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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】履物
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20240515BHJP
   A43B 3/10 20060101ALI20240515BHJP
   A43B 3/12 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A43B23/02 101C
A43B3/10 J
A43B3/12 F
A43B23/02 107
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020074645
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021171083
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】398018560
【氏名又は名称】ラッキーベル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091834
【弁理士】
【氏名又は名称】室田 力雄
(72)【発明者】
【氏名】魚崎 健太
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-064301(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0157630(US,A1)
【文献】実開昭59-077402(JP,U)
【文献】特開平09-313202(JP,A)
【文献】登録実用新案第3163175(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/02
A43B 3/10
A43B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
履き口から足が脱げるのを防止するための弾性ベルトを備えた履物であって、弾性ベルトは該弾性ベルトの両端部を前記履き口の両側面部に設けたベルト取付部にそれぞれ取り付けると共に、弾性ベルトの配置位置として、前記取り付けられた弾性ベルトが前記履き口の踵部の外面に沿って掛けられる状態となる待機位置と、該待機位置から上方に回動した位置で足首に沿って掛けられる状態となる作動位置との、2つの位置を選択的にとるように構成し
且つベルト取付部は踵部方向に向けて登り傾斜するラインに沿って弾性ベルトを固定する傾斜固定ラインを備え、弾性ベルトは前記傾斜固定ラインを反転ラインとして表裏面が反転する構成とすると共に、非反転状態と反転状態との何れか一方の状態で待機位置を、他方の状態で作動位置をとるように構成してあることを特徴とする履物。
【請求項2】
履き口の踵部に、弾性ベルトが待機位置から作動位置へ回動する際における該弾性ベルトの反転を誘導する、反転誘導手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の履物。
【請求項3】
反転誘導手段は、履き口の踵部に取り付けられたフラップ片からなり、該フラップ片は、待機位置に配置された弾性ベルトに対して開閉自在に覆い被さると共に弾性ベルトの上縁が上ずれするのを係止し、これによって弾性ベルトを回動させる際に、該弾性ベルトがその上縁を支点として反転するのを誘導するように構成してあることを特徴とする請求項2に記載の履物。
【請求項4】
弾性ベルトには、該弾性ベルトを待機位置から作動位置へ回動させる際の持ち手となるストラップを取り付けてあることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の履物。
【請求項5】
水平線に対するベルト取付部の傾斜固定ラインの登り傾斜角度を5~30度の範囲とし、傾斜固定ラインに対する弾性ベルトの長手方向の開き角度を10~30度の範囲となるように構成してあることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の履物。
【請求項6】
履き口の踵部はアッパーに構成された踵部であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の履物。
【請求項7】
履き口の踵部は靴底に構成された踵部であることを特徴とする請求項1~の何れかに記載の履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は履物に関し、より詳しくは、履き口から足が脱げるのを防止するための弾性ベルトを備えた履物に関する。
【背景技術】
【0002】
スリッパやサンダル等の履き口が広い履物においては、履き易い反面、足が脱げ易い欠点がある。
例えばクロックス社が提供するサンダルには、脱げ防止用のプラスチック製バンドが備えられている。しかし、このプラスチック性バンドは伸縮性に乏しく、足の小さい人ではバンドが浮いてしまい、足を固定する効果が発揮できない欠点がある。
また脱げ防止用のゴムバンドを備えたスリッパやサンダル等の履物も種々提供されてはいるが、そのほとんどは、ゴムバンド等が常時露出状態に取り付けられているため、不要時には邪魔となる欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-81090号公報
【文献】実用新案登録第3163900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、弾性部材のバンド(3)が付いた帯を粘着部材で靴の内側の踵部分に貼り付けるようにすることで、歩行時の踵と靴とのフィット感を高め、歩き易くし、また靴から踵が離れて脱げてしまうのを防止するようにしたシューズバンドが開示されている。
しかしながら、この文献1のシューズバンドは、取り付けた状態において、弾性バンド(3)が常時露出状態にあるので、弾性バンド(3)を使用したくない場合には邪魔となる。
上記特許文献2には、ゴム紐(10a)をスリッパ甲部(3)の側部から踵部の内側の間隙(8)に収納し、必要時に前記間隙(8)から取り出して足首に掛けるように構成したスリッパが開示されている。必要なときに取り出して使用し、不要の場合は邪魔にならないように間隙(8)に収納することができる。
しかしながら、この文献2のスリッパの場合、不要の際において、ゴム紐(10a)を間隙(8)に収納するのが決して容易とは言えず、かなりの手間とテクニックを要する問題がある。また使用時にゴム紐(10a)を間隙(8)から取り出すのも、なかなか厄介で、手間がかかる問題がある。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、不要時には邪魔にならないところに安定して待機させることができ、また使用時にはワンタッチで作動位置に移動させて安定させることができると共に足に確実にフィットさせて履物から足が脱落するのを防止することができる弾性ベルトを備えた履物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の履物は、履き口から足が脱げるのを防止するための弾性ベルトを備えた履物であって、弾性ベルトは該弾性ベルトの両端部を前記履き口の両側面部に設けたベルト取付部にそれぞれ取り付けると共に、弾性ベルトの配置位置として、前記取り付けられた弾性ベルトが前記履き口の踵部の外面に沿って掛けられる状態となる待機位置と、該待機位置から上方に回動した位置で足首に沿って掛けられる状態となる作動位置との、2つの位置を選択的にとるように構成し、
且つベルト取付部は踵部方向に向けて登り傾斜するラインに沿って弾性ベルトを固定する傾斜固定ラインを備え、弾性ベルトは前記傾斜固定ラインを反転ラインとして表裏面が反転する構成とすると共に、非反転状態と反転状態との何れか一方の状態で待機位置を、他方の状態で作動位置をとるように構成してあることを第1の特徴としている。
また本発明の履物は、上記第1の特徴に加えて、履き口の踵部に、弾性ベルトが待機位置から作動位置へ回動する際における該弾性ベルトの反転を誘導する、反転誘導手段を設けたことを第2の特徴としている。
また本発明の履物は、上記第2の特徴に加えて、反転誘導手段は、履き口の踵部に取り付けられたフラップ片からなり、該フラップ片は、待機位置に配置された弾性ベルトに対して開閉自在に覆い被さると共に弾性ベルトの上縁が上ずれするのを係止し、これによって弾性ベルトを回動させる際に、該弾性ベルトがその上縁を支点として反転するのを誘導するように構成してあることを第3の特徴としている。
また本発明の履物は、上記第1~第3の何れかの特徴に加えて、弾性ベルトには、該弾性ベルトを待機位置から作動位置へ回動させる際の持ち手となるストラップを取り付けてあることを第4の特徴としている。
また本発明の履物は、上記第1~第4の何れかの特徴に加えて、水平線に対するベルト取付部の傾斜固定ラインの登り傾斜角度を5~30度の範囲とし、傾斜固定ラインに対する弾性ベルトの長手方向の開き角度を10~30度の範囲となるように構成してあることを第5の特徴としている。
また本発明の履物は、上記第1~第5の何れかの特徴に加えて、履き口の踵部はアッパーに構成された踵部であることを第6の特徴としている。
また本発明の履物は、上記第1~第5の何れかの特徴に加えて、履き口の踵部は靴底に構成された踵部であることを第7の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の履物によれば、履き口から足が脱げるのを防止するための弾性ベルトは、その両端部が履き口の両側面部に設けたベルト取付部に取り付けられ、履き口の踵部の外面に沿って掛けられる状態となる待機位置と、その待機位置から上方に回動した位置で足首に沿って掛けられる状態となる作動位置との、2つの位置を選択的に取ることができる。
そして待機位置にある弾性ベルトを上方に回動させることで、弾性ベルトが作動位置へと移動し、足首に掛かる。弾性ベルトは、作動位置において、その弾力復帰力をもって足首にフィットし、足首を後から支える。
一方、作動位置にある弾性ベルトを下方に回動させ、履き口の踵部の外面に沿って掛けることで、弾性ベルトは待機位置をとり、待機状態となる。
よって請求項1に記載の履物によれば、弾性ベルトを、履き口の踵部の外面に沿って掛けられる状態の待機位置と、上方に回動して足首に掛けられる状態の作動位置との間で、比較的簡単且つ速やかに移動操作させることが可能となる。
しかも待機位置では、弾性ベルトが履き口の踵部の外面に沿って掛けられた状態となるので、弾性ベルトを何ら邪魔になることなく待機させることができる。
そして使用に際しては、踵部の外面に沿って掛けられた状態の弾性ベルトを、簡単に目視することができると共に、簡単に手に取って回動させて作動位置へ移動させることができる。
【0008】
加えて、請求項1に記載の履物によれば、ベルト取付部は、踵部方向に向けて登り傾斜するラインに沿って弾性ベルトを固定する傾斜固定ラインを備えている。この傾斜固定ラインを設けることで、該傾斜固定ラインを反転ラインとして、弾性ベルトはその表裏面が反転する状態を容易にとることができる。
そして弾性ベルトは、非反転状態と反転状態との何れか一方の状態で待機位置を、他方の状態で作動位置をとることができる。
そして前記非反転状態では、傾斜固定ラインから出た弾性ベルトは、そのまま反転することなく、弾性ベルトの裏面側でアッパー表面に当接する状態となることができる。
一方、反転状態では、傾斜固定ラインから出た弾性ベルトは、傾斜固定ラインを反転ラインとして表裏反転し、弾性ベルトの表面側でアッパー表面に当接する状態となることができる。
更に前記傾斜固定ラインを挟んだ形で、そのラインの下側に弾性ベルトの待機位置を、上側に弾性ベルトの作動位置を容易位置付けて構成することができる。
【0009】
請求項2に記載の履物によれば、上記請求項1の構成による作用効果に加えて、弾性ベルトを待機位置から作動位置へ回動する際における該弾性ベルトの反転を誘導する反転誘導手段を、履き口の踵部に設けている。
よって弾性ベルトを待機位置から作動位置に移動させる際において、弾性ベルトをスムーズに反転させて作動位置に移動させることができる。
弾性ベルトを待機位置から上方の作動位置に回動させる場合、弾性ベルトの上縁と下縁とを反転させることなく、そのまま上ずれ移動させてしまうと、弾性ベルトは不安定な状態となり、元の下方へ戻ろうとする復帰力が生じる。よってこの不安定状態では、足首に掛かった弾性ベルトは下方へ外れ易くなる。反転誘導手段を用いることで、弾性ベルトを簡単、容易に反転させることができ、弾性ベルトに対して作動位置方向への弾性復帰力を生じさせて、確実に移動させ、足首に安定して掛かるようにすることができる。
反転誘導手段を踵部に設けることで、反転誘導手段を弾性ベルトの長手方向中央部に対応して位置させることができ、弾性ベルトをその長手方向の中央部を起点としてバランスよく反転させることができる。
【0010】
請求項3に記載の履物によれば、上記請求項2の構成による作用効果に加えて、反転誘導手段を履き口の踵部に取り付けられた開閉自在のフラップ片とすることで、該フラップ片により待機位置にある弾性ベルトに対して覆い被さり、弾性ベルトの上縁の上ずれを係止することができる。そしてこれによって、待機位置から作動位置へと弾性ベルトを移動させる際、弾性ベルトをその上縁を支点として確実に反転動作させることができる。
またフラップ片によって、待機位置に待機中の弾性ベルトがずれて履き口内に容易に侵入するようなことを防止することができる。
またフラップ片によって、履き口の踵部に掛かる弾性ベルトの存在を適当に隠すことができる。
【0011】
請求項4に記載の履物によれば、上記請求項1~の何れかの構成による作用効果に加えて、弾性ベルトには、該弾性ベルトを回動させる際の持ち手となるストラップを取り付けてあるので、弾性ベルトを待機位置と作動位置との間で回動させる際には、前記ストラップを手に持って引っ張ることで、弾性ベルトを一緒に引き上げて、容易に回動させることができる。
【0012】
請求項5に記載の履物によれば、上記請求項1~4の何れかの構成による作用効果に加えて、水平線に対するベルト取付部の傾斜固定ラインの登り傾斜角度を、5~30度の範囲とし、傾斜固定ラインに対する弾性ベルト長手方向の開き角度を、10~30度の範囲となるようにしたので、
傾斜固定ラインから踵部方向に延出される弾性ベルトの傾斜角度が、水平線に対して-25~0度の範囲内となり、わずかに踵部方向に下降傾斜した状態となって、履き口の踵部の外面に対して、弾性ベルトが無理なく歪みや捻じれのない自然な状態で掛けられる待機位置を得ることができる。
そして、傾斜固定ラインで反転された弾性ベルトの傾斜角度は、水平線に対して15~60度の範囲程度となり、弾性ベルトが足首に対して無理なく歪みや捻じれのない自然な状態で掛けられる作動位置を得ることができる。
【0013】
請求項6に記載の履物によれば、上記請求項1~の何れかの構成による作用効果に加えて、履き口の踵部はアッパーに構成された踵部であるので、アッパーに踵部が設けられている履物であってもその踵部の高さが低い種々の履物を対象として脱げ防止効果を発揮することができる。
請求項7に記載の履物によれば、上記請求項1~の何れかの構成による作用効果に加えて、履き口の踵部は靴底に構成された踵部であるので、アッパーには踵部が設けられていない履物、即ち履き口の後が全部開放された種々の履物を対象として脱げ防止効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る履物の要部を示す側面斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る履物において、弾性ベルトが待機位置にある状態を示し、(A)は履物の側面斜視図、(B)は履物の背面斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る履物において、弾性ベルトが待機位置にあるときに、フラップ片を開放した状態を示し、(A)は履物の側面斜視図、(B)は履物の背面斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る履物において、弾性ベルトを待機位置から作動位置へと移動させる途中の状態を示し、(A)は履物の側面斜視図、(B)は履物の背面斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る履物において、弾性ベルトが作動位置にある状態を示し、(A)は履物の側面斜視図、(B)は履物の背面斜視図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る履物の要部を示す側面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態に履物を説明し、本発明の理解に供する。勿論、以下の説明は特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。
【0016】
図1図5を参照して、本発明の実施形態に係る履物は靴底10と、アッパー20とを少なくとも有する。アッパー20は履物の甲部を構成する。アッパー20は、本実施形態では足のつま先部分までを全部覆う構成としている。しかし勿論、つま先部分が開放された構成であってもよい。
前記履物の甲部を構成するアッパー20には、足を出し入れするための履き口30が設けられている。
履き口30は、本実施形態では、アッパー20の中央付近から後方にかけて設けられており、履き口30の周囲は補強パッドPで補強している。
本実施形態の履物においては、前記履き口30は、その履き口30の踵部31をアッパー20の踵部21として多少の高さを設ける一方、その踵部31の高さを低くし、これによって履き口30を後方に向けて低く広くして、履き易く、また脱ぎ易くしている。
その一方、例えばこのような脱げ易い履き口30の履物を、学校等の上履き等として子供等に使用させている場合に、火事や地震等の緊急事態が発生した際等において、履物が足から脱げ易いことから、急いで逃げられない等の問題が発生する。
【0017】
本実施形態においては、履き口30の踵部31の高さを無くしてしまうことなく、一定の低い高さの壁として残している。踵部31を利用して、履き口30から足が脱げるのを防止するための弾性ベルト40を、踵部31の外面に沿って掛けるように構成している。
【0018】
即ち、弾性ベルト40を用い、該弾性ベルト40の両端部41、41を前記履き口30の両側面部32、32に設けたベルト取付部33、33に取り付けるようにしている。
そして取り付けられた弾性ベルト40は、それが履き口30の側面部32から踵部31の外面に沿って掛けられることで、待機位置Aを構成するようにしている。
待機位置Aでは、ベルト取付部33に取り付けられた弾性ベルト40は、一方のベルト取付部33から一方の側面部32を経て踵部31の外面に至り、更に他方の側面部32を経て他方のベルト取付部33に至るように配置されることになる。
弾性ベルト40が待機位置Aにおいて安定して配置されるためには、弾性ベルト40がベルト取付部33から、撓んだり捻じれたりすることなく、スムーズな軌跡をもって側面部32を経て踵部31外面に至るように配置される必要がある。このため弾性ベルト40は、ベルトの長手方向がベルト取付部33から踵部31方向に向けて、やや下り傾斜方向乃至水平方向の程度となるように配置される。
弾性ベルト40は待機位置Aでずれ落ちたりすることなく保持された状態となる必要がある。このため弾性ベルト40は、長手方向に伸縮するものを用い、踵部31に掛けた状態で少し引っ張られた状態となって弾性復帰力が働くように、ベルト長さを調整している。
即ち、弾性ベルト40は、待機位置Aにおいて、弾性復帰力を保持して側面部32から踵部31の外面に沿ってピッタリと当接した、安定状態を取るように構成される。
弾性ベルト40の幅方向の寸法は、適当な弾性力の保持と踵部31の高さ寸法を勘案して定めることができる。
なお、弾性ベルト40が踵部31に掛けられた状態において、弾性ベルト40の一部がアッパー20の踵部21を超えて靴底10の踵部11にも掛かる寸法構成となる場合もあるが、これも本発明の構成の範囲内である。
【0019】
前記弾性ベルト40は、それを待機位置Aから上方に回動することで、作動位置Bに移動する構成とされている。
作動位置Bにおいては、弾性ベルト40は一方のベルト取付部33から一方の側面部32を経て履き口30に達し、足首100に沿って掛けられる状態となり、更に他方の側面部32を経て他方のベルト取付部33に至るように配置されることになる。
弾性ベルト40が作動位置Bにおいて安定して配置されるためには、弾性ベルト40がベルト取付部33から、撓んだり捻じれたりすることなく、スムーズな軌跡をもって側面部32を経て履き口30の足首100に至るように配置される必要がある。このため弾性ベルト40は、ベルトの長手方向がベルト取付部33から履き口30の足首100方向に向けて、やや上り傾斜方向となるように配置される。
弾性ベルト40は作動位置Bにおいて、安定して足首100に掛かる必要がある。このため弾性ベルト40は、足首100に掛けられた状態で適切な弾性復帰力が働くようにベルト長さを調整している。なお、ベルト長さの調整は、待機位置Aと作動位置Bとの両方において適正となるようになされる。
即ち、弾性ベルト40は、作動位置Bにおいて、足首100に掛けられた状態で弾性復帰力を保持し、且つ両側面部32、32から足首100の外面に沿ってピッタリと当接した、安定状態をとるように構成される。
【0020】
弾性ベルト40は、待機位置Aと作動位置Bで安定し、その中間は不安定領域となるように構成する。このような状態を得るため、本実施形態では弾性ベルト40を表裏反転させ、その何れか一方の状態で待機位置Aをとり、他方の状態で作動位置Bを取るようにしている。
図に示す本実施形態では、弾性ベルト40は非反転状態で待機位置Aをとり、反転状態で作動位置Bを取るようにしている。勿論、非反転状態で作動位置Bをとり、反転状態で待機位置Aをとるようにしてもよい。
【0021】
本実施形態では、弾性ベルト40のスムーズで確実な反転を確保するために、ベルト取付部33に傾斜固定ライン33aを備えるようにしている。
傾斜固定ライン33aは踵部31方向に向けて登り傾斜するラインとして設けている。
そしてこの傾斜固定ライン33aに沿って、弾性ベルト40は踵部31方向に上り傾斜するラインで固定されている。固定は縫い付けにより行うことができる。この場合は傾斜固定ライン33aはミシンステッチのラインで構成されることになる。固定は縫着以外の方法で行うことも可能である。
本実施形態では、履き口30の周囲を補強するパッドP1、P2を利用して弾性ベルト40の両端部41、41を縫着状態に固定している。この場合、パッドP1とパッドP2の境目を重ねると共にその境目を踵部31方向に向けて登り傾斜するラインとし、これを傾斜固定ライン33aとしている。
弾性ベルト40は、その両端部41、41をパッドP1とパッドP2との間に挟み込んだ状態でパッドP1、P2と一緒に縫い付け、傾斜固定ライン33aに沿って固定されるようになされている。
そして弾性ベルト40は、固定された状態で、パッドP1とP2との境目である傾斜固定ライン33aから、該ライン33aより斜め下方に向けて延出されるようになされている。
傾斜固定ライン33aから延出された弾性ベルト40は、そのまま何ら反転させなければ、弾性ベルト40の裏面側だけで履き口30の側面部32や踵部31に当接する非反転状態に維持され、待機位置Aに安定して配置させることができる。
一方、弾性ベルト40を傾斜固定ライン33aに沿って表裏反転させると、弾性ベルト40は、元の表面側が履き口30の側面部32や足首100に当接する反転状態に維持され、作動位置Bに安定して配置させることができる。
【0022】
前記傾斜固定ライン33aは、待機位置Aにある弾性ベルト40と作動位置Bにある弾性ベルト40とが傾斜固定ライン33aで鏡面対称或いはそれに近い状態となるようにラインを定める。即ち、傾斜固定ライン33aに対する待機位置Aにある弾性ベルト40の長手方向の開き角度α1と作動位置Bにある弾性ベルト40の長手方向の開き角度α2とが同じ角度或いはそれに近い角度になるようにラインを定める。この弾性ベルト40の傾斜固定ライン33aに対する長手方向の開き角度α1、α2は、具体的には10~30度の程度とするのがよい。
一方、傾斜固定ライン33a自体の踵部31方向への登り傾斜角度θは、弾性ベルト40がスムーズな軌跡をもって待機位置Aをとることができ、またスムーズな軌跡をもって作動位置Bをとることができるような角度を、折り返しロス等も含めて定めることになる。この傾斜固定ライン33a自体の登り傾斜角度θは、具体的には5~30度の程度とすることができる。
前記弾性ベルト40の傾斜固定ライン33aに対する長手方向の開き角度α1、α2や傾斜固定ライン33a自体の登り傾斜角度θは、履物の寸法、形、また履き口30の寸法、形等に応じて、最適な値を調整する必要がある。前記登り傾斜角度θは、3~30度の程度とするのがよい。
【0023】
弾性ベルト40を待機位置Aから作動位置Bへ回動させる際において、スムーズな反転を誘導するための反転誘導手段50として、フラップ片51を設けている。このフラップ片51はネームプレート等の役割を同時に果たすことができる幅と長さを持つようにしている。
前記反転誘導手段50は、踵部31の外面の上縁付近に取り付けられることで、踵部31に掛けられた弾性ベルト40が待機位置Aから上方の作動位置Bへと回動操作される際に、弾性ベルト40の上縁42の上ずれを係止する役割を果たすものであればよい。弾性ベルト40の上縁42の上ずれが係止されることで、弾性ベルト40の下縁43が、係止された上縁42を支点として回動し、弾性ベルト40の反転が誘導される。
本実施形態では、反転誘導手段50としてフラップ片51を踵部31の外面の上縁付近に取り付けて、且つ開閉自在としている。即ち、フラップ片51は待機位置Aにある弾性ベルト40の中央部分(踵部分)に対して上から覆い被さるように閉じることができる構成とし、これによって、弾性ベルト40を履き口30の踵部31外面において適当に隠すと共に、弾性ベルト40が履き口30内へ上ずれするのを確実に防止する構成となされている。一方、フラップ片51は、弾性ベルト40が待機位置Aから作動位置Bに回動される際に、弾性ベルト40と共に反転回動し、弾性ベルト40の反転を助長しながら開放する構成となされている。勿論、フラップ片51は、それ自体で上方向に回動された開放状態とすることができる。
【0024】
弾性ベルト40には、該弾性ベルト40を回動させる際の持ち手となるストラップ60を取り付けてある。これによって、弾性ベルト40を待機位置Aと作動位置Bとの間で回動させる際には、前記ストラップ60を手に持って引っ張ることで、弾性ベルト40を一緒に引き上げて、容易に回動させることができる。
ストラップ60は、待機位置Aにある弾性ベルト40の踵部31(弾性ベルト40の中央部)において、弾性ベルト40の下縁43付近に取り付ける。下縁43付近に取り付けることで、弾性ベルト40を待機位置Aから作動位置Bへと回動操作する際に、ストラップ60を持って下から引っ張り上げることで、弾性ベルト40を容易に反転させることができる。また、作動位置Bにある弾性ベルト40のストラップ60を持って上方から下方に引っ張り下げることで、弾性ベルト40を容易に下方に回動させることができる。
【0025】
上記した本発明の履物は、履き口30と踵部31のある全ての履物に適用可能である。即ち、踵部31が低くて、履き口30から足が脱げ易い、スリッパ、サンダル、その他の該当する種々の履物を対象とすることができ、脱げ防止効果を発揮する。
【0026】
以上のように構成した履物の使用方法乃至作用について説明する。
図2に示す状態は、弾性ベルト40が典型的な待機状態Aにあるときを示し、弾性ベルト40が踵部31(21)に掛けられ、フラップ片51が閉じられて、弾性ベルト40を踵部31において隠している状態を示す。
前記フラップ片51は、待機状態Aにおいて、開閉することができる。フラップ片51が開放された状態を図3に示す。
図1の待機位置Aにある弾性ベルト40のストラップ60を持って引っ張り上げる操作を開始すると、その途中で、図4に示す状態となる。即ち、弾性ベルト40はその上縁42がフラップ片51によって上ずれが阻止されて係止されるため、その上縁42を支点として下縁43側がフラップ片51と共に回動し、反転を開始する。
そして弾性ベルト40の回動操作を続けることで、弾性ベルト40の反転が両端部41の傾斜固定ライン33aの位置まで伝播し、また弾性ベルト40が作動位置Bに達する。この状態を図5に示す。
前記弾性ベルト40が非反転の状態では、弾性ベルト40は待機位置A付近で安定し、一方弾性ベルト40が反転した状態では、弾性ベルト40が作動位置B付近で安定する。
即ち、弾性ベルト40は中間位置では不安定となり、非反転状態で待機位置A、反転状態で作動位置Bに安定しようとする。
弾性ベルト40が待機位置Aで踵部31(21)の外面にスムーズに掛かり、且つ安定し、また作動位置Bで足首100にスムーズに掛かり、且つ安定するようにするための構成が、上記した弾性ベルト40の取り付け構成である。より具体的には、弾性ベルト40の固定ライン(傾斜固定ライン33a)の調整された角度θの構成であり、また弾性ベルト40の固定ライン(傾斜固定ライン33a)に対する調整された長手方向の角度α1、α2の構成である。
【0027】
なお上記において、弾性ベルト40が非反転の状態で作動位置Bをとり、反転の状態で待機位置Aをとるようにしてもよいことも述べた。その場合は、例えば補強パッドP2を上、補強パッドP1を下にし、その境目に弾性ベルト40を挟み込んで縫着すればよい。弾性ベルト40は境目の傾斜固定ライン33aから斜め上方に向けて延出され、その状態で非反転状態となる。
【0028】
以上で説明した実施形態においては、履き口30の踵部31がアッパー20の踵部21に構成されている場合であるが、本発明では必ずしも履き口30の踵部31がアッパー20の踵部21に構成されている必要はない。本発明において、履き口30の後が全部開放された履物を対象とする場合には、履き口30の踵部31は靴底10の踵部11で構成されることになる。
図6に本発明の他の実施形態を示す。
図6に示す他の実施形態では、履き口30の後が全部開放された履物を対象として、履き口30の踵部31は靴底10の踵部11で構成される。即ち、弾性ベルト40は靴底10の踵部11に掛けられることで、待機位置Aを構成する。
なお、靴底10の踵部11の形状は、弾性ベルト40を掛け易い形状にアレンジすることができる。図6においては、踵部11の傾斜角度を一部変更して、弾性ベルト40を確実に掛けられるようにし、且つ下方へずり落ちないようにしている。
図6に示す他の実施形態では、反転誘導手段50であるフラップ片51(図示しない)は、靴底10の踵部11の外面の上縁付近に取り付けられることになる。踵部11に掛けられた弾性ベルト40が待機位置Aから上方の作動位置Bへと回動操作される際に、弾性ベルト40の上縁42の上ずれを係止して、反転を誘導する役割を果たす。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は有用な履物として、産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 靴底
11 踵部
20 アッパー
21 踵部
30 履き口
31 踵部
32 側面部
33 ベルト取付部
33a 傾斜固定ライン
40 弾性ベルト
41 端部
42 上縁
43 下縁
50 反転誘導手段
51 フラップ片
60 ストラップ
100 足首
A 待機位置
B 作動位置
P(P1、P2) 補強パッド
α1、α2 弾性ベルトの長手方向の開き角度
θ 傾斜固定ラインの登り傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6