53部分から後方に延びる第1、第2の導光体71,72のチューブ体部分は、蓋体2の合成樹脂製の上板21と下板22との間を通り、ヒンジユニット9のヒンジ軸9aの背後で下方に緩やかに曲がり、肩部材8とヒンジカバー14の間の空間を経て肩部材8の下方側に緩やかに回り込んで、制御基板60の第1の受光部61および第2の発光部64に光学的に接続されている。そして、マイコン基板50側第1の発光部52および第2の受光部53との接続端部および制御基板60側第1の受光部61および第2の発光部64との接続端部およびそれらの途中の何カ所かを固定部材75,75・・、75,75・・で固定され、安定した状態に保持されている。
【0065】
しかし、ヒンジ軸9aの背後部分では、特に何処にも固定されておらず、フリーになっており、蓋体2が閉じられた図2の状態でも、ヒンジ軸9aの背面側に接触しない所定の隙間を保った状態で下方に緩やかに曲成し得る状態となっていると共に、肩部材8の下方側でも肩部材8の下端側コーナー部8aに干渉することなくスムーズに制御基板60上の第1の受光部61および第2の発光部64に接続固定されるようになっている。
【0066】
また、蓋体2を開放した状態では、例えば図3および図4のようになり、ヒンジ軸9aの背後で緩やかなS字状に曲がるだけで、局部的な曲成部は生じない。そして、この場合にも、ヒンジ軸9aやヒンジコイル9b、肩部材8の下端部コーナー部8aに干渉しないようになっている。
【0067】
この実施の形態では、そのために肩部材8とヒンジカバー14間の寸法aおよびヒンジ軸9aと制御基板カバー66の上端間の寸法bを十分なものとしている。上記第1の導光体71および第2の導光体72は、シリコンゴム製の光チューブであり、十分な可撓性、柔軟性があるので、何らかの事情でヒンジ軸9aやヒンジコイル9b、肩部材8の下端部コーナー部8aに干渉したとしても殆ど変形せず、損傷も生じない。しかし、光信号のより干渉しにくい確実な伝送形態を確保するためには、できるだけ変形部は緩やかな方がよい。また、その方が開閉動作に対する耐久性も高い。そのために、この実施の形態では、蓋体2の閉状態、開状態いずれの場合にあっても可能な限り緩やかな変形状態となるように構成している。
【0068】
次に、上記蓋体2側のマイコン基板50、炊飯器本体1側の制御基板60各々の回路構成の詳細と相互の接続構造の詳細について説明する。図5は、上記蓋体2側のマイコン基板50、炊飯器本体1側の制御基板60各々の回路構成の詳細と相互の接続構造を示している。
【0069】
まず、蓋体2側のマイコン基板50は、操作スイッチ20b~20g、液晶パネル20iおよび蓋ヒータ23等制御用の主マイコンユニット40Aと、操作スイッチ20b~20gと、液晶パネル20iと、主マイコンユニット40Aにより制御され、蓋ヒータ23を駆動する蓋ヒータ駆動回路43と、電源ケーブル36を介して制御基板60側AC電源回路33よりAC電源が供給される制御電源回路37と、制御電源回路37より整流された所定の充電電流が供給される充電電池38と、主マイコンユニット40Aにより制御される第1の発光部駆動手段51と、第1の発光部駆動手段51によりON,OFF駆動され、ON作動時の発光を第1の導光体71を介して制御基板60側第1の受光部61に入力させる第1の発光部52と、制御基板60側第2の発光部64から第2の導光体72を介して伝送されて来る光信号(コマンドおよび制御用データに応じて変調された光信号)を受光復調する第2の受光部53と、第2の受光部53の出力をエンコードして主マイコンユニット40Aに入力する第2のエンコーダ(エンコード部)54を備えて構成されている。
【0070】
操作スイッチ20b~20gは、たとえばタッチスイッチにより構成されており、それぞれその操作状態が主マイコンユニット40Aに入力される。液晶パネル20iは、主マイコンユニット40Aにより表示制御され、操作スイッチ20b~20gの操作状態、操作入力に基づく炊飯、保温状態を表示する。主マイコンユニット40Aには、蓋体2の蒸気通路途中に設けた蒸気センサ32からの蒸気検出信号が入力される。蓋ヒータ駆動回路43は、主マイコンユニット40Aにより作動制御され、蓋体2の放熱板24部分に設けられている蓋ヒータ23を加熱駆動する。
【0071】
この実施の形態の場合、上記主マイコンユニット40Aには、例えば低電源検出回路、発振子、EEPROM、リセット用IC、温度センサ(室温センサ)、マルチ電源インターフェイスポートなどを内蔵したものが採用されている。したがって、従来のように主マイコンユニット40Aの周辺に、低電源検出回路、発振子、EEPROM、リセット用IC、温度センサ(室温センサ)、マルチ電源インターフェイスポートなどを設ける必要がなく、マイコン基板50そのものが小型化され、また配線がシンプルになっている。
【0072】
次に、制御基板60は、ワークコイル5、保温ヒータ11、ファン17等駆動制御用の副マイコンユニット40Bと、ワークコイル5を駆動するワークコイル駆動回路41と、保温ヒータ11を駆動する保温ヒータ駆動回路42と、ファン17を駆動するファン駆動回路44と、電源コードを介して外部からAC電源が供給されるAC電源回路33と、AC電源回路33の電源を整流平滑して副マイコンユニット40B等の必要な制御電源とする制御電源回路34と、上記マイコン基板50側第1の発光部52から第1の導光体71を介して伝送されて来る光信号(コマンドおよび制御用データに応じて変調された光信号)を受光復調する第1の受光部61と、第1の受光部61の出力をエンコードして副マイコンユニット40Bに入力する第1のエンコーダ(エンコード部)62と、副マイコンユニット40Bにより制御される第2の発光部駆動手段63と、第2の発光部駆動手段63によりON,OFF駆動され、ON作動時の発光を第2の導光体72を介してマイコン基板50側第2の受光部に入力させる第2の発光部64とからなっている。副マイコンユニット40Bには、内鍋3の温度を検出するセンタセンサ10からの内鍋温度検出信号が入力される。
【0073】
上記マイコン基板50側の第1の発光部駆動手段51および第1の発光部52、同マイコン基板50側の第1の発光部52と上記制御基板60側の第1の受光部61を光学的に接続する第1の導光体71、上記制御基板60側の第1の受光部61および第1のエンコーダ62は、上記主マイコンユニット40Aからの制御に必要な制御信号(コマンドおよび制御データ)を上記副マイコンユニット40Bに光学的に送信する第1の光学的な送信手段を形成している。
【0074】
また、上記制御基板60側の第2の発光部駆動手段63および第2の発光部64、上記制御基板60側の第2の発光部64と上記マイコン基板50側の第2の受光部53を光学的に接続する第2の導光体72、上記マイコン基板50側の第2の受光部53および第2のエンコーダ54は、上記副マイコンユニット40Bからの制御に必要な制御信号(コマンドおよび制御データ)を上記主マイコンユニット40Aに光学的に送信する第2の光学的な送信手段を形成している。
【0075】
すなわち、これら第1、第2の光学的な送信手段により上記主マイコンユニット40Aと上記副マイコンユニット40Bが双方向的に送受信可能に接続されている。
【0076】
上記マイコン基板50側第1の発光部駆動手段51および第1の発光部52、上記マイコン基板50側の第1の発光部52と上記制御基板60側の第1の受光部61を光学的に接続する第1の導光体71、上記制御基板60側の第1の受光部61および第1のエンコーダ62は、例えば図6および図11に示すように構成されている。
【0077】
すなわち、先ず図6に示すように、マイコン基板50側第1の発光部52は、例えば第1の赤外線発光ダイオード52aを備えて構成されている一方、制御基板60側第1の受光部61は、第1のフォトダイオード61aを備えて構成されており、それら第1の赤外線発光ダイオード52aと第1のフォトダイオード61a部分が第1の導光体71により光伝送路を形成する状態で相互に接続されている。
【0078】
ここで、第1の導光体71は、例えば図8および図9に示すような内側に光伝送路70を形成した所定の径の中空の光チューブよりなり、その内周面は赤外線が全反射する反射面70aに形成されている。そして、同構成の第1の導光体71は、それぞれその両端側を上記第1の赤外線発光ダイオード52aおよび第1のフォトダイオード61aの球状レンズ部分に光が漏れないように嵌合して接続されている。
【0079】
このような構成の場合、上記第1の赤外線発光ダイオード52aから軸方向に照射された赤外光は、図10に示すように、上記光チューブよりなる第1の導光体71の一端から浅い進入角で伝送路70内に入り、その反射面70aで全反射しながら、干渉することなく第1のフォトダイオード61aに効率良く伝搬される。もちろん、その間において電磁的な外部ノイズの侵入もなく、外部への電磁ノイズの放射もない。
【0080】
この場合、上記光チューブには、例えばシリコンゴム製の十分な可撓性、柔軟性のあるチューブ構造が採用され、蓋体2の開閉に対応して柔軟に曲成し得るしなやかな導光体71に構成されている。その結果、上述のようにヒンジユニット9の背後を通して配設した場合において、仮にヒンジ軸9aやヒンジコイル9bと接触するようなことがあっても、殆どストレスを受けることがなくなり、耐久性が高くなる。
【0081】
ところで、上記図6に示す第1の発光部52および第1の受光部61は、より具体的には、図11のように構成されている。
【0082】
すなわち、上述した主マイコン40Aおよび副マイコン40B間で光通信を行う場合、送信すべきコマンドや各種データなどの符号化情報を所定の搬送波に重畳する必要がある。搬送波には、一般に方形のパルス波が使用されるが、同パルス波に符号化情報を重畳する方法としては,搬送パルスの時間軸上でのH(高)時間が入力信号(符号化情報)によって変化するパルス幅変調(PWM)、搬送パルスの時間軸上での位置が入力信号(符号化情報)によって変化するパルス位置変調(PPM)がある。
【0083】
この実施の形態では、搬送パルスの時間軸上での位置が入力信号(符号化情報)によって変化するパルス位置変調(PPM)を採用して構成している。パルス位置変調(PPM)は、一度に送るビット数によってスロットの数を変えることができ、そのスロットの中の何番目のスロットにパルスがあるか(スロットがONになっているか)によって情報を割り当てる。例えば2値のデジタル通信手段として構成する場合には2スロットを用意し、最初のスロットがH(高)の場合には〔0〕の情報を、2つ目のスロットがH(高)の場合には〔1〕の情報を示すようにする。そして、スロットを4つ用意した場合には4値PPMとなり、1シンボルで4通りの情報を送ることができる。
【0084】
ここで使用される搬送パルスは、少なくとも1秒間に数万回以上のレベルで上記第1の発光部52の第1の赤外線発光ダイオード52aを点滅駆動する方形の搬送パルス(図13の(b))であり、送信制御手段として機能する主マイコンユニット40Aにより形成される。そして、この主マイコン40Aにより形成された搬送パルス(図13の(b))は、送信すべき符号化情報(図13の(a))に応じてパルス位置変調され、同変調された搬送パルス(図13の(c))に基づいて上記第1の発光部52の第1の赤外線発光ダイオード52aが点滅駆動され、デジタルの光信号として第1の受光部61の第1のフォトダイオード61aに送信される。なお、図14は、変調された搬送パルス(図13の(c))における発光ダイオード52aの点滅時間と周期Tの関係を示している。
【0085】
第1の発光部52の第1の赤外線発光ダイオード52aを点滅駆動する第1の発光部駆動手段51は、例えば図11に示すようにスイッチングトランジスタよりなり、上記送信制御手段である主マイコンユニット40Aから供給される図13(c)の変調パルスによりON,OFF制御される。そして、第1の赤外線発光ダイオード52aは、スイッチングトランジスタがONの時に点灯して赤外光を発生する。
【0086】
一方、同状態において、制御基板60側の副マイコンユニット40Bは、受信制御手段として機能し、上記変調パルス(図13(c))を用いて第1の発光部52の第1の赤外線発光ダイオード52aから送信されたデジタル的な光信号を、第1の受光部61の第1のフォトダイオード61aで受光し、光電変換した後に、演算制御部61bで復調、増幅、成形する。その後、同復調、増幅、成形された信号を第1のエンコーダ62に入力し、所定の規則に基づいてエンコードすることによって、最終的に送信された符号化情報(図13(a))を検出する。そして、この検出情報に基づいて、ワークコイル5、保温ヒータ11、ファン17等の制御が行われる。
【0087】
これらの構成および動作は、図7および図12に示す、副マイコン40B側第2の発光部64(第2の赤外線発光ダイオード64a)側から主マイコン40A側第2の受光部53(第2のフォトダイオード53a)に第2の導光体72を介して符号化情報を送信する場合にも全く同様である。送信方向、受信方向が逆になるだけである。第2の導光体72も、図8および図9に示す内側に光伝送路70を形成した所定の径の光チューブである。
【0088】
これにより、マイコン基板50側の主マイコンユニット40Aおよび制御基板60側の副マイコンユニット40Bによる双方向での適正な制御が可能となる。そして、同制御には外部ノイズの侵入等による誤動作の恐れもなくなり、光によるデジタル的な高速通信により、制御上での応答性も向上し、高機能な炊飯器制御が実現される。
【0089】
ところで、上記副マイコンユニット40B側第1の受光部61および主マイコンユニット40A側第2の受光部53は、フォトダイオード(又はフォトトランジスタ)のみで構成することも可能である。しかし、その場合、搬送パルスで変調された送信信号を受信し、光電変換するだけしかできず、復調、増幅、成形する回路を別途設けなければならず、回路構成が複雑になり、部品コストもかかる。
【0090】
そこで、この実施の形態では、図6および図11図7および図12に示すように、それらの各回路をオペアンプを用いた演算制御部61b、53bとしてモジュール化することによって、フォトダイオード61a、53aを含めた一体の受光部61,53に形成している。これにより、受光部61、53単体として光電変換、復調、増幅、成形機能を実現することができる。
【0091】
以上の結果、この実施の形態の構成によると、従来のフレキシブルフラットケーブル等ワイヤーハーネスで構成される電気配線材から制御部への電磁ノイズの侵入、同電気配線材から外部への放射ノイズの発生、蓋体の開閉による断線の恐れ等が解消され、制御機能の信頼性を大きく向上させることができる。
【0092】
また、フォトカプラ方式の場合と異なり、蓋体の開閉状態如何にかかわらず、双方向での通信、制御を可能とすることができる。また、光通信による通信速度の高速化により、制御の応答性を大きく向上させることができ、高機能な電気炊飯器を実現することができる。
【0093】
また、蓋体および本体側の各マイコンが光通信機能を持つことにより、蓋体側および本体側の各電気基板周りに外部との光通信を可能とするIoT絡みの周辺機器を設置することも容易になり、多機能化が可能になる。また、光通信という電気抵抗のないワイヤレス通信ラインの実現により、消費電力の低減、配線コスト、接続作業コストの低減も実現される。
【0094】
<変形例>
以上の実施の形態においては、第1の導光体71および第2の導光体72が、それぞれ1本の光チューブよりなる場合で説明した。
【0095】
しかし、実際には1本ずつの双方向通信路では、通信路数が足りない。そこで、そのような場合には、例えば図15に示すように、複数本の光チューブを並設一体化した複合型の光チューブ(一体成型)を使用する。
【0096】
この図15の複合型の光チューブは、一見フレキシブルフラットケーブルのような形態をしているが、あくまで導光体であり、電磁的なノイズを拾ったり、電磁的なノイズの発生源となるワイヤーハーネスではない。また、導電帯のような断線も生じない。
【0097】
<第2の実施の形態に係る電気炊飯器の構成>
次に、図16および図17は、この出願の発明の第2の実施の形態に係る電気炊飯器における導光体の配設構造を示している。
【0098】
この第2の実施の形態に係る電気炊飯器の場合、上述した第1の実施の形態の電気炊飯器の構成における光チューブよりなる第1、第2の導光体71、72をヒンジユニット9の背後ではなく、ヒンジユニット9のヒンジ軸9a内を貫通させる形で配設したことを特徴としている。そのために、ヒンジユニット9のヒンジ軸9aは、例えば図17に詳細に示されるように、光チューブよりなる第1、第2の導光体71、72を挿通させるのに十分な径の中空のパイプ構造に形成されている。
そして、この第2の実施の形態では、それら第1、第2の2本の導光体71、72を、例えば図16および図17に示すように、相互に近接した並列状態で当該中空構造のヒンジ軸9a内を貫通させている。
【0099】
主マイコンユニット40Aを有するマイコン基板50および副マイコンユニット40Bを有する制御基板60の第1の発光部52および第1の受光部61、第2の発光部64および第2の受光部53を相互に光通信可能に接続する第1、第2の導光体71,72は、上記第1の実施の形態のようにヒンジユニット9(ヒンジ軸9a)の背面側を通して配設することも可能である。
【0100】
しかし、そのようにした場合、途中のヒンジ軸9a部分で、蓋体2閉状態で例えば90度(図2参照)、蓋体2開状態で例えば110度(図3参照)ほどの軸直交方向の局部的な曲げ変形が繰り返される。そのため、シリコンゴム製の光チューブ(図8図10)というシンプルなチューブ構造で、電気的な導体部分がなく、十分に強度が高いとはいえ、ある程度の疲労、断面変形が生じる。
【0101】
これに対し、図17のように、ヒンジ軸9aを中空のパイプ構造とし、シリコンゴム製の光チューブよりなる第1、第2の導光体71,72を同中空パイプ構造のヒンジ軸9aの一端側から他端側に、その内側を貫通する状態で配設すると、軸直交方向の局部的な曲げ変形が解消され、疲労度、断面変形度がより有効に低減される。
【0102】
もちろん、この場合にも、蓋体2開閉時においてヒンジ軸9a内のチューブ部分に若干の軸捩り方向の変形が生じるが、ヒンジ軸9a内貫通部分の長さは十分に左右に長いので、その長さによって変形量が十分に吸収され、局部的な変形にはなりにくい。したがって、疲労度や断面変形量は殆ど問題にしなくて済むようになる。その結果、より耐久性が向上し、安定した光通信機能を維持することができる。
【0103】
<第3の実施の形態に係る電気炊飯器の導光体の構成>
次に、図18図20は、この出願の発明の第3の実施の形態に係る電気炊飯器における導光体の構成を示している。
【0104】
この第3の実施の形態に係る電気炊飯器の場合、上述した第1、第2の実施の形態に係る電気炊飯器の構成における第1、第2の導光体71、72を全反射面を備えた中空構造の光チューブから、赤外線の屈折率が高い透明なコア部材75と、該コア部材75の外周を覆う赤外線の屈折率が低いクラッド部材76よりなる2層構造の光ケーブルに変更したことを特徴としている。その他の部分の構成は、上記第1、第2の実施の形態の構成と全く同一である。
【0105】
このような構成の場合、例えば図19に示すように、マイコン基板50側第1の発光部52,制御基板60側第2の発光部64から軸方向に照射された赤外光は、同光ケーブルの一端から浅い進入角でコア部材75に入り、コア部材75とクラッド部材76の境界面で全反射しながら、干渉することなく制御基板60側第1の受光部61,マイコン基板50側第2の受光部53に効率良く伝搬される。したがって、上述した光チューブの場合と同様に信号の送受信性能が高くなる。もちろん、電磁的な外部ノイズの侵入もなく、外部への電磁ノイズの輻射もない。
【0106】
そして、この場合にも、上記コア部材75及びクラッド部材76に十分な可撓性、柔軟性のある合成樹脂材を選ぶことにより、蓋体2の開閉に対応して柔軟に曲成し得るしなやかな導光体71,72に容易に構成することができる。その結果、ヒンジユニット9の背後を通して配設した場合にヒンジ軸9aと接触するようなことがあっても、殆どストレスを受けることがなくなり、耐久性が高くなる。また、伝送路が単に中空の空間である光チューブの場合と異なって、透明なコア部材75であるので伝送路の断面形状が変形することがないので、より安定した送受信が可能となる。また、強度も向上する。
【0107】
<変形例>
なお、以上の実施の形態においては、第1の導光体71および第2の導光体72が、それぞれ1本の光ケーブルよりなる場合で説明した。
【0108】
しかし、実際には1本ずつの双方向通信路では、通信路数が足りない。そこで、そのような場合には、例えば図20に示すように、複数本の光ケーブルを並設一体化した複合型の光ケーブルを使用する。
【0109】
この場合、図15の光チューブの場合と異なって、上述した図18の光ケーブルを複数本並設して偏平な状態に被覆して構成する。この場合、当然ながら、被覆部77の合成樹脂材もケーブル部と同様の十分な可撓性、柔軟性のあるものが選ばれる。
【0110】
この図20の複合型の光ケーブルは、一見フレキシブルフラットケーブルのような形態をしているが、あくまで導光体であり、電磁的なノイズを拾ったり、電磁的なノイズの発生源となるワイヤーハーネスではない。また、導電帯のような断線も生じない。
【0111】
<第4の実施の形態に係る電気炊飯器の構成>
次に、図21および図22は、この出願の発明の第4の実施の形態に係る電気炊飯器の構成を示している。
【0112】
図21のブロック図は、上述した第1の実施の形態の図5のブロック図に対応するもので、この出願の発明の第4の実施の形態に係る電気炊飯器の場合、上述した第1の実施の形態の電気炊飯器の構成における電源ケーブル36及び同電源ケーブル36に対応した制御基板60側コネクタ65、マイコン基板50側コネクタ55がそれぞれ廃止され、それに代わって制御基板60側に送電ユニット(無線送電ユニット)31およびマイコン基板50側にそれに対応する受電ユニット(無線受電ユニット)56、AC電源回路57を設け、通信部、給電部を含めて完全なワイヤレス構造(電気的な導体レス構造)にしたことを特徴とするものである。
【0113】
すなわち、この第4の実施の形態では、制御基板60側AC電源回路33の電力を送電ユニット35を介してマイコン基板50側の受電ユニット56にワイヤレス送電し、受電ユニット56から制御基板60側のAC電源回路57に供給するようにしている。AC電源回路57からの電源は、電源ケーブル36の場合と同様に蓋ヒータ23の駆動源として供給され(電源配線の図示を省略)、また制御電源回路(整流回路・定電圧電源回路)37を介して主マイコンユニット40A駆動用の動作電源、液晶パネル20i駆動用の動作電源、バックアップ用その他制御用の充電電池38充電用の電源等として配電される。
【0114】
この実施の形態の場合、上記ワイヤレス送電を行う制御基板60側の送電ユニット35とマイコン基板50側の受電ユニット56は、例えば図22に示すように、送電デバイス35Cおよび受電デバイス56AにそれぞれLC回路を採用し、高周波電源回路35Aを用いて共振作動させることにより効率よく送電するようにした磁界共振型(磁界共鳴型)のワイヤレス送電システムを構成している。
【0115】
すなわち、同構成の場合、上述した制御基板60側の送電ユニット35は、高周波電源回路35A、第1のマッチング回路(第1のインピーダンス整合回路)35B、送電デバイス35Cにより構成されている。そして、上記AC電源回路33からのAC電源は、高周波電源回路35Aを通して所定の高周波電源に変換され、この高周波電源による磁界の変化を送電デバイス35Cの送電コイルL1から、受電ユニット56側受電デバイス56Aの受電コイルL2に伝播することにより伝送する。高周波電源回路35Aから送電デバイス35Cの送電コイルL1に供給される高周波電源の周波数は、送電デバイス35Cを構成するLC回路のキャパシタンスC1により調整される。この電源周波数は、送電デバイス35Cと受電デバイス56A間の最適距離(最も伝送効率が高くなる距離)を考慮して常に相互の共振周波数(自己共振周波数)が一致するように調整される。送電コイルL1および受電コイルL2は、例えば、それぞれ空心コイルにより形成されている。第1のマッチング回路(第1のインピーダンス整合回路)35Bは、送電コイルL1の給電点におけるインピーダンス整合機能を有し、そのマッチングを図ることにより送電コイルL1の高効率な高周波伝送を実現する。
【0116】
磁界共振型(磁界共鳴型)のワイヤレス送電システムは、電磁誘導型のワイヤレス送電システムと同じ磁界結合型の送電システムであるが、上記送電デバイス35Cの送電コイルL1、受電デバイス56Aの受電コイルL2を同最適な共振距離に置くと、電磁誘導型のように磁界結合係数の影響を受けることもなく、送電コイルL1および受電コイルL2の中心位置がずれても、伝送効率が大きくは低下せず、LC共振による最大の伝送効率を得ることができる。
【0117】
受電ユニット56は、上記送信デバイス35CのLC共振回路(L1、C1)に対応したLC共振回路(L2、C2)よりなる受電デバイス56Aと、第2のマッチング回路(第2のインピーダンス整合回路)56Bと、受電した高周波電源を通常のAC電源に戻す電源変換回路56Cよりなっている。上記送電デバイス35Cから共振状態において高周波伝送されたAC電力は、受電デバイス56Aで受電され、第2のマッチング回路56Bにより受電点(負荷端)におけるインピーダンスが整合された後に電源変換回路56Cに入力されて、効率よく通常のAC電源に戻され、その後、上述したマイコン基板50側のAC電源回路57に供給される。
【0118】
ワイヤレス方式の電力送電方式(WPT)には、レーザー光、マイクロ波、超音波などを用いた放射型のもの、電磁誘導、磁界共振、環状ソレノイドなどを用いた非放射型のものがある。放射型のものの場合、給電ユニットと受電ユニットが近接した状態になくても送電効果を上げることができ、送電・受電ユニット間の位置ずれを問題にする必要もない。また、送電距離も大きい。しかし、現状の技術では、送電ロスが大きく、実用的ではない。
【0119】
一方、磁界共振型以外の電磁誘導式、環状ソレノイド式などの磁界結合方式のものの場合、送電ユニットと受電ユニットが近接した状態でないと送電効果を上げることができず、送電・受電ユニット間の位置ずれに弱く、位置ずれがあると、伝送効率が大きく低下する。したがって、すでに述べたように電気炊飯器の場合には、蓋体2が完全に閉じている場合にしか機能しないという問題があった。
【0120】
しかし、磁界結合方式であっても、上述した磁界共振式(磁界共鳴式)の場合(図22の送電装置)には、送電デバイス35Cから供給された電力エネルギーが磁気共振空間(磁気共鳴空間)を介して同じ周波数で共振している受電デバイス56Aのみに伝播する方式であり、送受電デバイス35C、56A相互の位置関係がずれていても、高効率での送電が可能となる。また、蓋体2内の送電受電デバイス35C、56A間に金属物があっても加熱されないので、安全である。
【0121】
また、図22の構成において、送電受電デバイス35C、56A間に、送電受電デバイス35C、56Aと同一の周波数で共振するLC回路よりなるレピータデバイス(中継デバイス)を設けると、さらに送電距離を延長することが可能となる。図22の構成の場合で、送電距離50~80cm程度は十分可能であり、送電効率も80~90%程度は実現することができる。
【0122】
この出願の発明の電気炊飯器の場合、上記レピータデバイス(中継デバイス)は、例えば蓋体2の後端部内側に容易に設置することができる。
【0123】
したがって、同構成によれば、蓋体2を開けた状態においても、蓋体2側の第1のマイコンユニット40A、操作スイッチ20b~20g、液晶パネル20i、充電電池38に必要な電源をワイヤレス状態で供給することができるようになる。その結果、蓋体2を開けた状態でも、液晶パネル20iや保温取り消しスイッチ20d等の各種操作スイッチ20b~20gを機能させることが可能となる。
【0124】
また、同構成を採用すると、蓋体2と炊飯器本体1との間を完全なワイヤレス状態(電線レス状態)とすることができ、電気的な接続作業が完全になくなるので、製造時における組み立て作業が著しく楽になる。その結果、誤った電源ケーブル接続作業による基板破壊などもなくなる。
【0125】
<その他の実施の形態>
なお、上述した第4の実施の形態における充電電池38に対する充電は、例えば上記ワイヤレス送電による場合だけでなく、蓋体2側にソーラーパネルを設けたり、また蓋体2内にゼーベック効果を利用した温度差発電デバイスを設けることによっても実現することができる。
【0126】
また、上述の第4の実施の形態の説明では、現在の技術で十分に実現、実施可能な磁界共振型(磁界共鳴型)のワイヤレス送電システムを採用したが、技術開発の進展状況に応じて、この出願の発明としてレーザー光、マイクロ波等を利用した放射型のワイヤレス送電システムを採用して構成しても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0127】
1:炊飯器本体
2:蓋体
3:内鍋
5:電磁誘導コイル
9:ヒンジユニット
9a:ヒンジ軸
20:銘板
40A:主マイコンユニット
40B:副マイコンユニット
50:マイコン基板
51:第1の発光部駆動手段
52:第1の発光部
53:第2の受光部
54:第2のエンコーダ
60:制御基板
61:第1の受光部
62:第1のエンコーダ
63:第2の発光部駆動手段
64:第2の発光部
71:第1の導光体
72:第2の導光体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22