(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ケーブル架設方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20240515BHJP
H02G 7/10 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/10
(21)【出願番号】P 2020148683
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390003517
【氏名又は名称】株式会社電研社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】山本 信孝
(72)【発明者】
【氏名】畑邉 健一
(72)【発明者】
【氏名】下原 敏宏
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-212027(JP,A)
【文献】特開2005-051874(JP,A)
【文献】実開昭49-000497(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱間等の架設区間に架設された吊線が一端側から他端側に向かって内部に挿通され、さらに、牽引線が一端側に取り付けられると共に、他端側に螺旋状ケーブルハンガー、及び、通信用又は電力用ケーブルが取り付けられた牽引工具を、該牽引線を牽引することにより牽引し、前記螺旋状ケーブルハンガー、及び、通信用又は電力用ケーブルを前記架設区間に同時に架設してな
り、
前記牽引工具は、
所定方向に回転可能な回転部と、
前記回転部と共に回転するように、該回転部に設けられている連結部と、を有し、
前記連結部には、前記螺旋状ケーブルハンガーが回転可能に連結されているケーブル架設方法。
【請求項2】
前記牽引工具は、前記吊線が一端側から他端側に向かって内部に挿通できるように、該牽引工具の内部に空洞部が設けられ、該空洞部の少なくとも一部を閉止又は開放可能な開閉部が設けられてなる請求項1に記載のケーブル架設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱間等の所要区間に通信用又は電力用のケーブルを架設する際に用いるケーブル架設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブル架設方法では、吊線、螺旋状ケーブルハンガー、通信用又は電力用ケーブルを順に電柱間に架設していかなければならず、作業が非常に煩雑であったことから、作業時間が大幅にかかるという問題があった。そのため、本出願人らは、特許文献1に記載のようなケーブル架設方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなケーブル架設方法は、作業時間を大幅に短縮させることができると共に、安全性を向上させることができるものの、以下のような問題があった。
【0005】
すなわち、3線(吊線、及び、螺旋状ケーブルハンガー、並びに、通信用又は電力用ケーブル)の重量が親ロープに加わった際、弛みが大きくなり、もって、ケーブルテレビ等の他通信線と干渉する可能性があった。それゆえ、安全性に問題がある可能性があった。
【0006】
また、上記のようなケーブル架設方法は、電柱間にも、金車を取り付ける必要があったことから、作業が煩雑になる可能性がある共に、安全性が低下する可能性もあった。
【0007】
さらに、上記のようなケーブル架設方法は、既に吊線が架設されてしまっている区間では使用できないという問題があり、もって、作業が煩雑になる可能性がある共に、安全性が低下する可能性もあった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、作業性、及び、安全性を向上させることができるケーブル架設方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
請求項1の発明によれば、電柱間(D1,D2,D3)等の架設区間に架設された吊線(TL)が一端側から他端側に向かって内部に挿通され、さらに、牽引線(牽引用ロープKR)が一端側(第3連結部20側)に取り付けられると共に、他端側(第1連結部14,第2連結部18側)に螺旋状ケーブルハンガー(HK)、及び、通信用又は電力用ケーブル(KB)が取り付けられた牽引工具(10)を、該牽引線(牽引用ロープKR)を牽引することにより牽引し、前記螺旋状ケーブルハンガー(HK)、及び、通信用又は電力用ケーブル(KB)を前記架設区間に同時に架設してなり、
前記牽引工具(10)は、
所定方向に回転可能な回転部(13)と、
前記回転部(13)と共に回転するように、該回転部(13)に設けられている連結部(第1連結部14)と、を有し、
前記連結部(第1連結部14)には、前記螺旋状ケーブルハンガー(HK)が回転可能に連結されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項2の発明によれば、上記請求項1に記載のケーブル架設方法において、 前記牽引工具(10)は、前記吊線(TL)が一端側から他端側に向かって内部に挿通できるように、該牽引工具(10)の内部に空洞部(第1凹孔11b、第2凹孔12b、中空孔13a、第3凹孔17b、貫通孔19c)が設けられ、該空洞部(第1凹孔11b、第2凹孔12b、中空孔13a、第3凹孔17b、貫通孔19c)の少なくとも一部を閉止又は開放可能な開閉部(第4開閉部19d、第3開閉部17e、蓋部13c)が設けられてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
請求項1に係る発明によれば、架設された吊線(TL)が一端側から他端側に向かって牽引工具(10)の内部に挿通され、牽引線(牽引用ロープKR)が牽引工具(10)の一端側(第3連結部20側)に取り付けられると共に、牽引工具(10)の他端側(第1連結部14,第2連結部18側)に螺旋状ケーブルハンガー(HK)、及び、通信用又は電力用ケーブル(KB)が取り付けられ、その状態の牽引工具(10)を、牽引線(牽引用ロープKR)を牽引することにより牽引し、もって、電柱間(D1,D2,D3)等の架設区間に、螺旋状ケーブルハンガー(HK)、及び、通信用又は電力用ケーブル(KB)を同時に架設するようにしている。
【0014】
しかして、本発明によれば、作業性、及び、安全性を向上させることができる。
【0015】
また、請求項2に係る発明によれば、牽引工具(10)の内部に空洞部(第1凹孔11b、第2凹孔12b、中空孔13a、第3凹孔17b、貫通孔19c)が設けられ、該空洞部(第1凹孔11b、第2凹孔12b、中空孔13a、第3凹孔17b、貫通孔19c)の少なくとも一部を閉止又は開放可能な開閉部(第4開閉部19d、第3開閉部17e、蓋部13c)が設けられているから、吊線(TL)を架設した状態で、吊線(TL)に牽引工具(10)を取り付けることができることとなるため、もって、作業性、及び、安全性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るケーブル架設方法の架設手順を示し、(a)は、電柱間に吊線を架設する方法を示す概略正面図、(b)は、電柱間に、螺旋状ケーブルハンガー、及び、通信用又は電力用ケーブルを延線する方法を示す概略正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るケーブル架設方法の架設手順を示し、電柱間に架設された吊線の張架及び螺旋状ケーブルハンガーを電柱に固定する方法を示す概略正面図である。
【
図3】(a)は、同実施形態に係る牽引工具の平面図、(b)は、同実施形態に係る牽引工具の側面図である。
【
図4】(a)は、
図3(b)に示すZ-Z線端面図、(b)は、(a)に示す第4開閉部を回動した際の図である。
【
図5】(a)は、
図3(b)に示すα-α線端面図、(b)は、(a)に示す第3開閉部を回動した際の第3固定部に関する部分だけを図示した図である。
【
図6】(a)は、
図3(b)に示すX-X線断面図、(b)は、
図3(b)に示すY-Y線断面図である。
【
図7】同実施形態に係る牽引工具内に、吊線が挿通され、牽引工具の一端側に牽引用ロープが連結され、他端側に、螺旋状ケーブルハンガー、及び、通信用又は電力用ケーブルが連結されている状態を示す側面図である。
【
図8】(a)は、吊線が挿通され、牽引工具の一端側に牽引用ロープが連結され、他端側に、螺旋状ケーブルハンガー、及び、通信用又は電力用ケーブルが連結されている牽引工具が金車側に牽引されている状態を示す側面図、(b)は牽引工具が金車内を通過しようとしている状態を示す側面図、(c)は牽引工具が金車内を通過した後の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るケーブル架設方法の一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0018】
本実施形態に係るケーブル架設方法は、螺旋状ケーブルハンガー、及び、通信用又は電力用ケーブルを電柱間に架設するにあたって、まず、
図1(a)に示すように、一定間隔置きに、地上Gに立設されている電柱D1,D2,D3間に、吊線TLを架設する。この際、
図1(a)に示すように、電柱D1にある吊線TLの始端TLaを、吊線バンド3を用いて引き留め、電柱D3にある吊線TLの終端TLbを、吊線バンド3を用いて引き留める。そして、電柱D1,D2,D3それぞれに、
図8(b),(c)に示すようなロープRを括り付け、そのロープRに金車1を取り付け、吊り下げるようにする。この際、電柱D2に吊り下げされている金車1内には、吊線TLが通され、吊線TLの中間部分TLcは、金車1にて吊架されることとなる。なお、一定間隔置きに立設されている電柱D1,D2,D3間に、吊線バンド3にて吊線TLが既に張架されていた場合は、一旦、電柱D2の吊線バンド3を取り外し、吊線TLを架設する。そして、電柱D1,D2,D3それぞれに、
図8に示すようなロープRを括り付け、そのロープRに金車1を取り付け、吊り下げるようにし、電柱D2に吊り下げされている金車1内に吊線TLを通すようにする。
【0019】
次いで、
図1(b)に示すように、牽引用ロープKRの始端KRa(電柱D3側)を、シャフトドライブウインチ等の牽引装置7に取付け、終端KRbを牽引工具10の一端側に連結する。なお、この際、牽引用ロープKRは、電柱D2,D3に吊り下げられている金車1内に通されることとなる。
【0020】
そして、牽引工具10の他端側に螺旋状ケーブルハンガーHK、及び、通信用又は電力用ケーブルKBを連結する。すなわち、地上Gに配置された長尺の直線状被覆鋼線DSを巻着した直線状被覆鋼線ドラム5より矢印P1方向に送り出された直線状被覆鋼線DSを、図示しない載置台に載置された螺旋状ケーブルハンガー成形装置4に引き込み、螺旋状ケーブルハンガー成形装置4より、連続的に成形されながら矢印P3方向に回転しながら送り出される螺旋状ケーブルハンガーHK、及び、地上Gに配置された長尺の通信用又は電力用ケーブルKBを巻着したケーブルドラム9より矢印P1方向に送り出される通信用又は電力用ケーブルKBを、高所作業車CのゴンドラCaに乗っている作業者Sが牽引工具10の他端側に連結する。これにより、牽引工具10の他端側に螺旋状ケーブルハンガーHK、及び、通信用又は電力用ケーブルKBが連結されることとなる。
【0021】
この点、牽引工具10の構造を説明することで、より詳しく説明する。
【0022】
牽引工具10は、
図3(a)に示すように、平面視台形状の第1固定部11を有している。この第1固定部11は、
図3(a)に示すように、上面部11aの中間部に、牽引工具10の軸線Oに沿うように、第1凹孔11bが設けられている。この第1凹孔11bは、
図3(b)に示すように、側面視台形状に形成されており、先端部11cから基端部11dに向かって設けられている。なお、この第1凹孔11b内には、
図7に示す吊線TLが挿入される。
【0023】
一方、第1固定部11の基端部11dには、第1固定部11の外径よりも小径な棒状の第2固定部12が、軸線Oに沿うように一体的に取り付けられている。この第2固定部12は、
図3(a)に示すように、上面部12aの中間部に、牽引工具10の軸線Oに沿うように、第2凹孔12bが設けられている。この第2凹孔12bは、
図3(b)に示すように、側面視円形状に形成されており、先端部12cから基端部12dに向かって設けられている。なお、この第2凹孔12b内には、
図7に示す吊線TLが挿入され、第1凹孔11bと、第2凹孔12bは連通されている。
【0024】
他方、第2固定部12の先端部12c外周面には、
図3(a)に示すように矢印Y1方向に回転可能な円形状の回転部13が設けられている。この回転部13は、
図6(b)に示すように、中間部分に、略円形状の中空孔13aが、回転部13の幅方向に向かって貫通して設けられており、
図3(a)に示すように、回転部13の上面部13bには、蓋部13cが設けられている。この蓋部13cは、
図6(b)に示すように、中空孔13aを開放したり閉止したりすることができるもので、ハンマーなどの工具を用いて、回転部13に取り付けたり、取り外したりすることができるようになっている。なお、中空孔13aと、第1凹孔11bと、第2凹孔12bとは、連通されている。
【0025】
また、
図6(b)に示すように、回転部13の内周部13d側には、周方向に沿って、複数のベアリング13eが設けられている。しかして、この複数のベアリング13eによって、回転部13が、第2固定部12の先端部12c外周面を、
図3(a)に示す矢印Y1方向に回転する際、滑らかに回転することができることとなる。
【0026】
また、回転部13が、
図3(a)に示す矢印Y1方向に回転する際、
図3(a)に示すように、回転部13が、第1固定部11の基端部11d側に位置していることから、回転部13の回転が、第1固定部11の基端部11dとの接触によって阻害される可能性がある。そのため、
図6(a)に示すように、第1固定部11の基端部11dには、周方向に沿って、複数のベアリング11eが設けられている。これにより、回転部13の回転が、第1固定部11の基端部11dとの接触によって阻害されないようにすることができる。
【0027】
一方、
図3(b)に示すように、回転部13の下面部13f側には、第1連結部14が設けられている。この第1連結部14は、
図3(b)に示すように、側面視矩形状の傾動部14Aと、傾動部14Aの一端部14Aaにボルト15を介して回転可能に固定されている把持部14Bとで構成されている。
【0028】
傾動部14Aは、
図6(b)に示す回転部13の下面部13f側に形成されている凹み溝13gに取付固定されている、
図3(b)に示す支持軸16に、当該傾動部14Aの他端部14Abが傾動可能に固定されている。これにより、傾動部14Aは、支持軸16を基点として、
図3(b)に示すように、支持軸16周りに矢印Y2方向に傾動できることとなる。
【0029】
また、把持部14Bは、
図3(b)に示すように、一端部14Baがボルト15を介して回転可能に傾動部14Aの一端部14Aaに固定されている。これにより、把持部14Bは、
図3(b)に示すように、ボルト15を基点として、ボルト15周りに矢印Y3方向に回転できることとなる。さらに、把持部14Bは、傾動部14Aに固定されているから、
図3(b)に示すように、傾動部14Aが支持軸16周りに矢印Y2方向に傾動するとそれに合せて把持部14Bも傾動することとなる。
【0030】
一方、把持部14Bは、
図3(b)に示すように、内部に螺旋状ケーブルハンガーHKが挿入可能な挿入孔14Bbが長手方向に沿って形成されている。そして、把持部14Bの下面には、
図3(b)に示すように、ボルト14Bcが複数(図示では、3個)設けられており、各ボルト14Bcがそれぞれ長手方向と直交する直交方向(図示下方向)から挿入孔14Bb内に侵入可能となっている。すなわち、螺旋状ケーブルハンガーHKを挿入孔14Bbに挿入させるにあたって、まず、各ボルト14Bcをそれぞれ緩める。これにより、挿入孔14Bb内に各ボルト14Bcが侵入していない状態となるから、
図7に示すように、螺旋状ケーブルハンガーHKを挿入孔14Bbに挿入させることができる。そしてその後、各ボルト14Bcをそれぞれ締め込むと、各ボルト14Bcがそれぞれ長手方向と直交する直交方向(図示下方向)から挿入孔14Bb内に侵入し、挿入孔14Bb内に挿入されている螺旋状ケーブルハンガーHKを押圧することとなる。これにより、螺旋状ケーブルハンガーHKが把持部14Bの挿入孔14Bbから抜け出してしまう事態を防止することができ、もって、
図7に示すように、第1連結部14に螺旋状ケーブルハンガーHKが連結されることとなる。
【0031】
他方、第2固定部12の基端部12dには、
図3(b)に示すように、側面視台形状の第3固定部17が、第2固定部12に一体的に取り付けられている。この第3固定部17は、
図3(a)に示すように、上面部17aの中間部に、牽引工具10の軸線Oに沿うように、第3凹孔17bが設けられている。この第3凹孔17bは、
図5(b)に示すように、背面視U字状に形成されており、先端部17cから基端部17dに向かって設けられている。なお、この第3凹孔17b内には、
図7に示す吊線TLが挿入され、第1凹孔11bと、第2凹孔12bと、中空孔13aと、第3凹孔17bとは連通されている。
【0032】
一方、第3固定部17の基端部17dには、
図3に示すように、第3固定部17の上面部17a側に、第3開閉部17eが設けられている。この第3開閉部17eは、
図5(b)に示すように、半円弧状に形成され、
図5(a)に示すように、一対のボルト17e1によって、第3固定部17の基端部17dに固定されている。そして、
図5(b)に示すように、一対のボルト17e1のうち、一方のボルト17e1(図示左側に位置するボルト)を緩めることにより、他方のボルト17e1(図示右側に位置するボルト)を基点として、第3開閉部17eは、回動することとなる。しかして、このように第3開閉部17eを回動させることにより、第3凹孔17bの一部が外部に露呈しない(
図3(a),
図5(a)参照)ように、閉止したり、第3凹孔17bの一部が外部に露呈する(
図5(b)参照)ように、開放したりすることができる。
【0033】
また一方、第3固定部17の基端部17dには、
図3(b)に示すように、第3固定部17の下面部17f側に、第2連結部18が設けられている。この第2連結部18は、
図3(b)に示すように、側面視棒状に形成されており、ねじ等によって第3固定部17に固定されている。
【0034】
ところで、この第2連結部18には、
図7に示すように、撚り戻し器8Aが連結される。具体的には、
図3(a)に示すように、第2連結部18の先端部18aには、上下方向に向かって円形状の貫通孔18bが貫通して設けられている。そして、
図7に示すように、撚り戻し器8Aの先端に設けられているコ字部材8Aa内にピンボルト8Aa1を挿入すると共に、そのピンボルト8Aa1を、第2連結部18の貫通孔18bに挿入するようにすれば、第2連結部18と撚り戻し器8Aが連結されることとなる。一方、
図7に示すように、この撚り戻し器8Aの後端に設けられているU字部材8Abには、接続用ネット30を介して、通信用又は電力用ケーブルKBが取り付けられている。これにより、第2連結部18に、通信用又は電力用ケーブルKBが連結されることなる。
【0035】
他方、第1固定部11の先端部11cには、
図3に示すように、台形状の第4固定部19が一体的に取り付けられている。この第4固定部19は、
図3(b)に示すように、牽引工具10の軸線Oに沿うように、先端部19aから基端部19bに向かって、円形状の貫通孔19cが、貫通して設けられている。そして、第4固定部19の上方には、
図4に示すように、第4開閉部19dが設けられている。この第4開閉部19dは、
図4(b)に示すように、半円弧状に形成され、
図4(a)に示すように、一対のボルト19d1によって固定されている。そして、
図4(b)に示すように、一対のボルト19d1のうち、一方のボルト19d1(図示右側に位置するボルト)を緩めることにより、他方のボルト19d1(図示左側に位置するボルト)を基点として、第4開閉部19dは、回動することとなる。しかして、このように第4開閉部19dを回動させることにより、貫通孔19cが外部に露呈しない(
図3,
図4(a)参照)ように、閉止したり、貫通孔19cが外部に露呈する(
図4(b)参照)ように、開放したりすることができる。なお、この貫通孔19c内には、
図7に示す吊線TLが挿入され、第1凹孔11bと、第2凹孔12bと、中空孔13aと、第3凹孔17bと、貫通孔19cとは連通されている。そのため、第1凹孔11bと、第2凹孔12bと、中空孔13aと、第3凹孔17bと、貫通孔19cとによって、牽引工具10は、先端側から基端側に向かって、空洞部が形成されることとなる。
【0036】
一方、
図3(b)に示すように、第4固定部19の下面部19eには、逆L字形の第3連結部20が設けけられている。この第3連結部20は、
図3(b)に示すように、第4固定部19の下面部19eに一体的に取り付けられている台形状の第3連結部本体20Aと、第3連結部本体20Aの下面部20Aaより外方向に一体的に突出して設けられている棒状の取付部20Bとで構成されている。
【0037】
ところで、この第3連結部20には、
図7に示すように、シャックル8Cを介して、撚り戻し器8Bが連結される。具体的には、
図3(a)に示すように、第3連結部20の取付部20Bの先端部20Baには、上下方向に向かって円形状の貫通孔20Bbが貫通して設けられている。そして、
図7に示すように、シャックル8Cは、後端部(図示右側)にボルト挿通孔(図示せず)が貫通して形成されているU字形のシャックル本体8Caと、ボルト挿通孔(図示せず)に跨って挿抜可能なピンボルト8Cbと、で構成されている。これにより、ボルト挿通孔(図示せず)よりピンボルト8Cbを挿入すると共に、そのピンボルト8Cbを、第3連結部20の貫通孔20Bb(
図3(a)参照)に挿入するようにすれば、第3連結部20とシャックル8Cが連結されることとなる。そして、
図7に示すように、このシャックル8Cの先端部(図示左側)には、撚り戻し器8Bの後端部8Baが連結され、撚り戻し器8Bの先端部8Bbには、牽引用ロープKRの終端KRbが巻き付けられて取り付けられる。これにより、第3連結部20に、牽引用ロープKRが連結されることなる。
【0038】
かくして、上記のように構成される牽引工具10を用いて、
図1(b)に示す高所作業車CのゴンドラCaに乗っている作業者Sは、電柱D1,D2,D3間に、予め架設している吊線TLを、
図7に示すように、牽引工具10内に挿通させる。すなわち、第4固定部19の第4開閉部19dを、
図4(b)に示すように開放すると共に、第3固定部17の第3開閉部17eを、
図5(b)に示すように開放し、さらに、回転部13の蓋部13cを取り外す。これにより、連通している第1凹孔11bと、第2凹孔12bと、中空孔13aと、第3凹孔17bと、貫通孔19cとがすべて開放されることとなるから、その状態で、吊線TLの下側から牽引工具10を吊線TLに沿わせるようにすれば、電柱D1,D2,D3間に、予め架設している吊線TLを、牽引工具10内に挿通させることができる。そしてその後、第4固定部19の第4開閉部19dを、
図4(a)に示すように閉止すると共に、第3固定部17の第3開閉部17eを、
図5(a)に示すように閉止し、さらに、回転部13の蓋部13cを取り付けるようにする。これにより、第4開閉部19d及び第3開閉部17e並びに蓋部13cによって、吊線TLが、第1凹孔11b、第2凹孔12b、中空孔13a、第3凹孔17b、貫通孔19cより抜け出ないようにすることができ、もって、吊線TLが牽引工具10内に挿通されている状態を維持することができる。
【0039】
次いで、牽引工具10の第1連結部14に、螺旋状ケーブルハンガーHKを連結し、第2連結部18に、接続用ネット30を介して、通信用又は電力用ケーブルKBが取り付けられている撚り戻し器8Aを連結する。そして、牽引工具10の第3連結部20に、牽引用ロープKRの終端KRbが取り付けられている撚り戻し器8Bを、シャックル8Cを介して連結する。この際、吊線TL、及び、螺旋状ケーブルハンガーHK、並びに、通信用又は電力用ケーブルKBが一束化する。すなわち、
図1(b)、
図7及び
図8(b),(c)に示すように、吊線TL及び通信用又は電力用ケーブルKBに螺旋状ケーブルハンガーHKが巻き付けられるように、牽引工具10の第1連結部14に、螺旋状ケーブルハンガーHKを連結し、第2連結部18に、接続用ネット30を介して、通信用又は電力用ケーブルKBが取り付けられている撚り戻し器8Aを連結する。なお、この連結作業の際、螺旋状ケーブルハンガー成形装置4の動作は一旦停止させている。
【0040】
次いで、上記のような取付作業を終えた後、螺旋状ケーブルハンガー成形装置4の動作を開始させると共に、牽引装置7を用いて牽引用ロープKRを巻き取る。これにより、
図1(b)に示すように、矢印P2方向に牽引用ロープKRを牽引する。
【0041】
かくして、このように、牽引用ロープKRが牽引されると、
図8(a)に示す矢印P3方向に牽引工具10が牽引される。この際、牽引工具10は、予め架設されている吊線TLを支持しているから、吊線TLに沿うようにして、牽引工具10は牽引されることとなる。そして、この際、螺旋状ケーブルハンガー成形装置4より連続的に成形されて回転しながら螺旋状ケーブルハンガーHKが送り出されるから、その回転に伴い、螺旋状ケーブルハンガーHKが連結されている牽引工具10の第1連結部14も回転しようとする。その際、第1連結部14は、上記説明したように、回転部13に取り付けられているから、第1連結部14が回転しようとする動きに伴い、
図8(a)に示すように、矢印Y1方向に回転部13が回転することとなる。これにより、
図8(a)に示す矢印P3方向に牽引用ロープKRによって牽引工具10が牽引されると、螺旋状ケーブルハンガーHKの回転に伴い、回転部13と共に、第1連結部14が回転することとなるから、螺旋状ケーブルハンガーHKは、回転しながら、矢印P3方向に牽引されることとなり、もって、螺旋状ケーブルハンガーHKに無用な負荷をかけることなく、矢印P3方向に螺旋状ケーブルハンガーHKを牽引することができる。
【0042】
次いで、
図8(a)に示す矢印P3方向に牽引工具10が牽引されると、
図8(b)に示すように、牽引工具10は、金車1内を通過する。すなわち、金車1は、
図8に示すように、電柱D1,D2,D3(
図1(b)参照)それぞれに括り付けられているロープRに取り付けられる略U字状の取付部1aと、その取付部1aの下端部に回転可能に固定されている滑車1bとで構成されており、その滑車1b上を牽引工具10が通過することとなる。
【0043】
次いで、牽引工具10が金車1内を通過すると、
図8(c)に示すように、金車1内に、吊線TL及び螺旋状ケーブルハンガーHK並びに通信用又は電力用ケーブルKBが一束化された状態、すなわち、吊線TL及び通信用又は電力用ケーブルKBに螺旋状ケーブルハンガーHKが巻き付けられた状態で配置されることとなる。
【0044】
かくして、このようにして、電柱D1,D2,D3間に螺旋状ケーブルハンガーHK、及び、通信用又は電力用ケーブルKBが同時に架設されることとなる。
【0045】
次いで、
図2に示すように、ロープR及び金車1を取り外し、電柱D1,D2,D3にそれぞれ取付けられている吊線バンド3を用いて吊線TLを張架する。そして、螺旋状ケーブルハンガーHKを電柱D1,D2間、電柱D2,D3間毎の長さに切断し、終端クランプ6を用いて電柱D1,電柱D2,電柱D3に固定する。なお、吊線バンド3を用いて吊線TLを張架する際、又、螺旋状ケーブルハンガーHKを電柱D1,D2間、電柱D2,D3間毎の長さに切断し、終端クランプ6を用いて電柱D1,電柱D2,電柱D3に固定する際、緊張状態を維持しなければならないため、電柱D3側から順に作業をした方が好ましい。
【0046】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、予め架設されている吊線TLが牽引工具10の内部に挿通され、牽引用ロープKRが牽引工具10の一端側(第3連結部20側)に取り付けられ、牽引工具10の他端側(第1連結部14,第2連結部18側)に螺旋状ケーブルハンガーHK、及び、通信用又は電力用ケーブルKBが取り付けられ、その状態の牽引工具10を、牽引用ロープKRを牽引することにより牽引し、もって、電柱D1,D2,D3間に螺旋状ケーブルハンガーHK、及び、通信用又は電力用ケーブルKBを同時に架設するようにしている。
【0047】
しかして、このようにすれば、従来のような親ロープに比べ、吊線TLは強度を有していることから、親ロープに比べて弛みが少ないという利点がある。それゆえ、延線中の弛みを軽減させることができるため、ケーブルテレビ等の他通信線と干渉する可能性を低減させることができる。さらには、金車1の取り付けが、電柱D1,D2,D3だけで良くなるため、電柱間に、金車1を取り付ける必要がなくなる。そしてさらには、既設の吊線TLを利用して、螺旋状ケーブルハンガーHK、及び、通信用又は電力用ケーブルKBを架設することがきる。またさらには、親ロープに比べて弛みが少なくなるから、河川横断等の長径間箇所にも適用することができる。
【0048】
しかして、本実施形態によれば、作業性、及び、安全性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、吊線TLが牽引工具10の内部に挿通できるように、該牽引工具10の内部に第1凹孔11b、第2凹孔12b、中空孔13a、第3凹孔17b、貫通孔19cを設けるようにしている。これにより、吊線TLが牽引工具10の内部に挿通できることとなる。そしてさらに、第4固定部19の第4開閉部19dを、
図4(a)に示すように閉止することにより、貫通孔19cを閉止し、第3固定部17の第3開閉部17eを、
図5(a)に示すように閉止することにより、第3凹孔17bの一部を閉止し、さらに、回転部13の蓋部13cを取り付けることにより、中空孔13aを閉止するようにしている。これにより、吊線TLが牽引工具10の内部に挿通した状態を維持することができる。
【0050】
しかして、本実施形態によれば、吊線TLを架設した状態で、吊線TLに牽引工具10を取り付けることができるから、作業性、及び、安全性をさらに向上させることができる。
【0051】
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、説明の都合上、直線状に立設されている電柱D1,D2,D3間に、螺旋状ケーブルハンガーHK、及び、通信用又は電力用ケーブルKBを同時に架設する例を示したが、それに限らず、直線状に立設されていない、例えば、直角状に立設されている電柱間の架設にも適用可能である。ただその際、螺旋状ケーブルハンガーHKが破損しないよう、牽引用ロープKRの動きに合わせて、螺旋状ケーブルハンガーHKを自由自在に可動できるようにするのが好ましい。それゆえ、本実施形態においては、螺旋状ケーブルハンガーHKを把持している第1連結部14を上下左右方向に自在に可動できるようにし、牽引用ロープKRの動きに合わせて、螺旋状ケーブルハンガーHKを自由自在に可動できるようにしている。
【0052】
また、本実施形態においては、第4固定部19の第4開閉部19dを、
図4(a)に示すように閉止することにより、貫通孔19cを閉止し、第3固定部17の第3開閉部17eを、
図5(a)に示すように閉止することにより、第3凹孔17bの一部を閉止し、さらに、回転部13の蓋部13cを取り付けることにより、中空孔13aを閉止する例を示したが、それに限らず、第1凹孔11b、第2凹孔12b、中空孔13a、第3凹孔17b、貫通孔19cをすべて閉止するような構造にしても良い。
【0053】
一方、本実施形態においては、螺旋状ケーブルハンガーHK、及び、通信用又は電力用ケーブルKBを架設する例として電柱間を例に説明したが、それに限らず、どのような架設区間にも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 金車
10 牽引工具
11b 第1凹孔(空洞部)
12b 第2凹孔(空洞部)
13a 中空孔(空洞部)
13c 蓋部(開閉部)
14 第1連結部(他端)
17b 第3凹孔(空洞部)
17e 第3開閉部(開閉部)
18 第2連結部(他端)
19c 貫通孔(空洞部)
19d 第4開閉部(開閉部)
20 第3連結部(一端)
D1,D2,D3 電柱
KR 牽引用ロープ(牽引線)
TL 吊線
KB 通信用又は電力用ケーブル
HK 螺旋状ケーブルハンガー