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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】パルス電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20240515BHJP
   H02M 9/00 20060101ALI20240515BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20240515BHJP
【FI】
H02N2/18
H02M9/00 Z
H10N30/30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022075777
(22)【出願日】2022-05-02
(65)【公開番号】P2023165120
(43)【公開日】2023-11-15
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中永 毅
(72)【発明者】
【氏名】氏野 友貴
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-139291(JP,A)
【文献】特開昭58-093598(JP,A)
【文献】特表2000-504622(JP,A)
【文献】Sergey I Shkuratov,Explosive Ferroelectric Generators From Physical Principles to Engineering,World Scientific,2019年,145-155
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
H02M 9/00
H10N 30/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極板(21)と、
前記第1の電極板(21)と対向する第2の電極板(22)と、
前記第1及び第2の電極板(21,22)の間に両電極板(21,22)に沿って設けられたシート状の強誘電体層(24)と、
前記第2の電極板(22)の前記第1の電極板(21)との対向面の裏側にシート状に配設された爆薬層(23)と、
前記強誘電体層(24)の所定方向の端面から衝撃波を作用させるとともに、前記爆薬層(23)を前記所定方向の端面から爆轟させる起爆装置(14)と
を備えたパルス電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパルス電源装置において、
前記第1及び第2の電極板(22)が、2枚の前記第2の電極板(22)で前記爆薬層(23)を挟み込んだ状態で複数組設けられていることを特徴とするパルス電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載のパルス電源装置において、
前記爆薬層(23)は、前記第2の電極板(22)の裏側に蒸着された爆薬で構成されていることを特徴とするパルス電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパルス電源装置において、
前記第2の電極板(22)は、銀又は銅からなることを特徴とするパルス電源装置。
【請求項5】
請求項1に記載のパルス電源装置において、
前記第1及び第2の電極板(21,22)が、2枚の前記第2の電極板(22)で前記爆薬層(23)を挟み込んだ状態で複数組設けられ、
前記爆薬層(23)は、前記2枚の前記第2の電極板(22)の裏側に蒸着された爆薬を貼り合わせてなることを特徴とするパルス電源装置。
【請求項6】
請求項1に記載のパルス電源装置において、
前記爆薬層(23)は、複数設けられ、
複数の前記爆薬層(23)の前記所定方向の端面に当接するシート爆薬(11)をさらに備え、
前記起爆装置(14)は、前記シート爆薬(11)を起爆させることにより、前記複数の前記爆薬層(23)を1μs以内の時間差で起爆させることを特徴とするパルス電源装置。
【請求項7】
請求項6に記載のパルス電源装置において、
前記シート爆薬(11)は、前記第1の電極板(21)の前記所定方向の端面と離間するとともに、前記第2の電極板(22)の前記所定方向の端面に当接していることを特徴とするパルス電源装置。
【請求項8】
請求項7に記載のパルス電源装置において、
前記第1の電極板(21)の前記所定方向の端面と、前記シート爆薬(11)との間には、前記第1及び第2の電極板(21,22)の間に爆轟ガスが侵入するのを規制する絶縁板(12)が設けられていることを特徴とするパルス電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、強誘電体の脱分極を利用するパルス電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、互いに平行に設けられた複数の電極板と、電極板の間にシート状に設けられた強誘電体層と、前記強誘電体層の所定方向の端面から衝撃波を作用させる手段とを備えたパルス電源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Sergey I Shkuratov, “Explosive Ferroelectric Generators From Physical Principles to Engineering”, World Scientific, 2019, p.145-155
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、強誘電体の脱分極を利用する非特許文献1のようなパルス電源装置の出力電流を増やしたいという要望がある。
【0005】
本開示の目的は、パルス電源装置の出力電流を増やすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、パルス電源装置(1)が、第1の電極板(21)と、前記第1の電極板(21)と対向する第2の電極板(22)と、前記第1及び第2の電極板(21,22)の間に両電極板(21,22)に沿って設けられたシート状の強誘電体層(24)と、前記第2の電極板(22)の前記第1の電極板(21)との対向面の裏側にシート状に配設された爆薬層(23)と、前記強誘電体層(24)の所定方向の端面から衝撃波を作用させるとともに、前記爆薬層(23)を前記所定方向の端面から爆轟させる起爆装置(14)とを備えたことを特徴とする。
【0007】
第1の態様では、爆薬層(23)を爆轟させることにより、第2の電極板(22)側からも強誘電体層(24)に衝撃波を作用させるので、前記所定方向の端面側だけから強誘電体層(24)に衝撃波を作用させる場合に比べ、分極状態から解放する単位時間あたりの強誘電体の量が増大する。したがって、パルス電源装置(1)の出力電流を増やすことができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記第1及び第2の電極板(22)が、2枚の前記第2の電極板(22)で前記爆薬層(23)を挟み込んだ状態で複数組設けられていることを特徴とする。
【0009】
第2の態様では、1つの爆薬層(23)を、爆薬層(23)の両側の強誘電体層(24)に衝撃波を作用させるために利用し、爆薬層(23)を第2の電極板(22)毎に設ける必要がないので、パルス電源装置(1)を小型化できる。
【0010】
第3の態様は、第1又は2の態様において、前記爆薬層(23)は、前記第2の電極板(22)の裏側に蒸着された爆薬で構成されていることを特徴とする。
【0011】
第3の態様では、爆薬層(23)の爆轟臨界の厚さ(定常の爆轟を実現できる最小の厚さ)を薄くできるので、パルス電源装置(1)を小型化できる。
【0012】
第4の態様は、第1~3のいずれか1つの態様において、前記第2の電極板(22)は、銀又は銅からなることを特徴とする。
【0013】
第4の態様では、第2の電極板(22)を、銀及び銅よりも表面自由エネルギーの小さい材料(例えば、アルミ)で構成した場合に比べ、爆薬を高密度に蒸着できるので、爆速を速くでき、爆薬層(23)の爆轟時に分極状態から解放する単位時間あたりの強誘電体の量を増大させることができる。したがって、パルス電源装置(1)の出力電流を増やすことができる。
【0014】
第5の態様は、第1~4のいずれか1つの態様において、前記第1及び第2の電極板(21,22)が、2枚の前記第2の電極板(22)で前記爆薬層(23)を挟み込んだ状態で複数組設けられ、前記爆薬層(23)は、前記2枚の前記第2の電極板(22)の裏側に蒸着された爆薬を貼り合わせてなることを特徴とする。
【0015】
第5の態様では、1つの爆薬層(23)を、爆薬層(23)の両側の強誘電体層(24)に衝撃波を作用させるために利用し、爆薬層(23)を第2の電極板(22)毎に設ける必要がない。また、蒸着によって爆薬層(23)の爆轟臨界の厚さを薄くできる。したがって、パルス電源装置(1)を小型化できる。
【0016】
第6の態様は、第1~5のいずれか1つの態様において、前記爆薬層(23)は、複数設けられ、複数の前記爆薬層(23)の前記所定方向の端面に当接するシート爆薬(11)をさらに備え、前記起爆装置(14)は、前記シート爆薬(11)を起爆させることにより、前記複数の前記爆薬層(23)を1μs以内の時間差で起爆させることを特徴とする。
【0017】
第6の態様では、シート爆薬(11)を設けない場合に比べ、爆薬層(23)をより確実に起爆させることができる。
【0018】
第7の態様は、第6の態様において、前記シート爆薬(11)は、前記第1の電極板(21)の前記所定方向の端面と離間するとともに、前記第2の電極板(22)の前記所定方向の端面に当接していることを特徴とする。
【0019】
第7の態様では、第1の電極板(21)の端部がシート爆薬(11)から離間しているので、強誘電体の脱分極による出力電流をパルス電源装置(1)が出力する前に、シート爆薬(11)の爆轟の衝撃によって第2の電極板(22)のシート爆薬(11)側の端部が第1の電極板(21)に当接するのを抑制できる。
【0020】
第8の態様は、第7の態様において、前記第1の電極板(21)の前記所定方向の端面と、前記シート爆薬(11)との間には、前記第1及び第2の電極板(21,22)の間に爆轟ガスが侵入するのを規制する絶縁板(12)が設けられていることを特徴とする。
【0021】
第8の態様では、強誘電体の脱分極による出力電流をパルス電源装置(1)が出力する前に、シート爆薬(11)の爆轟の衝撃によって第2の電極板(22)のシート爆薬(11)側の端部が第1の電極板(21)に当接するのをより確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態に係るパルス電源装置の概略断面図である。
図2図2は、図1のII部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るパルス電源装置(1)を示す。
【0025】
パルス電源装置(1)は、ハウジング(10)と、n枚(nは自然数)の第1の電極板(21)と、(n-1)*2枚の第2の電極板(22)と、n-1層の爆薬層(23)と、(n-1)*2層のシート状の強誘電体層(24)と、シート爆薬(11)と、絶縁板(12)と、絶縁ケース(13)と、起爆装置(14)とを備えている。n枚の第1の電極板(21)と、(n-1)*2枚の第2の電極板(22)と、n-1層の爆薬層(23)と、(n-1)*2層の強誘電体層(24)とは、互いに略平行に配設されて積層体(20)を構成する。図1では、図面の簡略化のため、n=3としているが、本実施形態では、nは数十の値に設定されている。
【0026】
ハウジング(10)は、アルミ又は鋼等の複数の金属製の部材によって細長い略円筒状に形成されている。ハウジング(10)は、積層体(20)と、シート爆薬(11)と、絶縁板(12)と、絶縁ケース(13)と、起爆装置(14)とを収容している。
【0027】
以下、説明の便宜上、図1における右側(ハウジング(10)の長手方向一方)を前側、図1における左側(ハウジング(10)の長手方向他方)を後側という。
【0028】
第1及び第2の電極板(21,22)は、銀又は銅からなる。第1及び第2の電極板(21,22)は、その板面を、ハウジング(10)の長手方向に対して垂直な方向に向けて第1の電極板(21)、第2の電極板(22)、第2の電極板(22)、第1の電極板(21)、第2の電極板(22)、第2の電極板(22)、第1の電極板(21)・・・の順で互いに間隔を空けて平行に配設されている。したがって、各第2の電極板(22)は、第1の電極板(21)と対向している。第1の電極板(21)の後側の端面は、第2の電極板(22)の後側の端面よりも前側に位置している。
【0029】
複数組の第1及び第2の電極板(21,22)は、互いに並列に電気的に接続されている。第1の電極板(21)は、負荷(図示せず)の負端子に接続された第1の配線(16)、第2の電極板(22)は、負荷(図示せず)の正端子に接続された第2の配線(17)に接続されている。
【0030】
各第2の電極板(22)の第1の電極板(21)との対向面の裏側には、PVD(physical vapor deposition)装置によって爆薬が蒸着されている。隣り合う2枚の第2の電極板(22)の裏側に蒸着された爆薬を互いに貼り合わせることによって、シート状の爆薬層(23)が構成されている。爆薬層(23)を構成する爆薬としては、PETN(ペンスリット)が使用される。このように、第1及び第2の電極板(21,22)は、2枚の第2の電極板(22)で爆薬層(23)を挟み込んだ状態で複数組設けられている。隣り合う2枚の各第2の電極板(22)に爆薬を蒸着した時点で、各第2の電極板(22)の爆薬蒸着面に凹凸が形成されている場合には、爆薬蒸着面を平坦にするようにイオンミリング法によって加工し、その後、両者の爆薬蒸着面を互いに貼り合わせてもよい。つまり、2枚の第2の電極板(22)の爆薬蒸着面を互いに貼り合わせる前に、爆薬蒸着面に加速したアルゴンイオンビームを照射して表面原子を削るようにしてもよい。これにより、両第2の電極板(22)間に爆薬を隙間無く密着できる。爆薬層(23)の厚さを、75μm以上に設定することで、爆薬層(23)を確実に爆轟させることができる。
【0031】
強誘電体層(24)は、第1及び第2の電極板(21,22)の間に両電極板(21,22)に沿ってシート状に設けられている。
【0032】
シート爆薬(11)は、PETN(ペンスリット)によって約0.2mmの厚さのシート状に形成されている。シート爆薬(11)は、その表裏面をハウジング(10)の長手方向に向けてハウジング(10)の内部空間を長手方向に仕切るように隙間無く配設されている。シート爆薬(11)は、その前側の面が全ての複数の爆薬層(23)の後側の端面、及び全ての複数の第2の電極板(22)の後側の端面に当接するように配置されている。シート爆薬(11)の爆薬層(23)との当接面は、全ての第1の電極板(21)の後側の端面と離間している。
【0033】
絶縁板(12)は、樹脂又はセラミックス等からなる。絶縁板(12)は、その前側の面を、全ての第1の電極板(21)及び全ての強誘電体層(24)の後側の端面全体に当接させた状態で設けられている。また、絶縁板(12)は、後側の面を前記シート爆薬(11)と間隔を空けて対向させている。したがって、絶縁板(12)は、第1の電極板(21)の後側の端面と、シート爆薬(11)との間で、第1及び第2の電極板(21,22)の間に爆轟ガスが侵入するのを規制している。
【0034】
絶縁ケース(13)は、積層体(20)と、絶縁板(12)とを第2の電極板(22)及び爆薬層(23)の後側の端面を後側に露出させた状態で収容している。絶縁ケース(13)は、硬質ポリウレタン(polyurethane)によって構成されている。
【0035】
起爆装置(14)は、シート爆薬(11)に後側(所定方向)から対向するように配設されたライナ(14a)と、ハウジング(10)の内部空間におけるライナ(14a)の後側に充填された主爆薬(14b)と、主爆薬(14b)を起爆させる起爆部(14c)とを備えている。ライナ(14a)は、中央部分が外縁部に対して後側に凹む金属板によって構成されている。起爆部(14c)は、起爆薬等を内蔵した電気雷管等で構成される。起爆装置(14)は、起爆部(14c)により主爆薬(14b)を爆轟させることで、ライナ(14a)を射出させて加速させ、シート爆薬(11)に衝突させ、その衝撃によりシート爆薬(11)を起爆させる。そして、シート爆薬(11)に密着した全ての爆薬層(23)を1μs以内の時間差で後側の端面から起爆させる。
【0036】
上述のように構成されたパルス電源装置(1)では、上述のようにシート爆薬(11)、及び全ての爆薬層(23)を爆轟させると、シート爆薬(11)の爆轟により、強誘電体層(24)に後側の端面から衝撃波が作用する。また、爆薬層(23)の爆轟により、その爆轟速度で、強誘電体層(24)に第2の電極板(22)側からも強誘電体層(24)に衝撃波が作用する。強誘電体層(24)に衝撃波が作用し始めたときに所定の単位時間あたりに分極状態から解放する強誘電体は、図2に太線Lで囲んだ部分の強誘電体となる。
【0037】
このように、爆薬層(23)の爆轟により、その爆轟速度で第2の電極板(22)側からも強誘電体層(24)に衝撃波を作用させるので、後側の端面だけから強誘電体層(24)に衝撃波を作用させる場合に比べ、分極状態から解放する単位時間あたりの強誘電体の量が増大する。したがって、パルス電源装置(1)の出力電流を増やすことができる。
【0038】
ここで、積層体(20)を、41枚の第1の電極板(21)、40枚の第2の電極板(22)、及び80層の強誘電体層(24)で構成し、各強誘電体層(24)を第1及び第2の電極板(21,22)で挟んだ場合を比較例とする。比較例では、第1及び第2の電極板(21,22)の厚さを0.1mmとし、強誘電体層(24)の厚さを0.5mmとする。この場合、積層体(20)の厚さは、48.1mmとなる。
【0039】
一方で、本実施形態において、nを41とした場合、すなわち、積層体(20)を、41枚の第1の電極板(21)、80枚の第2の電極板(22)、40層の爆薬層(23)、及び80層の強誘電体層(24)で構成した場合を実施例とする。実施例では、第1の電極板(21)の厚さを0.1mm、第2の電極板(22)の厚さを0.05mm、爆薬層(23)の厚さを0.1mm、強誘電体層(24)の厚さを0.5mmとする。この場合、積層体(20)の厚さは、52.1mmとなる。
【0040】
比較例及び実施例において、強誘電体層(24)を構成する強誘電体としてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)95/5を使用する。比較例において強誘電体層(24)に伝わる衝撃波の前方への速度は、3.9mm/μsとなり、実施例における爆薬層(23)の前方への爆轟速度は、8mm/μsとなる。したがって、実施例においては、出力電流を比較例の約2(=8/3.9)倍にできる。また、実施例においては、積層体(20)の体積が、比較例の1.083倍となっているので、実施例においては、体積あたりの出力電流が比較例の1.8倍以上となる。
【0041】
また、ライナ(14a)の形状及び厚さ分布を調整することにより、シート爆薬(11)の各位置におけるライナ(14a)の衝突による衝撃を受ける時間のばらつきを小さくし、各爆薬層(23)が爆轟を開始するタイミングのばらつきを抑えることができる。
【0042】
また、第1の電極板(21)の後端部がシート爆薬(11)から離間しているので、強誘電体層(24)を構成する強誘電体の脱分極による出力電流をパルス電源装置(1)が出力する前に、シート爆薬(11)の爆轟の衝撃によって第2の電極板(22)の後側(シート爆薬(11)側)の端部が第1の電極板(21)に当接するのを抑制できる。
【0043】
また、第1の電極板(21)の後側の端面と、シート爆薬(11)との間に、第1及び第2の電極板(21,22)の間に爆轟ガスが侵入するのを規制する絶縁板(12)が設けられているので、強誘電体層(24)を構成する強誘電体の脱分極による出力電流をパルス電源装置(1)が出力する前に、シート爆薬(11)の爆轟の衝撃によって第2の電極板(22)の後側(シート爆薬(11)側)の端部が第1の電極板(21)に当接するのをより確実に抑制できる。
【0044】
したがって、本実施形態によれば、各爆薬層(23)を、爆薬層(23)の両側の強誘電体層(24)に衝撃波を作用させるために利用し、爆薬層(23)を第2の電極板(22)毎に設ける必要がないので、パルス電源装置(1)を小型化できる。
【0045】
また、爆薬層(23)を、第2の電極板(22)の裏側に蒸着された爆薬で構成したので、爆薬層(23)の爆轟臨界の厚さを薄くでき、パルス電源装置(1)を小型化できる。また、爆薬層(23)が第2の電極板(22)から離脱しにくい。
【0046】
また、第2の電極板(22)を銀又は銅で構成したので、第2の電極板(22)を、銀及び銅よりも表面自由エネルギーの小さい材料で構成した場合に比べ、爆薬を高密度に蒸着でき、爆薬層(23)の爆轟時に衝撃波を作用させる強誘電体の量を増大させることができる。したがって、パルス電源装置(1)の出力電流を増やすことができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、第1及び第2の電極板(21,22)を銀又は銅で構成したが、アルミ、金等の他の金属で構成してもよい。第2の電極板(22)をアルミで構成した場合には、爆薬層(23)の厚さを、60μm以上に設定することで、爆薬層(23)を確実に爆轟させることができる。第1及び第2の電極板(21,22)を、より表面自由エネルギーが高い銅、金、銀で構成した場合には、爆薬層(23)の厚さをもう少し薄い値としても、爆薬層(23)を確実に爆轟させることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、爆薬層(23)を2枚の第2の電極板(22)で挟み込んだが、爆薬層(23)を、第2の電極板(22)の第1の電極板(21)との対向面の裏側にシート状に配設していれば、爆薬層(23)を2枚の第2の電極板(22)で挟み込まない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本発明は、強誘電体の脱分極を利用するパルス電源装置として有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 パルス電源装置
11 シート爆薬
12 絶縁板
14 起爆装置
21 第1の電極板
22 第2の電極板
23 爆薬層
24 強誘電体層
図1
図2