(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-14
(45)【発行日】2024-05-22
(54)【発明の名称】全方向性ジェネレータ装置
(51)【国際特許分類】
F03D 5/00 20060101AFI20240515BHJP
【FI】
F03D5/00
(21)【出願番号】P 2021536121
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(86)【国際出願番号】 CL2019050071
(87)【国際公開番号】W WO2020047685
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-10
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CL
(73)【特許権者】
【識別番号】521085892
【氏名又は名称】オー-イノベーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】O-INNOVATIONS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】オレリャナ オルギン、ニコラス ゴンサロ
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-512103(JP,A)
【文献】特開2019-143615(JP,A)
【文献】特開2010-261435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0084222(US,A1)
【文献】中国実用新案第2921349(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 3/06
F03D 5/00
F03D 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直、水平、または斜めの面の任意の方向からの流体の押進力を単一の軸を中心とした回転運動に変換可能な、全方向性のジェネレータ装置であって、
複数のチャネルであって、各チャネルへの流入口が各チャネルの流出口よりも大きく、一度流体が通過すると、流入口と流出口との大きさの差が、流入口から流出口への押進力を生成する圧力差を作り出す、複数のチャネルと、
幾何学的な本体を形成する複数の
ユニットであって、各
ユニットは
前記複数のチャネルの一部を有し、
それにより前記複数のチャネル
が前記複数のユニットにそれぞれ対応する複数のサブグループ
に分け
られ、各
ユニットは、その
ユニットのチャネルが決められた回転方向に装置を押すように配向される、複数の
ユニットと、
発電システムと、
固定軸と、を備え、
前記各ユニットは、前記本体の外面を画定するように前記単一の軸の周囲に配置される面を有し、
装置は、前記本体の回転をジェネレータに伝達する前記固定軸によって、発電システムに接続される、全方向性のジェネレータ装置。
【請求項2】
前記チャネルの前記流出口は、前記全方向性のジェネレータ装置の内部に繋がる、請求項1に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項3】
前記チャネルの前記流出口は、前記全方向性のジェネレータ装置の外部に繋がる、請求項1または2に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項4】
前記各
ユニットは、前記チャネルの複数の層を含み、
前記複数の層のうちの第1の層の第1のチャネルは、前記複数の層のうちの第2の層の第2のチャネルとは異なる方向へ向けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項5】
前記チャネルへの前記流入口は、
前記複数のユニットのうち隣接するユニットの互いに向き合う縁部に配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項6】
前記複数のユニットの前記縁部は、前記単一の軸と交差する縁部と、前記単一の軸と交差しない縁部と、を含み、
前記複数のチャネルのうち前記単一の軸と交差する
前記縁部に配置される前記流入口を有するチャネルは、前記単一の軸に向けて斜めに向けられ、
前記複数のチャネルのうち前記単一の軸と交差しない
前記縁部に配置される前記流入口を有するチャネルは、前記単一の軸に向けて垂直に向けられる、請求項5に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項7】
前記チャネルはそれぞれ長さが異なる、請求項1から6のいずれか一項に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項8】
前記面は多角形である、請求項1から7のいずれか一項に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項9】
前記面は曲面である、請求項1から8のいずれか一項に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項10】
前記面は平面である、請求項1から9のいずれか一項に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項11】
風からエネルギーを生成するために、建物の正面に配置され得る、請求項1から10のいずれか一項に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項12】
前記各チャネルの前記流出口は、前記各チャネルの前記流入口の半分の大きさである、請求項1から11のいずれか一項に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項13】
4つの三角形の面からなる正四面体である、請求項1から12のいずれか一項に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項14】
前記4つの三角形の面のうちの第1の2つの面は等しく、かつ、向き合い、
前記4つの三角形の面のうちの第2の2つの面は等しく、かつ、向き合い、
前記4つの三角形の面のうちの前記第1の2つの面の前記チャネルは、前記4つの三角形の面のうちの前記第2の2つの面の前記チャネルとは異なる向きに向けられる、請求項13に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【請求項15】
内部への流出を伴う複数のチャネルと、外部への流出を伴う複数のチャネルと、を備え、
前記内部への流出を伴うチャネルは、前記外部への流出を伴うチャネルとは異なる方向に向けられる、請求項1から14のいずれか一項に記載の全方向性のジェネレータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向の流れを用いる、エネルギーを生成するための装置である。
【背景技術】
【0002】
風に基づくエネルギー生成装置は一般的に、垂直(VAWTs)または水平(HAWTs)であるその軸の方向によって分類される。
水平な軸を有するエネルギー生成装置は、高速の安定した風に向けられる際の効率を考慮すると、大量のエネルギー生成の市場で最も存在感を示している。それらの水平な軸を有するエネルギー生成装置の主要な制限は、それらが低速の風では動作できず、高速の風用のブレーキシステムが必要であるため、風が方向と強度に関して安定する範囲に設置されることを必要とすることであり、風をそのブレードに対して垂直に向ける方向システムを除いて、その制限によりそれは都市のような風が変化する範囲には適さない。通常認識される他の欠点は、それらが抑制される振動による故障の比較的高い可能性、それらが発生させる騒音、および、視覚の観点および鳥類に対する環境への影響である。垂直な軸を有するエネルギー生成装置は、その軸に対して垂直な任意の方向からの風に対する能力を有する。そのため、それらは一般的に「全方向性」と表現される。この表現は間違っている。なぜなら、上記のタービンはその軸に対して垂直な風、すなわち水平な風によってのみ機能し、垂直または斜めの風では動作しない。そのため、それらは、都市のビルの正面のような、風が垂直、水平、または斜めに影響を及ぼす状況に対して最適なものではない。提案された装置は、水平だけでなく、斜めおよび垂直の任意の方向からの風に対する能力を有し、そのことはそれが真に全方向性であると表現することを可能にする。
【0003】
「全方向性」として公開されているいくつかの風力発電機は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4に記載されている。
風に基づくジェネレータ装置はまた、サポートまたはドラッグによるその機能原理によって分類され得る。水平軸の装置の大部分およびダリウスのような垂直軸の一部は、サポートに基づいて機能する。他の、例えばサボニウスのような装置は、ドラッグによって機能する。
【0004】
提案された装置は、ドラッグまたはサポートによっては動作せず、その機能は、異なる断面の導管を通って流れる流体の圧力の差異を説明するベンチュリ効果に基づく。そのため、各チャネルの流入地点が流出地点よりも大きいと、中を通る空気は速度を上げ、その外向きの圧力を減少させ、それは流入口から流出口への押進力を生み出す。
【0005】
ベンチュリ効果に基づく他のジェネレータは、それを主にプロペラに対する空気を加速するために用い、押進力を提供するためには用いない。いくつかの例は、特許文献5、特許文献6、特許文献7、および特許文献8に記載されている。そのため、任意の方向からの流れに基づくエネルギージェネレータを得るという対処されていない要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】スペイン国特許出願公開第1072304号明細書
【文献】スペイン国特許出願公開第2620927号明細書
【文献】スペイン国特許出願公開第2477115号明細書
【文献】スペイン国特許出願公開第2418680号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0175882号明細書
【文献】米国特許第4508973号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2264309号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0098262号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明は、垂直、水平、または斜めの面の任意の方向からの流体の押進力を単一の軸を中心とした回転運動に変換可能な、全方向性のジェネレータ装置に関する。この回転運動は、既知の方法によって電気エネルギーに変換される。
【0008】
この装置は流体の方向や向きが変化する場所において特に有用であり、水平、垂直、および/または斜めの向きの流体によって発電できる。
この装置は、その形状が、その任意の面からの流体を受け取るように機能することを可能にするので、流体に対するように異なる方向から向け直される必要がない。
【0009】
その装置は、流出口よりも可変の比率で大きい流入口を有するチャネルに基づいて適合する。一度流体が通過すると、流入口と流出口との大きさの差が、流入口から流出口への押進力を生成する圧力差を作り出す。
【0010】
チャネルは直線または曲線状であり、その長さは可変である。流入口は装置の表面の一つにさらされ得るが、流出口はその内部および/または外部に繋がり得る。
チャネルは、幾何学的な本体の表面を形成するようにグループ化され得る。これらの面は、平面または曲面であり得て、様々な多角形の形をとり得る。各面は、内部および/または外部への流出を伴うチャネルの1つ以上の層を形成する1つ以上のチャネルを含み得る。
【0011】
チャネルによって適合されるすべての面は、単一の軸上で回転する幾何学的な本体に連動して適合する。これを達成するために、各面は、その面のチャネルが回転の決められた方向に装置を押すように配向される。
【0012】
装置は、本体の回転をジェネレータに伝達する固定された軸によって、発電システムに接続される。
上記装置は、例えば都市部の風や、海の波による水の流れからエネルギーを生成するなどの、いくつかの状況で有用であり得る。
【0013】
本発明は添付の図面を参照して最も良く理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、符号A,B,C,Dで識別される面を有する正四面体を示す概略図であり、実施例で説明されるように、この形は風力タービンの基本的な形状を構成し得る。この図では、単一の回転軸(k)と、それと交差する
縁部(f)および(g)も識別されている。
【
図2】
図2は、実施例で説明される全方向性のタービンを示す概略図であり、その三角形の面は
図1で示される面に対応する。このタービンの基本的な形状は正四面体である。単一の回転軸(k)も示されている。
【
図3】
図3は、実施例で説明されるタービンを、その回転軸の軸方向の視点から示した概略図である。4つの面A,B,C,Dが識別される。
【
図4】
図4は、実施例で説明されるタービンを、その回転軸の垂直方向の視点から示した概略図である。4つの面A,B,C,およびDが識別される。
【
図5】
図5は、実施例で説明されるタービンを、不等角投影図によって示した概略図である。その4つの面は、理解を容易にするために距離を置いて表示される。面Aと面Bとは等しく、互いに向き合う。同様に、面Cと面Dとは等しく、互いに向き合う。面A,Bと面C,Dとの違いは、後の図で説明されるように、その内部のチャネルの向きである。
【
図6】
図6は、面A,Bおよび面C,Dの分解状態を不等角投影図によって示した概略図である。各面は、3つの層(a)、(c)、および(e)と、2組のセパレータ(b)および(d)と、によって構成される。実施例で説明されるタービン内の空気の流れの向きを決定するものであるセパレータの、向きの違いが識別される。この違いは、それ自身をタービン内の反対の位置に配置することができ、各面は、風の押進力を常に同じ方向の回転運動に変換する。
【
図7】
図7は、どのように風が分配されるか、および各面への効果が、視覚化されるようにグループ化された、
図6で識別された構成要素を示す概略図である。組み合わせ(a+b)は、単一の回転軸と交差する
縁部(f)および(g)にある流入口を有するため、回転軸(k)への軸方向の風を受ける、チャネルの分布を示す。実施例では、これらのチャネル(b)は垂直(i)および斜め(j)の風を受けて、それらを内部で斜めに向け、内面(a)の切り込みを通して内側の流出口に流出させる。組み合わせ(c+d)は、単一の回転軸(k)と交差しない
縁部に位置する流入口を有するチャネルの分布を示す。実施例では、これらのチャネル(d)は水平(h)および斜め(j)の風を受けて、それらを内部で水平に向け、外側の流出口に流出させる。要素(e)は、全てのチャネル(d)を閉じる外側の層を示す。その形はチャネルによって与えられ、球のセグメントには正確に対応しない。この実施例では、全てのチャネルの組(b)および(d)の流入口は、同じ大きさの円形のセグメントによって与えられる。そのため、全てのチャネル(b)および(d)の空気の流出口は、流入口の半分に対応する面積を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この技術の適用は、風に基づくエネルギー生成装置であり得る。
この装置は、正四面体を形成する4つの三角形の面(A,B,C,およびD)に適合し得る。各面は、内側へ流出させる6つのチャネル(b)および外側へ流出させる6つのチャネル(d)を含む、2組のチャネル(a+b)および(c+d)によって同様に適合され得る。内側へ流出させるチャネル(b)は、外側へ流出させるチャネル(d)とは異なる方向へ向けられ得る。
【0016】
装置の単一の回転軸(k)は、四面体の反対側の縁部(f)および(g)の中心に配置され得る。回転軸と交差する縁部に位置する流入口を有するチャネル(b)は、軸方向(i)または軸に対して斜め(j)に装置に作用する風に基づく回転運動を生み出すために、斜めに向けられ得る。軸と交差しない縁部に位置する流入口を有するチャネル(d)は、軸に対して垂直(h)または斜め(j)に装置に作用する風に基づく回転運動を生み出すために、軸に対して垂直に向けられ得る。
【0017】
チャネル(b)および(d)は平らなまたは曲がった壁によって分離され得て、それらの上面および下面(a)、(c)、および(e)は、平面または曲面であり得る。チャネルは長さを変えることができる。各面の空気の流入口および流出口は、円形のセグメントに適合し得る。流入口と流出口との比率は、2対1の比で与えられ得る。
【0018】
上記装置は、その軸が垂直、平行、または斜めの位置にある状態で建物の正面に取付けることができ、これらの位置のいずれにおいても、この種の場所に存在する、垂直、平行、および斜めの風に基づいてエネルギーを生み出し得る。