(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】ピコスコピックスケール/ナノスコピックスケールの回路パターンを作製する方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/68 20120101AFI20240515BHJP
G03C 1/00 20060101ALI20240515BHJP
G03C 1/035 20060101ALI20240515BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240515BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240515BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
G03F1/68
G03C1/00 A
G03C1/035 A
G03F7/004
G03F7/20 521
H01L21/30 569E
(21)【出願番号】P 2021037305
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2021-03-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-02
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521100357
【氏名又は名称】朗色林科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】方 可成
【合議体】
【審判長】秋田 将行
【審判官】松川 直樹
【審判官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-517785(JP,A)
【文献】特開2009-26933(JP,A)
【文献】特開2019-106305(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093245(WO,A1)
【文献】特開2013-58645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/20-7/24
G03F9/00-9/02
H01L21/027
H01L21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターンを作製する方法であって、
透明基板と前記透明基板の上に形成された第1の感光層とを含むマスター基板を提供するステップ(A)であって、前記第1の感光層が、複数の感光粒子を含み、前記第1の感光層の前記感光粒子が、第1の金属イオンを含有する第1の金属塩を含み、前記第1の金属イオンがクロムイオンを含む、ステップ(A)と、
前記第1の感光層を照射して、前記第1の感光層の所定のエリアの中にある前記第1の金属イオンを還元し、複数の微粒化された第1の金属粒子を形成するために、第1のエネルギービームを供給するステップ(B)であって、前記第1のエネルギービームが、1ピコメートルから200ナノメートルに及ぶ波長を有する、ステップ(B)と、
マスターマスクを取得するために第1の定着剤によって前記第1の感光層の還元されない感光粒子を除去するステップ(C)であって、前記微粒化された第1の金属粒子が、第1の所定のパターンを前記マスターマスクの上に形成する、ステップ(C)と、
半導体基板と前記半導体基板の上に形成された第2の感光層とを含むチップを提供するステップ(D)であって、前記第2の感光層が、複数の感光粒子を含み、前記第2の感光層の前記感光粒子が、第2の金属イオンを含有する第2の金属塩を含み、前記第2の金属イオンが、銀イオンまたはクロムイオンを含む、ステップ(D)と、
複合層を形成するために前記第2の感光層の上に前記マスターマスクを配置し、次いで前記複合層を照射して、前記マスターマスクの前記第1の所定のパターンで覆われない前記第2の感光層のエリアの中にある前記第2の金属イオンを還元し、複数の微粒化された第2の金属粒子を形成するために、第2のエネルギービームを供給するステップ(E)であって、前記第2のエネルギービームが、1ピコメートルから200ナノメートルに及ぶ波長を有する、ステップ(E)と、
前記回路パターンを取得するために第2の定着剤によって前記第2の感光層の還元されない感光粒子を除去するステップ(F)であって、前記回路パターンが、前記微粒化された第2の金属粒子によって形成された第2の所定のパターンを有し、前記第2の所定のパターンが、前記第1の所定のパターンの陰画であり、前記回路パターン内の線間隔が、1ピコメートルから100ナノメートルに及ぶ、ステップ(F)とを含
み、
前記第1のエネルギービームおよび前記第2のエネルギービームはそれぞれ、X線または0.1キロボルトから1000キロボルトに及ぶエネルギーを有するために電子加速器によって生成される電子ビームである、方法。
【請求項2】
前記第1のエネルギービームによって供給される総照射線量が、10キログレイから600キログレイに及ぶ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のエネルギービームによって供給される総照射線量が、10キログレイから600キログレイに及ぶ、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の定着剤が、チオ硫酸ナトリウムまたはチオ硫酸アンモニウムを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2の感光層のうちの少なくとも一方が、光増感剤をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の感光層の前記感光粒子が、0.1nmから10μmに及ぶ平均粒子サイズを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の金属塩が、二クロム酸ナトリウム、二クロム酸アンモニウム、またはそれらの組合せである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の金属塩が、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、二クロム酸ナトリウム、二クロム酸アンモニウム、またはそれらの組合せである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(C)が、
前記微粒化された第1の金属粒子を形成するために、前記第1のエネルギービームによって照射された前記第1の金属イオンを、第1の現像剤を用いて処理するステップ(C1)と、
前記マスターマスクを取得するために、前記第1の感光層の前記還元されない感光粒子を前記第1の定着剤によって除去するステップ(C2)とを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(F)が、
前記微粒化された第2の金属粒子を形成するために、前記第2のエネルギービームによって照射された前記第2の金属イオンを、第2の現像剤を用いて処理するステップ(F1)と、
前記回路パターンを取得するために、前記第2の感光層の前記還元されない感光粒子を、前記第2の定着剤によって除去するステップ(F2)とを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の現像剤が、ヒドロキノン、1-フェニル-3-ピラゾリジノン、4-メチルアミノフェノール硫酸塩、または任意のそれらの組合せを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の現像剤が、pH調節剤をさらに含む、請求項9または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路パターンを作製する方法に関し、より詳細には、集積回路のための微細回路パターンを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほぼ60年の間、半導体集積回路(IC)から成るチップの発明は、グローバルな技術開発を飛躍的に推進し、人類の生活を大きく変化させた。小型、軽量で高性能の電子および電気製品に対する需要が増大するにつれて、ICの機能密度は全体的に増大させる必要がある一方で、ICの幾何学的サイズは全体的に減少させる必要がある。そのようなスケールダウンプロセスは、ICの製造プロセスの複雑さを増加させるばかりでなく、プロセスの困難さおよび総合的製造コストを大幅に増加させる。
【0003】
リソグラフィ機械は、チップを製造するための主要な機器であった。たとえば、従来の主たる光リソグラフィは、193nmの波長を有するフッ化アルゴンレーザ(ArFレーザ)を使用し、それは、45nmから7nmまでのフィーチャサイズを有するICチップ製造をサポートすることができる。しかしながら、従来の光リソグラフィは、その技術的および経済的限界に近づいており、ArFレーザは、5nmなど、7nm未満のフィーチャサイズを有するICチップ製造をサポートすることができない。
【0004】
極紫外線(EUV)リソグラフィは、救世主技術(Savior technology)と見なされる。なぜならば、EUVは、ムーアの法則を少なくとも10年間延長させ得る13.5nmの波長を有する光を提供することができるからである。しかしながら、EUVが半導体製造のための大量生産に実際に適用されるとき、無数の問題が克服される必要がある。最も困難な問題は、十分な強度を有する安定した光源をいかにして生成するかであり、加えて、EUVリソグラフィは、環境清浄度に対する厳格な基準を要求する。さらに、EUVリソグラフィは高価であり、多大な量の電力を消費する。したがって、IC製造コストは急激に上がることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回路パターンを形成する従来製造プロセスが技術的欠点を有することを考慮して、本開示の目的は、簡潔性および費用効果性の利点を有し、それにより大量生産に有益であり、商業的な実施に対して高い可能性を有する、回路パターンを作製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するために、本開示は、ステップ(A)~(F)を含む、回路パターンを作製する方法を提供する。ステップの中で、マスターマスクがステップ(A)~(C)において作成され、次いで、前述のステップから取得されたマスターマスクは、チップの上に回路パターンを作製するために使用される。ステップ(A)では、マスター基板が提供される。マスター基板は、透明基板と透明基板の上に形成された第1の感光層とを含み、第1の感光層は、複数の感光粒子を含み、第1の感光層の感光粒子は、第1の金属イオンを含有する第1の金属塩を含み、第1の金属イオンは、銀イオンまたはクロムイオンを含む。ステップ(B)では、第1のエネルギービームが、第1の感光層を照射して、第1の感光層の所定のエリアの中にある第1の金属イオンを還元し、複数の微粒化された(atomized)第1の金属粒子を形成するために供給され、第1のエネルギービームは、1ピコメートル(pm)から200ナノメートル(nm)に及ぶ波長を有する。ステップ(C)では、第1の感光層の還元されない感光粒子が、マスターマスクを取得するために第1の定着剤によって除去され、微粒化された第1の金属粒子は、第1の所定のパターンをマスターマスクの上に形成する。ステップ(D)では、チップが提供される。チップは、半導体基板と半導体基板の上に形成された第2の感光層とを含み、第2の感光層は、複数の感光粒子を含み、第2の感光層の感光粒子は、第2の金属イオンを含有する第2の金属塩を含み、第2の金属イオンは、銀イオンまたはクロムイオンを含む。ステップ(E)では、マスターマスクは、複合層を形成するために第2の感光層の上に配置され、次いで第2のエネルギービームが、複合層を照射して、マスターマスクの第1の所定のパターンで覆われない第2の感光層のエリアの中にある第2の金属イオンを還元し、複数の微粒化された第2の金属粒子を形成するために供給され、第2のエネルギービームは、1pmから200nmに及ぶ波長を有する。ステップ(F)では、第2の感光層の還元されない感光粒子が、回路パターンを取得するために第2の定着剤によって除去される。回路パターンは、微粒化された第2の金属粒子によって形成された第2の所定のパターンを有し、第2の所定のパターンは、第1の所定のパターンの陰画であり、回路パターン内の線間隔は、1pmから100nmに及ぶ。
【0008】
本開示によれば、ピコスコピックスケールからナノスコピックスケールにおける波長を有する第1のエネルギービームのエネルギーを吸収することによって、マスター基板の所定のエリアに位置する複数の感光粒子が還元されて、複数の微粒化された第1の金属粒子を形成する。次いで、還元されない感光粒子(すなわち、還元反応を受けるために第1のエネルギービームによって照射されることのない、所定のエリアに位置しないそれらの感光粒子)を除去するための第1の定着ステップを介して、取得されたマスターマスクは、微粒化された第1の金属粒子によって配列された第1の所定のパターンを有することになる。その後、マスターマスクは、感光層を含むチップの上に配置され、マスターマスクは、フォトマスクに等しい機能を実行する。それゆえ、マスターマスクの第1の所定のパターンで覆われないエリアの中の感光粒子は、還元されるべき第2のエネルギービームのエネルギーを吸収して、複数の微粒化された第2の金属粒子を形成することができる。次いで、還元されない感光粒子は、第2の定着ステップを介して除去される。マスターマスクの第1の所定のパターンで覆われた第2の感光層のエリアの部分は、第2のエネルギービームのエネルギーを吸収することができないので、前述のエリアの中の感光粒子は、第2の定着ステップにおいて除去されて、第2の所定のパターンが最終的に取得されることになり、すなわち、第2の所定のパターンは、半導体基板の上に堆積された微粒化された第2の金属粒子によって形成されたパターンである。第2の所定のパターンは、マスターマスクの第1の所定のパターンの陰画である。回路パターン内の線間隔は、1pmから100nmに及ぶ。第2の金属粒子の材料は、金属銀または金属クロムであるので、それらの両方は良好な電気伝導性を有し、回路パターンは電気伝導の機能を提供することができる。
【0009】
本開示によれば、第1のエネルギービームと第2のエネルギービームのそれぞれは、ピコスコピックスケールからナノスコピックスケールにおける波長を有するので、光源の波長と従来の製造プロセスにおけるフォトマスクの線間隔との間でサイズの類似によって生じる干渉および回折の現象は、フォトリソグラフィ技術が既存の製造プロセスにおいて適用されるとき、回避され得る。その上、高価なEUVリソグラフィは、本開示においてもはや不要であり、本開示は、より微細な線を用いてICパターンを作製することができ、それにより驚くべき発展の可能性を提示する。
【0010】
好ましくは、第1のエネルギービームは、コンピュータシステムなどの制御構成要素に接続され得る。それゆえ、制御構成要素は、所望のICパターンを伝統的なフォトマスクを用いずに第1の感光層の上に直接描くために、第1のエネルギービームを動作させ得る。すなわち、第1の感光層の上に描かれた所望のICパターンは、ステップ(B)の所定のエリアである。金属スパッタリング、フォトレジストコーティング、eビームリソグラフィ、化学現像、エッチングおよびフォトレジスト剥離を含む一連の複雑なステップによって順次作成される必要がある伝統的なフォトマスクと比較して、本開示のステップ(A)~(C)においてマスターマスクを作製するためのプロセスはより単純であり、それにより、パターン設計からIC回路パターン製造が完了するまでに必要な時間は、顕著に短縮される。
【0011】
本開示によれば、第1のエネルギービームおよび第2のエネルギービームは、別々に、限定はしないが、電子ビーム、X線、またはEUVであり得る。特定の実施形態では、第1のエネルギービームおよび第2のエネルギービームは、同じ波長を有する。特定の実施形態では、第1のエネルギービームおよび第2のエネルギービームは、それぞれ、限定はしないが、0.1キロボルト(kV)から1000kVに及ぶエネルギーを有するために電子加速器によって生成される電子ビームであり得る。他の例に対して、第1のエネルギービームおよび/または第2のエネルギービームは、限定はしないが、193nmの波長を有するArFレーザ、157nmの波長を有する分子状ふっ素(F2)エキシマレーザ、13.5nmの波長を有するEUVレーザ、または0.01nm~10nmの波長を有するX線であり得る。
【0012】
特定の実施形態では、ステップ(B)において、第1のエネルギービームは、第1の感光層の感光粒子の中の第1の金属イオンを還元して複数の微粒化された第1の金属粒子を形成するために、10キログレイ(kGy)から600kGyに及ぶ総照射線量を供給し得る。特定の実施形態では、ステップ(E)において、第2のエネルギービームは、第1の所定のパターンで覆われていない第2の感光層の中のエリアに位置するそれらの感光粒子の中の第2の金属イオンを還元して、複数の微粒化された第2の金属粒子を形成するために、10kGyから600kGyに及ぶ総照射線量を供給し得る。
【0013】
好ましくは、ステップ(B)および(E)は、別々に、10-4パスカル(Pa)から10-9Paの真空度を有する環境の中で遂行される。
【0014】
好ましくは、第1の感光層は、限定はしないが、1nm超と150nm以下との間の範囲内の平均厚さを有する。具体的には、第1の感光層は、1.5nm、2.0nm、5.0nm、7.0nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nmまたは130nmの平均厚さを有し得る。好ましくは、第2の感光層は、限定はしないが、1nm超と150nm以下との間の範囲内の平均厚さを有する。具体的には、第2の感光層は、1.5nm、2.0nm、5.0nm、7.0nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nmまたは130nmの平均厚さを有し得る。
【0015】
好ましくは、第1の感光層の感光粒子は、0.1nmから10μmに及ぶ平均粒子サイズを有する。より好ましくは、第1の感光層の感光粒子は、0.1nmから100nmに及ぶ平均粒子サイズを有する。さらにより好ましくは、第1の感光層の感光粒子は、0.1nmから10nmに及ぶ平均粒子サイズを有する。好ましくは、第2の感光層の感光粒子は、0.1nmから10μmに及ぶ平均粒子サイズを有する。より好ましくは、第2の感光層の感光粒子は、0.1nmから100nmに及ぶ平均粒子サイズを有する。さらにより好ましくは、第2の感光層の感光粒子は、0.1nmから10nmに及ぶ平均粒子サイズを有する。
【0016】
本開示によれば、第1の感光層の第1の金属塩および第2の感光層の第2の金属塩は、同じまたは異なる種類の材料で作られ得る。好ましくは、第1の金属塩は、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)、ヨウ化銀(AgI)、二クロム酸ナトリウム(Na2Cr2O7)、二クロム酸アンモニウム((NH4)2Cr2O7)、またはそれらの組合せであり得る。好ましくは、第2の金属塩は、AgCl、AgBr、AgI、Na2Cr2O7、(NH4)2Cr2O7、またはそれらの組合せであり得る。好ましくは、第1および第2の感光層の感光粒子は、同じ種類の材料で作られる。好ましくは、第1の感光層の第1の金属塩と第2の感光層の第2の金属塩の両方はAgBrである。
【0017】
本開示によれば、第2のエネルギービームが、透明基板を直接通過することができる限り、透明基板の材料に特別な制限はない。好ましくは、透明基板は、限定はしないが、光学ガラスで作られる。特別には、透明基板が、ランタン重フリントガラスで作られるとき、透明基板は、高屈折率、低分散、高剛性、および高耐摩耗性の利点を有し得る。
【0018】
本開示によれば、半導体基板の材料は、シリコン含有材料または炭素含有材料を含み得る。たとえば、炭素含有材料は、限定はしないが、グラフェンであり得る。
【0019】
特定の実施形態では、第1および第2の感光層のうちの少なくとも一方は、光増感剤をさらに含む。たとえば、光増感剤は、限定はしないが、チオ硫酸塩および硫化銀のナノ粒子など、アルデヒドまたは含硫物質を含み得る。光増感剤を追加することによって、いくつかの感光中心が、感光粒子の結晶表面上に形成され、したがって、金属イオンの感度のレベルが強化されて還元反応が加速されることになる。
【0020】
特定の実施形態では、ステップ(C)は、ステップ(C1)および(C2)を含み得る。ステップ(C1)において、感光粒子の中で、第1のエネルギービームによって照射されたそれらの第1の金属イオンは、それらの還元を改善して微粒化された第1の金属粒子を形成するために、第1の現像剤を用いて処理され得る。ステップ(C2)において、第1の感光層の還元されない感光粒子(すなわち、実質的に所定のエリアに位置しない第1の感光層のそれらの感光粒子)は、マスターマスクを取得するために第1の定着剤によって除去される。
【0021】
特定の実施形態では、ステップ(F)は、ステップ(F1)および(F2)を含み得る。ステップ(F1)において、感光粒子の中で、第2のエネルギービームによって照射されたそれらの第2の金属イオンは、それらの還元を改善して微粒化された第2の金属粒子を形成するために、第2の現像剤を用いて処理され得る。ステップ(F2)では、第2の感光層の還元されない感光粒子が、回路パターンを取得するために第2の定着剤によって除去される。
【0022】
本開示によれば、現像剤は還元剤である。それゆえ、第1および第2の現像剤を使用することによって、第1または第2のエネルギービームによって照射された感光粒子は、より速くてより完全な還元反応を受けて、金属銀または金属クロムになる。好ましくは、ステップ(C1)の持続時間および/またはステップ(F1)の持続時間は、0.1分(min)から15minに及び、より好ましくは、ステップ(C1)の持続時間および/またはステップ(F1)の持続時間は、1minから10minに及び得る。
【0023】
好ましくは、ステップ(C1)および/またはステップ(F1)は、15℃から28℃に及ぶ温度において行われ得る。
【0024】
好ましくは、第1の現像剤は、ヒドロキノン、1-フェニル-3-ピラゾリジノン(フェニドンとも呼ばれる)、4-メチルアミノフェノール硫酸塩(メトールとも呼ばれる)、または任意のそれらの組合せを含み得る。好ましくは、第2の現像剤は、ヒドロキノン、1-フェニル-3-ピラゾリジノン、4-メチルアミノフェノール硫酸塩、または任意のそれらの組合せを含み得る。本開示に対して、第1および第2の現像剤は、同じであっても異なってもよい。好ましくは、第1および第2の現像剤は、同じである。
【0025】
好ましくは、第1の現像剤は、pH調節剤をさらに含み得る。好ましくは、第2の現像剤は、pH調節剤をさらに含み得る。pH調節剤を追加することによって、ステップ(C1)および/またはステップ(F1)は、基本環境において別々に行われ得る。好ましくは、基本環境は、8.5から10.5に及ぶpH値を有し得る。
【0026】
好ましくは、ステップ(C1)と(C2)との間で、方法は、残存する第1の現像剤が、第1の定着剤の後続の働きに影響を及ぼすことを防止するために、リンスステップを追加し得る。前述のリンスステップにおいて、第1の現像剤を用いて処理された第1の感光層の上に残存する第1の現像剤を希釈または中和するために、流れる水または弱酸性水溶液が、それぞれ使用される。同様に、ステップ(F1)と(F2)との間で、方法は、残存する第2の現像剤が、第2の定着剤の後続の働きに影響を及ぼすことを防止するために、リンスステップを追加し得る。前述のリンスステップにおいて、第2の現像剤を用いて処理された第2の感光層の上に残存する第2の現像剤を希釈または中和するために、流れる水または弱酸性水溶液が、それぞれ使用される。好ましくは、リンスステップの後に、乾燥ステップが続き得る。
【0027】
本開示によれば、現像ステップの後に金属粒子によって形成されたパターンを安定させるために、定着剤が、還元されない感光粒子(すなわち、曝露されない感光粒子)を溶解し、次いで除去するために使用される。好ましくは、ステップ(C2)における第1の定着剤の反応時間および/またはステップ(F2)における第2の定着剤の反応時間は、限定はしないが、1minから5minに及び得る。
【0028】
好ましくは、ステップ(C2)および/またはステップ(F2)は、4から8に及ぶpH値を有し得る。
【0029】
好ましくは、第1の定着剤は、チオ硫酸ナトリウム(「ハイポ」としても知られている)またはチオ硫酸アンモニウムを含み得る。好ましくは、第2の定着剤は、チオ硫酸ナトリウムまたはチオ硫酸アンモニウムを含み得る。
【0030】
好ましくは、第1の定着剤がステップ(C2)において働くことを停止した後、方法は、残存する第1の定着剤を除去して、マスターマスクの第1の所定のパターンが第1の定着剤によって腐食されるのを防止するために、リンスステップを追加し得る。同様に、好ましくは、第2の定着剤がステップ(F2)において働くことを停止した後、方法は、残存する第2の定着剤を除去して、取得された回路パターンの第2の所定のパターンが第2の定着剤によって腐食されるのを防止するために、リンスステップを追加し得る。好ましくは、リンスステップの後に、乾燥ステップが続き得る。
【0031】
本開示によれば、マスターマスクを第2の感光層の上に配置する方法に対して、特別な制限はない。好ましくは、マスターマスクは、第2の感光層の上に直接積み重ねられ得る。より好ましくは、マスターマスクは、第1の所定のパターンが上を向くようにおかれてよく、すなわち、マスターマスクの透明基板がチップに接触して、第1の所定のパターンはチップに接触しないことになる。したがって、マスターマスクの第1の所定のパターンは、それが容易に損傷されないので、再使用することができる。
【0032】
本開示によれば、ステップ(F)においてパターニングした後、回路パターンを有するチップが取得され、本開示の回路パターンを作製する方法のステップ(D)において別の半導体基板として使用され得る。
【0033】
本開示の他の目的、利点、および新規の特徴は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明からより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】本開示による、回路パターンを作製する方法を示す概略流れ図である。
【
図1B】本開示による、回路パターンを作製する方法を示す概略流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下において、当業者は、以下の例から、本開示の利点および効果を容易に実現することができる。それゆえ、本明細書で提案する記述は、説明のための単なる望ましい例に過ぎず、本開示の範囲を限定することは意図されていないことを理解されたい。様々な修正形態および変更形態が、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示を実行または適用するために作られ得る。
【実施例1】
【0036】
ナノスコピックスケールにおいて回路パターンを作製する方法
【0037】
マスターマスクを準備すること
最初に、マスター基板が提供された。マスター基板は、透明基板と透明基板の上に形成された第1の感光層とを含み、第1の感光層は、複数の感光粒子を含み、第1の感光層の感光粒子は、銀イオンを含有する第1の金属塩としてAgBr粒子を含んでいた。第1の感光層は、約70nmの平均厚さを有し、第1の感光層のAgBr粒子の平均粒子サイズは、約50nmであった。
【0038】
次いで、10-4Paの真空度を有する環境のもとで、コンピュータシステムと接続している第1のエネルギービームが供給された。コンピュータシステムは、第1のエネルギービームの放射を動作させ、それにより、第1のエネルギービームは、所望のICパターンの陰画を第1の感光層の上に直接描くことができた。したがって、所望のICパターンの陰画と一致する第1の感光層のエリアの中のAgBr粒子は、第1のエネルギービームのエネルギーを吸収することによって還元されて、黒い金属銀粒子を形成することになり、第1のエネルギービームは、193nmの波長を有するArFレーザであった。
【0039】
続いて、第1の現像剤が、18℃の温度において第1の感光層に接触し、第1のエネルギービームによって照射されたAgBr粒子の銀イオンは、完全に還元されて、第1の感光層の中に銀粒子を形成した。第1の現像剤は、1-フェニル-3-ピラゾリジノンおよびpH調節剤を含んだ。
【0040】
次に、流れる2回蒸留された水(ddH2O)が、第1の現像剤を用いて処理された第1の感光層を注意深くリンスするために使用され、次いで、第1の定着剤が、第1の感光層の中の還元されないAgBr粒子を除去するために使用され、第1の定着剤はチオ硫酸ナトリウムであった。その後、流れるddH2Oは、第1の定着剤を用いて処理された第1の感光層を注意深くリンスするために使用され、このリンスステップは、3回繰り返され、次いで乾燥ステップが続き、最後にマスターマスクが取得された。マスターマスクは、銀粒子によって形成された第1の所定のパターンを有し、第1の所定のパターンは、所望のICパターンの陰画であった。
【0041】
ナノスコピックスケールにおいて回路パターンを準備すること
最初に、チップが提供された。チップは、シリコン基板とシリコン基板の上に形成された第2の感光層とを含み、第2の感光層は、複数の感光粒子を含み、第2の感光層の感光粒子は、銀イオンを含有する第2の金属塩としてAgBr粒子を含んでいた。第2の感光層は、約70nmの平均厚さを有し、第2の感光層のAgBr粒子の平均粒子サイズは、第1の感光層のAgBr粒子の平均粒子サイズと同じであった。
【0042】
次いで、10-4Paの同じ真空度を有する環境のもとで、前述のマスターマスクは、第2の感光層の上に直接積み重ねられて、複合層を形成した。次いで、コンピュータシステムと接続している第2のエネルギービームが、複合層を照射するために供給された。マスターマスクの第1の所定のパターンで覆われなかった第2の感光層のエリアの中のAgBr粒子の銀イオンは、第2のエネルギービームのエネルギーを吸収することによって還元されて、黒い金属銀粒子を形成し、第2のエネルギービームは、193nmの波長を有するArFレーザであった。
【0043】
続いて、第2の現像剤が18℃の温度において第2の感光層に接触し、第2のエネルギービームによって照射されたAgBr粒子の銀イオンは、完全に還元されて、第2の感光層の中に銀粒子を形成した。第2の現像剤は、1-フェニル-3-ピラゾリジノンおよびpH調節剤を含んだ。
【0044】
次に、流れるddH2Oが、第2の現像剤を用いて処理された第2の感光層を注意深くリンスするために使用され、次いで、第2の定着剤が、第2の感光層の中の還元されないAgBr粒子を除去するために使用され、第2の定着剤はチオ硫酸ナトリウムであった。その後、流れるddH2Oは、第2の定着剤を用いて処理された第2の感光層を注意深くリンスするために使用され、このリンスステップは、3回繰り返され、次いで乾燥ステップが続き、最後に第2の所定のパターンを有する回路パターンが取得された。回路パターンの第2の所定のパターンは、マスターマスクの第1の所定のパターンの陰画であり、回路パターンの中の第2の所定のパターンの線間の間隔(「線間隔」とも呼ばれる)は、マスターマスクの銀粒子によって形成された線の位置によって決定された。すなわち、回路パターンの第2の所定のパターンは、所望のICパターンであり、回路パターンの線間隔は、ナノスコピックスケールにおけるものであった。
【実施例2】
【0045】
ピコスコピックスケールにおいて回路パターンを作製する方法
【0046】
マスターマスクを準備すること
最初に、マスター基板が提供された。マスター基板は、透明基板と透明基板の上に形成された第1の感光層とを含み、第1の感光層は、複数の感光粒子を含み、第1の感光層の感光粒子は、銀イオンを含有する第1の金属塩としてAgBr粒子を含んでいた。第1の感光層は、約50nmの平均厚さを有し、第1の感光層のAgBr粒子の平均粒子サイズは、約5nmであった。
【0047】
次いで、10-7Paの真空度を有する環境のもとで、コンピュータシステムと接続している第1のエネルギービームが供給された。コンピュータシステムは、第1のエネルギービームの放射を動作させ、それにより、第1のエネルギービームは、所望のICパターンの陰画を第1の感光層の上に直接描くことができた。したがって、所望のICパターンの陰画と一致する第1の感光層のエリアの中のAgBr粒子は、第1のエネルギービームのエネルギーを吸収することによって還元されて、黒い金属銀粒子を形成することになり、第1のエネルギービームは、0.1nmの波長を有するX線であった。
【0048】
続いて、第1の現像剤が18℃の温度において第1の感光層に接触し、第1のエネルギービームによって照射されたAgBr粒子の銀イオンは、完全に還元されて、第1の感光層の中に複数の微粒化された銀粒子を形成した。第1の現像剤は、1-フェニル-3-ピラゾリジノンおよびpH調節剤を含んだ。
【0049】
次に、流れるddH2Oが、第1の現像剤を用いて処理された第1の感光層を注意深くリンスするために使用され、次いで、第1の定着剤が、第1の感光層の中の還元されないAgBr粒子を除去するために使用され、第1の定着剤はチオ硫酸ナトリウムであった。その後、流れるddH2Oは、第1の定着剤を用いて処理された第1の感光層を注意深くリンスするために使用され、このリンスステップは、3回繰り返され、次いで乾燥ステップが続き、最後に第1の所定のパターンを有するマスターマスクが取得された。マスターマスクにおいて、微粒化された銀粒子が、所望のICパターンの陰画である第1の所定のパターンを形成した。
【0050】
ピコスコピックスケールにおいて回路パターンを準備すること
最初に、チップが提供された。チップは、シリコン基板とシリコン基板の上に形成された第2の感光層とを含み、第2の感光層は、複数の感光粒子を含み、第2の感光層の感光粒子は、銀イオンを含有する第2の金属塩としてAgBr粒子を含んでいた。第2の感光層は、約50nmの平均厚さを有し、第2の感光層のAgBr粒子の平均粒子サイズは、第1の感光層のAgBr粒子の平均粒子サイズと同じであった。
【0051】
次いで、同じ10-7Paの真空度を有する環境のもとで、前述のマスターマスクは、第2の感光層の上に直接積み重ねられて、複合層を形成した。次いで、コンピュータシステムと接続している第2のエネルギービームが、複合層を照射するために供給された。マスターマスクの第1の所定のパターンで覆われなかった第2の感光層のエリアの中のAgBr粒子の銀イオンは、第2のエネルギービームのエネルギーを吸収することによって還元されて、黒い金属銀粒子を形成し、第2のエネルギービームは、0.1nmの波長を有するX線であった。
【0052】
続いて、第2の現像剤が18℃の温度において第2の感光層に接触し、第2のエネルギービームによって照射されたAgBr粒子の銀イオンは、完全に還元されて、第2の感光層の中に微粒化された銀粒子を形成した。第2の現像剤は、1-フェニル-3-ピラゾリジノンおよびpH調節剤を含んだ。
【0053】
次に、流れるddH2Oが、第2の現像剤を用いて処理された第2の感光層を注意深くリンスするために使用され、次いで、第2の定着剤が、第2の感光層の中の還元されないAgBr粒子を除去するために使用され、第2の定着剤はチオ硫酸ナトリウムであった。その後、流れるddH2Oは、第2の定着剤を用いて処理された第2の感光層を注意深くリンスするために使用され、このリンスステップは、3回繰り返され、次いで乾燥ステップが続き、最後に第2の所定のパターンを有する回路パターンが取得された。回路パターンの第2の所定のパターンは、マスターマスクの第1の所定のパターンの陰画であり、回路パターンの中の第2の所定のパターンの線間隔は、マスターマスクの微粒化された銀粒子によって形成された線の位置を示した。すなわち、回路パターンの第2の所定のパターンは、所望のICパターンであり、線間隔は、ピコスコピックスケールにおけるものであった。
【0054】
実施例1および2において開示された回路パターンを作製する方法から、異なる寸法スケールにおける様々な線間隔を有する回路パターンは、異なる波長を有する任意のエネルギービームを、異なる粒子サイズを有する任意の感光粒子とともに採用することによって、本開示において取得され得ることが示される。それゆえ、本開示は、様々なサイズスケールにおける回路パターンを、簡単、広範に適用可能でかつ効果的な方法で作製するために適用され得る。その結果、本開示は、様々な電子製品の製造に適用されることがより容易であり得る。
【0055】
結論として、本開示の回路パターンを作製する方法は、簡単で費用効率の良い方法でIC分野に適用され得る超微細回路パターンを、実際に形成することができる。したがって、本開示は、商業的な実施に対して高い可能性を有する。
【0056】
本開示の多数の特性および利点が、本開示の構造および特徴の詳細とともに、上記の説明の中で示されたとしても、本開示は例示に過ぎない。添付の特許請求の範囲が表現される用語の広範で一般的な意味によって最大限に示される本開示の原理の中で、詳細において、特に、形状、サイズおよび部品の配列に関して、変更が行われ得る。