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特許7488535中空柱状物の補強ユニットと中空柱状物の補強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】中空柱状物の補強ユニットと中空柱状物の補強方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20240515BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20240515BHJP
   E04H 12/08 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
E04G23/02 F
E04H12/00 A
E04H12/08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022093152
(22)【出願日】2022-06-08
(65)【公開番号】P2023180064
(43)【公開日】2023-12-20
【審査請求日】2024-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522228632
【氏名又は名称】新潟メスキュード株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505049663
【氏名又は名称】辻 和勝
(73)【特許権者】
【識別番号】506225765
【氏名又は名称】菱田 親
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】辻 和勝
(72)【発明者】
【氏名】菱田 親
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-70970(JP,A)
【文献】特開2021-130928(JP,A)
【文献】特開2016-37807(JP,A)
【文献】特開2013-253467(JP,A)
【文献】特開2014-51842(JP,A)
【文献】特開2014-101724(JP,A)
【文献】特開2014-77273(JP,A)
【文献】米国特許第6167673(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04H 12/00-12/34
E01F 9/60
F21S 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空柱状物の内側から前記中空柱状物を補強する補強ユニットであって、
前記中空柱状物の前記内側に配置される筒状の補強部材と、
前記補強部材の内部空間に配置される複数の袋部材と、
前記補強部材の前記内部空間を、複数の前記袋部材それぞれが配置される複数の個別空間に分割する仕切部材と、
を有してなり、
前記仕切部材は、前記補強部材の軸方向に延在し、
前記補強部材は、複数の前記袋部材それぞれが膨張することで、前記中空柱状物の内壁に密着するように変形可能で、
膨張した複数の前記袋部材それぞれは、前記軸方向に延在する、
ことを特徴とする中空柱状物の補強ユニット。
【請求項2】
前記仕切部材は、前記補強部材と一体である、
請求項1記載の中空柱状物の補強ユニット。
【請求項3】
前記補強部材として機能する第1接合シートと、
前記仕切部材として機能する第2接合シートと、
が縫合されて、前記仕切部材は前記補強部材と一体となる、
請求項2記載の中空柱状物の補強ユニット。
【請求項4】
複数の前記個別空間それぞれは、前記第1接合シートの一部と、前記第2接合シートの一部と、で形成される、
請求項3記載の中空柱状物の補強ユニット。
【請求項5】
膨張した前記袋部材は、接着剤を含浸する前記第1接合シートを、前記中空柱状物の前記内壁に押圧する、
請求項4記載の中空柱状物の補強ユニット。
【請求項6】
前記補強部材の前記内部空間に配置される1または複数の芯材
を有してなり、
前記補強部材の前記内部空間は、
複数の前記個別空間それぞれに隣接する中央空間、
を含み、
前記芯材は前記中央空間に配置されるとともに、前記軸方向に延在する、
請求項1記載の中空柱状物の補強ユニット。
【請求項7】
前記芯材の数は、複数であり、
複数の前記芯材は、前記中央空間内において、前記軸方向に配列され、
複数の前記芯材のうち、隣接する2つの前記芯材は、連結具で連結される、
請求項6記載の中空柱状物の補強ユニット。
【請求項8】
前記補強部材は、前記連結具が配置された部分で屈折可能である、
請求項7記載の中空柱状物の補強ユニット。
【請求項9】
前記袋部材は、前記袋部材の内側に気体が充填されて膨張する、
請求項1記載の中空柱状物の補強ユニット。
【請求項10】
前記袋部材は、前記袋部材の内側に流動性固化材が充填されて膨張する、
請求項1記載の中空柱状物の補強ユニット。
【請求項11】
中空柱状物の内側から前記中空柱状物を補強する補強ユニットを用いて、前記中空柱状物を補強する中空柱状物の補強方法であって、
前記補強ユニットは、
前記中空柱状物の前記内側に配置される筒状の補強部材と、
前記補強部材の内部空間に配置される複数の袋部材と、
前記補強部材の前記内部空間を、複数の前記袋部材それぞれが配置される複数の個別空間に分割する仕切部材と、
を備え、
前記仕切部材が前記補強部材の軸方向に延在するように、前記補強ユニットを前記中空柱状物の前記内側に挿入する挿入工程と、
複数の前記袋部材それぞれを膨張させる膨張工程と、
複数の前記袋部材それぞれが膨張することで、前記補強部材を前記中空柱状物の内壁に密着させるように変形させる密着工程と、
を有してなり、
膨張した複数の前記袋部材のそれぞれは、前記軸方向に延在する、
ことを特徴とする中空柱状物の補強方法。
【請求項12】
前記補強ユニットは、
複数の芯材、
を備え、
前記補強部材の前記内部空間は、
複数の前記個別空間それぞれに隣接する中央空間、
を含み、
複数の前記芯材は、前記中央空間に配置されるとともに、前記軸方向に配列され、
複数の前記芯材のうち、隣接する2つの前記芯材は、連結具で連結され、
前記補強部材は、前記連結具が配置された部分で屈曲可能であり、
前記挿入工程において、前記補強ユニットは、前記連結具が配置された部分で屈曲した状態で、前記中空柱状物の前記内側に挿入される、
請求項11記載の中空柱状物の補強方法。
【請求項13】
前記膨張工程において、前記袋部材は、前記袋部材の内側に気体が充填されて膨張する、
請求項11記載の中空柱状物の補強方法。
【請求項14】
前記膨張工程において、前記袋部材は、前記袋部材の内側に流動性固化材が充填されて膨張する、
請求項11記載の中空柱状物の補強方法。
【請求項15】
前記挿入工程の前に、前記補強部材に接着剤を含浸させる含浸工程、
を有してなる、
請求項11記載の中空柱状物の補強方法。
【請求項16】
前記補強ユニットは、
前記補強部材を包装する包装部材、
を備え、
前記含浸工程において、前記包装部材に包装された状態の前記補強部材に前記接着剤を含浸させ、
前記膨張工程の前に、前記中空柱状物の前記内側に挿入された前記包装部材を、前記中空柱状物の前記内側から前記中空柱状物の外側に取り出す取出工程、
を有してなる、
請求項15記載の中空柱状物の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空柱状物の補強ユニットと中空柱状物の補強方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
既設の中空柱状物(例えば、照明用柱、街灯、電柱、信号柱、標識柱、カーブミラーなど)は、屋外に設置されるため、日光や風雨などに曝されて、時間の経過とともに劣化する。劣化した中空柱状物は、折れ曲がったり、倒壊したりして、物理的被害や人的被害などの2次被害を引き起こすことがある。そこで、既設の中空柱状物の定期的な交換や補修、補強が必要となる。
【0003】
中空柱状物は、その一部が地中に埋設されて設置される。既設の中空柱状物の設置数は、多い。そのため、すべての既設の中空柱状物の交換は、容易ではない。そこで、既設の中空柱状物を補修して延命することが求められる。
【0004】
特許文献1に開示された中空柱状物の補強方法は、中空柱状物の内側に配置された補強ユニットで補強する。補強ユニットは、筒状の補強シート(高強度繊維シート)の内側に風船体を備える。同補強方法において、先ず、接着剤が補強シートに含浸される。次いで、補強ユニットは、中空柱状物の内側の目的とする補強位置に配置される。次いで、補強シートの内側の風船体に、空気が圧送される。補強シートは、空気で膨張した風船体により、中空柱状物の内壁に押し付けられる。押し付けられた補強シートは、補強シートに含浸された接着剤により、中空柱状物の内壁に接着する。次いで、風船体の内側に流動性固化材(モルタル)が、充填される。中空柱状物は、中空柱状物の内側から、接着された補強シートと、固化した流動性固化材と、で補強される。
【0005】
特許文献2に開示された中空柱状物の補強方法は、複数の棒状部材で中空柱状物の内側を補強する。同補強方法において、先ず、特殊な治具により、複数の棒状部材が、中空柱状物の内側で均等に配置される。次いで、流動性固化材が、棒状部材が配置された中空柱状物の内側に打設される。流動性固化材が固化することにより、中空柱状物が補強される。ただし、同補強方法は、棒状部材の配置などの作業が煩雑になる。また、同補強方法は、中空柱状物の内側の底面から補強しなければならないため、目的に応じた補強位置(例えば、中空柱状物の中間位置など)のみを補強することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-125738号公報
【文献】特開2010-090563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規な構造の中空柱状物の補強ユニットと、この補強ユニットによる中空柱状物の補強方法と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る中空柱状物の補強ユニットは、中空柱状物の内側から中空柱状物を補強する補強ユニットであって、中空柱状物の内側に配置される筒状の補強部材と、補強部材の内部空間に配置される複数の袋部材と、補強部材の内部空間を、複数の袋部材それぞれが配置される複数の個別空間に分割する仕切部材と、を有してなり、仕切部材は、補強部材の軸方向に延在し、補強部材は、複数の袋部材それぞれが膨張することで、中空柱状物の内壁に密着するように変形可能で、膨張した複数の袋部材それぞれは、補強部材の軸方向に延在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規な構造の中空柱状物の補強ユニットと、この補強ユニットによる中空柱状物の補強方法と、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る中空柱状物の補強ユニットの実施の形態を示す模式斜視図である。
図2図1の補強ユニットの模式断面図である。
図3図1の補強ユニットのA-A線矢視断面図である。
図4】上記補強ユニットを構成する2枚の接合シートの模式図である。
図5】上記補強ユニットを構成するユニット本体の模式斜視図である。
図6】上記ユニット本体に挿入される芯材の模式斜視図である。
図7】上記ユニット本体に芯材が配置される様子を示すユニット本体の模式斜視図である。
図8】上記ユニット本体に袋部材が配置される様子を示すユニット本体の模式斜視図である。
図9図8のユニット本体に芯材と袋部材とが配置された状態のB-B線矢視断面図である。
図10】上記中空柱状物に作業孔が形成された後の状態を示す中空柱状物の模式断面図である。
図11】上記中空柱状物の内側に上記ユニット本体が配置された状態を示す中空柱状物の模式断面図である。
図12】上記袋部材に気体が充填されて上記補強部材が上記中空柱状物の内壁に押圧された状態を示す中空柱状物の模式断面図である。
図13図12の袋部材に流動性固化材が充填された状態を示す中空柱状物の模式断面図である。
図14図13の中空柱状物のG-G線矢視断面図である。
図15】本発明に係る中空柱状物の補強ユニットの別の実施の形態を示す補強された中空柱状物の水平断面図である。
図16】本発明に係る中空柱状物の補強ユニットの変形例を示す補強ユニットの水平断面図である。
図17】本発明に係る中空柱状物の補強ユニットの別の変形例を示す補強ユニットの水平断面図である。
図18】本発明に係る中空柱状物の補強ユニットのさらに別の変形例を示す補強ユニットの水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る中空柱状物の補強ユニット(以下「本ユニット」という。)と中空柱状物の補強方法(以下「本方法」という。)との実施の形態について説明する。各図において、同一の部材と要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
なお、以下の説明において、「上下方向」は、中空柱状物が地盤に設置されている状態における天地方向である。すなわち、下方は重力方向であり、上方は下方の反対方向である。また、「径方向」は、中空柱状物が地盤に設置されている状態における水平断面の中心から外側に向かう方向である。
【0013】
「中空柱状物」は、例えば、照明用柱、街灯、電柱、信号柱、標識柱、カーブミラーなど、内側に空間を有する柱状の構造物である。以下に説明する実施の形態は、照明用柱を中空柱状物の例として、本発明の内容を説明する。
【0014】
照明用柱は、鋼鉄製である。照明用柱は、上端から下端までほぼ同じ内径を有する円筒状である。照明用柱は、屋外の道路沿いや駐車場、公園などの地盤に立設される。照明用柱の下端は、コンクリートで固められて、地中に埋設される。すなわち、照明用柱の下端の一部は、コンクリートと共に地盤に固定される。照明用柱は、上方側に照明器具が配置されて上方が重くなる。そのため、下方側は、地盤に強固に固定されなければならない。
【0015】
●中空柱状物の補強ユニット●
先ず、本ユニットの実施の形態について説明する。
【0016】
●補強ユニットの構成
図1は、本ユニットの実施の形態を示す模式斜視図である。同図は、説明の便宜上、袋部材に気体が充満している状態を示す。
図2は、図1の本ユニットの模式断面図である。
図3は、図1の本ユニットのA-A線矢視断面図である。
【0017】
本ユニット1は、照明用柱P(図10参照)の内側における目的とする補強箇所に配置されて、照明用柱Pの強度を内側から補強する。本ユニット1は、包装部材10と、補強部材20と、仕切部材30と、袋部材40と、を有してなる。
【0018】
包装部材10は、補強部材20と、仕切部材30と、袋部材40と、を内包する。包装部材10の内側には、内包された各部材に含浸させる接着剤が充填される。包装部材10は、作業時に接着剤から作業者を保護する。包装部材10は、接着剤に対する親和性の低い合成樹脂製である。包装部材10の材質は、透明な材質である。そのため、作業者は、各部材に対する接着剤の含浸具合を把握できる。包装部材10は、中空柱状物の上下方向の長さを備えた筒状の袋体である。包装部材10は、その上方に導入弁(不図示)を備える。導入弁は、開閉可能である。各部材や接着剤は、導入弁から包装部材10の内側へ導入される。
【0019】
「作業者」は、本ユニット1を使用して、本方法により中空柱状物の強度の補強(補修)作業を実施する自然人である。
【0020】
「接着剤」は、後述される補強部材20を照明用柱Pの内壁に接着したり、仕切部材30同士を接着したりする。接着剤は、例えば、エポキシ樹脂系の接着剤である。接着剤は、補強部材20と、仕切部材30と、に含浸される。
【0021】
補強部材20は、照明用柱Pの内壁に貼り付けられて、照明用柱Pの強度を内側から補強する。補強部材20は、例えば、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維などの接着剤を含浸可能な高強度繊維製(高強度繊維シート)である。補強部材20の形状は、中空柱状物の上下方向(軸方向)の長さを備えた筒状である。補強部材20は、照明用柱Pの内径よりもわずかに大きな外径、または、照明用柱Pの内径と同じ外径を備える。後述される複数の袋部材40それぞれが膨張することで、補強部材20は、照明用柱Pの内壁に押圧される。押圧された補強部材20は、照明用柱Pの内壁に密着するように変形可能である。補強部材20は、補強部材20の内側に内部空間を備える。内部空間は、後述される仕切部材30により分割される。ユニット本体Hは、補強部材20と、仕切部材30と、で構成される。ユニット本体Hの詳細な構成は、後述される。
【0022】
仕切部材30は、補強部材20の上下方向(軸方向)に沿って配置される。つまり、仕切部材30は、補強部材20の軸方向に延在する。仕切部材30は、補強部材20の内部空間を複数の個別空間に分割する。仕切部材30は、補強部材20の内部空間を仕切る縦節状に配置される。仕切部材30の材質は、補強部材20と同じ材質である。仕切部材30は、含侵された接着剤などが硬化することで、強度を有する。仕切部材30の一部は、補強部材20の一部と一体となる。一体となった仕切部材30の一部と補強部材20の一部とは、筒状である。仕切部材30は、補強部材20の内部空間を、4つに分割する。すなわち、内部空間には、4つの個別空間が形成される。仕切部材30の内側には、4つの個別空間それぞれに隣接する中央空間が形成される。補強部材20に設けられた仕切部材30の具体的な構成は、後述される。
【0023】
袋部材40は、袋部材40の内側に気体が充填されることにより膨張する。膨張した袋部材40は、補強部材20を照明用柱Pの内壁に押圧する。押圧された補強部材20は、あらかじめ含侵された接着剤が硬化することで、照明用柱Pの内壁に接着(固定)される。膨張した袋部材40は、隣接する仕切部材30同士を押圧する。互いに押圧された仕切部材30は、あらかじめ含侵された接着剤が硬化することで、仕切部材30同士が接着(固定)される。袋部材40は、ポリエチレン繊維などの弾性を有する合成樹脂繊維製の不織布である。袋部材40は、4つの個別空間それぞれに配置される。
【0024】
袋部材40は、気体が供給される前、収縮している。袋部材40は、袋部材40の内側に気体が供給されることにより膨張する。袋部材40は、供給される気体により変形可能な風船体である。袋部材40は、個別袋部材41と、弁体42と、を備える。
【0025】
個別袋部材41の大きさは、個別空間の大きさに対応している。個別袋部材41それぞれは、4つの個別空間それぞれに配置される。4つの個別袋部材41それぞれは、補強部材20の軸方向に延在する。個別袋部材41の上端部は、補強部材20の上端部より上方に突出する。個別袋部材41の下端部は、補強部材20の下端部より下方に突出する。つまり、個別袋部材41の長さは、上下方向において、補強部材20の長さよりも長い。
【0026】
個別袋部材41の外径は、個別空間の径方向の大きさよりも大きい外径を備えている。それぞれの個別空間に配置された個別袋部材41がすべて膨張したとき、照明用柱Pの内径よりもユニット本体Hの外径は大きく膨張可能である。個別袋部材41は、本発明における袋部材の例である。
【0027】
弁体42は、コンプレッサC(図11参照)から圧送された気体を各個別袋部材41それぞれの内側に供給する供給口である。弁体42は、逆止弁である。弁体42は、4つの個別袋部材41の上面それぞれに配置される。供給管43(図11参照)は、弁体42に取り付けられる。供給管43は、コンプレッサCに連通される。
【0028】
●ユニット本体の構成
次に、ユニット本体Hの構成について説明する。
【0029】
図4は、本ユニットHを構成する2枚の接合シートの模式図である。
【0030】
同図は、2枚の接合シートS1,S2(高強度繊維シート)が重ね合わされている様子を示す。ユニット本体Hは、2枚の接合シートS1,S2を用いて形成される。図面上、表面側(紙面手前側)は、第1接合シートS1である。第1接合シートS1の裏面側は、第2接合シートS2である。第1接合シートS1表面の破線は、2枚の接合シートS1,S2が縫合される箇所を示す。2枚の接合シートS1,S2の形状は、それぞれ同じ大きさを備える矩形である。同図は、説明の便宜上、2枚の接合シートS1,S2の位置がずれて表示されているが、縫合される接合シートS1,S2は完全に重ね合わされる。
【0031】
本ユニットHの製造工程を説明する。先ず、2枚の接合シートS1,S2は重ね合わされる。次いで、2枚の接合シートS1,S2は、図4の破線で縫合される。縫合された第1接合シートS1表面には、4つの矩形領域が形成される。次いで、縫合された2枚の接合シートS1,S2は、短手方向の左右両辺同士が合わされて縫合される。すなわち、2枚の接合シートS1,S2は、図面上の右縁と左縁同士が縫い合わされて、筒状に形成される。形成された筒状の部材は、ユニット本体Hである。
【0032】
図5は、本ユニット1を構成するユニット本体Hの模式斜視図である。
【0033】
同図は、筒状に縫合された状態の2枚の接合シートS1,S2を示す。筒状に縫合された2枚の接合シートS1,S2のうち、表面側の第1接合シートS1は補強部材20として機能する。第1接合シートS1の内側に配置された第2接合シートS2は、仕切部材30として機能する。すなわち、ユニット本体Hは、補強部材20と、仕切部材30と、を備える。補強部材20と仕切部材30とは、一体である。
【0034】
第1接合シートS1の内側には、空間が形成される。第1接合シートS1の内側の空間は、内部空間である。内部空間は、第1接合シートS1(補強部材20)の軸方向に延在する。
【0035】
内部空間には、第2接合シートS2が配置される。第1接合シートS1の一部と、第2接合シートS2の一部とは、重なった状態で縫合(接合)されている。そのため、重なり合う第1接合シートS1の一部と、第2接合シートS2の一部とは、筒状に形成される。すなわち、第1接合シートS1(補強部材20)の一部と、第2接合シートS2(仕切部材30)の一部と、で空間が形成される。本実施の形態では、4つの空間が形成される。この4つの空間それぞれは、個別空間である。個別空間それぞれは、補強部材20の軸方向に延在している。
【0036】
仕切部材30の内側には、第2接合シートS2で囲まれた空間が形成される。第2接合シートS2(仕切部材30)の内側の空間は、中央空間である。中央空間は、4つの個別空間それぞれに隣接する空間である。中央空間は、補強部材20の軸方向の長さに延在している。補強部材20の内側の内部空間は、個別空間と、中央空間と、を含む。
【0037】
なお、本発明におけるユニット本体は、2枚の接合シートを縫合して形成されるものに限られない。例えば、本発明におけるユニット本体は、個別空間を備えた細長い円筒状部品を4つ束ねて、形成されてもよい。また、ユニット本体は、補強部材となる円筒状部品の内側に、4つの個別空間を備えた円筒状部品が配置されて、形成されてもよい。
【0038】
●ユニット本体Hへの芯材の配置
次に、ユニット本体Hに形成された中央空間への芯材50の配置について説明する。
図6は、ユニット本体Hに挿入される芯材50の模式斜視図である。
【0039】
芯材50は、本ユニット1に配置される。芯材50は、ユニット本体Hと、後述する流動性固化材など、と協働して、補強強度を増加させる。芯材50は、袋部材40に流動性固化材が打設されることにより、中空柱状物の曲耐力、せん断耐力などを増強させる。芯材50は、十字部材51と、連結具52と、を備える。芯材50は、複数の十字部材51が連結されて形成される。芯材50の長さは、補強部材20の軸方向の長さと、ほぼ同じである。
【0040】
十字部材51は、鋼材である。十字部材51の形状は、中空柱状物の上下方向に長さを備えた柱状である。十字部材51の水平断面は、十字形である。十字部材51は、4枚の矩形の板が短手方向の一側縁でそれぞれ組み合わされて、水平断面十字形に形成される。芯材50は、複数の十字部材51が補強部材20の軸方向に配列される。配列された十字部材51は、補強部材20の軸方向の長さとほぼ同じ長さを備える。上下に隣接する2つの十字部材51それぞれは、連結具52で連結される。十字部材51の矩形の板部には、板部の上方側、および、下方側に孔53が形成される。上下に隣接する十字部材51は、上方の十字部材51の板部の下方側に形成された孔53と、下方の十字部材51の板部の上方側に形成された孔53と、が連結具52により連結される。連結された十字部材51は、本発明における芯材の例である。
【0041】
連結具52は、鋼鉄製である。連結具52の形状は、リング状である。芯材50は、連結具52が配置された部分で屈折可能である。芯材50は、本ユニット1に挿入された状態で、本ユニット1と共に屈折可能である。作業者は、照明用柱Pの内側に本ユニット1を挿入するときに、屈折させながら芯材50を挿入できる。そのため、作業者の挿入作業は、容易になる。
【0042】
なお、本発明における連結具は、樹脂製、ビニル製、ポリエチレン製、繊維製などでもよい。連結具の形状は、フック状でもよい。連結具は、紐状の部材を結んで上下の十字部材を連結する構成でもよい。
【0043】
図7は、ユニット本体Hに芯材50が配置される様子を示すユニット本体Hの模式斜視図である。
【0044】
同図は、芯材50が、ユニット本体Hにおける仕切部材30の内側に形成された中央空間に配置される様子を示す。4つの個別空間を形成する仕切部材30の一部それぞれは、内側(径方向の反対方向)に膨らんで配置されている。そのため、仕切部材30の内側に形成される中央空間は、水平断面ほぼ十字形に形成される。水平断面十字形の芯材50(連結された十字部材51)は、中央空間の十字形の空間に沿ってユニット本体Hの内側に挿入される。芯材50を構成する十字部材51は、中央空間内において、補強部材20の軸方向に配列される。芯材50は、補強部材20の軸方向の長さと、ほぼ同じ長さを備える。つまり、芯材50は、補強部材20の軸方向に延在する。芯材50は、仕切部材30が芯材50の外周全体を覆うように配置される。芯材50は、仕切部材30に含浸された接着剤が硬化することにより、仕切部材30と一体となる。芯材50は、本ユニット1と共に目的とする補強箇所に配置される。
【0045】
なお、本発明における芯材は、一本の十字部材の構成でもよい。芯材の形状は、中央空間に配置可能な形状であればよく、例えば、断面が丸形や束ねた形状でもよい。芯材の材質は、中空柱状物のせん断耐力または曲耐力のいずれかを増強可能な材質であればよく、例えば、アラミドロッドなど鋼材以外でもよい。
【0046】
また、中空柱状物の中には、中空柱状物の沈下や引き抜きを防ぐために、中空柱状物の内側を貫通する根枷を備えるものがある。このような根枷があると、十字部材で構成された芯材は、根枷が挿入の障害になり、中空柱状物の内側の補強個所に配置できない。そこで、芯材は、十字部材の下方側の先端に切込を備えてもよい。切込は、芯材の外周から芯材の中心(径方向の反対方向)に向けたほぼ円錐形の空間である。切込を備える芯材の先端形状は、4つのほぼ直角三角形を組み合わせた脚状である。切込を備える芯材の4つの脚状部は、芯材の中心部分から下方に向けて突出している。4つの脚状部の先端それぞれは、芯材の外周に均等に配置される。切込を備える芯材は、芯材の先端の脚状部と、根枷と、が当たらないように中空柱状物の周方向の位置決めがなされて、中空柱状物の内側に挿入される。つまり、芯材の脚状部は、根枷と中空柱状物の内壁との間に挿入される。中空柱状物の内側に挿入された芯材は、芯材の中心部分が根枷に当接して動かなくなる位置まで差し込まれる。当接して動かなくなる位置が、中空柱状物の補強個所である。ここで、ユニット本体は、ユニット本体の下端から芯材の中心部分が配置される(根枷が配置される)位置まで、軸方向に根枷が配置されるスリットを備える。根枷が配置されるスリットは、中央空間に沿って形成される。
【0047】
●ユニット本体への袋部材の配置
次に、ユニット本体Hにおける個別空間への袋部材40の配置について説明する。
【0048】
図8は、ユニット本体Hに袋部材40が配置される様子を示すユニット本体Hの模式斜視図である。
【0049】
袋部材40は、本ユニット1の個別空間に挿入される。袋部材40は、ユニット本体Hの4つの個別空間それぞれに配置される。換言すれば、4つの個別空間それぞれには、袋部材40である4つの個別袋部材41それぞれが挿入される。個別袋部材41は、気体が供給される前、収縮している。個別袋部材41は、個別袋部材41の内側に気体が充填されることにより膨張する。膨張した個別袋部材41は、補強部材20の軸方向に延在する。
【0050】
図9は、図8のユニット本体Hに芯材50と袋部材40とが配置された状態のB-B線矢視断面図である。
【0051】
同図は、説明の便宜上、個別袋部材41に気体が充満している状態を示す。図面上、本ユニット1の中心には、芯材50を構成する十字部材51が配置されている。この十字部材51を覆うように、仕切部材30が配置されている。仕切部材30は、十字部材51の十字形に沿うように十字形に配置される。個別空間に配置された個別袋部材41に気体が充満しているため、隣接する仕切部材30同士は押圧される。このとき、十字部材51は、仕切部材30に覆われて、包含される。仕切部材30の外側には、補強部材20が、仕切部材30を囲うように配置される。
【0052】
個別空間に挿入されて、膨張した個別袋部材41は、水平断面ほぼ扇型である。すなわち、補強部材20の一部と、仕切部材30の一部とは、水平断面ほぼ扇型に配置される。つまり、4つの水平断面扇型が組み合わされて、補強部材20は、照明用柱Pの水平断面円形と同じ外周を備える。
【0053】
ユニット本体Hは、中空柱状物の上下方向の長さを備える。つまり、補強部材20は、本ユニット1で補強される中空柱状物の位置に対応した軸方向の長さを備える。仕切部材30は、補強部材20の軸方向の長さとほぼ同じ長さを備える。すなわち、仕切部材30は、中空柱状物の上下方向の長さを備えて、板状の仕切となって配置される。仕切部材30に覆われた十字部材51は、補強部材20の軸方向の長さとほぼ同じ長さを備える。すなわち、十字部材51は、補強位置に対応した軸方向長さを備える。
【0054】
●補強ユニットを用いた中空柱状物の補強方法
次に、本ユニット1を用いた本方法について説明する。以下の説明では、作業者が本ユニット1を用いて、照明用柱Pの強度を補強するものとする。本方法は、作業孔形成工程と、前処理工程と、含浸工程と、挿入工程と、ユニット配置工程(取出工程)と、貼付工程(膨張工程、密着工程)と、充填材供給工程と、固化工程と、閉鎖工程と、を有してなる。
【0055】
先ず、作業者は、作業孔形成工程を実行する。
【0056】
図10は、照明用柱Pに作業孔Phが形成された後の状態を示す照明用柱Pの模式断面図である。同図は、地上と地中との境界を二点鎖線で示す。
【0057】
「作業孔形成工程」は、照明用柱Pの外周面に、作業孔Phを形成する工程である。
【0058】
作業者は、例えば、ドリルやカッタなどを用いて、照明用柱Pの外周面から作業孔Phを形成する。作業孔Phは、補強位置に作業者の手が届く位置に形成される。補強位置は、地表付近である場合が多い。すなわち、例えば、作業孔Phは、地表面から500mm~800mm程度の位置に形成される。作業孔Phは、本ユニット1が挿入されて、作業者が作業できる程度の大きさを備えた孔である。
【0059】
次いで、作業者は、前処理工程を実行する。
【0060】
「前処理工程」は、本ユニット1を施工する前に行う前処理を実行する工程である。
【0061】
前処理工程は、例えば、カメラなどの撮像装置などを用いて照明用柱Pの内側を観察する観察処理と、ポンプなどの排水装置などを用いて照明用柱Pの内側に溜まっている水を排水する排水処理と、ワイヤブラシなどの器具を用いて照明用柱Pの内側の内壁を研磨・洗浄する清掃処理と、を含む。
【0062】
次いで、作業者は、含浸工程を実行する。
【0063】
「含浸工程」は、包装部材10の導入弁から、包装部材10の内側に接着剤が充填されるとともに、包装部材10に内包された補強部材20と仕切部材30とに接着剤が含浸される工程である。
【0064】
先ず、作業者は、包装部材10の導入弁を開口する。次いで、作業者は、包装部材10の内側に接着剤を充填する。作業者は、排気ポンプ(不図示)などを用いて、包装部材10内の余分な空気を排気させながら、導入弁を閉口する。次いで、作業者は、例えば、ローラなどを用いて、包装部材10を外側から押圧する。包装部材10に内包される補強部材20と仕切部材30とには、接着剤が含浸する。含浸工程後の本ユニット1は、平板状になる。
【0065】
次いで、作業者は、再度、包装部材10の導入弁を開口して、包装部材10の内側に芯材50を挿入する。ここで、芯材50は、中央空間に挿入される。芯材50は、複数の十字部材51が連結具52で連結されているので、連結具52が配置された部分で屈曲しながら仕切部材30の内側に配置される。芯材50が内包された本ユニット1は、連結具52が配置された部分で屈曲可能である。
【0066】
次いで、作業者は、挿入工程を実行する。
【0067】
「挿入工程」は、本ユニット1を照明用柱Pの内側に挿入する工程である。
【0068】
図11は、照明用柱Pの内側にユニット本体Hが配置された状態を示す照明用柱Pの模式断面図である。同図は、地上と地中との境界を二点鎖線で示す。
【0069】
先ず、作業者は、包装部材10の導入弁を開口して、袋部材40の弁体42に供給管43を取り付ける。次いで、作業者は、本ユニット1を作業孔Phから照明用柱Pの内側に挿入する。本ユニット1は、連結具52が配置された部分で屈曲しながら照明用柱Pの内側に挿入される。
【0070】
次いで、作業者は、ユニット配置工程を実行する。
【0071】
「ユニット配置工程」は、本ユニット1を照明用柱Pの補強位置に配置する工程である。ユニット配置工程は、取出工程を含む。
「取出工程」は、包装部材10を照明用柱Pの内側から外側に取り出す工程である。
【0072】
先ず、作業者は、ワイヤなどの連結部材(不図示)の長さを調節して、目的とする補強位置に本ユニット1を配置する。本ユニット1の照明用柱Pの内側での配置位置は、照明用柱Pの内側に本ユニット1が吊り下げられた状態で決定される。このとき、本ユニット1におけるユニット本体Hの上方端は、連結部材の一端で連結される。連結部材の他端は、本ユニット1の上方で照明用柱Pの内側に固定される。次いで、作業者は、本ユニット1における包装部材10のみをカッタなどで切り開いて、ユニット本体Hから取り外す。取り外された包装部材10は、照明用柱Pの作業孔Phから外側に取り出される。取出工程では、照明用柱Pの内側で包装部材10が取り外される。そのため、包装部材10内の余分な接着剤が漏れたとしても、作業者は、作業現場周辺を汚すことがない。
【0073】
なお、ユニット配置工程は、他の公知の工程でもよく、例えば、作業者は、連結部材の一端を風船状の固定部材と連結させて、この固定部材を中空柱状物の内側の上方側で固定して本ユニットを配置してもよい。あるいは、作業者は、本ユニットの下端を中空柱状物内の底面に配置してもよい。本発明における取出工程は、本ユニットを中空柱状物の内側に挿入する直前に、順次、包装部材を取り外すものでもよい。
【0074】
次いで、作業者は、貼付工程を実行する。
【0075】
「貼付工程」は、袋部材40に気体を充填させて、補強部材20を照明用柱Pの内壁に押圧させて貼り付けるとともに、隣接する仕切部材30同士を押圧させて貼り付ける工程である。貼付工程は、膨張工程と、密着工程と、を含む。
【0076】
図12は、本ユニット1の袋部材40に気体が充填されて補強部材20が照明用柱Pの内壁に押圧された状態を示す照明用柱Pの模式断面図である。同図は、地上と地中との境界を二点鎖線で示す。
【0077】
「膨張工程」は、袋部材40に気体を充填させて、袋部材40を膨張させる工程である。
「密着工程」は、補強部材20を照明用柱Pの内壁に密着するように変形させて、補強部材20を照明用柱Pの内壁に貼り付ける工程である。
【0078】
先ず、作業者は、弁体42に取り付けられた供給管43をコンプレッサCに接続する。次いで、作業者は、供給管43を介して個別袋部材41の内側に気体を充填する。コンプレッサCからの気体は、個別袋部材41に充填される。その結果、個別袋部材41は、膨張する。供給管43は、例えば、ポリウレタンなどの合成樹脂製のチューブである。
【0079】
個別袋部材41が膨張したとき、各個別袋部材41は、照明用柱Pの内壁の形状に適合するように補強部材20を内側から押し広げる。補強部材20の外周面は、膨張した各個別袋部材41により、照明用柱Pの内壁に押圧される。押圧された補強部材20は、接着剤が硬化することで、照明用柱Pの内壁に固定される。このとき、補強部材20は、照明用柱Pの内壁に密着するように変形して、照明用柱Pの内壁と同じ形状(筒状)になる。すなわち、補強部材20は、各個別袋部材41が膨張することにより、水平断面ほぼ円形に変形する。
【0080】
一方、個別袋部材41が膨張したとき、個別袋部材41は、隣接する仕切部材30同士を押圧する。互いに押圧された仕切部材30同士は、接着剤が硬化することで、接着される。仕切部材30は、補強部材20の上下方向(軸方向)に沿って配置されて、補強部材20の内部空間を4つの個別空間に分割する。このとき、仕切部材30は、含浸する接着剤などの硬化により、補強部材20の内部空間の縦節として構造的な強度を有する。仕切部材30の内側には、芯材50が内包される。
【0081】
このように、接着剤が含浸された補強部材20が内壁に押圧されることで、補強部材20は内壁に隙間なく密着して、接着される。その結果、接着剤が硬化したとき、補強部材20と合成樹脂製の接着剤とは、繊維で強化された合成樹脂、すなわちFRP(Fiber Reinforced Plastics)に近い構造となる。
【0082】
同様に、接着材が含浸された仕切部材30が隣接した仕切部材30同士で押圧されることで、仕切部材30は互いに密着して、接着される。その結果、接着剤が硬化したとき、仕切部材30と合成樹脂製の接着剤とは、繊維で強化された合成樹脂、すなわち、FRPに近い構造となる。
【0083】
このように、本方法は、中空柱状物の内側にFRPに近い構造を作り出し、中空柱状物の強度を補強する。
【0084】
なお、本方法において、芯材のユニット本体への配置は、必須ではない。
【0085】
次いで、作業者は、充填材供給工程を実行する。
【0086】
「充填材供給工程」は、袋部材40の内側に流動性固化材である充填材60を充填する工程である。
【0087】
図13は、図12の袋部材40に流動性固化材が充填された状態を示す照明用柱Pの模式断面図である。同図は、地上と地中との境界を二点鎖線で示す。
【0088】
「充填材60」は、充填時には流動性を備えている液体状であり、時間の経過とともに固化する流動性固化材(例えば、モルタルや石膏、接着剤など)である。充填材60は、固化時に収縮量が少ない、無収縮モルタルである。
【0089】
先ず、作業者は、供給管43を弁体42から取り外して、照明用柱Pの作業孔Phから外側に取り出す。次いで、各個別袋部材41の上面を切開して、例えば、ポンプ(不図示)に接続された送液管(不図示)を介して、各個別袋部材41の内側に充填材60を供給する。充填材60は、4つの個別袋部材41それぞれに充填される。すなわち、個別袋部材41それぞれは、個別袋部材41の内側に充填材60が充填されて膨張する。充填材60は、補強部材20を照明用柱Pの内壁に押圧するとともに、隣接する仕切部材30を互いに押圧する。このとき、充填材60は、隣接する仕切部材30を互いに押圧するとともに、仕切部材30を介して芯材50を包含する。個別袋部材41の上端部と下端部それぞれは、補強部材20の上端部と下端部より突出している。そのため、充填材60は、補強部材20において、補強部材20の下端よりも下方に、補強部材20の上端よりも上方にまで充填される。
【0090】
次いで、作業者は、固化工程を実行する。
【0091】
「固化工程」は、袋部材40に充填された充填材60を固化させる工程である。
【0092】
作業者は、充填された充填材60を固化させるため、時間の経過を待つ。充填材60は、補強部材20と仕切部材30とを押圧した状態で、時間の経過と共に、化学的な変化により固化する。固化した充填材60は、構造体として、照明用柱Pの強度を増加させる。固化した充填材60は、補強部材20と仕切部材30とで形成された構造と一体化して、照明用柱Pの強度をさらに増加させる。固化した充填材60は、仕切部材30に内包された芯材50と一体化して、照明用柱Pの強度をさらに増加させる。すなわち、固化した充填材60は、補強部材20と、仕切部材30と、芯材50と一体となり、照明用柱Pの強度を飛躍的に増強させる。
【0093】
次いで、作業者は、閉鎖工程を実行する。
【0094】
「閉鎖工程」は、化粧部材(不図示)を用いて、作業孔Phを閉鎖する工程である。
【0095】
先ず、作業者は、ポンプに接続された送液管や、不要になったワイヤなどを照明用柱Pの作業孔Phから外側に取り出す。次いで、作業者は、照明用柱Pの内側を最終確認して、化粧部材により、作業孔Phを外側から閉鎖する。
【0096】
図14は、図13の照明用柱PのG-G線矢視断面図である。
【0097】
同図は、照明用柱Pが補強された状態を示している。照明用柱Pの形状は、水平断面ほぼ円形である。その内壁には、接着剤を介して、補強部材20が隙間なく配置される。補強部材20の内側には、ほぼ十字形に仕切部材30が配置される。補強部材20の一部と、仕切部材30の一部とで、4つの個別空間が備えられる。個別空間それぞれには、接着剤を介して個別袋部材41が隙間なく配置される。個別袋部材41の内側には、充填材60が充填される。充填材60は、個別袋部材41を介して補強部材20を内壁に押圧するとともに、隣接する仕切部材30を互いに押圧する。仕切部材30の内側には、芯材50が配置される。芯材50は、仕切部材30で形成された十字形に合わせて配置される。芯材50は、複数の十字部材51が補強部材20の軸方向に配列されて構成される。芯材50は、接着剤を介して仕切部材30と密着している。
【0098】
このように、本ユニット1が照明用柱Pの内側に配置されることにより、照明用柱Pの強度が補強される。照明用柱Pの強度は、ユニット本体Hにより構成されるFRPに近い構造と、ユニット本体Hの内側に充填される充填材60と、仕切部材30の内側に配置された芯材50と、により内側から補強される。補強部材20は、照明用柱Pの内壁に隙間なく配置され、FRPに近い構造として機能する。仕切部材30は、補強部材20の軸方向に沿って、補強部材20の内側に縦節状となり、FRPに近い構造として機能する。充填材60は、補強部材20の内側に充填されて、固化したときに構造体として機能する。芯材50は、仕切部材30と、充填材60とにより包含され、補強鋼材として機能する。照明用柱Pは、補強部材20と、仕切部材30と、芯材50、充填材60と、が一体となって、照明用柱Pの強度が飛躍的に増強される。
【0099】
●まとめ
以上説明した実施の形態によれば、本ユニット1は、中空柱状物の内側に配置される筒状の補強部材20と、補強部材20の内部空間に配置される複数の袋部材40と、補強部材20の内部空間を、複数の袋部材40それぞれが配置される複数の個別空間に分割する仕切部材30と、を有してなり、仕切部材30は、補強部材20の軸方向に延在し、補強部材20は、複数の袋部材40それぞれが膨張することで、中空柱状物の内壁に密着するように変形可能で、膨張した複数の袋部材40それぞれは、補強部材20の軸方向に延在する。その結果、既設の中空柱状物は、補強部材20が中空柱状物の内壁に隙間なく配置されるとともに、仕切部材30が補強部材20の軸方向に沿って補強部材20の内側に縦節となって配置されて、補強される。
【0100】
また、以上説明した実施の形態によれば、仕切部材30は、補強部材20と一体である。
その結果、既設の中空柱状物は、補強部材20と仕切部材30とが一体となって機能し、既設の中空柱状物の強度が増強される。
【0101】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、補強部材20として機能する第1接合シートS1と、仕切部材30として機能する第2接合シートS2と、が縫合されて、仕切部材30は補強部材20と一体となる。その結果、ユニット本体Hは、細長い円筒状の部品を束ねて製造されるよりも、簡単に製造される。
【0102】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、複数の個別空間それぞれは、第1接合シートS1の一部と、第2接合シートS2の一部と、で形成される。その結果、補強部材20と仕切部材30とは、一体となって既設の中空柱状物を補強できる。
【0103】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、膨張した袋部材40は、接着剤を含浸する第1接合シートS1を、中空柱状物の内壁に押圧する。その結果、補強部材20は、中空柱状物の内壁に隙間なく配置され、FRPに近い構造として中空柱状物を補強する。
【0104】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、補強部材20の内部空間に配置される1または複数の芯材50を有してなり、補強部材20の内部空間は、複数の個別空間それぞれに隣接する中央空間を含み、芯材50は中央空間に配置されるとともに、補強部材20の軸方向に延在する。その結果、既設の中空柱状物は、本ユニット1のユニット本体Hと芯材50とが一体となって機能し、既設の中空柱状物の強度が増強される。
【0105】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、芯材50の数は、複数であり、複数の芯材50は、中央空間内において、補強部材20の軸方向に配列されて、複数の芯材50のうち、隣接する2つの芯材50は、連結具52で連結される。その結果、芯材50は、本ユニット1の軸方向長さに応じて配置される。
【0106】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、補強部材20は、連結具52が配置された部分で屈折可能である。その結果、既設の中空柱状物の作業孔Phから内側に挿入するとき、芯材50が配置された本ユニット1は、屈折可能である。そのため、作業者は、本ユニット1を中空柱状物の内側に挿入しやすい。すなわち、作業者の作業効率が向上する。
【0107】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、袋部材40は、袋部材40の内側に気体が充填されて膨張するので、補強部材20を中空柱状物の内壁に隙間なく押圧するとともに、隣接する仕切部材30を互いに押圧させる。その結果、補強部材20と、仕切部材30とが立体構造(例えば、筒状、縦節状など)となる。含浸された接着剤が硬化したとき、補強部材20や仕切部材30は、FRPに近い構造として機能する。
【0108】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、袋部材40は、袋部材40の内側に流動性固化材が充填されて膨張するので、補強部材20を中空柱状物の内壁に隙間なく押圧するとともに、隣接する仕切部材30を互いに押圧させる。その結果、流動性固化材が固化したとき、補強部材20と仕切部材30と流動性固化材とは、一体となって機能して、既設の中空柱状物の強度を増強する。
【0109】
●中空柱状物の補強ユニット(2)●
次に、本発明に係る中空柱状物の補強ユニットの別の実施の形態(以下「第2実施形態」という。)について、先に説明した実施の形態(以下「第1実施形態」という。)とは異なる部分を中心に説明する。第2実施形態では、芯材の配置が、第1実施形態と異なる。以下の説明において、第1実施形態と共通する要素、および第1実施形態と姿勢(位置および向き)のみが異なる要素については、同一の符号が付され、その説明の一部または全ては省略される。
【0110】
図15は、本発明に係る本ユニット1の第2実施形態を示す補強された照明用柱Pの水平断面図である。
【0111】
同図は、既設の中空柱状物(照明用柱P)が補強された状態を示す。照明用柱Pの形状は、水平断面ほぼ円形である。その内壁には、接着剤を介して、補強部材20が隙間なく配置される。補強部材20の内面には、水平断面ほぼ十字形に仕切部材30が配置されている。補強部材20の一部と、仕切部材30の一部とは、4つの個別空間を形成する。個別空間には、接着剤を介して個別袋部材41が隙間なく配置される。この個別袋部材41の内側には、充填材60が充填される。充填材60は、個別袋部材41を介して補強部材20を内壁に押圧するとともに、隣接する仕切部材30を互いに押圧する。仕切部材30の内側には、中央空間が配置されて、この中央空間には芯材50Aが配置される。芯材50Aは、4つの棒状部材である。芯材50Aの材質は、鋼材である。4つの芯材50Aは、十字形に形成された仕切部材30の4つの先端部分(補強部材20と仕切部材30との縫合部分近く)それぞれに配置される。つまり、芯材50Aそれぞれは、対角線上に配置される。芯材50Aそれぞれは、補強部材20の軸方向長さとほぼ同じ長さを備える。芯材50Aそれぞれは、接着剤を介して仕切部材30に内包されている。
【0112】
なお、芯材は、例えば、アラミドロッドなどでもよい。
【0113】
このように、本ユニット1は、照明用柱Pの内側に配置されることにより、照明用柱Pの強度が補強される。照明用柱Pの強度は、ユニット本体Hにより構成されるFRPに近い構造と、ユニット本体Hの内側に充填される充填材60と、仕切部材30の内側に配置された芯材50Aと、により内側から補強される。補強部材20は、照明用柱Pの内壁に隙間なく配置され、FRPに近い構造として機能する。仕切部材30は、補強部材20の軸方向に沿って、補強部材20の内側に縦節状となって、FRPに近い構造として機能する。充填材60は、補強部材20の内側に充填されて、固化したときに構造体として機能する。芯材50Aは、仕切部材30と、充填材60とにより包含され、補強鋼材として機能する。照明用柱Pの強度は、補強部材20と、仕切部材30と、芯材50Aと、充填材60と、が一体となって、飛躍的に向上する。
【0114】
●まとめ(2)
以上説明した実施の形態によれば、本ユニット1の4つの芯材50Aは、対向する1対の鋼材により、補強位置の曲耐力を向上させる。また、本ユニット1の芯材50Aは、鋼材のせん断耐力により、補強位置のせん断耐力を向上させる。4つの芯材50Aは、4方向に均等に配置されているので、水平に作用する力(地震など)に対して効果を発揮する。
【0115】
●本ユニットの変形例●
以下、本ユニットの変形例を説明する。
【0116】
●本ユニットの変形例(1)
図16は、本発明に係る本ユニットの変形例を示す本ユニットの水平断面図である。
【0117】
図16は、筒状に形成された補強部材20の内側に、仕切部材30aにより4つに分割された個別空間が配置された構成を示す。4つの個別空間それぞれは、補強部材20の軸方向に延在する。補強部材20の一部と仕切部材30aの一部とで形成された個別空間には、個別袋部材41が配置される。
【0118】
●本ユニットの変形例(2)
図17は、本ユニットの別の変形例を示す本ユニットの水平断面図である。
【0119】
図17は、筒状に形成された補強部材20の内側に、仕切部材30bにより3つに分割された個別空間が配置された構成を示す。3つの個別空間それぞれは、補強部材20の軸方向に延在する。補強部材20の一部と仕切部材30bの一部とで形成された個別空間には、個別袋部材41が配置される。
【0120】
●本ユニットの変形例(3)
図18は、本ユニットのさらに別の変形例を示す本ユニットの水平断面図である。
【0121】
図18は、筒状に形成された補強部材20の内側に、仕切部材30cにより2つに分割された個別空間が配置された構成を示す。2つの個別空間それぞれは、補強部材20の軸方向に延在する。補強部材20の一部と仕切部材30cの一部とで形成された個別空間には、個別袋部材41が配置される。
【0122】
●その他●
なお、以上説明した各実施の形態において、補強部材の内側に形成される個別空間の数は、2から4に限られない。補強部材の内側を仕切部材により仕切られた個別空間は、5以上であってもよい。個別空間が5以上の場合には、仕切部材が内部空間を仕切る数が個別空間の形成数に応じて増える。
【0123】
また、以上説明した各実施の形態において、仕切部材の内側に芯材を内包させない構成でもよい。芯材が内包しない場合には、既設の中空柱状物は、補強部材と、仕切部材と、充填材と、で補強される。
【0124】
さらに、以上説明した各実施の形態において、本ユニットの挿入工程は、中空柱状物に作業孔を形成して挿入したが、このような工程に限られない。例えば、挿入工程は、既設の中空柱状物の上端を開口し、この上端から本ユニットを挿入する公知の工程を用いてもよい。挿入工程は、既設の中空柱状物の内側の上方に滑車を取り付けて、この滑車にワイヤなどの連結部材を渡して本ユニットを挿入する公知の工程を用いてもよい。
【0125】
さらにまた、含浸工程は、例えば、接着剤が中空柱状物の内壁にあらかじめ塗布された工程でもよい。仕切部材は、接着剤を含浸させずに、袋部材に流動性固化材を充満することで、補強部材内の構造を維持できる。
【0126】
さらにまた、袋部材への流動性固化材の充填は、手動でもよい。手動による充填は、例えば、先ず、袋部材の上面を切開し、次いで、ロートなどの道具を使用して袋部材内側へ流動性固化材を流し込む。
【符号の説明】
【0127】
1 本ユニット(補強ユニット)
10 包装部材
20 補強部材
30 仕切部材
40 袋部材
41 個別袋部材
50 芯材
50A 芯材
51 十字部材
52 連結具
60 充填材(流動性固化材)
P 照明用柱(中空柱状物)
H ユニット本体
S1,S2 接合シート
図1
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