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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】流量制御弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20240515BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
F02M25/08 301H
F16K31/06 385A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021032081
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022133152
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】宇野 靖彦
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-118281(JP,A)
【文献】特開2008-291916(JP,A)
【文献】特開2013-221537(JP,A)
【文献】特開2021-038738(JP,A)
【文献】実開昭56-081264(JP,U)
【文献】国際公開第2017/064952(WO,A1)
【文献】米国特許第5143120(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流入する流入通路と、流体を流出する流出通路と、この流出通路と前記流入通路との間に形成される通路室と、この通路室の前記流出通路側に形成され流体流量を制限するオリフィス絞り部と、前記通路室に形成される弁座とを備えるハウジングと、
前記弁座より前記流出通路側に配置され、前記オリフィス絞り部と協働して流体流量を制御する第1弁体と、
前記弁座より前記通路室側に配置され、前記弁座と当接離脱して流体流量を制御する第2弁体と、
通電により励磁する第1コイルと、この第1コイル通電時に磁気回路を形成する第1ステータコアと、この第1ステータコアと磁気ギャップを介して対向配置され前記第1コイルの励磁により移動するとともに移動に伴う変位を前記第1弁体に伝達する第1ムービングコアとを備え、前記第1コイルの通電時のオン位置と前記第1コイルの非通電時のオフ位置との切り替えを行う第1電磁弁と、
通電により励磁する第2コイルと、この第2ステータコアと磁気ギャップを介して対向配置され前記第2コイルの励磁により移動するとともに移動に伴う変位を前記第2弁体に伝達する第2ムービングコアとを備え、前記第2コイルの通電時と前記第2コイルの非通電時のデューティ比制御を行う第2電磁弁とを備え、
前記第2弁体には前記通路室とこの第2電磁弁とを連通する連通穴を設けると共に、
前記ハウジングの前記通路室に配置され、前記第2弁体が前記弁座より離脱した状態で前記流入通路と前記流出通路との間を連通状態とすると共に、前記第2弁体が前記弁座と当接した状態で前記流入通路と前記流出通路との間を非連通状態とするダイヤフラムとを備えることを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
前記第1弁体は、前記オリフィス絞り部と協働して流体流量を制御する弁体絞り部と、流体を通す弁体通路部とを備え、
前記第1電磁弁が前記オン位置にある時、前記第1弁体は前記弁体絞り部が前記オリフィス絞り部から離れて流体は前記弁体絞り部の外周及び前記弁体通路部を流れ、
前記第1電磁弁が前記オフ位置にある時、前記第1弁体は前記弁体絞り部が前記オリフィス絞り部と当接して流体は前記弁体通路部を流れる
ことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項3】
前記第1弁体は、前記オリフィス絞り部と協働して流体流量を制御する弁体絞り部を備え、
前記第1電磁弁が前記オン位置にある時、前記第1弁体は前記弁体絞り部が前記オリフィス絞り部から離れて流体は前記弁体絞り部の外周を大流量流れ、
前記第1電磁弁が前記オフ位置にある時、前記第1弁体は前記弁体絞り部が前記オリフィス絞り部に近づいて流体は前記弁体絞り部の外周を小流量流れる
ことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項4】
前記第1電磁弁の前記第1ムービングコアの変位を前記第1弁体に伝達するロットを更に備える
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の流量制御弁。
【請求項5】
前記第1電磁弁及び前記第2電磁弁は、共に前記通路室に対して前記オリフィス絞り部とは反対側となる位置に重ねて配置される
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の流量制御弁。
【請求項6】
前記第1電磁弁は、前記通路室に対して前記オリフィス絞り部側となる位置に配置され、
前記第2電磁弁は、前記通路室に対して前記オリフィス絞り部とは反対側となる位置に配置される
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の流量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体の流量を制御する流量制御弁に関し、例えば、キャニスタとスロットルバルブ下流の吸気通路とを連通するパージ通路に配置され、このパージ通路を流れる空気の流量を制御するパージバルブに用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
車両のハイブリッド化に伴い、キャニスタに吸着された蒸発燃料をより短い時間でエンジンの吸気通路に流入させる(パージする)ことが求められている。一方、ハイブリッド化に伴い、パージする際のエンジンの吸気負圧は減少(大気圧に近づく)している。
【0003】
そこで、特許文献1を先行技術として、パージ通路を大きく開くオン位置とパージ通路を小さく絞るオフ位置との間で切り替えを行う第1電磁弁と、弁座と弁体とが当接離脱するコイルの非通電時と通電時とのデューティ比制御を行う第2電磁弁とを組み合わせて用いることを提案した(特願2020‐26491号(特開2021-38738号公報))。パージ空気の流量の大小を第1電磁弁で切り替え、大流量時、小流量時共にパージ空気の流量を第2電磁弁で制御するというものである。
【0004】
ただ、第2電磁弁は小流量時のみでなく、大流量時もパージ空気の流量をデューティ比制御することから、大流量時の流量を確保するために第2弁体と弁座とのシール面も大きくする必要がある。そのため、第2電磁弁が弁座を閉じた状態から第2電磁弁が弁座を開く状態とする際に大きな磁力が必要となる。また、第1電磁弁がオリフィス絞り部以外の部位で流路面積を変更していた。ここで、流量特性に一番影響が大きいのはオリフィス絞り部であるので、オリフィス絞り部以外で流量の大小切り替えを行うのでは、切り替え時の不安定となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-291916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、デューティ比制御を行う第2電磁弁をより少ない電力で駆動できるようにすることを目的とする。かつ、流量特性に一番影響が大きいオリフィス絞り部で流量の大小切り替えを行うことで、切り替え時の流量特性の安定化を図ることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1は、流体を流入する流入通路と、流体を流出する流出通路と、この流出通路と流入通路との間に形成される通路室と、この通路室の流出通路側に形成され流体流量を制限するオリフィス絞り部と、通路室に形成される弁座とを備えるハウジングを有している。
【0008】
また、本開示の第1は、弁座より流出通路側に配置され、オリフィス絞り部と協働して流体流量を制御する第1弁体と、弁座より通路室側に配置され、弁座と当接離脱して流体流量を制御する第2弁体とを有している。
【0009】
かつ、本開示の第1は、通電により励磁する第1コイルと、この第1コイル通電時に磁気回路を形成する第1ステータコアと、この第1ステータコアと磁気ギャップを介して対向配置され第1コイルの励磁により移動するとともに移動に伴う変位を第1弁体に伝達する第1ムービングコアとを備え、第1コイルの通電時のオン位置と第1コイルの非通電時のオフ位置との切り替えを行う第1電磁弁と、通電により励磁する第2コイルと、この第2ステータコアと磁気ギャップを介して対向配置され第2コイルの励磁により移動するとともに移動に伴う変位を第2弁体に伝達する第2ムービングコアとを備え、第2コイルの通電時と第2コイルの非通電時のデューティ比制御を行う第2電磁弁とを備えている。
【0010】
そして、本開示の第1は、第2弁体には通路室と第2電磁弁とを連通する連通穴を設けると共に、ハウジングの通路室に配置され、第2弁体が弁座より離脱した状態で流入通路と流出通路との間を連通状態とすると共に、第2弁体が弁座と当接した状態で流入通路と流出通路との間を非連通状態とするダイヤフラムを備えている。
【0011】
本開示の第1によれば、圧力キャンセル機構として、第2弁体に通路室と第2電磁弁とを連通する連通穴を設けているので、第2弁体の開弁時、閉弁時の圧力差を無くすことができ、小さな磁力で第2弁体を開閉駆動することができる。
【0012】
かつ、本開示の第1では、ハウジングの通路室に配置され、第2弁体が弁座より離脱した状態で流入通路と流出通路との間を連通状態とすると共に、第2弁体が弁座と当接した状態で流入通路と流出通路との間を非連通状態とするダイヤフラムを備えているので、第2弁体に連通穴を設けても、流体の流量制御を的確に行うことができる。
本開示の第1では、第2電磁弁のオン位置とオフ位置で、第1弁体がオリフィス絞り部と協同して流量を大流量位置と小流量位置とに切り替えている。流量特性に一番大きく影響を与えるオリフィス絞り部で流路面積の切り替えを行うため、大流量と小流量との切り替えを行う際の流量特性が安定する。
【0013】
本開示の第2では、第1弁体は、オリフィス絞り部と協働して流体流量を制御する弁体絞り部と、流体を通す弁体通路部とを備えている。そして、第1電磁弁がオン位置にある時、第1弁体は弁体絞り部がオリフィス絞り部から離れて流体は弁体絞り部の外周及び弁体通路部を流れ、第1電磁弁がオフ位置にある時、第1弁体は弁体絞り部がオリフィス絞り部と当接して流体は弁体通路部を流れる。
【0014】
本開示の第2によれば、第1電磁弁のオン位置では大流量を流し、第1電磁弁のオフ位置では流量を小流量に切り替えることができる。上記本開示の第1での大流量と小流量との切り替えを弁体絞り部と弁体通路部とで達成することができる。
【0015】
本開示の第3は、第1弁体は、オリフィス絞り部と協働して流体流量を制御する弁体絞り部を備えている。そして、第1電磁弁がオン位置にある時、第1弁体は弁体絞り部がオリフィス絞り部から離れて流体は弁体絞り部の外周を大流量流れ、第1電磁弁がオフ位置にある時、第1弁体は弁体絞り部がオリフィス絞り部に近づいて流体は弁体絞り部の外周を小流量流れる構成としている。
【0016】
本開示の第3によれば、第1弁体に弁体通路部を設けることなく、第1電磁弁で大流量と小流量との切り替えを行うことができ、第1弁体の構成の簡素化を図りつつ、上記本開示の第1での大流量と小流量との切り替えを達成することができる。
【0017】
本開示の第4では、第1電磁弁の第1ムービングコアの変位を第1弁体に伝達するロットを更に備えている。ロットを用いることで、第1電磁弁の位置と第1弁体の位置とを離すことが可能となる。
【0018】
本開示の第5では、第1電磁弁及び第2電磁弁は、共に通路室のオリフィス絞り部とは反対側に配置されている。第1電磁弁と第2電磁弁とを重ねて配置することができる。
【0019】
本開示の第6では、第1電磁弁は、通路室のオリフィス絞り部側に配置され、第2電磁弁は、通路室のオリフィス絞り部とは反対側に配置されている。第1電磁弁の配置位置の自由度を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の流量制御弁が用いられるパージシステムを示す構成図である。
図2】本開示の第1実施形態の流量制御弁の断面図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図2図示流量制御弁の大流量状態の断面図である。
図5】本開示の第2実施形態の流量制御弁の断面図である。
図6図5図示流量制御弁の大流量状態の断面図である。
図7】本開示の第3実施形態の流量制御弁の断面図である。
図8図7図示流量制御弁の大流量状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本開示の流量制御弁がパージバルブ100として用いられる場合の使用態様を示す。燃料タンク10で揮発したガソリンを含むパージ空気は入口側パージ空気通路11を介してキャニスタ13に流入し、キャニスタ13にてガソリンを吸着する。キャニスタ13からのガソリンを含むパージ空気は出口側パージ空気通路14を介してエンジン20の吸気管21に供給される。この出口側パージ空気通路14を流れるパージ空気の供給遮断の切り替え、及び供給時の流量を制御するのがパージバルブ100である。
【0022】
出口側パージ空気通路14は吸気管21のうちスロットルバルブ25の下流に開口しており、スロットルバルブ25で絞られた吸入空気の負圧により、キャニスタ13からのガソリンを含むパージ空気が吸引される。キャニスタ13には必要に応じ大気に開放する大気開放弁12が設けられている。24は、エンジン20に吸入される空気中の異物を取り除くエアフィルタである。
【0023】
パージバルブ100のオンオフ及び流量は、エンジン制御ユニット50によりコントロールされる。即ち、キャニスタ13に吸着されたガソリンは燃料タンク10からのガソリンと共にエンジン20に吸入されるため、エンジン制御ユニット50は、最適なエンジン燃焼状態を算出してパージバルブ100の流量を制御する。また、エンジン制御ユニット50は、パージバルブ100の制御により発生する異音が乗員に伝わりにくい状態を車両ECU60から受けてパージバルブ100のオンオフを制御する。例えば、高速走行時は異音が乗員に伝わりにくいので、車両ECUは車速センサ61からの信号で車両の走行状況を把握する。
【0024】
パージバルブ100の構成を、以下に各実施形態に関して説明する。
【0025】
(第1実施形態)
パージバルブ100は、図2に示すように、ハウジング110内に第1電磁弁130と第2電磁弁150とが直列に配置されている。第1電磁弁130は、樹脂製の第1ボビン131に多数回巻装された第1コイル132を備えている。なお、ハウジング110や第1ボビン131は、ポリブチレンテレフタレートPBT樹脂、ポリフェニレンサルファイドPPS樹脂、ナイロン66等の樹脂で形成される。図示しないコネクタより駆動電圧を受けて第1コイル132に通電された際には第1コイル132は励磁する。その際の磁気回路を形成するように第1コイル132の外側には鉄製の第1ヨーク133が配置され、第1コイル132の内周側には同じく鉄製の第1ステータコア134が配置されている。
【0026】
第1ステータコア134は円筒形状をしており、内部には鉄製でコップ形状をした第1ムービングコア135が移動可能に配置されている。第1ステータコア134には磁気回路を絞る絞り部134aが形成されているので、第1ステータコア134と第1ムービングコア135との間に第1磁気ギャップ134bが形成され、第1コイル132の励磁時にはこの第1磁気ギャップ134bを縮めるべく、第1ムービングコア135は図中上方に吸引される。そして、第1バネ136は第1ムービングコア135を吸引方向と反する方向に付勢している。第1バネ136は第1ムービングコア135と第1バネ受け部材137との間に配置される。
【0027】
第2電磁弁150は、この第1電磁弁130と凡そ同じ構造となっている。第2ボビン151、第2コイル152、第2ヨーク153、第2ステータコア154、第2ムービングコア155を備えている。
【0028】
第2ステータコア154にも磁気回路を絞る絞り部154aが形成されており、第2ステータコア154と第2ムービングコア155との間に第2磁気ギャップ154bが形成される。そして、第2コイル152の励磁時にはこの第2磁気ギャップ154bを縮めるべく、第2ムービングコア155は図中下方に吸引される。第2バネ156は第2ムービングコア155を吸引方向と反する方向に付勢している。そして、第2バネ156は第2ムービングコア155と第2バネ受け部材157との間に配置されている。
【0029】
ハウジング110のうち図2の上方部には、通路室160が形成されている。また、ハウジング110には、出口側パージ空気通路14をなすホースが連結される流入通路161が形成され、流入通路161は通路室160に開口している。通路室160には円筒状のオリフィス絞り部162が突出形成されており、オリフィス絞り部162の図2の下端は弁座163となっている。オリフィス絞り部162は、後述する第1弁体170と共同してパージ空気の流れを絞る作用を行うよう、パージ空気の通路径を絞るもので、このオリフィス絞り部162がパージバルブ100を流れるパージ空気の流量特性に最も影響がある。
【0030】
また、オリフィス絞り部162は流出通路164と連通し、流入通路161から通路室160に流入したパージ空気は、弁座163、オリフィス絞り部162を経て、流出通路164に流れる。流出通路164には、出口側パージ空気通路14をなすホースが連結され、パージ空気は流出通路164からホースを経て吸気管21のスロットルバルブ25下流に吸引される。
【0031】
第1弁体170は、内部にパージ空気を通す弁体通路部171を備える円筒形状をしている。第1弁体170の外周のうち図2の下方側は、オリフィス絞り部162に対して着座可能な形状となって弁体絞り部174を形成している。第1弁体170は、第1電磁弁130の第1ムービングコア135とロット172を介して連通している。図3に示すように、ロット172と第1弁体170とは腕部173を介して繋がっている。
【0032】
通路室160のうち、弁座163と対向する部位には、第2弁体180が配置されている。第2弁体180は第2電磁弁150の第2ムービングコア155に焼き付け固定されており、弁座163とのシール性を得るため、ゴム材料等の弾性部材からなる。本開示では、耐ガソリン性を考えてフッ素ゴムが使用されている。
【0033】
第2弁体180には連通穴185が形成され、この連通穴185内をロット172が貫通する。また、連通穴185により通路室160内の圧力と第2電磁弁150の圧力が均衡する。
【0034】
通路室160には、第2弁体180と第2電磁弁150との間をシールするダイヤフラム181が配置されている。ダイヤフラム181は可撓性を有するゴム材料製で、リング形状をしている。ダイヤフラム181の内周182は、第2弁体と一体形成され、外周183はハウジング110の通路室160に係止されている。
【0035】
次に、上記構成のパージバルブ100の作動を説明する。第1電磁弁130の第1コイル132に通電されていないオフ位置では、第1コイル132は励磁されておらず、第1ムービングコア135は第1バネ136により第1ステータコア134から引き離される方向に付勢される。図2がその状態で、第1ムービングコア135は、ハウジング110の底板111側に付勢されている。この状態では、第1弁体170の外周はオリフィス絞り部162に着座している。そのため、通路室160から流出通路164に向かう流れは、第1弁体170の弁体通路部171のみとなる。このように、空気流路が絞られる結果、パージバルブ100を介して流れる沿う流量は、少量となり、本開示では、毎分60リットル程度である。
【0036】
この小流量で、更にパージバルブ100を流れるパージ空気の流量が、第2弁体180により制御される。第2電磁弁150の第2コイル152が励磁すると第2ステータコア154と第2ムービングコア155との間の第2磁気ギャップ154bに磁気吸引力が発生し、この磁気吸引力の方が第2バネ156の付勢力を上回るので、第2ムービングコア155は第2ステータコア154側に移動する。その結果、第2弁体180が弁座163から離脱し、通路室160内のパージ空気は第1弁体170の弁体通路部171に流れる。図2の状態は第2コイル152が励磁して、第2弁体180が弁座163を開いた状態である。
【0037】
図2の状態から、第2コイル152への通電を停止すると、第2バネ156により第2ムービングコア155が図中上方へ1.5ミリメートル程度変位し、第2弁体180が弁座163に当接する。その結果、通路室160から流出通路164に向かうパージ空気の流れが遮断される。
【0038】
第2電磁弁150は、弁座163を開く全開状態と弁座163を閉じる全閉状態との間でデューティ比制御を行う。デューティ比が100%の状態が小流量時の最大流量となり、デューティ比が0%では、パージ空気の流れは遮断される。デューティ比制御を行う時間は10ヘルツ(0.1秒)程度で、この時間内で全開状態と全閉状態との比率を可変する。
【0039】
以上が、小流量時のパージバルブ100の流量制御であるが、大流量時は第1電磁弁130の第1コイル132に通電してオン位置とする。その結果、第1コイル132が励磁して、第1電磁弁130の第1ステータコア134と第1ムービングコア135との間の第1磁気ギャップ134bに吸引力が発生する。この吸引力は第1バネ136より大きく、図4のように上方に第1ムービングコア135が引き上げられる。
【0040】
その第1ムービングコア135の移動はロット172を介して第1弁体170に伝わり、第1弁体170はオリフィス絞り部162から3ミリメートル程度離脱する。そのため、弁座163を通過したパージ空気は、第1弁体170の弁体通路部171のみでなく、第1弁体170の外周も通って流出通路164に流れることとなり、大流量を流すことができる。本開示では、大流量時毎分200リットル程度のパージ空気が流れる。このように、パージバルブ100を流れる通過するパージ空気の流量特性に最も大きく影響をあたえるのは、オリフィス絞り部162である。本開示では、このオリフィス絞り部162の流路面積をオリフィス絞り部162と第1弁体170が協働して大流量と小流量とに切り替えているので、流量切り替えが最も効率的に行える。そのため、大流量と小流量との劉協切り替え時の特性も安定する。
【0041】
この大流量を流す状態でも、パージ空気の流量は第2電磁弁150により制御される。デューティ比制御を行うのは、小流量時の制御と同様である。即ち、第2電磁弁150は弁座163を開く全開状態と弁座163を閉じる全閉状態との間でデューティ比制御を行い、デューティ比が100%の状態が小流量時の最大流量となり、デューティ比が0%では、パージ空気の流れは遮断される。図4は、第2電磁弁150が弁座163を開く全開状態を示している。
【0042】
但し、パージ空気の流れを遮断する制御は実際には小流量時に行う。そのため、大流量を流す状態でのパージ空気の最小流量は、デューティ比が0%ではなく、小流量を流す状態でのパージ空気の最大流量と同じく毎分60リットル程度となるようにデューティ比を定める。この際のデューティ比は30パーセント程度となる。
【0043】
本開示では、小流量時の制御であれ、大流量時の制御であれ、パージ空気の流量の制御は第2電磁弁150のデューティ比制御により行う。ここで、大流量時のパージ空気の流量制御を行うため、弁座163の径は充分な量のパージ空気が流れるよう大きく設定する必要がある。そのため、第2弁体180が通路室160と第2電磁弁150との間を遮断する構造であれば、第2弁体180に差圧が加わることとなる。
【0044】
通常、第2電磁弁150は大気圧下に存在し、一方、第2弁体180が弁座163を閉じた状態では、第2弁体180には、スロットルバルブ25下流の吸気負圧が加わることとなる。この吸気負圧は大気圧に近い負圧から80キロパスカル程度の大きな負圧迄変動する。そのため、上記のように第2弁体180を大径化して、この吸気負圧を受けると、第2電磁弁150の第2コイル152には大きな励磁力が求められ、第2コイル152の巻き数を多くする必要がある。引いては、パージバルブ100の大型化を来すことになる。
【0045】
それに対し、本開示では、連通穴185により通路室160と第2電磁弁150とが連通しているので、第2弁体180は前後に差圧を受けることがない。第2バネ156の付勢力に打ち勝って第2ムービングコア155を第2ステータコア154側に吸引できる励磁力が発生できればよく、1ニュートン程度の例磁力ですむ。これにより、第2コイル152の小型化が図れる。特に、第2電磁弁150はデューティ比制御を行うものであるため、第2弁体180が前後差圧の影響を受けることなく、全開位置と全閉位置との間をスムーズに移動できることは、流量の制御性向上に繋がる。
【0046】
第2弁体180に連通穴185を設けても、第2弁体180が弁座163と当接した際のシール性能はダイヤフラム181により確保される。即ち、ダイヤフラム181の外周はハウジング110によって係止されており、ダイヤフラム181の内周は第2弁体180と一体となっているので、第2弁体180が弁座163に着座した状態では、通路室160(流入通路161)と流出通路164との間はダイヤフラム181によって遮断される。
【0047】
(第2実施形態)
上述の第1実施形態では、第1弁体170に弁体通路部171を形成し、弁体絞り部174はオリフィス絞り部162と着座可能な形状としていたが、図5及び図6に示す第2実施形態のように、簡易な形状とすることもできる。第2実施形態の第1弁体170は円錐形状をしており、内部に弁体通路部は形成されていない。外周は弁体絞り部174を形成するが、オリフィス絞り部162と当接することもない。
【0048】
小流量時は、図5に示すように、第1電磁弁130の第1コイル132は励磁しておらず、第1ムービングコア135は、第1バネ136により下方に押し下げられ、ハウジング110の底板111に保持されている。その結果、円錐形状の第1弁体170はオリフィス絞り部162に近づき、第1弁体170とオリフィス絞り部162との間の流路が狭くなる。この間の隙間はパージ空気の流量が毎分60リットル程度の小流量となるように設定される。本開示では、直径が1.5ミリメートル程度の孔と相当する流路面積となるように設定している。
【0049】
大流量時は、図6に示すように、第1電磁弁130の第1コイル132が励磁する。それにより、第1ムービングコア135が第1ステータコア134側に引き上げられて、ロット172を介して、第1弁体170も上方に押し上げられる。その結果、円錐形状の第1弁体170はオリフィス絞り部162から離間し、大流量のパージ空気が第1弁体170とオリフィス絞り部162との間を流れる。この際の第1弁体170とオリフィス絞り部162との隙間は、毎分200リットル程度の大流量となるように設定し、本開示では、直径4ミリメートル程度の孔と相当する流路面積となるように設定している。
【0050】
なお、図5及び図6は共に第2電磁弁150の励磁状態で第2弁体180が全開位置にある状態を示している。第2電磁弁150がデューティ比制御されることは、第1実施形態と同様である。
【0051】
(第3実施形態)
上述の実施形態では、第1電磁弁130及び第2電磁弁150が一つのハウジング110内に配置され、通路室160との関係では同じ側に配置されていた。第3実施形態では、図7及び図8に示すように、ハウジング110を、第1電磁弁130を配置する第1ハウジング112と、第2電磁弁150を配置する第2ハウジング113とに分離し、間に接続ハウジング114を介在させている。流入通路161及び通路室160は第2ハウジング113に形成し、第2弁体180の連通穴185で通路室160と第2電磁弁150とを連通して、第2弁体180の前後で差圧が発生しないのは、上述の実施形態と同様である。
【0052】
図7は第1電磁弁130の第1コイル132が非励磁時である少量状態を示している。この状態では、第1ムービングコア135は、第1バネ136の付勢力を受けて図の下方に押し下げられ、第1弁体170は外周の弁体絞り部174がオリフィス絞り部162に着座している。そのため、パージ空気の流れは第1弁体170の弁体通路部171のみとなる。ロット172の位置は異なるが、動作は図2に示した第1実施形態と同様である。第3実施形態では、この第1弁体170着座時のシール性能を高めるため、及び着座時の衝撃を緩和するため、第1弁体170外周の弁体絞り部174にOリング175を配置している。Oリング175に代えてゴム材料等でできた弾性部材を配置しても良いことは、勿論である。
【0053】
図8は大流量状態を示し、この状態では第1電磁弁130の第1コイル132が励磁している。その結果、第1磁気ギャップ134aに生じる磁気吸引力により、第1ムービングコア135が図の上方に引き上げられ、第1弁体170外周の弁体絞り部174と弁体通路部171との双方からパージ空気が流れる。
【0054】
図7及び図8は共に第2電磁弁150の励磁状態で第2弁体180が全開位置にある状態を示しており、第2電磁弁150はデューティ比制御されることは、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
【0055】
なお、第3実施形態における変形例として、第1弁体170と第1電磁弁130の第1ムービングコア135の距離が近くなれば、ロット172も廃止して第1ムービングコア135により第1弁体170を直接変位させることも可能である。
【0056】
(その他の実施形態)
上述の開示では、第2弁体180とダイヤフラム181とを同一のフッ素ゴムで一体成型したが、別部材とすることも可能である。また、上述の開示では、第2弁体180を第2電磁弁150の第2ムービングコア155に焼き付け固定したが、第2ムービングコア155と第2弁体180との間に連結部材を介在させてもよい。
【0057】
また、パージバルブ100は、本開示の流量制御弁の望ましい使用例であるが、本開示は大流量と小流量との切り替えが行え、かつ、大流量小流量共に流量制御が行える制御弁として広範な用途を有している。
【符号の説明】
【0058】
100 パージバルブ
110 ハウジング
130 第1電磁弁
150 第2電磁弁
160 通路室
161 流入通路
162 オリフィス絞り部
163 弁座
170 第1弁体
180 第2弁体
185 連通穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8