(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】エアバッグカバー
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2165 20110101AFI20240515BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20240515BHJP
B60K 37/00 20240101ALI20240515BHJP
【FI】
B60R21/2165
B60R21/205
B60K37/00 Z
(21)【出願番号】P 2021115334
(22)【出願日】2021-07-12
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 裕紀
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210230(JP,A)
【文献】特表2005-518994(JP,A)
【文献】特開2006-123719(JP,A)
【文献】特開2004-114738(JP,A)
【文献】特開2004-352179(JP,A)
【文献】特開2006-036149(JP,A)
【文献】特開平05-162599(JP,A)
【文献】特開2009-248610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0010043(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012208491(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/2165
B60R 21/205
B60K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の表面側に接着された表皮層と、を備えて、折り畳まれたエアバッグの上方を覆う構成とするとともに、
前記エアバッグの膨張時に、前記基材に設けられたドア部が、膨張する前記エアバッグに押され、周囲の破断予定部を破断させ、かつ、前記ドア部の周縁の前記表皮層の部位を破断させて、前記エアバッグの突出用開口を形成するように開く構成とし、かつ、
前記ドア部が、折り畳まれた前記エアバッグを収納するケース側から延びるドア保持部を、裏面側に連結させて、開き可能に前記ドア保持部に保持される構成のエアバッグカバーであって、
前記基材の前記破断予定部が、前記基材の表裏を貫通して、前記ドア部の縁に沿うように配設される帯状の複数の破断用開口と、前記破断用開口間を塞ぐように配設されて、前記エアバッグの膨張時に破断される複数の破断用連結部と、を備えて構成され、
前記破断予定部が、開き時の前記ドア部の回転中心側のヒンジ部から離れた前記ドア部の先端側の中央付近の部位を、破断の起点部位として、破断する構成とし、
前記起点部位のエリアにおける前記破断用連結部が、
隣接する前記破断用開口間の平面視の幅寸法として、前記ドア部の前記ヒンジ部に接近した元部より、離隔された先端部を小さくして、配設されて
おり、
前記元部の厚みより前記先端部の厚みが薄くなるように凹む凹部を備えることを特徴とするエアバッグカバー。
【請求項2】
前記起点部位のエリアにおける前記破断用連結部が、
幅方向の両縁の少なくとも一方における幅寸法を小さくした前記先端部側の縁を、連結される前記破断用開口側の縁に対して、平面視で鋭角状として、連結させていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグカバー。
【請求項3】
前記起点部位のエリアにおける前記破断用連結部が、
幅方向の両縁における幅寸法を小さくした前記先端部側の縁を、連結される前記破断用開口側の縁に対して、それぞれ、平面視で鋭角状として、連結させていることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグカバー。
【請求項4】
前記ドア部が、略四角板状として、周囲に、開き時の先端側の先端縁と、開き時の回転中心側のヒンジ部と、前記先端縁の両端と前記ヒンジ部の両端との間の二つの側縁と、を配設させ、
前記先端縁側と二つの前記側縁側とに、前記破断予定部が配設され、
前記ヒンジ部に、前記基材の裏面側から表面側に凹む凹溝が配設され、
前記破断予定部の前記破断用開口と前記ヒンジ部の前記凹溝とが、前記基材の成型時に同時に賦形されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエアバッグカバー。
【請求項5】
前記ドア部の前記先端縁側の前記破断予定部を間にし、かつ、前記先端縁側の前記破断予定部を共用して、前記側縁と前記ヒンジ部とを含めて、対称的に、膨張時に開く第2のドア部が、配設されていることを特徴とする請求項4に記載のエアバッグカバー。
【請求項6】
前記第2のドア部が、前記ドア部の後方側に配置されて、車両の前席前方のインストルメントパネルに配設される構成としていることを特徴とする請求項5に記載のエアバッグカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員等を保護するように膨張するエアバッグを備えたエアバッグ装置に使用され、折り畳まれたエアバッグを覆い、かつ、エアバッグの膨張時には、突出用開口を形成して、エアバッグを突出させる構成のエアバッグカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のインストルメントパネルに配設されるエアバッグカバーでは、ポリプロピレン等からなる合成樹脂製の基材と、基材の表面側に接着された表皮層と、を備えて、折り畳まれたエアバッグの上方を覆う構成とするとともに、エアバッグの膨張時に、基材に設けられたドア部が、膨張するエアバッグに押され、周囲の破断予定部を破断させ、かつ、ドア部の周縁の表皮層の部位を破断させて、エアバッグの突出用開口を形成するように開く構成としていた(例えば、特許文献1参照)。ドア部は、折り畳まれたエアバッグを収納するケース側から延びるドア保持部を、裏面側に連結させて、開き可能にドア保持部に保持される構成としていた。
【0003】
また、エアバッグカバーとして、表皮層を接着させたドア部が円滑に開くように、表皮層に、破断するラインに沿って、表裏を貫通する複数の孔を配設させるものもあった。そして、表皮層に設けた孔は、目立たなくするように、基材の成形時に、基材から突出する突部で孔を塞いでいた(例えば、特許文献2参照)。あるいは、エアバッグの膨張時に、表皮層を破断させ易いように、基材に、表皮層側に突出する突条を設けて、ドア部の開き時、突条をカッタのように表皮層に押し付けて、表皮層を破断させ易くするものもあった(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-210230号公報
【文献】特開2004-114738号公報
【文献】特開2004-352179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のエアバッグカバーにおいて、特許文献2,3に記載の表皮層を破断させ易いように、表皮層に孔を設けたり、あるいは、基材から突出する突条を表皮層の裏面側に配置させる構成では、特許文献1に記載のものに比べて、基材の表面側に接着させる表皮層を的確に破断させて、円滑にエアバッグを突出可能な突出用開口を形成できるものの、表皮層の表面側に孔や突条の影響が表われて、表皮層の意匠性を低下させてしまう虞れが生ずる。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、基材の表面側に接着させる表皮層を、意匠性の低下を抑制して、的確に破断させて、エアバッグを突出可能な突出用開口を円滑に形成できるエアバッグカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアバッグカバーでは、基材と、該基材の表面側に接着された表皮層と、を備えて、折り畳まれたエアバッグの上方を覆う構成とするとともに、
前記エアバッグの膨張時に、前記基材に設けられたドア部が、膨張する前記エアバッグに押され、周囲の破断予定部を破断させ、かつ、前記ドア部の周縁の前記表皮層の部位を破断させて、前記エアバッグの突出用開口を形成するように開く構成とし、かつ、
前記ドア部が、折り畳まれた前記エアバッグを収納するケース側から延びるドア保持部を、裏面側に連結させて、開き可能に前記ドア保持部に保持される構成のエアバッグカバーであって、
前記基材の前記破断予定部が、前記基材の表裏を貫通して、前記ドア部の縁に沿うように配設される帯状の複数の破断用開口と、前記破断用開口間を塞ぐように配設されて、前記エアバッグの膨張時に破断される複数の破断用連結部と、を備えて構成され、
前記破断予定部が、開き時の前記ドア部の回転中心側のヒンジ部から離れた前記ドア部の先端側の中央付近の部位を、破断の起点部位として、破断する構成とし、
前記起点部位のエリアにおける前記破断用連結部が、
隣接する前記破断用開口間の平面視の幅寸法として、前記ドア部の前記ヒンジ部に接近した元部より、離隔された先端部を小さくして、配設されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るエアバッグカバーでは、エアバッグの膨張時、ドア部が、膨張するエアバッグに押されて、破断予定部の破断の起点部位において、破断用連結部を破断させる。この破断される破断用連結部は、幅寸法の狭い側に応力集中が生じて破断される。その際、破断用連結部は、ヒンジ部に接近したドア部側の幅寸法の広い元部側を残して、ドア部から離れた幅寸法の狭い先端部側を破断させることから、その幅寸法の狭い先端部側を、ドア部の開きに伴なって、ヒンジ部を回転中心として、表皮層の裏面側に当てて、表皮層を押し上げる。すなわち、破断用連結部が、ドア部の先端縁に結合させたまま、その幅寸法の狭い先端部側が、ドア部の先端縁から突出するナイフのように、表皮層に食い込んで、表皮層を円滑に破断させることができる。その結果、基材のドア部の開きとともに、表皮層が、ドア部の先端縁側から迅速に破断され、さらに、ドア部の周縁に破断を伝播させて、ドア部とともに、円滑に、エアバッグの突出用開口を形成することとなる。そして、ドア部は、表皮層に対して突条等を設けていないことから、表皮層の表面側の意匠性に影響を与えない。さらに、ドア部は、エアバッグ装置のケース側のドア保持部に開き可能に保持されていることから、エアバッグの膨張時、飛散せずに、円滑に、開いて、エアバッグの突出用開口を形成することができる。同様に、表皮層も、基材に接着されて配設されていることから、破断するだけで、エアバッグの膨張時、飛散せずに、円滑に、エアバッグの突出用開口を形成することができる。
【0009】
したがって、本発明に係るエアバッグカバーでは、基材の表面側に接着させる表皮層を、意匠性の低下を抑制して、的確に破断させて、エアバッグを突出可能な突出用開口を円滑に形成することができる。
【0010】
そして、本発明に係るエアバッグカバーでは、前記起点部位のエリアにおける前記破断用連結部が、
幅方向の両縁の少なくとも一方における幅寸法を小さくした前記先端部側の縁を、連結される前記破断用開口側の縁に対して、平面視で鋭角状として、連結させていることが望ましい。
【0011】
このような構成では、起点部位の破断用連結部が、幅寸法を狭くする先端部側において、鋭角状に、隣接する破断用開口の縁と連結されていれば、エアバッグの膨張に伴なう引張力を受けた際、その部位に円滑に応力集中が生じて、容易に、破断される。また、破断した先端部から延びる破断用開口側の端縁が、破断用開口側の縁に対して、破断前に鋭角状に連結されていた状態としていたことから、破断時には、破断用連結部の先端部の押し上げに伴ない、先端部の破断した端面側の縁角から連なって、押し切りするように、表皮層の裏面側に進入し、先端部の押し上げによる破断箇所からの破断を伝播し易くなって、破断の起点部位から、破断予定部に沿って、円滑に、表皮層を破断させることができる。
【0012】
この場合、前記起点部位のエリアにおける前記破断用連結部が、
幅方向の両縁における幅寸法を小さくした前記先端部側の縁を、連結される前記破断用開口側の縁に対して、それぞれ、平面視で鋭角状として、連結させていれば、その破断用連結部の幅寸法を狭くする先端部側の両縁に、一層、円滑に応力集中が生じて、容易に、起点部位の破断用連結部が、破断されることとなる。勿論、破断した先端部から延びる両側の破断用開口側の端縁が、それぞれ、破断用連結部の先端部の押し上げに伴ない、先端部の破断した端面側の縁角から連なって、押し切りするように、表皮層の裏面側に進入することから、一層円滑に、破断の起点部位から、破断予定部に沿って、表皮層を破断させることができる。
【0013】
また、本発明に係るエアバッグカバーでは、前記ドア部が、略四角板状として、周囲に、開き時の先端側の先端縁と、開き時の回転中心側のヒンジ部と、前記先端縁の両端と前記ヒンジ部の両端との間の二つの側縁と、を配設させ、
前記先端縁側と二つの前記側縁側とに、前記破断予定部が配設され、
前記ヒンジ部に、前記基材の裏面側から表面側に凹む凹溝が配設され、
前記破断予定部の前記破断用開口と前記ヒンジ部の前記凹溝とが、前記基材の成型時に同時に賦形されていることが望ましい。
【0014】
このような構成では、エアバッグカバーの基材を型成形して形成する際、同時に、破断予定部の破断用開口とヒンジ部の凹溝とが、形成されることから、容易に、基材を形成することができる。また、破断用連結部の幅寸法の狭い先端部側の縁と対応する破断用開口の縁との連結部位が、鋭角状としていても、型成型であれば、エンドミル等の切削加工に比べて、容易に、形成することができる。
【0015】
そして、本発明に係るエアバッグカバーでは、前記ドア部の前記先端縁側の前記破断予定部を間にし、かつ、前記先端縁側の前記破断予定部を共用して、前記側縁と前記ヒンジ部とを含めて、対称的に、膨張時に開く第2のドア部が、配設されていてもよい。
【0016】
すなわち、このような構成では、エアバッグカバーに、観音扉タイプのドア部を配設することができる。
【0017】
この場合、前記第2のドア部は、前記ドア部の後方側に配置されて、車両の前席前方のインストルメントパネルに配設されるエアバッグカバー、として構成することができる。
【0018】
このような構成では、インストルメントパネルに配設されるエアバッグカバーが、前方側のドア部(第1ドア部)と後方側の第2のドア部(第2ドア部)とを配設させて構成される。そして、エアバッグの膨張に伴なって、第1ドア部と第2ドア部とが開く際、第1ドア部の先端縁側では、破断用連結部が幅寸法の狭い側を破断させることから、すなわち、第1ドア部側に破断用連結部を結合させた状態で、かつ、第2ドア部側に破断用連結部を結合させない状態で、第1ドア部と第2ドア部とが開くこととなり、乗員に近い後方側の第2ドア部が、開き時の先端縁側に、破断用連結部を結合させない状態で、開くこととなる。そのため、第2ドア部が開き時に乗員と接触することとなっても、凹凸の少ない先端縁側を接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る一実施形態のエアバッグカバーを使用するエアバッグ装置の概略斜視図である。
【
図2】実施形態のエアバッグ装置の概略縦断面図である。
【
図3】実施形態のエアバッグカバーの基材におけるドア部付近の底面図である。
【
図4】実施形態の基材における破断予定部の破断の起点部位付近を示す概略拡大底面図であり、
図3のIV部位に対応し、併せて、その部位付近の概略断面図を示す。
【
図5】実施形態の基材におけるドア部の側縁付近を示す概略拡大底面図であり、
図3のV部位に対応し、併せて、その部位付近の概略断面図を示す。
【
図6】実施形態の基材におけるドア部のヒンジ部付近を示す概略拡大底面図であり、
図3のVI部位に対応し、併せて、その部位付近の概略断面図を示す。
【
図7】実施形態のエアバッグカバーにおけるドア部の開き当初を説明する概略拡大縦断面図である。
【
図8】実施形態のエアバッグカバーのドア部における先端縁側の破断予定部の概略部分拡大底面図である。
【
図9】破断予定部の変形例を示すエアバッグカバーの概略部分拡大底面図である。
【
図10】実施形態の基材の成形時を説明する図である。
【
図11】実施形態の破断予定部における起点部位の変形例の破断用連結部を示す概略拡大底面図と、その部位の概略断面図である。
【
図12】実施形態の破断予定部の破断用連結部の種々のバリエーションを示す概略部分底面図である。
【
図13】実施形態のドア部のヒンジ部における種々のバリエーションを示す概略部分断面図である。
【
図14】実施形態の変形例のエアバッグカバーを使用したエアバッグ装置の概略斜視図である。
【
図15】
図14に示す変形例のエアバッグカバーを使用したエアバッグ装置の概略縦断面図である。
【
図16】
図14に示すエアバッグカバーの基材におけるドア部付近の概略底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のエアバッグカバー29は、
図1,2に示すように、車両1のインストルメントパネル(インパネ)2に配設されて、助手席用のエアバッグ装置10に使用されている。インパネ2は、車両1の前席の前方側におけるフロントウインドシールド1aの下方に配設されて、運転席の前方側の運転席側部2a、助手席前方の助手席側部2b、及び、図示しないセンターコンソールの前方側の中央部2c、を備えて構成され、助手席側部2bの部位を、エアバッグ11(
図2参照)の膨張時に、エアバッグ11を円滑に突出させるように突出用開口65を形成するエアバッグカバー29の部位として、構成されている。
【0021】
エアバッグ装置10は、
図2に示すように、膨張用ガスGを流入させて、助手席搭乗者を保護するように、収納部位としてのケース15から、膨張しつつ突出用開口65を経て、突出するエアバッグ11と、エアバッグ11に膨張用ガスGを供給するインフレーター14と、折り畳まれて収納されたエアバッグ11を覆うエアバッグカバー29と、エアバッグ11及びインフレーター14を収納して保持するケース15と、エアバッグカバー29側の後述するドア部31,32とケース15側とを連結する連結部材20と、を備えて構成されている。ケース15は、図示しないブラケットにより、車両1のボディ側に連結され、エアバッグカバー29を設けたインパネ2は、外周縁付近等を車両1のボディ側に保持されるとともに、エアバッグカバー29の部位で、連結部材20を利用して、ケース15の側壁部17に連結されている。
【0022】
エアバッグ11は、ポリエステル等の織布から形成されて、膨張完了形状を、後端に助手席搭乗者を受け止める受止面を設けて前部側にかけて先細り状とする略四角錐台形状とし、前端側の下面に、膨張用ガスGを流入させる流入用開口11aを備えている。流入用開口11aは、円形に開口し、その流入用開口11aの周縁は、エアバッグ11内に配設される略四角環状のリテーナ12により押えられて、ケース15の底壁部16に取り付けられている。リテーナ12は、略四角環状の四隅に、下方に延びるボルト12aを突設させている。各ボルト12aは、エアバッグ11の流入用開口11aの周縁、ケース15の後述する底壁部16、及び、インフレーター14の後述するフランジ部14cを貫通して、ナット13を締結されることにより、ケース15の底壁部16に、エアバッグ11とインフレーター14とを取付固定している。
【0023】
インフレーター14は、略円柱状として上部に膨張用ガスGを吐出するガス吐出口14bを設けた本体部14aと、本体部14aの外周面から突出して、リテーナ12の各ボルト12aを貫通させるフランジ部14cと、を備えて構成されている。
【0024】
ケース15は、板金製として、略長方形板状の底壁部16と、底壁部16の外周縁から上方に延びる略四角筒形状の側壁部17と、を備えて構成されている。底壁部16には、インフレーター14の本体部14aを下方から挿入させる挿通孔16aが開口され、挿通孔16aの周縁には、リテーナ12の各ボルト12aを貫通させる貫通孔(図符号省略)が配設されており、エアバッグ11の流入用開口11aの周縁やインフレーター14のフランジ部14cが、リテーナ12のボルト12aとナット13とにより、ケース15の底壁部16に取付固定されている。側壁部17には、連結部材20の後述するケース側部21の係止孔22に係止させる係止フック17aが、形成されている。係止フック17aは、側壁部17の前後の部位に配設されるとともに、左右方向に沿って複数並設されている。
【0025】
連結部材20は、オレフィン系熱可塑性樹脂等の合成樹脂製として、ケース15の側壁部17を囲むように配設される略四角筒形状のケース側部21と、エアバッグカバー29の裏面側に結合されるドア保持部24(F,B)と、を備えて構成されている。ケース側部21には、前壁部21aと後壁部21bとに、ケース15の係止フック17aを挿入させる係止孔22が、形成されている。ドア保持部24(F,B)は、前後に離れて、エアバッグカバー29のドア部31,32の裏面31d,32d側に溶着されている。各ドア保持部24の上面側には、複数の突条の溶着部24aが形成され、溶着部24aを利用して、ドア保持部24は、振動溶着により、ドア部31,32の裏面31d,32d側に、溶着されている。また、ドア保持部24(F,B)におけるケース側部21の前壁部21aや後壁部21bの近傍には、ドア保持部24が、ドア部31,32を保持した状態で、容易に撓んで開くように、薄肉としたヒンジ部25が、配設されている。
【0026】
エアバッグカバー29は、
図1~6に示すように、基材30と、接着剤を利用して基材30の表面側に接着された表皮層60と、を備えて構成されている。基材30は、ポリプロピレン等の合成樹脂から型成形(詳しくは射出成形)により形成されている。基材30と表皮層60とは、エアバッグカバー29の部位とした助手席側部2bだけでなく、インパネ2の運転席側部2aや中央部2cにも同様に配設されているが、助手席側部2bのエアバッグカバー29の部位では、基材30に連結部材20のドア保持部24(F,B)が、連結されている。
【0027】
表皮層60は、表面60a側に配設される表皮としてのファブリック61と、ファブリック61を接着させたシート状のクッション層62と、を備えて構成されている。ファブリック61は、ポリエステル等の糸を経糸と緯糸とに使用して織った織物、としている。クッション層62は、ポリプロピレン等からなるクッション材から形成されている。
【0028】
そして、基材30における連結部材20の配設部位には、折り畳まれたエアバッグ11を覆い、かつ、膨張するエアバッグ11によって押されて、エアバッグ11を助手席側に突出させる突出用開口65を形成するように、開くドア部31,32が配設されている。ドア部31は、前方側に配設される第1ドア部とし、ドア部32は、後方側に配設される第2ドア部としている。
【0029】
これらのドア部31,32は、周囲の破断予定部34を破断させ、さらに、ドア部31,32の周縁の表皮層60の部位を破断させて、エアバッグ11の突出用開口65を形成するように開く構成としている。勿論、各ドア部31,32は、連結部材20のドア保持部24(F,B)を、裏面31d、32d側に連結させており、ドア保持部24(F,B)とともに、突出用開口65を形成するように、開く構成としている。
【0030】
破断予定部34は、基材30の表裏を貫通して、ドア部31,32の縁に沿うように配設される帯状の複数の破断用開口40と、破断用開口40間を塞ぐように配設されて、エアバッグ11の膨張時に破断される複数の破断用連結部44,48と、を備えて構成されている。そして、破断予定部34は、開き時のドア部31,32の回転中心側のヒンジ部31c,32cから離れたドア部31,32の先端縁31a,32a側の中央付近の部位を、破断の起点部位38として、破断する構成としている。
【0031】
実施形態の場合、第1ドア部31と第2ドア部32とは、それぞれ、左右方向に延びた略長方形板状として、破断予定部34は、上方から見て、左右方向に延びた横棒部35と、横棒部35の左右両端から前後両側に延びた左右の縦棒部36(L,R)と、を配設させて、上方から見て略H字状に構成されている。そして、横棒部35の部位では、破断用開口40を塞ぐように、破断用連結部44が配設され(
図4参照)、縦棒部36(L,R)の部位では、破断用開口40を塞ぐように、破断用連結部48が配設されている(
図5参照)。
【0032】
実施形態の場合、横棒部35の左右方向の中央部位35aが、第1ドア部31と第2ドア部32との先端縁31a,32a側の共用する破断の起点部位38としている。
【0033】
そして、横棒部35に配設される破断用連結部44(A,B)は、隣接する破断用開口40,40間の平面視の幅寸法として、ドア部31のヒンジ部31cに接近した元部44a側より、離隔された先端部44b側を小さくして、配設されている(
図4,8参照)。すなわち、エアバッグカバー29の前方側の第1ドア部31を基準とすれば、起点部位38のエリアにおける破断用連結部44Aは、平面視の状態で、ヒンジ部31c側の元部44aの幅寸法
W11が、ヒンジ部31cから離れた先端部44bの幅寸法
W12より、幅広としている。
【0034】
なお、実施形態の場合、破断用連結部44は、横棒部35に14個配設され、起点部位38のエリアには、4個の破断用連結部44Aが配設され、起点部位38からずれた破断用連結部44Bは、左右に5個ずつ配設されている。
【0035】
起点部位38のエリアの破断用連結部44Aは、隣接する破断用開口40,40側の幅方向(左右方向)の側縁45,46と破断用開口40の前後方向で対向する対向縁41,42との交差角度において、ヒンジ部31c側となる先端部44b側の交差角度θAを、鋭角状(実施形態の場合、約60°)としている(
図4参照)。
【0036】
また、破断予定部34の横棒部35の左右方向の中央部位35aから左右に外れた縦棒部36(L,R)側の破断用連結部44Bは、
図8に示すように、隣接する破断用開口40,40側の幅方向(左右方向)の側縁45,46と破断用開口40の前後方向で対向する対向縁41,42との交差角度において、ヒンジ部31c側となる先端部44b側の交差角度θBを、鋭角状としているものの、破断用連結部44Aに比べて、大きくしている(実施形態の場合、約75°)。
【0037】
なお、基材30の厚さ寸法t0は、約3mm、破断用開口40の開口幅寸法H0は、約1mmとし、破断用連結部44Aの元部44aの幅寸法W11は、約4.2mm、先端部44bの幅寸法W12は、約3mmとし、破断用連結部44Bの元部44aの幅寸法W21は、約4.54mm、先端部44bの幅寸法W22は、約4mmとしている。
【0038】
また、縦棒部36(L,R)に配設される破断用連結部48は、隣接する破断用開口40間を塞ぐように配設されているものの、平面視で鼓状として、破断用開口40側の側縁49,50を半円弧状として、ドア部31,32側の元部48aと、ドア部31,32の周囲における非ドア部(一般部)52側の先端部48bとが、対称形状として、形成されている(
図5参照)。鼓状の破断用連結部48は、エアバッグ11の膨張に伴なう破断時、幅寸法の狭い元部48aと先端部48bとの間の中間部48c付近が破断することとなる。
【0039】
なお、縦棒部36(L,R)は、前部36a側が第1ドア部31の側縁31b側に配設され、後部36b側が第2ドア部32の側縁32b側に配設され、前後方向の中央部36cでは、横棒部35側の破断用連結部44からY字状の二股状に破断用開口40が前後両側に伸びて、それぞれ、破断用連結部48を介在させて、前後に、破断用開口40を伸ばすように、形成されている。
【0040】
各ドア部31,32のヒンジ部31c,32cは、基材30の裏面30b側から表面30a側に凹む凹溝55を、左右方向に沿って、断続的に設けて形成されている。凹溝55は、断面を、略半円弧状の底面56から相互に拡開するような側面57,57を設けて構成されている(
図6参照)。そして、ドア部31,32の開き時、底壁部58が、撓む、若しくは、破断して、ドア部31,32を、突出用開口65を形成するように、回転させる構成としている。
【0041】
実施形態の場合、凹溝55の開口幅寸法H1は、約1mmとし、底壁部58の厚さ寸法t1は、約0.4mmとしている。
【0042】
そして、基材30の破断予定部34の破断用開口40とヒンジ部31c,32cの凹溝55とは、基材30の成型時に同時に賦形されている。すなわち、
図10のA,B,Cに示すように、基材30は、割型71,72を備えた成形型(詳しくは射出成形用形成型)70を利用して、形成される。割型71,72は、基材30の表面30a側と裏面30b側とを成形可能な型面71a,72aを備え、裏面30b側を成形する型面72aには、破断用開口40を形成可能なリブ73と、ヒンジ部31c,
32cの凹溝55を形成可能なリブ74とが配設されている。そのため、基材30は、成形型70の割型71,72を型閉じした際のキャビティ70a内に、基材30の成形材料Mを注入し、硬化させた後、型開きさせ、離型させれば、製造することができる。その結果、基材30の破断予定部34の破断用開口40とヒンジ部31c,32cの凹溝55とは、基材30の成型時に、リブ73,74により、賦形されている。
【0043】
そして、実施形態のエアバッグカバー29では、型成形により形成した基材30に対して、接着剤を塗布して、表皮層60を圧着させれば、形成される。なお、表皮層60は、ファブリック61を、接着剤を塗布したクッション層62に対して、真空成形により吸着させれば、形成される。
【0044】
このように製造したエアバッグカバー29は、連結部材20のドア保持部24(F,B)を、対応する第1ドア部31と第2ドア部32との裏面31d,32dに、溶着させておく。
【0045】
そしてまた、エアバッグ11内にリテーナ12を収納させた状態で、エアバッグ11を折り畳み、図示しないラッピング材により、折り畳んだエアバッグ11を包み、そのエアバッグ11をケース15内に収納する。この時、リテーナ12の各ボルト12aは、ケース15の底壁部16から下方に突出する。ついで、ケース15の挿通孔16aに対して、下方から、インフレーター14の本体部14aを挿入させて、リテーナ12の各ボルト12aをインフレーター14のフランジ部14cに貫通させて、各ボルト12aにナット13を締結すれば、ケース15に、折り畳んだエアバッグ11とインフレーター14とを取付固定することができる。
【0046】
その後、インパネ2を車両1のボディ側に固定するとともに、エアバッグカバー29に溶着させた連結部材20のケース側部21の係止孔22に、ケース15の係止フック17aを挿入係止させ、所定の制御装置から延びる作動用信号の入力用の図示しないリード線を、インフレーター14に結線し、さらに、ケース15を所定のブラケットを利用して、車両1のボディー側に取付固定すれば、エアバッグ装置10を車両1に搭載することができる。
【0047】
このように車両1に搭載したエアバッグ装置10では、膨張用ガスGを吐出するようにインフレーター14が作動すれば、エアバッグ11が膨張用ガスGを流入させて膨張する。そして、エアバッグ11の膨張時、基材30が破断予定部34の破断用連結部44,48を破断させて、第1ドア部31と第2ドア部32とが、ヒンジ部31c,32cを撓ませ、周縁の表皮層60を破断しつつ、連結部材20のドア保持部24(F,B)とともに、押し開かれて、突出用開口65を開口させ、突出用開口65からエアバッグ11が突出することとなる。
【0048】
そして、実施形態のエアバッグカバー29では、エアバッグ11の膨張時、例えば、前方側のドア部31では、ドア部31が、膨張するエアバッグ11に押されて、破断予定部34の破断の起点部位38において、破断用連結部44Aを破断させる。この破断される破断用連結部44Aは、幅寸法W12の狭い側に応力集中が生じて破断される。その際、破断用連結部44Aは、ヒンジ部31cに接近したドア部31側の幅寸法W11の広い元部44a側を残して、ドア部31から離れた幅寸法W12の狭い先端部44b側を破断させることから、その幅寸法W12の狭い先端部44b側の破断面44baにおける基材30の表面30aの縁角44bbを、ドア部31の開きに伴なって、ヒンジ部31cを回転中心として、表皮層60の裏面60b側に当てて、表皮層60を押し上げる。すなわち、
図7のA,B,Cに示すように、破断用連結部44Aが、ドア部31の先端縁31aに結合させたまま、その幅寸法W12の狭い先端部44b側の縁角44bbが、ドア部31の先端縁31aから突出するナイフのように、表皮層60に食い込んで、表皮層60を円滑に破断させることができる。その結果、基材30のドア部31の開きとともに、表皮層60が、ドア部31の先端縁31a側から迅速に破断され、さらに、ドア部31の周縁に破断を伝播させて、ドア部31とともに、円滑に、エアバッグ11の突出用開口65を形成することとなる(
図2の二点鎖線参照)。そして、ドア部31は、表皮層60に対して突条等を設けていないことから、表皮層60の表面60a側の意匠性に影響を与えない。さらに、ドア部31は、エアバッグ装置10のケース15側のドア保持部24に開き可能に保持されていることから、エアバッグ11の膨張時、飛散せずに、円滑に、開いて、エアバッグ11の突出用開口65を形成することができる。同様に、表皮層60も、基材30に接着されて配設されていることから、破断するだけで、エアバッグ11の膨張時、飛散せずに、円滑に、エアバッグ11の突出用開口65を形成することができる。なお、実施形態の場合、起点部位38の破断に伴なって、横棒部35の全域が破断され、破断の伝播により、縦棒部36(L,R)も破断されることとなることから、ドア部32もヒンジ部32cを撓ませて、円滑に開くこととなる。
【0049】
したがって、実施形態のエアバッグカバー29では、基材30の表面30a側に接着させる表皮層60を、意匠性の低下を抑制して、的確に破断させて、エアバッグ11を突出可能な突出用開口65を円滑に形成することができる。
【0050】
そして、実施形態のエアバッグカバー29では、起点部位38のエリアにおける破断用連結部44Aが、幅方向の両縁45,46の少なくとも一方の側縁45における幅寸法W12を小さくした先端部44b側の端縁45aを、連結される破断用開口40側の縁42に対して、平面視で鋭角状として、連結させている。
【0051】
そのため、実施形態では、起点部位38の破断用連結部44Aが、幅寸法W12を狭くする先端部44b側において、鋭角状に、隣接する破断用開口の縁45と連結されていれば、エアバッグ11の膨張に伴なう引張力を受けた際、その部位に円滑に応力集中が生じて、容易に、破断される。また、破断した先端部44bから延びる破断用開口40側の、例えば、端縁45aが、破断用開口40側の縁42に対して、破断前に鋭角状に連結されていた状態としていたことから、破断時には、破断用連結部44Aの先端部44bの押し上げに伴ない、先端部44bの破断した端面(破断面)44ba側の縁角44bbから連なって、押し切りするように、表皮層60の裏面60b側に進入し、先端部44bの押し上げによる破断箇所からの破断を伝播し易くなって、破断の起点部位38から、破断予定部34に沿って、円滑に、表皮層60を破断させることができる。
【0052】
実施形態の場合、さらに、起点部位38のエリアにおける破断用連結部44Aが、幅方向の両縁45,46における幅寸法W12を小さくした先端部44b側の端縁45a,46aを、連結される破断用開口40側の縁42に対して、それぞれ、平面視で鋭角状として、連結させている。そのため、その破断用連結部44Aの幅寸法W12を狭くする先端部44b側の両端縁45a,46aに、一層、円滑に応力集中が生じて、容易に、起点部位38の破断用連結部44Aが、破断されることとなる。勿論、破断した先端部44bから延びる両側の破断用開口40側の端縁45a,46aが、それぞれ、破断用連結部44Aの先端部44bの押し上げに伴ない、先端部44bの破断した破断面44ba側の縁角44bbから連なって、押し切りするように、表皮層60の裏面60b側に進入することから、一層円滑に、破断の起点部位38から、破断予定部34に沿って、表皮層60を破断させることができる。
【0053】
また、実施形態のエアバッグカバー29では、前方側のドア部(第1ドア部)31が、略四角板状として、周囲に、開き時の先端側の先端縁31aと、開き時の回転中心側のヒンジ部31cと、先端縁31aの両端とヒンジ部31cの両端との間の二つの側縁31b,31bと、を配設させ、そして、先端縁31a側と二つの側縁31b側とに、破断予定部34が配設されている。ヒンジ部31cには、基材30の裏面30b側から表面30a側に凹む凹溝55が配設されている。破断予定部34の破断用開口40とヒンジ部31cの凹溝55とが、基材30の成型時に同時に賦形されている。
【0054】
そのため、実施形態では、エアバッグカバー29の基材30を型成形して形成する際、同時に、破断予定部34の破断用開口40とヒンジ部31cの凹溝55とが、形成されることから、容易に、基材30を形成することができる。また、破断用連結部44Aの幅寸法W12の狭い先端部44b側の端縁45aと対応する破断用開口40の縁42との連結部位が、鋭角状としていても、型成型であれば、エンドミル等の切削加工に比べて、容易に、形成することとができる。
【0055】
そして、実施形態のエアバッグカバー29では、ドア部31の先端縁31a側の破断予定部34(横棒部35)を間にし、かつ、先端縁31a側の破断予定部34(横棒部35)を共用して、側縁31b,31bとヒンジ部31cとを含めて、対称的に、膨張時に開く第2のドア部32が、配設されている。第2ドア部32は、先端縁32a側の破断予定部34としての横棒部35を共用し、側縁32b,32bとヒンジ部32cとが、第1のドア部31の側縁31bとヒンジ部31cとに対し、破断予定部34の横棒部35を基準として、対称的に配設されている。
【0056】
そのため、実施形態のエアバッグカバー29には、観音扉タイプのドア部31,32が配設されることとなる。すなわち、エアバッグ11の膨張時、破断予定部34の横棒部35と縦棒部36(L,R)とが破断して、第1ドア部31と第2ドア部32とが、ヒンジ部31c,32cを回転中心として押し開かれて、観音扉のように開くことができて、大きな開口面積の突出用開口65を形成することができる。
【0057】
さらに、実施形態のエアバッグカバー29は、第2のドア部32は、第1のドア部31の後方側に配置されて、車両1の前席前方のインパネ2に配設されるエアバッグカバー29、として構成されている。
【0058】
そのため、実施形態では、インパネ2に配設されるエアバッグカバー29が、前方側のドア部(第1ドア部)31と後方側の第2のドア部(第2ドア部)32とを配設させて構成される。そして、エアバッグ11の膨張に伴なって、第1ドア部31と第2ドア部32とが開く際、第1ドア部31の先端縁31a側では、破断用連結部44A,44Bが幅寸法W12,W22の狭い先端部44b側を破断させることから、すなわち、第1ドア部31側に破断用連結部44A,44Bを結合させた状態で、かつ、第2ドア部32側に破断用連結部44A,44Bを結合させない状態で、第1ドア部31と第2ドア部32とが開くこととなり(
図2の二点鎖線参照)、乗員に近い後方側の第2ドア部32が、開き時の先端縁32a側に、破断用連結部44A,44Bを結合させない状態で、開くこととなる。そのため、第2ドア部32が開き時に乗員と接触することとなっても、凹凸の少ない先端縁32a側を接触させることができる。
【0059】
また、実施形態のエアバッグカバー29では、
図8に示すように、破断予定部34の破断の起点部位38付近では、破断予定部34の横棒部35の中央部位35aにおける破断用連結部44Aが、側縁45,46の幅寸法W12の狭い先端部44bの端縁45a,46aと、破断用開口40の縁42と、との交差角度θAを約60°とし、起点部位38から離れた破断用連結部44Bにおける側縁45,46の幅寸法W22の狭い先端部44bの端縁45a,46aと、破断用開口40の縁42と、との交差角度θBを約75°として、鋭角状の度合いを起点部位38付近を高めている。そのため、エアバッグ11の膨張時、交差角度θAの鋭角状態を高めた破断用連結部44Aを配置させた横棒部35の左右方向の中央部位35a付近が、的確に、破断の起点部位38として、破断して、ドア部31,32が、ヒンジ部31c,32cを回転中心として、先端縁31a,32a側を円滑に回転させて、開くことができる。
【0060】
なお、実施形態では、破断用連結部44の先端部44b側の端縁45a,46aと破断用開口40の縁42との交差角度に関し、交差角度θA(約60°)と交差角度θB(約75°)との二種類として、小さい交差角度θAを破断の起点部位38に配置させた場合を示したが、横棒部35の中央部位35aが、破断の起点部位38と設定される構成であれば、横棒部35の全域を同じ鋭角状の交差角度として、破断用連結部44の先端部44bを配設してもよい。また、破断用連結部44の側縁45,46における端縁45a,46aと、破断用開口40の縁42と、の交差角度θA,θBに関し、少なくとも一方が、鋭角状としていれば、相互に等しく無くとも、他方が、90°近傍の鈍角としてもよく、さらに、交差角度θAと交差角度θBとは、共に鋭角状であれば、相互に等しく無くともよい。
【0061】
また、実施形態のように、鋭角状の交差角度を、破断の起点部位38側から離れるに従って、順次、大きくする場合、実施形態のように、2段階にするほか、
図9に示すように、破断の起点部位38付近の交差角度θCを約45°とし、順次、交差角度θA(約60°)、交差角度θB(約75°)として、三段階として大きくしたり、さらに、細かく、分けて、順次、大きくするように設定してもよい。
【0062】
さらに、破断用連結部としては、
図11に示す破断用連結部44Dのように、幅寸法の狭い先端部44b側が、エアバッグの膨張時に、一層、応力集中して破断されるように、断面積を狭める切込み凹部44bcを備えていてもよい。
【0063】
さらに、破断用連結部44の幅方向の少なくとも一方の縁46としては、
図12のAに示す実施形態のように、元部44a側から先端部44b側に向かって幅寸法を狭めるように、直線状に延びる縁46の他、
図12のBに示す破断用連結部44Eのように、元部44a側から先端部44b側に向かって幅寸法を狭めるように、凹状となる縁46Eとしてもよい。また、
図12のCに示す破断用連結部44Fのように、元部44a側から先端部44b側に向かって幅寸法を狭めるように、凸状となる縁46Fとしてもよい。さらに、
図12のDに示す破断用連結部44Gのように、元部44a側から先端部44b側に向かって幅寸法を狭めるように、角度を変える複数の直線状の縁46Gとしてもよい。
【0064】
また、破断用連結部48としては、ドア部31,32側の元部48aを幅広とし、先端部48b側を幅狭としたり、あるいは、元部48aと先端部48bとの幅寸法を同等としてもよい。
【0065】
さらにまた、ヒンジ部としては、ドア部が円滑に開けばよく、
図13のAに示す実施形態のように、断面形状を半円弧状の底面56から相互に平行な側面57,57を設けるような形状とした凹溝55の他、
図13のBに示すように、放物線を描くような断面形状の凹溝55Hとしてもよい。また、
図13のCに示すように、V字溝状の凹溝55Iとしてもよい。さらに、
図13のDに示すように、V字溝状の底面56から相互に平行な側面57,57を設けた凹溝55Jとしてもよい。
【0066】
また、実施形態では、観音扉タイプのドア部31,32を設けたエアバッグカバー29を示したが、
図14~16に示すように、一枚扉タイプのドア部33を設けたエアバッグカバー29Kとしてもよい。
【0067】
このエアバッグカバー29Kも、インパネ2の助手席側部2bに配設されている。また、エアバッグカバー29Fは、射出成形で形成されるポリプロピン等からなる基材30Kと、接着剤を利用して基材30Kの表面側に接着された実施形態と同様な表皮層60と、を備えて構成されている。さらに、助手席側部2bのエアバッグカバー29Kの部位では、基材30Kに連結部材20Kのドア保持部24Kが、溶着されて連結されている。連結部材20Kは、四角筒形状のケース側部21と、1つのドア保持部24Kと、を備えて構成されている。
【0068】
そして、エアバッグカバー29Kのドア部33は、略長方形状として、ヒンジ部33cを後縁側に配置させ、前縁側を、開き時の先端となる先端縁33aとし、先端縁33aの左右両端から後方に延びる側縁33bとして、裏面33d側に、連結部材20Kのドア保持部24Kを溶着させている。ドア保持部24Kは、後縁側に薄肉のヒンジ部25を配設させている。
【0069】
ドア部33は、周囲のU字状の破断予定部34Kを破断させ、さらに、ドア部33の周縁の表皮層60の部位を破断させて、エアバッグ11の突出用開口65を形成するように開く構成としている。勿論、ドア部33は、実施形態と同様に、連結部材20Kのドア保持部24Kを、裏面33d側に連結させており、ドア保持部24Kとともに、突出用開口65を形成するように、開く構成としている。
【0070】
破断予定部34Kは、基材30Kの表裏を貫通して、ドア部33の縁に沿うように配設される帯状の複数の破断用開口40と、破断用開口40間を塞ぐように配設されて、エアバッグ11の膨張時に破断される複数の破断用連結部44(A,B),48と、を備えて構成されている。そして、破断予定部34Kは、開き時のドア部33の回転中心側のヒンジ部33cから離れたドア部33の先端縁33a側の中央付近の部位を、破断の起点部位38として、破断する構成としている。
【0071】
破断予定部34Kは、起点部位38を中央部位35aに配置させた左右方向に沿って配設される横棒部35Kと、横棒部35Kの左右両端からヒンジ部33cの後方に延びる縦棒部36K(L,R)と、を備えて構成されている。横棒部35Kに配設される破断用連結部44は、起点部位38K付近に、実施形態の破断用連結部44Aを配設させ、縦棒部36K側に、実施形態の破断用連結部44Bを配設させて構成されている。縦棒部36Kには、実施形態の破断用連結部48が配設されている。破断用連結部44(A,B)は、幅広の元部44aをドア部33の先端縁33a側に連結させ、幅狭の先端部44b側をドア部33の後方側の一般部52側に連結させている。
【0072】
このエアバッグカバー29Kでも、車両1に搭載された後のエアバッグ11の膨張時、ドア部33が、膨張するエアバッグ11に押されて、破断予定部34Kの破断の起点部位38において、破断用連結部44Aを破断させ、その際、実施形態と同様に、破断用連結部44Aが、ドア部33の先端縁33aに結合させたまま、その幅寸法の狭い先端部44b側の縁角44bb(
図7参照)が、ドア部33の先端縁33aから突出するナイフのように、表皮層60に食い込んで、表皮層60を円滑に破断させることができる。そして、基材30Kのドア部33の開きとともに、表皮層60が、ドア部33の先端縁33a側から迅速に破断され、さらに、ドア部33の周縁に破断を伝播させて、ドア部33とともに、円滑に、エアバッグ11の突出用開口65を形成することとなり、実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。
【0073】
なお、エアバッグカバーのドア部としては、破断予定部が横棒部の両端をY字状に開いた形状として、横棒部の両側の例えば前後両側の2枚と、横棒部の両側のY字状の破断予定部で囲まれた左右両側の2枚と、の四枚扉タイプとしていても、破断予定部の破断用連結部に、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
2…(インストルメントパネル)インパネ、2b…助手席側部、10…エアバッグ装置、11…エアバッグ、20,20G…連結部材、24(F,B),24K…ドア保持部、29,29K…エアバッグカバー、30,30K…基材、30a…表面、30b…裏面、31…第1ドア部、31a…先端縁、31b…側縁、31c…ヒンジ部、31d…裏面、32…第2ドア部、32a…先端縁、32b…側縁、32c…ヒンジ部、32d…裏面、33…ドア部、33a…先端縁、33b…側縁、33c…ヒンジ部、33d…裏面、34,34K…破断予定部、35,35K…横棒部、35a…中央部位、36,36K(L,R)…縦棒部、38,38K…(破断)起点部位、40…破断用開口、41…(前)対向縁、42…(後)対向縁、44(A,B),44C,44D,44E,44F,44G…(横棒部側)破断用連結部、44a…(幅広側)元部、44b…(幅狭側)先端部、44ba…(先端面)破断面、44bb…縁角、45…(左)側縁、45a…端縁、46,46E,46F,46G…(右)側縁、46a…端縁、48…(一般部側)破断用連結部、48a…(ドア部側)元部、48b…(非ドア部側)先端部、48c…中間部、49…(前)側縁、50…(後)側縁、52…(非ドア部)一般部、55,55H,55I,55J…(ヒンジ部用)凹溝、60…表皮層、60a…表面、60b…裏面、65…突出用開口、70…成形型、70a…キャビティ、71…割型、72…割型、
W(01,11,21)…(幅広部側)幅寸法、W(02,12,22)…(幅狭部側)幅寸法、θA,θB,θC…交差角度。