(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】グミキャンディ用ミックス粉
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20240515BHJP
A23G 3/36 20060101ALI20240515BHJP
A23L 21/10 20160101ALI20240515BHJP
【FI】
A23G3/34 101
A23G3/36
A23L21/10
(21)【出願番号】P 2020165106
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390020189
【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】北中 進介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亜衣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潔
(72)【発明者】
【氏名】長田 健二
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰正
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3148380(JP,U)
【文献】国際公開第2019/082550(WO,A1)
【文献】特開2017-158526(JP,A)
【文献】特開2013-017399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジ調理用のグミキャンディ用ミックス粉であって、
糖質及び/又は水溶性食物繊維を50~95重量%、ゼラチンを4~20重量%、ソルビタン脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の乳化剤を0.01~1重量%含有する、グミキャンディ用ミックス粉。
【請求項2】
前記乳化剤がソルビタン脂肪酸エステルである、請求項1に記載のグミキャンディ用ミックス粉。
【請求項3】
さらにペクチンを0.1~2重量%含有する、請求項1又は2に記載のグミキャンディ用ミックス粉。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のグミキャンディ用ミックス粉100重量部に対して25~50重量部の水を添加し、電子レンジ調理することを特徴とする、グミキャンディの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グミキャンディ用ミックス粉に関する。詳しくは、電子レンジで簡単に調理できる家庭用グミキャンディ用ミックス粉に関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディは、糖質及びゼラチンを主体とした弾力のある食感の菓子であり、子どもにも人気のお菓子である。そこで、グミキャンディを家庭で手作りしたいという消費者の需要があり、グミキャンディを作る家庭用レシピは世の中にいくつか紹介されており、市販のジュースと砂糖とゼラチンを加熱して作るという製法であるが、この製法で得られるグミキャンディは水分値の高いゼリーに近いものばかりである。このように水分値が高い場合、市販のグミキャンディとは弾力等が異なり、また長期保存もできないため、市販のグミキャンディと同等のものにするには、30%以下の水分値となるように調理する必要がある。しかし、一般家庭の鍋とコンロを用いて加熱調理すると、所定の水分値にコントロールすることは困難であり、予め低水分にしておいて調理した場合も、原料が溶解しないでざらついてしまったり、焦げてしまったりしやすく、簡便な調理は困難であった。
【0003】
一方、家庭でできる簡便な加熱方法として、電子レンジを用いた加熱調理がある。しかし、電子レンジは内容物を局部的に加熱してしまう恐れがあり、グミキャンディの場合、容器からの吹きこぼれが発生しやすく、中でも、ゼラチンを含有する低水分値の糖液においては、より吹きこぼれが起こりやすく、電子レンジ加熱は現実的でない現状であった。
【0004】
また、電子レンジ調理用ミックスについては、これまでに電子レンジ用に適した消泡性調味料が提案されている(特許文献1)。これは粉末調味料に水を加えて電子レンジで加熱するものであるが、粉末に対する水の量は非常に多く、グミキャンディのような低水分値の系とは全く異なる。また、乳化剤の添加量は粉末に対して4重量%以上と多く、さらには塩化ナトリウム又は塩化カリウムが必須成分であり、味や物性の点でグミキャンディの用途には適用できなかった。
また、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含むことを特徴とする、ゲル状組成物に使用する焦げ付き抑制剤が提案されており、50%以下の低水分値のゲルに対して泡立ちや焦げ付きを抑制する方法が示されている(特許文献2)。しかし、これはあくまで攪拌等によって外側から生じる泡であり、電子レンジ加熱による吹きこぼれとは全く異なる。
【0005】
以上のように、電子レンジを用いて簡単に調理でき、調理中に吹きこぼれたりせず、また出来上がったグミキャンディは市販品と同様に弾力があり、長期保存もできるようなグミキャンディ用ミックス粉は課題が多いことから、実現が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平01-101870号公報
【文献】特許第4813412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電子レンジでの調理中に吹きこぼれたりせず、かつ、市販品と同じような弾力があり長期保存もできる水分値の低いグミキャンディを作るための、ミックス粉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、糖質及びゼラチンを含有するミックス粉100重量部に対して25~50重量部の水を添加し、電子レンジ加熱調理することによって、品質の安定したグミキャンディを作製し得ることを見出した。また、ミックス粉中に乳化剤を混合することで、家庭用の電子レンジで加熱調理しても吹きこぼれが顕著に抑えることができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、下記のグミキャンディ用ミックス粉及びその製造方法に関する。
(1)電子レンジ調理用のグミキャンディ用ミックス粉であって、
糖質及び/又は水溶性食物繊維を50~95重量%、ゼラチンを4~20重量%、ソルビタン脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の乳化剤を0.01~1重量%含有する、グミキャンディ用ミックス粉。
(2)前記乳化剤がソルビタン脂肪酸エステルである、前記(1)に記載のグミキャンディ用ミックス粉。
(3)さらにペクチンを0.1~2重量%含有する、前記(1)又は(2)に記載のグミキャンディ用ミックス粉。
(4)前記(1)~(3)のいずれかに記載のグミキャンディ用ミックス粉100重量部に対して25~50重量部の水を添加し、電子レンジ調理することを特徴とする、グミキャンディの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のグミキャンディ用ミックス粉を用いることで、電子レンジでの調理中に吹きこぼれたりせず、市販品と同じような弾力があり長期保存もできる水分値の低いグミキャンディを家庭で簡単に作製することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0012】
本発明において、グミキャンディ用ミックス粉(単に「粉」ともいう)は、糖質及び/又は水溶性食物繊維、及びゼラチンを主原料とするミックス粉をいう。
【0013】
前記糖質としては、例えば、砂糖、粉末水飴、粉飴、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元水飴、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、トレハロース、パラチノース、還元パラチノース等が挙げられる。
また、前記水溶性食物繊維としては、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、イヌリン等が挙げられる。
これらの糖質及び/又は水溶性食物繊維は、水溶性であれば特に限定はなく、また、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
本発明のグミキャンディ用ミックス粉中の糖質及び/又は水溶性食物繊維の含有量は、得られるグミキャンディの食感の観点から、これらの総量として50~95重量%、好ましくは70~90重量%である。
【0015】
本発明のグミキャンディ用ミックス粉において、ゼラチンとしては、動物の骨や皮に多く含まれるタンパク質であるコラーゲンを加熱・変性させて得られるものが挙げられる。前記ゼラチンの由来生物としては、豚、牛、魚などが挙げられるが、特に限定はない。なお、短時間の加熱で溶解させるためには60メッシュパス以上の細かい粒径のものであることが好ましい。
本発明のグミキャンディ用ミックス粉中のゼラチンの含有量は、得られるグミキャンディの食感の観点から、4~20重量%、好ましくは6~12重量%である。
【0016】
本発明のグミキャンディ用ミックス粉は、ソルビタン脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる一種以上の乳化剤を配合することにより、作業性や物性が著しく向上する。前記乳化剤は、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等と併用しても良い。また、電子レンジ特有の加熱時の吹きこぼれ防止においては、ソルビタン脂肪酸エステルの使用が好ましく、その中でもソルビタンモノラウレート(ラウリン酸ソルビタン)がより好ましい。本発明のグミキャンディ用ミックス粉中の乳化剤の含有量としては、0.01~1重量%であればよく、0.05~0.2重量%が好ましい。
【0017】
また、固まりやすさや食感の観点からゲル化剤としてペクチンを使用することが好ましい。本発明のグミキャンディ用ミックス粉中のペクチンの含有量は、0.1~2重量%が好ましい。
【0018】
本発明のグミキャンディ用ミックス粉には、その他に、有機酸、香料、着色料、甘味料、増粘多糖類等のゲル化剤、酸化防止剤、果汁、乳製品などの任意成分を含有してもよい。
これらの任意成分を適宜選択して物性や風味を調整することで、グミキャンディに幅広い嗜好性を付与することができる。中でも、有機酸、香料を含有させることが、得られるグミキャンディの嗜好性の面で好ましい。
尚、前記任意成分は、嗜好性や物理化学的安定性に悪影響を与えない範囲で使用すればよい。
【0019】
本発明のグミキャンディ用ミックス粉は、水を添加し、電子レンジ加熱調理することを特徴とする。
【0020】
本発明では、前記のように、ミックス粉に特定の量の水を配合することで、電子レンジでの調理中に吹きこぼれたりせず、市販品と同じような弾力があり長期保存もできる水分値の低いグミキャンディを作ることができる。
【0021】
また、本発明において、電子レンジとは、500W付近の加熱が行える電子レンジであればよく、家庭用、業務用などの種類に限定はない。
【0022】
前記のような構成を有する本発明のグミキャンディ用ミックス粉は、糖質及び/又は水溶性食物繊維、ゼラチン、ペクチン、並びに必要に応じて任意成分を添加・混合することで製造することができる。
【0023】
〔使用方法〕
本発明のグミキャンディ用ミックス粉の使用方法としては、粉100重量部に対して25~50重量部の水を添加し、電子レンジで加熱調理する。
具体的には、電子レンジ対応の容器に本発明のグミキャンディ用ミックス粉を入れ、粉100重量部に対して25~50重量部の水を添加して混合する。その後電子レンジで加熱し、得られた液をシリコン製の型等に流して、冷やし固める。
【0024】
水としては、水道水、ミネラルウォーター、アルカリイオン水など、飲用水であればよく、特に限定はない。
水は、粉100重量部に対して25~50重量部添加する。
水が25重量部未満では粉が完全に溶解せず、また、出来上がりのグミキャンディの水分値も低く、嗜好性に劣るものになってしまう。一方、水の量が50重量部を超える場合、水分値が高く、ゼリーに近い食感となり、グミキャンディ特有の弾力のある食感とならない。
電子レンジの加熱条件は特に限定はないが、例えば、500Wの出力で1~2分加熱する。
加熱後は、加熱溶解した原料液を型に流すか、加熱した容器のまま固めてもよい。
冷やし固める条件は、室温でも冷蔵庫でも冷凍庫でも特に限定されない。また、家庭であれば、氷水のはった大きめの容器に、加熱した容器を浸けて冷やしてもよい。
時間は2~24時間程度で固める。そして、その後、型からはずし、表面に砂糖や粉末オブラートをまぶすか、油を塗布する等してグミキャンディを得ることができる。
【0025】
以上のようにして得られたグミキャンディは、市販品と同じような弾力があり長期保存もできるグミキャンディとなる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0027】
(実施例1~20、比較例1~3)
<グミキャンディ用ミックス粉の作製>
表1及び2に示す配合の通り、グミキャンディ用ミックス粉を作製した。具体的には、砂糖、パラチノース、キシリトール、イヌリンから選ばれる一種以上の糖質及び/又は食物繊維、ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製「G微粉」)、ペクチン(CPケルコ社製「GENU pectin AS Confectionery-J」)、酸味料(無水クエン酸パウダー)、香料(グレープ香料)、着色料(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製「粉末サンレッドRCU」)、乳化剤を混合して作製した。乳化剤の種類は、実施例1~14については表2に示した。実施例15~20については、ソルビタンモノラウレート、比較例2、3についてはショ糖脂肪酸エステルを使用した。
【0028】
<グミキャンディの作製>
容積350mLの耐熱性容器に、上記で得られたグミキャンディ用ミックス粉を40g入れ、表1に示す割合の水を入れ(実施例1の場合、15.2g)、スプーンで混合した。その後、電子レンジで加熱した(500W 1分10秒)。得られた液をシリコン型に流し、室温で8時間放置して固めた後、型からはずして油を塗布し、グミキャンディを得た。
【0029】
<得られたグミキャンディの評価>
(膨張度)
加熱前の液面に対し、電子レンジ加熱によって液面が何倍相当まで上昇したかを表1に示した。
なお、乳化剤を使用しない比較例1においては、7倍以上の膨張度で、容器から吹きこぼれた。
実際の使用を想定した場合、その後の液の流しやすさや作業性の点で5倍以下の膨張度である方が好ましい。
【0030】
(官能評価)
得られたグミキャンディを下記の指標に従って評価した。
◎:食感・味ともに非常に良い。
○:食感・味ともに良い。
△:べたつきややわらかさ等はあるものの、グミキャンディになった。
-:途中で吹きこぼれてしまった。
【0031】
実施例1~20で作製したグミキャンディ用ミックス粉を電子レンジで加熱調理したところ、吹きこぼれや焦げは発生せず、市販品と同じような弾力があり長期保存もできる水分値の低いグミキャンディとなり、食感・味の点でも、市販品のグミキャンディと同じような嗜好性の高いものとなった。
【0032】
【0033】