(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】トイレユニット
(51)【国際特許分類】
A47K 17/00 20060101AFI20240515BHJP
A47K 5/12 20060101ALI20240515BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20240515BHJP
E03D 11/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A47K17/00
A47K5/12 Z
E03D9/00 D
E03D11/00 A
(21)【出願番号】P 2022053598
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2023-06-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】占部 正和
(72)【発明者】
【氏名】野村 厚弥
(72)【発明者】
【氏名】國分 和也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 辰徳
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133243(JP,A)
【文献】特開2013-240394(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0032312(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0052678(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 17/00
A47K 5/12
E03D 9/00
E03D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大便器と、
前記大便器から離れた位置に設けられボウル部を有する洗面器と、
前記洗面器に設けられ水を吐出する水栓装置と、
前記洗面器に設けられ水石けんを吐出する水石けん装置と、
を備え、
前記水栓装置は、前記ボウル部に向けて差し出された手を検知することにより自動で水を吐出させ、
前記水石けん装置は、前記ボウル部に向けて差し出された手を検知することにより自動で水石けんを吐出させ、
前記水石けん装置は、前記ボウル部を挟んで前記水栓装置とは反対側に配置されており、
前記水栓装置は、前記手を検知する水栓用センサを有し、
前記水石けん装置は、前記手を検知する水石けん用センサを有し、
前記水栓用センサの水栓用検知範囲と、前記水石けん用センサの水石けん用検知範囲と
は、
前記洗面器の幅方向に離間し
ていることを特徴とするトイレユニット。
【請求項2】
前記水石けん装置は、前記水栓装置よりも前記大便器側に配置されており、
前記洗面器に対する前記水栓装置の設置部から前記水栓用検知範囲の先端までの距離は、前記洗面器に対する前記水石けん装置の設置部から前記水石けん用検知範囲の先端までの距離よりも長くなっていることを特徴とする請求項1に記載のトイレユニット。
【請求項3】
前記水石けん用センサは、前記水石けん装置の設置部の上方に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のトイレユニット。
【請求項4】
前記水石けん用検知範囲は、前記水石けん用センサから横方向に向けて放射状に延びていることを特徴とする請求項2に記載のトイレユニット。
【請求項5】
前記洗面器は、前記ボウル部の中心線に対して対称位置に形成された第1開口部および第2開口部を有し、
前記第1開口部と、前記第2開口部
とは、同じ形状および大きさとなっており、
前記水栓装置および前記水石けん装置は、前記第1開口部と前記第2開口部とのどちらにも取付可能となっていることを特徴とする請求項1
~4のいずれか1項に記載のトイレユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、トイレユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
大便器が設置されたトイレ室に洗面器を備えたトイレユニットが知られている。このようなトイレユニットの洗面器においては、例えば水を吐出する水栓装置と、水石けんを吐出する水石けん装置と、が設けられたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような水石けん装置は、手を上方に動かしてタンクの操作部を押圧しなければ水石けんを吐出させることができず、使い勝手が悪くなるおそれがある。また、タンクの操作部は、不特定多数の人が接触するので、衛生面が気になる使用者がいるおそれがある。
【0005】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、使い勝手のよいトイレユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、大便器と、前記大便器から離れた位置に設けられボウル部を有する洗面器と、前記洗面器に設けられ水を吐出する水栓装置と、前記洗面器に設けられ水石けんを吐出する水石けん装置と、を備え、前記水栓装置は、前記ボウル部に向けて差し出された手を検知することにより自動で水を吐出させ、前記水石けん装置は、前記ボウル部に向けて差し出された手を検知することにより自動で水石けんを吐出させ、前記水石けん装置は、前記ボウル部を挟んで前記水栓装置とは反対側に配置されていることを特徴とするトイレユニットである。
【0007】
このトイレユニットによれば、水栓装置は、自動で水が吐出され、水石けん装置は、自動で水石けんが吐出される。そして、水栓装置と、水石けん装置と、は、対面に設置されているので、水平方向に手を移動するだけで、水栓装置や水石けん装置に非接触で手洗い動作を行うことができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記水栓装置は、前記手を検知する水栓用センサを有し、前記水石けん装置は、前記手を検知する水石けん用センサを有し、前記水栓用センサの水栓用検知範囲と、前記水石けん用センサの水石けん用検知範囲と、は、離間していることを特徴とするトイレユニットである。
【0009】
このトイレユニットによれば、水栓用センサの水栓用検知範囲と、水石けん用センサの水石けん用検知範囲とを離間させることで、意図しない水の吐出および水石けんの吐出を抑制することができる。また、互いの検知範囲の間に非検知範囲を形成させることができるので、この非検知範囲を手洗い動作の手もみ空間として確保することができる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記水石けん装置は、前記水栓装置よりも前記大便器側に配置されており、前記洗面器に対する前記水栓装置の設置部から前記水栓用検知範囲の先端までの距離は、前記洗面器に対する前記水石けん装置の設置部から前記水石けん用検知範囲の先端までの距離よりも長くなっていることを特徴とするトイレユニットである。
【0011】
このトイレユニットによれば、非検知範囲(手もみ空間)が、大便器側に寄っているため、使用者は、大便器から洗面器に向けて大きく移動することなく、手洗い動作を行うことができる。例えば、車いすを使用している使用者が大便器から洗面器に移動する場合に、車いすの切り返しなどを少なくすることができる。これにより、様々な人にとって使い勝手をより向上させることができる。
【0012】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記洗面器は、前記ボウル部の中心線に対して対称位置に形成された第1開口部および第2開口部を有し、前記第1開口部と、前記第2開口部と、は、同じ形状および大きさとなっており、前記水栓装置および前記水石けん装置は、前記第1開口部と前記第2開口部とのどちらにも取付可能となっていることを特徴とするトイレユニットである。
【0013】
このトイレユニットによれば、トイレ室の壁面に対して右側または左側の何れの壁面側に洗面器が取り付けられても、水栓装置と水石けん装置との配置関係を同じようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、使い勝手のよいトイレユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るトイレユニットを設置したトイレ室を模式的に示す斜視図である。
【
図2】ライニングの第1部位と第2部位とを正面からみた正面図である。
【
図3】水栓ユニットおよび水石けんユニットの水路系および制御系を示すブロック図である。
【
図4】水栓装置の水栓用検知範囲と水石けん装置の水石けん用検知範囲とを示す説明図である。
【
図5】洗面器から水栓装置と水石けん装置とを取り外した状態を示す平面図である。
【
図6】大便器と洗面器との間における車いすの動線を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態に係るトイレユニットを設置したトイレ室を模式的に示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、トイレ室TRは、例えば公共施設のトイレ室である。トイレ室TRは、多目的トイレや多機能トイレなどの独立した1つの部屋である。トイレ室TRは、パーティションなどで仕切られた状態で1つの部屋に並べて設けられる、いわゆるトイレブースでもよい。
【0018】
トイレ室TRには、大便器12、洗面器50、水栓装置66、および水石けん装置86を有するトイレユニット10が設けられている。また、トイレ室TRには、その他に、他の洗面器16、ベビーチェア20、小便器22、汚物流しユニット24、紙巻器38、および手すり40などの機器が設置されている。また、図示しない手洗い乾燥機やベビーシートなどの機器が設けられていてもよい。
【0019】
但し、トイレ室TRに設置される機器は、これらに限ることなく、任意の機器でよい。これら機器は、例えばトイレ室TRの壁側に設けられたライニング30に並んで配設されている。そして、これら機器が配設されていない壁側には、トイレ室TRの出入口1が形成されている。この出入口1には、開閉式のドア2が設けられている。
【0020】
大便器12は、下方に向けて窪んだボウル部を有する便器本体13と、便器本体13の上に取り付けられた便座装置14とを備えている。便器本体13は、ボウル部において使用者の尿や便などの排泄物を受ける。すなわち、大便器12は、洋式腰掛大便器である。便座装置14は、便器本体13に対して一体的に取り付けてもよいし、便器本体13に対して着脱可能に取り付けてもよい。
【0021】
便座装置14は、使用者が便器本体13の上に座るための便座14aを有する。また、便座装置14は、例えば便座14aに座った使用者の「おしり」などの洗浄を実現する身体洗浄機能部などを有する。すなわち、便座装置14は、衛生洗浄装置である。便座装置14の上方には、便座14aに着座した使用者の背もたれ15が設けられている。
【0022】
他の洗面器16は、大便器12で用を足した使用者などが手を洗うものである。ベビーチェア20は、大便器12の側方に設けられ、保護者が大便器12などを利用する際などに、一時的に乳幼児を座らせておけるようにするための椅子である。また、小便器22は、使用者の尿を受けるもので、ベビーチェア20の側方に設けられている。汚物流しユニット24は、小便器22の側方に設けられ、オストメイトの方が排泄物などの汚物を処理するための器具である。
【0023】
トイレ室TRには、出入口1に対向する壁側にライニング30が設けられている。ライニング30は、キャビネットやケーシングなどと呼ばれる場合もある。ライニング30は、トイレ室TRの壁面や床面に設置されている。ライニング30には、大便器12、背もたれ15、他の洗面器16、ベビーチェア20、小便器22、汚物流しユニット24および洗面器50などの機器が設けられている。ライニング30は、上方からみた上面視(平面視)においてL字状に形成されている。
【0024】
ライニング30は、トイレ室TRの壁面から突出している。ライニング30の内部には、管路や電気機器などが収納されている。ライニング30は、大便器12の側方に位置する第1部位30aと、第1部位30aに隣接する第2部位30bと、を有する。
【0025】
第2部位30bは、第1部位30aよりも大便器12から離れた位置に配設されている。第1部位30aは、下端が床面に載置されており、床面から上方に向けて延びている。すなわち、第2部位30bは、第1部位30aの上側部分から大便器12とは反対方向に向けて突出している。第2部位30bの下方に位置する第1部位30aの側面は、着脱可能なカバー30a1となっている。
【0026】
ライニング30の第1部位30aには、呼出ボタン32、操作リモコン34、便器洗浄ボタン36などの操作部および紙巻器38や手すり40が大便器12側に向いて設けられている。呼出ボタン32は、緊急時などに異常事態の発生を外部に連絡するための操作部であり、例えばトイレ室TRの複数個所に設けられている。また、第1部位30aの上面には、他の洗面器16が設置されている。
【0027】
操作リモコン34は、身体洗浄機能部の動作などを便座装置14に指示するための操作部である。操作リモコン34は、例えば止めボタン、おしり洗浄ボタン、ビデ洗浄ボタンなどの複数の操作ボタンを有する。便器洗浄ボタン36は、大便器12を洗浄するための操作部である。便器洗浄ボタン36を操作することにより、大便器12のボウル部に洗浄水が供給され、大便器12のボウル部が洗浄される。紙巻器38は、便座14aに着座した使用者の手が届く範囲に配置されている。紙巻器38は、例えば便器洗浄ボタン36の下方に配置されている。
【0028】
第2部位30bの上面には、後述する洗面器50が設置されている。また、床面と第2部位30bとの間には、空間S1が形成されている。この空間S1には、例えば車いすの使用者が洗面器50を使用するときに、足が挿入できるようになっている。
【0029】
次に、洗面器50、水栓ユニット60、および水石けんユニット80について説明する。
図2は、ライニングの第1部位と第2部位とを正面からみた正面図である。
図3は、水栓ユニットおよび水石けんユニットの水路系および制御系を示すブロック図である。
図4は、水栓装置の水栓用検知範囲と水石けん装置の水石けん用検知範囲とを示す説明図である。
図4(a)は、洗面器、水栓装置、水石けん装置を正面からみた正面図である。
図4(b)は、洗面器、水栓装置、水石けん装置を上方からみた平面図である。なお、
図4では、鏡95を省略している。
図5は、洗面器から水栓装置と水石けん装置とを取り外した状態を示す平面図である。
図6は、大便器と洗面器との間における車いすの動線を説明する説明図である。
【0030】
洗面器50は、ライニング30の第2部位30bの上面に設置されている。洗面器50は、トイレ室TRの壁面に取り付けられていてもよい。洗面器50は、例えば車いすに乗った使用者が使用できるような高さに設置されている。
図2に示すように、洗面器50は、大便器12から離れた位置に設けられている。洗面器50は、大便器12に着座した使用者からみて左前方に位置している。洗面器50は、下方に窪むボウル部52と、ボウル部52の幅方向(左右方向)両側に位置する第1カウンタ54および第2カウンタ55と、を有している。
【0031】
図4、
図5に示すように、ボウル部52は、底部に排水口52aを有している。排水口52aは、例えばボウル部52の幅方向の中央部に形成されている。水栓装置66から吐出された湯水は、排水口52aから下水道に流れる。
【0032】
図5に示すように、第1、第2カウンタ54、55は、ボウル部52の上端から水平方向に延びている。第1カウンタ54は、上下方向に貫通する第1開口部54aを有している。一方、第2カウンタ55は、上下方向に貫通する第2開口部55aを有している。この例では、第1開口部54aに水栓装置66が設置され、第2開口部55aに水石けん装置86が設置される。
【0033】
第1開口部54aおよび第2開口部55aは、ボウル部52の幅方向の中心線B-Bに対して対称位置に形成されている。すなわち、第1開口部54aと第2開口部55aとは、ボウル部52を挟んで幅方向で対面している。
図5に示すように、ボウル部52の中心線B-Bから第1開口部54aまでの寸法L5と、ボウル部52の中心線B-Bから第2開口部55aまでの寸法L6とは、同じ寸法となっている(L5=L6)。
【0034】
また、第1開口部54aと第2開口部55aとは、同じ形状、大きさとなっている。これにより、第1開口部54aと第2開口部55aとのどちら側にも水栓装置66または水石けん装置86が取付可能となっている。従って、洗面器50は、大便器12の左右どちら側に設置されても水栓装置66および水石けん装置86と、大便器12との位置関係を変えずに取り付けることができるようになっている。
【0035】
水栓ユニット60は、洗面器50のボウル部52に向けて湯水を吐出させるものである。水栓ユニット60は、自動水栓機能部62と、電気温水器64と、水栓装置66と、を有している。
【0036】
図2に示すように、自動水栓機能部62は、ライニング30の第2部位30b内に設けられている。自動水栓機能部62は、開閉弁62aと、制御部62bと、を有している。開閉弁62aは、給水源100から供給される水を水栓装置66に導く第1管路70に設けられている。給水源100は、例えば上水道である。開閉弁62aは、例えば電磁弁からなり、制御部62bにより開閉状態が制御されている。
【0037】
制御部62bは、図示しない電源に接続されている。制御部62bは、開閉弁62aと電気的に接続され、開閉弁62aの作動を制御している。また、制御部62bは、水栓装置66の水栓用センサ66cと電気的に接続されている。制御部62bは、水栓用センサ66cから送信される指令信号により、開閉弁62aの開閉状態を切り替える。
【0038】
電気温水器64は、開閉弁62aの下流側に位置して、第1管路70に設けられている。
図2に示すように、電気温水器64は、ライニング30の第1部位30a内に設置されている。電気温水器64は、タンクと、タンク内に設けられたヒータと、ヒータを制御する制御部と、(いずれも図示せず)を有している。電気温水器64は、例えば1リットルのタンク内で湯を沸かして貯湯できる貯湯式の電気温水器となっている。
【0039】
水栓装置66は、洗面器50に設けられボウル部52に向けて水を吐出する。すなわち、水栓装置66は、湯水を吐出させる吐出口66aを有する水栓スパウトとなっている。水栓装置66の吐出口66aは、例えばボウル部52の上方に位置している。水栓装置66は、設置部66bが洗面器50の第1開口部54aに取り付けられ、第1管路70に接続されている。
【0040】
水栓装置66は、水栓用センサ66cを有している。
図4に示すように、水栓用センサ66cは、例えば吐出口66aの上方に設けられている。すなわち、水栓用センサ66cは、ボウル部52の上方に位置している。水栓用センサ66cは、例えば赤外線投受光式センサとなっており、ボウル部52に向けて差し出された手を検知する。なお、水栓用センサ66cは、赤外線投受光式センサに限らず、例えば焦電センサやマイクロ波センサなどでもよい。水栓用センサ66cは、ボウル部52に向けて差し出された手を検知できる任意のセンサを用いることができる。
【0041】
図4に一点鎖線で示すように、水栓用センサ66cは、手を検知可能な水栓用検知範囲66c1を有している。水栓用検知範囲66c1は、水栓用センサ66cから斜め下方(ボウル部52)に向けて放射状に延びている。水栓用検知範囲66c1は、幅方向において水栓装置66の設置部66bから先端までの距離L3を有している。この例では、距離L3は、設置部66bの中心(第1開口部54aの中心)から計測している。水栓用検知範囲66c1については、後で詳しく説明する。
【0042】
水栓用センサ66cは、手を検知すると自動水栓機能部62の制御部62bに手を検知した指令信号を送信する。制御部62bは、この指令信号を受信すると、開閉弁62aを閉状態から開状態に切り替える。これにより、水栓装置66の吐出口66aから湯水が自動で吐出される。
【0043】
そして、制御部62bは、水栓用検知範囲66c1から手が外れたことを受信することにより、開閉弁62aを開状態から閉状態に切り替える。これにより、水栓装置66の吐出口66aから吐出されている湯水が自動で止まる。
【0044】
水石けんユニット80は、洗面器50のボウル部52に向けて水石けんを吐出させるものである。水石けんユニット80は、水石けんタンク82と、水石けん機能部84と、水石けん装置86と、を有している。
【0045】
水石けんタンク82は、水石けんを貯留させるものである。
図2に示すように、水石けんタンク82は、ライニング30の第1部位30a内に設置されている。水石けんタンク82は、電気温水器64と隣り合っている。水石けんの補給は、例えばカバー30a1を取り外して行うことができる。水石けんタンク82には、水石けんを水石けん装置86に導く第2管路90が接続されている。
【0046】
図2に示すように、水石けん機能部84は、ライニング30の第1部位30a内に設けられている。水石けん機能部84は、ポンプ84aと、制御部84bと、を有している。ポンプ84aは、水石けんタンク82と水石けん装置86との間に位置して、第2管路90に設けられている。ポンプ84aは、制御部84bにより作動が制御されている。ポンプ84aは、水石けんタンク82内に貯留された水石けんを吸い上げて水石けん装置86に供給する。
【0047】
水石けん装置86は、洗面器50に設けられボウル部52に向けて水石けんを吐出する。すなわち、水石けん装置86は、水石けんを吐出させる吐出口86aを有する水石けんスパウトとなっている。水石けん装置86は、設置部86bが洗面器50の第2開口部55aに取り付けられ、第2管路90に接続されている。
【0048】
水石けん装置86は、ボウル部52を挟んで水栓装置66とは反対側に配置されている。
図4(b)に示すように、水石けん装置86と水栓装置66とは、洗面器50の幅方向で一直線A-A上に位置している。そして、
図2に示すように、水石けん装置86は、水栓装置66よりも大便器12側に配置されている。すなわち、大便器12と水石けん装置86との間の距離L1は、大便器12と水栓装置66との間の距離L2よりも短くなっている。換言すると、水石けん装置86は、大便器12と水栓装置66との間に位置している。
【0049】
水石けん装置86は、水石けん用センサ86cを有している。
図4に示すように、水石けん用センサ86cは、例えば設置部86bの上方に設けられている。すなわち、水石けん用センサ86cは、第2カウンタ55の上方に位置している。水石けん用センサ86cは、例えば赤外線投受光式センサとなっており、ボウル部52に向けて差し出された手を検知する。なお、水石けん用センサ86cは、赤外線投受光式センサに限らず、例えば焦電センサやマイクロ波センサなどでもよい。水石けん用センサ86cは、ボウル部52に向けて差し出された手を検知できる任意のセンサを用いることができる。水石けん用センサ86cと水栓用センサ66cとは、例えば同じセンサとなっている。
【0050】
図4に二点鎖線で示すように、水石けん用センサ86cは、手を検知可能な水石けん用検知範囲86c1を有している。水石けん用検知範囲86c1は、水石けん用センサ86cから横方向(水栓装置66側)に向けて放射状に延びている。水石けん用検知範囲86c1は、幅方向において水石けん装置86の設置部86bから先端までの距離L4を有している。この例では、距離L4は、設置部86bの中心(第2開口部55aの中心)から計測している。
【0051】
水石けん用センサ86cは、手を検知すると水石けん機能部84の制御部84bに手を検知した指令信号を送信する。制御部84bは、この指令信号を受信すると、ポンプ84aを作動させる。これにより、水石けんタンク82内の水石けんがポンプ84aにより吸い上げられて水石けん装置86の吐出口86aから水石けんが自動で吐出される。
【0052】
そして、制御部84bは、水石けん用検知範囲86c1から手が外れたことを受信することにより、ポンプ84aの作動を停止させる。これにより、水石けん装置86の吐出口86aから吐出されている水石けんが自動で止まる。
【0053】
次に、水栓用検知範囲66c1と、水石けん用検知範囲86c1と、の関係について、
図4を参照して説明する。
【0054】
図4に示すように、水栓用センサ66cの水栓用検知範囲66c1と、水石けん用センサ86cの水石けん用検知範囲86c1と、は、離間している。すなわち、水栓用検知範囲66c1と、石けん用検知範囲86c1と、は、重なっていない。
【0055】
これにより、水栓用検知範囲66c1と、石けん用検知範囲86c1と、の間には、水栓用センサ66cと水石けん用センサ86cとのいずれのセンサにも検知されない非検知範囲S2が形成される。この非検知範囲S2は、手に付着した石けん水を手もみすることができる手もみ空間となっている。
【0056】
これにより、使用者は、水石けん用検知範囲86c1に手を差し入れて、石けん水を手に付着させた後に、横方向(非検知範囲S2)に手をスライド移動させて石けん水を手もみすることができる。そして、使用者は、さらに横方向(水栓用検知範囲66c1)に手を移動させることにより、水栓装置66から湯水を吐出させて手を洗うことができる。すなわち、使用者は、ボウル部52上で手を左右方向に移動させることにより手を洗うことができる。その結果、使い勝手がよく、衛生性に優れたトイレユニット10とすることができる。
【0057】
また、水石けん装置86は、水栓装置66よりも大便器12側に配置されている。そして、洗面器50に対する水栓装置66の設置部66bから水栓用検知範囲66c1の先端までの距離L3は、洗面器50に対する水石けん装置86の設置部86bから水石けん用検知範囲86c1の先端までの距離L4よりも長くなっている。
【0058】
これにより、非検知範囲S2は、洗面器50の幅方向で大便器12側に位置するので、大便器12から洗面器50に向けて移動する使用者の移動距離を可及的に小さくすることができる。特に、車いすを使用している使用者Uにとって、車いすの作動を少なくして手洗いを行うことができる。
【0059】
具体的には、例えば非検知範囲S2(手もみ空間)がボウル部52の中心から水栓装置66側に寄っていた場合には、
図6中の二点鎖線で示す矢示Cのように、使用者は車いすを何度も切り返しながら洗面器50の正面に移動して手洗いを行うことになる。仮に、車いす洗面器50に対して斜め方向に位置させて手洗いを行った場合には、非検知範囲S2が遠くなるので、肘を伸ばして手もみをしなければならない。従って、車いすの使用者Uにとって、洗面器50の使い勝手が悪くなるおそれがある。
【0060】
本実施形態によれば、非検知範囲S2(手もみ空間)がボウル部52の中心から水石けん装置86側(大便器12側)に寄っている。従って、車いすを使用している使用者Uは、実線で示す矢示D方向に車いすを移動させても効率よく手洗いを行うことができる。すなわち、洗面器50に対して斜め方向に車いすを移動させても、肘を曲げた状態で手もみを行うことができるので、効率よく手洗いを行うことができる。その結果、トイレ室TRを使用する様々な使用者にとって使い勝手のよいトイレユニット10とすることができる。
【0061】
鏡95は、洗面器50の上方に位置して、トイレ室TRの壁面に設けられている。例えば、水石けん装置86の上に水石けんタンクが設けられているような場合には、鏡95に水石けんタンクが映り込むので、視認性が悪くなるおそれがある。本実施形態によれば、水石けんタンク82がライニング30の内部に配設されているので、鏡95の視認性を向上できる。
【0062】
この例では、鏡95は、正面視で水栓装置66の上端および水石けん装置86の上端よりも上方に設けられている。この場合、水石けんタンク82がライニング30の内部に配設されているので、例えば水石けん装置86の上に水石けんタンクが設けられているものに比べて、鏡95を低くすることができる。これにより、鏡95の使い勝手をよくすることができる。
【0063】
かくして、本実施形態によるトイレユニット10は、ボウル部52に向けて差し出された手を検知することにより自動で水を吐出させる水栓装置66と、ボウル部52に向けて差し出された手を検知することにより自動で水石けんを吐出させる水石けん装置86と、を有する。そして、水石けん装置86は、ボウル部52を挟んで水栓装置66とは反対側に配置されている。
【0064】
これにより、使用者は、水石けん装置86および水栓装置66に非接触で、左右に手を移動させるだけで、水石けんの付着、手もみ、および流しという手洗い動作を行うことができる。従って、使い勝手がよく、衛生性の高いトイレユニット10とすることができる。
【0065】
また、水栓装置66と水石けん装置86とが洗面器50の幅方向に対面して設けられているので、例えば水栓装置と水石けん装置とを壁側に設けた場合に比べて、洗面器50の壁面からの突出量を抑制できる。これにより、コンパクトな洗面器50とすることができるので、トイレ室TR内を広くすることができる。
【0066】
また、水栓用センサ66の水栓用検知範囲66c1と、水石けん用センサ86の水石けん用検知範囲86c1と、は、離間している。これにより、使用者の意図しない水の吐出や水石けんの吐出を抑制できる。また、水石けん用検知範囲86c1と水栓用検知範囲66c1との間に、手もみ空間(非検知範囲S2)を形成することができるので、効率よく手洗い動作を行うことができる。
【0067】
また、水石けん装置86は、水栓装置66よりも大便器12側に配置されている。これにより、大便器12から洗面器50に移動する使用者の進行方向に沿って手洗い動作を行うことができるので、使い勝手のよいトイレユニット10とすることができる。
【0068】
また、水栓装置66と水石けん装置86とは、ボウル部52の中心線B-Bから幅方向で同じ距離に配設されている。そして、洗面器50に対する水栓装置66の設置部66bから水栓用検知範囲66c1の先端までの距離L3は、洗面器50に対する水石けん装置86の設置部86bから水石けん用検知範囲86c1の先端までの距離L4よりも長くなっている。これにより、非検知範囲S2を大便器12側(水石けん装置86側)に位置させることができるので、トイレ室TRを使用する様々な人達にとって効率よく手洗い動作を行わせることができる。
【0069】
また、洗面器50の第1開口部54aと第2開口部55aとは、ボウル部52の中心線B-Bに対して対称位置に形成されている。また、第1開口部54aと、第2開口部55aと、は、同じ形状および大きさとなっている。これにより、洗面器50が大便器12に対して左右どちら側に設置された場合でも、例えば水石けん装置86を水栓装置66よりも大便器12側に位置させることができる。その結果、洗面器50は、レイアウトの異なる種々のトイレ室TRに設置させることができるので、コストを削減できる。
【0070】
なお、上述した実施形態では、水栓装置66と水石けん装置86とを一直線A-A上に配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の態様はこれに限らず、例えば水栓装置66と水石けん装置86とがボウル部52を挟んで対角線上に配置されていてもよい。すなわち、水栓装置66と水石けん装置86とは、洗面器50の奥行方向で異なる位置に設けられていてもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、水栓ユニット60は、電気温水器64よりも上流側に開閉弁62aを有する元止め式とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の態様はこれに限らず、例えば電気温水器64よりも下流側に開閉弁を有する先止め式でもよい。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、トイレユニットなどが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0073】
1 出入口
2 ドア
10 トイレユニット
12 大便器
13 便器本体
14 便座装置
14a 便座
15 背もたれ
16 他の洗面器
20 ベビーチェア
22 小便器
24 汚物流しユニット
30 ライニング
30a 第1部位
30a1 カバー
30b 第2部位
32 呼出ボタン
34 操作リモコン
36 便器洗浄ボタン
38 紙巻器
40 手すり
50 洗面器
52 ボウル部
52a 排水口
54 第1カウンタ
54a 第1開口部
55 第2カウンタ
55a 第2開口部
60 水栓ユニット
62 自動水栓機能部
62a 開閉弁
62b 制御部
64 電気温水器
66 水栓装置
66a 吐出口
66b 設置部
66c 水栓用センサ
66c1 水栓用検知範囲
70 第1管路
80 水石けんユニット
82 水石けんタンク
84 水石けん機能部
84a ポンプ
84b 制御部
86 水石けん装置
86a 吐出口
86b 設置部
86c 水石けん用センサ
86c1 水石けん用検知範囲
90 第2管路
95 鏡
100 給水源
S1 空間
S2 非検知範囲
TR トイレ室
U 使用者