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特許7488540AI埋設管路更新計画立案システム、AI埋設管路更新計画立案方法及びAI埋設管路更新計画立案プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】AI埋設管路更新計画立案システム、AI埋設管路更新計画立案方法及びAI埋設管路更新計画立案プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240515BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024054504
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-03-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391044410
【氏名又は名称】フジ地中情報株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿一
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第7343025(JP,B1)
【文献】特許第7450309(JP,B1)
【文献】特開2023-047914(JP,A)
【文献】特開2021-192150(JP,A)
【文献】特開2004-184344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
E03B 1/00-11/16
G01N 17/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AI埋設管路更新計画立案システムであって、
管種属性ごとの管路の更新のための費用を含む管種情報、更新範囲内の既設管路の更新のための年間の予算である更新予算及び管路の更新優先度を取得する取得部と、
管種属性ごとの更新後の劣化予測結果に基づいて、前記更新範囲内の既設管路について更新後管種属性を決定する管種属性決定部と、
前記管種情報、前記更新後管種属性、前記更新予算及び前記更新優先度に基づいて、前記更新範囲内の既設管路を前記更新後管種属性に更新した場合の更新費用及び、予算の範囲内で更新を行う場合の管路の更新時期を含む、前記更新範囲内の既設管路の更新計画を立案する計画部と、
を備える、
AI埋設管路更新計画立案システム。
【請求項2】
AI埋設管路更新計画立案システムは、更に、
記憶部に記憶された前記更新範囲内の既設管路の管路属性情報に基づいて既設管路の劣化予測を行う予測部と、
前記予測部による予測結果に基づいて前記更新範囲内の既設管路の前記更新優先度を決定する優先度決定部と、
を備え、
前記計画部は、前記優先度決定部において決定された前記更新優先度、前記更新費用及び前記更新予算に基づく前記更新時期を決定する、
請求項1に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
【請求項3】
前記予測部は、更に、前記管路属性情報に基づいて、前記更新範囲内の既設管路の更新後について管種属性ごとに劣化予測を行い、管種属性ごとの更新後の予測結果を複数決定し、
前記管種属性決定部は、前記更新後の予測結果に基づいて、前記更新後管種属性を決定し、
前記取得部は、前記予測部で決定した前記更新後管種属性を取得する、
請求項2に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
【請求項4】
前記AI埋設管路更新計画立案システムは、更に、
物価の年間上昇率を受け付ける受付部を備え、
前記計画部は、更に、前記年間上昇率に基づいて、物価の上昇を考慮して前記更新計画を立案する、
請求項1に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
【請求項5】
前記AI埋設管路更新計画立案システムは、更に、
管路の費用及び/又は性能に関する条件であって、前記更新後管種属性を決定するための更新後管種条件を受け付ける受付部を備え、
前記管種属性決定部は、前記予測部による前記更新後の予測結果及び前記更新後管種条件に基づいて、前記複数の管種属性から前記更新後管種属性を決定する、
請求項3に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
【請求項6】
前記更新後管種条件は、最も劣化のしない管種属性の管路からの性能低下の許容範囲である、
請求項5に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
【請求項7】
前記AI埋設管路更新計画立案システムは、更に、
前記更新計画に基づいて、前記更新範囲内の既設管路の更新費用の合計を年度毎に示す更新費用表示画面を表示処理する表示処理部を備える、
請求項1に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
【請求項8】
前記AI埋設管路更新計画立案システムは、更に、
既設管路の更新順位の範囲及び/又は管延長の範囲についての条件を含む既設管路のグルーピング条件を受け付ける受付部を備え、
前記計画部は、更に、前記グルーピング条件に基づいて、前記更新順位が範囲内及び/又は管延長が範囲内の複数の既設管路をグルーピングし、前記更新計画を立案する、
請求項2に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
【請求項9】
コンピュータ装置が実行するAI埋設管路更新計画立案方法であって、
前記コンピュータ装置は、記憶部に格納されたコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも一つの処理部を含み、
AI埋設管路更新計画立案方法は、前記少なくとも一つの処理部が、
管種属性ごとの管路の更新のための費用を含む管種情報、更新範囲内の既設管路の更新のための年間の予算である更新予算及び管路の更新優先度を取得する取得工程と、
管種属性ごとの更新後の劣化予測結果に基づいて、前記更新範囲内の既設管路について更新後管種属性を決定する管種属性決定工程と、
前記管種情報、前記更新後管種属性、前記更新予算及び前記更新優先度に基づいて、前記更新範囲内の既設管路を前記更新後管種属性に更新した場合の更新費用及び、予算の範囲内で更新を行う場合の管路の更新時期を含む、前記更新範囲内の既設管路の更新計画を立案する計画工程と、
を含む、
AI埋設管路更新計画立案方法。
【請求項10】
AI埋設管路更新計画立案プログラムであって、
管種属性ごとの管路の更新のための費用を含む管種情報、更新範囲内の既設管路の更新のための年間の予算である更新予算及び管路の更新優先度を取得する取得部と、
管種属性ごとの更新後の劣化予測結果に基づいて、前記更新範囲内の既設管路について更新後管種属性を決定する管種属性決定部と、
前記管種情報、前記更新後管種属性、前記更新予算及び前記更新優先度に基づいて、前記更新範囲内の既設管路を前記更新後管種属性に更新した場合の更新費用及び、予算の範囲内で更新を行う場合の管路の更新時期を含む、前記更新範囲内の既設管路の更新計画を立案する計画部と、
として、コンピュータを機能させる、
AI埋設管路更新計画立案プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AI埋設管路更新計画立案システム、AI埋設管路更新計画立案方法及びAI埋設管路更新計画立案プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
埋設管路の更新率は低下しており、かつ、管路の経年劣化率は年々増加の一途を辿っている。このことから、上水道、下水道、ガス等の埋設管路の更新の必要性は増大するものと考えられる。
【0003】
一方で、水道事業者等の管路を管理する事業者は、人材減少や高齢化、経営状態の悪化が問題となっている。したがって、増大する管路の更新の必要性に対応するため、今後の管路の更新において、単純な更新だけではなく、効率的な更新計画が求められる。
【0004】
特許文献1では、高い破損リスクを有する管路を識別し、交換の優先付けを行う技術に関して開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2022-504497号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「最近の水道行政の動向について」、[online]、平成31年2月、厚生労働省医薬・生活衛生局水道課、[2023年10月6日検索]、インターネット<URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000486455.pdf>
【0007】
ここで、特許文献1では、破損リスクを有する管路を識別し、交換の優先付けを行う技術に関して開示しているが、交換先の管の管種属性を考慮して自身が管理する範囲などの更新範囲における複数の管路の更新の計画を立案する技術に関しては開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、更新範囲内の既設管路の更新の計画を立案する新規な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]AI埋設管路更新計画立案システムであって、
管種属性ごとの管路の更新のための費用を含む管種情報、更新範囲内の既設管路の更新のための年間の予算である更新予算及び管路の更新優先度を取得する取得部と、
管種属性ごとの更新後の劣化予測結果に基づいて、前記更新範囲内の既設管路について更新後管種属性を決定する管種属性決定部と、
前記管種情報、前記更新後管種属性、前記更新予算及び前記更新優先度に基づいて、前記更新範囲内の既設管路を前記更新後管種属性に更新した場合の更新費用及び、予算の範囲内で更新を行う場合の管路の更新時期を含む、前記更新範囲内の既設管路の更新計画を立案する計画部と、
を備える、
AI埋設管路更新計画立案システム。
[2]AI埋設管路更新計画立案システムは、更に、
記憶部に記憶された前記更新範囲内の既設管路の管路属性情報に基づいて既設管路の劣化予測を行う予測部と、
前記予測部による予測結果に基づいて前記更新範囲内の既設管路の前記更新優先度を決定する優先度決定部と、
を備え、
前記計画部は、前記優先度決定部において決定された前記更新優先度、前記更新費用及び前記更新予算に基づく前記更新時期を決定する、
[1]に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
[3] 前記予測部は、更に、前記管路属性情報に基づいて、前記更新範囲内の既設管路の更新後について管種属性ごとに劣化予測を行い、管種属性ごとの更新後の予測結果を複数決定し、
前記管種属性決定部は、前記更新後の予測結果に基づいて、前記更新後管種属性を決定し、
前記取得部は、前記予測部で決定した前記更新後管種属性を取得する、
[2]に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
[4]前記AI埋設管路更新計画立案システムは、更に、
物価の年間上昇率を受け付ける受付部を備え、
前記計画部は、更に、前記年間上昇率に基づいて、物価の上昇を考慮して前記更新計画を立案する、
[1]に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
[5]前記AI埋設管路更新計画立案システムは、更に、
管路の費用及び/又は性能に関する条件であって、前記更新後管種属性を決定するための更新後管種条件を受け付ける受付部を備え、
前記管種属性決定部は、前記予測部による前記更新後の予測結果及び前記更新後管種条件に基づいて、前記複数の管種属性から前記更新後管種属性を決定する、
[3]に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
[6]前記更新後管種条件は、最も劣化のしない管種属性の管路からの性能低下の許容範囲である、
[5]に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
[7]前記AI埋設管路更新計画立案システムは、更に、
前記更新計画に基づいて、前記更新範囲内の既設管路の更新費用の合計を年度毎に示す更新費用表示画面を表示処理する表示処理部を備える、
[1]に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
[8]前記AI埋設管路更新計画立案システムは、更に、
既設管路の更新順位の範囲及び/又は管延長の範囲についての条件を含む既設管路のグルーピング条件を受け付ける受付部を備え、
前記計画部は、更に、前記グルーピング条件に基づいて、更新順位が範囲内及び/又は管延長が範囲内の複数の既設管路をグルーピングし、前記更新計画を立案する、
[2]に記載のAI埋設管路更新計画立案システム。
[9]コンピュータ装置が実行するAI埋設管路更新計画立案方法であって、
前記コンピュータ装置は、記憶部に格納されたコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも一つの処理部を含み、
AI埋設管路更新計画立案方法は、前記少なくとも一つの処理部が、
管種属性ごとの管路の更新のための費用を含む管種情報、更新範囲内の既設管路の更新のための年間の予算である更新予算及び管路の更新優先度を取得する取得工程と、
管種属性ごとの更新後の劣化予測結果に基づいて、前記更新範囲内の既設管路について更新後管種属性を決定する管種属性決定工程と、
前記管種情報、前記更新後管種属性、前記更新予算及び前記更新優先度に基づいて、前記更新範囲内の既設管路を前記更新後管種属性に更新した場合の更新費用及び、予算の範囲内で更新を行う場合の管路の更新時期を含む、前記更新範囲内の既設管路の更新計画を立案する計画工程と、
を含む、
AI埋設管路更新計画立案方法。
[10]AI埋設管路更新計画立案プログラムであって、
管種属性ごとの管路の更新のための費用を含む管種情報、更新範囲内の既設管路の更新のための年間の予算である更新予算及び管路の更新優先度を取得する取得部と、
管種属性ごとの更新後の劣化予測結果に基づいて、前記更新範囲内の既設管路について更新後管種属性を決定する管種属性決定部と、
前記管種情報、前記更新後管種属性、前記更新予算及び前記更新優先度に基づいて、前記更新範囲内の既設管路を前記更新後管種属性に更新した場合の更新費用及び、予算の範囲内で更新を行う場合の管路の更新時期を含む、前記更新範囲内の既設管路の更新計画を立案する計画部と、
として、コンピュータを機能させる、
AI埋設管路更新計画立案プログラム。
【0010】
[1]に係る発明により、自身の管理する範囲内(更新範囲内)の既設管路に関して、それぞれの事業者ごとの更新の予算を考慮した更新の費用と更新の時期を含む更新計画を容易に立案することができる。
【0011】
[2]に係る発明により、管路の劣化の状態を考慮して決定した優先度に基づく適切な更新計画を立案することができる。
【0012】
[3]に係る発明により、管種属性ごとに更新した場合のシミュレーションを行い、その位置への布設に適した管種属性を決定し、適した管種属性の管路に更新した場合の更新計画の立案を行うことができる。
【0013】
[4]に係る発明により、物価の年間上昇率を考慮して更新予算と更新時期を含む更新計画を立案することができる。
【0014】
[5]に係る発明により、あまり高価な管路に交換できない場合であっても、現実的な管種属性の管路を更新後の管路として、ユーザごとの条件に適した更新計画の立案を行うことができる。
【0015】
[6]に係る発明により、性能の低下の限度をつけることで、最も高価な管路でなければ劣化が激しく長持ちしないような場所に布設された既設管路に関しては高価な管路で更新を行うなど、現実的な更新計画を立案することができる。
【0016】
[7]に係る発明により、更新費用の合計を表示することで更新範囲内の更新費用の全体像を把握することができる。
【0017】
[8]に係る発明により、グルーピング条件を満たす管路をグループ化し、効率的な工事ができるような更新計画を立案することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、更新範囲内の既設管路の更新の計画を立案する新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態のシステムの構成を示すブロック図。
図2】一実施形態のシステムのハードウェア構成図。
図3】一実施形態のシステムにおけるデータ構成図。
図4】一実施形態のシステムにおけるAI埋設管路更新計画立案のイメージの例。
図5】一実施形態のシステムにおける画面表示例。
図6】一実施形態のシステムにおける画面表示例。
図7】一実施形態のシステムにおける画面表示例。
図8】一実施形態のシステムにおける処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して更に詳細に説明する。図面には好ましい実施形態が示されている。しかし、多くの異なる形態で実施されることが可能であり、本明細書に記載される実施形態に限定されない。
【0021】
例えば、本実施形態では、AI埋設管路更新計画立案システムの構成、動作等について説明するが、実行される方法、装置、コンピュータプログラム等によっても、同様の作用効果を奏することができる。プログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一過性の記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよい。
【0022】
本実施形態では、特に、上水道等の水を供給する管路の更新計画の立案を行う場合について説明を行う。更新計画が立案される管路は、水道管等に限られず、埋設管路であれば、ガス管等であってもよい。
【0023】
また、本実施形態では、自治体等の管路を管理する事業者がユーザとして、自身が管理する範囲内(更新範囲内)に布設された既設管路についての更新の計画を立案する際の例について説明を行う。本実施形態では、水道事業者等のユーザ自身が管理する範囲全てを更新の対象である更新範囲として更新計画の立案を行うが、複数の事業者の管理する範囲、又は特定の事業者の管理する範囲における一エリアを更新範囲として更新の計画を立案してもよい。また、本明細書における既設管路とは、実際に布設されている管路のことである。本実施形態では、現在布設されている既設管路を新しい管路に交換することにより管路の更新を行うような計画の立案を行う場合について説明を行う。
【0024】
本発明におけるAI埋設管路更新計画立案システムは、更新範囲内の既設管路について、それぞれの更新後の管種属性(更新後管種属性)を決定し、更新後管種属性に更新を行った場合の、更新範囲内の他の既設管路を考慮した更新計画を立案する。
【0025】
<システム構成>
図1は、一実施形態のシステムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、AI埋設管路更新計画立案システム0は、AI埋設管路更新計画立案装置1を備える。
【0026】
図1に示すAI埋設管路更新計画立案装置1は、管路を管理する事業者等が利用するコンピュータ等の情報処理装置である。AI埋設管路更新計画立案装置1は、後述する機能構成を実現可能に構成される。
【0027】
本実施形態において、AI埋設管路更新計画立案装置1は、管路属性情報等の管路に関する情報を蓄積するデータベースである管路DBを備えている。本実施形態において、管路DBは、扱うデータが流出するリスク等の観点から、USBメモリやCD-ROMなどの可搬記録媒体を介して取得された管路属性情報等の管路に関するデータを格納しているが、任意のネットワークを介して外部の情報配信システムや外部のDB等より取得し、取得したデータを格納していてもよい。管路DBは、後述する記憶部102等のAI埋設管路更新計画立案装置1のハードウェア構成の作用によって実現される。管路DBに蓄積される管路属性情報やイベント情報等の管路に関する各種情報は、後述する更新計画の立案に関する処理に利用される。
【0028】
本実施形態では、管路DBがAI埋設管路更新計画立案装置1に備えられるが、ネットワーク上のVPN(Virtual Private Network)など、任意のネットワークを介して通信可能に構成された他のサーバ装置等に備えられ、AI埋設管路更新計画立案装置1がネットワークを介して接続された管路DBより必要な情報を取得するように構成されていてもよい。
【0029】
<ハードウェア構成>
図2は、ハードウェア構成図である。図2に示すように、AI埋設管路更新計画立案装置1は、処理部101、記憶部102、通信部103、入力部104、及び出力部105を備え、各部及び各工程の作用発揮に用いられる。AI埋設管路更新計画立案装置1としては、コンピュータ等の情報処理装置を1又は複数利用することができる。また、AI埋設管路更新計画立案装置1は、後述する機能構成を備えているが、AI埋設管路更新計画立案装置1が備える機能構成の一部がAI埋設管路更新計画立案装置1と接続された別の装置に配置されてもよい。
【0030】
処理部101は、命令セットを実行可能なCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを有し、OS(Operating System)並びに、管路劣化予測プログラムを含むAI埋設管路更新計画立案プログラムなどを実行する。
【0031】
記憶部102は、命令セットを記憶可能なRAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、OSなどを記録可能な、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記録媒体を有する。AI埋設管路更新計画立案装置1の記憶部102は、管路劣化予測プログラムを含むAI埋設管路更新計画立案プログラム並びに、管路劣化予測のための学習済みの数理モデル又は学習済の数理モデルのパラメータを記憶する。また、AI埋設管路更新計画立案装置1の記憶部102は、更に数理モデルの学習のための学習プログラムを記憶していてもよい。また、本実施形態において、管路属性情報等の管路DBに格納されるデータは、AI埋設管路更新計画立案装置1の記憶部102に記憶される。
【0032】
通信部103は、ネットワークに接続するためのインタフェースを有し、ネットワークとの通信制御を実行して、他の情報処理装置や端末装置等との通信を行う。USBメモリ等の可搬記憶媒体を介してデータのやり取りを行う場合、AI埋設管路更新計画立案装置1は、通信部103を備えていなくてもよい。
【0033】
入力部104は、タッチパネルやキーボードなどの入力処理が可能な操作入力デバイス、マイクなどの音声入力が可能な音声入力デバイスなどを有する。出力部105は、ディスプレイなどの表示処理が可能な表示デバイス、スピーカなどの音声出力デバイスを有する。
【0034】
<データの定義>
以下、AI埋設管路更新計画立案システム0において利用されるデータの定義について説明を行う。
【0035】
本明細書では、管路を管理する事業者の管理するデータベース等に記録された管路のデータを管路に関する生データとする。この生データに対しては、システム内で利用可能とする為に、必要に応じて情報の置換、追加、削除等の変換処理を行う場合があるが、この変換処理が行われたデータが管路に関する処理データとなる。AI埋設管路更新計画立案装置1では、この管路に関する生データを処理した処理データを利用して管路の劣化予測や更新後管種属性の決定、更新計画の立案等の各種処理を行う。加工が不要であれば、生データをそのまま処理データとして利用してもよい。また、本実施形態において、管路の劣化予測を行うための数理モデルは、管路属性情報及びイベント情報に対して各種変換処理が行われた処理データを教師データとして学習を行った学習済みのモデルである。また、生データに対する前処理の一環として、管路の布設年等の管路属性情報の欠落する部分を補完する処理が行われてもよい。
【0036】
<データ構成>
以下、図3を用いて記憶部102に記憶される更新計画の立案に関する処理に利用されるデータ構成の例を示す。本実施形態に示すデータ構成は一例であって、図3に示すようなもの以外の構成を有するデータが後述する管路の更新計画の立案に関する処理に利用されてもよい。
【0037】
図3(a)において記憶部102に記憶される管路属性情報のデータ構成の例を示す。管路属性情報は、管路の属性である管路属性に関する情報であって、自治体等の管路の管理者が管理している既設管路に関する情報である。
【0038】
図3(a)に示す管路属性情報は、管路の属性(管路属性)に関する情報であって、本実施形態において、管路DBに格納されている生データであるが、処理データであってもよい。図3(a)に示す管路属性情報は、管路の布設された年度に関する布設年と、管種と、管路の口径と、漏水調査などのイベント調査が行われたか否かに関するイベント調査の有無と、を含む。また、図3(a)において図示されないが、管路属性情報は、管路の長さに関する管延長についてのデータを含む。本実施形態において、管路属性情報は、個々の既設管路に関する情報であって、管路に関する一意なIDである管路IDと紐づけて記憶される。また、管路属性情報は、図3(a)に示す情報に加えて、水理計算に関連する特徴量である水理計算特徴量と、管路の布設位置における環境に関する環境情報と、管路の異常な劣化に関する異常情報と、隣接する管路の管種を含む隣の管路に関する隣接管路情報と、を含む。本実施形態では、管路属性情報として隣接管路情報を含むことで、AI埋設管路更新計画立案システム0は、隣接する管路の材質によって生じる可能性がある電食漏水の発生を予測することを可能とする。
【0039】
また、管路属性情報は、管路自体の属性である管種属性に関する管種属性情報を含む。管種属性は、管路の種別に関する属性であって、管路の布設される位置とは関係のない管路自体の属性である。本実施形態において、管種属性情報は、ダクタイル鋳鉄管(DIP)や鋳鉄管(CIP)などの管路の材料に関する情報である管種と、管路の口径と、管路の継手と、を含む。継手は、管路を接続するための部品である。同じダクタイル鋳鉄管であっても、継手の材質が異なることで、非耐震管や耐震管となるなど、管種と継手の組み合わせによって管路の特性が異なる場合があるため、AI埋設管路更新計画立案装置1は、本実施形態では更新後管種属性として管種と継手の組み合わせを決定する。また、AI埋設管路更新計画立案装置1は、更新後管種属性として管種と口径、又は管種のみ等、一つ又は複数の属性について適したものを更新後管種属性として決定してもよい。
【0040】
異常情報は、異常な劣化を示す管路の布設年度に関する情報であって、本実施形態において、布設工事のミス等によってその年度に布設された管路の劣化が激しい場合などにおいて、異常な劣化を示す年度に布設された管路に付与される異常年度フラグである。
【0041】
環境情報は、管路の布設された場所の環境に関する情報であって、布設位置における平均気温、最低気温、最高気温、平均降水量、交通量、建物密集度、主要道路からの距離、最も近い主要道路の交通量などの情報を含む。また、管路の劣化に関係する特徴量であれば、管路の設置場所など、その他の情報が管路属性情報として含まれてもよい。本実施形態において、環境情報は、管路の布設位置における環境に関する情報として地盤に関する地盤情報を含む。地盤情報は、管路が布設された位置における地盤に関する情報であって、平均S波速度(AVS)や表層地盤増幅率、地形の種類や地質等を含む。
【0042】
水理計算特徴量は、管路属性情報に含まれるいずれかの特徴量に基づいて水理計算を行ったことで得られた水理計算に関連する特徴量であって、管路における水流の流量や圧力、給水人口、流量、流速などを含む。
【0043】
図3(b)において、記憶部102に記憶されるイベント情報のデータ構成の例を示す。イベント情報は、管路において発生した漏水や破損などの異常な現象であるイベントに関する情報であって、図3(b)に示す例では、イベントの種別と、イベント発生年度と、を含む。
【0044】
本実施形態におけるイベント情報は、水道事業者などの管路を管理する事業者によるイベント調査が行われた管路におけるイベントの発生に情報と、突発的な漏水事故が発生した管路におけるイベントに関する情報と、を含む。イベント調査は、管路の管理を行う事業者によって実施される、管路において漏水等のイベントが発生したかに否かを調べる調査であって、本実施形態では管路の漏水調査である。
【0045】
本実施形態において、イベント情報は、管路IDにより何れかの管路の管路属性情報と紐づけられて記憶されるが、漏水事故など突発的に管路に発生したイベントに関するイベント情報は、管路属性情報と紐づいていなくてもよい。
【0046】
図3(b)に示すイベント情報は、イベントを特定するための一意なIDである漏水データIDと、イベントが発生した管路の管路IDと、漏水原因と、タイミング情報としてイベントの発生した年度に関するイベント発生年度(漏水年)を含む。タイミング情報は管路においてイベントが発生したタイミングに関する情報である。図3(b)に示すデータでは、タイミング情報としてイベントが発生した年度に関するデータが含まれるが、管路の布設年度とイベント発生年度より取得したイベント発生までの管路の生存時間がタイミング情報として含まれていてもよい。
【0047】
本実施形態において、イベント情報に含まれるイベント種別は、管路の損傷の原因及びイベント発生の有無を示す情報であって、例えば、水道管の腐食劣化と電食漏水と振動漏水などの漏水原因に関する情報が格納される。また、本実施形態では、漏水の発生していない管路に関しては、イベント種別が漏水無しとしてイベントが発生していないことを示すイベント情報が格納される。本実施形態では、イベント情報は水道管の漏水に関する情報であるが、ガス管等の管路の破裂や破損、漏洩などその他管路で発生するイベントに関する情報であってもよい。
【0048】
図3に示すデータは、布設されている既設管路に関するデータであって、管路の劣化予測を行う数理モデルの学習に利用されるデータの例である。AI埋設管路更新計画立案システム0は、図3(a)に示す管路属性情報と同様のデータ構成を有し、かつ管種属性が異なる場合の仮の管路属性情報を複数利用して、管路の劣化予測を行い、更新後管種属性を決定する。本実施形態において、AI埋設管路更新計画立案システム0は、現在布設されている既設管路の管路属性情報を利用して、更新がされて既設管路と同じ又は異なる管種属性の管路が新たに布設された場合の劣化予測を行い、得た既設管路に関する更新後の複数の予測結果を比較することで管種属性ごとの劣化の程度を比較し、更新後管種属性を決定する。
【0049】
更に、記憶部102は、イベント情報として地震被害に対応する劣化予測を行うため、地震により発生した漏水等のイベントに関する情報を記憶していてもよい。このとき、イベント情報は、発生したイベントが地震の影響によるものか否かに関する地震影響情報を含む。地震被害に対応する数理モデルは、地震影響情報に基づいて、地震の影響により発生したイベントに関するイベント情報を利用されて学習を行ったモデルである。また、記憶部102は、数理モデルの学習に利用される、自治体など特定の事業者が管理する範囲において過去に発生した地震に関する履歴を記憶する。
【0050】
図3(c)において、管路属性情報及びイベント情報を組み合わせて生成される、学習のために形式を整えられた処理データである教師データのデータ構成の例を示す。教師データは、数理モデルの学習に用いられる管路に関する情報であって、漏水データIDと、布設年と、管路IDと、管路の布設からイベント発生までの時間又は前回のイベント発生からその次のイベント発生までの時間である生存時間と、イベント種別に関するラベルである教師ラベルと、イベントが発生した管路におけるその時点での過去の漏水発生件数と、イベントが異常に多い異常年度に関する異常年度フラグと、を含む。教師ラベルは、イベント種別に関するデータであって、それぞれのイベント種別ごとに付与されるラベルである。
【0051】
また、図3において図示されないが、記憶部102は、管種属性に関する管種情報を記憶している。管種情報は、当該システムで更新後の管種属性として利用可能な管路の種類に関する情報であって、本実施形態では、更新後の管路として選択可能な管路のリストである。管種情報は、DIP(ダクタイル鋳鉄管)等の管種及び継手と、単位長さ当たりの更新にかかる費用(例えば、1m当たりの更新にかかる費用が〇〇万円等)と、を含む。本実施形態では、管種情報は、管種と継手等の管種属性ごとに選択可能な候補のリストであるが、管路の商品名等であってもよい。単位長さ当たりの更新にかかる費用は、管路や継手自体の値段(購入費用)であってもよいし、管路を更新するための工事費用等を含んでいてもよい。AI埋設管路更新計画立案システム0は、管種情報として記憶されている選択可能な管種属性のリストのうちの何れかの候補と同じ管種属性を更新後の管種属性(更新後管種属性)として決定し、その管種属性を備える管路に既設管路を更新する場合の更新計画を立案する。
【0052】
<機能構成>
図1に示すように、AI埋設管路更新計画立案装置1は、受付部11と、取得部12と、予測部13と、管種属性決定部14と、優先度決定部15と、計画部16と、表示処理部17と、を備える。これは、ソフトウェア(記憶部102などに一過的又は非一過的に記憶されたプログラム)による情報処理が、ハードウェア(処理部101など)によって具体的に実現されたものである。
【0053】
<受付部11>
受付部11は、更新予算や物価の年間上昇率、更新後管種属性を決定するための条件である更新後管種条件や管路のグルーピング条件等、ユーザによって入力された更新計画に関する各種設定を受け付ける。受付部11は、受け付けた情報を記憶部102に格納する処理を行う。また、受付部11は、イベント調査を行った自治体等の事業者が発見したイベントに関する情報等、管路に関する情報を受け付け、管路DBに格納する処理を行ってもよい。
【0054】
<取得部12>
取得部12は、予測部13における予測結果や、管種属性決定部14において決定された更新後管種属性を取得し、計画部16に受け渡すなど、更新計画の立案の処理に必要なデータを取得して受け渡す処理を行う。更新計画の立案に関する処理に必要なデータが記憶部102に格納されている場合は、取得部12は、記憶部102からデータを取得し、受け渡す処理を行う。
【0055】
<予測部13>
予測部13は、数理モデルを利用し、管路属性情報に基づいて管路の劣化予測を行って予測結果を決定する。予測部13は、既設管路の管路属性情報に基づいて、実際に布設されている既設管路の劣化の予測を行い、現在布設されている既設管路の劣化予測結果を決定する。本実施形態において、予測部13は、更新範囲内の既設管路すべてに対して劣化予測を行って予測結果を決定し、それぞれの既設管路の管路属性情報と紐づけて記憶部102に記憶する。
【0056】
予測部13は、更に、既設管路の管路属性情報及び記憶部102に記憶される管種情報に基づいて、現在布設されている既設管路が更新され、新しい管路が布設された場合における更新後の劣化予測を行い、複数の予測結果を決定する。本実施形態において、予測部13は、一つの既設管路に対して、GX管が布設される場合及びVP管が布設される場合の予測結果を決定するなど、それぞれ異なる管種属性を備える管路が布設された場合の更新後の劣化予測を行い、複数の予測結果を決定する。本実施形態において、予測部13は、記憶部102に記憶されている管種情報に基づいて、管種と継手の組み合わせなど、候補として利用可能な管種属性の管路ごとにそれぞれ予測結果を決定する。
【0057】
予測部13における管路劣化予測のために利用される数理モデルは、図3(c)に示すような管路属性情報及びイベント情報を組み合わせることで生成された教師データを利用して学習を行った学習済みのモデルであって、本実施形態では、管路属性情報が入力されると、予測結果として管路の破損までの時間である管路の生存時間及び管路の破損確率を出力するモデルである。本実施形態における数理モデルは、異なる管種と継手の組み合わせなどの様々な管種属性を備える多数の管路の管路属性情報及びイベント情報を利用して生成した教師データに基づいて学習を行った、様々な管種属性を備える管路の劣化予測が可能なモデルである。また、本実施形態において、数理モデルは、教師データに含まれるイベント種別に基づいて付与される教師ラベルに基づいて、それぞれのイベント種別に対応して学習された複数のモデルを含む。本実施形態において、数理モデルは、腐食劣化、電食漏水、振動漏水、その他漏水というそれぞれのイベント種別に対応するモデルを含む。
【0058】
予測部13において利用される数理モデルは、イベント種別ごとに異なる手法を用いて構成された数理モデルである。本実施形態において、イベント種別が電食漏水、振動漏水、その他漏水であるとき、管路劣化予測に利用される数理モデルは、勾配ブースティングの手法を利用して構成されたモデルであるが、勾配降下法やブースティング、決定木やニューラルネットワーク、ロジスティック回帰やk近傍法などの手法を用いて構成されていてもよい。また、イベント種別が腐食劣化であるとき、数理モデルは、生存時間分析を行うため、カプランマイヤー法やCox比例ハザードモデルなどの生存時間分析に関する手法を利用して構成されるモデルである。
【0059】
本実施形態において、予測部13は、イベント種別ごとに対応するモデルを用いて劣化予測を行い、1年以内のイベントの発生する確率と3年以内のイベントの発生する確率等の所定の期間内にそれぞれのイベント種別におけるイベントが発生する確率を予測結果として決定する。更に、予測部13は、管路の劣化の程度や管路の余寿命を予測結果として決定する。本実施形態では、予測部13は、生存時間分析を行い求めた管路の生存時間を管路の余寿命として決定するが、10年以内のイベントの発生率が閾値を超えたときに10年を管路の余寿命として決定する等、生存時間分析以外の手法を用いた数理モデルを利用して取得した所定の期間内のイベントの発生率が閾値以上であるとき、その期間を余寿命として決定してもよい。また、それぞれのイベント種別に対応する複数のモデルを用いて予測結果を決定する場合、予測部13は、それぞれのイベント種別ごとに対応する複数のモデルを利用して求めた複数の予測結果より、例えば最も高い劣化の確率や最も短い余寿命等、最終的な一つの予測結果の値を決定してもよい。
【0060】
更に、予測部13は、地震に対応する数理モデルを用いて、地盤情報を含む管路属性情報に基づいて管路の劣化予測を行い、地震の影響による被害の予測結果を決定する。予測部13は、本実施形態において、特定の地震指標(本実施形態では震度)における管路の漏水確率(イベントの発生率)を予測結果として決定する。本実施形態において、地震指標として取得が比較的容易な震度を利用するが、その他、震度、マグニチュード、最大加速度(peak ground acceleration)、最大速度(Peak Ground Velocity)、SI値(Spectrum Intensity)等のうち1又は複数を地震指標として用いてもよい。また、地震指標は、公的なデータベースのようなデータベースより取得した震度等の地震指標を利用したものであってもよい。
【0061】
<管種属性決定部14>
管種属性決定部14は、予測部13における更新後の予測結果に基づいて、更新後管種属性を決定する。管種属性決定部14は、例えば、現在布設されている管路をDIP(ダクタイル鋳鉄管)に更新した場合の予測結果とPE(ポリエチレン管)に更新した場合の予測結果等、予測部13において決定された管種属性ごとの更新後の予測結果に基づいて、管種属性ごとの更新後の劣化の予測結果を比較し、更新後管種属性を決定する。本実施形態では、管種属性決定部14は、更新後管種属性を決定するための条件である更新後管種属性に基づいて、条件を満たす管種属性を更新後管種属性として決定するが、最も余寿命が長い管種属性や劣化確率が低い管種属性を更新後管種属性として決定してもよい。
【0062】
本実施形態において、管種属性決定部14は、受付部11が受け付けた更新後管種条件及び予測部13による更新後の複数の予測結果に基づいて、既設管路の更新後の管種属性である更新後管種属性を決定する。更新後管種条件は、既設管路の更新後の管種属性を決定するための条件であって、費用及び/又は管路の性能に関する許容範囲を含む。最も長持ちする高性能な管路は、最も高価であることが多い。そのため、人口減少などによって経営状況が厳しくなっている水道事業者では全ての管路を高価な管路に更新することが難しいことが想定される。本実施形態では、更新後管種条件として費用及び/又は管路の性能に関する条件を利用して更新計画の立案を行うことで、現実に即した事業者ごとに可能な範囲での計画を立案することが可能となる。管種属性決定部14は、更新後管種条件に基づいて、例えば、更新にかかる費用が許容範囲内の管路や、性能が許容範囲内の管路を更新後管種属性として決定する。
【0063】
本実施形態では、更新後管種条件は、最も劣化しない管種属性の管路からの性能低下の許容範囲である。管種属性決定部14は、更新後管種条件として80%という値が設定されているとき、予測部13による更新後の管種属性ごとの予測結果として管種属性Aの場合の余寿命が100年という予測結果と、管種属性Bの場合の余寿命が80年という予測結果と、管種属性Cの場合の余寿命が60年という予測結果を取得すると、最も長い余寿命を有する管種属性Aの80%の余寿命(80年)を有する管種属性Bを更新後管種属性として決定する。このように、更新後管種条件を最も劣化の程度が低い管路からの性能低下の範囲とすることで、本実施形態におけるAI埋設管路更新計画立案システム0は、最も性能が高い管路でなければ80年以上持たない場合には最も性能が高い管路にするなど状況に即した更新計画の立案を可能とする。また、80%といった更新後管種属性条件が設定されているとき、計画部16は、最も長持ちする管路(管種属性Aの管路)の80%の余寿命に最も近い管路の管種属性を更新後管種属性としてもよいし、最も長持ちする管路の80%以上の余寿命を有する管路のうち最も安価な管路の管種属性を更新後管種属性としてもよい。
【0064】
ここで説明した例は、予測結果として余寿命を利用して更新後管種属性を決定する場合の例であるが、漏水原因ごとの複数の数理モデルを用いて決定した複数の予測結果(経年劣化確率、余寿命、漏水確率等)を利用して管種属性ごとにスコアを付与し、付与したスコアに基づいて更新後管種属性を決定してもよい。このとき、管種属性決定部14は、予測部13による予測結果に基づいて管種属性ごとにスコアを付与し、スコアの最も高い管種属性や、スコアの最も高い管種属性からのスコアの低下が更新後管種条件で設定された範囲内(閾値として80%が設定されているとき、スコアが最もスコアの高い管路の80%以上など)である管種属性等を更新後管種属性として決定する。管種属性決定部14は、事前に設定された条件に基づいて、例えば、耐震を重要視する項目として設定された場合には地震被害を予測するための数理モデルの予測結果により重みを付けるなどして、複数の劣化予測結果の重みづけを行い、スコアを決定してもよい。
【0065】
また、本実施形態では、更新後管種条件は、最も劣化しない管種属性の管路からの性能低下の許容範囲であるが、性能に関して、現在布設されている既設管路からの性能の上昇又は低下の割合であってもよい。このとき、管種属性決定部14は、更新後管種条件として120%が設定されていると、既設管路と同じ管種属性の管路に更新した時より1.2倍の余寿命を有する管路の管種属性を更新後管種属性として決定する。
【0066】
本実施形態では、更新後管種条件は、費用及び/又は管路の性能に関する条件であるが、例えば、更新計画の立案の際に優先する事項であってもよい。例えば、更新後管種条件として耐震を優先すると設定されているとき、管種属性決定部14は、特定の地震指標における漏水確率等の地震に関する予測結果により重みをもたせ、複数の数理モデルを用いて予測した複数の予測結果を利用して更新後管種属性を決定してもよい。また、管種属性決定部14は、耐震を優先するときは更新後の管種属性の候補として耐震管路(例えば、GX形ダクタイル鋳鉄管やポリエチレン管)を利用し、費用の削減を優先するときは、更新後の管種属性の候補として安価な管路(例えば、塩化ビニール管)を利用して、更新後管種属性を決定してもよい。
【0067】
<優先度決定部15>
優先度決定部15は、予測部13において更新範囲内の既設管路の劣化予測が行われると、予測部13による更新範囲内の既設管路の予測結果(劣化確率、余寿命、漏水確率等)に基づいて、更新範囲内の既設管路の更新優先度を決定する。優先度決定部15は、本実施形態では、予測結果として取得した劣化確率が高い管路や余寿命が短い管路を更新の優先度の高い管路として決定するが、例えば、健康被害が起きる可能性がある鉛管や特に漏水リスクの高いVP管などの特定の管種を優先して更新する等、他の条件を考慮して優先度を決定してもよい。
【0068】
<計画部16>
計画部16は、取得部12が取得した更新後管種属性及び更新予算、管路の更新優先度及び管種情報に基づいて、特定の事業者が管理するエリアなど、更新範囲内の既設管路を更新後管種属性に更新した場合の更新計画を立案する。更新計画は、管路を更新する場合の計画であって、本実施形態では、管路の更新時期と、更新後管種属性に更新した場合の更新費用と、を含む。また、本実施形態において、計画部16は、管路の更新時期と更新費用を含む立案した更新計画を、管路ID等の識別情報を利用してそれぞれの既設管路の管路属性情報と紐づけて記憶部102に記憶する。
【0069】
本実施形態において、計画部16は、更新後管種属性と管種情報に基づいて、個々の既設管路を更新後管種属性に更新した場合の費用である更新費用を算出する。本実施形態では、記憶部102が管種属性ごとの更新の費用を含む管種情報として単位長さ当たりの更新にかかる費用を記憶しているため、計画部16は、更に、管路属性情報に含まれる管延長を利用して更新計画に含まれる既設管路の更新費用を算出する。例えば、更新後管種属性がDIP(ダクタイル鋳鉄管)であり、管種情報としてDIPの1m当たりの更新費用が50万円、管路属性情報に含まれる管延長が10mであるとき、計画部16は、500万円をその管路の更新費用とする。このとき、計画部16は、物価の年間上昇率を考慮しない、基準となる更新費用(基準更新費用)を算出する。本実施形態において、計画部16は、更新範囲内のすべての既設管路に対して更新費用の算出に関する処理を行い、算出した更新費用を管路ID等の識別情報を利用してそれぞれの既設管路の管路属性情報と紐づけ、記憶部102に格納する。また、本実施形態では、計画部16は、管種属性に含まれる継手と管種の組み合わせに基づいて費用を決定するための、管延長に基づく費用に更に管の継手の費用を加算して更新費用を算出する。
【0070】
計画部16は、算出した既設管路ごとの更新費用と、優先度決定部15において決定された更新優先度と、ユーザにより事前に設定された既設管路の更新のための毎年の予算に関する更新予算と、に基づいて既設管路の更新時期を決定する。本実施形態において、計画部16は、更新計画に含まれる更新時期として既設管路の更新を行う年度を決定する。
【0071】
以下、図4(a)を用いて既設管路の更新計画の立案の処理のイメージを示す。以下の図4(a)で示す例は、物価の年間上昇率を考慮しない、基準となる基準更新費用を利用した更新時期の決定に関する処理である。
【0072】
更新予算として1000万円が設定されているとき、更新優先度が1かつ更新費用(基準更新費用)が600万円の管路Aと、更新優先度が2かつ更新費用(基準更新費用)が400万円の管路Bと、更新優先度が3かつ更新費用(基準更新費用)が500万円の管路Cと、が更新範囲内に存在するとき、計画部16は、管路A及び管路Bを本年度(2024年度)に更新する管路として、更新予算である1000万円の範囲を超えた更新費用を有する管路Cを次の年度(2025年度)に更新する管路として更新時期を決定する。このように、計画部16は、更新予算を超えた更新費用の既設管路を次の年度に更新する既設管路として、更新優先度の高い既設管路から順番に更新時期を決定する。本実施形態では、計画部16は、更新予算を超えないように更新優先度の高い管路から更新時期を決定するが、所定の範囲内の超過であれば更新予算を超えた費用となるように既設管路の更新時期を設定してもよい。また、計画部16は、毎年の既設管路の更新費用の合計が更新予算に近づくように、更新優先度を前後させた更新年度を決定してもよい。
【0073】
更に、計画部16は、グルーピング条件に基づいて、隣接する複数の既設管路を一つの管路としてグループ化してから更新計画の立案に関する処理を行う。グルーピング条件は、更新計画の立案において隣接する複数の既設管路を一つの管路として扱うための条件であって、本実施形態では、既設管路の更新順位の範囲及び/又は管延長の範囲に関する条件を含む。既設管路の更新の際には埋設されている管路を掘り返して更新を行う必要がある。そのため、本実施形態のように更新する時期の近い隣接する複数の既設管路をグループ化することで、AI埋設管路更新計画立案システム0は、近い場所の既設管路を数年の間に何度も掘り返すようなことのない効率的な更新計画の立案を行うことを可能とする。
【0074】
既設管路の更新順位は、更新の順位であって、本実施形態では更新時期、余寿命、更新優先度の何れかである。AI埋設管路更新計画立案システム0は、グルーピング条件及び既設管路の更新順位に基づいて、更新すべき時期又は更新すべき順番が近い隣接する複数の既設管路をグループ化し、同じ時期に工事を行うような効率的な更新計画の立案を行う。本実施形態では、予測部13において予測結果として決定された既設管路の余寿命であるが、計画部16において決定された既設管路の更新時期であってもよい。また、本実施形態では、グルーピング条件に含まれる更新順位に関する条件は、5年以内のように時期的な条件として決定されるが、更新優先度が50以内等、更新優先度の範囲に関する条件であってもよい。
【0075】
計画部16において決定された更新時期を更新順位として利用するとき、AI埋設管路更新計画立案装置1は、一度決定された既設管路の更新時期を利用してグルーピング条件に基づくグループ化を行い、グループ化された複数の既設管路を一つの管路として扱って、更新費用の算出、更新優先度の決定及び更新時期の決定を含む既設管路の更新計画の立案に関する処理を再度行う。このとき、計画部16は、グループに含まれる最も更新時期が早い既設管路の更新時期をグループ全体の既設管路の更新時期にしてもよいし、また、グループ化した状態で再度グループに含まれる既設管路の更新費用の算出及び、グループに含まれる最も更新優先度の高い既設管路の更新優先度をグループの更新優先度として、更新優先度と、更新予算と、更新費用と、に基づくグループの更新時期の決定に関する処理を行ってもよい。AI埋設管路更新計画立案装置1は、一度決定された既設管路の更新時期を更新順位として利用するとき、グループ化と更新計画の立案に関する処理をグループ化できる既設管路がなくなるまで繰り返し行ってもよい。
【0076】
図4(b)を用いて、更新順位が5年以内、管延長が7m以内とするグルーピング条件が設定されているときのグルーピングに関する処理の例について説明を行う。更新順位が2年後かつ30mの管路Aと、更新順位が15年後の5mの管路Bと、更新順位が5年の50mの管路Cが管路A、管路B、管路Cの順番で隣接しているとき、計画部16は、まず、管延長が7m以下である管路Bを両隣の管路のうち更新順位が近い管路Cとグループ化して管路Bと管路Cのグループ(管路C’)をつくる。計画部16は、更に、管路C’に関してグループ化に関する処理を行い、管路C’と隣接する管路Aに関して長さが7m以上であるが、管路Bと管路Cのグループのうち最も更新順位が早い管路Cとの差が3年であるため、管路Bと管路Cのグループに更に管路Aを加えてグループ化する(管路C”)。本実施形態では、計画部16は、グループ内の最も更新順位が高く、更新すべき時期が最も近い(更新時期が近い又は余寿命が短い)管路の更新順位を参照して更新順位に関する条件を満たしているかの判断を行う。
【0077】
本実施形態では、計画部16は、隣接する管路の管延長がグルーピング条件として設定された範囲内であるかという確認及び、更新順位がグルーピング条件として設定された範囲内であるかの確認を行い、管延長又は更新順位がグルーピング条件で設定された範囲内の既設管路をグループに加えていくことでグループ化する。また、計画部16は、一度グループ化して一つの管路として扱うようになった複数の既設管路によるグループに関して、更にグループ化に関する処理を行い、グループに含まれる何れかの管路に隣接する管路がグルーピング条件を満たしている場合にはグループに加えていくことでグループ化を行う。
【0078】
また、本実施形態において、計画部16は、物価の年間上昇率に基づいて、物価の上昇を考慮した更新計画の立案を行う。本実施形態において、計画部16は、物価の年間上昇率に基づいて、更新年度の物価と対応した更新費用(予定更新費用)を算出し、この予定更新費用が年間の予算(更新予算)を超えないような更新時期を決定することで更新計画の立案を行う。
【0079】
1.2%の年間上昇率が設定されている際の例について説明を行う。図4(a)に示す例は、年間上昇率を考慮しない更新計画の立案の例が示されているが、2024年から年間上昇率を考慮して更新計画の立案を行うとき、2024年度の予定更新費用は、基準年度のため、管路Aが600万円、管路Bが400万円となります。管路A及び管路Bの予定更新費用の合計が1000万円となり更新予算を超えないため、管路Aと管路Bの更新時期は、2024年度となります。2025年度の予定更新費用は、物価の年間上昇率を考慮しない基準年度より1.2%上昇するため、管路Cが506万円、管路Dが404.8万円となります。管路Cと管路Dの予定更新費用の合計が910.8万円となり更新予算を超えないため、管路C及び管路Dの更新時期は、2025年度となります。2026年度の予定更新費用は、管路Eが204.8万円、管路Fが307.2万円、管路Gが512万円となります。管路Eと管路Fと管路Gの予定更新費用の合計が1024万円となり、更新予算を超えるため、管路Eと管路Fの更新時期を2026年度とし、最も更新優先度の低い管路Gの更新時期を次の年度(2027年度)として、更新年度を決定する。
【0080】
表示処理部17は、更新後管種条件、更新予算及びグルーピング条件を含む更新計画を立案するための各種条件を受け付けるための設定画面を含む各種画面を表示処理する。また、表示処理部17は、計画部16が立案した更新計画に基づく更新範囲内の既設管路の更新費用の合計を年度毎に示す更新費用表示画面や、管路属性情報に基づく既設管路ごとの情報を表示する管路情報表示画面を表示処理する。
【0081】
以下、図5から7を用いて表示処理部17が表示処理する画面表示の例について説明を行う。
【0082】
<設定画面W1>
図5を用いて設定画面W1の画面表示例について説明を行う。設定画面W1は、更新計画を立案するための設定の入力を受け付けるための画面であって、図6に示すような更新費用表示画面W2におけるグラフを生成するための設定(グラフ設定)を受け付けるためのグラフ設定受付部W11と、更新計画を立案するための条件を受け付けるための更新計画設定受付部W12と、実行ボタンW13と、を含む。
【0083】
グラフ設定受付部W11は、更新費用表示画面W2におけるグラフを生成するための設定を受け付けるための画面表示であって、グラフとして表示する計画年数と、計画の開始年度と、グラフに基準として表示される予算額と、を受け付けるための入力部を含む。本実施形態では、グラフ上に基準として表示される予算の額として年間の予算と計画の開始年度の予算額を受け付けるが、年間の予算額のみの入力を受け付けてもよい。受付部11は、グラフ設定受付部W11で受け付けた計画年数、計画の開始年度、グラフに基準として表示される予算額、を含むグラフを生成するための設定(グラフ設定)を受け付ける。更新計画設定受付部W12において入力された更新計画の立案に関する設定を利用して表示処理部17がグラフを表示処理する場合、設定画面W1は、グラフ設定受付部W11を含んでいなくてもよい。グラフ設定受付部W11に含まれる表示ボタンが押下されると、表示処理部17は、受け付けたグラフ設定、既設管路の管路属性情報、計画部16が立案した更新費用と更新時期を含む更新計画に基づいて、図6に示すような更新費用表示画面W2を表示処理する。
【0084】
更新計画設定受付部W12は、更新予算、更新後管種条件、物価の年間上昇率、グルーピング条件を含む更新計画の立案に必要な各種設定を受け付けるための画面表示である。本実施形態では、更新を始める最初の年度だけ多い予算を設定する可能性があるため、更新予算として年間の予算と計画の開始年度の予算額を受け付けるが、毎年同じ額の予算が想定される場合、年間の予算額のみを更新費用として入力を受け付けてもよい。また、更新計画設定受付部W12では、更新後管種条件として管路の性能低下の程度の割合(図5に示す例では80%)の入力を受け付ける。また、図5に示す更新計画設定受付部W12では、物価の年間上昇率として、平均の物価の年間上昇率(平均年率)を受け付けるが、毎年の物価の年間上昇率を受け付けてもよい。また、図5に示す更新計画設定受付部W12では、グルーピング条件として更新順位と、管延長の入力を受け付ける。受付部11が、更新計画設定受付部W12において入力された更新予算、更新後管種条件、物価の年間上昇率、グルーピング条件を含む更新計画立案のための各種設定を受け付け、管種属性決定部14、計画部16等に受け渡すことでAI埋設管路更新計画立案装置1は、更新計画の立案に関する処理を実行する。
【0085】
<更新費用表示画面W2>
図6を用いて更新費用表示画面W2の画面表示例について説明を行う。更新費用表示画面W2は、計画部16により立案された更新計画及び受付部11が受け付けたグラフ設定に基づいて表示処理部17により表示処理される、毎年度の更新範囲内の既設管路の更新費用の合計を示す画面である。本実施形態では、表示処理部17は、計画部16により立案され、それぞれの既設管路の管路属性情報と紐づけられた更新計画に基づいて、更新費用表示画面W2を表示処理する。図6に示す例では、更新費用表示画面W2は、開始年度である2024年度から計画年数の後(5年後)までの既設管路の更新費用の合計を示す。また、表示処理部17は、図5に示すような設定画面W1を介して入力されたグラフ設定に基づいて、基準となる予算額(本実施形態では、更新予算と同じ額)を示すようなグラフを表示処理する。また、図5に示す例では、更新費用表示画面W2に表示されるグラフは、毎年度の更新される既設管路の除却費の合計を更に示す。本実施形態では、表示処理部17は、管路属性情報に含まれる管路の取得額及び残法定耐用年数と、計画部16により決定された既設管路の更新時期と、に基づいて算出された、それぞれの既設管路を計画部16により決定された更新時期に更新する場合の固定資産の除却費に基づいて、年度毎の管路の除却費の合計を含む更新費用表示画面W2を表示処理する。
【0086】
<管路情報表示画面W3>
図7を用いて管路情報表示画面W3の画面表示の例について説明を行う。管路情報表示画面W3は、それぞれの既設管路に実際に布設されている管路の情報や計画部16により立案された更新計画を含む管路に関する各種情報を表示する画面であって、本実施形態では、ユーザにより地図上の既設管路が押下され、選択されることで表示される、選択された既設管路に関する情報を表示する画面である。図7に示す例では、管路情報表示画面W3は、管路属性情報に含まれる管区分や布設年度と、管種や口径等の情報、管種属性決定部14により決定された更新後管種属性及び更新時期と、基準更新費用及び物価の年間上昇率を考慮した予定更新費用を含む更新費用と、経年劣化確率や余寿命等を含む予測部13による既設管路の予測結果と、を表示する。また、本実施形態では、管路情報表示画面W3は、更に、予測部13が劣化予測の際に求めた管路の劣化に最も影響を与えた要因(ネガティブ要因)を示す。本実施形態では、表示処理部17は、記憶部102に記憶されたある既設管路の管路属性情報と、予測部13による既設管路の劣化の予測結果と、計画部16により立案され、管路属性情報と紐づけて記憶された更新費用及び更新時期を含む更新計画と、管種属性決定部14が決定した更新後管種属性と、に基づいて図7に示すような管路情報表示画面W3を表示処理する。
【0087】
<更新計画立案方法>
以下、図8を用いて本実施形態における更新計画の立案に関する処理の流れの説明を行う。以下に示す処理のフローは一例であって、処理の流れが以下に説明するものと異なっていてもよい。
【0088】
<更新計画立案工程>
ユーザにより、更新計画の立案開始が選択されると表示処理部17は、図5に示すような設定画面W1の表示処理を行う(S101)。受付部11は、設定画面W1を介して入力された更新予算、更新後管種条件、グルーピング条件を含む更新計画を立案するための各種設定を受け付ける(S102)。物価の年間上昇率を考慮した更新計画の立案を行う場合、受付部11は、更に、設定画面W1を介して物価の年間上昇率を受け付ける。本実施形態において、受付部11は、受け付けた更新予算、更新後管種条件、グルーピング条件、物価の年間上昇率を記憶部102に記憶する。
【0089】
取得部12は、記憶部102より更新範囲内の既設管路の管路属性情報を取得する。予測部13は、取得部12が取得したそれぞれの既設管路の管路属性情報に基づいて、既設管路の劣化予測を行い、予測結果を決定する(S103)。このとき、予測部13は、更新範囲内の2以上の既設管路について予測結果を決定する。優先度決定部15は、予測部13により予測された更新範囲内の既設管路の予測結果に基づいて更新範囲内の既設管路の更新優先度を決定する(S104)。
【0090】
取得部12は、記憶部102に記憶された既設管路の管路属性情報及び管種情報を取得する。予測部13は、更に、既設管路の管路属性情報に基づいて、更新後の候補となる管種属性に関して、候補ごとに複数の場合の劣化予測結果を行い、管種属性の候補ごとに更新後の予測結果を複数決定する(S105)。本実施形態において予測部13は、記憶部102に記憶された管種情報に基づいて、現在布設されている既設管路を更新の候補となる管路に更新した場合の劣化予測結果をそれぞれの候補ごとに決定する。管種属性決定部14は、予測部13によって予測された、複数の候補となる管種属性ごとの更新後の予測結果に基づいて更新後管種属性を決定する(S106)。本実施形態では、管種属性決定部14は、図5に示す設定画面W1を介して入力された更新後管種条件に基づいて、候補の管種属性から条件を満たす更新後管種属性を決定する。
【0091】
計画部16は、更に、グルーピング条件、更新順位及び管路属性情報に含まれる管延長に基づいて、複数の既設管路を一つの管路として扱うようにグループ化する(S107)。本実施形態において、計画部16は、図5に示す設定画面W1を介して入力された、更新順位及び管延長に関する条件を含むグルーピング条件に基づいて、管路のグループ化を行う。取得部12は、管種属性決定部14により決定された更新後管種属性、管種情報及び更新予算を取得する。計画部16は、管種属性決定部14により決定された更新後管種属性及び管種情報に基づいて、更新後管種属性に既設管路を更新した場合の更新費用を算出し、算出した更新費用、更新予算及び更新優先度に基づいて、更新時期を決定することで、更新費用及び更新時期を含む更新計画を立案する(S108)。本実施形態において、計画部16は、更新費用及び更新時期を含む立案した更新計画をそれぞれの既設管路の管路属性情報と関連付けて記憶部102に記憶する。このように管路属性情報と関連付けられた個々の既設管路の更新計画を参照することで、表示処理部17は、図6に示す更新費用表示画面W2や、図7に示す管路情報表示画面W3等の各種画面を表示処理する。
【0092】
本実施形態における、計画部16は、グルーピング条件に基づいてグループ化された管路に対してグループ化された管路を一つの管路として扱って更新計画に含まれる更新費用及び更新時期を決定する。グループ化された管路に対して物価の年間上昇率を考慮して更新計画の立案を行う際、計画部16は、グループに含まれるそれぞれの既設管路に対して基準更新費用及び更新時期における物価の上昇率を考慮した更新費用(予定更新費用)を算出する。予定更新費用を算出するとき、計画部16は、グループの更新時期を考慮してグループに含まれるそれぞれの既設管路の予定更新費用を算出し、算出した予定更新費用をそれぞれの既設管路の管路属性情報と関連付けて記憶部102に記憶する。
【符号の説明】
【0093】
0 AI埋設管路更新計画立案システム
1 AI埋設管路更新計画立案装置
11 受付部
12 取得部
13 予測部
14 管種属性決定部
15 優先度決定部
16 計画部
17 表示処理部
【要約】
【課題】
本発明は、更新範囲内の既設管路の更新の計画を立案する新規な技術を提供することを課題とする。
【解決手段】
AI埋設管路更新計画立案システムであって、
管種属性ごとの管路の更新のための費用を含む管種情報、更新範囲内の既設管路の更新のための年間の予算である更新予算及び管路の更新優先度を取得する取得部と、
管種属性ごとの更新後の劣化予測結果に基づいて、前記更新範囲内の既設管路について更新後管種属性を決定する管種属性決定部と、
前記管種情報、前記更新後管種属性、前記更新予算及び前記更新優先度に基づいて、前記更新範囲内の既設管路を前記更新後管種属性に更新した場合の更新費用及び、予算の範囲内で更新を行う場合の管路の更新時期を含む、前記更新範囲内の既設管路の更新計画を立案する計画部と、
を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8