(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】マクロファージ活性剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20240515BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240515BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P43/00 111
A61P31/00
(21)【出願番号】P 2021004048
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2022-12-19
【微生物の受託番号】IPOD FERM BP-11439
(73)【特許権者】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】岡本 秀人
(72)【発明者】
【氏名】奥村 暢章
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/099883(WO,A1)
【文献】特表2009-533399(JP,A)
【文献】特表2003-510285(JP,A)
【文献】特開2015-223106(JP,A)
【文献】Archives of Medical Research,2014年,Vol.45,pp.359-365,doi: 10.1016/j.arcmed.2014.05.006
【文献】Journal of Leukocyte Biology,2000年,Vol.68, No.4,pp.503-510
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 36/00-36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・クンキーBPS402(受託番号FERM BP-11439
)を有効成分として含む、マクロファージ活性剤。
【請求項2】
マクロファージNO産生促進、及びマクロファージ貪食促進の少なくとも一方のための、請求項1に記載のマクロファージ活性剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロファージ活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
マクロファージは、細菌及びウイルスを直接取り込む貪食作用により、感染からの生体防御に寄与している細胞である。また、マクロファージ系の細胞は、一酸化窒素(NO)産生能を有するため、NOの産生量はマクロファージ活性の指標とされている。
【0003】
マクロファージを活性化させる方法が検討されている。例えば特許文献1には、コーヒー抽出物がマクロファージの増殖促進活性を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規なマクロファージ活性剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマクロファージ活性剤は、ラクトバチルス・クンキーBPS402(受託番号FERM BP-11439)、蜂蜜、並びにエキナセア及びその抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含む。
【0007】
上記マクロファージ活性剤は、マクロファージNO産生促進、及びマクロファージ貪食促進の少なくとも一方のためのものであってよい。
【0008】
上記マクロファージ活性剤は、ラクトバチルス・クンキーBPS402、及び蜂蜜からなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含んでいてよい。
【0009】
上記マクロファージ活性剤は、エキナセア又はその抽出物を有効成分として含む、マクロファージNO産生促進のためのものであってよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、新規なマクロファージ活性剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】BPS402における貪食率及び平均蛍光強度を示すグラフである。
【
図2】BPS402破砕物における貪食率及び平均蛍光強度を示すグラフである。
【
図3】百花蜂蜜における貪食率及び平均蛍光強度を示すグラフである。
【
図4】マヌカ蜂蜜における貪食率及び平均蛍光強度を示すグラフである。
【
図5】甘露蜂蜜における貪食率及び平均蛍光強度を示すグラフである。
【
図6】加熱アカシア蜂蜜における貪食率及び平均蛍光強度を示すグラフである。
【
図7】非加熱アカシア蜂蜜における貪食率及び平均蛍光強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、ラクトバチルス・クンキーBPS402、蜂蜜、並びにエキナセア及びその抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含む。本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、ラクトバチルス・クンキーBPS402、蜂蜜、並びにエキナセア及びその抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含むため、マクロファージを活性化させることができる。
【0014】
マクロファージの活性化とは、例えば、マクロファージによるNO産生の促進、マクロファージによる貪食の促進等の作用を含む。一酸化窒素は、微生物、ウイルス等に対する生体の防御作用に関与している。また、マクロファージはその貪食能により、細菌又はウイルスを直接取り込み、感染からの生体防御に寄与している。本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、マクロファージNO産生促進用、又はマクロファージ貪食促進用としても用いることが可能である。
【0015】
本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、M1マクロファージの活性化に特に有効である。すなわち本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、M1マクロファージ活性化用であってよい。M1マクロファージは、IFN-γ等のTh1タイプのサイトカインによって活性化(古典的活性化)されたものである。M1マクロファージは、TNFα、IL-6、IL-12等の炎症性サイトカイン、又は活性酸素種を産生し、Th1タイプの免疫応答を誘導するとともに、抗菌及び抗ウイルス活性、抗腫瘍効果を発揮し得る。
【0016】
マクロファージの機能に関する研究では、炎症を誘導させたマクロファージ、ウイルスを感作させたマクロファージ等のモデルを用いた研究がいくつかなされている。一方、本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、炎症の誘導及びウイルス感作のいずれもなされていない、健常な状態のマクロファージに対して活性効果を有する。したがって、本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、健常なヒト、例えばウイルスに感作していない、炎症を生じていないヒトにおいて有効であると考えられる。本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、例えば、ウイルス感染の予防、炎症の予防等に用いることができる。本実施形態に係るマクロファージ活性剤の投与対象者は、例えば健常者、より具体的には例えば、ウイルスに感作していない、及び/又は炎症を生じていない者であってよい。投与対象者は、ウイルス感染のリスクがある者、又は炎症発生のリスクがある者であってもよい。
【0017】
[BPS402]
本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、有効成分としてラクトバチルス・クンキー(Lactobacillus kunkeei)BPS402(以下単に「BPS402」と称する場合もある。)を含むことができる。BPS402は、2011年10月3日に、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(IPOD、住所:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566))に、受託番号FERM P-22177として寄託されており、入手可能である。なお、IPODは日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室(郵便番号292-0818)に移転されている。また、当該菌株は、現在国際寄託に移管されており、受託番号はFERM BP-11439である。
【0018】
有効成分としてのBPS402は、菌体そのものであってよく、菌体処理物であってもよい。菌体は、生菌体又は死菌体であってよい。菌体処理物は、菌に、例えば、加熱、ペースト化、乾燥(凍結乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥等)、凍結、溶菌、破砕、抽出等の処理がなされたものであってよい。破砕は、例えば超音波により行うことができる。処理は複数種を組み合わせて行ってもよい。菌体処理物は、菌体処理物に除タンパク処理を行った後の上清、又は菌体培養物及び発酵物の固形分を除去した上清であってもよい。BPS402としては、単離した菌体であってもよく、菌体の発酵物又は培養物であってもよい。
【0019】
BPS402の培養は、常法に従って行うことができる。培地は、当該菌が培養できるものであれば特に制限はなく、天然培地、合成培地、半合成培地等を用いることができる。培地としては、窒素源及び炭素源を含有するものを使用することができ、窒素源としては、肉エキス、ペプトン、カゼイン、酵母エキス、グルテン、大豆粉、大豆加水分解物、アミノ酸等が挙げられ、炭素源としては、グルコース、ラクトース、フラクトース、イノシトール、ソルビトール、水飴、澱粉、麹汁、フスマ、バカス、糖蜜等が挙げられる。その他、無機質(例えば、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、食塩、炭酸カルシウム、鉄、マンガン、モリブデン)、各種ビタミン類などを添加することができる。
【0020】
培養温度は、例えば4~45℃であってよく、25~40℃、28~37℃、30~33℃であってもよい。培養は、通気振とう又は通気撹拌して行ってもよい。培地のpHは、例えば4.0~9.0であってよく、6.0~8.0であることが好ましい。培養方法としては、例えば、MRS培地に菌体を植菌し、30℃で48時間培養することが挙げられる。
【0021】
マクロファージ活性剤がBPS402を有効成分として含む場合、マクロファージ活性剤は、例えば、BPS402を含む発酵製品、乳酸菌飲料、乳酸菌入り飲料等であってもよい。
【0022】
本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、BPS402の固形分量として、例えば体重60kgの成人に一日当たり1mg以上50mg以下の用量で用いることができ、3mg以上30mg以下の用量で用いることが好ましく、5mg以上15mg以下の用量で用いることがより好ましい。当該用量は、摂取する人の健康状態、投与方法及び他の剤との組み合わせ等の因子に応じて、上記範囲内で適宜設定することができる。
【0023】
マクロファージ活性剤中のBPS402の含有量は、剤全量に対して固形分で0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、又は10質量%以上であってよい。また、マクロファージ活性剤中のBPS402の含有量は、剤全量に対して固形分で10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.03質量%以下、又は0.01質量%以下であってよい。
【0024】
[蜂蜜]
本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、蜂蜜を有効成分として含むことができる。蜂蜜は、ミツバチが、植物の花蜜、樹液、植物に寄生する虫の分泌液等から集めた蜜を主原料として作り出したものである。蜂蜜は、例えば、マヌカ蜂蜜、アカシア蜂蜜、甘露蜂蜜、百花蜂蜜、クローバー蜂蜜、オレンジ蜂蜜、レンゲ蜂蜜、ローズマリー蜂蜜、ヒマワリ蜂蜜、菜の花蜂蜜、コーヒー蜂蜜等を用いることができる。蜂蜜は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。蜂蜜を採取するために利用されるミツバチの種類、及び蜂蜜の産地は特に限定されないが、例えば百花蜂蜜は日本産であってよい。
【0025】
蜂蜜は、ゴミ、蜂や巣のカス等の除去、ろ過、有機溶媒による抽出、分画などの精製処理、濃縮等の処理が行われたものであってもよい。
【0026】
蜂蜜は、加熱処理されたものであってよく、加熱処理されていないものであってもよい。蜂蜜を加熱処理する場合、加熱温度は例えば45℃超、50℃以上、60℃以上であってよく、70℃以下、65℃以下、又は60℃以下であってよい。
【0027】
本実施形態に係るマクロファージ活性剤には、蜂蜜の固形分量として、例えば体重60kgの成人に一日当たり1g以上50g以下の用量で用いることができ、2g以上40g以下の用量で用いることが好ましく、3g以上35g以下の用量で用いることがより好ましい。当該用量は、摂取する人の健康状態、投与方法及び他の剤との組み合わせ等の因子に応じて、上記範囲内で適宜設定することができる。
【0028】
マクロファージ活性剤中の蜂蜜含有量は、蜂蜜の固形分として、剤の全量に対して、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は100質量%であってよい。マクロファージ活性剤中の蜂蜜の含有量は、固形分として、剤の全量に対して、例えば、100質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下又は0.5質量%以下であってよい。
【0029】
(エキナセア)
本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、エキナセア又はその抽出物を有効成分として含むことができる。エキナセアは、例えば、エキナセア・プルプレア(Echinacea purpurea)、エキナセア・アングスティフォリア(Echinacea angustifolia)、エキナセア・パリダ(Echinacea pallida)、エキナセア・テネシーエンシス(Echinacea tennesseensis)、エキナセア・パラドクサ(Echinacea paradoxa)、エキナセア・アトロルーベンス(Echinacea atrorubens)、エキナセア・ラエビガタ(Echinacea laevigata)、エキナセア・サンギニア(Echinacea sanguinea)、エキナセア・セロティナ(Echinacea serotina)、又はエキナセア・シムラタ(Echinacea simulata)であってよい。
【0030】
エキナセアは、エキナセア植物体そのものであってもよく、植物体の乾燥物であってもよい。植物体のうち、用いる部位としては例えば、葉、花、茎等の地上部、根、又はこれらの混合物であってよい。乾燥物は、例えば破砕物、粉砕物であってもよい。乾燥方法は、自然乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等であってよい。有効成分は、これらエキナセアの抽出物であってもよい。抽出物としては、例えば水抽出物、熱水抽出物であってよい。抽出物は熱水抽出物であることが好ましい。植物体の乾燥物は、例えば摂取時に水抽出又は熱水抽出して摂取してもよい。抽出物は、抽出液に、濃縮、粉末化、造粒等の処理を更に施したものであってもよい。
【0031】
水抽出物の場合、抽出温度は0~40℃、10~35℃、又は15~30℃であってよい。熱水抽出物の場合、抽出温度は例えば80~100℃であってよく、85~95℃であってよい。抽出時間は例えば10分~3時間であってよく、30分~2時間であってよい。抽出物は、抽出後の残渣から更に抽出して得られたものであってもよい。エキナセア及びその抽出物は、市販されているものを用いてもよい。市販されているエキナセア及びその抽出物の具体例としては、例えば、エキナセア粒(株式会社山田養蜂場製)、エキナセア茶(株式会社山田養蜂場製)、エキナセア(株式会社DHC製)等が挙げられる。
【0032】
本実施形態に係るマクロファージ活性剤に用いられるエキナセア又はその抽出物は、体重60kgの成人に一日当たり150mg以上1000mg以下の用量で用いることができ、300mg以上800mg以下の用量で用いることが好ましく、450mg以上650mg以下の用量で用いることがより好ましい。当該用量は、摂取する人の健康状態、投与方法及び他の剤との組み合わせ等の因子に応じて、上記範囲内で適宜設定することができる。
【0033】
マクロファージ活性剤中のエキナセア又はその抽出物の含有量は、剤全量に対して固形分で60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってもよい。また、本実施形態に係る剤におけるエキナセア又はその抽出物の含有量は、剤全量に対して固形分で100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、又は70質量%以下であってもよい。
【0034】
本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、有効成分の1種を単独で含んでもよく、複数種を組み合わせて含んでもよい。
【0035】
本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、上述の有効成分に加えて、他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、薬学的に許容される成分(例えば、賦形剤、結合材、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤、抗酸化剤)、食品として許容される成分(例えば、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤)を挙げることができる。本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、コーヒー抽出物を含まないことが好ましい。
【0036】
本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、医薬品、医薬部外品、又は食品組成物であってよい。本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、医薬品、医薬部外品又は食品組成物そのものとして使用することができ、医薬品、医薬部外品又は食品組成物中の成分として使用することもできる。マクロファージ活性剤を一成分として含む医薬品、医薬部外品、又は食品組成物は、例えば、これら製品の製造工程における中間製品に、上記マクロファージ活性剤を添加することにより製造することができる。
【0037】
本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、固体、液体、ペースト等のいずれの形状であってもよく、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤等を含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液若しくは電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)等の剤形であってもよい。これらの各種製剤は、例えば、有効成分と、必要に応じて他の成分とを混合して上記剤形に成形することによって調製することができる。
【0038】
食品組成物として又は食品組成物の一成分として用いる場合、該食品組成物は、食品の3次機能、すなわち体調調節機能が強調されたものであることが好ましい。食品の3次機能が強調された製品としては、例えば、健康食品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品を挙げることができる。
【0039】
食品組成物としては例えば、コーヒー、ジュース及び茶飲料等の清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、並びに、日本酒、洋酒、果実酒及びハチミツ酒等の酒などの飲料;カスタードクリーム等のスプレッド;フルーツペースト等のペースト;チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ及びプリン等の洋菓子;大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ及び羊羹等の和菓子;アイスクリーム、アイスキャンデー及びシャーベット等の氷菓;カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等の調理済みの食品;ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料及びスープの素等の調味料などが挙げられる。
【0040】
本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、体内に摂取されることが好ましい。投与態様は、経口投与であってもよく、非経口投与であってもよい。本実施形態に係るマクロファージ活性剤は、一日一回投与されてもよく、一日二回、一日三回等、複数回に分けて投与されてもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
<試験例1:マクロファージ貪食能評価>
被験物質のマクロファージ活性化能について、貪食能を指標として評価した。概要としては、被験物質を含む培養液でマクロファージを1時間培養後、蛍光標識されたポリスチレンビーズを加え、2.5時間インキュベートした。細胞を回収し、フローサイトメーターによる解析に供試した。具体的には以下のとおりである。
【0043】
JCRB細胞バンクより購入したマウスマクロファージJ774.1細胞株を試験に用いた。J774.1細胞株はマクロファージ貪食試験に一般的に使用されている細胞株の一つである。
【0044】
陰性対照物質としては、被験物質の溶解に用いた培養液を用いた。陽性対照物質としては、Pantoea agglomeransより精製したリポ多糖(LPSp)を使用した。希釈操作は全てクリーンベンチ内にて無菌的に実施した。LPSpを注射用水に2.0mg/mLになるように溶解し、使用時まで4℃にて保存した。使用時にLPSp溶液を37℃で5分間加温した後、37℃で1分間超音波処理した。超音波処理後、5μLのLPSp液を995μLの培養液に加えてよく混ぜ、10μg/mLの溶液を調製した。該溶液を更に培養液にて希釈して試験に用いた。
【0045】
培養液としては、DMEM培地(#044-29765、富士フイルム和光純薬株式会社)500mL、非働化FBS55.5mL、及びペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(100×)5.5mLを混合したものを用いた。非働化FBSは、FBS(牛胎児血清、Cat No.SH3039603、Hyclone)を56℃で30分間加熱処理し、分注して-20℃で保存したものである。
【0046】
[被験物質]
被験物質としては、ラクトバチルス・クンキーBPS402、BPS402破砕物、エキナセア抽出物、日本産百花蜂蜜、マヌカ蜂蜜、甘露蜂蜜、加熱アカシア蜂蜜、及び非加熱アカシア蜂蜜を用いた。詳細は以下のとおりである。
ラクトバチルス・クンキーBPS402:生菌体を80℃、1分以上熱処理したものにデキストリンを加え、凍結乾燥させ粉末化したもの
ラクトバチルス・クンキーBPS402破砕物:上記粉末化したラクトバチルス・クンキーBPS402を更に破砕したもの
エキナセア抽出物:エキナセアの90℃熱水抽出物の乾燥粉末
加熱アカシア蜂蜜:アカシア蜂蜜を60℃で24時間加熱処理したもの
非加熱アカシア蜂蜜:上記加熱処理をしていないアカシア蜂蜜
【0047】
被験液の調製はクリーンベンチ内で、無菌的に行った。蜂蜜類は培養液に直接溶解し、所定濃度まで培養液で希釈した。BPS402及びエキナセアは、一旦水に溶解した後、所定濃度まで培養液で希釈した。
【0048】
[前培養]
J774.1細胞は、10%FBS、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンを含有するDMEM培地にて継代培養した。培養はT25培養フラスコを用いて行い、3日又は4日毎に1~2×105cells/mLで植え継いだ。培養は37℃に設定した5%CO2インキュベーター内で行った。
【0049】
[PE標識ポリスチレンビーズ懸濁液]
ポリスチレンビーズ(Fluoresbrite Polychromatic Red Microspheres 2.0μm、ポリサイエンス社)の2.5%水懸濁液(5.68×109個/mL)を用意した。ポリスチレンビーズ水懸濁を2.0mLマイクロチューブに140.8μL分注し、遠心(2000×g、5分間)を行い、上清を除いた。その後ビーズを沈殿として回収した。沈殿に培養液を2000μL加え、4×108個/mL(4×106個/10.0μL)のポリスチレンビーズ懸濁液を調製した。
【0050】
[マクロファージ貪食試験]
以下、1)~7)の試験操作はクリーンベンチ内で行った。
1)T25培養フラスコにて前培養したJ774.1細胞をピペッティグにより壁から剥がし、得られた細胞の懸濁液を15mLコニカルチューブに移した。チューブを室温で1000rpm(190×g)8分間遠心を行った。上清をデカンテーションで捨て、細胞をペレットとして回収した。タッピングにより細胞をほぐした後、培養液を10mL加え、室温で1000rpm(190×g)8分間遠心を行い、上清をデカンテーションで捨て、細胞をペレットとして回収した。細胞ペレットに培養液5mLを加え、ピペッティングにより細胞を均一に懸濁した。細胞懸濁液100μLを1.5mLマイクロチューブに移し、細胞数及び生存率を測定した。
【0051】
2)測定した細胞数に基づいて、1×106cells/mLの細胞懸濁液を調製した。得られた細胞懸濁液を200μLずつ48ウェルプレートの各ウェルに加えた。37℃、5%CO2インキュベーターで一晩培養した。
【0052】
3)前培養後、インキュベーターからプレートを取り出した。細胞を播種しているウェルからピペットで培養液を取り除いた。加温した培養液を200μL加え、培養液を取り除いた。続いて、被験液を200μL加えた。プレートを37℃、5%CO2インキュベーターで1時間培養を行った。
【0053】
4)4×106個のPE標識ポリスチレンビーズを含む培養液10.0μLを加えた後、37℃、5%CO2インキュベーター内で2.5時間培養した。
【0054】
5)ピペットでゆっくり上清を取り除き、加温したPBSを300μL加えた。ピペットでPBSを取り除き、加温したPBSを500μL加えた。この操作を3度繰り返した。
【0055】
6)ピペットでPBSを取り除き、300μLのフローサイトバッファー(0.5%BSA、2mM EDTA含有PBS)を加えた。
【0056】
7)ピペッティングにより細胞を剥がし、1.5mLチューブに細胞懸濁液を移した。チューブは氷上で保存した。
【0057】
8)回収した細胞懸濁液をフローサイトメーター(Gallios、ベックマンコールター)による解析に供した。20,000細胞を解析し、FL2のヒストグラムを作成し、貪食率及び平均蛍光強度(MFI)を求めた。検定としては、同プレートの陰性対照区(溶媒区)との2群間t検定(Student’s-t-test又はWelchのt-test)を行った。貪食率(ビーズを取り込んだ細胞の割合)は取り込まれたビーズ数毎(1~5個)に算出した。平均蛍光強度は、貪食した細胞が多く、かつ取り込まれたビーズ数が多いほど大きくなる。
【0058】
陰性対照の溶媒区との比較は、同じプレートの溶媒区の測定結果に対して行った。陽性対照物質としてLPSpを用いて試験を行ったところ、陰性対照区よりも有意に高い貪食率及び平均蛍光強度が認められた(図示せず)。
【0059】
マクロファージ貪食能試験の結果を
図1~7に示す。
図1~7の(a)は、マクロファージ貪食率を示すグラフである。
図1~7の(b)は、平均蛍光強度を示すグラフである。いずれの被験物質においても、陰性対照区と比較して貪食率及び平均蛍光強度が有意に上昇したことが確認された。また、エキナセア抽出物でも陰性対照区と比較して貪食率及び平均蛍光強度の有意な上昇が確認された(図示せず)。用いた被験物質について、マクロファージ貪食亢進作用があることが確認された。
【0060】
<試験例2:NO産生能評価>
被験物質のマクロファージ活性化能について、NO産生能を指標として評価した。概要としては、マウスマクロファージ系細胞であるRAW264.7細胞株を用いて、被験物質のNO産生量を測定した。具体的には以下のとおりである。
【0061】
RAW264.7マウスマクロファージ系細胞はATCCより購入した。RAW264.7細胞株は、マクロファージ活性化能評価(NO産生試験等)に一般的に使用されている細胞株の一つである。
【0062】
陰性対照物質及び陽性対照物質は試験例1と同様に調製したものを用いた。被験物質としては、ラクトバチルス・クンキーBPS402、BPS402破砕物、日本産百花蜂蜜、マヌカ蜂蜜、及びエキナセア(いずれも試験例1と同様に調製したもの)を用いた。培養液としては、RPMI1640培地(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)500mL、非働化FBS55.5mL、及びペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(100×)5.5mLを混合したものを用いた。
【0063】
[前培養]
RAW264.7細胞は、10%の牛胎児血清、100 U/mLペニシリン、及び100 μg/mLストレプトマイシンを含有するRPMI1640培地にて継代培養したものを用いた。培養はT25培養フラスコを用いて行い、3日又は4日毎に0.25×105cells/mLで植え継いだ。培養は37℃の5%CO2インキュベーター(以下、インキュベーター)内で行った。
【0064】
[細胞処理]
試験操作は全てクリーンベンチ内で行った。T25培養フラスコ14本にて前培養した細胞をピペッティングにより壁から剥がし、得られた細胞の懸濁液を50mLコニカルチューブに移した。チューブを室温で遠心分離し(1000rpm、5分間)、上清をデカンテーションで捨て、細胞を回収した。タッピングにより細胞をほぐした後、培養液5mLを加え、ピペッティングによって細胞を均一に懸濁した。11μLを別のチューブに移し、0.5%トリパンブルー11μLを添加した後、血液計算板に細胞懸濁液を移して細胞数及び生存率を測定した。生存率は99.6%であり、試験に使用可能な細胞の基準90%を超えていた。残液を試験に用いた。
【0065】
測定した細胞数に基づいて、残液に培養液を加えて希釈し1.6×106cells/mLになるよう細胞数を調製した。この細胞懸濁液を100μLずつ96well平底プレートの各ウェルに加えた。インキュベーターに移して、細胞がウェルの底に接着して伸展するまで3時間前培養を行った。
【0066】
3時間の前培養が終了した時点でプレートを取り出し、ウェルに100μLずつ2倍用量の被験液を加えた。各検体を添加後、24時間インキュベーター内で培養した。培養後、上清100μLを96穴平底プレートに回収し、NOアッセイに供した。
【0067】
[NOアッセイ]
NO産生能の指標として、亜硝酸濃度を測定した。検量線は200μMの亜硝酸ナトリウム水溶液を培養液で段階希釈し、検量線用のウェルに100μL移した。3%スルファニルアミド7.5%リン酸水溶液と0.15%ナフチルエチレンジアミン液とを1:2の比率で混合し、グリース試薬を用時調製した。グリース試薬をウェル当たり100μLずつ加え、10分間室温でインキュベートした後、主波長550nm、副波長688nmの吸光度を測定することにより、亜硝酸濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
【0069】
陽性対照物質を用いて試験を行ったところ、用量依存的なNO産生能が確認された。陰性対照物質として溶媒のみを用いた場合にはNO産生能は確認されなかった。NO産生能評価試験に用いた被験物質ではいずれも陰性対象物質に対して有意なNO産生能が確認された。