(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】マッサージ具
(51)【国際特許分類】
A61H 39/04 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
A61H39/04 P
(21)【出願番号】P 2020208847
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591209914
【氏名又は名称】株式会社ユタカメイク
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】雪本 次良
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-059134(JP,U)
【文献】実開昭61-024046(JP,U)
【文献】実開昭60-128631(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の脚のつけ根部を押圧する第1押圧部と、
第1押圧部の両側に並設され且つ
上記装着者の脚のつけ根近傍部を押圧する第2押圧部とを備えており、
上記第1押圧部は、第2押圧部よりも上方に突出して形成
され、
上記第1押圧部及び/又は上記第2押圧部は、断面が略半円弧状である突円弧状面を外側に有する畝部を含む、複数個の押圧基部が、上記押圧基部の長さ方向に斜行した方向に連続的に設けられて形成されており、
上記第1押圧部及び上記第2押圧部はそれぞれ、上記装着者の日常生活における動作中において、その長さ方向の全長を上記装着者の脚のつけ根部及び脚のつけ根近傍部に上記脚のつけ根部の長さ方向に沿ってあてがった状態に配設、固定可能に形成されていることを特徴とするマッサージ具。
【請求項2】
上記畝部の突円弧状面は、棒状体を螺旋状にねじることにより棒状体の表面にて形成される面から形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ具。
【請求項3】
第1押圧部及び/又は第2押圧部は、直条に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、椅子に座った状態で長時間に亘って行なう事務作業など長時間に亘って同じ姿勢でいる仕事、運動不足又は冷え性などが原因となって腰痛を患う者が多くなっている。
【0003】
腰部には、背骨の下方部から骨盤を通って股関節の内側に付く大腰筋と、骨盤内側から股関節内側に付く腸骨筋がある。腰痛は、大腰筋や腸骨筋が硬くなることが原因となって腰痛症が発症するといわれている。
【0004】
特許文献1には、把持部と、把持部の先端より延在する延在部と、延在部の先端に設けられた押圧部とを有するマッサージ具において、前記押圧部をウレタン材により形成したマッサージ具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記マッサージ具は、押圧部を腰部のつぼに押し当てることによるマッサージ効果を期待するものであり、腰痛の原因となっている大腰筋や腸骨筋は、体の内部にあるため、腰部を背中側から押圧しても、押圧力が大腰筋や腸骨筋に十分に伝わらず、大腰筋及び腸骨筋のコリに起因した腰痛症状を十分に緩和することができないという問題点を有する。
【0007】
本発明は、腰痛の原因となっている大腰筋や腸骨筋のコリを緩和して腰痛症の緩和を行なうことができるマッサージ具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマッサージ具は、脚のつけ根部を押圧する第1押圧部と、
第1押圧部の両側に並設され且つ脚のつけ根近傍部を押圧する第2押圧部とを備えており、
上記第1押圧部は、第2押圧部よりも上方に突出して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマッサージ具は、脚のつけ根を押圧する第1押圧部と、この第1押圧部の両側に併設されて、脚のつけ根近傍部を押圧する第2押圧部とを有しており、相対的に上方への突出度合いが小さい第2押圧部によって、大腰筋及び腸骨筋の手前にある筋肉をマッサージしてコリを緩和して柔軟にし、相対的に上方への突出度合いの大きい第1押圧部が大腰筋及び腸骨筋(これらを併せて「腸腰筋」という)に到達しやすくしており、第1押圧部によって腸腰筋を効果的に押圧してマッサージし、腸腰筋のコリを緩和して腰痛症の緩和を効果的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のマッサージ具を示した斜視図である。
【
図5】
図1のマッサージ具の使用状態を示した模式図である。
【
図7】
図1のマッサージ具を装着した状態を示した断面図である。
【
図8】本発明のマッサージ具の他の一例を示した斜視図である。
【
図10】
図8のマッサージ具を示した平面図である。
【
図11】本発明のマッサージ具の他の一例を示した斜視図である。
【
図13】本発明のマッサージ具の他の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のマッサージ具の一例を図面を参照しながら説明する。
図1~4に示したように、マッサージ具Aは、平面長方形状で且つ所定厚みを有する基板1と、この基板1上に一体的に形成された直条の第1押圧部2と、この第1押圧部2の両側に併設された直条の第2押圧部3、3とを有する。基板1、第1押圧部2及び第2押圧部3、3は、合成樹脂(好ましくは、ゴム弾性を有する合成樹脂)から形成されているが、材料は特に限定されない。なお、基板1を設けることなく、第1押圧部2及び第2押圧部3、3の対向する下端部同士を一体化することによって形成されていてもよい。
【0012】
マッサージ具Aは、脚のつけ根部Hに後述するバンド体などの固定具Bによって固定されて用いられ、マッサージ具A(基板1)は、脚のつけ根部Hに固定させた時、股関節の動きに支障ない程度の幅と長さを有している。基板1の長さは、装着者の体格に応じて適宜、調整されるが、腸腰筋Cよりも外側(皮膚側)にある、脚部の太股などを形成している筋肉E(以下「皮膚側筋肉」という)間に形成された隙間を通じて腸腰筋Cを全体的に効果的にマッサージすることができるので、5~12cmが好ましい。マッサージ具A(基板1)の長さと幅の比(長さ/幅)は、2~6が好ましい。
【0013】
図1~3に示したように、断面が略半円弧状であって且つ表面が平滑な突円弧状面21に形成された畝部を突円弧状面21を上方(外側)にして上方に向かって突円弧状に湾曲変形することによって押圧基部22が形成されている。なお、上方とは、
図2における上方向をいう。
【0014】
そして、複数個の押圧基部22がこの押圧基部22の長さ方向D
2に対して斜行した方向(交差する方向)に連続的に連なって一体化することによって、第1押圧部2が形成されている。第1押圧部2の長さ方向D
1(押圧基部22の連なる方向)と、押圧基部22の長さ方向D
2とがなす角度αは、20~70°が好ましく、30~60°がより好ましく、40~50°がより好ましい。なお、押圧基部22の長さ方向D
2とは、
図3において、左上から右下に向かう方向をいう。
【0015】
換言すれば、第1押圧部2は、一定の直径を有する二本の棒状体を並列させた上で、二本の棒状体を螺旋状にねじり合わせてロープ体を形成し、このロープ体を長さ方向に平行な面でロープ体の径方向に略半分に切断することにより形成された切断体の表面形状を有している。
【0016】
第1押圧部2において、押圧基部22の突円弧状面21は、その長さ方向が第1押圧部2の長さ方向D1に斜行した状態に形成されていると共に、押圧基部22の突円弧状面21は、第1押圧部2の長さ方向D1に連なった状態に繰り返し形成されている。
【0017】
したがって、第1押圧部2の押圧基部22の突円弧状面21は、様々な方向に指向した状態に形成されており、第1押圧部2の押圧基部22の突円弧状面21によって、筋肉に様々な方向から押圧力を加えてマッサージ効果を効果的に付与することができる。なお、押圧基部22における互いに隣接する突円弧状面21同士は互いに密接している必要はなく、互いに隣接する突円弧状面21、21間に僅かな隙間が形成されていてもよい。
【0018】
第1押圧部2の両側(長さ方向に直交する方向の両側)には第2押圧部3、3が配設されている。第1押圧部2と第2押圧部3は互いに密接していてもよいし、第1押圧部2と第2押圧部3との間に僅かに隙間が形成されていてもよい。
【0019】
第2押圧部3は、その上方への突出度合いが第1押圧部2の上方への突出度合いよりも小さく形成されている以外は、第1押圧部2と同様の形状を有している。断面が略半円弧状であって且つ表面が平滑な円弧状面31に形成された畝部を円弧状面31を上方(外側)にして上方に向かって突円弧状に湾曲変形することによって押圧基部32が形成されている。そして、複数個の押圧基部32がこの押圧基部32の長さ方向D2に対して斜行した方向(交差する方向)に連続的に連なって一体化することによって、第2押圧部3が形成されている。第2押圧部3の長さ方向D1(押圧基部32の連なる方向)と、押圧基部32の長さ方向D2とがなす角度βは、20~70°が好ましく、30~60°がより好ましく、40~50°がより好ましい。
【0020】
換言すれば、第2押圧部3は、一定の直径を有する二本の棒状体を並列させた上で、二本の棒状体を螺旋状にねじり合わせてロープ体を形成し、このロープ体を長さ方向に平行な面でロープ体の径方向に略半分に切断することにより形成された切断体の表面形状を有している。
【0021】
第2押圧部3において、押圧基部32の突円弧状面31は、その長さ方向が第2押圧部3の長さ方向に斜行した状態に形成されていると共に、押圧基部32の突円弧状面31は、第2押圧部3の長さ方向に連なった状態に繰り返し形成されている。
【0022】
したがって、第2押圧部3の押圧基部32の突円弧状面31は、様々な方向に指向した状態に形成されており、第2押圧部3の押圧基部32の突円弧状面31によって、筋肉に様々な方向から押圧力を加えてマッサージ効果を効果的に付与することができる。なお、押圧基部32における互いに隣接する突円弧状面31同士は互いに密接している必要はなく、互いに隣接する突円弧状面31、31間に僅かな隙間が形成されていてもよい。
【0023】
第1押圧部2と第2押圧部3とを比較したとき、第1押圧部における上方への突出度合いが、第2押圧部3における上方への突出度合いよりも大きくなるように構成されている。本発明において、2個の押圧部を比較したとき、一方の押圧部における上方への突出度合いが、他方の押圧部における上方への突出度合いよりも大きいか否かは下記の通りに判断する。押圧部を上方から見たときに押圧部全体を概ね覆う程度の剛直な一定厚み(1mm)を有する平面長方形状の基準板Kを2枚用意すると共に、マッサージ具Aを水平面上に載置する。基準板Kを上方から見て押圧部を概ね覆うように且つ上面が水平となった状態とし、この状態を維持しながら基準板Kを押圧部の最も高い部分に当接させる。しかる後、基準板Kをその長さ方向にのみ傾けて(
図4において、左右方向にのみ傾けるが、紙面に対して直交する方向には傾けない)、基準板Kが押圧部上に載置した状態とする。このとき、基準板Kができるだけ水平状態を維持するように、押圧部上に基準板Kを載置する。上述の要領で、2個の押圧部のそれぞれに基準板Kを載置した状態において、2枚の基準板Kを水平方向に見たとき(
図4のように見たとき)、基準板Kの長さ方向において、一方の基準板Kにおける上面の全長の50%を超えた部分が他方の基準板Kにおける上面よりも上方に位置している場合、一方の基準板Kが載置されている押圧部は、他方の基準板Kが載置されている押圧部よりも上方への突出度合いが大きいとする。なお、2枚の基準板Kは、その長さを同一長さとする。2枚の基準板Kを比較するときは、2枚の基準板Kにおける対向する長さ方向の端縁同士を垂直面S上において合致させた状態とする。
【0024】
第1押圧部2及び第2押圧部3をこれらの押圧部の並列方向(
図3における上方又は下方、
図4のように見たとき)に見たとき、第1押圧部2を構成している全ての押圧基部22の上方における頂点22aが、第2押圧部3よりも上方に向かって突出していることが好ましい。
【0025】
腰痛の原因となる腸腰筋Cは、インナーマッスルと呼ばれ、体の内部に位置している。腸腰筋Cよりも外側(皮膚側)には、脚部の太股などを形成している筋肉(皮膚側筋肉)Eが存在し、皮膚側筋肉Eによって腸腰筋Cの大部分は隠れた状態となっている。一方、皮膚側筋肉E間には僅かな隙間が形成されており、この隙間を通じて腸腰筋Cを直接、マッサージすることができる。
【0026】
皮膚側筋肉E間に形成された隙間は、脚部のつけ根付近にある。上記マッサージ具Aは、第2押圧部3によって脚のつけ根近傍部を押圧し、皮膚側筋肉Eをマッサージすることによって、皮膚側筋肉Eの血行を改善してコリを軽減し、皮膚側筋肉Eの柔軟性を向上させている。
【0027】
そして、皮膚側筋肉Eを柔軟にすることによって、皮膚側筋肉E間に形成された隙間が広がり易い状態とし、この隙間を通じて、第2押圧部3よりも上方への突出度合いの大きい第1押圧部2を腸腰筋Cに押し当てることによって腸腰筋Cを直接、効果的にマッサージすることができ、腸腰筋Cの血行を改善してコリを軽減し、腰痛症状の緩和を図ることができる。
【0028】
マッサージ具Aの第1押圧部2及び第2押圧部3は、それらの表面形状がロープの表面形状の如く、突円弧状面21、31aが様々な方向に指向した状態に形成されていることから、皮膚側筋肉E及び腸腰筋Cを装着者の動きに連動させて第1押圧部2及び第2押圧部3によって効果的に様々な方向から押圧し、皮膚側筋肉E及び腸腰筋Cを効果的にマッサージして腰痛症状の緩和を図ることができる。
【0029】
図1に示したマッサージ具Aでは、第1押圧部2の押圧基部22の長さ方向と、第2押圧部3の押圧基部32の長さ方向とを同一方向とした場合を説明したが、第1押圧部2の押圧基部22の長さ方向と、第2押圧部3の押圧基部32の長さ方向とが交差する方向、例えば、
図3において、第1押圧部2(第2押圧部3)の押圧基部22(33)の長さ方向が左上から右下に向かう方向である一方、第2押圧部3(第1押圧部2)の押圧基部32(22)の長さ方向が左下から右上に向かう方向としてもよい。
【0030】
次に、上記マッサージ具Aの使用要領について説明する。マッサージ具Aを装着者の脚のつけ根部Hに配設、固定して用いられる。具体的には、
図5に示したように、マッサージ具Aをその第1押圧部2及び第2押圧部3が脚のつけ根部H側に対向した状態で第1押圧部2を脚のつけ根部H上に配設する。この時、マッサージ具Aの第1押圧部2の長さ方向D
1と、脚のつけ根部Hの長さ方向とが同じ方向となるようにし、マッサージ具Aの第1押圧部2が脚のつけ根部Hに沿った状態に配設する。このようにマッサージ具Aを脚のつけ根部H上に配設すると、第2押圧部3も自動的に脚のつけ根部H近傍部に配設される。即ち、マッサージ具Aの第2押圧部3は、その長さ方向を脚のつけ根部Hの長さ方向とした上で、脚のつけ根部H近傍部上に配設された状態となる。この状態で、帯状のバンド体などの固定具B(例えば、
図6に示したようなバンド体)を用意し、上述のように、マッサージ具Aを脚のつけ根部H上にあてがった状態で、マッサージ具Aの上から固定具Bを脚のつけ根部H及びその近傍部上に巻きつけることによって、マッサージ具Aを脚のつけ根部H及びその近傍部に配設、固定する。この状態において、マッサージ具Aの第1押圧部2及び第2押圧部3は、脚のつけ根部H及びその近傍部に若干の押圧力で押圧された状態となっている(
図7参照)。なお、マッサージ具Aは、脚のつけ根部H及びその近傍部に直接、あてがってもよいし、衣服などを介して脚のつけ根部H及びその近傍部にあてがってもよい。
【0031】
装着者が、マッサージ具Aを脚のつけ根部H及びその近傍部にあてがった状態で、歩行や、着座又は立ち上がるなどの日常生活を行なえばよい。装着者の脚が上下し又は左右に広げられると、脚のつけ根部Hもこれに同調して様々な方向に屈伸する。脚のつけ根部Hが曲がった状態となると、マッサージ具Aが脚のつけ根部H及びこの近傍部に押し付けられた状態となる一方、脚のつけ根部Hが伸ばされた状態となると、マッサージ具Aによる脚のつけ根部H及びこの近傍部への押圧は緩和される。
【0032】
そして、マッサージ具Aが脚のつけ根部Hに押しつけられた状態では、マッサージ具Aの第2押圧部3が皮膚側筋肉Eを押圧して皮膚側筋肉Eをマッサージし、皮膚側筋肉Eの血行を改善して皮膚側筋肉Eのコリを除去又は緩和し柔軟にする。皮膚側筋肉Eが柔軟になると、皮膚側筋肉E間に形成された隙間Mが広がりやすくなる。この状態において、マッサージ具Aにおける上方への突出度合いの大きな第1押圧部2が、皮膚側筋肉E間の隙間Mを通じて腸腰筋Cをマッサージし、腸腰筋Cの血行を改善して腸腰筋Cのコリを除去又は緩和し、腸腰筋Cを柔軟にして腰痛症状の緩和を図ることができる。
【0033】
上述の通り、装着者の日常生活における動作に基づいて脚のつけ根部Hは様々な方向に屈伸すると共に、マッサージ具Aの第1押圧部2及び第2押圧部3の突円弧状面21、31aが様々な方向に指向した状態に形成されているので、脚のつけ根部Hの動きによって、マッサージ具Aの第1押圧部2及び第2押圧部3の突円弧状面21、31が皮膚側筋肉E及び腸腰筋Cを様々な方向に押圧し、皮膚側筋肉E及び腸腰筋Cが効果的にマッサージされる。
【0034】
そして、マッサージ具Aの脚のつけ根部H及びその近傍部に対する押圧及びその緩和は、装着者の日常生活における動きに合わせて繰り返し行なわれるので、マッサージ具Aによる皮膚側筋肉E及び腸腰筋Cのマッサージ効果をより効果的に発現させることができる。
【0035】
このように、上記マッサージ具Aによれば、装着者がマッサージ具Aを脚のつけ根部Hに装着し、日常生活を送るだけで装着者に負担をかけることなく、マッサージ具Aによって腰痛の原因の一つなっている腸腰筋Cのコリを除去又は緩和して腰痛症状の緩和を効果的に行なうことができる。
【0036】
上記マッサージ具Aでは、第1押圧部2の両側に第2押圧部3、3が配設されたものを説明したが、
図8~10に示したように、第2押圧部3の両側(第1押圧部2とは反対側)に更に第3押圧部4、4を配設してもよい。なお、
図1のマッサージ具Aと同様の構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0037】
第3押圧部4は、その上方への突出度合いが第2押圧部3と同一又は小さく構成されていること以外は、第2押圧部3と同様の形状を有している。断面が略半円弧状であって且つ表面が平滑な円弧状面41に形成された畝部を突円弧状面41を上方(外側)にして上方に向かって突円弧状に湾曲変形することによって押圧基部42が形成されている。そして、複数個の押圧基部42がこの押圧基部42の長さ方向D1に対して斜行した方向(交差する方向)に連続的に連なって一体化することによって、第3押圧部4が形成されている。第3押圧部4の長さ方向D2(押圧基部42の連なる方向)と、押圧基部42の長さ方向D1とがなす角度γは、20~70°が好ましく、30~60°がより好ましく、40~50°がより好ましい。
【0038】
換言すれば、第3押圧部4は、一定の直径を有する二本の棒状体を並列させた上で、二本の棒状体を螺旋状にねじり合わせてロープ体を形成し、このロープ体を長さ方向に平行な面でロープ体の径方向に略半分に切断することにより形成された切断体の表面形状を有している。
【0039】
第3押圧部4において、押圧基部42の突円弧状面41は、その長さ方向D1が第3押圧部4の長さ方向D2に斜行した状態に形成されていると共に、押圧基部42の突円弧状面41は、第3押圧部4の長さ方向に連なった状態に繰り返し形成されている。
【0040】
したがって、第3押圧部4の押圧基部42の突円弧状面41は、様々な方向に指向した状態に形成されており、第3押圧部4の押圧基部32の突円弧状面41によって、筋肉に様々な方向から押圧力を加えてマッサージ効果を効果的に付与することができる。なお、押圧基部42における互いに隣接する突円弧状面41同士は互いに密接している必要はなく、互いに隣接する突円弧状面41、41間に僅かな隙間が形成されていてもよい。
【0041】
このように、第2押圧部3の両側に第3押圧部4が更に設けられていると、皮膚側筋肉Eの押圧をより十分に行なうことができ、皮膚側筋肉Eをマッサージによって更に効果的に柔軟にし、皮膚側筋肉E間に形成された隙間Mを通じて第1押圧部2によって腸腰筋Cをマッサージして腰痛症の緩和をより確実に行なうことができる。
【0042】
図8に示したマッサージ具Aでは、第1押圧部2の押圧基部22の長さ方向、第2押圧部3の押圧基部32の長さ方向、及び、第3押圧部5の押圧基部42の長さ方向を同一方向とした場合を説明したが、第1押圧部2の押圧基部22の長さ方向と、第2押圧部3の押圧基部32の長さ方向と、第3押圧部4の押圧基部42の長さ方向は同一方向である必要はない。第1押圧部2の押圧基部22の長さ方向、第2押圧部3の押圧基部32の長さ方向、及び、第3押圧部4の押圧基部42の長さ方向の何れかが他の押圧部の押圧基部の長さ方向に交差する方向であってもよい。
【0043】
上記マッサージ具Aでは、押圧部の形状をロープの表面形状とした場合を説明したがこれに限定されるものではなく、
図11及び
図12に示したように、第1押圧部2の押圧基部22及び第2押圧部3の押圧基部32(第3押圧部が設けられる場合には、第3押圧部の押圧基部)を半円球状としてもよい。そして、複数個の押圧基部22、32(第3押圧部が設けられる場合には、第3押圧部の押圧基部)がそれぞれ、直線状(直条)に配列することによって、第1押圧部2及び第2押圧部3(更に第3押圧部)が形成されている。なお、第1押圧部2の押圧基部22及び第2押圧部3の押圧基部32(第3押圧部が設けられる場合には、第3押圧部の押圧基部)は、柱状(例えば、円柱状、角柱状)又はその上端部を球面状とした形態などの柱体形状であってもよい。
図1と同様の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0044】
第1押圧部2は、その上方への突出度合いが第2押圧部3の上方への突出度合いよりも大きくなるように構成されている。
【0045】
このように、押圧基部42を半球状又は柱体形状に形成することによって、皮膚側筋肉E及び腸腰筋Cを高い押圧力でもってマッサージすることができ、腸腰筋Cの血行を改善して腰痛症の緩和を図ることができる。
【0046】
又、
図13及び
図14に示したように、第1押圧部2及び第2押圧部3(第3押圧部が設けられる場合は、第3押圧部)をそれぞれ、断面が半円形状で且つ直線状に延びる畝状に形成されていてもよい。
図13及び
図14では、第1押圧部2及び第2押圧部3(第3押圧部が設けられる場合は、第3押圧部)の表面は平滑面に形成されているが、マッサージ効果を向上させるために、第1押圧部2及び/又は第2押圧部3(第3押圧部が設けられる場合は必要に応じて第3押圧部)の表面に凹凸を形成してもよい。なお、
図1と同様の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
マッサージ具Aにおいて、第1押圧部2、第2押圧部3及び第3押圧部4は、
図1~13に記載された形態を互いに組み合わせて構成されていてもよい。
【0048】
又、上記マッサージ具において、第1押圧部2、第2押圧部3及び第3押圧部4の1個又は複数個、好ましくは全ての押圧部2~4に磁石を含有させてもよい。押圧部2~4に磁石を含有させることによって、皮膚側筋肉E及び腸腰筋Cのマッサージ効果を促進させて血行をより改善させて腰痛症の緩和をより効果的に図ることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
図1に示したマッサージ具Aを用意した。基板1は、幅3.8cm×長さ10cmの平面長方形状に形成されていた。第1押圧部2及び第2押圧部3、3の高さはそれぞれ、1.2cm、0.9cmであった。第1押圧部2を構成している押圧基部22の頂部における幅(長さ方向に直交する方向の寸法)は5cm、第2押圧部3を構成している押圧基部32の頂部における幅(長さ方向に直交する方向の寸法)は6.5cmであった。第1押圧部2の長さ方向D
1(押圧基部22の連なる方向)と、押圧基部22の長さ方向D
2とがなす角度αは45°であった。
【0051】
(大腰筋の筋硬度)
マッサージ具Aを装着する前の装着者の大腰筋の筋硬度を超音波ストレインエラストグラフィー(日立製作所社製 商品名「Noblus」)によって測定した。
【0052】
次に、
図5に示したように、マッサージ具Aをその第1押圧部2及び第2押圧部3が脚のつけ根部Hに対向した状態で第1押圧部2を脚のつけ根部H上に配設した。この時、マッサージ具Aの第1押圧部2の長さ方向D
1と、脚のつけ根部Hの長さ方向とが同じ方向となるようにし、マッサージ具Aの第1押圧部2が脚のつけ根部Hに沿った状態となるように配設した。マッサージ具Aの第2押圧部3も脚のつけ根部H近傍部に配設されていた。この状態で、
図6に示した帯状のバンド体を含む固定具Bを用意し、マッサージ具Aを脚のつけ根部H上にあてがった状態で、マッサージ具Aの上から固定具Bを脚のつけ根部H及びその近傍部上に巻きつけることによって、マッサージ具Aを脚のつけ根部H及びその近傍部に配設、固定した。この状態において、マッサージ具Aの第1押圧部2及び第2押圧部3が脚のつけ根部H及びその近傍部に若干押圧された状態となっていた。
【0053】
装着者は、脚のつけ根部にマッサージ具Aを装着した状態で日常生活と同様の動作を1.5時間行なった。しかる後、上述と同様の要領で、装着者の大腰筋の筋硬度を測定した。なお、筋硬度は、値が大きいほど筋肉が柔らかいことを示している。
【0054】
4名の装着者について上記評価を行い、マッサージ具Aの装着前後のそれぞれについて、4名の装着者の筋硬度の相加平均値を算出した。
【0055】
(前方からの姿勢角)
マッサージ具Aを装着する前の装着者について、仙骨及び胸椎12番における背骨に対する仙骨のなす角度Fをwave track センサ(アーカイブティップス社製)を用いて測定した。左右方向の角度Fが相違する場合は、大きい方の角度を採用した。
【0056】
大腰筋の筋硬度と同様の要領で装着者の脚のつけ根部にマッサージ具Aを装着した後、装着者がその場で左右10歩ずつ足踏みを行なった。しかる後、上述と同様の要領で角度Fを測定した。角度Fが小さい程、腸腰筋の柔軟性が改善し、背骨及び骨盤が正しい位置にあることを示している。
【0057】
(側方からの姿勢角)
マッサージ具Aを装着する前の装着者について、鉛直方向に対する骨盤の傾き角度Gをwave track センサ(アーカイブティップス社製)を用いて測定した。
【0058】
大腰筋の筋硬度と同様の要領で装着者の脚のつけ根部にマッサージ具Aを装着した後、装着者がその場で左右10歩ずつ足踏みを行なった。しかる後、上述と同様の要領で角度Gを測定した。角度Gが小さい程、腸腰筋の柔軟性が改善し、骨盤が正しい位置にあることを示している。
【0059】
(股上げ角度)
マッサージ具Aを装着する前の装着者がその場で左右7歩ずつ足踏みを行なった。この7回の足踏みにおいて、最も高く上がった時の太股の角度を測定した。
【0060】
大腰筋の筋硬度と同様の要領で装着者の脚のつけ根部にマッサージ具Aを装着した後、装着者がその場で左右7歩ずつ足踏みを行なった。この7回の足踏みにおいて、最も高く上がった時の太股の角度を測定した。
【0061】
【符号の説明】
【0062】
1 基板
2 第1押圧部
21、31、41 畝部
21、31a、41 突円弧状面
22、32、42 押圧基部
A マッサージ具
B 固定具