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特許7488583フルオロアルキル化炭素量子ドットを得る方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】フルオロアルキル化炭素量子ドットを得る方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/15 20170101AFI20240515BHJP
   C09K 11/65 20060101ALI20240515BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240515BHJP
   C07D 221/18 20060101ALI20240515BHJP
   C01B 32/00 20170101ALI20240515BHJP
【FI】
C01B32/15
C09K11/65 ZNM
C09K11/08 G
C09K11/08 A
C07D221/18
C01B32/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021534281
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 IB2019060397
(87)【国際公開番号】W WO2020121119
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】A201812454
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】UA
(73)【特許権者】
【識別番号】523078524
【氏名又は名称】ノバシユム
【氏名又は名称原語表記】NOVACIUM
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(72)【発明者】
【氏名】ザデルコ、アレクサンドル
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-036411(JP,A)
【文献】特開2015-036389(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130999(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/072959(WO,A1)
【文献】特開2017-222538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C09K 11/08-11/89
C07D 221/18
B82Y 5/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ペル)フルオロアルキル基と、NH、-CONH、-COOH、-OH、-C=O、またはフッ素以外のハロゲン原子からなる群から選択される置換基のうちの少なくとも1つとを有する有機フッ素物質(fluoroorganic substance)の存在下で、有機物質からなる炭源を炭化するソルボサーマルプロセスによって、フルオロアルキル化炭素量子ドットを得る方法であって、前記ソルボサーマルプロセスの間に、前記炭素源および前記有機フッ素物質が、炭素量子ドットのマトリックスにグラフト化された(ペル)フルオロアルキル基を有する炭素量子ドットを形成し、前記ソルボサーマルプロセスがマイクロ波照射によって実施されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
炭素源が、尿素、チオ尿素、シアヌル酸、尿素および/またはチオ尿素の縮合生成物、(多)糖、クエン酸、または酒石酸からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機フッ素物質が、トリフルオロ酢酸、ハロフルオロアルカン、トリフルオロメチルアニリン、または他の(ペル)フルオロアルキル化芳香族アミンもしくは前記アミンの塩、および有機フッ素カルボン酸からなる群から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ソルボサーマルプロセスが、120~350℃の範囲の温度において実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ソルボサーマルプロセスが、有機溶媒の添加なしに実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ソルボサーマルプロセスが、有機溶媒の添加を伴って実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
得られた炭素量子ドットが、0mmol/g超0.5mmol/g以下の総フッ素含有量でフッ素ドープされている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
得られた炭素量子ドットが、0.5mmol/g超の総フッ素含有量でフッ素ドープされている、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ技術、すなわち、ナノ構造化フッ素含有炭素材料、特に、フルオロアルキル化炭素量子ドットに関する。フルオロアルキル化炭素量子ドットは、発光材料として、磁気共鳴映像法(MRI)のコントラストとして、細胞および/または生物組織への化学物質の輸送のための、細胞生物学、組織、および他の生物対象における研究、療法、および視覚化のための生物化学剤として、センサーまたはシグナル伝達物質として、またはストレージまたは電力源のための電極材料として、または(光)触媒として、使用することができる。また、フルオロアルキル化炭素量子ドットは、その高い光減衰および青色からNIRまでのスペクトル範囲における広い発光により、、真正性保護、ラベリング、マーキングなどのための発光色素、インク、またはタグ(標識)を代替することができる。また、上記粒子は、ナノスケールのサイズを有するため、様々なセンサーデバイスを作製するためのセンサー部品として、プラスチックや樹脂との様々な複合材料として、そして様々なアプローチにおける蛍光標識として使用するために、首尾よく使用することができる。
【0002】
本発明は、(ペル)フルオロアルキル官能性表面グラフト化基を有する炭素量子ドットを得るためのプロセスを特徴付けるものである。当該(ペル)フルオロアルキル基は、化学的および加水分解的に安定であり、炭素量子ドットに固有の特性を付与する。
【0003】
本発明は、UA発明特許出願第a201812454号の優先権に基づくものであり、そしてさらに、炭素材料(CM)がホモリシス分解によって生成される有機フッ素物質(fluoroorganic substance)の活性残基をグラフト化することができることを開示する[1]に記載の発明を、改良するものである。ホモリシスの要因は、高い温度[1]、フリーラジカル化学反応の開始剤の存在[2]、または他の要因、例えば、γ放射線[3]またはUV光[4]などであり得る。炭素材料の表面上で生じるプロセスは、生じた状態で(in statu nascendi)ホモリシスを促進し、それは、炭素源の熱分解によって溶融物中に形成される材料(例えば、炭素量子ドット-ナノ構造化炭素材料)およびそれらの熱転移の間に高酸素含有量を有する材料(例えば、炭素ミクロスフェア-ミクロ構造化CM)の両方にとって好適である。
【0004】
残念ながら、参考文献[1]に記載のプロセスは、炭素量子ドット(O-ドット)のフッ素化にとって好適ではない。なぜなら、フレオン処理ドットは、溶解性を失い、報告される処理温度でスラリーを生じるためである。
【0005】
本発明は、活性種の形成を伴うホモリシスの間に分解され得る化学変化を起こしやすい官能基を有する有機フッ素分子化合物の存在下での有機炭素源材料のソルボサーマル熱分解によってフッ素含有ナノ構造化炭素材料を得るための方法を開示する。結果として生じる種は、炭素材料の表面上の活性中心に結合することができ、または炭素マトリックスの成長の間に当該マトリックスの構造に組み込むことができる官能基を有する。
【0006】
先行技術は、特定の有機フッ素化合物、すなわち、ペルオキシド結合の性質により高温で容易に分解されるペルフルオロアシルペルオキシドによる炭素材料のフッ素化の方法である[5]。熱的により安定な物質をマイクロ波照射の影響下において炭素材料に結合させる方法についても記載されている[6]。さらに、フッ素の供給源-無機フッ素含有物質、すなわち、フルオロボレートテトラブチルアンモニウムまたはフッ化アンモニウムの存在下において炭素ミクロスフェアを作製する方法も知られている[7]。
【0007】
本発明の目的となるのは、フッ素含有ナノ構造化炭素材料を製造するための簡便な方法であり、フッ素含有官能基は、炭素材料表面にグラフト化され、このような材料の表面に結合した電子受容体官能基はそのスペクトル特性および疎水性を著しく変えるため、重要である[25]。
【0008】
本発明の技術的成果は、フッ素の供給源としての化学変化を起こしやすい官能基を有する有機フッ素物質との反応によって、ナノ構造化されたフルオロアルキル化炭素量子ドットを得るソルボサーマル法である。
【0009】
炭素材料、特にナノ構造化炭素材料を製造する方法は、近年、集中的に開発されており、非常に多様である[8]。
【0010】
炭素量子ドットを得るためのソルボサーマル法も非常に多様であり、よく研究され、多くの用途を有している[9、14、16]。
【0011】
一般的に、この方法によって得られる炭素材料は、多くの酸素含有基を有し、量子ドット、いわゆるO-ドットの場合、それらは、尿素溶融物に溶解したクエン酸から150~170℃において合成される[10]。したがって、[11]の著者らは、リガンド交換(すなわち、CdSe/ZnSナノ粒子を捕獲したトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)がフッ素化HS-C11-(EG)-OC(CFリガンドで変えられる)によってフッ素化QD_F量子ドットを得ている。
【0012】
参考文献[12]において、著者らは、以下の手順に従って、フッ素化炭素ナノドットを合成した:100mgのフルオログラフェンを3mlの水を含む10mlの濃硫酸に溶解させ、次いで、当該混合物を均質化するまで超音波処理した。その後、さらに10mlの濃HSOおよび60mlのHNOを加えた。さらに、当該溶液を3時間超音波処理し、次いで、70℃のサーモスタットに一晩入れた。冷却後、200mlの脱イオン蒸留水を当該混合物に加え、pHを中性に調節した。
【0013】
参考文献[13]において、著者らは、水熱法を使用することによってフッ化黒鉛を分解している。F-GQDと命名された得られたフッ素化炭素量子ドットは、多くの酸素含有基および1~7nmの直径を有する。
【0014】
[17]の著者らは、フッ素化剤として、フッ化水素の存在下において、グルコースのマイクロ波誘導熱分解(180℃、500W、3時間)によって、官能化されたフッ素化グラフェンドットを得ており、生物学的作用物質ヒト膵島アミロイドポリペプチド(hIAPP)のアミロイド凝集の阻害剤としてのそれらの使用を提案している。
【0015】
参考文献[18]において、著者らは、特にクエン酸および有機アミンから炭素量子ドットを得るために使用される方法について検討しているが、フッ素含有ドットを得る可能性を考慮しておらず、さらに、例えば、クエン酸およびアミンの混合物を300℃を超える温度に加熱する工程を伴うBourlinos法[19]を考慮していなかった。参考文献[20、21]に見られるように、他の著者らは、DMFAおよびDMSO溶液中でのNIR発光炭素ドットのソルボサーマル合成について報告している。参考文献[24]において、果汁の水熱炭化によってNIR発光炭素ドットを得る方法が説明されている。
【0016】
酸素に富む炭素量子ドット(O-ドット)を得るための従来法は、例えば、クエン酸、尿素、チオ尿素、アンモニア、または他の炭素源材料および窒素源材料を含有する混合物のソルボ熱分解(solvothermolysis)(ソルボ炭化または水熱炭化)による、「自己組織化」アプローチを考慮する、本発明のモデルである[10]。
【0017】
本発明は、炭素量子ドットの成長および形成を含む、フッ素源と炭素源および/または炭素量子ドットマトリックスとの反応を促進するような合成条件において、少なくとも1つの(ペル)フルオロアルキル基および化学変化を起こしやすい官能基、特に、カルボキシル、ケトン、アルデヒド、アルコール、エーテル、またはエステルを有する有機フッ素物質の存在下において、液相で、フッ素含有炭素材料を得るプロセスが実施されるアプローチを行う。特に、(チオ)尿素とオキシカルボン酸、特にクエン酸との混合物からソルボサーマルプロセスによって得られる炭素O-ドット、および、[16]に記載される、単糖および多糖から合成される量子ドット、および、そのようなプロセスにおいて使用されるこれらの混合物は、このプロセスを実施するために非常に適している。便利な炭素源は、カルボン酸、特にオキシ-、オキソ-およびアミノ酸、例えば、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ピルビン酸、グリシン、アラニン、トリプトファン、EDTA;フェニレンジアンミンなどの芳香族アミン、または他の芳香族(ポリ)アミン;ニトリロ三酢酸、グルタミン酸;またはそれらの塩;ポリヘキサメチレングアニジン;ウロトロピン、(オリゴ)糖;カフェインなどのアルカロイド;α-グルコシルヘスペリジン;フェニレンジアミン、アスパラギン酸(acidum asparagicum)、または(上記に列挙されたものの内の少なくとも1つの成分を含むという理由から)未処理のフルーツ果汁である。
【0018】
炭素源と有機フッ素物質と場合により窒素源との反応は、有機溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド(DMFA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン、ホルムアミド、アルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、芳香族または脂肪族炭化水素、酢酸または他の好適な炭酸、エーテルまたはエステル、および他の溶媒、さらには水溶性有機溶媒などの溶液中において実施することができる。
【0019】
ソルボサーマル合成の間の、尿素とクエン酸との混合物における有機フッ素物質、特にトリフルオロ酢酸の添加が、フッ素がドープされたフッ素含有材料の形成につながることは留意されるべきである。合成のために、これら成分の混合物が使用される場合、尿素:クエン酸:トリフルオロ酢酸の比率(モル比)は3:2:1である。160℃で得られるこれら成分の当該比率において、量子ドットは、0.15mmol/gのフッ素を含有する。フッ素の含有量は、吸着ではほとんど説明することができない。なぜなら、尿素の量を増やすこと以外は同様に合成を実施した場合、すなわち5:2:1の比で合成した場合、結果として得られる生成物は、微量のフッ素のみを含有するからである。トリフルオロ酢酸を使用した合成の生成物におけるフッ素の低含有量は、合成の条件下で、トリフルオロ酢酸はほぼ完全に解離しているのに対して、当該プロセスにおいてほとんど会合していないカルボキシル基が関与しているという事実によって説明することができる。
【0020】
(特に窒素原子の)アルキル化が可能な物質、例えば、フッ素以外のハロゲン、特にジブロモテトラフルオロエタン(R-114B2、BrCFCFBr)がフッ素源として使用される場合、このような物質は、炭素源(尿素、ビウレット、トリウレット、尿酸、とりわけ、硫黄原子チオ尿素)としてアルキル化され、および加水分解されることで、ペルフルオロエチレングリコールを形成し得る。前者の場合、ナノ粒子は、フッ素化された炭素源から形成され、後者の場合、物質それ自体、すなわち加水分解生成物は、量子ドットのための構成要素(building block)としての役目を果たすであろう。当然のことながら、そのようなアルキル化剤は、[1]に記載されるメカニズムによって好適な炭素部分と相互作用することができる。本発明の特定の実施形態は、フッ素の有機フッ素源と窒素含有物質との相互作用生成物、特に、フッ素含有アルキル化剤と、尿素、チオ尿素、アミン、ウロトロピン、または複素環式化合物との相互作用の生成物を反応媒体に導入することであり、それにより、有機フッ素アミンと有機フッ素酸との塩を、フッ素源として使用することができ、この場合、当該アミンと当該酸の両方の揮発度は減少する。そのような物質が四級アミンである場合、当該プロセスは、得られる物質の流れ(flow)のコース(course)および特性を変える界面活性剤の存在下において行われる。
【0021】
フッ素源として、様々な有機フッ素化合物:様々な脂肪族、芳香族、複素環式カルボン酸、アミン、アルコール、フェノール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、有機フッ素化合物で(置換された)(チオ)尿素、および代表的な有機フッ素化合物;官能基-CF-、-CF=、-CF、または-OCFを有する上記化合物、例えば、様々な冷媒および他の利用可能なフッ素化された有機物質を使用することができる。そのようなプロセスにとって最も好適なフッ素含有物質は、量子ドットが使用される特定の用途タスクに応じて、芳香族環に(ペル)フルオロアルキル基が結合した芳香族アミン、例えば、トリフルオロメチルアニリン、ビス-もしくはポリ-(トリフルオロメチル)アニリン、または他のペルフルオロアルキルアニリン、または他のペルフルオロアルキル化アミン、例えば、ペルフルオロアルキル化ベンジルアミンまたはフェネチルアミン、または脂肪族アミンである。当然ながら、有機フッ素物質自体が、炭素源であってもよく、また場合により、窒素源(例えば、フルオロアルキル化アミン、例えば、ペルフルオロアルキルアニリン)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】炭素量子ドットの形成のための化学反応スキームである。
図2】トリフルオロ酢酸量子ドットが追加されたフッ素、フルオロカーボン量子ドットのX線電子スペクトル(XPS)である。
図3】フルオロアルキル化炭素量子ドット(FCQD)および炭素量子ドット(CQD)のラマンスペクトルである。
図4】CQDおよびFCQDの発光マッピングである。
図5】CQDおよびFCQDの吸光スペクトルである。
図6】CQDおよびFCQDのFTIR ATRスペクトルである。
【0023】
クエン酸、尿素、およびm-トリフルオロメチルアニリンから合成された炭素ドットの形成を開示するスキームを図1に示す。
【0024】
図1に、トリフルオロメチルアニリンの例に基づく、炭素量子ドットの形成のために使用される化学反応のスキーム、およびフッ素含有化合物との表面相互作用を示す。
【0025】
合成された生成物のフッ素含有量が、炭素材料への有機フッ素化合物の吸着によって説明することができないことに留意すべきである。フッ素含有アミン(例えば、m-トリフルオロメチルアニリン)を、O-ドット1gあたり1mmolのアミンの比率で、クエン酸および尿素から得られたO-ドットのアルコール水溶液に加える場合、当該混合物を2時間維持し、酸で当該ドットを沈殿させ、分離し、結果として得られる生成物を乾燥させ、そのフッ素含有量は、約0.05mmol/gであろう。乾燥生成物のX線電子スペクトル(XPS)は、図2に示される。
【0026】
図2に、尿素、クエン酸、およびトリフルオロ酢酸量子ドットが追加されたフッ素のX線蛍光スペクトル(a)、および、ベースとして、尿素、クエン酸、およびm-トリフルオロメチルアニリンから得られたフルオロカーボン量子ドットのスペクトル(b)を示す。
【0027】
フッ素含有試料の分析は、ニッケルるつぼにおいて、硝酸ナトリウムを含有するアルカリ溶融物に当該試料を溶解させることによって実施した。溶解後、当該溶融物を水に分散させた。塩化物または臭化物の含有量を測定するために、Volgard法に従って銀滴定を使用した。フッ素含有量は、Texas Instrumentsによって構成された精密測定用LMC6001AIN増幅器に基づく電子回路を使用して塩素銀比較電極ESR-101.01に対して電位が評価される、フッ化物選択電極「ELIS-131(F)」を用いた電位差測定法によって測定したところ、計測誤差は、約7%であった。分析の際の秤量は、Sartorius Quintix(商標)124-1OR化学天秤によって実施した。加熱および温度のPID制御のために、A TRP-09TP(KUPP BAJT、ジトーミル、ウクライナ)温度調節装置を使用した。マイクロ波加熱は、750W家庭用電子レンジMWS-1705(Supra、PRC)において実施した。
【0028】
遠心分離のために、遠心分離機Sigma 4-16KSを、10~1kDaグレードのMicrosep Omegaフィルターのセットと共に使用した。得られた溶液のスペクトル特性を、Hamilton Instrument Varian Cary 50 Scan UV/Vis分光光度計およびVarian Cary Eclipse Fluorescence分光光度計によって調べた。UV-Visおよび蛍光分光測定のために、石英Suprasil(登録商標)によるキュベットHellma 111-QSを使用した。ラマン顕微鏡Horiba LabRAM Aramisによって、HCl沈殿粉末のラマンスペクトルを記録した。減衰全反射モード(FTIR ATR)におけるフーリエ変換赤外スペクトルを、IRPrestige 21分光光度計(島津製作所、日本)において、2cm-1の解像度で1,000スキャンを累積することによって収集した。ATR測定の際、粉末試料接触用ZnSe水晶板を備えるMIRacleモジュール(PIKE Technology、マディソン、WI、米国)を使用した。XPSスペクトルを、XSAM-800 Kratos分光計によって記録した。粒子のζ粒度分布測定のために、Zetasizer Nano ZS(Malvern Panalytical Ltd.、英国)を使用した。
【0029】
合成、分析、滴定には、測定および一般的理化学用ガラスを使用し、試料調製物は、Simax(商標)|Kavalierglass a.s.およびTechnosklo s.r.o., Czech Republic(供給元:Mankor LLC、キエフ、ウクライナ)から供給を受けた。
【0030】
365nmに最大発光を有する3W出力のConvoy S2+ UVフラッシュライトを備えたウッドガラスを用いて、蛍光特性を試験した。
【0031】
合成、分析、試料調製、および補助操作のために使用した、合成グレード(pro synthesis)、分析グレード(pro analysi)、純粋グレード(purissimum)の試薬および溶媒は、Ukrorgsynthesis LLC(キエフ、ウクライナ)およびHimlaborreaktiv LLC(ブロヴァルィ、ウクライナ)から購入した。
【0032】
炭素量子ドットのソルボサーマル合成のプロセスにおけるフッ素化物質の効果を調べるために、2:1のモル比の尿素と無水クエン酸の混合物を135~165℃で炭化させ(生成物-CQD);また、尿素とクエン酸の混合物をm-トリフルオロメチルアニリンの存在下において、この順に2:1:0.5のモル比にて、同様の条件で炭化させた(生成物-CQD)。反応生成物をi-PrOH水溶液に溶解させ;この溶液の一部を塩酸で処理することにより、合成された粒子を沈殿させた。その後、当該溶融物の溶液と固体沈殿物を、下記において説明する通りに調べた。
【0033】
当該溶融物をアルコール-水混合物に溶解させた後に得られた、双方の生成物FCQDおよびCQDの希釈溶液を、1kDaまでのフィルターを完全に通過させ、遠心分離によってろ過した。同時に、ろ過の前後の双方の溶液の吸光スペクトル(extinction spectra)および発光マップは異なっていない。グラフェンのD(1369cm-1)およびG(1579cm-1)の特徴的なバンドが、酸による固体FCQD沈殿生成物のラマンスペクトル(図3)において明確に確認されたが、その一方で、CQD沈殿物ではそのようなバンドは確認されず、このことは、フッ素化粒子における非常に高い秩序化を示している[22]。
【0034】
得られたフルオロアルキル化ドットは、発光および吸光のpH依存性スペクトルを有する。当該ドットの0.03%溶液は、pH変化の際に、pH指示薬挙動を示す。酸性媒体中において、当該ドット溶液は黄色を有するが、アルカリ溶液中では、それらの色はピンクである。これらの変化は、完全に可逆的である。また、当該溶液は、希土類元素(例えば、Eu3+、Er3+、またはTb3+)または他の多価カチオン(Al3+)が当該溶液に加えられた場合、著しい発光減衰を示す。複合有機物質、例えば、クロルヘキシジン、ペニシリン、サリチル酸などについても同様である。これらの特性は、これらのドットの知覚アプローチの役に立ち得る。
【0035】
図3に、クエン酸および尿素から合成したCQD、および、m-トリフルオロメチルアニリンの存在下で行ったこと以外は同様の条件で合成したFCQDの各ラマンスペクトル(633nmで励起させた)を示す。
【0036】
ソルボサーマル合成後に得られたFCQDおよびCQDの双方の溶液は、Silufol UV 254プレート上において、移動相として1:1のイソプロピルアルコール-水混合物を使用することにより、薄層クロマトグラフィに容易に付される。この場合、CQDクロマトグラムは、UV光において青色を呈する1つの蛍光スポット(成分B)を示し;他方、FCQD溶液は、クロマトグラムにおいて、青色(成分B)および黄色(成分Y)の2つの蛍光スポットを示した。また、双方の場合において、成分Bの分離係数Rは、非常に近似しており、一方で、成分Yは、成分Bより前に進む。
【0037】
さらに、CQDおよびFCQDは、異なる発光および励起スペクトルを示す(図4)。フッ素化されたものの場合、スペクトルにおいて2つの異なるバンドが見られる。第1のバンドは「成分B」に属し、第2のバンドは「成分Y」、すなわちフルオロアルキル化炭素量子ドットに属する。
【0038】
図4に、クエン酸および尿素(2:1のモル比)から合成したCQD、および、m-トリフルオロメチルアニリンの存在下で行ったこと以外は同様の条件で合成したFCQDの0.03%水溶液の各発光マッピングを示す。
【0039】
CQDおよびFCQDの吸光スペクトル(図5)は、フッ素化されたものが、350nmのピークが減少し、440nmの肩がピークに変形するといういくつかの違いがある以外は同様である。
【0040】
図5に、クエン酸および尿素(2:1のモル比)から合成されたCQD、および、m-トリフルオロメチルアニリンの存在下で行ったこと以外は同様の条件で合成されたFCQDの0.03%水溶液の各吸光スペクトルを示す。
【0041】
図6は、1125~1170cm-1および1330cm-1でのATRスペクトルにおける明確なCF(x=1~3)有機フッ素基のバンドを示しており、それらは、非フッ素化CQD粉末のスペクトルでは観察されない。
【0042】
図6に、クエン酸および尿素(2:1のモル比)から合成されたCQD、および、m-トリフルオロメチルアニリンの存在下で行ったこと以外は同様の条件で合成されたFCQDの各FTIR ATRスペクトルを示す。
【0043】
0.25MのNaClの0.03%FCQD溶液においてゼータサイザーによって測定された粒子サイズは、2~3nmの範囲内にある。この粒度分布は、11,000gで15分間新たに遠心分離したNPsについて得られた。30分間、これらの粒子は凝集を示し、それらの流体力学的サイズは著しく増加した。
【0044】
得られたデータは、生成物FCQDの合成がフルオロアルキル化グラフェン量子ドットを含むことを示している。
【0045】
本発明を、以下の実施例によって説明する。
【実施例
【0046】
実施例1
3:2:1のモル比の尿素(分析グレード(p.a.))、クエン酸(純粋グレード(pharm.))、およびトリフルオロ酢酸(合成グレード(pro synth.))の混合物11gを、100mlのガラス製オートクレーブに入れた。
【0047】
オートクレーブを、シリコーン-テフロンガスケットによるねじ込みキャップで密封し、20分間温度を140℃に設定したシャフト炉に入れた。この温度を1時間維持した。混合物は溶融し、黄色に変わった。次いで、温度を160℃に上げ、オープンオートクレーブにおいて1.5時間加熱を続けた。この反応により、黒色の固体発泡生成物が生じ、この生成物は、15%i-プロパノール水溶液に易可溶性である。量子ドットの水-アルコール溶液を塩酸で酸性化し、8000rpmで1時間遠心分離した。得られた沈殿物を水で洗浄し、再び遠心分離し、次いで、空気中において120℃で乾燥させた。
【0048】
得られた脆いカーボンブラック材料は、水および水-アルコール混合物に易可溶性であり、これらの溶液は、アルカリ性媒体中において強いオレンジ色発光を示し、中性媒体中において青色発光を示す。
【0049】
化学分析の結果によれば、前記材料は、0.15mmol/gのフッ素を含有する。
【0050】
得られた生成物のXPSスペクトルにおいて、炭素材料のフッ素結合C-Fの特徴である、約686eVでのフッ素シグナルが、明確に視認される。
【0051】
比較として、尿素の当量を5に増加させて、同様の合成を実施した。得られた生成物は、少量のフッ素を含有するが、電位差測定法によって特定するのは困難である。
【0052】
実施例2
3:2:1のモル比の尿素、無水クエン酸、およびジブロモテトラフルオロエタン(冷媒R-114B2、CAS#124-73-2)の混合物を、実施例1において説明した通りに処理した。
【0053】
得られた生成物は、水に易可溶性であり、この溶液は、中性pH範囲において強い青色発光を示し、アルカリ性媒体中において黄緑色発光を示す。分析の結果によれば、得られた炭素ナノ材料は、0.12mmol/gのフッ素および0.15mmol/gの臭素を含有する。
【0054】
実施例3
無水クエン酸およびm-トリフルオロメチルアニリン(>99%、CAS#98-16-8、MTFMA)を、2:1のモル比で混合した。1.7gの混合物を、ガラス製オートクレーブに移し、それを、実施例1において説明したようにオーブンに入れた。混合物を、しっかり密閉したオートクレーブにおいて120℃で1時間維持し、次いで、140℃で1時間維持し、最後に165℃で1時間維持した。黄色の粘性液体が形成され、この液体は、強い黄緑色発光を示すゼリー状の塊へと固化した。このことは、量子ドットの形成を示唆する。オートクレーブを開けて、再び165℃に加熱し、1.5時間維持した。黄色の透明な溶融物が得られ、それは、水にほぼ不溶性であるが、イソプロパノールには容易に溶解して、強い黄緑色発光を示す透明な黄色溶液を形成した。したがって、形成された量子粒子は、疎水性である。
【0055】
実施例4
尿素、無水クエン酸、およびm-トリフルオロメチルアニリンを、1.5:2:1の比で混合し、1.98gの混合物を、実施例3と同様に処理した。炭酸化段階において得られた生成物は、暗茶色の光沢のある固体発泡体であり、イソプロパノール/水混合物に易可溶性である。得られた均一な暗茶色溶液をろ別し、塩酸でpH=1に酸性化した。当該粒子は直ちに凝集し、得られた沈殿物は、黄色テープ紙フィルターで容易に分離した。沈殿物を洗浄し、85℃で2時間乾燥させ、得られた生成物は、淡茶色の粗い粉末であり、水に不溶性であり、アルコール-水性混合物に難溶性であり、アルカリ性水溶液に非常に可溶性である。アルカリ性溶液は、強い青色発光を示す。分析の結果によれば、得られた乾燥生成物は、1.82mmol/gのフッ素および0.29mmol/gの塩素を含有する。XPS研究のため、得られた材料をアルカリで処理し、当該溶液を遠心分離した。
【0056】
得られた生成物のXPSスペクトルは、炭素材料の炭素原子に結合したフッ素原子の特徴である、686eVで強いフッ素シグナルを示す。
【0057】
実施例5
3:1.5:1のモル比の尿素、クエン酸、および2,3-ジフルオロ安息香酸(DFBC、合成グレード(pro synth.)、CAS#4519-39-5)の混合物(総重量は1.46gであり、DFBCを170mg含有する)を、実施例3に記載の方法と同様に処理した。得られた光沢のある脆い固体生成物は、暗茶色をしていた。この生成物は、アルコールを添加しなくても温蒸留水に容易に溶解し、暗茶色の溶液を形成し、濃縮形態において黄色がかった緑色発光を示し、希釈溶液では強い緑-緑色発光を示す。
【0058】
酸性化、分離、および120℃で2時間の乾燥後、得られた生成物は、0.06mmol/gのフッ素を含有する。
【0059】
実施例6
フルオロアルキル化炭素量子ドット(FCQD)の合成を実施例4と同様に実施したが、尿素:クエン酸:アミンの比率は2:2:1であり、当該混合物の総重量は2.07gであり、当該合成は、閉じられた反応器内で実施した。得られた生成物は、温水に容易にそして完全に溶解し、明るい緑色発光を示す均一な暗茶色溶液を形成した。この溶液を濃HClで酸性化し、沈殿物をろ別し、0.1MのHCl、水で数回洗浄し、次いで、120℃で10時間乾燥させた。合成後、オートクレーブのガラスが濁り、すなわち、合成の間に、いくらかのHFが形成された。このことは、有機フッ素物質の深い変換を示す。濃塩酸によって粒子を沈殿させた後、0.1MのHClで洗浄し、乾燥させ、水および15%アルコールに不溶性で、アルカリ性水溶液に昜可溶性の、暗茶色の粉末115mgを得た。これにより得られた溶液は、明るいオレンジ色発光を示す。得られた乾燥生成物において、フッ素含有量は、2.47mmol/gである。
【0060】
比較のため、その組成にフッ素を含まず、尿素およびクエン酸から合成した、100.0mgの炭素量子ドット(CQD)を、25mlの15%i-プロパノールに溶解させた。この溶液に、16.1mgのmTFMAを加え、次いで、当該溶液を、連続撹拌しながら室温で2時間維持した。その後、HCl酸性化によって炭素ドットを回収し、さらに、本実施例において説明したように処理した。得られた生成物のフッ素含有量は、0.05mmol/gである。
【0061】
実施例7
追加成分である2,3-ジフルオロ安息香酸(DFC)を、尿素、クエン酸、およびmTFMAの混合物に加えた以外は、実施例6と同様に合成を実施した。尿素、クエン酸、アミン、安息香酸の比率は、3:3:1:1であった。この場合、混合物の総質量は、5.68gであった。オートクレーブでの反応が、DFBCの特徴的結晶性昇華/昇華物を形成した後、当該生成物は、透明な溶融物の薄層において暗茶色であり、それは、温水-アルコール混合物に非常に可溶性であり、それにより、この溶液は、暗緑色発光を示す。生成物重量は0.42gであり、生成物は1.50mmol/gのフッ素を含有する。
【0062】
本発明のこのような実施形態は、揮発性の低い混合された有機フッ素化合物を形成することによって、有機フッ素化合物の揮発性を減少させることを可能にする。
【0063】
実施例8
尿素、クエン酸、およびp-トリフルオロメトキシアニリン(CAS#461-82-5)とベンゾイルイソチオシアネートとから合成した(p-トリフルオロメトキシ)フェニルチオ尿素を、2:3:1の尿素:クエン酸:チオ尿素のモル比および2.03gの総質量で、実施例6に示されるように反応させた。得られた生成物は、1.88mmol/gのフッ素を含有し、アルカリ水溶液に可溶性であり、そのような溶液は明るいオレンジ色発光を示す。
【0064】
実施例9
3,5-ビス(トリフルオロメチル)アニリン(合成グレード(pro synth.)、CAS#328-74-5)の存在下で尿素およびクエン酸を熱分解して得られたビウレット/トリウレット/シアヌル酸の混合物およびトリフルオロ酢酸を、1:1:0.5:0.45の重量比で、実施例6と同様に、ただしスチール製のオートクレーブにて350℃で1時間処理した。得られた炭素ナノ材料は、2.75mmol/gのフッ素を含有し、それにより、その溶液は、アルカリ溶液において黄色ホット(yellow-hot)発光を示す。
【0065】
実施例10
総質量1.26gの、2:2:1のモル比のチオ尿素、酒石酸、およびペルフルオロブチリルクロリド(CAS#375-16-6)の混合物を、電子レンジにて750Wで30秒間処理し、この処理の後、得られた混合物を室温まで冷却し、マイクロ波照射下で再び溶融させて、茶色の溶融物を形成させた。得られた炭素ナノ材料は、アルカリ水溶液において赤色発光を示し、0.32mmol/gのフッ素を含有する。
【0066】
実施例11
FCQDの合成を、10mlのDMFAの存在下および密封したアンプルにおいて200℃で12時間との条件以外は実施例6に記載の通り、実施した。得られた暗茶色の溶液は、暗赤色発光を示す。HCl沈殿によって得られた生成物は、1.13mmolのフッ素を含有する。
【0067】
実施例12
2mmolの尿素(分析グレード(p.a.)、120mg)および2mmolの無水クエン酸(純粋グレード(pharm.)、384mg)を混合し、20gの新鮮なDMFAを加えた。この溶液3.1gを、60mgのp-トリフルオロメチルアニリン(p-TFMA)と混合し、次いで、アンプルに入れて密封した。当該アンプルを180℃で12時間維持したところ、当該アンプルの内容物は、血のような赤色になり、非希釈状態で赤色の蛍光を発した。HCl沈殿によって得られた生成物は、0.75mmol/gのフッ素を含有するが、この場合、得られた生成物の量は少ない。
【0068】
実施例13
実施例2に記載のように、FCQDの合成を実施したが、クエン酸の代わりに酒石酸を使用し、p-TFMAの代わりに120mgの3,4-ビス(トリフルオロメチル)アニリンを使用した。得られた茶色溶液は、UV光下においてオレンジ色発光を示し、沈殿物は約1.30mmol/gのフッ素を含有する。
【0069】
実施例14
実施例6に記載のように、FCQDの合成を実施したが、尿素:クエン酸:mTFMAのモル比は、1:1:1であった。得られた生成物の0.03%溶液は、酸性媒体中においてクリアな黄色発光を示し、アルカリ媒体中において緑がかった青色発光を示す。薄層クロマトグラフィでは、成分Yの量は、実施例6の場合よりも多い。そのため、フルオロアルキル化アミンの量の増加は、ソルボサーマル生成物における「黄色成分」の量を増加させる。
【0070】
実施例15
3mmolのクエン酸および3mmolのm-トリフルオロメチルアニリンをアンプルに封入し、シャフト炉にて270℃で15時間加熱した。暗茶色の溶融物は、UV領域において赤色蛍光を示す。溶融物はエタノール(3.5ml)に昜溶解性であり、得られた溶液を0.22μmのAcrodiscでろ過し、得られた溶液は、赤色発光を示す。
【0071】
以上の実施例は、本発明の実施形態を明確にするが、それらから生じる権利の範囲を制限するものではない。
【0072】
本発明はまた、様々な有機フッ素物質の存在下において、と、様々な溶媒を使用し、または溶媒を使用せずに、様々なサイズおよび構成のオートクレーブにおいて、広い温度範囲において、炭素源および/または窒素源の多数の組み合わせを用いた様々な方法で実現することができる。
【0073】
特許請求の範囲に記載の方法によって得られるナノ材料に関し、本発明者は、Fluocar(登録商標)Nanoの名称を使用することを提案する。
【0074】
参考文献
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図1
図2
図3
図4
図5
図6