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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】硬貨識別装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 5/02 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
G07D5/02 104
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020152723
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047027
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】中澤 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】沢田 雄史
(72)【発明者】
【氏名】大場 陽介
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-160167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される硬貨の少なくとも一方の面側と他方の面側とから当該硬貨に光を照射する光照射装置と、
前記光照射装置から前記硬貨の一方の面側に光を照射した状態で当該硬貨の一方の面側の反射画像を取得すると共に、前記光照射装置から前記硬貨の他方の面側に光を照射した状態で当該硬貨の他方の面側の透過画像を取得するラインセンサと、
前記硬貨の一方の面側の反射画像と前記硬貨の他方の面側の透過画像とで画像の取得数を異ならせる制御装置と、を有する硬貨識別装置。
【請求項2】
前記硬貨の一方の面側の反射画像は、当該硬貨の表面に施された文字又は図形の取得に用いられる画像であり、前記硬貨の他方の面側の透過画像は、当該硬貨の外径の取得に用いられる画像であり、
前記制御装置は、
所定の期間において、前記硬貨の一方の面側の反射画像を、前記硬貨の他方の面側の透過画像よりも多く前記ラインセンサから取得する請求項1に記載の硬貨識別装置。
【請求項3】
前記光照射装置は、
搬送機構により搬送される硬貨の少なくとも一方の面側に光を照射する第1光照射装置と、
前記搬送機構により搬送される硬貨の少なくとも他方の面側に光を照射する第2光照射装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記第1光照射装置から光が照射された際の前記硬貨の一方の面側の反射画像を、前記第2光照射装置から光が照射された際の前記硬貨の他方の面側の透過画像よりも多く前記ラインセンサから取得する請求項1又は請求項2に記載の硬貨識別装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記硬貨の他方の面側の透過画像の取得数に対する前記硬貨の一方の面側の反射画像の取得数を、前記硬貨の搬送速度に基づいて決定する請求項1から請求項3の何れか一項に記載の硬貨識別装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記ラインセンサで取得した前記硬貨の一方の面側の反射画像および前記硬貨の他方の面側の透過画像に基づいて前記硬貨の識別適合又は識別不適合を判別した結果、識別不適合と判別した硬貨をリジェクト部にリジェクトし、
当該リジェクトした硬貨の再判別時には、前記硬貨の他方の面側の透過画像の取得数に対する前記硬貨の一方の面側の反射画像の取得数を、前記硬貨のリジェクト前の判別時における当該硬貨の一方の面側の反射画像の取得数よりも多くする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の硬貨識別装置。
【請求項6】
前記第1光照射装置が設けられる下側ユニットと、
前記第2光照射装置が設けられる上側ユニットと、
前記第1光照射装置及び前記第2光照射装置から照射される光の光量を含むパラメータを記憶する記憶部と、を有し、
前記記憶部は、前記下側ユニット及び前記上側ユニットの何れかに設けられる請求項3に記載の硬貨識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送される硬貨の画像情報をラインセンサで取得し、ラインセンサで取得した硬貨の画像情報から硬貨の金種や真偽を識別する硬貨識別装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この種の硬貨識別装置では、例えば、上側モジュールに設けられた上側光照射装置から照射された光による硬貨の透過画像と、下側モジュールに設けられた下側光照射装置から照射された光による硬貨の反射画像とを、所定のサンプリング周期で1対1の関係で交互に取得している。
【0003】
前述した硬貨識別装置では、上側光照射装置から照射された光による硬貨の透過画像情報は、硬貨の外径(輪郭)の取得に用いられ、下側光照射装置から照射された光による硬貨の反射画像情報は、硬貨の表面に施された文字や図形などの模様の取得に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-160167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した硬貨識別装置では、ラインセンサのサンプリング数(サンプリング周期)はハードウェア構成により規制され、例えば、硬貨の搬送速度が速い場合には、ラインセンサで取得できる硬貨画像のサンプリング数が少なくなってしまい、特に硬貨の表面に施された文字や図形などの模様を精度よく判別することが難しくなってしまう。
【0006】
従って、本発明は、硬貨を精度よく判別することが可能となる硬貨識別装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る第1の態様は、搬送される硬貨の少なくとも一方の面側と他方の面側とから当該硬貨に光を照射する光照射装置と、前記光照射装置から前記硬貨の一方の面側に光を照射した状態で当該硬貨の一方の面側の反射画像を取得すると共に、前記光照射装置から前記硬貨の他方の面側に光を照射した状態で当該硬貨の他方の面側の透過画像を取得するラインセンサと、前記硬貨の一方の面側の反射画像と前記硬貨の他方の面側の透過画像とで画像の取得数を異ならせる制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬貨を精度よく判別することが可能となる硬貨識別装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る硬貨識別装置を含む硬貨処理機を示す平面図である。
図2】実施の形態に係る硬貨識別装置を側面から見た概略図である。
図3】実施の形態に係る硬貨識別装置のユニット本体を示す斜視図である。
図4】ラインセンサによって硬貨の透過画像と硬貨の反射画像とを1対1の関係で交互に取得する場合を説明する図である。
図5】実施の形態に係る硬貨識別装置のラインセンサによって硬貨の透過画像と硬貨の反射画像とを1対2の関係で交互に取得する場合を説明する図である。
図6】実施の形態に係る硬貨識別装置のラインセンサによって硬貨の透過画像と硬貨の反射画像とを1対3の関係で交互に取得する場合を説明する図である。
図7】実施の形態に係る硬貨識別装置のラインセンサによって硬貨の透過画像と硬貨の反射画像とを1対4の関係で交互に取得する場合を説明する図である。
図8】実施の形態に係る硬貨識別装置のラインセンサから取得する硬貨の透過画像から硬貨の外径を算出する処理を説明する図である。
図9】実施の形態に係る硬貨識別装置のラインセンサの検知範囲に硬貨、異物及びビット抜けがない場合のラインセンサの出力値の一例を説明する図である。
図10】実施の形態に係る硬貨識別装置のラインセンサの検知範囲に硬貨がなく、異物及びビット抜けがある場合のラインセンサの出力値の一例を説明する図である。
図11】実施の形態に係る硬貨識別装置のラインセンサの検知範囲に硬貨と異物がある場合のラインセンサの出力値の一例を説明する図である。
図12】実施の形態に係る硬貨識別装置のラインセンサに複数のビット抜けがある場合のラインセンサの出力値の一例を説明する図である。
図13】実施の形態に係る硬貨識別装置のラインセンサに異物の付着やビット抜けがある場合における識別制御装置によるラインセンサの出力値の補正方法を説明するフローチャートである。
図14】実施の形態に係る硬貨識別装置のラインセンサから取得する硬貨の透過画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<硬貨処理機1>
図1は、硬貨処理機1を示す平面図である。
【0011】
硬貨処理機1は、機外から投入されたバラの硬貨Cを識別しつつ計数して金種別に収納するものである。硬貨処理機1は、外部から硬貨Cが投入される硬貨投入繰出部10を有している。
【0012】
硬貨投入繰出部10は、水平に配置された回転円盤12と、この回転円盤12の外縁部から鉛直に立ち上がる、一部が切り欠かれた略円筒状の側壁部13と、回転円盤12との間に硬貨一枚分の隙間をもって側壁部13の切欠部分に設けられた分別環14とを有している。
【0013】
硬貨投入繰出部10には、機外から硬貨Cが投入される。この状態で回転円盤12が図1における反時計回りに回転すると、その遠心力によって硬貨Cが側壁部13の内周面に沿って運ばれる。更に、硬貨Cは、回転円盤12と分別環14との隙間を介して一枚ずつ分離されて硬貨投入繰出部10から外に順次繰り出される。
【0014】
硬貨投入繰出部10の硬貨繰出位置には、硬貨投入繰出部10から繰り出された硬貨Cを一列状に移動するように案内する搬送路20と、搬送路20上の硬貨Cを搬送する搬送機構21とが設けられている。
【0015】
搬送路20は、回転円盤12の接線方向に沿って配置された第1搬送部23と、この第1搬送部23の回転円盤12とは反対側から直交方向に延出する第2搬送部24と、この第2搬送部24の第1搬送部23とは反対側から直交方向に延出する第3搬送部25とを有している。第1搬送部23には、貨幣を識別する貨幣識別装置、具体的には硬貨Cを識別する硬貨識別装置26のユニット本体27が設けられている。硬貨識別装置26は、第1搬送部23で搬送中の硬貨Cの金種を識別しつつ計数する。
【0016】
第2搬送部24には、硬貨Cを落下可能であり落下した硬貨Cを機外に取出可能に案内するリジェクト口28と、硬貨識別装置26で識別不能と識別された硬貨Cをリジェクト口28に落下させるリジェクト部29とが設けられている。リジェクト口28から落下した硬貨Cは、図示略のリジェクト箱に排出されることにより硬貨処理機1の機外へ取り出し可能となる。
【0017】
第3搬送部25には、硬貨識別装置26で識別され計数された硬貨Cを金種別に選別する選別部32が設けられている。この選別部32は、硬貨Cを落下可能な金種別の選別口32a~32fを有している。これら選別口32a~32fは、第3搬送部25の延在方向に並べられて設けられている。これら選別口32a~32fは、硬貨Cを小さい外径のものから落下させるようになっている。これら選別口32a~32fは、最も上流側の選別口32aが1円硬貨を、その下流側の選別口32bが50円硬貨を、その下流側の選別口32cが5円硬貨を、その下流側の選別口32dが100円硬貨を、その下流側の選別口32eが10円硬貨を、その下流側の選別口32fが500円硬貨を、それぞれ別々に落下させるようになっている。各選別口32a~32fの直前位置には硬貨Cを検知する硬貨検知センサ33a~33fが設けられている。硬貨処理機1は、硬貨検知センサ33a~33fの隣り合うもの同士の検知枚数の差から、選別口32a~32fのうちの間にあるものから落下した硬貨Cの数を計数するようになっている。
【0018】
搬送機構21は、複数の搬送ベルト35,36を有している。これらの搬送ベルト35,36が、硬貨投入繰出部10から繰り出された硬貨Cを上側から搬送路20に押し付けて搬送する。この搬送中、硬貨Cは、まず、硬貨識別装置26で識別され計数されることになる。硬貨識別装置26で識別不能であった硬貨Cは、リジェクト部29によってリジェクト口28から落下させられ、それ以外の硬貨Cは、選別部32の金種別の選別口32a~32fの対応するものから落下する。
【0019】
なお、図示は略すが、選別口32a~32fの下側には、選別口32a~32fから落下した硬貨Cを機外に返却可能に一時貯留する金種別の一時貯留部と、一時貯留部に貯留された硬貨Cを出金可能に収納する金種別の出金収納部とが設けられている。
【0020】
第1搬送部23は、上面の搬送面39が水平に配置されて回転円盤12の接線方向に直線状に延びる通路部40と、通路部40の幅方向両側に立設されて通路部40と同方向に延びる側壁部41,42とを有している。通路部40は、硬貨投入繰出部10から繰り出された硬貨Cの下面を搬送面39で支持してその移動を案内することになる。側壁部41,42は搬送面39上で硬貨Cが移動する際に硬貨Cが一列状に並ぶように硬貨Cの外周面を案内する。硬貨識別装置26のユニット本体27は、通路部40に設けられている。硬貨識別装置26は、通路部40の搬送面39上で搬送される硬貨Cを識別する。以下、通路部40の搬送面39上で搬送される硬貨Cの搬送方向を硬貨搬送方向とし、硬貨搬送方向に対して直交する水平方向を通路幅方向として硬貨識別装置26を説明する。側壁部41,42は、通路部40の通路幅方向両側に立設されて硬貨搬送方向に延びている。
【0021】
[硬貨識別装置26]
図2は実施の形態に係る硬貨識別装置26を側面から見た概略図である。
【0022】
図2に示すように、硬貨識別装置26は、上記したユニット本体27と、CPU基板からなる識別制御装置45(制御装置)と、上位制御装置46とを有して構成されている。ユニット本体27と識別制御装置45と上位制御装置46とは全て別部品である。ユニット本体27と識別制御装置45とは、別体であり、配線等を介して通信可能に接続されている。上位制御装置46は、識別制御装置45と別体である。上位制御装置46は、インターフェース47を介して識別制御装置45と接続される制御部48と、識別制御装置45に電源を供給する電源部49とを有して構成されている。
【0023】
(ユニット本体27)
図3に示すように、ユニット本体27は、下側ユニット51と、下側ユニット51の上方に配置される上側ユニット52とを有している。下側ユニット51は、前述した第1搬送部23(図1参照)の一部を構成するものである。下側ユニット51は、一対のガイド55と、通路構成部56とを有している。通路構成部56は、上面が平面状の搬送面部57となっている。搬送面部57は、前述した搬送面39(図1参照)の一部を構成する。通路構成部56は、前述した通路部40(図1参照)の一部を構成する。硬貨Cは、下側ユニット51側の面Caを通路構成部56の搬送面部57に接触させて搬送面部57上を移動する。
【0024】
一対のガイド55は、搬送面部57上に設けられている。一対のガイド55は、硬貨搬送方向に延在する状態で、通路幅方向の両側に配置されている。一対のガイド55のうちの一方は、図1に示す側壁部41の一部を構成する。一対のガイド55のうちの他方は、図1に示す側壁部42の一部を構成する。図3に示すように、一対のガイド55は、何れも直線状の板であり、互いの対向面で硬貨Cの外周面に接触してその移動を案内する。一対のガイド55は、通路構成部56の通路幅方向両側に立設されて硬貨搬送方向に延びている。
【0025】
上側ユニット52は、一対のガイド55の上側に設けられている。上側ユニット52は、搬送面部57上の硬貨Cを搬送面部57に押し付ける複数の硬貨押圧部材58を有している。複数の硬貨押圧部材58は、通路幅方向に並んでいる。複数の硬貨押圧部材58は、通路幅方向において一対のガイド55の間に配置されている。
【0026】
図1に示す搬送機構21は、通路構成部56の搬送面部57上の硬貨Cに上から接触して、この硬貨Cを搬送面部57上で移動させる無端状の搬送ベルト35を有している。搬送ベルト35は、図示は略すが、その下部が、図3に示す下側ユニット51の搬送面部57と上側ユニット52との間を通って硬貨搬送方向に延びている。搬送ベルト35の下部は、通路幅方向において、両側の硬貨押圧部材58の間に配置されている。搬送ベルト35の下部は、搬送面部57上の硬貨Cの上面である他方の面Cbに接触する。搬送ベルト35の下部は、搬送面部57上にある硬貨Cの通路幅方向における途中部分に接触する。搬送ベルト35は、回転することにより、その下部が硬貨搬送方向に走行し、この下部が接触する硬貨Cを、搬送面部57上で硬貨搬送方向に移動させる。
【0027】
(下側ユニット51)
図2に示すように、下側ユニット51は、下側光照射装置61(第1光照射装置)と、ラインセンサ62及び磁気センサ63などの複数のセンサとを有している。下側ユニット51は、ラインセンサ62及び磁気センサ63を含む複数のセンサによって硬貨Cの金種を判別する。また、下側ユニット51は、記憶部65を有している。記憶部65は、下側光照射装置61から照射される光の光量や照射タイミングや磁気センサ63の調整値(パラメータ)を記憶している。
【0028】
ラインセンサ62は、その上面が搬送面部57を構成している。ラインセンサ62は、通路構成部56を通路幅方向に横断するように設けられている。ラインセンサ62は、多数の図示略の受光素子が通路幅方向に等間隔で直線状に並べられて構成されている。
【0029】
下側光照射装置61は、硬貨搬送方向においてラインセンサ62の上流側と下流側とに分かれて設けられている。下側光照射装置61は、その上面が搬送面部57を構成している。下側光照射装置61は、所定の波長の光を照射可能に構成されている。下側光照射装置61は、所定の第1周期で光を硬貨Cの下面である一方の面Ca側から照射する。この下側光照射装置61から所定の第1周期で照射された光は、通路構成部56に沿って搬送面部57上で搬送される硬貨Cの一方の面Ca側で反射してラインセンサ62に入力される。下側光照射装置61から照射され、硬貨Cの一方の面Ca側で反射してラインセンサ62に入力される光による画像を、硬貨Cの一方の面Ca側の反射画像とする。ラインセンサ62は、通路構成部56で搬送される硬貨Cの画像情報を取得する。硬貨Cの一方の面Ca側の反射画像は、この硬貨Cの一方の面Caの表面に施された文字又は図形の取得に用いられる画像である。
【0030】
識別制御装置45は、所定の第1周期で入力された硬貨Cの一方の面Ca側の反射画像を、第1周期と同じ第1のサンプリング周期で検出するようにラインセンサ62を制御する。識別制御装置45は、所定の第1のサンプリング周期ごとにラインセンサ62で取得した反射画像を時系列で繋ぎ合わせることで、硬貨Cの一方の面Caに施された文字又は図形などの模様を検出することができる。
【0031】
磁気センサ63は、下側光照射装置61及びラインセンサ62よりも硬貨搬送方向の下流側に設けられている。磁気センサ63は、通路構成部56に沿って搬送面部57上で搬送される硬貨Cの磁気的性質を取得する。
【0032】
(上側ユニット52)
上側ユニット52は、上側光照射装置71(第2光照射装置)と、磁気センサ72とを有して構成されている。
【0033】
上側光照射装置71は、所定の波長の光を照射可能に構成されている。上側光照射装置71は、所定の第2周期で光を硬貨Cの上面である他方の面Cb側から照射する。この上側光照射装置71から所定の第2周期で照射された光は、通路構成部56に沿って搬送される硬貨Cを他方の面Cb側から一方の面Ca側へ透過する方向に進んでラインセンサ62に入力される。上側光照射装置71から照射され、硬貨Cを他方の面Cb側から一方の面Ca側へ透過する方向に進んでラインセンサ62に入力される光による画像を、硬貨Cの他方の面Cb側の透過画像とする。硬貨Cの他方の面Cb側の透過画像は、この硬貨Cの外径の取得に用いられる画像である。下側ユニット51に設けられた記憶部65は、上側光照射装置71から照射される光の光量や照射タイミングの調整値(パラメータ)を記憶している。なお、記憶部65を上側ユニット52に設けることも可能である。また、記憶部65を下側ユニット51と上側ユニット52とに分けて設けることも可能である。すなわち、記憶部65は、ユニット本体27に設けられ、下側ユニット51及び上側ユニット52のうちの少なくとも何れか一方に設けられる。
【0034】
磁気センサ72は、上側光照射装置71よりも硬貨搬送方向の下流側に設けられている磁気センサ72は、通路構成部56に沿って搬送される硬貨Cの磁気的性質を取得する。
【0035】
下側ユニット51及び上側ユニット52からなるユニット本体27は、下側光照射装置61と上側光照射装置71とからなる光照射装置81を有している。光照射装置81は、通路構成部56で搬送される硬貨Cの少なくとも一方の面Ca側と他方の面Cb側とからこの硬貨Cに光を照射する。ラインセンサ62は、この光照射装置81から硬貨Cの一方の面Ca側に光を照射した状態で当該硬貨Cの一方の面Ca側の画像を取得すると共に、光照射装置81からこの硬貨Cの他方の面Cb側に光を照射した状態でこの硬貨Cの他方の面Cb側の画像を取得する。ラインセンサ62は、硬貨Cの下面の反射画像を取得し、硬貨Cの上面の透過画像を取得する。
【0036】
識別制御装置45は、硬貨Cの透過画像を、第2周期と同じ第2のサンプリング周期で検出するようにラインセンサ62を制御する。識別制御装置45は、所定の第2のサンプリング周期ごとにラインセンサ62で取得した硬貨Cの透過画像を時系列で繋ぎ合わせることで、硬貨Cの外径を検出することができる。
【0037】
(ラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率が1対1の場合)
図4は、ラインセンサ62によって、上側光照射装置71から照射された光による硬貨Cの透過画像と、下側光照射装置61から照射された光による硬貨Cの反射画像とを1対1の関係で交互に取得する場合を例示して説明する図である。
【0038】
図4の(A)の上段は、上側光照射装置71による光の所定の周期における照射タイミングa1、a2、a3、…、anを示している。図4の(A)の中段は、下側光照射装置61による光の所定の周期における照射タイミングb1、b2、b3、…、bnを示している。図4の(A)の下段はラインセンサ62による画像の所定の周期における取得タイミングA1、A2、A3、…、Anを示している。
【0039】
図4の(B)は、識別制御装置45により硬貨Cの透過画像と反射画像とを1対1で交互に切り替えて取得した場合におけるラインセンサ62で取得した硬貨Cの反射画像の一例を説明する図である。図4(B)の上段は、取得画像の元データを示している。図4(B)の下段は、元データを円形に補正する円形補正を行った図である。
【0040】
図4に示すように、ラインセンサ62により、上側光照射装置71から照射された光による硬貨Cの透過画像と、下側光照射装置61から照射された光による硬貨Cの反射画像とを1対1で交互に取得する場合、ラインセンサ62でのそれぞれの画像の取得数は1対1の関係となる。
【0041】
識別制御装置45は、所定のサンプリング周期ごとに硬貨Cの透過画像をラインセンサ62で取得する。つまり、識別制御装置45は、取得タイミングA1、A3、A5、…、Anのタイミングで、硬貨Cの透過画像をラインセンサ62で取得する。そして、識別制御装置45は、この透過画像から硬貨Cの外径を取得する。取得タイミングA1は照射タイミングa1と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA3は照射タイミングa2と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA5は照射タイミングa3と同じタイミング(時刻)であり、他も同様である。
【0042】
一方、識別制御装置45は、所定のサンプリング周期ごとに硬貨Cの反射画像をラインセンサ62で取得する。つまり、識別制御装置45は、取得タイミングA2、A4、A6、…、An-1(図4(A)のハッチング部分参照)のタイミングで、硬貨Cの反射画像をラインセンサ62で取得する。そして、識別制御装置45は、この反射画像から硬貨Cの表面に施された文字や図形などの模様を取得する。取得タイミングA2は照射タイミングb1と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA4は照射タイミングb2と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA6は照射タイミングb3と同じタイミング(時刻)であり、他も同様である。
【0043】
このように、識別制御装置45が、ラインセンサ62を用いて下側光照射装置61から照射された光による反射画像と上側光照射装置71から照射された光による透過画像とを1対1の関係で交互に取得する。
【0044】
ここで、硬貨識別装置26において、ラインセンサ62が、下側光照射装置61から照射された光による反射画像と上側光照射装置71から照射された光による透過画像とを1対1の関係で交互に取得した場合、硬貨Cの搬送速度によっては、下側光照射装置61から照射された光による反射画像の数が少なくなってしまう場合がある。その結果、硬貨識別装置26のラインセンサ62では、特に、硬貨Cの表面に施された文字や図形などの模様の取得精度が低くなってしまう。
【0045】
図4(B)の上段は、取得タイミングA2、A4、A6、…、An-1のタイミングで、硬貨Cの反射画像をラインセンサ62で取得し、これらの反射画像を時系列で並べた硬貨Cの配列反射画像を示している。この硬貨Cの配列反射画像においては、取得タイミングA2のタイミングでラインセンサ62が取得した硬貨Cの反射画像をA2で示す等、各反射画像に対してそれぞれの取得周期を符号として付している。この配列反射画像では、ラインセンサ62による反射画像の取得数が少ないため、本来の硬貨の円形にならずに、画像が潰れてしまう。潰れた分を引き伸ばして配列反射画像を円形とする円形補正を行った場合(図4(B)下段参照)、反射画像間の間隔があいてしまい硬貨Cの表面に施された文字や図形の判別が難しいことが分かる。
【0046】
なお、硬貨Cの外径については、透過画像のサンプリング数が少なくても、サンプリング間の補間が容易なため、ラインセンサ62は、少ないサンプリング数でも硬貨Cの外径を精度よく取得することができる。
【0047】
そのため、識別制御装置45は、硬貨Cの一方の面Ca側と硬貨Cの他方の面Cb側とでラインセンサ62による画像の取得数を異ならせる。識別制御装置45は、所定の期間において、硬貨Cの一方の面Ca側の反射画像を、この硬貨Cの他方の面Cb側の透過画像よりも多くラインセンサ62から取得する。識別制御装置45は、下側光照射装置61から光が照射された際の硬貨Cの一方の面Ca側の反射画像を、上側光照射装置71から光が照射された際のこの硬貨Cの他方の面Cb側の透過画像よりも多くラインセンサ62から取得する。
【0048】
(ラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率が1対2の場合)
ラインセンサ62による硬貨Cの透過画像及び反射画像の取得比率を1対2とした場合の一例を説明する。
【0049】
図5は、ラインセンサ62によって、上側光照射装置71から照射された光による硬貨Cの透過画像と、下側光照射装置61から照射された光による硬貨Cの反射画像とを1対2の関係で交互に取得する場合を説明する図である。
【0050】
図5の(A)の上段は、上側光照射装置71による光の所定の一定周期T1での照射タイミングa1、a2、a3、…、anを示している。図5の(A)の中段は、下側光照射装置61による光の照射タイミングb1、b2、b3、…、bnを示している。上側光照射装置71による光の隣り合う照射タイミングの間に、この間を3等分するように下側光照射装置61による光の照射タイミングが2回設定されている。下側光照射装置61による光の照射タイミングは短い周期T2と長い周期T3とがあり、これらが交互となっている。周期T2は、周期T1の1/3であり、周期T3は、周期T1の2/3である。下側光照射装置61による周期T3での光の隣り合う照射タイミングの間の中央のタイミングに、上側光照射装置71による光の照射タイミングが設定されている。上側光照射装置71および下側光照射装置61の全体での光の照射は、一定の周期T2で行われる。図5の(A)の下段はラインセンサ62による画像の所定の周期での取得タイミングA1、A2、A3、…、Anを示している。ラインセンサ62による画像取得の所定の周期は一定の周期T2である。よって、ラインセンサ62は、周期T1で透過画像を1枚ずつ取得することになり、透過画像を1枚取得した後、周期T2で反射画像を2枚取得することを、繰り返し行う。
【0051】
図5の(B)は、識別制御装置45により硬貨Cの透過画像と反射画像とを1対2で交互に切り替えて取得した場合の、ラインセンサ62で取得した硬貨Cの反射画像の一例を説明する図である。図5(B)の上段は、取得画像の元データを示している。図5(B)の下段は、元データを円形に補正する円形補正を行った図である。
【0052】
図5(A)に示すように、ラインセンサ62により、上側光照射装置71から照射された光による硬貨Cの透過画像と、下側光照射装置61から照射された光による硬貨Cの反射画像とを1対2で交互に取得する場合、それぞれの画像の取得数が1対2の関係となる。
【0053】
識別制御装置45は、所定のサンプリング周期ごとに硬貨Cの透過画像をラインセンサ62で取得する。つまり、識別制御装置45は、取得タイミングA1、A4、A7、…、Anのタイミングで、硬貨Cの透過画像をラインセンサ62で取得し、この透過画像から硬貨Cの外径を取得する。取得タイミングA1は照射タイミングa1と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA4は照射タイミングa2と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA7は照射タイミングa3と同じタイミング(時刻)であり、他も同様である。
【0054】
一方、識別制御装置45は、所定のサンプリング周期ごとに硬貨Cの反射画像をラインセンサ62で取得する。つまり、識別制御装置45は、取得タイミングA2、A3、A5、A6、A8、A9、…、An-2、An-1(図5(A)のハッチング部分参照)のタイミングで、硬貨Cの反射画像をラインセンサ62で取得し、この反射画像から硬貨Cの表面に施された文字や図形などの模様を取得する。取得タイミングA2は照射タイミングb1と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA3は照射タイミングb2と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA5は照射タイミングb3と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA6は照射タイミングb4と同じタイミング(時刻)であり、他も同様である。
【0055】
図5(B)は、取得タイミングA2、A3、A5、A6、A8、A9、…、An-2、An-1のタイミングで、硬貨Cの反射画像をラインセンサ62で取得し、これらの反射画像を時系列で並べた硬貨Cの配列反射画像を示している。この硬貨Cの配列反射画像においても、各反射画像に対してそれぞれの取得周期を符号として付している。
【0056】
この場合、識別制御装置45は、ラインセンサ62により、硬貨Cの透過画像1枚に対して、硬貨Cの反射画像を2枚取得するので、前述したように硬貨Cの透過画像と反射画像とを1対1の関係で交互に取得する場合に比べて、高い解像度で硬貨Cの文字又は図形などの模様を取得することができる。よって、硬貨識別装置26は、ラインセンサ62が取得した配列反射画像を円形とする円形補正を行った場合(図5(B)下段参照)に、反射画像間にあく間隔を狭くでき、硬貨Cの文字又は図形などの模様を精度よく判別することができる。
【0057】
(ラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率が1対3の場合)
さらに、ラインセンサ62による硬貨Cの透過画像及び反射画像の取得比率を1対3とした場合の一例を説明する。
【0058】
図6は、ラインセンサ62によって、上側光照射装置71から照射された光による硬貨Cの透過画像と、下側光照射装置61から照射された光による硬貨Cの反射画像とを1対3の関係で交互に取得する場合の一例を説明する図である。
【0059】
図6の(A)の上段は、上側光照射装置71による光の所定の一定周期T4での照射タイミングa1、a2、a3、…、anを示している。図6の(A)の中段は、下側光照射装置61による光の照射タイミングb1、b2、b3、…、bnを示している。上側光照射装置71による光の隣り合う照射タイミングの間に、この間を4等分するように下側光照射装置61による光の照射タイミングが3回設定されている。下側光照射装置61による光の照射タイミングは短い周期T5と長い周期T6とがあり、周期T5で3回の照射を行い、その最後の照射から周期T6で次の周期T5での3回の照射の最初の照射を行う。周期T5は、周期T4の1/4であり、周期T6は、周期T4の1/2である。下側光照射装置61による周期T6での光の隣り合う照射タイミングの間の中央のタイミングに、上側光照射装置71による光の照射タイミングが設定されている。上側光照射装置71および下側光照射装置61の全体での光の照射は、一定の周期T5で行われる。図6の(A)の下段はラインセンサ62による画像の所定の周期での取得タイミングA1、A2、A3、…、Anを示している。ラインセンサ62による画像取得の所定の周期は一定の周期T5である。よって、ラインセンサ62は、周期T4で透過画像を1枚ずつ取得することになり、透過画像を1枚取得した後、周期T5で反射画像を3枚取得することを、繰り返し行う。
【0060】
図6の(B)は、識別制御装置45により硬貨Cの透過画像と反射画像とを1対3で交互に切り替えて取得した場合のラインセンサ62で取得した硬貨Cの反射画像の一例を説明する図である。図6(B)の上段は、取得画像の元データを示している。図6(B)の下段は、元データを円形に補正する円形補正を行った図である。
【0061】
図6に示すように、ラインセンサ62により、上側光照射装置71から照射された光による硬貨Cの透過画像と、下側光照射装置61から照射された光による硬貨Cの反射画像とを1対3で交互に取得する場合、それぞれの画像の取得数が1対3の関係となる。
【0062】
識別制御装置45は、所定のサンプリング周期ごとに硬貨Cの透過画像をラインセンサ62で取得する。つまり、識別制御装置45は、取得タイミングA1、A5、A9、…、Anのタイミングで、硬貨Cの透過画像をラインセンサ62で取得し、この透過画像から硬貨Cの外径を取得する。取得タイミングA1は照射タイミングa1と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA5は照射タイミングa2と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA9は照射タイミングa3と同じタイミング(時刻)であり、他も同様である。
【0063】
一方、識別制御装置45は、所定のサンプリング周期ごとに硬貨Cの反射画像をラインセンサ62で取得する。つまり、識別制御装置45は、取得タイミングA2、A3、A4、A6、A7、A8、…、An-2、An-1(図6(A)のハッチング部分参照)のタイミングで、硬貨Cの反射画像をラインセンサ62で取得し、この反射画像から硬貨Cの表面に施された文字や図形などの模様を取得する。取得タイミングA2は照射タイミングb1と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA3は照射タイミングb2と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA4は照射タイミングb3と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA6は照射タイミングb4と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA7は照射タイミングb5と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA8は照射タイミングb6と同じタイミング(時刻)であり、他も同様である。
【0064】
図6(B)は、取得タイミングA2、A3、A4、A6、A7、A8、…、An-2、An-1のタイミングで、硬貨Cの反射画像をラインセンサ62で取得し、これらの反射画像を時系列で並べた硬貨Cの配列反射画像を示している。この硬貨Cの配列反射画像においても、各反射画像に対してそれぞれの取得周期を符号として付している。
【0065】
この場合、識別制御装置45は、ラインセンサ62により、硬貨Cの透過画像1枚に対して、硬貨Cの反射画像を3枚取得するので、前述したように硬貨Cの透過画像と反射画像とをラインセンサ62により1対2で交互に取得する場合に比べて、より高い解像度で硬貨Cの文字又は図形などの模様を取得することができる。よって、硬貨識別装置26は、ラインセンサ62が取得した硬貨Cの配列反射画像を円形とする円形補正を行った場合(図6(B)下段参照)に、反射画像間にあく間隔をより狭くでき、硬貨Cの文字又は図形などの模様をより精度よく判別することができる。
【0066】
(ラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率が1対4の場合)
最後に、ラインセンサ62による硬貨Cの透過画像及び反射画像の取得比率を1対4とした場合の一例を説明する。
【0067】
図7は、ラインセンサ62によって、上側光照射装置71から照射された光による硬貨Cの透過画像と、下側光照射装置61から照射された光による硬貨Cの反射画像とを1対4の関係で交互に取得する場合の一例を説明する図である。
【0068】
図7の(A)の上段は、上側光照射装置71による光の所定の一定周期T7での照射タイミングa1、a2、a3、…、anを示している。図7の(A)の中段は、下側光照射装置61による光の照射タイミングb1、b2、b3、…、bnを示している。上側光照射装置71による光の隣り合う照射タイミングの間に、この間を5等分するように下側光照射装置61による光の照射タイミングが4回設定されている。下側光照射装置61による光の照射タイミングは短い周期T8と長い周期T9とがあり、周期T8での4回の照射を行い、その最後の照射から周期T9で次の周期T8での4回の照射の最初の照射を行う。周期T8は、周期T7の1/5であり、周期T9は、周期T7の2/5である。下側光照射装置61による周期T9での光の隣り合う照射タイミングの間の中央のタイミングに、上側光照射装置71による光の照射タイミングが設定されている。上側光照射装置71および下側光照射装置61の全体での光の照射は、一定の周期T8で行われる。図7の(A)の下段はラインセンサ62による画像の所定の周期での取得タイミングA1、A2、A3、…、Anを示している。ラインセンサ62による画像取得の所定の周期は一定の周期T8である。よって、ラインセンサ62は、周期T7で透過画像を1枚ずつ取得することになり、透過画像を1枚取得した後、周期T8で反射画像を4枚取得することを、繰り返し行う。
【0069】
図7の(B)は、識別制御装置45により硬貨Cの透過画像と反射画像とを1対4で交互に切り替えて取得した場合のラインセンサ62で取得した硬貨Cの反射画像の一例を説明する図である。図7(B)の上段は、取得画像の元データを示している。図7(B)の下段は、元データを円形に補正する円形補正を行った図である。
【0070】
図7に示すように、ラインセンサ62により、上側光照射装置71から照射された光による硬貨Cの透過画像と、下側光照射装置61から照射された光による硬貨Cの反射画像とを1対4で交互に取得する場合、それぞれの画像の取得数が1対4の関係となる。
【0071】
識別制御装置45は、所定のサンプリング周期ごとに硬貨Cの透過画像をラインセンサ62で取得する。つまり、識別制御装置45は、取得タイミングA1、A6、A11、…、An-4のタイミングで、硬貨Cの透過画像をラインセンサ62で取得し、この透過画像から硬貨Cの外径を取得する。取得タイミングA1は照射タイミングa1と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA6は照射タイミングa2と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA11は照射タイミングa3と同じタイミング(時刻)であり、他も同様である。
【0072】
一方、識別制御装置45は、所定のサンプリング周期ごとに硬貨Cの反射画像をラインセンサ62で取得する。つまり、識別制御装置45は、取得タイミングA2、A3、A4、A5、A7、A8、A9、A10、…、An-3、An-2、An-1、An(図7(A)のハッチング部分参照)のタイミングで、硬貨Cの反射画像をラインセンサ62で取得し、この反射画像から硬貨Cの表面に施された文字や図形などの模様を取得する。取得タイミングA2は照射タイミングb1と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA3は照射タイミングb2と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA4は照射タイミングb3と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA5は照射タイミングb4と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA7は照射タイミングb5と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA8は照射タイミングb6と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA9は照射タイミングb7と同じタイミング(時刻)であり、取得タイミングA10は照射タイミングb8と同じタイミング(時刻)であり、他も同様である。
【0073】
図7(B)は、取得タイミングA2、A3、A4、A5、A7、A8、A9、A10、…、An-3、An-2、An-1、Anのタイミングで、硬貨Cの反射画像をラインセンサ62で取得し、これらの反射画像を時系列で並べた硬貨Cの配列反射画像を示している。この硬貨Cの配列反射画像においても、各反射画像に対してそれぞれの取得周期を符号として付している。
【0074】
この場合、識別制御装置45は、ラインセンサ62により、硬貨Cの透過画像1枚に対して、硬貨Cの反射画像を4枚取得するので、前述したように硬貨Cの透過画像と反射画像とをラインセンサ62で1対3の関係で交互に取得する場合に比べて、より高い解像度で硬貨Cの文字又は図形などの模様を取得することができる。よって、硬貨識別装置26は、ラインセンサ62が取得した硬貨Cの配列反射画像を円形とする円形補正を行った場合(図7(B)下段参照)に、反射画像間にあく間隔をより狭くでき、硬貨Cの文字又は図形などの模様をより精度よく判別することができる。
【0075】
図7に示すように、ラインセンサ62で取得した硬貨Cの反射画像の元データ(図7(B)上段参照)は、円形に近い楕円形状となっており、このような元データに対して反射画像全体を円形とする円形補正を行った場合(図7(B)下段参照)、補正後のデータは硬貨Cの表面に施された文字や図形などの模様がはっきり視認可能になっている。よって、硬貨識別装置26は、ラインセンサ62が取得した硬貨Cの文字又は図形などの模様をより精度よく判別することができる。
【0076】
なお、実施の形態では、上側光照射装置71から照射される光による透過画像のラインセンサ62による取得枚数が少なくなるが、すでに取得した透過画像による硬貨Cの外径と硬貨Cの搬送速度とに基づいて、サンプリングデータ間を補正することで硬貨Cの外径を正確に取得することができる。
【0077】
識別制御装置45は、ラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率を、1対2、1対3および1対4の中から、例えば搬送機構21による硬貨Cの搬送速度に基づいて決定する。すなわち、搬送機構21による硬貨Cの搬送速度が最も遅い第1速度の場合、ラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率を1対2とする。また、搬送機構21による硬貨Cの搬送速度が、第1速度よりも速い第2速度の場合、ラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率を1対3とする。また、搬送機構21による硬貨Cの搬送速度が、第2速度よりも速い第3速度の場合、ラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率を1対4とする。搬送機構21による硬貨Cの搬送速度は、例えば、操作者の操作で第1速度~第3速度の中から選択可能となっている。
【0078】
ここで、硬貨Cの通常の入金処理時に、硬貨識別装置26は、識別制御装置45が、ラインセンサ62で取得した硬貨Cの一方の面Ca側の反射画像および硬貨Cの他方の面Cb側の透過画像に基づいて識別適合又は識別不適合を判別する。その結果、識別不適合と判別したリジェクト硬貨を、リジェクト部29に搬送し、リジェクト部29で機外にリジェクトする。硬貨処理機1は、再判別する旨の操作入力がされることで、このようなリジェクト硬貨を再判別する再判別処理を行う。
【0079】
この場合、例えば、通常の入金処理時にラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率が1対2に設定されているとき、識別制御装置45は、再判別処理ではラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率を通常の入金処理よりも面Ca側が高くなる1対3とする。また、再判別処理でも硬貨識別装置26での判別によりリジェクト部29でリジェクトされた再リジェクト硬貨を、再々判別する旨の操作入力がされることで再々判別する再々判別処理を行うことがある。この場合、識別制御装置45は、再々判別処理ではラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率を再判別処理よりも面Ca側が高くなる1対4とする。勿論、通常の入金処理時のラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率が1対2に設定されているとき、識別制御装置45は、再判別処理では、ラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率を通常の入金処理よりも面Ca側が高くなる1対4としても良い。
【0080】
また、例えば、通常の入金処理でラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率が1対3に設定されているとき、識別制御装置45は、再判別処理ではラインセンサ62による面Cb側及び面Ca側の画像の取り込み比率を通常の入金処理よりも面Ca側が高くなる1対4とする。
【0081】
すなわち、識別制御装置45は、ラインセンサ62で取得した硬貨Cの一方の面Ca側の画像および硬貨Cの他方の面Cb側の画像に基づいて硬貨Cの識別適合又は識別不適合を判別した結果、識別不適合と判別した硬貨Cをリジェクト部29に搬送する。なお、当該リジェクトした硬貨Cの再判別時に、ラインセンサ62による硬貨Cの他方の面Cb側の画像の取得数に対する硬貨Cの一方の面Ca側の画像の取得数を、硬貨Cのリジェクト前の判別時における硬貨Cの一方の面Ca側の画像の取得数よりも多くしても良い。
【0082】
図8は、ラインセンサ62から取得する硬貨Cの透過画像から硬貨Cの外径を算出する処理を説明する図である。
【0083】
図8に示すように、識別制御装置45は所定のサンプリング周期で硬貨Cの透過画像をラインセンサ62から取得する。図8では、t1,t2,t3,t4,t5,t6,t7,t8の各タイミングで透過画像をラインセンサ62から取得している。図8に示すように、ラインセンサ62で取得する硬貨Cの透過画像の受光レベルは、硬貨Cの検出を開始するまでは遮光されないため最大に高く、硬貨Cの検出を開始すると硬貨Cの遮光量が徐々に大きくなって透過画像の受光レベルが徐々に下がり、その後、硬貨Cの遮光量が徐々に小さくなって透過画像の受光レベルが徐々に上がり、硬貨Cがラインセンサ62を通り過ぎると、遮光されないため最大に高くなる。
【0084】
識別制御装置45は、それに基づいて硬貨Cの外径を算出する。硬貨Cの外径は、基本的には、硬貨Cの通過時にラインセンサ62の最小となる受光レベルから割り出される硬貨Cの通路幅方向の長さが硬貨Cの外径(最大径)となる。すなわち、ラインセンサ62の受光レベルは、硬貨Cによって遮光された受光素子の数に応じて変わるため、得られた受光レベルから、硬貨Cによって遮光された受光素子の数を求めることができ、この数と受光素子の配置ピッチとから硬貨Cの通路幅方向の長さの最大値を算出する。
【0085】
ただし、サンプリングタイミングによっては硬貨Cの外径(最大径)が正確に分からない可能性がある。すなわち、サンプリングタイミングと、硬貨Cの最大径の部分がラインセンサ62に重なるタイミングとがずれると、硬貨Cの外径(最大径)が正確に分からない可能性がある。そのため、例えば、t2~t7の全部の出力値を滑らかに結んで延びる図8に示すt2~t7間の曲線を求め、この曲線の底点となる位置(t4,t5間)の出力値を算出して、この算出値から求められる長さを硬貨Cの外径とする。これにより、硬貨Cの外径(最大径)を正確に取得することができる。
【0086】
(ゴミや異物、ビット抜けEの検知方法)
硬貨識別装置26では、前述したラインセンサ62の検知範囲にゴミなどの異物や、受光素子が受光しなくなるビット抜け(ビット欠けとも言う)が存在する場合、当該異物などが存在する範囲では、ラインセンサ62が硬貨Cの透過画像又は反射画像を取得できない恐れがある。その結果、硬貨識別装置26では、ゴミなどの異物やビット抜けなどを正確に検知することが必要となる。
【0087】
次に、硬貨識別装置26におけるゴミなどの異物やビット抜けの検知方法を説明する。
図9は、ラインセンサ62の検知範囲に硬貨C、異物及びビット抜けがない場合のラインセンサ62の第1出力値の一例を説明する図である。図9の(A)は、硬貨Cの搬送方向から見たラインセンサ62と上側光照射装置71の周りの模式図である。図9の(B)は、ラインセンサ62の検知範囲に硬貨C、異物及びビット抜けがない場合のラインセンサ62の出力値の一例である。
【0088】
図10は、ラインセンサ62の検知範囲に硬貨Cがなく、異物D及びビット抜けEがある場合のラインセンサ62の出力値の一例を説明する図である。図10の(A)は、硬貨Cの搬送方向から見たラインセンサ62と上側光照射装置71の周りの模式図である。図10の(B)は、ラインセンサ62の検知範囲に硬貨Cがなく、異物D及びビット抜けEがある場合のラインセンサ62の出力値の一例である。
【0089】
図11は、ラインセンサ62の検知範囲に硬貨Cと異物Dがある場合のラインセンサ62の出力値の一例を説明する図である。図11の(A)は、硬貨Cの搬送方向から見たラインセンサ62と上側光照射装置71の周りの模式図である。図11の(B)は、ラインセンサ62の検知範囲に硬貨Cと異物Dがある場合のラインセンサ62の出力値の一例である。
【0090】
図12は、ラインセンサ62に複数のビット抜けEがある場合のラインセンサ62の出力値の一例を説明する図である。図12の(A)は、硬貨Cの搬送方向から見たラインセンサ62と上側光照射装置71の周りの模式図である。図12の(B)は、ラインセンサ62に複数のビット抜けEがある場合のラインセンサ62の出力値の一例である。
【0091】
まず、図9(A)に示すように、硬貨識別装置26では、硬貨Cの搬送方向に沿って、当該硬貨Cの径方向(通路構成部56の通路幅方向)の位置を規制する一対のガイド55が設けられている。上側光照射装置71から照射された光は、一対のガイド55で遮光される。よって、図9の(B)に示すように、上側光照射装置71から照射された光のラインセンサ62での受光レベルは、一対のガイド55の陰となる部分が低くなり、硬貨Cが搬送される通路構成部56の部分では高くなっている。工場出荷時には、識別制御装置45は、ラインセンサ62の検知範囲にゴミなどの異物Dがなく、ラインセンサ62のビット抜けEもないため、一対のガイド55の陰となる部分で受光レベルが低く、通路構成部56に対応する部分で受光レベルが高い出力値がラインセンサ62から取得できる。
【0092】
識別制御装置45は、このラインセンサ62の工場出荷時の出力値を、当該ラインセンサ62に異常がない場合の正常出力値として下側ユニット51の記憶部65に記憶している。
【0093】
次に、図10に示すように、ラインセンサ62の検知範囲における通路構成部56にゴミなどの異物Dがある場合、異物Dにより上側光照射装置71から照射された光が遮光されるので、このゴミなどの異物Dの陰となる部分でラインセンサ62での受光レベルが正常出力値に比して低下する。図10に示す実施の形態では、範囲L1に亘って、ラインセンサ62での受光レベルH1が、正常出力値H2に比して低下している。また、ラインセンサ62にビット抜けE(ビット欠け)などがある場合、ビット抜けEの範囲L2ではラインセンサ62の出力値が0「ゼロ」となる。
【0094】
よって、図11に示すように、通路構成部56にゴミなどの異物Dが存在する場合、ラインセンサ62では、ゴミなどの異物Dの陰となる部分と硬貨Cの陰となる部分とで受光レベルH1が正常出力値H2に比して下がる。その結果、ラインセンサ62では、異物Dの位置と硬貨Cの位置とが搬送方向と直交する通路幅方向で重なっている場合に、異物Dの範囲L1の分だけ硬貨Cの外径φ1を正確な硬貨径φ0に比して長く誤検知してしまう恐れがある。
【0095】
よって、識別制御装置45は、下側ユニット51の記憶部65に記憶された図9に示す工場出荷時のラインセンサ62の受光レベルである第1出力値(正常出力値)と、図10に示す現在の硬貨Cが無い状態でのラインセンサ62の受光レベルである第2出力値とを比較し、第2出力値に、第1出力値よりも部分的に受光レベルが低くなるような部分がある場合、ゴミなどの異物Dが付着していると判断する。具体的には、ラインセンサ62において、受光レベルが所定の第1受光閾値以上の部分と、この第1受光閾値未満であって、第1受光閾値よりも低い第2受光閾値以上の部分とが、両方存在する場合、第1受光閾値未満且つ第2受光閾値以上の部分にゴミなどの異物Dが付着していると判断する。
【0096】
なお、図10に示すように、ラインセンサ62の検知範囲にゴミなどの異物Dがある場合、当該異物Dが存在する領域L1においてもラインセンサ62には僅かに光が入り受光レベルは0「ゼロ」とはならないのに対し、ラインセンサ62のビット抜けEの場合は、ビット抜けEの領域L2の受光レベルは完全に0「ゼロ」となる。そのため、識別制御装置45は、この受光レベルの低下の程度を検知することで、受光レベルの低下がゴミなどの異物Dによるものか、ビット抜けEによるものなのかを判断することができる。つまり、識別制御装置45は、ラインセンサ62の受光レベルが、第1受光閾値未満であって第2受光閾値以上であれば、受光レベルの低下がゴミなどの異物Dによるものであると判断する一方、この第2受光閾値未満であれば、ビット抜けEによるものであると判断する。
【0097】
また、ゴミなどの異物Dがある場合、ラインセンサ62は、ある程度の長さの領域で受光レベルが低下するのに対して、ビット抜けEの場合、1ビット又は2ビットなどの限られた狭い範囲で受光レベルが低下する。よって、識別制御装置45は、この受光レベルの低下した領域の長さが所定の長さ閾値未満であるか否かに基づいて、受光レベルの低下が異物Dなどの付着によるものなのかビット抜けEによるものなのかを判断することができる。つまり、識別制御装置45は、ラインセンサ62の受光レベルが第1受光閾値未満の範囲の長さが、長さ閾値以上である場合、受光レベルの低下がゴミなどの異物Dによるものであると判断する一方、この長さ閾値未満である場合、ビット抜けEによるものであると判断する。
【0098】
このように、識別制御装置45は、ラインセンサ62の検知範囲に異物Dが存在しない状態及びビット抜けEがない状態で取得したラインセンサ62の第1出力値と、ラインセンサ62の現在の出力値である第2出力値との比較結果に基づいて、ラインセンサ62における異物Dの有無及びビット抜けEの有無を判定する。また、識別制御装置45は、ラインセンサ62の第1出力値を、ラインセンサ62が設けられるユニット本体27の記憶部65に記憶する。
【0099】
前述したように、硬貨識別装置26は、ゴミなどの異物Dの存在やビット抜けEなどがあると判断した場合、ゴミの除去の報知やラインセンサ62の交換を報知することになる。しかしながら、硬貨識別装置26は、交換などで硬貨識別処理を停止させないように、可能な限り運転を継続させるようになっている。具体的には、硬貨識別装置26は、この異物Dやビット抜けEがある部分を、前述したように硬貨Cが無いと判断される受光レベルまで上昇させる補正を行う。又は、この異物Dやビット抜けEがある部分を硬貨Cの識別データから除外する処理を行う。
【0100】
さらに、図12に示すように、硬貨Cや異物Dがある場合のラインセンサ62の受光レベルよりも低い受光レベルとなる領域が複数ある場合、ラインセンサ62はビット抜けEが複数存在し、ラインセンサ62の交換が必要であると判断し、その旨の警告を行う。また、この際、ラインセンサ62は、当該領域を交換されるまで継続使用できるように、ビット抜けEの範囲の受光レベルを、前述したように硬貨Cが無いと判断される受光レベルまで上昇させる補正を行ってもよい。又は、これらのビット抜けEがある部分を硬貨Cの識別データから除外する処理を行ってもよい。
【0101】
(ラインセンサ62の出力値の補正方法)
次に、前述したように、ゴミなどの異物Dの付着や、ビット抜けEにより受光レベルが低下した場合のラインセンサ62の出力値の補正方法を説明する。
【0102】
図13は、異物Dの付着やビット抜けEなどがある場合における識別制御装置45によるラインセンサ62の出力値の補正方法を説明するフローチャートである。
【0103】
前述したように、硬貨識別装置26の識別制御装置45は、記憶部65に記憶されている工場出荷時のラインセンサ62の正常出力値を記憶部65から呼び出して取得する(ステップS101)と共に、硬貨Cがない場合におけるラインセンサ62の現在出力値を呼び出して取得する(ステップS102)。
【0104】
そして、識別制御装置45は、ラインセンサ62の現在出力値と正常出力値とを比較し(ステップS103)、ラインセンサ62の現在出力値と対応する正常出力値とが一致しない領域があると判断した場合(ステップS103:NO)、ステップS104に進む。他方、ラインセンサ62の現在出力値と正常出力値とが全ての領域で一致する場合(ステップS103:YES)、補正処理の必要なしと判断して本補正処理を終了する。
【0105】
識別制御装置45は、ラインセンサ62の現在出力値と正常出力値とが一致しない領域が存在する場合(ステップS103:NO)、ラインセンサ62の検知範囲にゴミなどの異物D及びビット抜けEの少なくともいずれか一方からなる異常領域があると判断する(ステップS104)。
【0106】
次に、識別制御装置45は、当該異常領域が硬貨Cの識別に影響を及ぼすか否かを判断する(ステップS105)。例えば、当該異常領域が硬貨Cの通路幅方向の少なくともいずれか一方の端部にかかる位置にある場合、当該異常領域が硬貨Cの識別に影響を及ぼすと判断する。他方、当該異常領域が硬貨Cの通路幅方向のいずれの端部にもかかる位置にない場合、当該異常領域が硬貨Cの識別に影響を及ぼさないと判断する。
【0107】
ここで、当該異常領域が、異物Dが存在する異物存在領域であって硬貨Cの通路幅方向の端部にかかる位置にある場合、この異常領域はラインセンサ62の硬貨Cにより遮光される受光範囲と連続状をなす状態が発生する。この状態が発生した場合、当該異常領域が硬貨Cの識別に影響を及ぼすと判断する。また、当該異常領域がビット抜けEの異常ビットであって硬貨Cの通路幅方向の端部にかかる位置にある場合、この異常ビットもラインセンサ62の硬貨Cにより遮光される受光範囲と連続状をなす状態が発生する。この状態が発生した場合も、当該異常領域が硬貨Cの識別に影響を及ぼすと判断する。
【0108】
例えば、異物存在領域の全体及び異常ビットの全部がラインセンサ62の硬貨Cにより遮光された受光範囲から離れている場合、異物存在領域及び異常ビットが硬貨Cの識別に影響を及ぼさないと判断する。また、例えば、異物存在領域の全体及び異常ビットの全部がラインセンサ62の硬貨Cにより遮光された受光範囲内にある場合、異物存在領域及び異常ビットが硬貨Cの識別に影響を及ぼさないと判断する。また、例えば、異物存在領域の全体がラインセンサ62の硬貨Cにより遮光された受光範囲から離れており且つ異常ビットの全部がラインセンサ62の硬貨Cにより遮光された受光範囲内にある場合、異物存在領域及び異常ビットが硬貨Cの識別に影響を及ぼさないと判断する。また、例えば、異物存在領域の全体がラインセンサ62の硬貨Cにより遮光された受光範囲から離れており且つ異常ビットの全部がラインセンサ62の硬貨Cにより遮光された受光範囲内にある場合、異物存在領域及び異常ビットが硬貨Cの識別に影響を及ぼさないと判断する。
【0109】
識別制御装置45は、例えば、異物存在領域及び異常ビットの少なくともいずれか一方からなる異常領域の全部がラインセンサ62の硬貨Cにより遮光される受光範囲内にあって、異常領域が硬貨Cの識別に影響を及ぼさないと判断した場合(ステップS105:NO)、当該異常領域を硬貨Cの識別に用いるデータから除外する補正を行う(ステップS106)。また、識別制御装置45は、異常領域の全部がラインセンサ62の硬貨Cにより遮光される受光範囲外にあって、異常領域が硬貨Cの識別に影響を及ぼさないと判断した場合(ステップS105:NO)、異常領域におけるラインセンサ62の出力値を、異常領域が無いと判断される出力値まで上昇させる補正を行う(ステップS106)。
【0110】
上記のようにすると、硬貨識別装置26は、ゴミなどの異物D又はビット抜けEがあると判断した場合でも、即座にエラーとして硬貨識別装置26を停止するのではなく、硬貨識別装置26の動作を継続させることができる。
【0111】
最後に、識別制御装置45は、硬貨Cの識別に用いるデータとして異物D等が存在する領域を排除する等の補正を行いつつ、硬貨Cの外径を算出(ステップS107)して処理を終了する。この硬貨Cの外径の算出処理は後述する。
【0112】
一方、ステップS105において、識別制御装置45は、異物Dが存在する領域又はビット抜けEのある領域が、硬貨Cの識別に影響があると判断した場合(ステップS105:YES)、補正を行わず、エラー報知した(ステップS108)のち本補正処理を終了する。
【0113】
以上により、識別制御装置45は、異物Dが存在する又はビット抜けEがあると判定した場合、異物Dが存在する又はビット抜けEがあると判断した領域を、ラインセンサ62による硬貨Cの識別判断に用いられるデータから除外、又は、異物Dが存在する又はビット抜けEがあると判断した領域以外の領域におけるラインセンサ62の出力値に補正する。
【0114】
次に、ラインセンサ62の検知範囲から異物D等が存在する異常領域を識別判断のデータから除外等した場合の硬貨Cの外径の推定処理を説明する。
【0115】
(硬貨Cの外径算出処理)
ステップS107における硬貨Cの外径の算出処理について説明する。
ここでは、硬貨Cの外径をラインセンサ62の硬貨Cで遮光された受光素子の数で算出する場合について説明する。
【0116】
ラインセンサ62に、ゴミなどの異物Dが存在している領域又はビット抜けEなどの異常領域がある場合、識別制御装置45は、例えば、異常領域の全部がラインセンサ62の硬貨Cにより遮光される受光範囲内にあれば、当該異常領域を、硬貨Cを識別するデータから除外する補正処理を行う(前述したステップS106)。この場合、ラインセンサ62の残りの受光素子の中で硬貨Cにより遮光された受光素子の数と、除外された領域にある受光素子の数との合計に対応する値となるラインセンサ62の受光レベルと、受光素子の配置ピッチとから硬貨Cの外径を算出する。
【0117】
すなわち、異常領域の全部がラインセンサ62の硬貨Cにより遮光される受光範囲内にあれば、異常領域に対応する受光素子の数は、硬貨Cにより遮光される範囲にある受光素子の数の中に含まれることになる。このため、図14に示すように、ラインセンサ62の現在出力値(破線)は、硬貨Cを検知しない状態では、異常領域の分だけ正常出力値(実線)よりも低くなるものの、硬貨Cの最大外径部分を検出する受光レベルの最小位置では、異常領域がない状態での出力値(実線)と同等になる。これを利用して、識別制御装置45は、異常領域のデータを、硬貨Cを識別するデータから除外して、異常領域にある受光素子を一律硬貨Cにより遮光されたものとしてカウントする。
【0118】
また識別制御装置45は、例えば、異常領域全部がラインセンサ62の硬貨Cにより遮光される受光範囲から離れていれば、当該ゴミなどの異物D又はビット抜けEがあると判断した異常領域におけるラインセンサ62の出力値を、ゴミなどの異物D又はビット抜けEが無いと判断される出力値まで上昇させる補正を行う。この場合、ラインセンサ62の全受光素子の中で硬貨Cにより遮光された受光素子の数に対応する値となるラインセンサ62の受光レベルと、受光素子の配置ピッチとから硬貨Cの外径を算出する。
【0119】
すなわち、異常領域全部がラインセンサ62の硬貨Cにより遮光される受光範囲から離れていれば、異常領域に対応する受光素子の数は、硬貨Cにより遮光される受光素子の数の中に含まれないことになる。このため、ゴミなどの異物D又はビット抜けEが無いと判断される出力値まで上昇させる補正を行うことで、ラインセンサ62の現在出力値は、硬貨Cを検知しない状態では、正常出力値となり、硬貨Cの最大外径部分を検出する位置では、実際に硬貨Cで遮光された受光素子のみでラインセンサ62の受光レベルを下げることになる。
【0120】
なお、前述した識別制御装置45のラインセンサ62による透過画像と反射画像との取得比率は、前述した場合に限定されず、1対5等、1対4よりも、透過画像に対して反射画像がより多くなるようにしても良い。また、画像領域の特徴ある部分のみ比率を変更してもよい。例えば、模様が描かれている可能性のある硬貨Cの中央部の領域について、ラインセンサ62による反射画像の取得数を透過画像の取得数よりも多くしてもよい。
【0121】
以上の通り、実施の形態では、
(1)硬貨識別装置26は、搬送される硬貨Cの少なくとも一方の面Ca側と他方の面Cb側とから当該硬貨Cに光を照射する光照射装置81と、光照射装置81から硬貨Cの一方の面Ca側に光を照射した状態で当該硬貨Cの一方の面Ca側の画像を取得すると共に、光照射装置81から硬貨Cの他方の面Cb側に光を照射した状態で当該硬貨Cの他方の面Cb側の画像を取得するラインセンサ62と、硬貨Cの一方の面Ca側と硬貨Cの他方の面Cb側とで画像の取得数を異ならせる識別制御装置45(制御装置)と、を有する。
【0122】
このように硬貨識別装置26では、硬貨Cの一方の面Ca側と他方の面Cb側とでラインセンサ62による画像の取得数を異ならせている。よって、硬貨識別装置26では、硬貨Cの一方の面Ca側と他方の面Cb側のうちの何れかの面側の画像を他方の面側の画像よりも多く取得することができ、画像を多く取得した硬貨Cの面側に関する情報を精度よく取得することができる。したがって、硬貨Cを精度よく判別することが可能となる。
【0123】
(2)硬貨Cの一方の面Ca側の画像は、当該硬貨Cの表面に施された文字又は図形の取得に用いられる画像であり、硬貨Cの他方の面Cb側の画像は、当該硬貨Cの外径の取得に用いられる画像であり、硬貨識別装置26は、所定の期間において、硬貨Cの一方の面Ca側の画像を、硬貨Cの他方の面Cb側の画像よりも多くラインセンサ62から取得する。
【0124】
このように構成すると、硬貨識別装置26は、文字や図形などの模様が施された硬貨Cの一方の面Ca側の画像を、他方の面Cb側の画像よりも多くラインセンサ62から取得することができる。このため、硬貨Cの一方の面Ca側に施された文字や図形などの模様を精度よく判別することができる。
【0125】
(3)光照射装置81は、搬送機構21により搬送される硬貨Cの少なくとも一方の面Ca側に光を照射する下側光照射装置61(第1光照射装置)と、搬送機構21により搬送される硬貨Cの少なくとも他方の面Cb側に光を照射する上側光照射装置71(第2光照射装置)と、を有する。識別制御装置45は、下側光照射装置61から光が照射された際の硬貨Cの一方の面Ca側の反射画像を、上側光照射装置71から光が照射された際の硬貨Cの他方の面Cb側の透過画像よりも多くラインセンサ62から取得する。
【0126】
このように構成すると、識別制御装置45は、硬貨Cの表面に施された文字又は図形の判別に用いられる反射画像を、硬貨Cの外径を判別するために用いられる透過画像よりも数多くラインセンサ62から取得することができる。よって、識別制御装置45は、硬貨Cの表面に施された文字又は図形の画像を適切に取得でき、取得した文字や図形に基づいて、硬貨Cの判別を精度よく行うことができる。
【0127】
(4)識別制御装置45は、硬貨Cの他方の面Cb側の画像の取得数に対する硬貨Cの一方の面Ca側の画像の取得数を、硬貨Cの搬送速度に基づいて決定する。
【0128】
識別制御装置45が、硬貨Cの一方の面Ca側の画像を適切に判別するためには、硬貨Cの搬送速度に応じたサンプリング周期で硬貨Cの一方の面Ca側の画像を取得する必要がある。このように構成すると、硬貨Cの一方の面Ca側の画像を当該硬貨Cの搬送速度に応じたサンプリング周期(取得数)で取得することができ、硬貨Cの一方の面Ca側の画像を適切に判別することができる。
【0129】
(5)識別制御装置45は、ラインセンサ62で取得した硬貨Cの一方の面Ca側の画像および硬貨Cの他方の面Cb側の画像に基づいて硬貨Cの識別適合又は識別不適合を判別した結果、識別不適合と判別した硬貨Cをリジェクト部29にリジェクトし、当該リジェクトした硬貨Cの再判別時には、硬貨Cの他方の面Cb側の画像の取得数に対する硬貨Cの一方の面Ca側の画像の取得数を、硬貨Cのリジェクト前の判別時における当該硬貨Cの一方の面Ca側の画像の取得数よりも多くする。
【0130】
このように構成すると、識別制御装置45は、リジェクト後の硬貨Cのラインセンサ62による一方の面Ca側の画像の取得数を、リジェクト前の当該硬貨Cのラインセンサ62による一方の面Ca側の画像の取得数よりも多く取得する。よって、リジェクト前よりもリジェクト後の方が硬貨Cの一方の面Ca側の画像をラインセンサ62により多く取得できる結果、当該一方の面Ca側の画像をより精度よく判別することができる。
【0131】
(6)下側光照射装置61が設けられる下側ユニット51と、上側光照射装置71が設けられる上側ユニット52と、下側光照射装置61及び上側光照射装置71から照射される光の光量を含むパラメータを記憶する記憶部65と、を有する。記憶部65は、下側ユニット51及び上側ユニット52の何れかに設けられる。
【0132】
この種の硬貨識別装置26は、硬貨Cを識別するためのユニット本体27(下側ユニット51及び上側ユニット52)と、ユニット本体27の制御を行う識別制御装置45とが組み合わされて構成されている。従来、光照射装置81から照射される光の光量や磁気センサ63,72の調整値などのパラメータは、ユニット本体27とは異なる制御装置の記憶部に記憶されていた。そのため、従来の硬貨識別装置では、照射される光の光量などの各種パラメータ(調整値)が、制御装置に設けられているため、ユニット本体と制御装置との組み合わせが変ると、再度、照射される光の光量などのパラメータを設定しなければならないという問題があった。
【0133】
前述のように構成すると、記憶部65は、ユニット本体27の下側ユニット51及び上側ユニット52のいずれか一方に設けられているので、ユニット本体27を交換した場合、工場出荷時にユニット本体27のみ調整し、その調整したパラメータを当該ユニット本体27の記憶部65に記憶させておくことができる。また、識別制御装置45を交換した場合、ユニット本体27側の調整値はユニット本体27側に記憶されているのでユニット本体27の調整は必要ない。よって、ユニット本体27の調整値を当該ユニット本体27側に記憶することで、ユニット本体27又は識別制御装置45の何れかを交換した場合でも、ユニット本体27の調整を設置場所で再度行う必要がなく、再調整の手間を省くことができる。
【符号の説明】
【0134】
21:搬送機構
26:硬貨識別装置
29:リジェクト部
45:識別制御装置(制御装置)
51:下側ユニット
52:上側ユニット
61:下側光照射装置(第1光照射装置)
62:ラインセンサ
65:記憶部
71:上側光照射装置(第2光照射装置)
81:光照射装置
C:硬貨
Ca:一方の面
Cb:他方の面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14