(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】機械式ストッパ装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
B25J19/00 C
(21)【出願番号】P 2020182617
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 崇之
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-166579(JP,A)
【文献】特開平4-275894(JP,A)
【文献】特開2019-56418(JP,A)
【文献】米国特許第5193658(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定回転軸心を中心として第1部材と第2部材とが相対回転するロボットの回転軸部に設けられ、前記第1部材と前記第2部材との機械的な回転限界を設定する機械式ストッパ装置であって、
前記第1部材に設けられ、前記相対回転により所定軌道を相対移動する第1ストッパと、
前記所定軌道から外れた位置に配置されて前記第2部材に取り付けられた被取付部、及び前記被取付部の所定位置から前記所定軌道に交差する位置まで延びて前記相対回転により前記第1ストッパに当接可能である当接部を備える第2ストッパと、
前記所定軌道から外れた位置に配置され、前記第1ストッパと前記当接部との衝突による前記被取付部の回転によって前記所定軌道に垂直な方向へ変形して衝撃を緩和する第1緩衝部と、
を備える機械式ストッパ装置。
【請求項2】
前記第1緩衝部は、前記被取付部において前記当接部が延びている方向と反対方向の端面と前記第2部材との間に配置されている、請求項1に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項3】
前記所定軌道から外れた位置に配置され、前記第1ストッパと前記当接部との衝突による前記所定軌道に平行な方向への前記被取付部の変位によって前記所定軌道に平行な方向へ変形して衝撃を緩和する第2緩衝部を備える、請求項1又は2に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項4】
前記第2緩衝部は、前記被取付部において前記所定軌道が延びる方向の端面と前記第2部材との間に配置されている、請求項3に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項5】
前記被取付部には、前記当接部が延びている方向と反対方向へ前記被取付部を貫通する第1貫通孔が形成され、
前記第1緩衝部には、前記当接部が延びている方向と反対方向へ前記第1緩衝部を貫通する第2貫通孔が形成され、
前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通され、前記被取付部及び前記第1緩衝部を前記第2部材に固定する固定部材を備え、
前記所定軌道に平行な方向において、前記第1貫通孔と前記固定部材との隙間は、前記第1ストッパと前記当接部との衝突時に想定される前記被取付部の変位量よりも広く設定されている、請求項4に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項6】
前記第1緩衝部と前記第2緩衝部とは、1つの部材により一体に形成されている、請求項3~5のいずれか1項に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項7】
前記第1緩衝部は、前記被取付部において前記当接部が延びている方向と反対方向の端面と前記第2部材との間、及び前記被取付部において前記当接部が延びている方向の端面と前記第2部材との間に配置されている、請求項1に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項8】
前記所定軌道から外れた位置に配置され、前記第1ストッパと前記当接部との衝突による前記所定軌道に平行な方向への前記被取付部の変位によって前記所定軌道に平行な方向へ変形して衝撃を緩和する第2緩衝部を備え、
前記第2部材は、前記被取付部に対して前記当接部と反対側から前記第1緩衝部に当接し且つ前記第2緩衝部に前記所定軌道に平行な方向から当接する内側部と、前記被取付部に対して前記当接部の側から前記第1緩衝部に当接し且つ前記第2緩衝部に前記所定軌道に平行な方向から当接する外側部とを含む、請求項7に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項9】
前記第2部材は、前記被取付部に対して前記当接部と反対側から前記第1緩衝部に当接する内側部と、前記被取付部に対して前記当接部の側から前記第1緩衝部に当接する外側部とを含み、
前記被取付部には、前記所定軌道及び前記当接部が延びる方向に垂直に延びる溝又は孔である係合部が形成され、
前記係合部に挿入され、前記第2部材に固定された軸部材を備える、請求項7に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項10】
前記第1ストッパにおける前記当接部に対向する平面である第1対向面は、前記所定軌道に垂直に配置され、
前記当接部における前記第1ストッパに対向する平面である第2対向面は、前記当接部の先端側ほど前記第1対向面から離れるように傾斜している、請求項1~9のいずれか1項に記載の機械式ストッパ装置。
【請求項11】
前記当接部が延びている方向において、前記第1ストッパの長さは前記第2ストッパの長さよりも長い、請求項1~10のいずれか1項に記載の機械式ストッパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに適用され、緩衝部材を備える機械式ストッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、突出したストッパが設けられた可動部材と、異常動作時にストッパが衝突するストッパ受が設けられた固定部材と、ストッパ受のストッパに対向する対向面に設けられて衝突による衝撃を緩和する緩衝部材と、を備える機械式ストッパ装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の機械式ストッパ装置において、より大きな衝撃を吸収可能にしようとすると、緩衝部材をより大きくする必要がある。その場合、緩衝部材を大きくした分だけ、可動部材の可動範囲(2つの部材の相対回転可能範囲)が狭くなることが避けられない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、機械式ストッパ装置において、2つの部材の相対回転可能範囲が狭くなることを抑制しつつ、より大きな衝撃を吸収可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
所定回転軸心を中心として第1部材と第2部材とが相対回転するロボットの回転軸部に設けられ、前記第1部材と前記第2部材との機械的な回転限界を設定する機械式ストッパ装置であって、
前記第1部材に設けられ、前記相対回転により所定軌道を相対移動する第1ストッパと、
前記所定軌道から外れた位置に配置されて前記第2部材に取り付けられた被取付部、及び前記被取付部の所定位置から前記所定軌道に交差する位置まで延びて前記相対回転により前記第1ストッパに当接可能である当接部を備える第2ストッパと、
前記所定軌道から外れた位置に配置され、前記第1ストッパと前記当接部との衝突による前記被取付部の回転によって前記所定軌道に垂直な方向へ変形して衝撃を緩和する第1緩衝部と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、ロボットの回転軸部において、所定回転軸心を中心として第1部材と第2部材とが相対回転する。機械式ストッパ装置は、ロボットの回転軸部に設けられ、前記第1部材と前記第2部材との機械的な回転限界を設定する。
【0008】
ここで、第1ストッパは、前記第1部材に設けられ、前記相対回転により所定軌道を相対移動する。第2ストッパは、前記所定軌道から外れた位置に配置されて前記第2部材に取り付けられた被取付部を備えている。被取付部は、前記所定軌道から外れた位置に配置されているため、第1ストッパに当接(衝突)しない。第2ストッパは、前記被取付部の所定位置から前記所定軌道に交差する位置まで延びて前記相対回転により前記第1ストッパに当接可能である当接部を備えている。このため、第1ストッパが第2ストッパの当接部に当接(衝突)すると、被取付部の一部を支点として当接部及び被取付部を回転させるモーメントが発生する。
【0009】
そして、第1緩衝部は、前記第1ストッパと前記当接部との衝突による前記被取付部の回転によって前記所定軌道に垂直な方向へ変形して衝撃を緩和する。このため、第1ストッパと第2ストッパとの衝突による衝撃を、第1緩衝部により緩和することができる。さらに、第1緩衝部は、前記所定軌道から外れた位置に配置されている。したがって、第1緩衝部をより大きくしてより大きな衝撃を吸収可能にしたとしても、第1部材及び第2部材の相対回転可能範囲が狭くなることを抑制することができる。
【0010】
第2の手段では、前記第1緩衝部は、前記被取付部において前記当接部が延びている方向と反対方向の端面と前記第2部材との間に配置されている。こうした構成によれば、被取付部の一部を支点として当接部及び被取付部を回転させるモーメントが発生した際に、前記被取付部において前記当接部が延びている方向と反対方向の端面が第2部材に衝突して第2部材を損傷することを、第1緩衝部により抑制することができる。
【0011】
第1ストッパが第2ストッパの当接部に当接(衝突)すると、第2ストッパを所定軌道に平行な方向へ変位させる力が発生する。
【0012】
この点、第3の手段では、前記所定軌道から外れた位置に配置され、前記第1ストッパと前記当接部との衝突による前記所定軌道に平行な方向への前記被取付部の変位によって前記所定軌道に平行な方向へ変形して衝撃を緩和する第2緩衝部を備える。
【0013】
上記構成によれば、第1ストッパと第2ストッパとの衝突による衝撃を、第2緩衝部により緩和することができる。さらに、第2緩衝部は、前記所定軌道から外れた位置に配置されている。したがって、第2緩衝部をより大きくしてより大きな衝撃を吸収可能にしたとしても、第1部材及び第2部材の相対回転可能範囲が狭くなることを抑制することができる。しかも、機械式ストッパ装置が第1緩衝部及び第2緩衝部を備えることによって、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。
【0014】
第4の手段では、前記第2緩衝部は、前記被取付部において前記所定軌道が延びる方向の端面と前記第2部材との間に配置されている。こうした構成によれば、前記所定軌道に平行な方向へ前記被取付部が変位した際に、被取付部において所定軌道に平行な方向の端面が第2部材に衝突して第2部材を損傷することを、第2緩衝部により抑制することができる。
【0015】
第5の手段では、前記被取付部には、前記当接部が延びている方向と反対方向へ前記被取付部を貫通する第1貫通孔が形成され、前記第1緩衝部には、前記当接部が延びている方向と反対方向へ前記第1緩衝部を貫通する第2貫通孔が形成され、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通され、前記被取付部及び前記第1緩衝部を前記第2部材に固定する固定部材を備え、前記所定軌道に平行な方向において、前記第1貫通孔と前記固定部材との隙間は、前記第1ストッパと前記当接部との衝突時に想定される前記被取付部の変位量よりも広く設定されている。
【0016】
上記構成によれば、被取付部に形成された第1貫通孔及び第1緩衝部に形成された第2貫通孔に固定部材が挿通され、前記被取付部及び前記第1緩衝部が前記第2部材に固定されている。ここで、前記所定軌道に平行な方向において、前記第1貫通孔と前記固定部材との隙間が狭いと、前記第1ストッパと前記当接部との衝突時に被取付部が固定部材に衝突して固定部材が損傷するおそれがある。
【0017】
この点、前記所定軌道に平行な方向において、前記第1貫通孔と前記固定部材との隙間は、前記第1ストッパと前記当接部との衝突時に想定される前記被取付部の変位量よりも広く設定されている。したがって、前記第1ストッパと前記当接部との衝突時に被取付部が固定部材に衝突することを抑制することができ、固定部材が損傷することを抑制することができる。
【0018】
第6の手段では、前記第1緩衝部と前記第2緩衝部とは、1つの部材により一体に形成されている。こうした構成によれば、第1緩衝部と第2緩衝部とを別々に製造する手間、及び第1緩衝部と第2緩衝部とを別々に配置する手間を減らすことができる。
【0019】
第7の手段では、前記第1緩衝部は、前記被取付部において前記当接部が延びている方向と反対方向の端面と前記第2部材との間、及び前記被取付部において前記当接部が延びている方向の端面と前記第2部材との間に配置されている。
【0020】
上記構成によれば、前記第1緩衝部は、前記被取付部において前記当接部が延びている方向と反対方向の端面と前記第2部材との間に加えて、前記被取付部において前記当接部が延びている方向の端面と前記第2部材との間に配置されている。このため、機械式ストッパ装置が、前記被取付部に対して両側に第1緩衝部を備えることによって、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。
【0021】
第8の手段では、前記所定軌道から外れた位置に配置され、前記第1ストッパと前記当接部との衝突による前記所定軌道に平行な方向への前記被取付部の変位によって前記所定軌道に平行な方向へ変形して衝撃を緩和する第2緩衝部を備え、前記第2部材は、前記被取付部に対して前記当接部と反対側から前記第1緩衝部に当接し且つ前記第2緩衝部に前記所定軌道に平行な方向から当接する内側部と、前記被取付部に対して前記当接部の側から前記第1緩衝部に当接し且つ前記第2緩衝部に前記所定軌道に平行な方向から当接する外側部とを含む。
【0022】
上記構成によれば、機械式ストッパ装置が第1緩衝部及び第2緩衝部を備えることによって、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。そして、前記被取付部に対して前記当接部と反対側から前記第1緩衝部に当接し且つ前記第2緩衝部に前記所定軌道に平行な方向から当接する内側部により、第1緩衝部及び第2緩衝部を介して被取付部を支持することができる。また、前記被取付部に対して前記当接部の側から前記第1緩衝部に当接し且つ前記第2緩衝部に前記所定軌道に平行な方向から当接する外側部により、第1緩衝部及び第2緩衝部を介して被取付部を支持することができる。
【0023】
第9の手段では、前記第2部材は、前記被取付部に対して前記当接部と反対側から前記第1緩衝部に当接する内側部と、前記被取付部に対して前記当接部の側から前記第1緩衝部に当接する外側部とを含み、前記被取付部には、前記所定軌道及び前記当接部が延びる方向に垂直に延びる溝又は孔である係合部が形成され、前記係合部に挿入され、前記第2部材に固定された軸部材を備える。
【0024】
上記構成によれば、前記被取付部に対して前記当接部と反対側から前記第1緩衝部に当接する内側部と、前記被取付部に対して前記当接部の側から前記第1緩衝部に当接する外側部とにより、第1緩衝部を介して被取付部を支持することができる。そして、前記被取付部には、前記所定軌道及び前記当接部が延びる方向に垂直に延びる溝又は孔である係合部が形成されている。機械式ストッパ装置は、前記係合部に挿入され、前記第2部材に固定された軸部材を備えている。このため、第1ストッパが第2ストッパの当接部に当接(衝突)して当接部及び被取付部を回転させるモーメントが発生した場合に、軸部材を中心として当接部及び被取付部を回転させることができる。ここで、第1緩衝部は、前記第1ストッパと前記当接部との衝突による前記被取付部の回転によって前記所定軌道に垂直な方向へ変形して衝撃を緩和する。このため、第1ストッパと第2ストッパとの衝突による衝撃を、第1緩衝部により緩和することができる。
【0025】
第1ストッパが鋳物で形成されている場合、第1ストッパの形状や寸法にばらつきが生じることがある。このため、第1ストッパと当接部とが当接(衝突)する位置がばらついて、衝突時に被取付部を回転させるモーメントが想定したモーメントからずれるおそれがある。この場合、衝突による衝撃を第1緩衝部により適切に吸収できないおそれがある。
【0026】
この点、第10の手段では、前記第1ストッパにおける前記当接部に対向する平面である第1対向面は、前記所定軌道に垂直に配置され、前記当接部における前記第1ストッパに対向する平面である第2対向面は、前記当接部の先端側ほど前記第1対向面から離れるように傾斜している。こうした構成によれば、第1ストッパの形状や寸法にばらつきが生じたとしても、第1ストッパの第1対向面の被取付部側の端部が当接部に当接し易くなる。このため、第1ストッパと当接部とが当接(衝突)する位置を安定させることができる。したがって、衝突時に被取付部を回転させるモーメントが想定したモーメントからずれることを抑制することができ、衝突による衝撃を第1緩衝部により適切に吸収することができる。さらに、機械式ストッパ装置が第2緩衝部を備える場合には、第2対向面の傾斜角度を調節することにより、衝突による衝撃を第1緩衝部と第2緩衝部とに割り振る配分を調節することができる。
【0027】
第11の手段では、前記当接部が延びている方向において、前記第1ストッパの長さは前記第2ストッパの長さよりも長い。こうした構成によれば、前記当接部が延びている方向において、第1ストッパと第1部材との接続部分の長さを長くすることきができる。したがって、第1ストッパと第2ストッパの当接部との衝突時に、第1ストッパが破損することを抑制することができる。なお、第2ストッパは、衝突時に破損したとしても取り替えが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態の機械式ストッパ装置の斜視図。
【
図4】第2実施形態の機械式ストッパ装置の模式図。
【
図5】第3実施形態の機械式ストッパ装置の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、垂直多関節型のロボットの関節(回転軸部)に設けられた機械式ストッパ装置に具現化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1に示すように、ロボットは、例えば6軸の垂直多関節型ロボットとして構成されている。ロボットは、ベース11(基台)、ショルダ部12、下アーム(以下図示略)、第1上アーム、第2上アーム、手首部、及びフランジを備えている。ショルダ部12は、ベース11により、図示しない第1軸線J1(所定回転軸心)を中心として回転可能に支持されている。以下では、
図1の上下左右方向をロボットの上下左右方向として説明するが、ロボットの設置方向はこれに限られない。
【0031】
ベース11は、筐体20等を備えている。筐体20(第2部材)は、例えばアルミ合金(金属)の鋳物により形成されている。
【0032】
ショルダ部12は、筐体60等を備えている。筐体60(第1部材)は、例えばアルミ合金(金属)の鋳物により形成されている。
【0033】
機械式ストッパ装置30は、筐体20と筐体60との機械的な回転限界を設定している。以下、機械式ストッパ装置30の構成を詳細に説明する。
【0034】
機械式ストッパ装置30は、第1ストッパ31、第2ストッパ41、緩衝部材51等を備えている。
【0035】
第1ストッパ31は、例えばアルミ合金(金属)の鋳物により形成されており、筐体60の鋳造時に筐体60と一体成形されている。第1ストッパ31は、筐体60の外周面から四角柱状に突出している。第1ストッパ31の長手方向は、第1軸線J1と平行になっている。
【0036】
図2は機械式ストッパ装置30の平面図であり、
図3は
図2のIII-III線断面図である。
【0037】
ショルダ部12が第1軸線J1を中心として回転することにより、第1ストッパ31は円状(環状)の所定軌道Wを移動する。すなわち、筐体20と筐体60とが相対回転することにより、第1ストッパ31は所定軌道Wを相対移動する。
【0038】
第2ストッパ41は、例えばアルミ合金(金属)により、「T」字状に形成されている。詳しくは、第2ストッパ41は、所定軌道Wに沿って全体が円弧状に湾曲している。第2ストッパ41は、「T」字の横棒に対応する被取付部42と、「T」字の縦棒に対応する当接部46とを備えている。第2ストッパ41は、被取付部42が下側になり、当接部46が上側になるように筐体20に取り付けられている。
【0039】
被取付部42の長手方向の両端部には、ボルト43を挿通する貫通孔42a(第1貫通孔)、及びボルト43の頭部を収納する座繰り穴42b(第1貫通孔)が形成されている。
【0040】
筐体20には、被取付部42及び後述する緩衝部材51を収納する溝21が形成されている。溝21は、被取付部42の形状に対応して全体が円弧状に湾曲している。
【0041】
緩衝部材51は、例えばゴムや樹脂等により、溝形(「コ」字状)に形成されている。緩衝部材51は、被取付部42及び溝21の形状に対応して全体が円弧状に湾曲している。緩衝部材51は、被取付部42の下側(当接部46と反対側)に配置される底部51aと、被取付部42の左右側に配置される側部51bとを備えている。すなわち、底部51aと側部51bとは、1つの部材(緩衝部材51)により一体に形成されている。底部51a(第1緩衝部)は、被取付部42において当接部46が延びている方向と反対方向の端面と筐体20との間に配置されている。側部51b(第2緩衝部)は、被取付部42において所定軌道Wが延びる方向の端面と筐体20との間に配置されている。
【0042】
底部51aには、当接部46が延びている方向と反対方向へ底部51aを貫通する貫通孔51c(第2貫通孔)が形成されている。貫通孔51cには、カラー44が収納されている。カラー44は、例えば金属により、円環状に形成されている。カラー44の厚さは、底部51aの厚さよりも薄くなっている。ボルト43(固定部材)は、座繰り穴42b、貫通孔42a、及び貫通孔51cに挿通され、筐体20に形成された雌ねじ部にねじ込まれることで、被取付部42及び底部51a(緩衝部材51)を筐体20に固定している。このとき、カラー44よりも厚い底部51aが被取付部42により圧縮された後、被取付部42がカラー44に当接した状態で、ボルト43の締め付け荷重ひいては、第2ストッパ41の取り付け高さが管理される。
【0043】
被取付部42は、所定軌道Wから外れた位置に配置されて筐体20に取り付けられている。当接部46は、被取付部42の第1ストッパ31側において長手方向の中央(所定位置)から所定軌道Wに交差する位置まで延びている。これにより、当接部46は、筐体20と筐体60との相対回転により、第1ストッパ31に当接可能になっている。
【0044】
第1ストッパ31が当接部46に当接(衝突)すると、被取付部42において所定軌道Wに平行な方向への移動を規制する部分(被取付部42の一部)を支点として、当接部46及び被取付部42を回転させるモーメントが発生する。このとき、底部51aは、第1ストッパ31と当接部46との衝突による被取付部42の回転によって下方向(所定軌道Wに垂直な方向)へ変形して衝撃を緩和する。
【0045】
また、側部51bは、所定軌道Wから外れた位置に配置され、第1ストッパ31と当接部46との衝突による所定軌道Wに平行な方向への被取付部42の変位によって、所定軌道Wに平行な方向へ変形して衝撃を緩和する。ここで、所定軌道Wに平行な方向において、座繰り穴42b及び貫通孔42aとボルト43との隙間は、第1ストッパ31と当接部46との衝突時に想定される被取付部42の変位量よりも広く設定されている。
【0046】
第1ストッパ31は鋳物で形成されているため、第1ストッパ31の形状や寸法にばらつきが生じることがある。このため、第1ストッパ31と当接部46とが当接(衝突)する位置がばらついて、衝突時に被取付部42を回転させるモーメントが想定したモーメントからずれるおそれがある。この場合、衝突による衝撃を緩衝部材51により適切に吸収できないおそれがある。
【0047】
そこで、第1ストッパ31における当接部46に対向する平面である第1対向面31aは、所定軌道Wに垂直に配置されている。当接部46における第1ストッパ31に対向する平面である第2対向面46aは、当接部46の先端側ほど第1対向面31aから離れるように傾斜している。このため、第1ストッパ31の形状や寸法にばらつきが生じたとしても、第1ストッパ31の第1対向面31aの被取付部42側の端部31bが当接部46に当接し易くなる。また、第2対向面46aの傾斜角度を調節することにより、衝突による衝撃を底部51aと側部51bとに割り振る配分が調節されている。
【0048】
当接部46が延びている方向(上下方向)において、第1ストッパ31の長さL1は第2ストッパ41の長さL2よりも長く設定されている。すなわち、当接部46が延びている方向において、第1ストッパ31の長さL1は、当接部46と重複する部分の長さL3よりも長く、望ましくは当接部46の長さL4よりも長く、さらに望ましくは第2ストッパ41の長さL2よりも長く設定されている。これにより、当接部46が延びている方向において、第1ストッパ31と筐体60との接続部分の長さL1が長く設定されている。
【0049】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0050】
・底部51aは、第1ストッパ31と当接部46との衝突による被取付部42の回転によって所定軌道Wに垂直な方向へ変形して衝撃を緩和する。このため、第1ストッパ31と第2ストッパ41との衝突による衝撃を、底部51aにより緩和することができる。さらに、底部51aは、所定軌道Wから外れた位置に配置されている。したがって、底部51aをより大きくしてより大きな衝撃を吸収可能にしたとしても、筐体60及び筐体20の相対回転可能範囲が狭くなることを抑制することができる。
【0051】
・底部51aは、被取付部42において当接部46が延びている方向と反対方向の端面と筐体20との間に配置されている。こうした構成によれば、被取付部42の一部を支点として当接部46及び被取付部42を回転させるモーメントが発生した際に、被取付部42において当接部46が延びている方向と反対方向の端面が筐体20に衝突して筐体20を損傷することを、底部51aにより抑制することができる。
【0052】
・機械式ストッパ装置30は、所定軌道Wから外れた位置に配置され、第1ストッパ31と当接部46との衝突による所定軌道Wに平行な方向への被取付部42の変位によって所定軌道Wに平行な方向へ変形して衝撃を緩和する側部51bを備えている。上記構成によれば、第1ストッパ31と第2ストッパ41との衝突による衝撃を、側部51bにより緩和することができる。さらに、側部51bは、所定軌道Wから外れた位置に配置されている。したがって、側部51bをより大きくしてより大きな衝撃を吸収可能にしたとしても、筐体60及び筐体20の相対回転可能範囲が狭くなることを抑制することができる。しかも、機械式ストッパ装置30が底部51a及び側部51bを備えることによって、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。
【0053】
・側部51bは、被取付部42において所定軌道Wが延びる方向の端面と筐体20との間に配置されている。こうした構成によれば、所定軌道Wに平行な方向へ被取付部42が変位した際に、被取付部42において所定軌道Wに平行な方向の端面が筐体20に衝突して筐体20を損傷することを、側部51bにより抑制することができる。
【0054】
・所定軌道Wに平行な方向において、座繰り穴42b及び貫通孔42aとボルト43との隙間は、第1ストッパ31と当接部46との衝突時に想定される被取付部42の変位量よりも広く設定されている。したがって、第1ストッパ31と当接部46との衝突時に被取付部42がボルト43に衝突することを抑制することができ、ボルト43が損傷することを抑制することができる。
【0055】
・底部51aと側部51bとは、1つの部材(緩衝部材51)により一体に形成されている。こうした構成によれば、底部51aと側部51bとを別々に製造する手間、及び底部51aと側部51bとを別々に配置する手間を減らすことができる。
【0056】
・第1ストッパ31における当接部46に対向する平面である第1対向面31aは、所定軌道Wに垂直に配置され、当接部46における第1ストッパ31に対向する平面である第2対向面46aは、当接部46の先端側ほど第1対向面31aから離れるように傾斜している。こうした構成によれば、第1ストッパ31の形状や寸法にばらつきが生じたとしても、第1ストッパ31の第1対向面31aの被取付部42側の端部31bが当接部46に当接し易くなる。このため、第1ストッパ31と当接部46とが当接(衝突)する位置を安定させることができる。したがって、衝突時に被取付部42を回転させるモーメントが想定したモーメントからずれることを抑制することができ、衝突による衝撃を底部51aにより適切に吸収することができる。さらに、機械式ストッパ装置30は側部51bを備えているため、第2対向面46aの傾斜角度を調節することにより、衝突による衝撃を底部51aと側部51bとに割り振る配分を調節することができる。
【0057】
・当接部46が延びている方向において、第1ストッパ31の長さL1は第2ストッパ41の長さL2よりも長い。こうした構成によれば、当接部46が延びている方向において、第1ストッパ31と筐体60との接続部分の長さを長くすることきができる。したがって、第1ストッパ31と第2ストッパ41の当接部46との衝突時に、第1ストッパ31が破損することを抑制することができる。なお、第2ストッパ41は、衝突時に破損したとしても取り替えが容易である。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、被取付部の下側と上側とに緩衝部材が設けられている。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0059】
図4に示すように、機械式ストッパ装置130は、第1ストッパ31、第2ストッパ141、及び緩衝部材151,153等を備えている。
【0060】
第2ストッパ141は、上記座繰り穴42b及び貫通孔42aが形成されていないことを除いて、第1実施形態の第2ストッパ41と同様の構成を備えている。
【0061】
緩衝部材151は、被取付部142の下側(当接部146と反対側)に配置される底部151aと、被取付部42の左右側に配置される側部151bとを備えている。すなわち、底部151aと側部151bとは、1つの部材(緩衝部材151)により一体に形成されている。底部151a(第1緩衝部)は、被取付部142において当接部146が延びている方向と反対方向の端面と筐体120との間に配置されている。側部151b(第2緩衝部)は、被取付部142において所定軌道Wが延びる方向の端面と筐体120及び取付部材123との間に配置されている。
【0062】
緩衝部材153は、被取付部142の上側(当接部146の側)に配置される底部153aと、被取付部142の左右側に配置される側部153bとを備えている。すなわち、底部153aと側部153bとは、1つの部材(緩衝部材153)により一体に形成されている。底部153a(第1緩衝部)は、被取付部142において当接部146が延びている方向の端面と取付部材123との間に配置されている。側部153b(第2緩衝部)は、被取付部142において所定軌道Wが延びる方向の端面と取付部材123との間に配置されている。
【0063】
筐体120(内側部、第2部材)は、被取付部142に対して当接部146と反対側から底部151aに当接し、且つ側部151bに所定軌道Wに平行な方向から当接している。取付部材123(外側部、第2部材)は、被取付部142に対して当接部146の側から底部153aに当接し、且つ側部153bに所定軌道Wに平行な方向から当接している。そして、ボルト143により、取付部材123が筐体120に固定されている。
【0064】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。ここでは、第1実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0065】
・底部151a,153a(緩衝部材151,153)は、被取付部142において当接部146が延びている方向と反対方向の端面と筐体120との間に加えて、被取付部142において当接部146が延びている方向の端面と取付部材123との間に配置されている。このため、機械式ストッパ装置130が、被取付部142に対して両側に底部151a,153aを備えることによって、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。
【0066】
・機械式ストッパ装置130が底部151a及び側部151b、並びに底部153a及び側部153bを備えることによって、より大きな衝撃を吸収可能にすることができる。そして、被取付部142に対して当接部146と反対側から底部151aに当接し且つ側部151bに所定軌道Wに平行な方向から当接する筐体120により、底部151a及び側部151bを介して被取付部142を支持することができる。また、被取付部142に対して当接部146の側から底部153aに当接し且つ側部153bに所定軌道Wに平行な方向から当接する取付部材123により、底部153a及び側部153bを介して被取付部142を支持することができる。
【0067】
なお、筐体120と取付部材123とは、ボルト143による締結に限らず、溶接や、接着剤による接着で固定することもできる。
【0068】
(第3実施形態)
第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、被取付部の下側と上側とに緩衝部材が設けられ、被取付部の左右側には緩衝部材が設けられていない。なお、第1,第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0069】
図5に示すように、機械式ストッパ装置230は、第1ストッパ31、第2ストッパ241、緩衝部材251,253、及び軸部材247等を備えている。
【0070】
第2ストッパ141は、溝242aが形成されていることを除いて、第2実施形態の第2ストッパ141と同様の構成を備えている。
【0071】
緩衝部材251(第1緩衝部)は、被取付部242の下側(当接部246と反対側)に配置されている。緩衝部材251は、被取付部242において当接部246が延びている方向と反対方向の端面と筐体120との間に配置されている。
【0072】
緩衝部材253(第1緩衝部)は、被取付部242の上側(当接部246の側)に配置されている。緩衝部材253は、被取付部242において当接部246が延びている方向の端面と取付部材123との間に配置されている。
【0073】
筐体120(内側部、第2部材)は、被取付部242に対して当接部246と反対側から緩衝部材251に当接している。取付部材123(外側部、第2部材)は、被取付部242に対して当接部246の側から緩衝部材253に当接している。そして、ボルト143により、取付部材123が筐体120に固定されている。
【0074】
被取付部242には、所定軌道W及び当接部246が延びる方向に垂直(前後方向)に延びる溝242aが形成されている。溝242a(係合部)の断面形状は、正方形(矩形)である。
【0075】
軸部材247は、例えば剛性の高い金属により、円柱状に形成されている。軸部材247は、溝242aに挿入(係合)され、筐体120に固定されている。軸部材247の直径は、溝242aの断面形状である正方形の一辺の長さと略等しくなっている。
【0076】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。ここでは、第1,第2実施形態と異なる利点のみを述べる。
【0077】
・被取付部242に対して当接部246と反対側から緩衝部材251に当接する筐体120と、被取付部242に対して当接部246の側から緩衝部材253に当接する取付部材123とにより、緩衝部材251,253を介して被取付部242を支持することができる。
【0078】
・被取付部242には、所定軌道W及び当接部246が延びる方向に垂直に延びる溝242aが形成されている。機械式ストッパ装置230は、溝242aに挿入され、筐体120に固定された軸部材247を備えている。このため、第1ストッパ31が第2ストッパ241の当接部246に当接(衝突)して当接部246及び被取付部242を回転させるモーメントが発生した場合に、軸部材247を中心として当接部246及び被取付部242を回転させることができる。ここで、緩衝部材251,253は、第1ストッパ31と当接部246との衝突による被取付部242の回転によって所定軌道Wに垂直な方向へ変形して衝撃を緩和する。このため、第1ストッパ31と第2ストッパ241との衝突による衝撃を、緩衝部材251,253により緩和することができる。なお、被取付部242に、溝242aに代えて、所定軌道W及び当接部246が延びる方向に垂直に延びる孔(係合部)を形成することもできる。
【0079】
また、第1~第3実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1~第3実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0080】
・当接部46,146,246が延びている方向において、第1ストッパ31の長さL1を、第2ストッパ41,141,241の長さL2よりも短く設定したり、当接部46,146,246の長さL4よりも短く設定したりすることもできる。
【0081】
・当接部46(146,246)における第1ストッパ31に対向する平面である第2対向面46aを所定軌道Wに垂直に配置し、第1ストッパ31における当接部46に対向する平面である第1対向面31aを、第1ストッパ31の被取付部42側ほど第2対向面46aから離れるように傾斜させてもよい。こうした構成によっても、第1実施形態に準じた作用効果を奏することができる。また、第1対向面31aと第2対向面46aとを平行に配置することもできる。また、第1ストッパ31の形状は、四角柱状に限らず、任意の形状を採用することができる。
【0082】
・機械式ストッパ装置30は、ベース11とショルダ部12とを連結する関節に限らず、ロボットの任意の関節に適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
20…筐体(第2部材)、30…機械式ストッパ装置、31…第1ストッパ、41…第2ストッパ、42…被取付部、46…当接部、51…緩衝部材、51a…底部(第1緩衝部)、51b…側部(第2緩衝部)、60…筐体(第1部材)、120…筐体(第2部材)、123…取付部材(第2部材)、130…機械式ストッパ装置、141…第2ストッパ、142…被取付部、146…当接部、151…緩衝部材、151a…底部(第1緩衝部)、151b…側部(第2緩衝部)、153…緩衝部材、153a…底部(第1緩衝部)、153b…側部(第2緩衝部)、230…機械式ストッパ装置、241…第2ストッパ、242…被取付部、246…当接部、251…緩衝部材(第1緩衝部)、253…緩衝部材(第1緩衝部)。