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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
C03B17/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020105264
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021195295
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周作
(72)【発明者】
【氏名】藤原 克利
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-183085(JP,A)
【文献】特表2019-521944(JP,A)
【文献】特開2013-216533(JP,A)
【文献】特表2016-505499(JP,A)
【文献】国際公開第2018/200928(WO,A2)
【文献】特表2008-531452(JP,A)
【文献】特開2015-171986(JP,A)
【文献】国際公開第2018/200898(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバーフローダウンドロー法により、溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形装置を備えるガラス物品の製造装置において、
前記成形装置は、前記溶融ガラスを流下させる成形体と、前記成形体の幅方向両端部に配置され、前記成形体を流下する前記溶融ガラスの幅方向両端部を規制する規制面を有する規制部材と、前記規制面よりも幅方向外側で、前記規制部材の下部に配置されるヒーターとを備え
前記成形体は、前記成形体の下端部で互いに交わる一対の傾斜成形面を有し、
前記ヒーターは、前記傾斜成形面に対応する位置のみに配置されていることを特徴とするガラス物品の製造装置。
【請求項2】
前記ヒーターは、抵抗加熱式ヒーターである請求項1に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項3】
前記ヒーターは、第一の断面積を有する広大部と、前記広大部よりも下方位置に設けられ、前記第一の断面積よりも小さい第二の断面積を有する狭小部とを有する請求項2に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項4】
前記規制部材と前記ヒーターとの間に、溶射膜からなる絶縁層が形成されている請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項5】
前記規制部材は、前記傾斜成形面から起立して前記規制面を有する第一部分と、前記傾斜成形面に沿う第二部分とを有し、
前記ヒーターは、前記第二部分に配置されている請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項6】
前記ヒーターは、前記一対の傾斜成形面のうちの一方に沿う前記第二部分と、前記一対の傾斜成形面のうちの他方に沿う前記第二部分とにそれぞれ配置されている請求項に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項7】
前記一対の傾斜成形面のうちの一方に沿う前記第二部分に配置された前記ヒーターと、前記一対の傾斜成形面のうちの他方に沿う前記第二部分に配置された前記ヒーターとが、
前記成形体の下端部で連続している請求項に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項8】
前記ヒーターは、前記規制部材に1箇所のみ溶接されている請求項1~のいずれか1項に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項9】
前記ヒーターは、前記規制部材の下端部に溶接されている請求項1~のいずれか1項に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項10】
成形装置を用いて、オーバーフローダウンドロー法により、溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形工程を備えるガラス物品の製造方法において、
前記成形装置は、前記溶融ガラスを流下させる成形体と、前記成形体の幅方向両端部に配置され、前記成形体を流下する前記溶融ガラスの幅方向両端部と接触する規制面を有する規制部材とを備え、
前記成形工程では、前記規制面よりも幅方向外側で、前記規制部材の下部に配置されたヒーターにより、前記規制部材を加熱し、
前記成形体は、前記成形体の下端部で互いに交わる一対の傾斜成形面を有し、
前記ヒーターは、前記傾斜成形面に対応する位置のみに配置されることを特徴とするガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーフローダウンドロー法によりガラス物品を製造するための技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板などのガラス物品の製造方法としては、オーバーフローダウンドロー法が用いられる場合がある。この製法では、成形装置が、略楔状の成形体を備えている。成形体に供給された溶融ガラスは、成形体の頂部に形成された溝部から溢れ出た後、成形体の両側面に形成された傾斜成形面を伝って下端部で合流する。これにより、溶融ガラスから帯状のガラスリボンが連続成形される。この製法によれば、成形されるガラスリボンの表裏面が成形過程で成形体と接触しないため、表裏面に傷等のない平滑なガラスリボンを成形できるという利点がある(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-214349号公報
【文献】特開2013-216533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オーバーフローダウンドロー法の場合、成形体の幅方向両端部の下端部において、溶融ガラスが冷えて失透が生じ、失透物が形成される場合がある。失透物は、時間の経過とともに成長し、溶融ガラスの流路を妨げる障害物となり得る。失透物が障害物となるまで成長すると、溶融ガラスの一部は、失透物を伝って溶融ガラスの主たる流れから分離するとともに、成形体の下端部から垂れ下がった状態で冷却固化されてガラス玉を形成する場合がある。そして、ガラス玉が落下すると、製造装置やガラスリボンを破損するなどの重大なトラブルを招く原因となる。
【0005】
特許文献2には、溶融ガラスの失透を抑制する観点から、成形体の幅方向両端部に配置される規制部材(ガイド)全体を通電加熱することが開示されている。しかしながら、規制部材全体を通電加熱すると、溶融ガラスの幅方向両端部の温度が上昇しすぎる。その結果、溶融ガラスから成形されるガラスリボンの温度分布が不均一になり、ガラスリボンに皺が発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、ガラスリボンの温度分布を均一に維持しながら、成形体の幅方向両端部の下端部における溶融ガラスの失透を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、オーバーフローダウンドロー法により、溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形装置を備えるガラス物品の製造装置において、成形装置は、溶融ガラスを流下させる成形体と、成形体の幅方向両端部に配置され、成形体を流下する溶融ガラスの幅方向両端部を規制する規制面を有する規制部材と、規制面よりも幅方向外側で、規制部材の下部のみに配置されるヒーターとを備えていることを特徴とする。
【0008】
このようにすれば、規制部材の下部のみが加熱されるため、成形体を流下する溶融ガラスの幅方向両端部が過剰に加熱されることがない。つまり、溶融ガラスから成形されるガラスリボンの温度分布を均一に維持しながら、成形体の幅方向両端部の下端部における溶融ガラスの失透を抑制できる。
【0009】
上記の構成において、ヒーターは、抵抗加熱式ヒーターであることが好ましい。
【0010】
このようにすれば、ヒーターの厚みや幅で発熱量や加熱箇所を調整できるため、必要な箇所を効率よく加熱できる。
【0011】
ヒーターが抵抗加熱式である場合、ヒーターは、第一の断面積を有する広大部と、広大部よりも下方位置に設けられ、第一の断面積よりも小さい第二の断面積を有する狭小部とを有することが好ましい。
【0012】
このようにすれば、断面積が小さく抵抗値が大きい狭小部の発熱量が、断面積が大きく抵抗値が小さい広大部の発熱量よりも大きくなるため、失透が生じやすい成形体の下端部を重点的に加熱できる。
【0013】
上記の構成において、規制部材とヒーターとの間に、溶射膜からなる絶縁層が形成されていることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、ヒーターから規制部材への熱伝導を阻害することなく、ヒーターと規制部材との間の絶縁が可能となるため、規制部材の下部を効率よく加熱できる。
【0015】
上記の構成において、成形体は、成形体の下端部で互いに交わる一対の傾斜成形面を有し、ヒーターは、傾斜成形面に対応する位置のみに配置されていることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、成形体を流下する溶融ガラスの幅方向両端部が過剰に加熱されるのをより確実に防止できる。
【0017】
上記の構成において、規制部材は、傾斜成形面から起立して規制面を有する第一部分と、傾斜成形面に沿う第二部分とを有し、ヒーターは、第二部分に配置されていることが好ましい。
【0018】
規制部材は、第一部分の面積に比べて第二部分の面積を大きくとることができる場合が多いため、ヒーターの配置スペースを確保しやすくなる。また、規制部材に成形体の幅方向両端部を嵌め込んで固定する場合には、成形体の傾斜成形面にヒーターの熱を伝えやすくなる。
【0019】
第二部分にヒーターを配置する場合、ヒーターは、一対の傾斜成形面のうちの一方に沿う第二部分と、一対の傾斜成形面のうちの他方に沿う第二部分とにそれぞれ配置されていることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、成形体の一対の傾斜成形面のそれぞれに、ヒーターの熱を伝えやすくなる。
【0021】
第二部分にヒーターを配置する場合、一対の傾斜成形面のうちの一方に沿う第二部分に設けられたヒーターと、一対の傾斜成形面のうちの他方に沿う第二部分に設けられたヒーターとが、成形体の下端部で連続していることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、溶融ガラスの失透が生じやすい成形体の下端部を効率よく加熱できる。
【0023】
上記の構成において、ヒーターは、規制部材に1箇所のみ溶接されていることが好ましい。
【0024】
このようにすれば、ヒーターから規制部材への漏電を防止しながら、ヒーターを規制部材に確実に固定できる。
【0025】
上記の構成において、ヒーターは、規制部材の下端部に溶接されていることが好ましい。
【0026】
このようにすれば、ヒーターを規制部材に確実に固定できる。また、成形体の下端部周辺でヒーターを規制部材に確実に密着させることができるため、溶融ガラスの失透が生じやすい成形体の下端部を効率よく加熱できる。
【0027】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、成形装置を用いて、オーバーフローダウンドロー法により、溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形工程を備えるガラス物品の製造方法において、成形装置は、溶融ガラスを流下させる成形体と、成形体の幅方向両端部に配置され、成形体を流下する溶融ガラスの幅方向両端部を規制する規制面を有する規制部材とを備え、成形工程では、規制面よりも幅方向外側で、規制部材の下部のみに配置されたヒーターにより、規制部材を加熱することを特徴とする。
【0028】
このようにすれば、上述の対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ガラスリボンの温度分布を均一に維持しながら、成形体の幅方向両端部の下端部における溶融ガラスの失透を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係るガラス物品の製造装置に含まれる成形装置を示す正面図である。
図2図1に示す成形装置のA-A断面図である。
図3図1に示す成形装置のB-B断面図である。
図4図3のQ領域を拡大して示す拡大図である。
図5図1のP領域を拡大して示す拡大図である。
図6図1のP領域の変形例を拡大して示す拡大図である。
図7図1に示す成形装置の変形例のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、図中に示すXYZからなる直交座標系において、X方向及びY方向が水平方向であり、Z方向が鉛直方向である。また、成形されるガラスリボンGの幅方向に対応する方向を幅方向X、成形されるガラスリボンGの厚み方向に対応する方向を厚み方向Yと呼ぶ。
【0032】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るガラス物品の製造装置は、オーバーフローダウンドロー法によって、溶融炉(図示略)から供給される溶融ガラスGmを、帯状のガラスリボンGに成形する成形装置1を備えている。
【0033】
成形装置1は、成形室(図示略)の内部に配置された成形体2を備えている。成形装置1は、成形室の下方に、ガラスリボンGの徐冷(アニール)を行う徐冷室、ガラスリボンGの冷却を行う冷却室、ガラス物品としてのガラス板を得るために、ガラスリボンGを所定サイズに切断する切断室をさらに備えている。得られたガラス板は、例えばディスプレイのガラス基板やカバーガラスに用いられる。
【0034】
成形体2は、成形されるガラスリボンGの幅方向Xに沿って長尺な耐火物により形成されている。なお、本明細書において、成形体2の幅方向は、成形されるガラスリボンGの幅方向Xと同じ方向を意味する。
【0035】
成形体2の頂部には、幅方向Xに沿って形成された溝部(オーバーフロー溝)3が設けられている。溝部3の幅方向Xの一端側には、供給パイプ(図示略)が接続されている。この供給パイプを通じて溝部3内に溶融ガラスGmが供給される。溶融ガラスGmの供給方法はこれに限定されない。例えば溝部3の幅方向Xの両端側から溶融ガラスGmを供給するようにしてもよいし、溝部3の上方から溶融ガラスGmを供給するようにしてもよい。
【0036】
成形体2は、厚み方向Yにおいて対称形状をなす。成形体2の厚み方向Yの両外側面4はそれぞれ、鉛直方向に沿った平面状をなす垂直成形面5と、垂直成形面5の下方に連なり、鉛直方向に対して傾斜した平面状をなす傾斜成形面6とを備えている。各垂直成形面5は、互いに平行な面である。各傾斜成形面6は、下方に向かうに連れて厚み方向Yに互いに近づくように傾斜した面である。つまり、成形体2は、各傾斜成形面6が形成されることで、幅方向Xから見た場合に下方に向かって先細りする楔状をなし、各傾斜成形面6が交わる角部が成形体2の下端部2aを形成している。なお、垂直成形面5は、傾斜面や曲面などに形状を変更してもよいし、省略してもよい。
【0037】
図1及び図2に示すように、成形体2の幅方向Xの両端部には、垂直成形面5及び傾斜成形面6を流下する溶融ガラスGmの広がりを規制する規制部材7がそれぞれ設けられている。
【0038】
規制部材7は、例えば白金又は白金合金により形成されている。
【0039】
規制部材7は、成形体2の幅方向Xの両端部にそれぞれ外嵌された状態で固定されている。詳細には、規制部材7に設けられた嵌合凹部8に成形体2の幅方向Xの端部が嵌め込まれている。なお、規制部材7の固定方法はこれに限定されない。例えば、規制部材7は、成形体2にピン等により固定されていてもよい。
【0040】
本実施形態では、規制部材7は、成形体2の外側面4から起立する第一部分9と、成形体2の外側面4に沿う第二部分10とを有する。詳細には、第一部分9は、成形体2の垂直成形面5から起立する第一部分9の上部と、成形体2の傾斜成形面6から起立する第一部分9の下部とを有する。同様に、第二部分10は、成形体2の垂直成形面5に沿う第二部分10の上部と、成形体2の傾斜成形面6に沿う第二部分10の下部とを有する。
【0041】
第一部分9の幅方向Xの内側端面は、成形体2の外側面4を流下する溶融ガラスGmの幅方向Xの端部と接触する規制面11とされている。規制面11は、垂直成形面5及び傾斜成形面6に対して垂直であり、かつ、下方に真っ直ぐ延びる平面からなる。すなわち、規制面11は、YZ平面に沿う平面である。
【0042】
図1及び図2に示すように、成形体2の幅方向Xの両端部の下部には、成形体2の下端部2a(傾斜成形面6の下端部6a)の一部を下方から覆うように、案内部材12がそれぞれ設けられている。案内部材12は、成形体2の傾斜成形面6を正常に流下する溶融ガラスGmの一部を傾斜成形面6に沿って案内する役割と、成形体2と規制部材7との間の隙間から嵌合凹部8内に侵入した溶融ガラスGmを成形体2の下端部2aでF方向に排出し、成形体2の傾斜成形面6に沿って正常に流下する溶融ガラスGmに合流させる役割とを有する。
【0043】
案内部材12は、規制部材7と同一材料(例えば白金又は白金合金)により形成されている。
【0044】
案内部材12は、規制部材7の規制面11に沿った垂直案内面13と、成形体2の傾斜成形面6に沿った傾斜案内面14と、成形体2の下端部2aで傾斜案内面14から垂下されたフィン15とを備えている。フィン15は、鉛直方向Zに沿って延びる板状体である。
【0045】
案内部材12は、垂直案内面13、傾斜案内面14及びフィン15が一体化された単一部材である。本実施形態では、垂直案内面13を規制部材7の規制面11に溶接等することにより、案内部材12が規制部材7に固定されている。なお、案内部材12の固定方法はこれに限定されない。例えば、案内部材12は、傾斜成形面6に固定されていてもよい。
【0046】
傾斜案内面14は、成形体2の下端部2aの形状に倣ったV字状をなし、その下端部2aの一部、及び各傾斜成形面6の一部を覆っている。また、傾斜案内面14は、幅方向Xの寸法が案内部材12の下端側に向かうに連れて長くなるように形成されている。
【0047】
垂直案内面13の厚みは、例えば0.5~3mmである。傾斜案内面14の厚みは、例えば0.5~3mmである。フィン15の厚みは、例えば0.5~10mmであり、フィン15の幅方向Xの寸法は、例えば10~100mmである。
【0048】
本実施形態では、フィン15は、傾斜成形面6の下端部6aの幅方向両端部のみに設けられているが、これに限定されない。例えば、フィン15は、傾斜成形面6の下端部6aの全域に設けられていてもよい。あるいは、フィン15は、省略してもよい。
【0049】
図1及び図3に示すように、規制面11よりも幅方向Xの外側における規制部材7の下部には、ヒーター16が設けられている。このようにすれば、規制部材7の下部のみが加熱されるため、成形体2を流下する溶融ガラスGmの幅方向Xの両端部が過剰に加熱されることがない。このため、ガラスリボンGの温度分布を均一に維持しながら、成形体2の幅方向Xの両端部の下端部2aにおける溶融ガラスGmの失透を抑制できる。
【0050】
ここで、規制部材7の下部とは、成形体2の傾斜成形面6に対応する位置であることが好ましい。本実施形態では、ヒーター16は、成形体2の傾斜成形面6に対応する位置のみに配置されており、成形体2の垂直成形面5に対応する位置には配置されていない。
【0051】
ヒーター16は、抵抗加熱式ヒーターである。ヒーター16の発熱部(導電部)は、例えば、白金や白金合金、ニクロム、鉄クロム、カーボン、炭化ケイ素から形成される。
【0052】
本実施形態では、ヒーター16は、規制部材7の第二部分10の下部の表面に配置されている。
【0053】
ヒーター16は、第一の幅W1を有する幅広部17(広大部)と、幅広部17よりも下方位置に設けられ、第一の幅W1よりも小さい第二の幅W2を有する幅狭部18(狭小部)と有する。幅広部17及び幅狭部18は、第二部分10の下部の表面に沿った帯状体である。このようにすれば、断面積が小さく抵抗値が大きい幅狭部18の発熱量が、断面積が大きく抵抗値が小さい幅広部17の発熱量よりも大きくなるため、失透が生じやすい成形体2の下端部2aを重点的に加熱できる。
【0054】
(狭小部の断面積)/(広大部の断面積)は、例えば、0.1~0.8であることが好ましく、0.3~0.5であることがより好ましい。また、(傾斜成形面6に沿った方向における狭小部の寸法L2)/((傾斜成形面6に沿った方向における傾斜成形面6の寸法)+(垂直成形面5に沿った方向における垂直成形面5の寸法))は、例えば、0.01~0.3であることが好ましく、0.1~0.2であることがより好ましい。(傾斜成形面6に沿った方向における広大部の寸法L1)/((傾斜成形面6に沿った方向における傾斜成形面6の寸法)+(垂直成形面5に沿った方向における垂直成形面5の寸法))は、例えば、0.01~0.3であることが好ましく、0.1~0.2であることがより好ましい。なお、ヒーター16に広大部と狭小部を設ける場合、幅を一定にして厚みを異ならせてもよく、幅と厚みの両方を異ならせてもよい。また、ヒーター16は、断面積が一定であってもよい。
【0055】
図3に示すように、ヒーター16は、一対の傾斜成形面6のうちの一方に沿う第二部分10と、一対の傾斜成形面6のうちの他方に沿う第二部分10とにそれぞれ配置されている。一方の傾斜成形面6に沿う第二部分10に配置されたヒーター16と、他方の傾斜成形面6に沿う第二部分10に配置されたヒーター16とは、成形体2の下端部2aで連続している。つまり、ヒーター16は一本の連続した帯状体であり、その連続部19は傾斜成形面6の下端部6aに倣ったV字形状をなす。
【0056】
図4に示すように、規制部材7の第二部分10の表面には、溶射膜からなる絶縁層20が成膜されており、この絶縁層20がヒーター16と接触している。絶縁層20は、規制部材7とヒーター16との間の絶縁が維持できれば、ヒーター16の配置領域の全体に形成されていてもよいし、ヒーター16の配置領域に部分的に形成されていてもよい。本実施形態では、絶縁層20は、第二部分10の表面の略全面に形成されている。このように溶射膜からなる絶縁層20を形成すれば、ヒーター16から規制部材7への熱伝導を阻害することなく、ヒーター16と規制部材7との間の絶縁が可能となるため、規制部材7の下部を効率よく加熱できる。
【0057】
絶縁層20は、例えばアルミナ・ジルコニアの溶射膜やアルミナの溶射膜、ジルコニアの溶射膜により形成される。
【0058】
なお、絶縁層20は、規制部材7の表面ではなく、ヒーター16の表面に成膜されていてもよい。あるいは、絶縁層20は省略してもよい。
【0059】
図5に示すように、ヒーター16は、規制部材7の第一部分9に溶接により固定されている。ヒーター16と規制部材7との溶接部21は、規制部材7上の1箇所のみに形成されている。溶接部21には、絶縁層20は形成されていない。このようにすれば、規制部材7への通電を防止しながら、ヒーター16を規制部材7に確実に固定できる。
【0060】
図5では、溶接部21は、規制部材7の下端部7aに形成されているが、これに限定されない。つまり、溶接部21は、規制部材7の下端部7aよりも上方のいずれか1箇所に形成されていてもよい。ただし、溶接部21を規制部材7の下端部7aに形成した場合、成形体2の下端部2a周辺でヒーター16を規制部材7に確実に密着させることができる。このため、溶融ガラスGmの失透が生じやすい成形体2の下端部2aを効率よく加熱できる。したがって、溶接部21は、規制部材7の下端部7aに形成することが好ましい。
【0061】
溶接部21を規制部材7の下端部7aに形成する場合、図6に示すように、溶接部21は、2箇所以上(図示例は2箇所)に形成されていてもよい。これは、規制部材7の下端部7aであれば、ヒーター16から規制部材7に通電しても規制部材7の下端部7aを加熱できるためである。
【0062】
溶接部21は、規制部材7及びヒーター16の発熱部と同じ材質(例えば、白金、白金合金など)で形成される。
【0063】
本実施形態に係るガラス物品の製造方法は、上記の成形装置1を用いて、オーバーフローダウンドロー法により、溶融ガラスGmからガラスリボンGを成形する成形工程を含む。成形工程では、溝部3に供給された溶融ガラスGmが、溝部3から溢れ出た後、各外側面4をそれぞれ伝って、成形体2の下端部2aで合流する。これにより、溶融ガラスGmからガラスリボンGが連続成形される。
【0064】
本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
上記の実施形態では、ヒーター16の一端部及び他端部を成形体2の下端部2aよりも上方に位置させ、ヒーター16の中央部(連続部19)を成形体2の下端部2a周辺に位置させる態様を説明したが、ヒーター16の配置態様はこれに限定されない。例えば、ヒーター16の一端部及び他端部を成形体2の下端部2a周辺に位置させ、ヒーター16の中央部(連続部19)を成形体2の下端部2aよりも上方に位置させる態様としてもよい。また、ヒーター16は、連続部19を設けることなく、一方の傾斜成形面6に沿う第二部分10に配置されたヒーター16と、他方の傾斜成形面6に沿う第二部分10に配置されたヒーター16とをそれぞれ独立した回路としてもよい。
【0066】
図7に示すように、規制部材7の第一部分9の幅方向の外側端面(溶融ガラスGmと接触しない側の端面)22に、ヒーター16を配置してもよい。この構成においても、ヒーター16は、幅広部17(広大部)と、幅広部17(広大部)よりも下方位置に設けられる幅狭部18(狭小部)とを有していてもよい。
【0067】
ヒーター16は、抵抗加熱式ヒーターに限定されない。例えば、ヒーター16は、通電加熱式ヒーター、誘導加熱式ヒーターなどであってもよい。
【0068】
上記の実施形態において、案内部材12は省略してもよい。
【0069】
上記の実施形態では、ガラス物品がガラス板である場合を説明したが、ガラス物品は、例えば、ガラスリボンGを巻芯などの周りにロール状に巻き取ったガラスロールなどであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 成形装置
2 成形体
4 外側面
5 垂直成形面
6 傾斜成形面
7 規制部材
8 嵌合凹部
9 第一部分
10 第二部分
11 規制面
12 案内部材
13 垂直案内面
14 傾斜案内面
15 フィン
16 ヒーター
17 幅広部(広大部)
18 幅狭部(狭小部)
19 連続部
20 絶縁層
21 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7