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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】温度調節装置および温度調節システム
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20240515BHJP
   F25D 1/02 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
F25D11/00 102D
F25D1/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020126246
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023360
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391013416
【氏名又は名称】ゴトウコンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】松林 秀佳
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01785553(EP,A2)
【文献】特開2019-154260(JP,A)
【文献】特開平08-252034(JP,A)
【文献】特開平1-291780(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1916154(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/02
F25D 11/00
F25D 13/00
F25D 17/02
C12G 1/00 ~ 3/08
E04H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製のワインタンク内に貯蔵されるワインの温度を調節する温度調節装置及び温度調節システムであり、
温度調節装置は、循環用パイプ部と、該循環用パイプ部内を循環させる循環用液体と、循環用液体の温度を調節する温度調節器と、を有し、
前記循環用パイプ部は、入口接続部と出口接続部がコンクリート表面に形成されると共に、パイプ主要部はコンクリート壁内に埋設され、
前記温度調節器の循環接続部を前記循環用パイプ部の前記入口接続部と出口接続部に接続し、前記循環用液体を温度調節して前記パイプ主要部内を循環させる構成とし、
前記温度調節装置は、前記コンクリート製ワインタンクの上下方向2か所に設けられ、下方に設けられた温度調節装置での調節温度を上方に設けられた温度調節装置での調節温度より高く設定して、ワインタンク内でのワインに対流を生じさせ、ワインタンク内のワインの温度を全体的に、常時均一に保持する、
ことを特徴とする温度調節装置。
【請求項2】
前記下方に設けられた温度調節装置での調節温度を上方に設けられた温度調節装置での調節温度より1度乃至2度高く設定してワインタンク内でのワインに対流を生じさせる、
ことを特徴とする請求項1記載の温度調節装置。
【請求項3】
前記循環用液体は地下水である、
ことを特徴とする請求項1記載の温度調節装置。
【請求項4】
前記温度調節システムは、温度調節および温度制御を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、前記ワインタンク内に設けた測定センサで測定されたワインの温度を受信する受信部と、受信したワインの温度を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記測定センサで測定されたワインの温度を受信部から取得する温度制御部と、あらかじめタンク内のワインの適正温度を設定する温度設定部とを有し、
前記温度制御部で取得された前記ワインの温度と、前記温度設定部の適正温度とを比較し、前記比較した結果に応じて前記温度制御部により温度調節器での温度上昇、降下が指示され、該指示に基いた温度調節器により前記循環用液体の温度が調節されて循環させる、
ことを特徴とする請求項1記載の温度調節システム。
【請求項5】
前記温度調節システムは、温度調節および温度制御を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、前記ワインタンク内に設けた測定センサで測定されたワインの温度を受信する受信部と、受信したワインの温度を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記測定センサで測定されたワインの温度を受信部から取得する温度制御部と、あらかじめタンク内のワインの適正温度を設定する温度設定部と、循環用パイプ内を流れる循環用液体の流量及び速さを調節し、循環用液体の温度変化を迅速化する温度変化迅速制御部とを有し、
前記温度制御部で取得された前記ワインの温度と、前記温度設定部の適正温度とを比較し、前記比較した結果に応じて前記温度制御部により温度調節器での温度上昇、降下が指示され、該指示に基いた温度調節器の動作と前記温度変化迅速制御部の動作により前記循環用液体の温度が調節されて循環させる、
ことを特徴とする請求項1記載の温度調節システム。
【請求項6】
ワインタンク内のワインを発酵させている場合の前記適正温度は、赤ワインでは上限30度、白ワインでは上限20度とした、
ことを特徴とする請求項4記載の温度調節システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製のワインタンク内に貯留されたワインの温度を調節することにより、貯留されたワインを適正温度で発酵・貯留し育成(熟成)することができる温度調節装置および温度調節システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワインの原料となるブドウを発酵するための容器の材質や貯蔵し育成(熟成)するための容器の材質は、最終的なワインの仕上がりに大きな影響を与えるものであるため、ワインを製造するには非常に重要な要素である。
【0003】
ブドウを発酵するための容器や貯蔵し育成(熟成)するための容器として、1970年代までは多くのワイナリーで建物の一部として現場打ちでコンクリートタンクが作られ、コンクリートタンクを使用してワインが製造されていた。
その後、1970年代以降は、温度管理が容易で、殺菌がしやすく衛生管理が容易なステンレスタンクが登場し、世界的に広く普及していった。
【0004】
しかし近年では、ステンレスタンクから再びコンクリートタンクを使用するワイン醸造家が増えてきている。
コンクリートタンクは、コンクリート自身の香りがワインに移ることが少なく、ニュートラル性を保つことができ、またオーク槽と同じく通気性を有するため微量な酸素がワインへ供給されることによりワインが呼吸でき、さらにはオーク槽よりも内部の殺菌や清掃がしやすいとの特色がある。
【0005】
また、コンクリートタンクの壁は十分な厚みがあるため、ステンレスタンクよりも外部の温度変化の影響を受けにくく、ステンレスタンクのような外部環境の影響を受けての温度管理の必要性が低いとの特色を有する。
さらに、これらの特色に加え、従来は建物の一部として設置していたコンクリートタンクを近年では、独立型の直方体のタンクや、円錐型、卵の形など様々な形状のコンクリートタンクが開発・製造されている。
【0006】
ここで、ワインの製造時において、ワインの原料であるブドウが発酵する際、タンク内のワインの温度が上昇する。ワイン作りにとって、発酵温度はワインの仕上がりに大きく影響するものであり、赤ワインでは通常30度以下、白ワインでは20度前後の温度で管理されている。
また、発酵が終わったワインを貯蔵し育成(熟成)する温度によっても、ワインの香りや味わい等に影響を与えるため、一般的にワインの育成(熟成)温度は、10~15度が適正温度といわれている。そのため、タンク内のワインの温度が20度以上になると育成(熟成)が進みすぎてしまうか、もしくはワインが酸化してしまう可能性が高くなるといわれている。
【0007】
そこで、タンク内のワインの温度を管理する場合、例えば冷却する場合には、タンクの中に鉄板のような温度制御装置を入れて冷やす方法や、タンクの内側に金属製の温度制御パイプを設置して冷やす方法がとられている。
【0008】
しかしながら、これらの方法では、ワインに直接金属が触れることで、ワインの香りや味わいに影響を及ぼすことがあるとの課題があり、そのためコンクリート製ワインタンクの特色を生かしたワインの生産ができないとの問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2019-154260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
かくして、本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであり、コンクリート製のワインタンクでありながら、前記タンク内のワインの温度を調節する際に前記ワインに金属製パイプが直接触れることがなく、タンク内の温度を制御することにより前記ワインの温度を均一に保つことができる温度調節装置および温度調節システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
コンクリート製のワインタンク内に貯蔵されるワインの温度を調節する温度調節装置及び温度調節システムであり、
温度調節装置は、循環用パイプ部と、該循環用パイプ部内を循環させる循環用液体と、循環用液体の温度を調節する温度調節器と、を有し、
前記循環用パイプ部は、入口接続部と出口接続部がコンクリート表面に形成されると共に、パイプ主要部はコンクリート壁内に埋設され、
前記温度調節器の循環接続部を前記循環用パイプ部の前記入口接続部と出口接続部に接続し、前記循環用液体を温度調節して前記パイプ主要部内を循環させる構成とし、
前記温度調節装置は、前記コンクリート製ワインタンクの上下方向2か所に設けられ、下方に設けられた温度調節装置での調節温度を上方に設けられた温度調節装置での調節温度より高く設定して、ワインタンク内でのワインに対流を生じさせ、ワインタンク内のワインの温度を全体的に、常時均一に保持する、
ことを特徴とし、
または、
前記下方に設けられた温度調節装置での調節温度を上方に設けられた温度調節装置での調節温度より1度乃至2度高く設定してワインタンク内でのワインに対流を生じさせる、
ことを特徴とし、
または、
前記循環用液体は地下水である、
ことを特徴とし、
または、
コンクリート製のワインタンク内に貯蔵されるワインの温度調節システムは、温度調節および温度制御を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、前記ワインタンク内に設けた測定センサで測定されたワインの温度を受信する受信部と、受信したワインの温度を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記測定センサで測定されたワインの温度を受信部から取得する温度制御部と、あらかじめタンク内のワインの適正温度を設定する温度設定部とを有し、
前記温度制御部で取得された前記ワインの温度と、前記温度設定部の適正温度とを比較し、前記比較した結果に応じて前記温度制御部により温度調節器での温度上昇、降下が指示され、該指示に基いた温度調節器により前記循環用液体の温度が調節されて循環させる、
ことを特徴とし、
または、
コンクリート製のワインタンク内に貯蔵されるワインの温度調節システムは、温度調節および温度制御を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、前記ワインタンク内に設けた測定センサで測定されたワインの温度を受信する受信部と、受信したワインの温度を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記測定センサで測定されたワインの温度を受信部から取得する温度制御部と、あらかじめタンク内のワインの適正温度を設定する温度設定部と、循環用パイプ内を流れる循環用液体の流量及び速さを調節し、循環用液体の温度変化を迅速化する温度変化迅速制御部とを有し、
前記温度制御部で取得された前記ワインの温度と、前記温度設定部の適正温度とを比較し、前記比較した結果に応じて前記温度制御部により温度調節器での温度上昇、降下が指示され、該指示に基いた温度調節器の動作と前記温度変化迅速制御部の動作により前記循環用液体の温度が調節されて循環させる、
ことを特徴とし、
または、
ワインタンク内のワインを発酵させている場合の前記適正温度は、赤ワインでは上限30度、白ワインでは上限20度とした、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンクリート製のワインタンクでありながら、前記タンク内のワインの温度を調節する際に前記ワインに金属製パイプが直接触れることがなく、タンク内の温度を制御することにより前記ワインの温度を均一に保つことができる温度調節装置および温度調節システムを提供できるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の構成を説明する構成説明図(1)である。
図2】本発明の構成を説明する構成説明図(2)である。
図3】本発明の構成を説明する構成説明図(3)である。
図4】本発明の自然対流を説明する説明図である。
図5】本発明の構成を説明する構成説明図(4)である。
図6】本発明の構成を説明する構成説明図(5)である。
図7】本発明の構成を説明する構成説明図(6)である。
図8】本発明の制御装置の構成を説明する構成説明図である。
図9】本発明の制御部の構成を説明する構成説明図である。
図10】本発明の構成を説明する構成説明図(7)である。
図11】本発明の構成を説明する構成説明図(8)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、コンクリート製ワインタンク9の構造について簡単に説明する。
該ワインタンク9の上面には、図3に示すように蓋25が設けられており、この部分から該ワインタンク9の内部を確認することができる。
そして、図1に示すように該ワインタンク9の外側の下方壁面には上部バルブ23が設けられている。この上部バルブ23は、ワイン(上澄み)を抽出する際に使用するためのものである。また、該ワインタンク9の底面には下部バルブ24が設けられている。前記下部バルブ24は、該ワインタンク9の底に溜まった澱を澱引きするためのものである。
【0015】
以下、本発明を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施例の構成を説明する構成説明図である。
【0016】
図1において、符号1は、温度調節装置を示す。該温度調節装置1は、コンクリート製ワインタンク9内に貯蔵されるワイン10の温度を調節する装置である。そして、該温度調節装置1は、該コンクリート製ワインタンク9内をリング状に循環するように前記ワインタンク9の壁内部に埋設される部分を有する循環用パイプ部4と、該循環用パイプ部4内を循環させる循環用液体3と、該循環用液体3の温度を調節する温度調節器2によって構成されている。
【0017】
温度調節器2によって温度調節された循環用液体3が循環用パイプ部4内を循環することで熱交換が行われ、ワインタンク9内のワイン10の温度を冷却あるいは加熱することができる。前記循環用液体3については、例えば水やオールシーズン水温が一定に保たれるとされる地下水などの液体が考えられる。
【0018】
そして循環用パイプ部4は、入口接続部6と出口接続部7をコンクリート表面に形成されており、該循環用パイプ部4のパイプ部主要部5は該コンクリート内に埋設されている。
【0019】
ここで、前記循環用パイプ部の材質は限定されないが、加工がしやすく、熱伝導性に優れた金属部材で成形されることが考えられる。例えば、ステンレス製あるいは銅製などの金属部材である。この金属部材を加工し、断面円状あるいは断面半円ドーム状の循環用パイプ部4とするのである。
【0020】
そして前記パイプ部主要部5は、ワインタンク9の形状に合わせてコンクリート製の壁内に設置され、埋設される。例えば、図1のような円柱状のワインタンク9では、前記パイプ部主要部5を前記タンク壁内においてタンク上下方向に向かいリング状に捲回された状態でコンクリート内に設置されるものとなっている。このようにタンクの上下方向に向けて、まんべんなくパイプ部主要部5を埋設することによりタンク内部のワインにつき均一に温度制御できるものとなっている。
【0021】
前述のごとく、パイプ部主要部5をコンクリート内に埋設することにより、タンク9内のワイン10に直接金属部材が触れることなく、ワイン10の温度を調節することできる。そのため、発酵時や貯蔵し育成(熟成)時に、ワインの香りや味に金属部材による影響がないため、ブドウ本来の香りや味を楽しむことができる。
【0022】
そして、温度調節器2と循環用パイプ部4は、前記温度調節器2の循環接続部を前記循環用パイプ部4の入口接続部6と出口接続部7に接続することにより連結されている。これにより、温度調節器2で温度調節された循環用液体3を循環用パイプ部4の入口接続部6から流入させ、パイプ部主要部5を通って、前記パイプ部4の出口接続部7から流出することができる。
【0023】
なお、前記循環用パイプ部4の入口接続部6側には、前記循環用液体3の流量を調節するための流量調節弁22が設けられている。前記流量調節弁22の絞り開度を変えることにより、前記循環用液体3がパイプ部主要部5を循環する流量や速さを調節することができ、これにより前記循環用液体3の流量および循環速度を変えることができる。
【0024】
前記流量調節弁22の絞り開度を拡開することにより、前記循環用液体3がパイプ部主要部5を循環する流量は増加し、前記循環用液体3の循環速度も速くなる。これにより、前記循環用液体3による熱交換が急速に行われ、タンク9内のワイン10の温度を迅速に冷却あるいは加熱することが可能となる。
【0025】
次に、本発明の第2実施例につき説明する。
本発明は、図2のような円柱を寝かせた状態のワインタンク9でも適用できる。すなわち、図2のような円柱を寝かせた状態のワインタンク9では、例えば前記パイプ部主要部5を水平方向の長手方向に向かってジグザグ状に曲げられた状態でコンクリート壁内に埋設する。
図2の実施例では、温度調節装置1を下方のコンクリート壁内と上方のコンクリート壁内の2か所に設けたのが特徴となっている。
【0026】
そして、下方の温度調節装置1で調節する温度と上方の温度調節装置1で調節する温度とを異ならせ、もってワインタンク内でワインに緩やかな対流を生じさせるのである。この緩やかな対流を起こさせることにより、ワインの品質を劣化させることなく常に高品質に、また均一に保つことができる。
【0027】
なお、図3は第2実施例の2番目の具体例であり、円柱状をなすワインタンクの上下方向個所に2か所温度調節装置1を設置した例である。図4図3に示す実施例においてワインの対流状態を矢印で示したものである。また、図5は略卵型に形成されたワインタンクにつき、その上下方向2か所に温度調節装置1を設置した例である。ワインの種類によってはこの卵型をなすワインタンクで熟成されたほうがより品質の良いワインが生成できる。さらに、図6に示すように方形状をなすワインタンクや図7に示すような三角錐状をなすワインタンクにも本発明を適用でき、それぞれの形状に合ったワインを選択して上質なワイン生成に寄与しうるものとなる。
【0028】
ここで、図2において符号8は測定センサであり、該測定センサ8は、ワインタンク9内のワイン10の温度を測定するために設けられたものである。前記測定センサ8の設置箇所としては、特に限定されないが、例えば前記ワインタンク9内の壁面に設けても良いし、上面あるいは底面に設けても良い。また、該ワインタンク9内に測定センサ8を設置せずに、所定の箇所から必要に応じて測定センサ8を差し込む等の方法により測定しても良い。
【0029】
次に、本発明の第3実施例につき説明する。
図10は本発明の第3実施例の構成を説明する構成説明図である。
【0030】
第3実施例は、汲み上げ用ポンプ26により汲み上げられた地下水27を循環用パイプ4内に循環させてワインタンク9内のワイン10の温度を冷却するものである。なお、汲み上げ用ポンプ26の構造については何ら限定されないが、例えば電動ポンプ、油圧系ポンプやピストンポンプ等が考えられる。
【0031】
ここで、地下水27の水温は、地域に応じて変動するものの、年間を通してほぼ一定であり、年間の温度差は1度以内であることが一般的に知られている。例えば、北海道地方の地下水の水温は年間を通して8度~16度程度である。
【0032】
そのため、該地下水27を使用することにより該タンク内のワインを貯蔵し育成(熟成)する際の適正温度である10~15度に該ワイン10の温度を維持することができる。また水温が8度~16度程度の地下水を使用するため、循環用液体3の温度を調節する必要がなく非常に経済的である。
【0033】
そして、汲み上げ用ポンプ26は、地下水27を汲み上げる地下水汲み上げ用パイプ30と、汲み上げられた地下水27を循環用パイプ部4に排出する排出用パイプ部28とを有している。
【0034】
汲み上げ用ポンプ部26と循環用パイプ部4は、前記汲み上げ用ポンプ26の排出用パイプ部28を前記循環用パイプ部4の入口接続部6に接続することにより、連結されている。また、循環用パイプ部4の出口接続部7は、該地下水27を循環用パイプ部4から放流するために放流用パイプ部29に接続されている。
【0035】
これにより、汲み上げ用ポンプ部26により汲み上げられた地下水27を、排出用パイプ部28と接続された循環用パイプ部4の入口接続部6から流入させ、パイプ部主要部5を通って、循環用パイプ部4の出口接続部7と接続された放流用パイプ部29から地下水27を放流することができる構成となっている。
【0036】
なお、地下水27の温度が適正温度より高い或いは低い場合には、第1実施例あるいは第2実施例の温度調節器2に汲み上げ用ポンプ26を組み合わせることにより、該汲み上げ用ポンプ26により汲み上げられた地下水27を温度調節器2により適正温度に調節して使用することができる(図11参照)。
【0037】
この場合は、前記汲み上げ用ポンプ26の排出用パイプ部28を前記温度調節器2に接続させることにより、該地下水27を前記温度調節器2に導入することができる構成となっている。
【0038】
以下において、温度調節装置1における温度調節、温度制御につき説明する。
本発明では、温度調節装置1における温度調節、温度制御を行う制御装置11を有している。
【0039】
図8に示すように制御装置11は、主に温度調節装置1とは別装置として設置されており、測定センサ8と無線あるいは有線ケーブルにて受信する受信部13を有し、また各種の送信信号を送る送信部14を有している。
【0040】
なお、本件では制御装置11が温度調節装置1とは別装置として設置されているが、制御装置11と温度調節装置1が一体型となっているものを使用しても構わない。
【0041】
また、そのほか各種制御を行う制御部12、記憶部15、入力部16及び表示部17を備えて構成される。そして図9に示す制御部12は、温度調節制御部18、温度設定部19、温度変化迅速制御部および温度差制御部21を有している。
【0042】
前記測定センサ8で測定されたワイン10の温度データは無線あるいは有線ケーブルにて制御装置11における制御部12の温度調節制御部18に送られ、制御装置11における制御部12の温度調節制御部18では、前記測定センサ8で測定された該ワイン10の温度データを取得する。
【0043】
そして、前記温度調節制御部18で取得された前記ワイン10の温度データと、あらかじめタンク内のワインの適正温度を設定した前記制御部12の温度設定部19の適正温度とを比較し、取得された該ワインの温度データが前記温度設定部19の適正温度より高い場合には、前記温度調節制御部18によって温度調節器2が操作され、タンク9内のワイン10の温度を冷却すべく冷たい循環用液体3が循環用パイプ部4内に導入される制御が行われる。
【0044】
また、測定センサ8で測定された該ワイン10の温度データが前記温度設定部19の適正温度より低い場合には、上記同様に、前記温度調節制御部18によって温度調節器2が操作され、タンク9内のワイン10の温度を加熱すべく温かい循環用液体3が循環用パイプ部4内に導入される制御が行われるのである。
これにより、タンク9内のワイン10の温度は常時調節され、ブドウの発酵あるいはワインを貯留し育成(熟成)するのに最も良い温度で維持されるものとなる。
【0045】
さらに、測定センサ8で測定された該ワイン10の温度データと前記温度設定部19の適正温度とが5度以上異なる場合は、制御装置11における制御部12の温度調節制御部18によって温度調節器2が操作されるのと同時に、前記温度調節制御部18から制御装置11における制御部12の温度変化迅速制御部20にもデータが送信される。
【0046】
前記温度変化迅速制御部20では、前記データの受信があったときに、すみやかに循環用パイプ部4の入口接続部6側に設けられた流量調節弁22の絞り開度を拡開する。前記流量調節弁22の絞り開度を拡開することにより、循環用パイプ部4内を循環する循環用液体3の流量が増加し、かつ循環用液体3の循環速度を速くすることができる。これにより、前記循環用液体3による熱交換が急速に行われ、該タンク9内のワイン10の温度を迅速に適正温度とすることができるのである。
【0047】
ここで、ブドウを発酵させる際の適正温度は、赤ワインでは30度以下、白ワインでは20度前後の温度で一般的に温度管理されている。そのため、発酵させている場合の適正温度は、赤ワインでは上限30度、白ワインでは上限20度とし、前記温度設定部19の適正温度を設定しておく。これにより、タンク9内のワイン10の温度を最も良い温度に維持することができるのである。
【0048】
また、ワインを貯留し育成(熟成)する際の適正温度は、10~15度が最適といわれている。そのため、前記温度設定部19の適正温度を下限10度、上限15度と設定することにより、タンク9内のワイン10の温度を最も良い温度の範囲内に維持することができる。
このように、前記温度設定部19は、タンク内のワインの状態に応じて適正温度の範囲を設定することができるよう構成されている。
【0049】
次に、符号21は温度差制御部を示す。前記温度差制御部21は、温度調節装置1がコンクリート製のワインタンク9の上下方向2カ所に設けられている場合に、前記2カ所に設けられた前記温度調節装置1の設定温度を異ならせるための制御部である(図2図3を参照)。
【0050】
具体的には、前記タンク9の上方及び下方に設けられた各測定センサ8から、測定されたワイン10の上方の温度データと下方の温度データが無線あるいは有線ケーブルにて制御装置11における制御部12の温度調節制御部18に送られる。そして、制御装置11における制御部12の温度調節制御部18では、前記各測定センサ8で測定された該ワイン10の上方および下方の温度データを取得する。
【0051】
そして、上述の通り、前記温度調節制御部18で取得された前記ワイン10の上方および下方の温度データと、あらかじめタンク内のワインの適正温度を設定した温度設定部19の適正温度とを比較する。
【0052】
そして、比較した結果、取得された前記ワイン10の上方および下方の温度データが前記温度設定部19の適正温度の範囲内である場合には、前記温度調節制御部18で取得された前記ワイン10の上方および下方の温度データを、制御装置11における制御部12の前記温度差制御部21に送信する。
【0053】
前記温度差制御部21では、前記上方および下方の温度データの受信があったときに、前記タンク9内の上方と下方とでワインの温度が1~2度程度異なるように、前記温度差制御部21から前記温度調節制御部18に、上方と下方とでワインの温度が1~2度程度異なるよう設定された設定温度を送信する。
ここで、例えば前記タンク9内の下方のワインの温度が上方のワインの温度よりも1度程度低くなるよう温度が設定されることが想定される。
【0054】
そして、前記温度調節制御部18によって、該タンク9の上下方向2カ所に設けられた温度調節装置1の各温度調節器2がそれぞれ操作され、上方と下方とでワインの温度が1~2度程度異なるよう制御される。
【0055】
また、前記比較した結果、取得された該ワインの上方および下方の温度データが前記温度設定部19の適正温度の範囲内にない場合には、一度、前記温度調節制御部18によって各温度調節器2が操作され、該タンク9内のワイン10の温度が前記温度設定部19の適正温度の範囲内となるように制御される。
【0056】
そして、該タンク9内のワイン10の温度が前記温度設定部19の適正温度の範囲内となった後に、上述の手順で該タンク9内の上方と下方とでワインの温度が1~2度程度異なるように制御される。
【0057】
該タンク9内の上方と下方とでワインの温度が1~2度程度異なるように制御することにより、該タンク9内のワイン10に緩やかな自然対流が起こり、該タンク9内のワイン10の温度を全体的に常時均一に保つことができるのである。
【0058】
次に、コンクリート製のワインタンクの製造方法につき説明する。
まず、一定形状の型枠を形成し、該型枠内に循環用パイプ部4のパイプ部主要部5を配設した後、前記パイプ部主要部5を配設した型枠内にコンクリートを打設して成型する。この時、循環用パイプ部4の入口接続部6と出口接続部7は、コンクリート表面に形成されるようにする。
【0059】
そして、成型したコンクリート製ワインタンクに測定センサ8を前記ワインタンク内の上面、底面または壁面にワインの温度が測定できるように必要に応じて設置しても良い。
【0060】
なお、コンクリート製のワインタンクの形状については、ワインを製造する場所や一度に製造するワインの量等を考慮して、該ワインタンクの大きさ(容量)を決定することができる。また、製造するワインの種類(赤ワイン、白ワイン等)に応じて、コンクリート製のワインタンクの形状を選択できるようになっている。例えば、図5乃至図7に示すコンクリート製ワインタンクの形状を作製することも可能である。なお、図5乃至図7中のパイプ部主要部5は、実線で表されているが、実際はコンクリート内に埋設されている。
【0061】
このように、本発明は、コンクリート内に該循環用パイプ部4のパイプ部主要部5を埋設することにより、タンク内のワインに直接金属部材が触れることなく、ワイン温度を調節することができる。
【0062】
また、測定センサ8によりタンク内のワインの温度をリアルタイムで管理することができ、さらにタンク内のワインの上方の温度と下方の温度とを1~2度程度温度差を作ることにより、自然対流が生じ該ワイン全体で均一の温度を保つことができるものとした。
【符号の説明】
【0063】
1 温度調節装置
2 温度調節器
3 循環用液体
4 循環用パイプ部
5 パイプ部主要部
6 入口接続部
7 出口接続部
8 測定センサ
9 コンクリート製ワインタンク
10 ワイン
11 制御装置
12 制御部
13 受信部
14 送信部
15 記憶部
16 入力部
17 表示部
18 温度調節制御部
19 温度設定部
20 温度変化迅速制御部
21 温度差制御部
22 流量調節弁
23 上部バルブ
24 下部バルブ
25 蓋
26 汲み上げ用ポンプ
27 地下水
28 排出用パイプ部
29 放流用パイプ部
30 地下水汲み上げパイプ
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
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図11